(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170648
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】研磨装置、および研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/015 20120101AFI20221102BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20221102BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B24B37/015
B24B49/14
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162212
(22)【出願日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021076092
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】伊東 伴
(72)【発明者】
【氏名】本島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】尹 昇鎬
(72)【発明者】
【氏名】魚住 修司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 駿平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB92
3C034CA19
3C034CB20
3C158AA07
3C158AC02
3C158BA08
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3C158CB03
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3C158EB01
3C158ED00
5F057AA03
5F057AA05
5F057AA16
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5F057BA11
5F057BB14
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5F057CA12
5F057DA03
5F057GA04
5F057GA07
5F057GB02
5F057GB40
(57)【要約】
【課題】基板にスクラッチなどのディフェクトおよび汚染を生じさせることなく、所望の研磨性能で基板を研磨することが可能な研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置は、研磨パッド3を支持するための研磨テーブル2と、基板Wを研磨パッド3の研磨面に押し付けて基板Wを研磨する研磨ヘッド1と、研磨面の温度を測定するパッド温度測定器10と、研磨面の温度を調整するパッド温度調整装置5と、パッド温度測定器10によって測定された研磨面の温度に基づいてパッド温度調整装置5の動作を制御する制御装置40と、を備える。パッド温度調整装置5は、研磨面から上方に離間して配置されたパッド加熱機11を含み、該パッド加熱機11は、研磨パッド3の略半径方向に延びる長尺部11aと、該長尺部11aの長手方向に沿って形成され、研磨面に向けて加熱流体を噴射するためのスリット形状の噴射口11bと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付けて前記基板を研磨する研磨ヘッドと、
前記研磨面の温度を測定するパッド温度測定器と、
前記研磨面の温度を調整するパッド温度調整装置と、
前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨面の温度に基づいて前記パッド温度調整装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記パッド温度調整装置は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド加熱機を含み、
前記パッド加熱機は、前記研磨パッドの略半径方向に延びる長尺部と、該長尺部の長手方向に沿って形成され、前記研磨面に向けて加熱流体を噴射するためのスリット形状の噴射口と、を有する、研磨装置。
【請求項2】
前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機を前記研磨面に対して上下動させる上下動機構をさらに備える、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機を前記研磨面に対して水平方向に回動させる回動機構をさらに備える、請求項1または2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機をその長手方向軸を中心に回転させる回転機構をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記パッド温度調整装置は、前記噴出口の開度を調整するシャッタ機構をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記パッド温度測定器は、前記研磨パッドの半径方向に沿った温度プロファイルを測定可能な測定器であり、
前記シャッタ機構は、前記パッド加熱機の噴射口の長手方向に沿って配列されたピエゾ素子から構成される、請求項5に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記温度プロファイルに基づいて、各ピエゾ素子の伸縮量を調整する、請求項6に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記パッド温度調整装置は、前記研磨面に冷却流体を噴射して該研磨面を冷却する冷却機構をさらに備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、
前記パッド温度調整装置は、前記パッド冷却機をその長手方向軸を中心に回転させる回転機構をさらに備える、請求項8に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、
前記パッド冷却機は、前記研磨パッドの略半径方向に延びる長尺部と、前記長尺部の長手方向に沿って配列され、前記研磨面に向けて前記冷却流体を噴射するための複数の噴射口と、を有しており、
前記冷却機構は、前記パッド冷却機の複数の噴出口の開度を調整するシャッタ機構をさらに備える、請求項8または9に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、
前記冷却機構は、前記パッド冷却機に取り付けられた案内板と、
前記案内板を回動させるアクチュエータと、をさらに備える、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記パッド温度調整装置は、前記研磨面の上方に配置され、前記研磨面の上方の空気を吸引する吸引機構をさらに備える、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項13】
前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機内に配置されたヒータをさらに備える、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項14】
前記研磨テーブルは、研磨室に配置されており、
前記パッド温度調整装置は、前記研磨室内の圧力が所定の値に維持されるように、前記研磨室内の空気を吸引する研磨室吸引装置をさらに備える、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項15】
前記パッド加熱機を前記研磨パッドの側方の待避位置で洗浄する洗浄装置をさらに備える、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項16】
前記加熱流体は過熱蒸気である、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記研磨パッドの表面温度の制御を開始させる際に、パッド温調開始動作を実行し、
前記パッド温調開始動作は、前記研磨面の温度を目標温度に到達させるために算出された前記加熱流体の流量および/または温度よりも大きな流量および/または温度を有する前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する動作である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項18】
前記パッド温度調整装置は、
前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する加熱流体供給ラインと、
前記加熱流体供給ラインに配置された流量調整器と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記パッド温調開始動作中に、前記流量調整器を用いて前記加熱流体の流量を増大させる、請求項17に記載の研磨装置。
【請求項19】
前記制御装置は、前記研磨パッドの研磨面の温度が前記目標温度に到達すると、前記パッド温調開始動作を終了させる、請求項17または18に記載の研磨装置。
【請求項20】
研磨パッドの研磨面の温度を、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド加熱機で調整しながら、基板を前記研磨面に押し付けて前記基板を研磨する研磨方法であって、
前記研磨面の温度の制御を開始させる際に、パッド温調開始動作を実行して前記研磨面の温度を目標温度に到達させ、
前記基板の研磨中、前記研磨面の温度を測定するパッド温度測定器によって測定された前記研磨面の温度に基づいて、前記パッド加熱機の長尺部に形成されたスリット形状の噴射口から加熱流体を噴射して、前記研磨面の温度を前記目標温度に維持し、
前記パッド温調開始動作は、前記研磨面の温度を目標温度に到達させるために算出された前記加熱流体の流量および/または温度よりも大きな流量および/または温度を有する前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する動作である、研磨方法。
【請求項21】
前記研磨面の温度を前記目標温度に維持する工程は、前記加熱流体の温度および/または流量の調整、前記研磨面に対する前記パッド加熱機の上下動の調整、前記研磨面に対する前記パッド加熱機の水平方向の回動動作の調整、および前記パッド加熱機をその長手方向軸を中心に回転させる回転動作の調整の少なくとも1つによって行われる、請求項20に記載の研磨方法。
【請求項22】
前記加熱流体の流量の調整は、前記パッド加熱機の噴射口の開度を調整可能なシャッタによって行われる、請求項21に記載の研磨方法。
【請求項23】
前記パッド温度測定器は、前記研磨パッドの半径方向に沿った温度プロファイルを測定可能な測定器であり、
前記シャッタは、前記パッド加熱機の噴射口の長手方向に沿って配列されたピエゾ素子から構成され、
前記加熱流体の流量の調整は、前記温度プロファイルに基づいて、各ピエゾ素子の伸縮量を調整することにより行われる、請求項22に記載の研磨方法。
【請求項24】
前記研磨面の温度を前記目標温度に維持する工程は、前記パッド加熱機と、前記研磨面に冷却流体を噴射して該研磨面を冷却する冷却機構によって行われる、請求項20乃至23のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項25】
前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、
前記パッド冷却機は、前記研磨パッドの略半径方向に延びる長尺部と、前記長尺部の長手方向に沿って配列され、前記研磨面に向けて前記冷却流体を噴射するための複数の噴射口と、を有しており、
前記研磨面の温度を前記目標温度に維持する工程は、前記パッド冷却機をその長手方向軸を中心に回転させる回転動作の調整、シャッタによる前記パッド冷却機の複数の噴出口の開度の調整、および前記パッド冷却機に取り付けられた案内板の回動動作の調整の少なくとも1つをさらに加えて行われる、請求項24に記載の研磨方法。
【請求項26】
前記パッド温調開始動作は、前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する加熱流体供給ラインに配置された流量調整器を用いて前記加熱流体の流量を増大させる動作である、請求項20乃至25のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項27】
前記研磨パッドの研磨面の温度が前記目標温度に到達すると、前記パッド温調開始動作を終了させる、請求項20乃至26のいずれか一項に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの基板を研磨パッドに摺接させて研磨する研磨装置および研磨方法に係り、特に研磨パッドの表面温度を調整しながら基板を研磨する研磨装置および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置は、半導体デバイスの製造において、基板の表面を研磨する工程に使用される。CMP装置は、基板を研磨ヘッドで保持して基板を回転させ、さらに回転する研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押し付けて基板の表面を研磨する。研磨中、研磨パッドには研磨液(スラリー)が供給され、基板の表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0003】
基板の研磨レートは、基板の研磨パッドに対する研磨荷重のみならず、研磨パッドの表面温度にも依存する。これは、基板に対する研磨液の化学的作用が温度に依存するからである。したがって、半導体デバイスの製造においては、基板の研磨レートを上げて更に一定に保つために、基板研磨中の研磨パッドの表面温度を最適な値に保つことが重要とされる。
【0004】
そこで、研磨パッドの表面温度を調整するためのパッド温度調整装置が従来から使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。パッド温度調整装置は、研磨パッドの表面に接触し、温度調整された加熱液および冷却液が供給されるパッド接触部材(または、熱交換器)を有している。パッド接触部材に供給される加熱液の流量と冷却液の流量とを調整することで、基板研磨中の研磨パッドの表面温度を所望の温度に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-176449号公報
【特許文献2】特開2017-148933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パッド温度調整装置のパッド接触部材は、基板の研磨中に必然的に研磨液に接触するので、パッド接触部材に、研磨液に含まれる砥粒および研磨パッドの摩耗粉などの汚れが付着する。汚れが基板の研磨中にパッド接触部材から脱落すると、基板を汚染したり、基板にスクラッチなどのディフェクトを生じさせたりしてしまう。さらに、パッド接触部材から脱落した汚れが研磨パッドの表面状態を悪化させるおそれがあり、研磨性能に悪影響をあたえかねない。
【0007】
そこで、本発明は、基板にスクラッチなどのディフェクトおよび汚染を生じさせることなく、所望の研磨性能で基板を研磨することが可能な研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付けて前記基板を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨面の温度を測定するパッド温度測定器と、前記研磨面の温度を調整するパッド温度調整装置と、前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨面の温度に基づいて前記パッド温度調整装置の動作を制御する制御装置と、を備え、前記パッド温度調整装置は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド加熱機を含み、前記パッド加熱機は、前記研磨パッドの略半径方向に延びる長尺部と、該長尺部の長手方向に沿って形成され、前記研磨面に向けて加熱流体を噴射するためのスリット形状の噴射口と、を有する、研磨装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機を前記研磨面に対して上下動させる上下動機構をさらに備える。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機を前記研磨面に対して水平方向に回動させる回動機構をさらに備える。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機をその長手方向軸を中心に回転させる回転機構をさらに備える。
【0010】
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記噴出口の開度を調整するシャッタ機構をさらに備える。
一態様では、前記パッド温度測定器は、前記研磨パッドの半径方向に沿った温度プロファイルを測定可能な測定器であり、前記シャッタ機構は、前記パッド加熱機の噴射口の長手方向に沿って配列されたピエゾ素子から構成される。
一態様では、前記制御装置は、前記温度プロファイルに基づいて、各ピエゾ素子の伸縮量を調整する。
【0011】
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記研磨面に冷却流体を噴射して該研磨面を冷却する冷却機構をさらに備える。
一態様では、前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、前記パッド温度調整装置は、前記パッド冷却機をその長手方向軸を中心に回転させる回転機構をさらに備える。
一態様では、前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、前記パッド冷却機は、前記研磨パッドの略半径方向に延びる長尺部と、前記長尺部の長手方向に沿って配列され、前記研磨面に向けて前記冷却流体を噴射するための複数の噴射口と、を有しており、前記冷却機構は、前記パッド冷却機の複数の噴出口の開度を調整するシャッタ機構をさらに備える。
一態様では、前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、前記冷却機構は、前記パッド冷却機に取り付けられた案内板と、前記案内板を回動させるアクチュエータと、をさらに備える。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記研磨面の上方に配置され、前記研磨面の上方の空気を吸引する吸引機構をさらに備える。
【0012】
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記パッド加熱機内に配置されたヒータをさらに備える。
一態様では、前記研磨テーブルは、研磨室に配置されており、前記パッド温度調整装置は、前記研磨室内の圧力が所定の値に維持されるように、前記研磨室内の空気を吸引する研磨室吸引装置をさらに備える。
一態様では、前記パッド加熱機を前記研磨パッドの側方の待避位置で洗浄する洗浄装置をさらに備える。
一態様では、前記加熱流体は過熱蒸気である。
【0013】
一態様では、前記制御装置は、前記研磨パッドの表面温度の制御を開始させる際に、パッド温調開始動作を実行し、前記パッド温調開始動作は、前記研磨面の温度を目標温度に到達させるために算出された前記加熱流体の流量および/または温度よりも大きな流量および/または温度を有する前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する動作である。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する加熱流体供給ラインと、前記加熱流体供給ラインに配置された流量調整器と、をさらに備え、前記制御装置は、前記パッド温調開始動作中に、前記流量調整器を用いて前記加熱流体の流量を増大させる。
一態様では、前記制御装置は、前記研磨パッドの研磨面の温度が前記目標温度に到達すると、前記パッド温調開始動作を終了させる。
【0014】
一態様では、研磨パッドの研磨面の温度を、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド加熱機で調整しながら、基板を前記研磨面に押し付けて前記基板を研磨する研磨方法であって、前記研磨面の温度の制御を開始させる際に、パッド温調開始動作を実行して前記研磨面の温度を目標温度に到達させ、前記基板の研磨中、前記研磨面の温度を測定するパッド温度測定器によって測定された前記研磨面の温度に基づいて、前記パッド加熱機の長尺部に形成されたスリット形状の噴射口から加熱流体を噴射して、前記研磨面の温度を前記目標温度に維持し、前記パッド温調開始動作は、前記研磨面の温度を目標温度に到達させるために算出された前記加熱流体の流量および/または温度よりも大きな流量および/または温度を有する前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する動作である、研磨方法が提供される。
【0015】
一態様では、前記研磨面の温度を前記目標温度に維持する工程は、前記加熱流体の温度および/または流量の調整、前記研磨面に対する前記パッド加熱機の上下動の調整、前記研磨面に対する前記パッド加熱機の水平方向の回動動作の調整、および前記パッド加熱機をその長手方向軸を中心に回転させる回転動作の調整の少なくとも1つによって行われる。
一態様では、前記加熱流体の流量の調整は、前記パッド加熱機の噴射口の開度を調整可能なシャッタによって行われる。
一態様では、前記パッド温度測定器は、前記研磨パッドの半径方向に沿った温度プロファイルを測定可能な測定器であり、前記シャッタは、前記パッド加熱機の噴射口の長手方向に沿って配列されたピエゾ素子から構成され、前記加熱流体の流量の調整は、前記温度プロファイルに基づいて、各ピエゾ素子の伸縮量を調整することにより行われる。
【0016】
一態様では、前記研磨面の温度を前記目標温度に維持する工程は、前記パッド加熱機と、前記研磨面に冷却流体を噴射して該研磨面を冷却する冷却機構によって行われる。
一態様では、前記冷却機構は、前記研磨面から上方に離間して配置されたパッド冷却機を含み、前記パッド冷却機は、前記研磨パッドの略半径方向に延びる長尺部と、前記長尺部の長手方向に沿って配列され、前記研磨面に向けて前記冷却流体を噴射するための複数の噴射口と、を有しており、前記研磨面の温度を前記目標温度に維持する工程は、前記パッド冷却機をその長手方向軸を中心に回転させる回転動作の調整、シャッタによる前記パッド冷却機の複数の噴出口の開度の調整、および前記パッド冷却機に取り付けられた案内板の回動動作の調整の少なくとも1つをさらに加えて行われる。
一態様では、前記パッド温調開始動作は、前記加熱流体を前記パッド加熱機に供給する加熱流体供給ラインに配置された流量調整器を用いて前記加熱流体の流量を増大させる動作である。
一態様では、前記研磨パッドの研磨面の温度が前記目標温度に到達すると、前記パッド温調開始動作を終了させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パッド温度調整装置は、研磨パッドの研磨面と非接触式に該研磨パッドの研磨面の温度を所定の目標温度に調整するので、パッド温度調整装置は、研磨液に含まれる砥粒および研磨パッドの摩耗粉などの汚れが付着する構成要素を有さない。その結果、パッド温度調整装置から脱落した汚れに起因したスクラッチなどのディフェクトおよび汚染が基板に生じることが防止される。さらに、パッド温度調整装置から脱落した汚れによって、研磨パッドの表面状態が変化することもないので、研磨パッドの研磨面の温度が所定の目標温度に維持されているときに発揮される所望の研磨レートで基板を研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態にかかる加熱流体供給システムと冷却流体供給システムとを示す模式図である。
【
図3】
図3(a)は、一実施形態に係るパッド加熱機を示す模式図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すパッド加熱機の断面図であり、
図3(c)は、研磨パッド3に対するパッド加熱機の配置の一例を示す上面図である。
【
図4】
図4(a)は、一実施形態に係るパッド冷却機の模式図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すパッド冷却機の断面図である。
【
図5】
図5(a)は、一実施形態に係る吸引ノズルの模式図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示す吸引ノズルの断面図である。
【
図6】
図6(a)は、パッド加熱機の長尺部およびパッド冷却機の長尺部を一体に形成した一例を示す図であり、
図6(b)は、パッド加熱機の長尺部およびパッド冷却機の長尺部の両者として機能する共通の長尺部が設けられた一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、上下動機構の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8(a)は、回動機構の一例を示す模式図であり、
図8(b)は、回動機構によって回動されたパッド加熱機を示す上面図である。
【
図9】
図9(a)は、パッド加熱機をその長手方向軸を中心に回転させる回転機構の一例を示す模式図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すパッド加熱機が上方向に回転されたときの様子を示す断面図であり、
図9(c)は、
図9(a)に示すパッド加熱機が下方向に回転されたときの様子を示す断面図である。
【
図10】
図10は、他の実施形態に係るパッド加熱機を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11(a)は、他の実施形態に係るシャッタ機構を下面側から眺めた斜視図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示すシャッタ機構の動作の一例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、研磨パッドの目標温度プロファイル、およびパッド温度測定器によって取得された温度プロファイルの一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、さらに他の実施形態に係るパッド加熱機を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、さらに他の実施形態にかかるパッド温度調整装置を備えた研磨装置を示す模式図である。
【
図15】
図15(a)は、他の実施形態に係る冷却機構のパッド冷却機を示す模式図であり、
図15(b)は、
図15(a)に示すパッド冷却機の断面図である。
【
図16】
図16は、さらに他の実施形態に係る冷却機構のパッド冷却機を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、さらに他の実施形態に係る冷却機構のパッド冷却機を示す模式図である。
【
図18】
図18は、パッド温調開始動作の一例を説明するためのグラフである。
【
図19】
図19は、さらに他の実施形態にかかるパッド温度調整装置を備えた研磨装置を示す模式図である。
【
図20】
図20は、他の実施形態に係る加熱流体供給システムと冷却流体供給システムとを示す模式図である。
【
図21】
図21は、さらに他の実施形態に係る加熱流体供給システムを示す模式図である。
【
図22】
図22は、他の実施形態に係る冷却流体供給システムと吸引機構の組み合わせを示す模式図である。
【
図23】
図23は、他の実施形態に係る加熱流体供給システム、冷却流体供給システム、および吸引機構の組み合わせを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
図1に示す研磨装置は、基板の一例であるウエハWを保持して回転させる研磨ヘッド1と、研磨パッド3を支持する研磨テーブル2と、研磨パッド3の表面に研磨液(例えば、スラリー)を供給する研磨液供給ノズル4と、研磨パッド3の表面の温度を測定するパッド温度測定器10と、研磨パッド3の表面温度を調整するパッド温度調整装置5とを備えている。研磨パッド3の表面(上面)は、ウエハWを研磨する研磨面を構成する。
【0020】
さらに、研磨装置は、パッド温度測定器10によって測定された研磨パッド3の研磨面の温度(以下、パッド表面温度ということがある)に基づいて、パッド温度調整装置5の動作を制御する制御装置40を有している。本実施形態では、制御装置40は、パッド温度調整装置5を含む研磨装置全体の動作を制御するように構成されている。
【0021】
研磨ヘッド1は鉛直方向に移動可能であり、かつその軸心を中心として矢印で示す方向に回転可能となっている。ウエハWは、研磨ヘッド1の下面に真空吸着などによって保持される。研磨テーブル2にはモータ(図示せず)が連結されており、矢印で示す方向に回転可能となっている。
図1に示すように、研磨ヘッド1および研磨テーブル2は、同じ方向に回転する。研磨パッド3は、研磨テーブル2の上面に貼り付けられている。
【0022】
ウエハWの研磨は次のようにして行われる。研磨されるウエハWは、研磨ヘッド1によって保持され、さらに研磨ヘッド1によって回転される。一方、研磨パッド3は、研磨テーブル2とともに回転される。この状態で、研磨パッド3の表面には研磨液供給ノズル4から研磨液が供給され、さらにウエハWの表面は、研磨ヘッド1によって研磨パッド3の表面(すなわち研磨面)に対して押し付けられる。ウエハWの表面は、研磨液の存在下での研磨パッド3との摺接により研磨される。ウエハWの表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0023】
パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面を加熱する加熱機構9を有しており、この加熱機構9は、研磨パッド3の上方に配置されたパッド加熱機11と、加熱流体をパッド加熱機11に供給する加熱流体供給システム30と、を少なくとも備えている。加熱流体供給システム30を介してパッド加熱機11に供給された加熱流体が研磨パッド3の研磨面に噴射されることにより、該研磨面を所定の目標温度に加熱し、該目標温度に維持することができる。
【0024】
さらに、
図1に示すパッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面に流体を噴射して該研磨面を冷却するための冷却機構50と、研磨パッド3の研磨面の上方に配置された吸引機構60と、を有している。
【0025】
冷却機構50は、研磨パッド3の上方に配置されたパッド冷却機51と、冷却流体をパッド冷却機51に供給する冷却流体供給システム52と、を少なくとも有している。吸引機構60は、研磨パッド3の上方に配置された吸引ノズル61と、真空源(真空装置)63と、真空源63を吸引ノズル61に連結する吸引ライン62と、を少なくとも有している。真空源63の例としては、吸引ポンプ、吸引ファン、およびエゼクタが挙げられる。吸引機構60は、吸引ライン62に配置される流量調整器64を有していてもよい。流量調整器64は、例えば、ダンバーである。
【0026】
パッド温度測定器10は、非接触でパッド表面温度を測定し、その測定値を制御装置40に送る。パッド温度測定器10は、研磨パッド3の表面温度を測定する赤外線放射温度計または熱電対温度計であってもよく、研磨パッド3の径方向に沿った研磨パッド3の温度分布(温度プロファイル)を取得する温度分布測定器であってもよい。温度分布測定器の例としては、サーモグラフィ、サーモパイル、および赤外カメラが挙げられる。パッド温度測定器10が温度分布測定器である場合は、パッド温度測定器10は、研磨パッド3の中心と外周縁とを含む領域であって、該研磨パッド3の半径方向に延びる領域における研磨パッド3の表面温度の分布を測定するように構成される。本明細書において、温度分布(温度プロファイル)は、パッド表面温度と、ウエハW上の半径方向の位置との関係を示す。
【0027】
制御装置40は、パッド表面温度が、予め設定された目標温度に維持されるように、測定されたパッド表面温度に基づいて、パッド温度調整装置5の動作を制御する。以下では、加熱流体供給システム30からパッド加熱機11に供給される加熱流体が過熱蒸気である例が説明される。しかしながら、加熱流体はこの例に限定されない。加熱流体は、高温の気体(例えば、高温の空気、窒素、またはアルゴン)でもよいし、加熱蒸気でもよい。なお、過熱蒸気とは、飽和蒸気をさらに加熱した高温の蒸気を意味する。
【0028】
さらに、以下では、冷却流体が常温のガス(例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス)である例が説明される。しかしながら、冷却流体はこの例に限定されない。冷却流体は、常温よりも低い設定温度まで冷却されたガスでもよいし、研磨パッド3の目標温度よりも低い設定温度まで常温から加熱されたガスでもよい。冷却流体は、研磨液への影響を考慮して、不活性ガスであるのが好ましい。しかしながら、冷却流体は、空気などの不活性ガスとは異なるガスであってもよい。
【0029】
図2は、一実施形態にかかる加熱流体供給システムと冷却流体供給システムとを示す模式図である。
【0030】
図2に示す加熱流体供給システム30は、過熱蒸気発生器31と、過熱蒸気発生器31からパッド加熱機11まで延びる過熱蒸気供給ライン32と、過熱蒸気発生器31に水を供給する水供給ライン33と、過熱蒸気発生器31に常温のガスを供給するガス供給ライン34と、を備えている。ガス供給ライン34は、ガス供給源(図示せず)から延びるガスメインライン70から分岐して過熱蒸気発生器31まで延びている。
【0031】
過熱蒸気発生器31は、水供給ライン33から供給された水と、ガス供給ライン34から供給された常温のガスと、を混合して、所定の温度に調整された過熱蒸気を生成する。過熱蒸気は、過熱蒸気供給ライン32を介してパッド加熱機11に供給され、パッド加熱機11から研磨パッド3の研磨面に噴射される。この動作により、研磨パッド3の研磨面の温度を上昇させることができる。
【0032】
図2に示す加熱流体供給システム30は、過熱蒸気供給ライン32に配置された流量調整器(第1流量調整器)35と、流量調整器35の上流側で過熱蒸気供給ライン32から分岐する排気ライン36とをさらに備えている。流量調整器35の例としては、マスフローコントローラ、および流量調整弁が挙げられる。流量調整器35によって、パッド加熱機11に供給される過熱蒸気の流量を調整することができる。余剰の過熱蒸気は、排気ライン36を通って研磨装置から排出される。
【0033】
一実施形態では、加熱流体供給システム30は、流量調整器35に代えて、開閉弁(図示せず)を有していてもよい。この場合、制御装置40が開閉弁を開くことにより、所定流量の過熱蒸気(加熱流体)がパッド加熱機11に供給され、該パッド加熱機11から研磨パッド3の研磨面に噴射される。
【0034】
過熱蒸気ではなく、高温のガスを加熱流体として用いる場合は、加熱流体供給システム30では、水供給ライン33が省略され、過熱蒸気発生器31を、加熱ガスヒータに置き換えればよい。さらに、過熱蒸気供給ライン32は、加熱ガス供給ラインと読み替えられる。
【0035】
図2に示す冷却流体供給システム52は、ガスメインライン70から分岐して、パッド冷却機51まで延びる冷却ガス供給ライン53と、冷却ガス供給ライン53に配置された流量調整器(第2流量調整器)54と、を備えている。流量調整器54の例としては、マスフローコントローラ、および流量調整弁が挙げられる。流量調整器54によって、パッド冷却機51に供給される冷却ガスの流量を調整することができる。冷却流体は、冷却ガス供給ライン53を介してパッド冷却機51に供給され、パッド冷却機51から研磨パッド3の研磨面に噴射される。この動作により、研磨パッド3の研磨面の温度を低下させることができる。
【0036】
一実施形態では、冷却流体供給システム52は、流量調整器54に代えて、開閉弁(図示せず)を有していてもよい。この場合、制御装置40が開閉弁を開くことにより、所定流量の冷却ガス(冷却流体)がパッド冷却機51に供給され、該パッド冷却機51から研磨パッド3の研磨面に噴射される。
【0037】
制御装置40は、過熱蒸気発生器31、流量調整器35,54、真空源63、および流量調整器64(
図1参照)に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいて過熱蒸気発生器31、流量調整器35,54、真空源63、および流量調整器64のうちの少なくとも1つの動作を制御し、パッド表面温度を所定の目標温度に一致させる。例えば、制御装置40は、パッド表面温度が所定の目標温度に一致するように、流量調整器35,54の動作を制御して、過熱蒸気の流量および冷却ガスの流量を調整する。
【0038】
制御装置40は、流量調整器35,54の動作に加えて、またはこれら動作に代えて、過熱蒸気発生器31の動作、真空源63の動作、および流量調整器64の動作の少なくとも1つを制御してもよい。例えば、制御装置40は、過熱蒸気発生器31が生成する過熱蒸気の温度を調整してもよいし、真空源63および/または流量調整器64の動作を制御して、吸引される空気の量を調整してもよい。研磨パッド3の研磨面に噴射される過熱蒸気の温度を変化させることで、研磨面の温度を調整することができる。真空源63および/または流量調整器64によって吸引される空気の量を増減させると、研磨面上のスラリーから奪われる気化熱の量が変化し、結果として、研磨面の温度を調整することができる。
【0039】
一実施形態では、吸引機構60の真空源63および/または流量調整器64の動作を制御して、吸引ノズル61から吸引される空気の量を増大させることにより、吸引機構60を冷却機構50の補助冷却機構として使用してもよいし、冷却機構50を省略してもよい。
【0040】
パッド温度測定器10(
図1参照)は、非接触でパッド表面温度を測定し、その測定値を制御装置40に送る。本実施形態では、制御装置40は、パッド表面温度が予め設定された目標温度に維持されるように、測定されたパッド表面温度に基づいて、過熱蒸気発生器31、流量調整器35,54、真空源63、および流量調整器64のうちの少なくとも1つの操作量をPID制御する。
【0041】
制御装置40による研磨パッド3の研磨面の温度制御方法は、測定されたパッド表面温度を目標温度に維持できる限り、PID制御に限られず、任意の制御方法を用いることができる。例えば、制御装置40は、過熱蒸気発生器31、流量調整器35,54、真空源63、および流量調整器64の操作量うちの少なくとも1つを、機械学習を行うことで構築された学習済モデルを用いて予測乃至決定するAI(artificial intelligence)機能を有していてもよい。
【0042】
図3(a)は、一実施形態に係るパッド加熱機を示す模式図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すパッド加熱機の断面図であり、
図3(c)は、研磨パッド3に対するパッド加熱機の配置の一例を示す上面図である。
図3(a)乃至
図3(c)に示すように、加熱機11は、研磨パッド3の略半径方向に延びる長尺部11aと、研磨パッド3の研磨面に向けて加熱流体を噴射するための噴射口11bと、を有する。長尺部11aの内部には、過熱蒸気の流路(図示せず)が形成される。パッド加熱機11の長尺部11aは、研磨面に対して平行に延びるのが好ましい。
【0043】
噴射口11bは、長尺部11aの長手方向に沿って形成されたスリット形状を有する。噴射口11bは、加熱流体が研磨パッド3の研磨面に対して斜めに衝突するように、長尺部11aの中心軸線CL1を通り、研磨パッド3の研磨面に対して鉛直方向に延びる仮想面P1に対して斜めに向いていることが好ましい。
【0044】
長尺部11aの形状は、噴出口11bから研磨パッド3の研磨面に向けて加熱流体を噴射できる限り任意である。例えば、長尺部11aは、円筒形状を有していてもよいし、四角筒形状、五角筒形状などの多角筒形状であってもよい。
【0045】
図4(a)は、一実施形態に係るパッド冷却機の模式図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すパッド冷却機の断面図である。
図4(a)および
図4(b)に示すパッド冷却機51は、研磨パッド3の略半径方向に延びる長尺部51aと、研磨パッド3の研磨面に向けて冷却流体を噴射するための複数の噴射口51bと、を有する。長尺部51aの内部には、冷却ガスの流路(図示せず)が形成される。パッド冷却機51の長尺部51aは、研磨面に対して平行に延びるのが好ましい。
【0046】
複数の噴射口51bは、長尺部51aの長手方向に沿って配列されている。本実施形態では、各噴射口51bは、円形状を有している。噴射口51bは、冷却流体が研磨パッド3の研磨面に対して斜めに衝突するように、長尺部51aの中心軸線CL2を通り、研磨パッド3の研磨面に対して鉛直方向に延びる面P2に対して斜めに向いていることが好ましい。
【0047】
長尺部51aの形状は、噴出口51bから研磨パッド3の研磨面に向けて冷却流体を噴射できる限り任意である。例えば、長尺部51aは、円筒形状を有していてもよいし、四角筒形状、五角筒形状などの多角筒形状であってもよい。さらに、噴出口51bの数および形状も任意である。例えば、噴出口51bは、長尺部51aの長手方向に沿って形成されスリット形状を有する1つの開口であってもよいし、複数の噴出口51bのそれぞれが四角形状または三角形状を有していてもよい。
【0048】
図5(a)は、一実施形態に係る吸引ノズルの模式図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示す吸引ノズルの断面図である。
図5(a)および
図5(b)に示す吸引ノズル61は、研磨パッド3の略半径方向に延びる長尺部61aと、研磨パッド3の研磨面の上方の空気を吸引する吸引口61bと、を有する。吸引口61bは、研磨面と対向しているのが好ましい。長尺部61aの内部には、吸引された空気の流路(図示せず)が形成される。吸引ノズル61の長尺部61aは、研磨面に対して平行に延びるのが好ましい。
【0049】
吸引ノズル61から所望量の空気を吸引できる限り、吸引ノズル61の形状は任意であり、吸引口61bの数および形状も任意である。例えば、吸引機構60は、長尺部61aの長手方向に沿って配列された複数の吸引口61bを有していてもよい。この場合、各吸引口61bは、円形状を有していてもよいし、四角形状または三角形状を有していてもよい。さらに、図示はしないが、吸引ノズル61は、ドーム形状を有する先端部を有していてもよい。この場合、ドーム形状を有する吸引ノズル61の先端部の最下部に形成された開口が吸引口61bとして機能する。さらに、ドーム形状を有する吸引ノズル61の先端部に、パッド加熱機11の長尺部11aおよび/またはパッド冷却機51の長尺部51bを収容してもよい。
【0050】
図6(a)に示すように、パッド加熱機11の長尺部11aおよびパッド冷却機51の長尺部51bを一体に形成してもよい。あるいは、
図6(b)に示すように、パッド温度調整装置5は、パッド加熱機11の長尺部11aおよびパッド冷却機51の長尺部51bの両者として機能する共通の長尺部80を有していてもよい。この場合、共通の長尺部80には、過熱蒸気供給ライン32および冷却ガス供給ライン53が混合弁81を介して連結される。制御装置40が混合弁81の弁開度を調整することで、所望の温度を有する、過熱蒸気と冷却ガスとの混合ガスが共通の長尺部80に供給され、該長尺部80から研磨パッド3の研磨面に噴射される。長尺部80には、例えば、長尺部80の長手方向に沿って形成された、スリット形状を有する噴出口が形成される。
【0051】
パッド温度調整装置5が混合弁81を有する場合、制御装置40は、予め設定された目標温度と、研磨パッド3の表面温度との差を無くすために必要な混合弁81の操作量を計算するように構成されている。混合弁81の弁開度は、過熱蒸気と冷却ガスとの混合比に対応する。制御装置40は、混合弁81の操作量を変更することにより、過熱蒸気と冷却ガスとの混合比を調整し、結果として、長尺部80の噴射口から研磨パッド3に噴射される混合ガスの温度を調整する。制御装置40は、研磨パッド3の表面温度が予め設定された目標温度に一致するように、混合弁81の操作量(すなわち、混合弁81の弁開度)を制御する。
【0052】
パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61の配列順は任意である。しかしながら、
図1に示すように、パッド冷却機51は、研磨パッド3の回転方向においてパッド加熱機11の下流側に配置され、吸引ノズル61は、研磨パッド3の回転方向においてパッド冷却機51の下流側に配置されるのが好ましい。この場合、パッド冷却機51は、パッド加熱機11と吸引ノズル61の間に位置する。
【0053】
さらに、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61は、互いに隣接して配置されるのが好ましい。この場合、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61は、連結バー、連結ブロック、または連結アーム(いずれも図示せず)などの連結具で互いに連結されてもよい。この連結具は、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61を一体の構造物にまとめるベースとして機能してもよい。
【0054】
本実施形態によれば、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61は、研磨パッド3の上方に配置されている。すなわち、パッド温度調整装置5は、研磨液に含まれる砥粒および研磨パッド3の摩耗粉などの汚れが付着する構成要素を有さない。その結果、パッド温度調整装置5から脱落した汚れに起因したスクラッチなどのディフェクトおよび汚染がウエハWに生じることがない。さらに、パッド温度調整装置5から脱落した汚れによって、研磨パッド3の表面状態が変化することもないので、所望の研磨レートでウエハWを研磨することができる。
【0055】
図7に示すように、パッド温度調整装置5は、パッド加熱機11を研磨パッド3の研磨面に対して上下動させる上下動機構85を備えていてもよい。
図7は、上下動機構85の一例を示す模式図である。
【0056】
図7に示す上下動機構85は、パッド加熱機11に連結される支持アーム86と、支持アーム86を介してパッド加熱機11を上下動させる上下動アクチュエータ87と、を備えている。上下動アクチュエータ87の構成は、パッド加熱機11を上下方向に移動させることが可能である限り任意である。例えば、上下動アクチュエータ87は、パッド加熱機11を支持アーム86を介して上下動させるピストンを備えたピストンシリンダ装置であってもよく、またはパッド加熱機11を支持アーム86を介して上下動させるモータ(例えば、サーボモータ、またはステッピングモータ)であってもよい。一実施形態では、上下動アクチュエータ87は、ピエゾ素子の圧電効果を利用してパッド加熱機11を支持アーム86を介して上下動させるピエゾアクチュエータであってもよい。
【0057】
上下動機構85は、制御装置40に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいて上下動機構85の動作(すなわち、上下動アクチュエータ87の操作量)を制御し、これにより、研磨パッド3の研磨面に対するパッド加熱機11の上下方向の位置が変化する(
図3(b)の矢印A参照)。パッド加熱機11と研磨パッド3との間の距離が変化すると、研磨パッド3の研磨面に衝突する際の過熱蒸気の温度が変化する。例えば、パッド加熱機11を研磨パッド3に近づけると、高めの温度を有する過熱蒸気が研磨パッド3の研磨面に衝突し、パッド表面温度を上昇させることができる。一方で、パッド加熱機11を研磨パッド3から遠ざけると、低めの温度を有する過熱蒸気が研磨パッド3の研磨面に衝突し、パッド表面温度を低下させることができる。したがって、パッド加熱機11と研磨パッド3の研磨面との距離を変化させることで、パッド表面温度を調整することができる。
【0058】
さらに、
図8(a)に示すように、パッド温度調整装置5は、パッド加熱機11を研磨パッド3の研磨面に対して水平方向に回動させる回動機構90を備えていてもよい。
図8(a)は、回動機構90の一例を示す模式図であり、
図8(b)は、回動機構90によって回動されたパッド加熱機11を示す上面図である。
【0059】
図8(a)に示す回動機構90は、パッド加熱機11に支持アーム86を介して連結される回動シャフト91と、回動シャフト91を回動させる回動アクチュエータ92と、を備える。回動アクチュエータ92は、例えば、回動シャフト91を回動させるモータ(例えば、サーボモータ、またはステッピングモータ)、またはロータリシリンダである。一実施形態では、回動アクチュエータ92は、ピストンを有するピストンシリンダであってもよい。この場合、回動機構90は、ピストンシリンダのピストンの動作を回動シャフト91の回動動作に変換するリンク機構を有する。
【0060】
回動機構90は、制御装置40に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいて回動機構90の動作(すなわち、回動アクチュエータ92の操作量)を制御し、これにより、研磨パッド3の研磨面に対するパッド加熱機11の回動角度を制御する。
【0061】
図8(b)に示すように、パッド加熱機11を、該パッド加熱機11の長尺部11aが研磨パッド3の長手方向と略平行に延びる初期位置(
図3(c)参照)から回動させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する過熱蒸気の向きおよび量が変わる。その結果、初期位置からのパッド加熱機11の回動角度を制御することで、パッド表面温度を調整することができる。
【0062】
図9(a)は、パッド加熱機11をその長手方向軸を中心に回転させる回転機構95の一例を示す模式図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すパッド加熱機11が上方向に回転されたときの様子を示す断面図であり、
図9(c)は、
図9(a)に示すパッド加熱機11が下方向に回転されたときの様子を示す断面図である。
【0063】
図9(a)に示す回転機構95は、パッド加熱機11の末端に取り付けられ、該パッド加熱機11を回転させる回転アクチュエータ96によって構成される。回転アクチュエータ96は、例えば、サーボモータ、またはステッピングモータである。
【0064】
回転機構95は、制御装置40に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいて回転機構95の動作(すなわち、回転アクチュエータ96の操作量)を制御し、これにより、研磨パッド3の研磨面に対するパッド加熱機11の噴射口11bの向きを変化させる(
図3(b)の矢印B参照)。
【0065】
図9(b)および
図9(c)に示すように、研磨パッド3の研磨面に対するパッド加熱機11の噴射口11bの向きを変化させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する過熱蒸気の量、および温度が変わる。
図9(b)に示すように、パッド加熱機11を上方向に回転させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する過熱蒸気の量、および温度が減少し、パッド表面温度を低下させることができる。
図9(c)に示すように、パッド加熱機11を下方向に回転させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する過熱蒸気の量、および温度が増加し、パッド表面温度を増加させることができる。したがって、支持アーム86に対するパッド加熱機11の回転角度を制御することで、パッド表面温度を調整することができる。
【0066】
パッド温度調整装置5は、上述した上下動機構85、回動機構90、および回転機構90のいずれか2つの組み合わせを有していてもよいし、上下動機構85、回動機構90、および回転機構90の全てを有していてもよい。
【0067】
図10は、他の実施形態に係るパッド加熱機を模式的に示す断面図である。
図10に示すパッド加熱機11は、噴射口11bを開閉するシャッタ77と、シャッタ77を駆動するアクチュエータ78と、を含むシャッタ機構76をさらに備える。
図10に示す例では、シャッタ機構76は、2枚のシャッタ77を有しているが、1枚のシャッタ77のみを有していてもよい。アクチュエータ78は、例えば、シャッタ77を移動させるピストンを備えたピストンシリンダ装置であってもよく、またはシャッタ77を移動させるモータ(例えば、サーボモータ、またはステッピングモータ)であってもよい。一実施形態では、アクチュエータ78は、ピエゾ素子の圧電効果を利用してシャッタ77を移動させるピエゾアクチュエータであってもよい。
【0068】
アクチュエータ78は、制御装置40に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいてアクチュエータ78の動作(すなわち、アクチュエータ78の操作量)を制御し、これにより、噴射口11bの開度を制御する。本実施形態では、噴射口11bの開度は、長手方向に垂直な方向における噴射口11bの幅の大きさに相当する。噴射口11bの開度を変化させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する過熱蒸気の流速および温度が変化し、パッド表面温度が変化する。したがって、噴射口11bの開度を制御することで、パッド表面温度を調整することができる。
【0069】
図11(a)および
図11(b)は、他の実施形態に係るシャッタ機構を模式的に示す図である。より具体的には、
図11(a)は、他の実施形態に係るシャッタ機構を下面側から眺めた斜視図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示すシャッタ機構の動作の一例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図10を参照して説明された実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0070】
図11(a)に示すシャッタ機構76は、複数のピエゾ素子101から構成されるシャッタ77を有する。複数のピエゾ素子101は、噴出口11bの長手方向に沿って(すなわち、長尺部11aの長手方向に沿って)配列されている。本実施形態では、パッド加熱機11の長尺部11aは、矩形状の断面を有しているが、上述したように、長尺部11aの断面形状はこの例に限定されない。
図11(a)に示すシャッタ77は、ピエゾ素子の逆圧電効果による伸縮動作によってパッド加熱機11の噴射口11bの開度を調整する。
【0071】
各ピエゾ素子101はピエゾ素子ドライバ103に接続されており、ピエゾ素子ドライバ103は制御装置40に接続されている。
図11(a)では、図が煩雑になることを防止するために、いくつかのピエゾ素子101からピエゾ素子ドライバ103まで延びる制御線のみが描かれている。制御装置40は、ピエゾ素子ドライバ103の動作を制御することで、各ピエゾ素子101の伸縮動作を独立して制御することができる(例えば、
図11(b)参照)。ピエゾ素子ドライバ103は、パッド加熱機11の噴射口11bの開度を調整するアクチュエータとして機能する。
【0072】
パッド温度測定器10が上述した温度分布測定器である場合、制御装置40は、研磨パッド3の径方向に沿った研磨パッド3の温度分布(温度プロファイル)を取得することができる。
図12は、研磨パッドの目標温度プロファイル、およびパッド温度測定器によって取得された温度プロファイルの一例を示すグラフである。
図12において、縦軸は、パッド表面温度を表し、横軸は、研磨パッドの径方向位置を表す。
【0073】
研磨後のウエハWの表面全体の面内均一性(平坦度)を精密に制御するためには、温度プロファイルを目標温度に常に一致させておくことが好ましい。そのため、本実施形態では、制御装置40は、パッド温度測定器10によって取得された温度プロファイルが目標温度に一致するように、各ピエゾ素子101の伸縮動作を制御する。例えば、
図12に示すように、制御装置40は、目標温度と測定温度との差Daが大きめの研磨パッド3の位置Paに対応するピエゾ素子101を大きく縮めて、過熱蒸気の噴射量を増大させる。一方で、制御装置40は、目標温度と測定温度との差Dbが小さめの研磨パッド3の位置Pbに対応するピエゾ素子101の伸縮量を減少させて、過熱蒸気の噴射量を位置Paにおける噴射量よりも減少させる。
【0074】
制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいてピエゾ素子ドライバ103の動作(すなわち、各ピエゾ素子101の伸縮量)を制御し、これにより、研磨パッド3の半径方向に沿った噴射口11bの開度を自在に制御する。上述したように、噴射口11bの開度を変化させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する過熱蒸気の流速および温度が変化し、パッド表面温度が変化する。このようなパッド温度制御を行うことで、研磨パッド3全体の温度プロファイルを目標温度に一致させることができる。その結果、ウエハWを精密に研磨することができる。
【0075】
図13は、さらに他の実施形態に係るパッド加熱機11を模式的に示す断面図である。
図13は、パッド加熱機11の長尺部11aの断面を示している。
図13に示すパッド加熱機11は、長尺部11aの内部に配置されたヒータ79を有する。ヒータ79も制御装置40に接続されており、制御装置40は、ヒータ79の動作(例えば、ON/OFF動作)を制御する。ヒータ79によって、過熱蒸気発生器31からパッド加熱機11まで流れてくる間に冷えた過熱蒸気を再び加熱することができる。過熱蒸気の再加熱により、パッド加熱機11で過熱蒸気が結露するなどの不具合が防止される。
【0076】
図14は、さらに他の実施形態にかかるパッド温度調整装置を備えた研磨装置を示す模式図である。
図14は、研磨装置の上面図に相当する。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0077】
図14に示す実施形態では、研磨テーブル2、研磨パッド3、および研磨ヘッド1などの構成要素は、研磨室PRに配置されており、ウエハWの研磨は研磨室PRで行われる。研磨室PRは、4つの隔壁58によって区画された空間であり、その内部の圧力は所定の圧力(例えば、研磨室PRの外部よりも低い圧力)に保たれている。なお、
図14では、4つの隔壁58のうちの3つが描かれている。
【0078】
パッド加熱機11から過熱蒸気を噴射し、パッド冷却機51から冷却ガスを噴射すると、研磨室PRの圧力が所定の圧力よりも上昇し、研磨室PRの設定圧力に対して設けられた許容値を超えるおそれがある。そのため、本実施形態では、パッド温度調整装置5は、研磨室PR内の圧力が所定の値に維持されるように、研磨室PR内の空気を該研磨室PRから吸引する研磨室吸引装置66を備えている。
図14に示す研磨室吸引装置66は、真空ポンプ、吸引ポンプなどの真空装置67と、研磨室PRから延びる研磨室吸引ライン68と、研磨室吸引ライン68に配置されるダンパー69を備えている。
【0079】
制御装置40は、ダンパー69に接続されており、制御装置40は、研磨室PR内の圧力が所定の値に維持されるように、ダンパー69の開度を調整する。例えば、制御装置40は、研磨室吸引ライン68を流れる空気の流量が流量調整器35,54の測定値の合計と同じくなるようにダンパー69の開度を調整する。一実施形態では、制御装置40は、真空装置67にも接続され、研磨室PR内の圧力が所定の値に維持されるように、ダンパー69の開度および/または真空装置67の動作を制御してもよい。
【0080】
図15(a)は、他の実施形態に係る冷却機構のパッド冷却機を示す模式図であり、
図15(b)は、
図15(a)に示すパッド冷却機の断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図4(a)および
図4(b)に示す実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0081】
図15(a)および
図15(b)に示すパッド冷却機51は、噴射口51bを開閉するシャッタ111と、シャッタ111を駆動するアクチュエータ113と、を含むシャッタ機構110をさらに備える。
図15に示す例では、パッド冷却機51の長尺部51aは、矩形状の断面を有し、シャッタ機構110は、全ての噴射口51bの開度を調整可能な一対のシャッタ111を有している。一実施形態では、シャッタ機構110は、全ての噴射口51bの開度を調整可能な1枚のシャッタ111のみを有していてもよい。アクチュエータ113は、例えば、シャッタ111を移動させるピストンを備えたピストンシリンダ装置であってもよく、またはシャッタ111を移動させるモータ(例えば、サーボモータ、またはステッピングモータ)であってもよい。一実施形態では、アクチュエータ113は、ピエゾ素子の逆圧電効果を利用してシャッタ111を移動させるピエゾアクチュエータであってもよい。
【0082】
アクチュエータ113は、制御装置40に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいてパッド加熱機11のアクチュエータ78の動作またはピエゾ素子ドライバ103の動作と、アクチュエータ113の動作(すなわち、噴射口51bの操作量)を制御し、これにより、噴射口11bと噴射口51bの開度を制御する。本実施形態では、噴射口51bの開度は、長手方向に垂直な方向における噴射口51bの幅の大きさに相当する。噴射口11bと噴射口51bの開度を変化させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する過熱蒸気の流速および温度と、冷却ガスの流速および温度が変化し、パッド表面温度が変化する。したがって、噴射口11bと噴射口51bの開度を制御することで、パッド表面温度を精密に調整することができる。
【0083】
図16は、さらに他の実施形態に係る冷却機構のパッド冷却機を模式的に示す断面図である。
図16に示すように、パッド冷却機51は、パッド冷却機51の下部に取り付けられた案内板120を有していてもよい。具体的には、案内板120は、長尺部51aの下部に取り付けられている。案内板120は、長尺部51aの全体にわたって延びる1枚の板体であってもよいし、各噴射口51bに対応して取り付けられた複数の板体であってもよい。案内板120は、その端部に軸120aを有しており、軸120aは、長尺部51aの下面に固定された軸受121に回動自在に取り付けられている。冷却機構50は、案内板120を軸120aまわりに回動させる回動アクチュエータ122をさらに有しており、回動アクチュエータ122は、制御装置40に接続されている。
【0084】
案内板120を回動させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する冷却ガスの位置および量が変わる。その結果、案内板120の回動角度を制御することでも、パッド表面温度を調整することができる。
【0085】
パッド冷却機51が各噴射口51bに対応して取り付けられた複数の案内板120を有している場合は、パッド温度測定器10は、研磨パッド3の径方向に沿った研磨パッド3の温度分布(温度プロファイル)を取得することができる温度分布測定器であるのが好ましい。制御装置40は、パッド温度測定器10が取得した温度プロファイルに基づいて、各案内板120の回動角度を独立して制御することができる。すなわち、制御装置40は、研磨パッド3全体の温度プロファイルが目標温度に一致するように、各案内板120の回動角度を独立して制御することができる。その結果、ウエハWを精密に研磨することができる。
【0086】
図17は、さらに他の実施形態に係る冷却機構のパッド冷却機を示す模式図である。
図17に示すように、パッド温度調整装置5は、パッド冷却機51をその長手方向軸を中心に回転させる回転機構130を有していてもよい。
【0087】
図17に示す回転機構130は、パッド冷却機51の末端に取り付けられ、該パッド冷却機51を回転させる回転アクチュエータ131によって構成される。回転アクチュエータ131は、例えば、サーボモータ、またはステッピングモータである。
【0088】
回転機構130は、制御装置40に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいて回転機構130の動作(すなわち、回転アクチュエータ131の操作量)を制御し、これにより、研磨パッド3の研磨面に対するパッド冷却機51の噴射口51bの向きを変化させることができる。研磨パッド3の研磨面に対するパッド冷却機51の噴射口51bの向きを変化させると、研磨パッド3の研磨面に衝突する冷却ガスの量、および温度が変わる。したがって、研磨パッド3の研磨面に対するパッド冷却機51の回転角度を制御することで、パッド表面温度を調整することができる。
【0089】
上述した実施形態に係るパッド温度調整装置5では、制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいて、過熱蒸気および冷却ガスの温度、流量、噴射量、噴射位置、および噴射範囲の少なくとも1つを制御することで、研磨パッド3の研磨面の温度を制御する。より具体的には、制御装置40は、パッド温度測定器10の測定値に基づいて、流量調整器35,54、過熱蒸気発生器31、上下動機構85、回動機構90、回転機構95、130、シャッタ機構77,110、ヒータ79、混合弁81、および案内板120の動作の少なくとも1つを制御することで、研磨パッド3の研磨面の温度を目標温度に到達させ、該目標温度に維持する。これにより、ウエハWを所望の膜厚まで精密に研磨することができる。特に、シャッタ77が複数のピエゾ素子10から構成される実施形態、およびパッド冷却機51が各噴射口51bに対応して取り付けられた複数の案内板120を有している実施形態では、研磨パッド3全体の温度プロファイルを目標温度に一致させることができる。
【0090】
一実施形態では、制御装置40は、パッド加熱機11から研磨パッド3に、所定の温度に調整された過熱蒸気を一定の流量で供給しつつ、冷却ガスの流量および/または温度を調整することで、パッド表面温度を制御してもよい。
【0091】
一実施形態では、制御装置40は、研磨パッド3の表面温度の制御を開始する際に、一時的に過熱蒸気の流量および/または温度を増大させてもよい。より具体的には、制御装置40は、研磨パッド3の表面温度を目標温度に到達させるために算出された過熱蒸気の流量および/または温度よりも大きな流量および/または温度を有する過熱蒸気をパッド加熱機11に供給する。
【0092】
本明細書では、研磨パッド3の表面温度の制御を開始させる際に、一時的に過熱蒸気の流量および/または温度を増大させる制御動作を、「パッド温調開始動作」と称する。さらに、本明細書では、研磨パッド3の表面温度を目標温度に到達させるために算出された過熱蒸気の流量および温度を、それぞれ「設定流量」および「設定温度」と称する。
【0093】
パッド温調開始動作では、制御装置40は、例えば、流量調整器35の動作を制御して、パッド加熱機11の噴出口11aから噴出する過熱蒸気の流量を設定流量よりも増大させる。あるいは、パッド温調開始動作では、制御装置40は、過熱蒸気発生器31および/またはヒータ79の動作を制御して、パッド加熱機11の噴出口11aから噴出する過熱蒸気の温度を設定温度よりも増大させてもよい。制御装置40は、流量調整器35の動作と、過熱蒸気発生器31および/またはヒータ79の動作とを制御して、パッド加熱機11の噴出口11aから噴出する過熱蒸気の流量および温度を、設定流量および設定温度よりも増大させてもよい。これらの動作により、パッド表面温度を素早く目標温度に到達させることができる。
【0094】
図18は、パッド温調開始動作の一例を説明するためのグラフである。
図18に示すグラフでは、縦軸はパッド表面温度を表し、横軸は時間を表す。
図18において、目標温度は、水平な実線で描かれており、パッド温調開始動作を行った場合のパッド表面温度の変化は、一点鎖線で描かれている。
図18において、2点鎖線で描かれた曲線は、パッド温調開始動作を行わなかった場合のパッド表面温度の変化である。
図18における点Tsは、パッド温度調整装置5が研磨パッド3の温度調整を開始した時点を表している。
【0095】
上述したように、パッド温調開始動作では、一時的に過熱蒸気の流量および/または温度を、設定流量および/または設定温度よりも増大させる。
図18に示すグラフでは、過熱蒸気の流量を設定流量よりも増大させている。以下では、設定流量よりも大きな流量で過熱蒸気を噴出させるパッド温調開始動作が説明される。設定温度よりも大きな温度で過熱蒸気を噴出させるパッド温調開始動作も、同様の制御動作で行うことができる。
【0096】
図18に示すように、制御装置40は、パッド温調開始動作の最長実行時間を定める設定時間Taを予め記憶している。上記した設定流量および設定時間Taは、任意に定めることができる。例えば、設定時間Taは、パッド温調開始動作を実行しない状態で、パッド加熱機11の噴射口11aから所定流量の過熱蒸気を研磨パッド3の研磨面に噴射する実験から得てもよい。この実験では、研磨パッド3の温度調整を開始してから、パッド表面温度が目標温度に到達するまでの時間を計測し、計測された時間を設定時間Taに決定する。
【0097】
制御装置40は、研磨パッド3の温度調整開始(すなわち、時間Ts)から設定時間Taに到達するまでの間にパッド表面温度を目標温度に到達させるための過熱蒸気の流量を算出する。制御装置40は、パッド温調開始動作を実行するために、算出された過熱蒸気の流量よりも大きな流量で過熱蒸気をパッド加熱機11の噴射口11aから噴射させる。これにより、パッド表面温度がいち早く目標温度に到達するため、ウエハWの研磨条件を最適条件にいち早く到達させることができる。
【0098】
パッド温調開始動作の実行中、制御装置40は、冷却機構50および吸引機構60の動作を停止させている。パッド表面温度が目標温度に到達した時点(
図18における時点Tb参照)で、制御装置40は、パッド温調開始動作を終了させ、パッド表面温度を目標温度に維持するための通常のパッド温度調整制御を開始する。より具体的には、制御装置40は、冷却機構50および吸引機構60の動作を開始させ、上述した過熱蒸気および冷却ガスの温度、流量、噴射量、噴射位置、および噴射範囲の少なくとも1つを制御する通常制御を開始する。これにより、パッド表面温度が目標温度を超えてしまう現象であるオーバシュートを極力抑制することができる。
【0099】
パッド表面温度が目標温度に到達せずに、時間Tsから計測されるパッド温調開始動作の経過時間が設定時間Taに到達した場合も、制御装置40は、過熱蒸気および冷却ガスの温度、流量、噴射量、噴射位置、および噴射範囲の少なくとも1つを制御する通常制御を開始する。一実施形態では、制御装置40は、パッド温度調整装置5に異常が発生していると判断して、ウエハWの研磨処理を停止してもよい。
【0100】
図19は、さらに他の実施形態にかかるパッド温度調整装置を備えた研磨装置を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0101】
図19に示すパッド温度調整装置5は、研磨パッド3の側方の待避位置でパッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61を洗浄する洗浄装置45を備えている。制御装置40は、洗浄装置45に接続されており、該洗浄装置45の動作を制御する。なお、
図19では、パッド温度調整装置5のパッド加熱機11、パッド冷却機51、吸引ノズル61、および洗浄装置45のみが描かれており、その他の構成要素の図示は省略されている。
【0102】
本実施形態では、パッド温度調整装置5は、上述した回動機構90を備えており、制御装置40は、回動機構90の回動アクチュエータ92(
図8(a)参照)を動作させて、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61を、
図3(c)に示す初期位置から
図19に示す待避位置に移動させる。
【0103】
洗浄装置45は、待避位置に移動したパッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61に洗浄液(例えば、純水)を上方および下方から噴射する複数のスプレー46を備えている。制御装置40は、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61が待避位置に移動した後で、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61にスプレー46から洗浄液を噴射する。この動作によって、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61に付着した汚れが洗浄される。
【0104】
パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61の洗浄が完了すると、制御装置40は、回動機構90の動作を制御して、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61を初期位置(
図3(c)参照)に移動させる。初期位置に移動したパッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61から、研磨パッド3に洗浄液の液滴が落下すると、研磨液(スラリー)の濃度が変わり、研磨性能に悪影響を与えるおそれがある。そこで、本実施形態では、洗浄装置45は、洗浄液での洗浄後のパッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61に気体(例えば、空気、窒素、またはアルゴン)を吹き付ける複数のノズル47を有していてもよい。
【0105】
ノズル47から吹き付けられた気体によって、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61に付着した洗浄液を吹き飛ばし、パッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61を乾燥させることができる。この乾燥処理によって、初期位置に移動したパッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61から、研磨パッド3に洗浄液の液滴が落下することを防止できる。一実施形態では、スプレー46が洗浄液とは別に気体をパッド加熱機11、パッド冷却機51、および吸引ノズル61に吹き付ける機能を有していてもよい。
【0106】
上述した実施形態では、パッド温度調整装置5は、パッド加熱機11だけでなく、冷却機構50および吸引機構60を備えている。しかしながら、パッド温度調整装置5は、パッド冷却機51、および吸引ノズル61のいずれか一方、または両方を省略してもよい。パッド冷却機51、および吸引ノズル61のいずれか一方、または両方が省略される場合、パッド温度調整装置5は、上述した上下動機構85、回動機構90、および回転機構95の少なくとも1つを有しているのが好ましい。これら機構85,90,95によって、パッド表面温度の微細な調整が可能となる。
【0107】
図20は、他の実施形態に係る加熱流体供給システムと冷却流体供給システムとを示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0108】
図20に示す加熱流体供給システム30は、過熱蒸気供給ライン32に配置された温度計71と、ガス供給ライン34に配置された流量計72および流量調整器73(例えば、流量調整弁)とを備える。温度計71は、制御装置40に接続され、制御装置40に過熱蒸気の温度の測定値を送信する。流量計72および流量調整器73も制御装置40に接続される。流量計72は、ガス供給ライン34を流れるガスの流量の測定値を制御装置40に送信し、制御装置40は、流量調整器73の動作を制御する。
【0109】
本実施形態では、制御装置40は、パッド温度測定器10によって測定されたパッド表面温度に基づいて、過熱蒸気発生器31で加熱される蒸気の温度を算出する。制御装置40は、過熱蒸気供給ライン32を流れる過熱蒸気の温度が算出された蒸気の温度に一致するように、過熱蒸気発生器31の動作を制御する。
【0110】
制御装置40は、過熱蒸気発生器31の動作の制御に加えて、またはこれに代えて、パッド温度測定器10によって測定されたパッド表面温度に基づいて、流量調整器73の動作を制御してもよい。この場合、制御装置40は、過熱蒸気発生器31で加熱される蒸気の温度および/またはガス供給ライン34を流れるガスの流量を算出する。制御装置40は、過熱蒸気供給ライン32を流れる過熱蒸気の温度が算出された蒸気の温度に一致するように、および/またはガス供給ライン34を流れるガスの流量が算出されたガスの流量に一致するように、過熱蒸気発生器31の動作および/または流量調整器73の動作を制御する。
【0111】
図21は、さらに他の実施形態に係る加熱流体供給システムを示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態の加熱流体供給システムと同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0112】
図21に示す加熱流体供給システムは、排気ライン36が接続される排液タンク37を有する。排液タンク37には、水供給ライン33から分岐した水分岐ライン38も接続されており、水分岐ライン38には弁39が配置されている。弁39を開くと、常温の水が排液タンク37に供給される。
【0113】
排液タンク37には、排気ライン36を通って流れた余剰の過熱蒸気が供給され、排液タンク37内で凝縮して水に戻る。余剰の過熱蒸気を効率よく凝縮させるために、排液タンク37には、水分岐ライン38を通って常温の水が供給され、排液タンク37内の雰囲気温度を低下させる。排液タンク37の底部には、ドレインライン83が接続されており、過熱蒸気からの凝縮水はドレインライン83を通って研磨装置から排出される。
【0114】
図示はしないが、水分岐ライン38を省略して、ドレインライン83を過熱蒸気発生器31に接続してもよい。この場合、排水タンク37に貯留された高温の水が過熱蒸気発生器31に供給され、再度過熱蒸気の生成に利用される。この構成によれば、過熱蒸気発生器31の省エネ運転が期待できる。
【0115】
図22は、他の実施形態に係る冷却流体供給システム50と吸引機構60の組み合わせを示す模式図である。
図22に示す吸引機構60の真空源63はエゼクタである。真空源63には、冷却流体供給システム52の冷却ガス供給ライン53から分岐したガス分岐ライン55が接続され、真空源63の駆動流体は、ガス分岐ライン55を通って真空源63に供給された常温のガスである。ガス分岐ライン55には、駆動流体の流量を調整する流量調整器74(例えば、流量調整弁)が配置されている。このような構成で真空源63のランニングコストを低減することができる。
【0116】
図23は、他の実施形態に係る加熱流体供給システム30、冷却流体供給システム50、および吸引機構60の組み合わせを示す模式図である。特に説明しない実施形態は、
図21および
図22を参照して説明された実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0117】
図23に示す冷却流体供給システム50は、エゼクタである真空源63に駆動流体を供給するためのガス分岐ライン55とは異なるガス分岐ライン56が冷却ガス供給ライン53から分岐される。以下の説明では、ガス分岐ライン55を第1分岐ライン55と称し、ガス分岐ライン56を第2分岐ライン56と称する。
【0118】
第2分岐ライン56は、排気ライン36に接続される。第2分岐ライン56を排気ライン36まで流れてきた常温のガスは、排気ライン36で余剰の過熱蒸気と混合され、過熱蒸気を冷却する。したがって、排液タンク37には、冷却された過熱蒸気と、過熱蒸気から凝縮した水が供給される。
【0119】
排液タンク37にはガス放出ライン41が接続されており、ガス放出ライン41は、エゼクタである真空源63の排出ライン65に連結される。排気ライン36から排液タンク37まで流れてきた気体は、ガス放出ライン41を通って排出ライン65に流れ込み、排出ライン65を介して研磨装置から排出される。
【0120】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0121】
1 研磨ヘッド
2 研磨テーブル
3 研磨パッド
9 加熱機構
10 パッド温度測定器
11 パッド加熱機
30 加熱流体供給システム
31 過熱蒸気発生器
32 過熱蒸気供給ライン
35 流量調整器
40 制御装置
50 冷却機構
51 パッド冷却機
52 冷却流体供給システム
53 冷却ガス供給ライン
54 流量調整器
60 吸引機構
61 吸引ノズル
62 吸引ライン
63 真空源(真空装置)
64 流量調整器