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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170716
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20221102BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20221102BHJP
   C04B 35/48 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C04B35/488
C01G25/00
C04B35/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071727
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021076347
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 浩之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】永山 仁士
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC05
4G048AD04
4G048AE05
(57)【要約】
【課題】
焼結に要する時間を短縮しうる、大気雰囲気での常圧焼結による焼結体の製造方法でありながら、焼結に5時間以上の時間を必要とする常圧焼結で得られる焼結体と、同等の色調と視認される焼結体を得ることができる製造方法を提供する
【解決手段】
着色元素を含有するジルコニアの焼結体を、600℃以上1200℃以下で熱処理する工程、を有すること、を特徴とする焼結体の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色元素を含有するジルコニアの焼結体を、600℃以上1200℃以下で熱処理する工程、を有すること、を特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記着色元素を含有するジルコニアの焼結体が、常圧焼結で焼結された状態の焼結体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記着色元素を含有するジルコニアの焼結体が、酸化雰囲気で焼結された状態の焼結体である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理が、600℃以上1200℃以下のいずれかの熱処理温度で保持する熱処理である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理温度の温度幅が±50℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理温度における保持時間が2時間未満である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理の雰囲気が、酸化雰囲気である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理をする工程が、熱処理温度に加熱された状態の焼成炉に着色元素を含有するジルコニアの焼結体を配置し、これを熱処理する工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理をする工程に先立ち、着色ジルコニアを酸化雰囲気で焼結して着色元素を含有するジルコニアの焼結体を得る工程、を有する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理をする工程が、焼結温度で保持後、熱処理温度まで降温して該熱処理温度で保持して熱処理する工程である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理をする工程で得られる焼結体が、該工程に供する着色元素を含有するジルコニアの焼結体に比べて明度の差が5以下であり、なおかつ、彩度が0.3以上高い、若しくは、明度の差が5超え、なおかつ、彩度の差が10以下、の少なくともいずれかである着色ジルコニア焼結体である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項12】
前記着色元素が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ジルコニアが、安定化元素を含有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ジルコニアが、少なくともイットリウムを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項15】
前記着色元素を含有するジルコニアの焼結体がアルミナ(Al)を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、着色元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法、特に大気圧下での焼結により得られる、着色元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着色元素を含有するジルコニアの焼結体は、構造材等の従来からの用途に加え、携帯電子機器の外部材などの装飾部材、歯科補綴物などの歯科材料といった、審美性を求められる用途への適用が急速に広がっている。
【0003】
組成制御の容易性及び製造コストの観点から、着色元素を含有するジルコニアの焼結体の製造は、製造が困難な場合を除き、大気雰囲気、大気圧下で、焼結温度(最高到達温度)まで昇温し、該焼結温度で数時間保持した後、室温付近まで降温する焼結方法、いわゆる大気雰囲気での常圧焼結、により行われている(例えば、特許文献1及び2)。ジルコニアの焼結には、1400~1600℃の温度を必要とするため、通常、常圧焼結を適用する焼結サイクルには5時間以上の時間を必要とする。
【0004】
近年、ジルコニアの焼結体の製造において、焼結温度(最高到達温度)での保持を十数分から1時間未満とする常圧焼結(以下、「短時間焼結」ともいう。)を可能とする焼結炉(焼結窯)が製品化され始めている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-026990号
【特許文献2】国際公開2020/196650号
【特許文献3】国際公開2012/057829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示では、焼結に要する時間を短縮しうる、大気雰囲気での常圧焼結による焼結体の製造方法でありながら、焼結に5時間以上の時間を必要とする常圧焼結(以下、「長時間焼結」ともいう。)で得られる焼結体と、同等の色調と視認される焼結体を得ることができる製造方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、長時間焼結及び短時間焼結は、いずれも、同様な大気雰囲気での焼結であるにも関わらず、長時間焼結で使用されるジルコニアの組成物を、そのまま短時間焼結で使用すると、得られる焼結体の審美性、特に色調、が長時間焼結で得られる焼結体と大きく相違するという課題を見出した。さらに、短時間焼結で得られた着色ジルコニアの焼結体に特定の処理を施すことにより、従来の長時間焼結に対して十分に短い作製時間でありながら、長時間焼結で得られる着色ジルコニアの焼結体と比べ、視認による審美性が同等の焼結体が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は特許請求の範囲の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] 着色元素を含有するジルコニアの焼結体を、600℃以上1200℃以下で熱処理する工程、を有すること、を特徴とする焼結体の製造方法。
[2] 前記着色元素を含有するジルコニアの焼結体が、常圧焼結で焼結された状態の焼結体である、上記[1]に記載の製造方法。
[3] 前記着色元素を含有するジルコニアの焼結体が、酸化雰囲気で焼結された状態の焼結体である、上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記熱処理が、600℃以上1200℃以下のいずれかの熱処理温度で保持する熱処理である、上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[5] 前記熱処理温度の温度幅が±50℃である、上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[6] 前記熱処理温度における保持時間が2時間未満である、上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[7] 前記熱処理の雰囲気が、酸化雰囲気である、上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[8] 前記熱処理をする工程が、熱処理温度に加熱された状態の焼成炉に着色元素を含有するジルコニアの焼結体を配置し、これを熱処理する工程である、上記[1]乃至[7]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[9] 前記熱処理をする工程に先立ち、着色ジルコニアを酸化雰囲気で焼結して着色元素を含有するジルコニアの焼結体を得る工程、を有する、上記[1]乃至[7]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[10] 前記熱処理をする工程が、焼結温度で保持後、熱処理温度まで降温して該熱処理温度で保持して熱処理する工程である、上記[1]乃至[7]、及び[9]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[11] 前記熱処理をする工程で得られる焼結体が、該工程に供する着色元素を含有するジルコニアの焼結体に比べて明度の差が5以下であり、なおかつ、彩度が0.3以上高い、若しくは、明度の差が5超え、なおかつ、彩度の差が10以下、の少なくともいずれかである着色ジルコニア焼結体である、上記[1]乃至[10]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[12] 前記着色元素が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1以上である、上記[1]乃至[11]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[13] 前記ジルコニアが、安定化元素を含有する、上記[1]乃至[12]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[14] 前記安定化元素が、少なくともイットリウムを含む、上記[13]に記載の製造方法。
[15] 前記ジルコニアが、少なくともイットリウムを含む、上記[1]乃至[14]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[16] 前記着色元素を含有するジルコニアの焼結体がアルミナ(Al)を含む、上記[1]乃至[15]のいずれかひとつに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、焼結に要する時間を短縮しうる大気雰囲気での常圧焼結による焼結体の製造方法でありながら、長時間焼結で得られる焼結体と、同等の色調と視認される焼結体を得ることができる製造方法を提供すること、ができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示について実施形態の一例を示して説明する。本実施形態で使用される主な用語は以下の通りである。
【0011】
「着色元素を含有するジルコニア」とは、本質的に着色元素とジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO)とからなる組成物であり、例えば、着色元素とジルコニアを含む粉末、顆粒粉末、成形体、仮焼体及び焼結体の群から選ばれる1以上が挙げられ、好ましくは、着色元素を含有し、ジルコニアをマトリックス(母材)とする粉末、顆粒粉末、成形体、仮焼体及び焼結体の群から選ばれる1以上である。
【0012】
「組成物」とは、特定の組成を有する物質であり、例えば、粉末、顆粒粉末、成形体、仮焼体及び焼結体の群から選ばれる1以上が挙げられる。「ジルコニア組成物」とは、本質的にジルコニアからなる組成物、更にはジルコニアをマトリックス(母材)とする組成物であり、「着色ジルコニア組成物」とは着色元素を含有するジルコニア組成物である。
【0013】
「粉末」とは、複数の粉末粒子の集合体で、なおかつ、流動性を有する組成物である。「ジルコニア粉末」とは、本質的にジルコニアからなる粉末、更にはジルコニアをマトリックス(母材)とする粉末であり、「着色ジルコニア粉末」とは着色元素を含有するジルコニア粉末である。
【0014】
「顆粒粉末」とは、粉末粒子の凝集物の集合体で、なおかつ、流動性を有する組成物であり、特に粉末と比べ流動性が高い状態の組成物である。「ジルコニア顆粒粉末」とは、本質的にジルコニアからなる顆粒粉末、更にはジルコニアをマトリックス(母材)とする顆粒粉末であり、「着色ジルコニア顆粒粉末」とは着色元素を含有するジルコニア顆粒粉末である。
【0015】
「成形体」とは、物理的な力で凝集した粉末粒子から構成された一定の形状を有する組成物であり、特に熱処理が施されていない状態の組成物である。「ジルコニア成形体」とは、本質的にジルコニアからなる成形体、更にはジルコニアをマトリックス(母材)とする成形体であり、「着色ジルコニア成形体」とは、着色元素を含有するジルコニア成形体である。また、成形体は「圧粉体」と互換的に使用される。
【0016】
「仮焼体」とは、融着粒子から構成された一定の形状を有する組成物であり、焼結温度未満の温度で熱処理された状態の組成物である。「ジルコニア仮焼体」とは、本質的にジルコニアからなる仮焼体、更にはジルコニアをマトリックス(母材)とする仮焼体であり、「着色ジルコニア仮焼体」とは着色元素を含有するジルコニア仮焼体である。また、仮焼体は「予備焼結体」、「半焼結体」と互換的に使用される。
【0017】
「焼結体」とは、結晶粒子から構成される組成物であり、焼結温度以上の温度で熱処理された状態の組成物である。「ジルコニア焼結体」とは、本質的にジルコニアからなる焼結体、更にはジルコニアをマトリックス(母材)とする焼結体であり、「着色ジルコニア焼結体」とは着色元素を含有するジルコニア焼結体である。
【0018】
「安定化元素」とは、ジルコニアに固溶することで、ジルコニアの結晶相を安定化する機能を有する元素であり、「着色元素」とは、ジルコニアを着色する機能を有する元素である。また、安定化元素及び着色元素の両方の機能を有する元素を「着色安定化元素」ともいう。
【0019】
ジルコニア組成物において、「安定化元素量」はジルコニアと酸化物換算した安定化元素の合計に対する安定化元素のモル割合[mol%]であり、「着色元素量」は酸化物換算したジルコニア組成物の質量[g]に対する酸化物換算した着色元素の質量[g]の割合[質量%]であり、「添加成分量」は酸化物換算したジルコニア組成物の質量[g]に対する、酸化物換算した添加成分の質量[g]の割合[質量%]である。例えば、添加成分としてアルミナを含み、着色元素として鉄及びチタンを含み、着色安定化元素としてテルビウムを含み、なおかつ、安定化元素としてイットリウムを含有するジルコニア組成物において、安定化元素量は{(Tb+Y)[mol]/(Tb+Y+ZrO)[mol]}×100から、着色元素量は{(Fe+Tb+TiO)}[g]/(Fe+Tb+Y+ZrO+Al+TiO)[g]}×100から、また、添加成分量は{(Al)[g]/(Fe+Tb+Y+ZrO+Al+TiO)[g]}×100から、それぞれ、求められる。なお、ジルコニア組成物の組成の算出において、不可避不純物であるハフニア(HfO)は、ジルコニア(ZrO)とみなせばよい。
【0020】
「BET比表面積」は、JIS Z 8830に準じ、吸着物質を窒素(N)としたBET法1点法により求められる値である。
【0021】
「実測密度」とは、成形体及び仮焼体については、質量測定で測定される質量に対する寸法測定から求められる体積の割合(g/cm)であり、一方、焼結体については、質量測定で測定される質量に対する、アルキメデス法で測定される体積の割合(g/cm)である。
【0022】
「XRDパターン」とは、以下の条件で測定される着色ジルコニアの粉末X線回折パターンである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : 連続スキャン
スキャンスピード : 4°/分
測定範囲 : 2θ=26°~33°
加速電圧・電流 : 40mA・40kV
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra)
フィルター : Niフィルター
ゴニオメータ半径 : 185mm
【0023】
XRD測定は、一般的なX線回折装置(例えば、Ultima IV、RIGAKU社製)を使用して行えばよい。各結晶面の面積強度は、平滑化処理及びバックグラウンド除去処理後のXRDパターンを、分割擬Voigt関数によりプロファイルフィッティングすることで求めればよい。平滑化処理やバックグラウンド処理、及び、面積強度の算出などのXRDパターンの解析は、X線回折装置付属の解析プログラム(例えば、統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL Ver.2.2、RIGAKU社製)などを使用して行えばよい。
【0024】
上述のXRD測定において測定されるジルコニアの各結晶面に相当するXRDピークとして、以下の2θにピークトップを有するXRDピークであることが挙げられる。
【0025】
単斜晶(111)面に相当するXRDピーク : 2θ=31±0.5°
単斜晶(11-1)面に相当するXRDピーク: 2θ=28±0.5°
正方晶(111)面に相当するXRDピーク : 2θ=30±0.5°
立方晶(111)面に相当するXRDピーク : 2θ=30±0.5°
正方晶(111)面に相当するXRDピーク、及び、立方晶(111)面に相当するXRDピークは、重複したひとつのピークとして測定される。
【0026】
「色調」とは、試料厚み1mm及び表面粗さ(Ra)≦0.02μmの測定試料について、JIS Z 8722の幾何条件cに準拠した照明及び受光光学系を備えた分光測色計(例えば、CM-700d、コニカミノルタ社製)を使用し、以下の条件の黒バック測定により測定されるCIE L表色系(CIE 1976(L)色空間)における明度L、色相a及びbで表現される色調である。
光源 : D65光源
視野角 : 10°
測定方式 : SCI
測定背景 : 黒色板
【0027】
「彩度」とは、色調の鮮やかさを示す指標のひとつであり、色相a及びbから以下の式により求められる値である。
=(a*2+b*20.5
【0028】
上式において、Cは彩度であり、a及びbは、それぞれ、色相a及びbである。
【0029】
「色差」とは、基準となる着色ジルコニアの色調と、対象となる着色ジルコニアの色調との差であり、以下の式から求められる値である。
△E={(L1-L2+(a1-a2+(b1-b20.5
【0030】
上式において、△Eは色差であり、L1、a1及びb1は、それぞれ、基準となる着色ジルコニアの明度L、色相a及びbである。また、L2、a2及びb2は、それぞれ、対象となる着色ジルコニアの明度L、色相a及びbである。
【0031】
「全光線透過率」とは、試料厚み1mm及び表面粗さ(Ra)≦0.02μmの測定試料について、一般的な濁度計(ヘーズメーター;例えば、NDH4000、NIPPON DENSHOKU製)を使用し、CIE標準光源D65の光を入射光として該測定試料に透過し、該入射光に対する、積分球により集光することで測定される透過光の透過率(拡散透過率及び直線透過率の合計)の割合である。
【0032】
「透過率差」とは、基準となる着色ジルコニアの全光線透過率に対する、対象となる着色ジルコニアの全光線透過率の差の割合であり、以下の式から求められる値である。
【0033】
△T={(T1-T2)0.5
上式において、△Tは透過率差であり、T1は基準となる着色ジルコニアの全光線透過率、及び、T2は対象となる着色ジルコニアの全光線透過率である。
【0034】
「常圧焼結」とは、焼結時に被焼結物(成形体や仮焼体など)に対して外的な力を加えずに加熱する焼結であり、特に大気圧下での焼結である。
【0035】
「加圧焼結」とは、ホットプレス処理(HP処理)や熱間静水圧プレス処理(HIP処理)など、焼結時に被焼結物に対して外的な力を加えながら加熱する焼結である。
【0036】
本実施形態は、着色元素を含有するジルコニアの焼結体を、600℃以上1200℃以下で熱処理する工程(以下、「熱処理工程」ともいう。)、を有すること、を特徴とする焼結体の製造方法、である(以下、本実施形態において、熱処理工程に供する着色元素を含有するジルコニアの焼結体を、便宜上、「前駆焼結体」ともいう。)。従来の焼結は、焼結温度で保持することで、着色元素を含有するジルコニア(着色ジルコニア)を緻密化すると同時に、所望の色調とさせていた。これに対し、本実施形態においては、短時間焼結では、長時間焼結と同様な着色ジルコニアの緻密化を進行させることができる一方で、色調変化が長時間焼結とは異なることに着目した。さらに、本実施形態においては、焼結後の着色ジルコニアに緻密化現象を伴わない熱処理を施すことで、着色ジルコニアの呈色がより促進されやすくなり、長時間焼結で得られる着色ジルコニアの焼結体と同等な審美性と視認され得る焼結体が得られることを見出した。
【0037】
ジルコニアの主な焼結雰囲気として、酸化雰囲気、還元雰囲気又は真空雰囲気が知られている。従来から、ジルコニアの焼結において、残留炭素や還元状態の金属元素などの還元物質の除去を目的とし、還元雰囲気で焼結された焼結体を、酸化雰囲気で熱処理すること(いわゆる、焼き戻し)が知られている。成形体及び仮焼体の少なくともいずれかの焼結雰囲気と異なる雰囲気で焼結する焼き戻しは異なり、本実施形態における熱処理は、焼き戻しとは異なる作用を奏する熱処理であり、好ましくは、焼結雰囲気と同じ雰囲気による熱処理、より好ましくは大気雰囲気で焼結された状態の着色ジルコニアの焼結体に対する大気雰囲気での熱処理である。このような熱処理を施すことで着色ジルコニアの呈色がより促進されると考えられる。
【0038】
<着色ジルコニア焼結体>
熱処理工程には、着色元素を含有するジルコニアの焼結体(着色ジルコニア焼結体;前駆焼結体)を供する。前駆焼結体は、酸化雰囲気で焼結された状態の焼結体であることが好ましく、また、常圧焼結で焼結された状態の焼結体、いわゆる常圧焼結体、であることが好ましい。更に、前駆焼結体は大気雰囲気の常圧焼結で焼結された状態の焼結体(大気雰囲気で焼結された状態の常圧焼結体)であり、また更には焼結温度での保持時間が2時間以下の大気雰囲気の常圧焼結で焼結された状態の焼結体であり、また更には焼結温度での保持時間が2時間未満の大気雰囲気の常圧焼結で焼結された状態の焼結体であることが好ましい。
【0039】
前駆焼結体は、その表面に陶材を有さないことが好ましい。
【0040】
なお、以下に示す着色ジルコニア焼結体の特徴は、本実施形態の製造方法において、熱処理工程に供する着色ジルコニア焼結体(前駆焼結体)と、熱処理工程後に得られる焼結体(着色ジルコニア焼結体。以下、便宜上「熱処理焼結体」もいう。)と、で共通していてもよい。
【0041】
着色元素は、遷移金属元素及びランタノイド系希土類元素の少なくともいずれか、更にはジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)以外の遷移金属元素、並びに、ランタノイド系希土類元素、が挙げられる。好ましい着色元素として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1以上、更には鉄、コバルト、チタン、マンガン、プラセオジウム、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上、また更には鉄、コバルト、チタン、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上、が例示でき、少なくとも鉄又はテルビウムを含むことが好ましく、少なくともテルビウムを含むことがより好ましい。
【0042】
着色ジルコニアが含有する着色元素の形態は任意である。着色元素はイオン及び化合物の少なくともいずれかとして含有されること、が挙げられる。また、着色元素はジルコニアに固溶することで、これに含有されていてもよい。
【0043】
着色ジルコニアは、着色元素として、鉄、テルビウム及びプラセオジウムの群から選ばれる1以上(以下、「黄色系着色元素」ともいう。)、及び、ネオジム及びエルビウムの少なくともいずれか(以下、「赤色系着色元素」ともいう。)を含むことが好ましく、黄色系着色元素、赤色系着色元素、並びに、コバルト、チタン及びマンガンの群から選ばれる1以上(以下、「灰色系着色元素」ともいう。)を含むことがより好ましい。着色元素として、これらの着色元素を組合せて含むことで、着色ジルコニアが視認した場合に自然歯に近い印象を与えやすくなる。
【0044】
また、着色ジルコニアは、着色元素として、黄色系着色元素及び灰色系着色元素を含んでいてもよく、また、灰色系着色元素及び赤色系着色元素を含んでいてもよい。
【0045】
ジルコニアは、安定化元素を含有することが好ましい。安定化元素は、好ましくはイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、セリウム、マグネシウム(Mg)、プラセオジウム、イッテルビウム、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上、更にはイットリウム、セリウム、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上、また更にはイットリウム、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上、また更にはイットリウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上、また更にはイットリウムである。また、安定化元素は、少なくともイットリウムを含むことが好ましい。
【0046】
ジルコニアは、安定化元素を含むことが好ましく、イットリウム、カルシウム、セリウム、マグネシウム、プラセオジウム、イッテルビウム、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上を含むことがより好ましく、イットリウム、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上を含むことが更に好ましく、イットリウム及びテルビウムの少なくともいずれかを含むことがより更に好ましく、少なくともイットリウムを含むことが特に好ましい。
【0047】
セリウム、プラセオジウム、イッテルビウム、テルビウム及びエルビウムの群から選ばれる1以上、更にはテルビウム及びエルビウムの少なくともいずれか、また更にテルビウムは、着色元素としても機能する安定化元素(着色安定化元素)である。着色ジルコニアは、着色元素として着色安定化元素のみを含有していてもよく、また、着色安定化元素以外の着色元素を含有していてもよい。熱処理工程を経ることにより得られる着色ジルコニア焼結体の色調を所望の色調とした上で、ジルコニアの結晶相を安定化させるため、着色ジルコニアは、着色安定化元素と、着色元素として機能しない安定化元素(以下、「無着色安定化元素」ともいう。)と、を含んでいてもよい。無着色安定化元素として、例えば、イットリウム、カルシウム及びマグネシウムの群から選ばれる1以上、更にはイットリウム、が挙げられる。
【0048】
着色ジルコニアにおいて、ジルコニアの安定化元素の含有量は、ジルコニアの結晶相が安定化する量であればよく、0.1mol%以上10mol%以下であることが挙げられる。安定化元素がイットリウムである場合、安定化元素の含有量(以下、安定化元素がイットリウム等である場合は、それぞれ「イットリウム量」等ともいう。)は、2.5mol%以上、3mol%以上、3.5mol%以上、4mol%以上又は5mol%以上であり、また、8mol%以下、7mol%以下、6mol%以下又は5.5mol%以下であることが挙げられる。同様に、エルビウム量は、0mol%以上、0.03mol%以上又は0.1mol%以上であり、また、0.62mol%以下又は0.41mol%以下であることが挙げられる。テルビウム量は、0mol%以上、0.001mol%以上又は0.002mol%以上であり、また、0.04mol%以下、0.02mol%以下又は0.01mol%以下であることが挙げられる。
【0049】
着色ジルコニア焼結体は、必要に応じ、着色及び安定化以外の機能を有する成分(以下、「添加成分」ともいう。)を含んでいてもよい。添加成分として、アルミナ(Al)が例示できる。
【0050】
焼結体が劣化しにくくなる傾向があるため、着色ジルコニア焼結体は、アルミナを含有していてもよい。該焼結体のアルミナの含有量(以下、添加成分がアルミナ等の場合の添加成分量をそれぞれ「アルミナ量」等ともいう。)は0質量%以上、0質量%超、0.01質量%以上又は0.02質量%以上であり、また、0.1質量%以下又は0.06質量%以下であることが挙げられる。着色ジルコニア焼結体はアルミナを含まなくてもよい(すなわち、アルミナ含有量が0質量%であってもよい)。
【0051】
着色ジルコニア焼結体は、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物として、ジルコニアの不可避不純物であるハフニア(HfO)が挙げられる。
【0052】
着色ジルコニア焼結体は、安定化元素の酸化物、すなわち未固溶の安定化元素、を含まないことが好ましく、未固溶のイットリア(Y)を含有しないことがより好ましい。焼結体に未固溶の安定化元素が含有されているか否かは、そのXRDパターンにより確認することができる。すなわち、着色ジルコニア焼結体のXRDパターンに安定化元素の酸化物(例えば、イットリア;Y)のXRDピークが含まれる場合、該焼結体に未固溶の安定化元素が含有されている、とみなすことができる。着色ジルコニア焼結体の特性に実質的な影響を与えないため、本実施形態において、着色ジルコニア焼結体がXRDパターンで確認できない程度の未固溶の安定化元素を含有することは許容され得る。
【0053】
着色ジルコニア焼結体の形状は、目的や用途に応じた任意の形状であればよく、例えば、円板状、円柱状、多面体状、球状、錐体状などが挙げられる。
【0054】
<焼結工程>
熱処理工程に供する着色ジルコニア焼結体(前駆焼結体)は、任意の製造方法で得られた焼結体であればよいが、着色ジルコニアを酸化雰囲気で焼結して得られる焼結体、更には着色ジルコニアを常圧焼結で焼結して得られる焼結体であることが好ましく、また更には着色ジルコニアを大気雰囲気の常圧焼結で焼結して得られる焼結体であることが好ましく、着色ジルコニアを1400℃以上の焼結温度で2時間未満保持して焼結して得られる、着色元素を含有するジルコニアの焼結体であることがより好ましい。
【0055】
換言すると、本実施形態の製造方法は、熱処理工程に先立ち、着色元素を含有するジルコニア(着色ジルコニア)を焼結する工程(以下、「焼結工程」ともいう。)、更には着色ジルコニアを酸化雰囲気で焼結して着色ジルコニアの焼結体を得る工程、更には着色ジルコニアを常圧焼結で焼結して着色ジルコニアの焼結体を得る工程、を有していてもよく、また更には着色ジルコニアを大気雰囲気の常圧焼結で焼結して着色ジルコニアの焼結体を得る工程、また更には着色ジルコニアを1400℃以上の焼結温度で2時間未満保持して焼結して着色元素を含有するジルコニアの焼結体を得る工程、を有していてもよい。
【0056】
焼結温度が高くなるに従い、着色ジルコニアの緻密化が促進される傾向がある。焼結温度は、着色ジルコニアの緻密化が進行する温度であればよく、1400℃以上、1450℃以上、1500℃以上又は1550℃以上であることが好ましい。着色ジルコニアの緻密化が促進されれば、焼結温度は必要以上に高い必要は無く、焼結温度として、1650℃以下又は1600℃以下が例示できる。
【0057】
焼結温度での保持は2時間未満、1時間未満、30分以下又は20分以下であることが好ましく、また、1分以上、5分以上又は10分以上であることが好ましい。
【0058】
焼結の雰囲気は、酸化雰囲気、更には大気雰囲気であることが好ましい。
【0059】
焼結の方法は任意であるが、真空焼結、加圧焼結及び常圧焼結の群から選ばれる1以上が挙げられ、加圧焼結及び常圧焼結の少なくともいずれか、更には常圧焼結、また更には常圧焼結のみであること、が好ましい。焼結工程は加圧焼結及び真空焼結を有さないこと、更には加圧焼結を有さないこと、が好ましい。
【0060】
焼結温度に昇温する場合の昇温速度は任意である。焼結に要する時間を短くする観点から、焼結温度に至るまでに要する時間(昇温時間)が2時間以下となる昇温速度であることが好ましい。昇温時間は1時間以下、30分以下、15分以下又は10分以下であることがより好ましく、汎用の焼結炉を使用する場合、昇温時間は3分以上又は5分以上であることが例示できる。焼結温度までの昇温速度として、例えば、5℃/分以上、10℃/分以上、50℃/分以上、100℃/分以上又は150℃/分以上であり、また、300℃/分以下、200℃/分以下又は190℃/分以下、が挙げられる。昇温速度は、例えば、室温から1000℃付近、1000~1200℃付近、1200℃から焼結温度等、焼結温度に至るまでの温度域毎に異なっていてもよい。さらに、昇温速度は後述の降温速度と異なる速度であってもよい。
【0061】
焼結工程に供する着色ジルコニアは、焼結体(前駆焼結体)の前駆体となり得る着色ジルコニア組成物であればよく、特に着色ジルコニアの粉末、顆粒粉末、成形体及び仮焼体の群から選ばれる1以上、更には着色ジルコニアの成形体及び仮焼体の少なくともいずれかである。
【0062】
簡便であるため、焼結工程に供する着色ジルコニアは、着色ジルコニア成形体であればよい。一方、成形体の形状と、目的とする焼結体の形状とが相違する等の場合、焼結工程に供する着色ジルコニアは、着色ジルコニア仮焼体であることが好ましく、焼結工程に先立ち、CAD/CAM加工などの加工手段で仮焼体を任意の形状に加工すればよい。このように、焼結工程に供する仮焼体は、加工された状態の仮焼体であってもよい。
【0063】
焼結工程に供する着色ジルコニア成形体の製造方法は任意である。例えば、着色ジルコニア粉末及び顆粒粉末の少なくともいずれかを、必要に応じて結合剤と混合し、公知の方法で成形すればよい。着色ジルコニア成形体は、着色元素を含む粉末と、ジルコニア粉末との混合粉末を含む成形体、更には着色元素を含む粉末と、ジルコニア粉末との混合粉末が成形された状態の成形体であることが好ましい。
【0064】
成形方法として、一軸プレス、冷間静水圧プレス、スリップキャスティング及び射出成形の群から選ばれる1種以上が例示できる。簡便であるため、成形方法は、一軸プレス及び冷間静水圧プレスの少なくともいずれかであることが好ましく、一軸プレス後、冷間静水圧プレスを行う成形方法がより好ましい。一軸プレスの圧力は15MPa以上150MPa以下、及び、冷間静水圧プレスの圧力は90MPa以上400MPa以下を例示することができ、成形における圧力が高くなるほど得られる成形体の密度が高くなりやすくなる。
【0065】
着色ジルコニア成形体に含まれるジルコニアは、ジルコニアゾルが熱処理された状態のジルコニアであることが好ましく、ジルコニウム化合物の加水分解で得られたジルコニアゾルが熱処理された状態のジルコニアであることがより好ましく、オキシ塩化ジルコニウムが加水分解されたジルコニアゾルが熱処理された状態のジルコニアであることが更に好ましい。
【0066】
結合剤は、粉末粒子同士や、顆粒粉末同士の物理的な結合を強固にする機能を有する物質であり、セラミックスの成形に使用され、成形体の保形性を改善し得る任意の結合剤であればよい。結合剤は、1200℃以下の熱処理で着色ジルコニアから除去されるものが好ましく、例えば、有機結合剤、更にはポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス及びアクリル樹脂の群から選ばれる1種以上、また更にはポリビニルアルコール及びアクリル樹脂の少なくともいずれか、また更にはアクリル樹脂、が挙げられる。
【0067】
焼結に先立ち、成形体に含有される結合剤は除去することが好ましい。結合剤の除去方法は任意であるが、大気雰囲気、400℃以上900℃未満、で焼成することが例示できる。
【0068】
焼結工程に供する着色ジルコニアは着色ジルコニア仮焼体であってもよい。焼結工程に供する着色ジルコニア仮焼体の製造方法は任意であり、例えば、着色ジルコニア成形体を公知の方法で仮焼すればよい。
【0069】
仮焼は、着色ジルコニアの粉末粒子が融着粒子となる条件での熱処理であればよく、例えば、ジルコニアの焼結温度未満の温度下の熱処理、が挙げられる。
【0070】
仮焼温度は、800℃以上、900℃以上又は950℃以上であり、また、1200℃以下、1150℃以下又は1100℃以下であること、が例示できる。
【0071】
仮焼温度における保持時間は0.5時間以上5時間以下、更には0.5時間以上3時間以下であることが好ましい。
【0072】
仮焼雰囲気は、還元性雰囲気以外の雰囲気であることが好ましく、酸化雰囲気、更には大気雰囲気であることがより好ましい。なお、仮焼雰囲気は、焼結工程及び熱処理工程の雰囲気と同じ雰囲気であってもよいが、これと異なる雰囲気であってもよい。
【0073】
<熱処理工程>
本実施形態の製造方法では、着色ジルコニアの焼結体(前駆焼結体)を、600℃以上1200℃以下で熱処理する。ジルコニアの着色が促進されやすくなるため、熱処理は700℃以上、750℃以上、800℃以上又は850℃以上であり、また、1150℃以下、1100℃以下又は1050℃以下で行うことが好ましく、700℃超1100℃未満で行うことがより好ましい。
【0074】
着色元素が遷移金属元素である場合、熱処理は、700℃以上又は800℃以上であり、かつ、1200℃以下又は1150℃以下で行うことが好ましい。例えば、鉄を含有する前駆焼結体の熱処理は、800℃以上又は900℃以上であり、かつ、1200℃以下又は1150℃以下で行うこと、コバルトを含有する前駆焼結体の熱処理は、700℃以上又は800℃以上であり、かつ、1150℃以下又は1100℃以下で行うこと、マンガンを含有する前駆焼結体の熱処理は、900℃以上又は1000℃以上であり、かつ、1200℃以下又は1150℃以下で行うこと、などが挙げられる。
【0075】
着色元素がランタノイド系希土類元素である場合、熱処理は、650℃以上又は700℃以上であり、かつ、1200℃以下又は1100℃以下で行うことが好ましい。例えば、テルビウムを含有する前駆焼結体の熱処理は、650℃以上又は700℃以上であり、かつ、1150℃以下又は1100℃以下で行うこと、プラセオジムを含有する前駆焼結体の熱処理は、800℃以上又は900℃以上であり、かつ、1200℃以下又は1100℃以下で行うこと、が挙げられる。
【0076】
該熱処理は、600℃以上1200℃以下のいずれかの熱処理温度(以下、単に「熱処理温度」ともいう。)で保持する熱処理であることが好ましい。該熱処理温度は、一定の温度であってもよいが、温度幅を有していてもよく、例えば、熱処理温度の温度幅は、±0℃、±2℃、±5℃、±10℃、±30℃又は±50℃であることが挙げられる。熱処理は、例えば、1150℃、1100℃、1050℃、1000℃、950℃、900℃、850℃、800℃、750℃、700℃、650℃及び600℃の群から選ばれる1以上の熱処理温度で保持する熱処理であって、なおかつ、該熱処理温度の幅が±50℃以下、±30℃以下又は±5℃以下であること、更には1000℃、900℃、800℃及び700℃の群から選ばれる1以上の熱処理温度で保持する熱処理であって、なおかつ、該熱処理温度の幅が±50℃以下、±30℃以下、±10℃以下又は±5℃以下であること、また更には1000℃、900℃及び800℃の群から選ばれる1以上の熱処理温度で保持する熱処理であって、なおかつ、該熱処理温度の幅が±30℃以下、±10℃以下又は±5℃以下であること、が挙げられる。
【0077】
該熱処理は、前駆焼結体を2以上の熱処理温度で保持する熱処理、であってもよい。2以上の熱処理温度で保持する熱処理として、例えば、1000℃以上1200℃以下のいずれかの熱処理温度で保持した後、600℃以上1000℃未満のいずれかの熱処理温度で保持する熱処理や、600℃以上1000℃未満のいずれかの熱処理温度で保持した後、1000℃以上1200℃以下のいずれかの熱処理温度で保持する熱処理などが挙げられる。
【0078】
熱処理の時間は任意であるが、熱処理温度における保持時間と熱処理の時間が同じであってもよい。例えば、熱処理温度における保持時間は、1分以上、3分以上、5分以上又は10分以上であることが挙げられる。焼結に要する時間を短くする観点から、該保持時間は2時間未満、1時間以下、30分以下、25分以下又は20分以下であることが好ましい。
【0079】
熱処理の雰囲気は、酸化雰囲気、更には大気雰囲気であることが好ましい。
【0080】
熱処理の方法は任意であり、真空下での焼成、加圧下での焼成及び常圧下での焼成の群から選ばれる1以上が挙げられ、加圧下での焼成及び常圧下での焼成の少なくともいずれか、更には常圧下での焼成であることが、また更には常圧下での焼成のみであること、が好ましい。常圧下での焼成は、大気雰囲気の常圧下での焼成であることが特に好ましい。
【0081】
熱処理工程は、上記の熱処理温度及び保持時間となるに制御する焼結プログラムを使用して熱処理を行うことが好ましい。
【0082】
好ましい熱処理工程のひとつとして、熱処理温度に加熱された状態の焼成炉に着色ジルコニア焼結体を配置し、これを熱処理する工程、とすることが挙げられる。これにより、より短時間で所望の色調を呈する着色ジルコニア焼結体を得ることができる。より短時間で焼結体を作製するため、熱処理工程は、焼結温度で保持した後の着色元素を含有するジルコニアの焼結体を焼結温度から1000℃以上1200℃以下のいずれかの温度に降温した状態で焼結炉から取出し、該焼結体を、600℃以上1200℃以下の焼成炉に配置して熱処理する工程、であることが好ましい。
【0083】
他の好ましい熱処理工程として、焼結温度で保持後、熱処理温度まで降温して該熱処理温度で保持して熱処理する工程、が挙げられる。これにより、複数の焼結炉を必須とせずに所望の色調を呈する着色ジルコニア焼結体を得ることができる。
【0084】
従来の焼結方法における降温過程は、焼結後のジルコニアを取出し温度(例えば、室温付近の温度)まで冷却することを目的とした工程である。そのため、焼結に要する時間を短縮する観点から、降温過程を短くすることが好ましいとされていた。これに対し、熱処理工程を降温過程に要する時間を長時間化し、降温中での熱処理とすることで、焼結後の着色ジルコニアの色調制御をしながら、着色ジルコニアの焼結体の冷却を同時に行うことができる。これにより、室温付近まで冷却した後の焼結体を再度、熱処理する場合に比べ、熱処理に要する時間及びエネルギーが少なくなり、本実施形態の製造方法が、工業的により適した製造方法となり得る。
【0085】
本実施形態において、降温過程で、600℃以上1200℃以下の温度領域に、5分以上焼結体を滞留させることが好ましい。このような条件を満たすことで、焼結体に含まれる着色元素は、長時間焼結で得られる焼結体に含まれる着色元素の状態に近づくと考えられ、所望の色調を有する焼結体が得られやすくなる。
【0086】
降温過程において、前駆焼結体が600℃以上1200℃以下の温度領域に滞留する時間(以下、「滞留時間」ともいう。)は、例えば、5分以上、8分以上又は10分以上であり、また、90分以下、80分以下、70分以下又は60分以下であることが挙げられる。滞留時間は、長時間焼結で得られた焼結体の色調に近づけるという観点からは長い方が好ましいが、焼結工程及び熱処理工程に要する合計時間を短くするために、50分以下又は40分以下が好ましい。
【0087】
降温過程において、前駆焼結体が滞留する温度領域(以下、「滞留温度領域」ともいう。)は、600℃以上1200℃以下、700℃以上1150℃以下、更には700℃以上1100℃以下が例示できる。着色元素が遷移金属元素である場合、滞留温度領域は、700℃以上1200℃以下が好ましい。例えば、鉄を含有する前駆焼結体である場合の滞留温度領域は、800℃以上1200℃以下が好ましく、コバルトを含有する前駆焼結体である場合の滞留温度領域は、700℃以上1150℃以下が好ましく、マンガンを含有する前駆焼結体である場合の滞留温度領域は、900℃以上1200℃以下、が挙げられる。ランタノイド系希土類元素を含有する前駆焼結体である場合の滞留温度領域は、650℃以上1200℃以下が好ましい。例えば、テルビウムを含有する前駆焼結体である場合の滞留温度領域は、650℃以上1150℃以下、また、プラセオジムを含有する前駆焼結体である場合の滞留温度領域は、800℃以上1200℃以下、が挙げられる。
【0088】
本実施形態において、降温過程は、1200℃から熱処理温度に達するまでの温度領域における降温速度(以下、「1200℃から熱処理温度までの降温速度」ともいう。)が、10℃/分以上、15℃/分以上又は20℃/分以上であり、また、100℃/分以下、80℃/分以下又は60℃/分以下であることが挙げられる。
【0089】
焼結温度で保持後、熱処理温度まで降温して該熱処理温度で保持して熱処理する場合、熱処理温度における保持時間は任意であるが、例えば、1分以上、4分以上、8分以上又は10分以上であり、また、1時間以下、50分以下、40分以下又は30分以下であることが挙げられる。降温過程における滞留時間が長いとき、熱処理温度における保持時間は短くても、所望する着色ジルコニアの呈色がより促進されやすい傾向にある。例えば、600℃以上1200℃以下の温度領域を30分で降温し、600℃で5分間熱処理した焼結体と、1000℃以上1200℃以下の温度領域を5分間かけて降温し、1000℃で10分間熱処理した焼結体を比較すると、これらの焼結体は長時間焼結で得られる焼結体との色差が同等となることが挙げられる。
【0090】
焼結温度で保持後、熱処理温度まで降温して該熱処理温度で保持して熱処理する場合、該熱処理は前駆焼結体を2以上の熱処理温度で保持する熱処理、であってもよい。2以上の熱処理温度で保持する熱処理として、例えば、1000℃以上1200℃以下のいずれかの熱処理温度で保持した後、600℃以上1000℃未満のいずれかの熱処理温度で保持する熱処理等が挙げられる。
【0091】
熱処理工程後の着色ジルコニア焼結体(熱処理焼結体)は、これに欠陥が生じない方法で焼結炉又は焼成炉から取出せばよい。該熱処理後の降温方法は任意であり、焼結炉で室温付近(例えば、20~30℃)まで降温速度を制御しながら降温する方法、焼結炉内で室温付近まで自然放冷して降温する方法、又は、熱処理温度を維持した状態の焼成炉から着色ジルコニア(熱処理焼結体)を取り出し室温下で冷却する方法、などが例示できる。
【0092】
焼結工程及び熱処理工程に要する合計時間は、長時間焼結と比べて短時間であることが好ましく、5時間以下、3時間以下、1時間以下又は45分以下であることが好ましく、また、10分以上、15分以上又は30分以上であることが挙げられる。
【0093】
熱処理焼結体は、前駆焼結体と同様な構成元素からなる着色ジルコニア焼結体であり、なおかつ、熱処理工程に供する着色ジルコニア焼結体(前駆焼結体)に比べて彩度が高い着色ジルコニア焼結体である。前駆焼結体と、長時間焼結で得られる焼結体(以下、「長時間焼結体」ともいう。)とは、明度Lが同程度(例えば、明度Lの差が互いに±5)である一方、彩度Cが大きく異なるために色差△Eが大きくなり、両者の色調が異なる色調として視認されると考えられる。他方、着色元素の種類によっては、前駆焼結体と長時間焼結体とが、彩度Cが同程度である一方、明度Lが大きく異なるため、色差△Eが大きく異なり、両者の色調が異なる色調として視認される場合もあると考えられる。
【0094】
そのため、本実施形態の製造方法においては、熱処理焼結体が、前駆焼結体に比べて彩度が0.3以上、更には0.6以上、また更には0.8以上高い着色ジルコニア焼結体であることが好ましい。更に、熱処理焼結体が、前駆焼結体に比べて、明度(L)の差が5以下であり、なおかつ、彩度(C)が0.3以上、更には0.6以上、また更には0.8以上高い、若しくは、明度の差が5を超え、なおかつ、彩度の差が10以下、の少なくともいずれかである着色ジルコニア焼結体であることが好ましく、明度Lの差が5以下であり、なおかつ、彩度Cが0.3以上、更には0.6以上、また更には0.8以上高い着色ジルコニア焼結体であることがより好ましい。前駆焼結体に対し、熱処理焼結体は、彩度Cが0.3以上、0.6以上、0.8以上、1.0以上、1.5以上又は2.0以上高く、なおかつ、明度Lが5以下、4.5以下、4以下であることが好ましい。これにより、熱処理焼結体と、長時間焼結体とが同等の色調として視認され得ると考えられる。彩度差は8.0以下、5.0以下又は4.5以下であることが挙げられる。換言すると、本実施形態の製造方法は、着色元素を含有するジルコニアの焼結体を、600℃以上1200℃以下で熱処理する工程、を有し、熱処理後の該焼結体の彩度が、熱処理前の該焼結体の彩度に対して、0.6以上、更には0.8以上高いこと、を特徴とする焼結体の製造方法、とみなすこともできる。
【0095】
熱処理焼結体は、長時間焼結で得られる焼結体の色調と同等の色調として視認される焼結体である。例えば、同じ組成を有する着色ジルコニアを焼結する場合において、熱処理焼結体(本実施形態の製造方法により得られる焼結体)の色調は、以下の条件の長時間焼結で得られる長時間焼結体の色調との色差(△E)が、5以下、3以下又は2以下であり、また、0以上又は0.5以上であることが例示できる。
【0096】
昇温速度 : 600℃/時
焼結温度 : 1500℃
保持時間 : 2時間
降温速度 : 500℃/時
同様に、長時間焼結体の透光性と比べた、熱処理焼結体の透光率差(△T)として、0.15以下又は0.10以下であり、また、0以上又は0.01以上であることが例示できる。
【0097】
<熱処理焼結体>
次に、本実施形態の製造方法で得られる焼結体(以下、「本実施形態の焼結体」ともいう。)について、着色元素としてテルビウム、鉄及びプラセオジウムの群から選ばれる1以上を含有するジルコニアの焼結体を一例に示し、説明する。
【0098】
本実施形態の焼結体は、黄色の色調を呈する黄色ジルコニアの焼結体である。本実施形態の焼結体の色調としてL表色系で表される明度L、彩度a及びbが以下の値であることが例示できる。
【0099】
明度L 66以上又は70以上、かつ、
80以下又は75以下
色相a 0.1以上、0.2以上又は0.3以上、かつ、
2.0以下、1.8以下、1.0以下又は0.8以下
色相b 10以上、12以上、20以上又は24以上、かつ、
30以下又は28以下
本実施形態の焼結体は透光性を有することが好ましく、本実施形態の焼結体の全光線透過率(試料厚み1mmにおける、D65光源に対する全光線透過率)として、25%以上、30%以上、35%以上又は36%以上であること、また、41%以下又は40%以下であることが例示できる。
【0100】
本実施形態の焼結体は、少なくとも、結晶相が正方晶(T相)及び立方晶(C相)の少なくとも1つであるジルコニアを含むことが好ましく、少なくとも、正方晶を主相とするジルコニアを含むことがより好ましく、正方晶を主相とするジルコニアと、立方晶を主相とするジルコニアと、を含むことが更に好ましい。なお、本実施形態における「主相」とは、ジルコニアの結晶相の中で、最も存在割合(XRDピークの積分強度の割合)が多い結晶相を意味する。該存在割合は焼結体表面のXRDパターンから求めることができる。
【0101】
また、本実施形態の焼結体が、着色元素として、黄色系着色元素及び赤系着色元素を含むジルコニアの焼結体、更には、黄色系着色元素、赤系着色元素及び灰色系着色元素を含むジルコニアの焼結体である場合、本実施形態の焼結体は、歯科色調見本と同様な色調を有することが好ましく、ビタ・クラシカルシェードのA1、A2、A3、A3.5、A4、B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3、C4、D2、D3又はD4の色調を有していることがより好ましい。
【0102】
本実施形態における代表的な色調として、表1のL表色系の色調が挙げられる。ただし、焼結体の透光性によって視認される色調は異なるため、同じ色調分類に属する焼結体であっても色調の値は変わることがある。
【0103】
【表1】
【0104】
本実施形態の焼結体の製造方法は、構造材料や光学材料等、公知のジルコニアの用途に使用される焼結体の製造方法として供することができるが、携帯電子機器の外装部材や装飾部材、クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニアなどの歯科補綴物、アバットメント、インプラントブリッジ等の歯科インプラント材料、ブラケット等の歯科矯正材料をはじめとする歯科材料として使用される焼結体の製造方法として供することができ、特に歯科用の焼結体の製造方法、更には歯科補綴物用の焼結体の製造方法、また更には歯科補綴物用の焼結体の色調調整方法として使用することができる。
【実施例0105】
以下、本実施形態について実施例により詳細に説明する。しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0106】
(BET比表面積)
一般的なBET比表面積測定装置(装置名:トライスターII3020、島津製作所社製)及び吸着ガスとして窒素ガスを使用し、JIS Z 8830に準じたBET1点法により、試料のBET比表面積を測定した。試料の前処理は、大気中、250℃で30分間の脱気処理を行った。
【0107】
(平均顆粒径)
平均顆粒径は、マイクロトラック粒度分布計(装置名:MT3100II、マイクロトラック・ベル社製)に、顆粒粉末試料を投入して測定した。累積体積が50%となる粒子径を平均顆粒径とした。
【0108】
(全光線透過率)
JIS K 7361の方法に準じた方法によって、試料の全光線透過率を測定した。標準光源D65を測定試料に照射し、当該測定試料を透過した光束を積分球によって検出することによって、全光線透過率を測定した。測定には一般的なヘーズメーター(装置名:ヘーズメーターNDH4000、NIPPON DENSHOKU製)を使用した。
【0109】
測定試料は、直径20mm×厚さ1mmの円板状であり、なおかつ、その両表面を表面粗さRa≦0.02μmとなるまで鏡面研磨した焼結体を使用した。
【0110】
(色調)
一般的な分光測色計(装置名:CM-700d、コニカミノルタ社製)を使用し、測定試料を黒色板の上に配置した黒バック測定によって色調を測定した。測定条件は以下のとおりである。
【0111】
光源 : D65光源
視野角 : 10°
測定方式 : SCI
色調評価有効面積 :直径10mm
測定試料は、直径20mm×厚さ1mmの円板状であり、なおかつ、その両表面を表面粗さRa≦0.02μmとなるまで鏡面研磨した焼結体を使用した。
【0112】
(色差)
実施例及び比較例で得られた着色ジルコニア焼結体(熱処理焼結体)の色調と、該焼結体と同じ組成を有し、なおかつ、長時間焼結で製造された着色ジルコニア焼結体(参考例)の色調から、以下の式より色差を求めた。
【0113】
△E={(L1-L2+(a1-a2+(b1-b20.5
上式において、△Eは色差であり、L1、a1及びb1は、それぞれ、参考例の着色ジルコニア焼結体の明度L、色相a及びbである。また、L2、a2及びb2は、それぞれ、測定試料の明度L、色相a及びbとした。
【0114】
参考例1(長時間焼結による焼結体の作製)
テルビウム含有量が0.034mol%及びイットリウム含有量が4.0mol%であるテルビウム及びイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ及び純水を2.3Lの容器で混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部がテルビウム量0.034mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナを含有する、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.2m/g及び平均顆粒径が43μmであった。
【0115】
該顆粒粉末3gを内径25mmの金型に充填した後、圧力49MPaで一軸加圧プレス成形を行った。該成形の後、圧力196MPaでCIP処理して成形体(圧粉体)を得た。
【0116】
該成形体を、昇温速度50℃/時間で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持し、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部がテルビウム量0.034mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである仮焼体(アルミナを含有する、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの仮焼体)を得た。
【0117】
得られた仮焼体を、昇温速度10℃/分で焼結温度1500℃まで昇温し、該焼結温度で2時間保持した後、降温速度500℃/時間(=8.3℃/分)で室温まで冷却した後、焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部がテルビウム量0.034mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナを含有する、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを参考例1の焼結体とした。参考例1の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ73.6、1.77及び27.90であった
実施例1乃至4、比較例1及び2
参考例1と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持して焼結体とした後、降温速度240℃/分で1200℃まで降温して焼結炉から該焼結体を取出した。次いで、表2に示す熱処理温度に予熱した別の焼成炉に、取出した焼結体(前駆焼結体)を配置し、それぞれ、5分間保持して熱処理した後、焼成炉から取出し、それぞれ、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部がテルビウム量0.034mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナを含有する、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は30.1分であり、また、熱処理の時間は5分であった。なお、比較例1については、熱処理を行わず、焼結炉から取出したもの(前駆焼結体)を比較例1の焼結体とした。
【0118】
【表2】
【0119】
実施例と比較例2の比較より、熱処理工程により△Eが低下すること、更には5分の熱処理で△Eが低下することが確認でき、900℃(700℃超1100℃未満)で△Eが特に低下することが確認できる。また、比較例1及び2より、熱処理温度を500℃として熱処理をした場合、△Eが低下する効果は得られないことが確認できる。さらに、比較例1に対し、500℃で熱処理した比較例2では、彩度Cが低下したのに対し、実施例は、いずれも彩度Cが1.5以上5.0以下、大きくなることが確認できた。
【0120】
実施例5乃至7
800℃に予熱した別の焼成炉に、取出した焼結体を配置し、それぞれ、表3に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼成炉から取出したこと以外は実施例1と同様な方法で、それぞれ、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部がテルビウム量0.034mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナを含有する、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間、及び、熱処理の時間は、それぞれ、実施例5が35.1分及び10分、実施例6が40.1分及び15分、実施例7が45.1分及び20分、であった。
【0121】
【表3】
【0122】
実施例8乃至10
950℃に予熱した別の焼成炉に取出した焼結体を配置し、それぞれ、表4に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼成炉から取出したこと以外は実施例1と同様な方法で、それぞれ、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部がテルビウム量0.034mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナを含有する、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間、及び、熱処理の時間は、それぞれ、実施例8が35.1分及び10分、実施例9が40.1分及び15分、実施例10が45.1分及び20分、であった。
【0123】
【表4】
【0124】
実施例5乃至10より、熱処理温度での保持時間が長いほど、彩度Cが大きくなる傾向と共に、△Eが低下する傾向があり、長時間焼結体と同等の色調と視認されやすくなる傾向があることが確認できた。
【0125】
実施例11
参考例1と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1000℃まで降温し、該温度で10分間保持して熱処理した後、焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部がテルビウム量0.034mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナを含有する、テルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。結果を下表に示す。仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は50.1分であり、また、熱処理の時間は15分であった。
【0126】
【表5】
【0127】
焼結温度で保持後の降温過程において熱処理を行うことでも△Eが低下することが確認できた。これにより、昇温、焼結、熱処理及び降温をひとつの焼結サイクルとした場合であっても、長時間焼結体と同様な色調と視認される焼結体を製造できることが確認できる。
【0128】
参考例2(長時間焼結による焼結体の作製)
イットリウム量が4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、オキシ水酸化鉄及び純水を2.3Lの容器で混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%及び鉄量が0.2質量%であり、アルミナ及びオキシ水酸化鉄を含有し、残部がイットリウム量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ及びオキシ水酸化鉄を含有する、イットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.2m/g及び平均顆粒径が45μmであった。
【0129】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形及び仮焼し、アルミナ量が0.05質量%及び鉄量が0.2質量%であり、アルミナ及び酸化鉄を含有し、残部がイットリウム含有量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである仮焼体(アルミナ及び酸化鉄を含有する、イットリウム安定化ジルコニアの仮焼体)を得た。
【0130】
得られた仮焼体を使用したこと以外は、参考例1と同様な方法で、アルミナ量が0.05質量%及び鉄量が0.2質量%であり、アルミナ及び酸化鉄を含み、残部がイットリウム量4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ及び酸化鉄を含有する、イットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。参考例2の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ68.2、3.52及び20.70であった。
【0131】
実施例12及び13、比較例3
参考例2と同様な方法で得られた仮焼体を使用したこと、及び、900℃に予熱した別の焼成炉に取出した焼結体を配置し、それぞれ、表6に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼成炉から取出したこと以外は実施例1と同様な方法で、アルミナ量が0.05質量%及び鉄量が0.2質量%であり、アルミナ及び酸化鉄を含み、残部がイットリウム量4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ及び酸化鉄を含有する、イットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。なお、比較例3については、熱処理を行わず、焼結炉から取出したものを比較例3の焼結体とした。
【0132】
【表6】
【0133】
ジルコニアに固溶しない鉄(酸化鉄)を含有する着色ジルコニアの焼結体においても、熱処理工程により△Eが低下すること、及び、熱処理時間が長いほど△Eが低下することが確認できた。なお、参考例2のLは68.2であったことから、鉄(酸化鉄)を含有する着色ジルコニアの焼結体においては、熱処理により、明度Lが長時間焼結体と同様になることによって、色差△Eが小さくなることが確認できた。
【0134】
実施例14及び15
参考例2と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持して焼結体とした後、1000℃まで降温して焼結炉から該焼結体を取出した。次いで、表7に示す熱処理温度に予熱した別の焼成炉に取出した焼結体を配置し、それぞれ、5分間保持して熱処理した後、焼成炉から取出し、それぞれ、アルミナ量が0.05質量%である、アルミナを含有し、残部が鉄量0.2質量%及びイットリウム量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ及び酸化鉄を含有する、イットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は39.0分であり、また、熱処理の時間は5分であった。
【0135】
【表7】
【0136】
900℃を超える熱処理温度の熱処理工程により、保持時間が短い場合においても900℃の熱処理と比べて△Eが低下することが確認でき、また、1100℃(900℃超1200℃未満)で△Eが特に低下することが確認できた。
【0137】
参考例3(長時間焼結による焼結体の作製)
イットリウム含有量が4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、酸化チタン、四酸化三コバルト及び純水を2.3Lの容器で混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%、チタン量が0.2質量%及びコバルト量が0.04質量%であり、アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含有し、残部がイットリウム量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.2m/g及び平均顆粒径が45μmであった。
【0138】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形及び仮焼し、アルミナ量が0.05質量%、チタン量が0.2質量%及びコバルト量が0.04質量%であり、アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含有し、残部がイットリウム量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである仮焼体(アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの仮焼体)を得た。
【0139】
得られた仮焼体を使用したこと以外は、参考例1と同様な方法で、アルミナ量が0.05質量%、チタン量が0.2質量%及びコバルト量が0.04質量%であり、アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含み、残部がイットリウム量4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。参考例3の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ61.8、3.33及び-4.96であった。
【0140】
実施例16、比較例4
参考例3で得られた仮焼体を使用したこと、及び、900℃に予熱した別の焼成炉に取出した焼結体を配置し、それぞれ、表8に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼成炉から取出したこと以外は実施例1と同様な方法で、アルミナ量が0.05質量%、チタン量が0.2質量%及びコバルト量が0.04質量%であり、アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含み、残部がイットリウム量4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、酸化チタン及び四酸化三コバルトを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。なお、比較例4については、熱処理を行わず、焼結炉から取出したものを比較例4の焼結体とした。
【0141】
【表8】
【0142】
ジルコニアに固溶するチタン(Ti)と、ジルコニアに固溶しないコバルトの両方を含有する着色ジルコニアの焼結体においても、熱処理工程により△Eが低下し、長時間焼結体と同等の色調として視認される焼結体が得られることが確認できた。
【0143】
参考例4(長時間焼結による焼結体の作製)
イットリウム含有量が4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、四三酸化マンガン及び純水を2.3Lの容器で混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%及びマンガン量が0.01質量%であり、アルミナ及び四三酸化マンガンを含有し、残部がイットリウム量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ及び四三酸化マンガンを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.2m/g及び平均顆粒径が45μmであった。
【0144】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形及び仮焼し、アルミナ量が0.05質量%及びマンガン量が0.01質量%であり、アルミナ及び四三酸化マンガンを含有し、残部がイットリウム量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである仮焼体(アルミナ及び四三酸化マンガンを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの仮焼体)を得た。
【0145】
得られた仮焼体を使用したこと以外は、参考例1と同様な方法で、アルミナ量が0.05質量%及びマンガン量が0.01質量%であり、アルミナ及び四三酸化マンガンを含み、残部がイットリウム量4.0mol%であるイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ及び四三酸化マンガンを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。参考例4の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ62.4、2.63及び-1.88であった。
【0146】
実施例17乃至19、比較例5
参考例4と同様な方法で得られた仮焼体を使用したこと、及び、表9に示す温度で予熱した別の焼成炉に取出した焼結体を配置し、それぞれ、表9に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼成炉から取出したこと以外は実施例14と同様な方法で、アルミナ量が0.05質量%及びマンガン量が0.01質量%であり、残部がイットリウム量4.0mol%である、イットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ及び四三酸化マンガンを含有する、イットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。なお、比較例5については、熱処理を行わず、焼結炉から取り出したものを比較例5の焼結体とした。
【0147】
【表9】
【0148】
マンガンを含有する着色ジルコニアの焼結体においても、熱処理工程により△Eが低下し、長時間焼結体と同等の色調として視認される焼結体が得られることが確認できた。また、熱処理温度が1000℃以上1100℃以下で△Eが特に低下することが確認できる。
【0149】
参考例5(長時間焼結による焼結体の作製)
テルビウム含有量が0.002mol%、エルビウム含有量が0.050mol%及びイットリウム含有量が4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、四酸化三コバルト、酸化チタン及び純水を2.3Lの容器に入れボールミルで混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.003質量%及びチタン量が0.015質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.002mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.2m/g及び平均顆粒径が43μmであった。
【0150】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形、仮焼及び焼結し、焼結体を得、これを参考例5の焼結体とした。参考例5の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ76.1、-0.24及び3.95であった。
【0151】
参考例6(長時間焼結による焼結体の作製)
テルビウム含有量が0.007mol%、エルビウム含有量が0.050mol%及びイットリウム含有量が4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、四酸化三コバルト、酸化チタン及び純水を2.3Lの容器に入れボールミルで混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.007mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.1m/g及び平均顆粒径が44μmであった。
【0152】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形、仮焼及び焼結し、焼結体を得、これを参考例6の焼結体とした。参考例6の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ71.9、-0.23、10.46であった。
【0153】
参考例7(長時間焼結による焼結体の作製)
テルビウム含有量が0.016mol%、エルビウム含有量が0.254mol%及びイットリウム含有量が3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、四酸化三コバルト、酸化チタン及び純水を2.3Lの容器に入れボールミルで混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.1m/g及び平均顆粒径が44μmであった。
【0154】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形、仮焼及び焼結し、焼結体を得、これを参考例7の焼結体とした。参考例7の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ67.8、-1.81及び12.93であった
参考例8(長時間焼結による焼結体の作製)
エルビウム含有量が0.033mol%及びイットリウム含有量が3.9mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、オキシ水酸化鉄、四酸化三コバルト、及び純水を2.3Lの容器に入れボールミルで混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.047質量%及びコバルト量が0.003質量%であり、アルミナ、オキシ水酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.9mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ、オキシ水酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.2m/g及び平均顆粒径が44μmであった。
【0155】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形、仮焼及び焼結し、焼結体を得、これを参考例8の焼結体とした。参考例8の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ75.2、-0.97及び7.09であった
参考例9(長時間焼結による焼結体の作製)
エルビウム含有量が0.033mol%及びイットリウム含有量が3.8mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニア、α-アルミナ、オキシ水酸化鉄、四酸化三コバルト、及び純水を2.3Lの容器に入れボールミルで混合して得られたスラリーを、180℃で噴霧乾燥し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.128質量%及びコバルト量が0.006質量%であり、アルミナ、オキシ水酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.8mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである顆粒粉末(アルミナ、オキシ水酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの顆粒粉末)を得た。得られた顆粒粉末はBET比表面積が10.2m/g及び平均顆粒径が44μmであった。
【0156】
得られた顆粒粉末を使用したこと以外は参考例1と同様な方法で成形、仮焼及び焼結し、焼結体を得、これを参考例9の焼結体とした。参考例9の焼結体の色調はL、a及びbがそれぞれ68.5、1.76及び14.00であった。
【0157】
実施例20乃至22
参考例5と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1200℃から熱処理温度までの降温速度が20℃/分で600℃まで降温し、該温度で表10に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.003質量%及びチタン量が0.015質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.002mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は、それぞれ、実施例20が65.0分、実施例21が70.0分及び実施例22が80.0分であった。また、焼結温度での保持後の降温過程において、滞留時間はいずれの実施例も31.0分であった。
【0158】
実施例23及び24
参考例5と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1200℃から熱処理温度までの降温速度が35.0℃/分で900℃まで降温し、該温度で表10に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.003質量%及びチタン量が0.015質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.002mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は、それぞれ、実施例23が41.8分及び実施例24が46.8分であった。また、焼結温度での保持後の降温過程において、滞留時間はいずれの実施例も10.0分であった。
【0159】
実施例25及び26
参考例5と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1200℃から熱処理温度までの降温速度が40.0℃/分で1000℃まで降温し、該温度で表10に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.003質量%及びチタン量が0.015質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.002mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は、それぞれ、実施例25が39.0分及び実施例26が44.0分であった。また、焼結温度での保持後の降温過程において、滞留時間はいずれの実施例も5.0分であった。
【0160】
実施例27及び28
参考例5と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1200℃まで降温し、該温度で表10に示す保持時間で保持して熱処理した後、1000℃まで炉内で降温して焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.003質量%及びチタン量が0.015質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.002mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は、それぞれ、実施例27が39.0分及び実施例28が44.0分であった。
【0161】
比較例6
参考例5と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1000℃まで降温した後、焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.003質量%及びチタン量が0.015質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.002mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例6の焼結体とした。
【0162】
比較例7
参考例5と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1300℃まで降温し、該温度で保持して熱処理した後、1000℃まで炉内で降温して焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.003質量%及びチタン量が0.015質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.002mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。昇温から熱処理処理の終了に要した時間は、44.0分であった。
【0163】
実施例29乃至31
参考例6と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例20乃至22と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.007mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0164】
実施例32及び33
参考例6と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例23及び24と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.007mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0165】
実施例34及び35
参考例6と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例25及び26と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.007mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0166】
実施例36及び37
参考例6と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例27及び28と同様な方法で焼結し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.007mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0167】
比較例8
参考例6と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例6と同様な方法で焼結し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.007mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例8の焼結体とした。
【0168】
比較例9
参考例6と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例7と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.007mol%、エルビウム量0.050mol%及びイットリウム量4.0mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例9の焼結体とした。
【0169】
実施例38乃至40
参考例7と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例20乃至22と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0170】
実施例41及び42
参考例7と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例23及び24と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0171】
実施例43及び44
参考例7と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例25及び26と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0172】
実施例45及び46
参考例7と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例27及び28と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0173】
比較例10
参考例7と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例6と同様な方法で焼結し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例10の焼結体とした。
【0174】
比較例11
参考例7と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例7と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例11の焼結体とした。
【0175】
【表10】
【0176】
実施例及び比較例6、8及び10より、着色元素としてテルビウム、エルビウム、コバルト及びチタンを含む焼結体は、熱処理工程により、△Eが低下することが確認できた。また、比較例7、9及び11より、熱処理温度を1300℃として熱処理した場合、△Eが低下する効果は得られないことが確認できる。さらに、比較例6に対し、実施例20乃至28はいずれも彩度Cが0.7以上であり、比較例8に対し、実施例29乃至37はいずれも彩度Cが1.6以上であり、比較例10に対し、実施例38乃至46はいずれも彩度Cが2.3以上であり、彩度Cが大きくなることが確認できた。
【0177】
また、実施例20乃至28の焼結体はビタ・クラシカルシェードのC1、実施例29乃至37の焼結体はビタ・クラシカルシェードのC3、実施例38乃至46の焼結体は、ビタ・クラシカルシェードのC4、に相当する色調を有することが確認できる。
【0178】
実施例47及び48
参考例8と同様な方法で得られた仮焼体を、昇温速度177℃/分で焼結温度1560℃まで昇温し、該焼結温度で15分保持した。焼結温度での保持後、1200℃から熱処理温度までの降温速度が20.0℃/分で600℃まで降温し、該温度で表11に示す保持時間で保持して熱処理した後、焼結炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.047質量%及びコバルト量が0.003質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.9mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。いずれの実施例も仮焼体の昇温から熱処理処理の終了に要した時間は、それぞれ、実施例47が65.0分及び実施例48が70.0分であった。また、焼結温度での保持後の降温過程において、滞留時間はいずれの実施例も31.0分であった。
【0179】
実施例49及び50
参考例8と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例27及び28と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.047質量%及びコバルト量が0.003質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.9mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0180】
比較例12
参考例8と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例6と同様な方法で焼結し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.047質量%及びコバルト量が0.003質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.9mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例12の焼結体とした。
【0181】
比較例13
参考例8と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例7と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.047質量%及びコバルト量が0.003質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.9mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例13の焼結体とした。
【0182】
実施例51及び52
参考例9と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例47及び48と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.128質量%及びコバルト量が0.006質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.8mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0183】
実施例53及び54
参考例9と同様な方法で得られた仮焼体を、実施例27及び28と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.128質量%及びコバルト量が0.006質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.8mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである本実施例の焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得た。
【0184】
比較例14
参考例9と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例6と同様な方法で焼結し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.128質量%及びコバルト量が0.006質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.8mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例14の焼結体とした。
【0185】
比較例15
参考例9と同様な方法で得られた仮焼体を、比較例7と同様な方法で焼結及び熱処理し、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.128質量%及びコバルト量が0.006質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.8mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、これを比較例15の焼結体とした。
【0186】
【表11】
【0187】
実施例及び比較例12及び14より、着色元素として鉄、エルビウム、コバルト及びチタンを含む焼結体は、熱処理工程により、△Eが低下することが確認できた。また、比較例13及び15より、熱処理温度を1300℃として熱処理した場合、△Eが低下する効果は得られないことが確認できる。さらに、比較例12に対し、実施例47乃至50はいずれも彩度Cが1.0以上であり、比較例14に対し、実施例51乃至54はいずれも彩度Cが2.0以上であり、彩度Cが大きくなることが確認できた。
【0188】
また、実施例47乃至50の焼結体はビタ・クラシカルシェードのC1、実施例51乃至54の焼結体はビタ・クラシカルシェードのC4、に相当する色調を有することが確認できる。
【0189】
比較例16
比較例10で得られた焼結体の両表面を表面粗さRa≦0.02μmとなるまで鏡面研磨した後、片面に市販のグレージング剤(製品名:CERABIAN ZR、クラレノリタケデンタル社製)を塗布した。該焼結体を、900℃に予熱した焼成炉に配置し、10分間保持して熱処理した後、焼成炉から取出し、アルミナ量が0.05質量%、コバルト量が0.007質量%及びチタン量が0.035質量%であり、アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有し、残部がテルビウム量0.016mol%、エルビウム量0.254mol%及びイットリウム量3.8mol%である、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、四酸化三コバルト及び酸化チタンを含有する、テルビウム、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、該焼結体はグレージング剤によって片面の表面が覆われていた。
【0190】
比較例17
比較例14で得られた焼結体を使用したこと以外は比較例16と同様な方法で、アルミナ量が0.05質量%、鉄量が0.128質量%及びコバルト量が0.006質量%であり、アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有し、残部がエルビウム量0.033mol%及びイットリウム量3.8mol%である、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアである焼結体(アルミナ、酸化鉄及び四酸化三コバルトを含有する、エルビウム及びイットリウム安定化ジルコニアの焼結体)を得、該焼結体はグレージング剤によって片面の表面が覆われていた。
【0191】
比較例16及び17の焼結体をグレージング剤によって覆われた表面を鏡面研磨することで、グレージング剤を除去し、表面粗さRa≦0.02μmの焼結体として、グレージング剤を塗布した面の色調を測定した。
【0192】
【表12】
【0193】
比較例16及び17より、表面にグレージング剤が塗布された着色ジルコニア焼結体は、熱処理工程により、△Eが低下する効果は得られないことが確認できる。