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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170845
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】乾式自動磁選機
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/00 20060101AFI20221104BHJP
   B03C 1/26 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B03C1/00 J
B03C1/00 B
B03C1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077086
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594107996
【氏名又は名称】株式会社マグネテックジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚芳
(72)【発明者】
【氏名】大田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】物集 高彦
(57)【要約】
【課題】粉体中の異物を効果的に回収することができ、作業者の負担も軽減できる乾式自動磁選機を提供する。
【解決手段】粉体が挿通される粉体流路に設けられる除去機構10を有する磁選機1であって、除去機構10が、粉体流路2hに対して挿入抜去される軸状の永久磁石13と、軸状の永久磁石13を粉体流路2h内に挿入抜去する磁石移動機構15と、軸状の永久磁石13の表面に沿って軸状の永久磁石13の軸方向に移動可能に設けられた、軸状の永久磁石13の表面に付着した磁性体を除去する除去部材16と、除去部材16を軸状の永久磁石13の軸方向に沿って移動させる除去部材移動機構17と、を有している。軸状の永久磁石13の挿入抜去と掃除作業とを自動で行うことができるので、作業者の負担を軽減できる。しかも、除去部材16によって軸状の永久磁石13から確実に磁性体を除去することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体が流される粉体流路に設けられる除去機構を有する磁選機であって、
該除去機構が、
前記粉体流路に対して挿入抜去される軸状の永久磁石と、
該軸状の永久磁石を前記粉体流路内に挿入抜去する磁石移動機構と、
前記軸状の永久磁石の表面に沿って前記軸状の永久磁石の軸方向に移動可能に設けられた、該軸状の永久磁石の表面に付着した磁性体を除去する除去部材と、
該除去部材を前記軸状の永久磁石の軸方向に沿って移動させる除去部材移動機構と、を有している
ことを特徴とする乾式自動磁選機。
【請求項2】
前記除去部材が、
前記軸状の永久磁石が挿通される貫通孔を有しており、
該貫通孔に前記軸状の永久磁石が挿通されている
ことを特徴とする請求項1記載の乾式自動磁選機。
【請求項3】
前記粉体流路における粉体の流れる方向と平行な側面に前記軸状の永久磁石を挿入抜去する開口が形成されており、
前記軸状の永久磁石の第一端部には、前記粉体流路内に配置された前記粉体流路の開口を塞ぐ第一蓋部材が設けられており、
前記軸状の永久磁石の第二端部には、前記粉体流路外に配置された前記粉体流路の開口を塞ぐ第二蓋部材が設けられており、
前記磁石移動機構は、
前記第二蓋部材が前記粉体流路の外面に接触し該第二蓋部材の開口を塞ぐ吸着位置と、
前記第一蓋部材が前記粉体流路の内面に接触し該第一蓋部材の開口を塞ぐ掃除位置と、の間で前記軸状の永久磁石を移動させるものであり、
前記軸状の永久磁石は、
第一端部から一定の範囲に磁力を有しない非磁性部を有している
ことを特徴とする請求項1または2記載の乾式自動磁選機。
【請求項4】
前記第二蓋部材の外面に前記除去部材が連結されており、
前記第二蓋部材が、
前記除去部材移動機構によって軸状の永久磁石の軸方向に沿って移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項3記載の乾式自動磁選機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式自動磁選機に関する。具体的には、非磁性粉体を製造するプラント等において非磁性粉体に含まれる鉄等の不純物磁性体を除去する乾式自動磁選機に関する。
【背景技術】
【0002】
電池材料等の非磁性粉体を製造するプラント等の設備では、製品である非磁性粉体に鉄等の不純物磁性体の異物(以下単に磁性体という)が含まれていると、粉体を使用した製品に悪影響を与える可能性がある。そこで、粉体の製造工程では、磁選機によって磁性体が除去される(例えば、特許文献1)。
【0003】
磁選機によって粉体中の磁性体を除去する場合、粉体の流路に配置した複数の棒状永久磁石に粉体を落下させて、複数の棒状永久磁石に磁性体を吸着して除去することが行われている。このような磁選機では、複数の棒状永久磁石による磁性体除去機能を維持するために、定期的に清掃作業を実施することが必要になる。具体的には、複数の棒状永久磁石を定期的に流路から引き抜き、付着した磁性体を棒状永久磁石の表面から除去する清掃作業を実施することが必要になる。従来の磁選機では人力で複数の棒状永久磁石を引抜いて清掃を行っているが、複数の棒状永久磁石は重量物であるため、清掃作業が作業者の負担となっている。
【0004】
そこで、複数の棒状永久磁石の清掃作業を自動で実施する磁選機が開発されている(特許文献2)。特許文献2の磁選機は、外面に鍔を有し内部に磁石を移動自在に収容した案内管を備えており、この案内管を粉体流路に配置して粉体内に混入した磁性体を案内管の外面に吸着させて粉体から磁性体を除去している。そして、磁性体を吸着した案内管を粉体流路から抜去したのち、案内管内の磁石を鍔の方向に移動させれば、磁石の移動にともなって案内管の外面を磁性体が移動するので、磁性体が鍔と接触すれば磁性体を案内管の外面から除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭50-018441号公報
【特許文献1】特開平6-218298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献2の技術では、案内管の外面に吸着した磁性体を磁石とともに移動させることで磁性体を鍔と接触させる構造としているが、案内管の外面に吸着した状態で磁性体を移動させることは困難であり、案内管の外面に磁性体が残ったままになってしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、粉体中の磁性体を効果的に回収することができ、作業者の負担も軽減できる乾式自動磁選機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の乾式自動磁選機は、粉体が流される粉体流路に設けられる除去機構を有する磁選機であって、該除去機構が、前記粉体流路に対して挿入抜去される軸状の永久磁石と、該軸状の永久磁石を前記粉体流路内に挿入抜去する磁石移動機構と、前記軸状の永久磁石の表面に沿って前記軸状の永久磁石の軸方向に移動可能に設けられた、該軸状の永久磁石の表面に付着した磁性体を除去する除去部材と、該除去部材を前記軸状の永久磁石の軸方向に沿って移動させる除去部材移動機構と、を有していることを特徴とする。
第2発明の乾式自動磁選機は、第1発明において、前記除去部材が、前記軸状の永久磁石が挿通される貫通孔を有しており、該貫通孔に前記軸状の永久磁石が挿通されていることを特徴とする。
第3発明の乾式自動磁選機は、第1または第2発明において、前記粉体流路における粉体の流れる方向と平行な側面に前記軸状の永久磁石を挿入抜去する開口が形成されており、前記軸状の永久磁石の第一端部には、前記粉体流路内に配置された前記粉体流路の開口を塞ぐ第一蓋部材が設けられており、前記軸状の永久磁石の第二端部には、前記粉体流路外に配置された前記粉体流路の開口を塞ぐ第二蓋部材が設けられており、前記磁石移動機構は、前記第二蓋部材が前記粉体流路の外面に接触し該第二蓋部材の開口を塞ぐ吸着位置と、前記第一蓋部材が前記粉体流路の内面に接触し該第一蓋部材の開口を塞ぐ掃除位置と、の間で前記軸状の永久磁石を移動させるものであり、前記軸状の永久磁石は、第一端部から一定の範囲に磁力を有しない非磁性部を有していることを特徴とする。
第4発明の乾式自動磁選機は、第3発明において、前記第二蓋部材の外面に前記除去部材が連結されており、前記第二蓋部材が、前記除去部材移動機構によって軸状の永久磁石の軸方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、磁石移動機構によって軸状の永久磁石を自動的に粉体流路に挿入したり粉体流路から抜き取ったりできる。また、軸状の永久磁石を粉体流路から抜去した状態で除去部材移動機構によって除去部材を移動させれば、軸状の永久磁石から磁性体を除去する掃除作業を自動で行うことができる。以上のように、軸状の永久磁石の挿入抜去と掃除作業とを自動で行うことができるので、作業者の負担を軽減できる。しかも、軸状の永久磁石の表面に沿って除去部材が移動するので、除去部材により軸状の永久磁石から確実に磁性体を除去することができる。
第2発明によれば、除去部材の貫通孔に永久磁石が挿通されているので、除去部材による軸状の永久磁石から磁性体を除去する効果を高くできる。
第3発明によれば、軸状の永久磁石が吸着位置に配置された状態でも、軸状の永久磁石が掃除位置に配置された状態でも、蓋部材によって粉体流路の開口を塞いでおくことができるので、粉体流路から粉体等が漏れたり外部から粉体流路内に不純物が入ることを防止できる。しかも、第一蓋部材を設けても非磁性部まで除去部材を移動させれば、軸状の永久磁石に吸着されている全ての磁性体を除去することができる。
第4発明によれば、装置の構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の乾式自動磁選機1の永久磁石13を吸着位置に配置した状態の概略説明図であり、(A)は側面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図2】本実施形態の乾式自動磁選機1の永久磁石13を掃除位置に配置した状態の概略説明図であり、(A)は側面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図3】本実施形態の乾式自動磁選機1の作動の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の乾式自動磁選機は、粉体含まれる磁性体を除去するものであり、磁性体を回収する作業を容易に行えるようにしたことに特徴を有している。
【0012】
本実施形態の乾式自動磁選機を採用する設備はとくに限定されない。例えば、非磁性粉体製造プラント等の設備において、製品を包装する前の工程おける粉体に含まれる磁性体を除去するために使用することができる。
【0013】
また、磁性体を除去する粉体もとくに限定されない。例えば、食品製造等の設備であれば、粉体として食品の原料や製品等を挙げることができ、また、除去する磁性体として主に鉄等を挙げることができる。
【0014】
<乾式自動磁選機1>
本実施形態の乾式自動磁選機1は、粉体を流すための流路に設けられるものであり、流路を流れる粉体から磁性体を除去するものである。本実施形態の乾式自動磁選機1は、後述する除去機構10のみで構成されていてもよいが、以下では、本実施形態の乾式自動磁選機1が粉体を流す粉体流路2hを有する磁選機ケーシング2を備えている場合を説明する。
【0015】
<磁選機ケーシング2>
図1において、符号2は本実施形態の乾式自動磁選機1の磁選機ケーシングを示している。この磁選機ケーシング2は、上端と下端との間を連通する粉体流路2hを有する中空な管状の構造体である。この磁選機ケーシング2の側面には、粉体流路2hと外部との間を連通する開口2aが設けられている(図1(B)参照)。この開口2aには、除去機構10が設けられている。
【0016】
なお、磁選機ケーシング2において開口2aが設けられている側面が、特許請求の範囲にいう「粉体流路における粉体の流れる方向と平行な側面」に相当する。
【0017】
また、磁選機ケーシング2に設ける開口2aの数、つまり、除去機構10の数はとくに限定されない。図1に示すように、開口2aを一箇所だけ設けて除去機構10を一個所だけ設けるようにしてもよいし、複数の開口2aを設けて各開口2aにそれぞれ除去機構10を設けてもよい。複数の開口2aを設けて複数の除去機構10を設ければ、粉体から磁性体を除去する効果を高めることができる。
【0018】
また、本実施形態の乾式自動磁選機1が磁選機ケーシング2を有しない場合には、配管等の粉体流路の側面、つまり、粉体の流れる方向と平行な側面に上述した開口が形成される。
【0019】
<除去機構10>
上述したように、磁選機ケーシング2の開口2aには、除去機構10が設けられている。
【0020】
<永久磁石13>
図1に示すように、除去機構10は、粉体中の磁性体を吸着する複数の永久磁石13を備えている。この複数の永久磁石13は軸状の永久磁石であり、その軸方向が磁選機ケーシング2の粉体流路2hを粉体の流れる方向と直交するように配設されている。また、複数の永久磁石13は、その第一端部(図1(B)では右側の端部)から一定の範囲に磁力を有しない非磁性部13bが設けられている。この非磁性部13bを設ける範囲はとくに限定されないが、あまり長くすると複数の永久磁石13と接触しても吸着されない磁性体が多くなる。したがって、非磁性部13bは、永久磁石13の全体の長さや使用する磁石の特性、磁選機ケーシング2の大きさ等にあわせて適切な範囲に調整すればよい。
【0021】
<一対の蓋部材14a,14b>
図1に示すように、複数の永久磁石13の第一端部と第二端部(図1(B)では左側の端部)には、一対の蓋部材14a,14bが設けられている。具体的には、一対の蓋部材14a,14bのうち、第一蓋部材14aは磁選機ケーシング2の粉体流路2hの内部に位置するように複数の永久磁石13の第一端部に設けられている。また、第二蓋部材14bは磁選機ケーシング2外に位置するように複数の永久磁石13の第二端部に設けられている。
【0022】
この一対の蓋部材14a,14bは板状の部材であり、磁選機ケーシング2の開口2aを塞ぐために設けられている。具体的には、第一蓋部材14aは、その面積が開口2aの開口面積よりも大きくなるように形成されており、磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の内面に面接触させることができるように設けられている(図2(B)参照)。そして、磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の内面に第一蓋部材14aが面接触すると、第一蓋部材14aによって磁選機ケーシング2の粉体流路2hと外部との間を遮断することできるように第一蓋部材14aが設けられている。また、第二蓋部材14bは、その面積が開口2aの開口面積よりも大きくなるように形成されており、磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の外面に面接触させることができるように設けられている(図1(B)参照)。そして、磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の外面に第二蓋部材14bが面接触すると、第二蓋部材14bによって磁選機ケーシング2の粉体流路2hと外部との間を遮断することできるように第二蓋部材14bが設けられている。
【0023】
また、第二蓋部材14bは、後述する除去部材移動機構17によって永久磁石13の軸方向に沿って移動可能に設けられている。例えば、第二蓋部材14bは、複数の永久磁石13を挿通する貫通孔を有しており、各貫通孔に永久磁石13が挿入された状態となるように複数の永久磁石13に取り付けられている。そして、第二蓋部材14bは、後述する掃除作業を行う場合以外は、複数の永久磁石13の第二端部近傍に配置されている(図1(B)、図3(B)参照)。
【0024】
<磁石移動機構15>
図1に示すように、磁選機ケーシング2には磁石移動機構15が設けられている。この磁石移動機構15は、第二蓋部材14bを介して複数の永久磁石13が連結された保持プレート15aを備えている。この保持プレート15aは、シリンダ機構を有する移動部15bを介して磁選機ケーシング2に連結されている。この移動部15bは、その伸縮方向が複数の永久磁石13の軸方向と平行になるように配設されている。言い換えれば、移動部15bは、その伸縮方向が磁選機ケーシング2の粉体流路2hを粉体の流れる方向と直交するように配設されている。具体的には、移動部15bのシリンダボディがその軸方向が磁選機ケーシング2の粉体流路2hを粉体の流れる方向と直交するように保持プレート15aに固定されている。また、移動部15bのロッドは磁選機ケーシング2に連結されている。したがって、移動部15bを伸縮させれば、保持プレート15aを磁選機ケーシング2に対して接近離間させることができるので、保持プレート15aとともに複数の永久磁石13を移動させて、複数の永久磁石13を磁選機ケーシング2の開口2aを通して粉体流路2hに挿入抜去できる。
【0025】
なお、移動部15bを伸長して第一蓋部材14aが磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の内面に面接触した状態が、特許請求の範囲にいう、複数の永久磁石13が掃除位置になった状態に相当する(図3(B)参照)。
また、第二蓋部材14bが複数の永久磁石13の第二端部近傍に配置されている状態において、移動部15bを収縮して第二蓋部材14bが磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の外面に面接触した状態が、特許請求の範囲にいう、複数の永久磁石13が吸着位置になった状態に相当する(図1(B)、図3(A)参照)。
【0026】
また、磁石移動機構15は、保持プレート15aの移動を案内する案内軸15cを有している。案内軸15cは、その軸方向が移動部15bの伸縮方向を平行になるように設けられており、その軸方向を移動部15bの伸縮方向と平行に保った状態で移動するように磁選機ケーシング2に取り付けられている。
【0027】
なお、案内軸15cは必ずしも設けなくてもよいが、案内軸15cを設ければ、保持プレート15aを安定して移動させることができる。
【0028】
<除去部材16>
図1に示すように、複数の永久磁石13にはそれぞれ除去部材16が設けられている。この除去部材16は、永久磁石13の断面形状と同じ形状に形成された貫通孔を有しており、この貫通孔に永久磁石13が挿通されている。この除去部材16は、永久磁石13の軸方向に沿って移動可能に設けられている。具体的には、除去部材16は、永久磁石13の軸方向に沿って移動でき、永久磁石13の軸方向に沿って移動すると、永久磁石13の表面に付着した磁性体を掻き落とすことができるように設けられている。例えば、除去部材16は、その貫通孔の内面が永久磁石13の表面と接触した状態で永久磁石13の軸方向に沿って移動できるように設けられている。
【0029】
<除去部材移動機構17>
図1に示すように、磁石移動機構15の保持プレート15aには除去部材移動機構17が設けられている。この除去部材移動機構17は、シリンダ機構を有する移動部17bを有している。この移動部17bは、そのシリンダボディがその軸方向が磁選機ケーシング2の粉体流路2hを粉体の流れる方向と直交するように保持プレート15aに固定されている。この移動部17bのロッドには、第二蓋部材14bが連結されている。そして、移動部17bは、その伸縮方向が複数の永久磁石13の軸方向と平行になるように配設されている。言い換えれば、移動部17bは、その伸縮方向が磁選機ケーシング2の粉体流路2hを粉体の流れる方向と直交するように配設されている。したがって、移動部15bを伸縮させれば、第二蓋部材14bを複数の永久磁石13の軸方向に沿って移動させることができる。言い換えれば、複数の除去部材16を複数の永久磁石13の軸方向に沿って移動させることができる。
【0030】
<本実施形態の乾式自動磁選機1による磁性体の回収作業>
本実施形態の乾式自動磁選機1が以上のような構造を有するので、以下のようにすれば、磁選機ケーシング2の粉体流路2hを流れる粉体から磁性体を回収することができる。
【0031】
まず、磁石移動機構15の移動部15bを収縮させて複数の永久磁石13が磁選機ケーシング2の粉体流路2h内に配置された状態とする。このとき、第二蓋部材14bが磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の外面に面接触した状態とし、第二蓋部材14bによって磁選機ケーシング2の粉体流路2hと外部との間を遮断した状態とする(図3(A))。なお、この状態では、除去部材移動機構17の移動部17bは収縮した状態に維持される。つまり、第二蓋部材14bは複数の永久磁石13の第二端部近傍に配置された状態に維持される(図3(A))。
【0032】
この状態で、磁選機ケーシング2の粉体流路2hに粉体を流せば、永久磁石13の磁力によって永久磁石13に接触した粉体中の磁性体は複数本の永久磁石13の表面に吸着される。
【0033】
ある程度の期間粉体を流し続ければ、複数本の永久磁石13の表面に磁性体が蓄積する。磁性体が蓄積すると粉体中の磁性体を複数本の永久磁石13の表面に吸着する能力が低下する。したがって、複数本の永久磁石13の表面に磁性体を吸着できなくなる前に、磁選機ケーシング2の粉体流路2hに粉体を流すことを停止し、複数本の永久磁石13の表面から磁性体を除去する。
【0034】
具体的には、磁石移動機構15の移動部15bを伸長させて、複数の永久磁石13を磁選機ケーシング2の粉体流路2hから抜去する。このとき、第一蓋部材14aが磁選機ケーシング2の開口が形成されている壁面の内面に面接触した状態となるまで移動部15bを伸長させる。言い換えれば、複数の永久磁石13が掃除位置となる状態、つまり、第一蓋部材14aによって磁選機ケーシング2の粉体流路2hと外部との間を遮断した状態まで移動部15bを伸長させる(図3(B))。
【0035】
複数の永久磁石13が掃除位置となると、掃除作業を実施する。つまり、除去部材移動機構17の移動部17bを伸長して、第二蓋部材14bとともに複数の除去部材16を第一蓋部材14aに向かって移動させる(図3(C))。このとき、複数の除去部材16によって複数の永久磁石13の表面に付着した磁性体が掻き落とされ、磁性体が複数の除去部材16から除去される。
【0036】
なお、磁性体には複数の永久磁石13の磁力が働いており、複数の除去部材16とともに複数の永久磁石13に沿って移動する磁性体が存在する場合がある。このような磁性体も、非磁性部13bまで移動されれば磁力が働くなるので、複数の永久磁石13の表面から除去することができる。
【0037】
第二蓋部材14bとともに複数の除去部材16が第一蓋部材14a近傍まで(つまり非磁性部13bまで)移動すると、掃除作業が終了するので、除去部材移動機構17の移動部17bを収縮させ、第二蓋部材14bとともに複数の除去部材16が複数の永久磁石13の第二端部近傍に配置された状態にする(図3(B))。
【0038】
すると、磁石移動機構15の移動部15bを収縮させて、再び複数の永久磁石13が磁選機ケーシング2の粉体流路2h内に配置された状態、つまり、複数の永久磁石13が吸着位置に配置された状態とする(図3(A))。
【0039】
複数の永久磁石13が吸着位置に配置された後、再び、磁選機ケーシング2の粉体流路2hに粉体を流せば、粉体中の磁性体は複数本の永久磁石13の表面に吸着される。そして、ある程度の期間が経過すると、再び、複数本の永久磁石13を磁選機ケーシング2の粉体流路2hから抜去し、複数本の永久磁石13の表面から磁性体を除去する。そして、複数本の永久磁石13の表面から磁性体が除去されると、再度、複数の永久磁石13が吸着位置に配置された状態とする。
【0040】
上記作業を継続すれば、間欠的に粉体から磁性体を除去し、除去した磁性体を回収することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態の乾式自動磁選機1によれば、磁石移動機構15によって軸状の永久磁石13を自動的に磁選機ケーシング2の粉体流路2hに挿入したり粉体流路2hから抜き取ったりできるので、作業者の負担を軽減できる。しかも、除去部材16によって永久磁石13に蓄積した磁性体を確実に永久磁石13から除去することができる。
【0042】
また、複数本の永久磁石13が吸着位置に配置された状態でも、複数本の永久磁石13が掃除位置に配置された状態でも、一対の蓋部材14a,14bによって磁選機ケーシング2の粉体流路2hの開口2aを塞いでおくことができる。したがって、吸着作業をしている間や、掃除作業をしている間に、粉体流路2hの開口2aから粉体等が外部に漏れたり、粉体流路2hの開口2aを通して外部から不純物が粉体流路2h内に入ることを防止できる。
【0043】
<永久磁石13について>
永久磁石13の第一端部から一定の範囲に磁力を有しない非磁性部13bを設けているが、この非磁性部13bを設ける長さはとくに限定されない。
【0044】
永久磁石13の長さはとくに限定されない。永久磁石13の長さは、磁選機ケーシング2の粉体流路2の奥行きの長さ(図1(B)では左右方向の長さ)と同等程度とすれば、粉体流路2を流れる粉体から磁性体を除去する効果を高めやすくなる。ここでいう永久磁石13の長さが粉体流路2の奥行きの長さと同程度とは、永久磁石13の第一端部に第一蓋材14aを設けた場合には、第一蓋材14aの厚さと永久磁石13の軸方向の長さを合せた長さが粉体流路2hの奥行きの長さと同程度になることも含んでいる。
【0045】
永久磁石13の断面形状もとくに限定されず、円形や矩形、三角形であってもよい。粉体流路2を粉体が流れる方向から永久磁石13を見たときに、ある程度の幅(面積)を有するものであればよい。
【0046】
また、永久磁石13を設ける数はとくに限定されない。永久磁石13を多く設置すれば、粉体から磁性体を除去する効果を高めることができる。一方、永久磁石13を多く設置すれば、磁選機ケーシング2の粉体流路2hを流れる粉体の流動抵抗が大きくなる。したがって、永久磁石13は、粉体の流れを阻害しない範囲である程度多く設ける方がよい。
【0047】
永久磁石13の配置もとくに限定されない。図1(B)に示すように、磁選機ケーシング2の粉体流路2hの軸方向(つま粉体が流れる方向)から永久磁石13を見たときに、粉体流路2hにおいて永久磁石13が存在しない部分が少なくなるように配置されていることが望ましい。例えば、粉体が流れる方向において異なる高さ(図1(A)では上下方向)に位置する永久磁石13は、粉体流路2hの幅方向(図1(B)では上下方向)の位置がズレた状態となるように(言い換えれば、粉体が流れる方向において重ならないように)、複数の永久磁石13を設置することが望ましい。
【0048】
<除去部材16について>
除去部材16は、上述したような貫通孔を有する環状の部材でなくてもよい。永久磁石13の表面に付着した磁性体を掻き落とすことができる構造を有していればよい。例えば、単なる板状の部材に貫通孔を形成して除去部材16としてもよい。
【0049】
さらに、除去部材16の素材は、永久磁石13の軸方向に沿って除去部材16が移動した際に、永久磁石13を損傷しない素材であればよく、とくに限定されない。例えば、除去部材16の素材は、永久磁石13の素材よりも柔らかい素材が好ましく、樹脂等を採用することができる。
【0050】
<磁石移動機構15について>
磁石移動機構15の移動部15bは、磁選機ケーシング2の粉体流路2hの軸方向と直交する方向と平行に保持プレート15aを移動させることができるものであればよい。移動部15bには、例えば、エアシリンダや油圧シリンダ、機械式シリンダ等を備えたシリンダ装置を採用してもよいし、サーボモータ等を採用してもよい。
【0051】
案内機構は、保持プレート15aの位置決めと移動の案内を行うことができればよく、上述したような案内軸15cを有する構造に限定されない。例えば、案内機構として、磁選機ケーシング2の粉体流路2hの軸方向と直交する方向と平行にレールを設けて、そのレールに沿って移動プレート16が移動するようにしてもよい。
【0052】
<除去部材移動機構17について>
除去部材移動機構17の移動部17bは、各永久磁石13に設けられた除去部材16を保持する第二蓋部材14bを永久磁石13の軸方向に沿ってに移動させることができるものであればよい。移動部17bには、例えば、エアシリンダや油圧シリンダ、機械式シリンダ等を備えたシリンダ装置を採用してもよいし、サーボモータ等を採用してもよい。
【0053】
<第一蓋材14aについて>
除去部材移動機構17によって永久磁石13が吸着位置に配置された状態では、磁選機ケーシング2の開口2aを塞ぐ必要があるため、第二蓋材14bを設けることが必要になるが、第一蓋材14aは必ずしも設けなくてもよい。第一蓋材14aを設けない場合には、永久磁石13から磁性体を除去する掃除作業を行っている間は磁選機ケーシング2の開口2aが開放された状態になるので、外部から不純物質等が侵入する恐れがある。したがって、第一蓋材14aを設けない場合には、開口2aを塞ぐ機構を磁選機ケーシング2に別途設けることが望ましい。
【0054】
なお、第一蓋材14aを設けない場合には、第二蓋材14bが永久磁石13の第一端部から外方まで移動しないように、磁石移動機構15の移動部15bの作動を制御する、または、永久磁石13の第一端部に第二蓋材14bの移動を制限するストッパ部材などを設けておくことが望ましい。
【0055】
<第二蓋材14bについて>
上記例では、第二蓋部材14bが除去部材移動機構17の移動部17bによって複数の永久磁石13の軸方向に移動する場合を説明したが、第二蓋部材14bは、永久磁石13や磁石移動機構15の保持プレート15aに固定されていてもよい。この場合には、除去部材移動機構17は、第一蓋材14aと第二蓋部材14bの間に、永久磁石13に沿って移動するプレートを別途設け、このプレートに複数の除去部材16を連結すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の乾式自動磁選機は、非磁性粉体製造プラント等において搬送される粉体に含まれる鉄等の不純物磁性体を除去する装置として適している。
【符号の説明】
【0057】
1 乾式自動磁選機
2 磁選機ケーシング
2h 粉体流路
10 除去機構
13 永久磁石
14a 第一蓋材
14b 第二蓋材
15 磁石移動機構
16 除去部材
17 除去部材移動機構

図1
図2
図3