(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171036
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20221104BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077408
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】薮野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西川 健幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 一樹
(72)【発明者】
【氏名】塩出 賢治
(72)【発明者】
【氏名】手島 成
(72)【発明者】
【氏名】村田 周和
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA03
4D006HA16
4D006HA19
4D006JA15A
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4D006KA17
4D006KA72
4D006KC02
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4D006KE06Q
4D006KE07P
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4D006KE28Q
4D006KE28R
4D006MA01
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB15
(57)【要約】
【課題】コストや手間を抑えつつ濾過運転の稼働率を高めることが可能な水処理装置及び水処理方法を提供する。
【解決手段】水処理装置は、中空糸膜モジュールと、前記中空糸膜モジュールの充水工程、圧抜き工程、逆洗工程及び排水工程のうち少なくとも1つの工程において、前記中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、前記測定部による圧力測定の結果に基づいて、前記少なくとも1つの工程の開始から終了までに要する時間を推定する推定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜モジュールと、
前記中空糸膜モジュールの充水工程、圧抜き工程、逆洗工程及び排水工程のうち少なくとも1つの工程において、前記中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、
前記測定部による圧力測定の結果に基づいて、前記少なくとも1つの工程の開始から終了までに要する時間を推定する推定部と、を備えた、水処理装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記充水工程において前記一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定し、
前記推定部は、前記充水工程の開始から前記一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間に基づいて、前記充水工程に要する時間を推定する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記排水工程において前記一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定し、
前記推定部は、前記排水工程の開始から前記一次側の圧力が一定になるまでの時間に基づいて、前記排水工程に要する時間を推定する、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記充水工程又は前記排水工程の推定時間に基づいて、前記中空糸膜モジュールのバブリング工程の時間の長短を推定する、請求項2又は3に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記逆洗工程において前記少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定し、
前記推定部は、前記逆洗工程の開始から前記少なくとも一方側における圧力が一定になるまでの時間に基づいて、前記逆洗工程に要する時間を推定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記測定部は、前記逆洗工程において前記少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定し、
前記推定部は、前記逆洗工程の開始から前記少なくとも一方側における圧力が最大圧力に到達するまでの時間に基づいて、前記逆洗工程に要する時間を推定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記逆洗工程の推定時間に基づいて、前記中空糸膜モジュールの薬液浸漬工程の時間の長短を推定する、請求項5又は6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記測定部は、前記中空糸膜モジュールの濾過工程において前記一次側及び前記二次側の圧力を測定し、
前記推定部は、前記濾過工程における前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の変動に基づいて、前記濾過工程の時間の長短を推定する、請求項1~7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記推定部による推定時間に基づいて、前記少なくとも1つの工程の設定時間を変更する設定変更部をさらに備えた、請求項1~8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記設定変更部は、前記推定部による推定時間に基づいて、前記充水工程、前記圧抜き工程、前記逆洗工程及び前記排水工程のうち複数の工程の設定時間を変更する、請求項9に記載の水処理装置。
【請求項11】
中空糸膜モジュールにより原水を濾過する水処理方法であって、
前記中空糸膜モジュールの充水工程、圧抜き工程、逆洗工程及び排水工程のうち少なくとも1つの工程において、前記中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定することと、
前記少なくとも一方側における圧力測定の結果に基づいて、前記少なくとも1つの工程の開始から終了までに要する時間を推定することと、
前記少なくとも1つの工程の推定時間に基づいて、前記少なくとも1つの工程の設定時間を変更することと、を含む、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置が知られている。この水処理装置では、濾過時間の経過に伴って中空糸膜の膜表面への不純物の付着量が増加するため、モジュールを定期的に洗浄する必要がある。
【0003】
この種の技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、外圧濾過式の中空糸膜モジュールにおいて一定時間濾過運転が実施された後、濾過運転から洗浄運転に切り替わる。洗浄運転では、運転シーケンスプログラムを実行することにより、薬液注入工程、加圧工程、充水工程、気体洗浄工程及び排水工程が順に実施され、中空糸膜が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の水処理装置において処理水(濾過水)の回収率を高めるためには、濾過運転の稼働率を高めることが必要である。そして、濾過運転の稼働率を高めるためには、中空糸膜モジュールの洗浄時間を可能な限り短縮し、装置の運転時間全体に占める濾過時間の割合を長く確保する必要がある。
【0006】
しかし、各洗浄工程の実施に要する時間は、例えばモジュールの本数、配管径や配管長又は水の流量等の様々なパラメータに依存し、現場や装置毎に異なるため、全ての現場や装置において一律に設定可能なものではない。このため、洗浄工程の時間を正確に把握するためには、各現場で工程時間を実測する必要があり、多大なコストや手間が必要になる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストや手間を抑えつつ濾過運転の稼働率を高めることが可能な水処理装置及び水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る水処理装置は、中空糸膜モジュールと、前記中空糸膜モジュールの充水工程、圧抜き工程、逆洗工程及び排水工程のうち少なくとも1つの工程において、前記中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、前記測定部による圧力測定の結果に基づいて、前記少なくとも1つの工程の開始から終了までに要する時間を推定する推定部と、を備える。
【0009】
この水処理装置によれば、中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力の時間変化に基づいて工程時間が推定されるため、現場において工程時間を実測する必要はない。このため、工程時間の実測に要するコストや手間を抑制し、推定された時間に基づいて各工程時間を設定することにより、余分な工程時間を減らすことができる。したがって、コストや手間を抑えつつ、濾過運転の稼働率を高めることができる。
【0010】
上記水処理装置において、前記測定部は、前記充水工程において前記一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定してもよい。前記推定部は、前記充水工程の開始から前記一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間に基づいて、前記充水工程に要する時間を推定してもよい。
【0011】
この構成によれば、充水工程に要する時間を容易に推定することができる。
【0012】
上記水処理装置において、前記測定部は、前記排水工程において前記一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定してもよい。前記推定部は、前記排水工程の開始から前記一次側の圧力が一定になるまでの時間に基づいて、前記排水工程に要する時間を推定してもよい。
【0013】
この構成によれば、排水工程に要する時間を容易に推定することができる。
【0014】
上記水処理装置において、前記推定部は、前記充水工程又は前記排水工程の推定時間に基づいて、前記中空糸膜モジュールのバブリング工程の時間の長短を推定してもよい。
【0015】
この構成によれば、バブリング工程の時間を適切な時間に変更することができるため、中空糸膜の洗浄時間の無駄を減らし、濾過運転の稼働率をより高めることができる。
【0016】
上記水処理装置において、前記測定部は、前記逆洗工程において前記少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定してもよい。前記推定部は、前記逆洗工程の開始から前記少なくとも一方側における圧力が一定になるまでの時間に基づいて、前記逆洗工程に要する時間を推定してもよい。
【0017】
この構成によれば、逆洗工程に要する時間を容易に推定することができる。
【0018】
上記水処理装置において、前記測定部は、前記逆洗工程において前記少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定してもよい。前記推定部は、前記逆洗工程の開始から前記少なくとも一方側における圧力が最大圧力に到達するまでの時間に基づいて、前記逆洗工程に要する時間を推定してもよい。
【0019】
この構成によれば、逆洗工程に要する時間を容易に推定することができる。
【0020】
上記水処理装置において、前記推定部は、前記逆洗工程の推定時間に基づいて、前記中空糸膜モジュールの薬液浸漬工程の時間の長短を推定してもよい。
【0021】
この構成によれば、薬液浸漬工程の時間を適切な時間に変更することができるため、中空糸膜の洗浄時間の無駄を減らし、濾過運転の稼働率をより高めることができる。
【0022】
上記水処理装置において、前記測定部は、前記中空糸膜モジュールの濾過工程において前記一次側及び前記二次側の圧力を測定してもよい。前記推定部は、前記濾過工程における前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の変動に基づいて、前記濾過工程の時間の長短を推定してもよい。
【0023】
この構成によれば、濾過工程の時間を適切な時間に変更することにより、装置の安全運転と濾過運転の稼働率とのバランスを図ることができる。
【0024】
上記水処理装置は、前記推定部による推定時間に基づいて、前記少なくとも1つの工程の設定時間を変更する設定変更部をさらに備えていてもよい。
【0025】
この構成によれば、工程の設定時間を自動で変更することができるため、作業者が手動で設定時間を変更する場合に比べて効率化を図ることができる。
【0026】
上記水処理装置において、前記設定変更部は、前記推定部による推定時間に基づいて、前記充水工程、前記圧抜き工程、前記逆洗工程及び前記排水工程のうち複数の工程の設定時間を変更してもよい。
【0027】
本発明の他の局面に係る水処理方法は、中空糸膜モジュールにより原水を濾過する方法である。この水処理方法は、前記中空糸膜モジュールの充水工程、圧抜き工程、逆洗工程及び排水工程のうち少なくとも1つの工程において、前記中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔で測定することと、前記少なくとも一方側における圧力測定の結果に基づいて、前記少なくとも1つの工程の開始から終了までに要する時間を推定することと、前記少なくとも1つの工程の推定時間に基づいて、前記少なくとも1つの工程の設定時間を変更することと、を含む。
【0028】
この方法によれば、中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力の時間変化に基づいて工程時間を推定し、その推定時間に基づいて工程の設定時間を変更するため、現場において工程時間を実測した上で設定時間を変更する必要はない。したがって、工程時間の実測に要するコストや手間を抑えつつ工程時間の無駄を減らすことが可能であり、濾過運転の稼働率を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、コストや手間を抑えつつ濾過運転の稼働率を高めることが可能な水処理装置及び水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態1に係る水処理装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る水処理方法の各工程における原水ポンプのオン/オフ及びバルブの開閉状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1の充水工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1の逆洗工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態1の排水工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態1の変形例の逆洗工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態2の変形例の逆洗工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態4における中空糸膜モジュールの膜間差圧の時間変化を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態5における水処理装置の構成を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の実施形態5の薬液浸漬工程におけるポンプのオン/オフ及びバルブの開閉状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0032】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る水処理装置1の構成を、
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、水処理装置1は、中空糸膜モジュール10と、原水供給部20と、バブリング用エア供給部30と、逆洗用エア供給部40とを主に備えている。
【0033】
中空糸膜モジュール10は、上端が固定部材13に固定された複数の中空糸膜11を有する中空糸膜束と、ハウジング12と、中空糸膜束の内側を上下に延びる導水管14と、散気盤15とを含む。ハウジング12内には、中空糸膜束、固定部材13及び散気盤15が収容されている。ハウジング12内の空間は、固定部材13によって原水空間S1と処理水空間S2とに仕切られている。中空糸膜11、導水管14及び散気盤15は、原水空間S1に収容されている。
【0034】
図1に示すように、ハウジング12の上部には、処理水空間S2に臨むように処理水の出口12Aが設けられ、ハウジング12の側部(長さ方向の中央よりも上側の部分)には、原水空間S1に臨むようにエア抜き口12Bが設けられ、ハウジング12の下部には、原水空間S1に臨むようにエア供給口12C及び排水口12Dが設けられている。これらの配管接続口(出口12A、エア抜き口12B、エア供給口12C及び排水口12D)の内径に対するハウジング12の内径の比率は、1.3以上12以下であり、2.5以上12以下であることが好ましく、3.0以上6.0以下であることがより好ましい。なお、ここでいうハウジング12の内径は、ハウジング12の長手方向に直交する方向の断面における内径である。
【0035】
導水管14は、原水空間S1に原水及びエアを供給するためのものである。
図1に示すように、導水管14は、上端部が固定部材13に固定されて端面が塞がれると共に、下端部がハウジング12の下部よりも下側に突き出ている。当該下端部に原水入口14Aとエア入口14Bとがそれぞれ設けられている。また導水管14には、導水管14の内側から原水空間S1に向かって原水及びエアの少なくとも一方を噴出するための孔14Cが多数形成されている。
【0036】
散気盤15は、原水空間S1にエアを分散させるためのものである。散気盤15は、中空糸膜束の径方向に広がる円板形状を有し、中空糸膜11の下端よりも下側に配置されている。散気盤15には、複数の通気孔(図示しない)が径方向に間隔を空けて形成されている。エア供給口12Cからハウジング12内に供給されたエアは、散気盤15の通気孔を通じて中空糸膜束に向かって分散する。
【0037】
図1に示すように、ハウジング12の出口12Aには、処理水配管50の上流端が接続されている。処理水配管50の下流端は、処理水槽(図示しない)の入口に接続されている。処理水配管50には、処理水バルブ51(開閉バルブ)とその下流側の流量計52とがそれぞれ設置されている。処理水配管50の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0038】
ハウジング12の排水口12Dには、排水配管53の上流端が接続されており、当該排水配管53には排水バルブ54(開閉バルブ)が設置されている。排水配管53の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0039】
ハウジング12のエア抜き口12Bには、エア抜き配管55の一端が接続されている。エア抜き配管55の他端側は、2本に分岐している。すなわち、エア抜き配管55は、第1分岐部55A、第2分岐部55B及び接続部55Cを含む。接続部55Cは一端部がエア抜き口12Bに接続され、他端部が第1分岐部55A及び第2分岐部55Bに接続されている。第1分岐部55Aは大気開放されており、第2分岐部55Bは排水配管53のうち排水バルブ54よりも下流側の部分に接続されている。接続部55Cには、エア抜きバルブ56(開閉バルブ)が設置されている。エア抜き配管55の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0040】
図1に示すように、処理水配管50と排水配管53とは、圧抜き配管57により互いに接続されている。圧抜き配管57の一端は、処理水配管50のうち処理水バルブ51よりも上流側の部分に接続されており、圧抜き配管57の他端は、排水配管53のうちエア抜き配管55の接続部よりも下流側の部分に接続されている。圧抜き配管57には、圧抜きバルブ58(開閉バルブ)が設置されている。圧抜き配管57の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0041】
原水供給部20は、原水配管21と、原水配管21に設置された原水ポンプ22及び原水バルブ23とを含む。原水配管21は、上流端が原水槽(図示しない)の出口に接続されると共に、下流端が導水管14の原水入口14Aに接続されている。原水配管21の径は、ハウジング12の径よりも小さい。原水バルブ23は、開閉バルブであり、原水配管21のうち原水ポンプ22よりも下流側に設置されている。
【0042】
バブリング用エア供給部30は、エア配管31と、第1エアバルブ32と、第2エアバルブ33と、流量計34とを含む。エア配管31は、下流端側が分岐しており、各分岐部分がハウジング12のエア供給口12C及び導水管14のエア入口14Bにそれぞれ接続されている。エア配管31の径は、ハウジング12の径よりも小さい。第1エアバルブ32及び第2エアバルブ33は、開閉バルブであり、エア配管31の各分岐部分にそれぞれ設置されている。エア配管31の上流端は、エアコンプレッサ(図示しない)に接続されている。
【0043】
逆洗用エア供給部40は、エア配管41と、エア配管41に設置されたエアバルブ42(開閉バルブ)とを含む。エア配管41は、上流端がエアコンプレッサ(図示しない)に接続されると共に、下流端が処理水配管50のうち圧抜き配管57の接続部よりも上流側の部分に接続されている。エア配管41の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0044】
水処理装置1は、中空糸膜モジュール10の充水工程、圧抜き工程、逆洗工程及び排水工程のうち少なくとも1つの工程において、中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側のうち少なくとも一方側における圧力を3秒以下の間隔(例えば、2秒以下や1秒以下の間隔)で測定する測定部60をさらに備える。本実施形態における測定部60は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する一次側圧力センサ61と、中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する二次側圧力センサ62とを含む。
図1に示すように、一次側圧力センサ61は、原水配管21のうち原水バルブ23と原水入口14Aとの間の部分に設置されている。なお、一次側圧力センサ61は、導水管14におけるハウジング12から延出されている部分又はハウジング12における原水空間S1に臨む位置に設置されてもよい。
【0045】
二次側圧力センサ62は、処理水配管50とエア配管41との接続部に設置されている。本実施形態における一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62は、0.1秒以下の間隔で圧力測定を行い、その測定データは制御部70に送られて記憶される。つまり、各測定データはロギングデータとして記憶される。
【0046】
なお、一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62に加えて図略のエア抜き口圧力センサが設けられていてもよい。エア抜き口圧力センサは、エア抜き配管55における接続部55Cに設置される。エア抜き口圧力センサは、0.1秒以上で且つ3秒以下の間隔で圧力測定を行い、各測定データは制御部70に送られて記憶される。つまり、各測定データはロギングデータとして記憶される。ただし、圧力センサの数が増えるほど、解析に手間がかかり、またコストが上がるなどの問題があるため、エア抜き口圧力センサを省略し、一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62からのデータを用いてデータ解析することが望ましい。
【0047】
水処理装置1は、測定部60による圧力測定の結果に基づいて、充水工程、圧抜き工程、逆洗工程及び排水工程のうち少なくとも1つの工程の開始から終了までに要する時間を推定する推定部71と、推定部71による推定時間に基づいて当該少なくとも1つの工程の設定時間を変更する設定変更部72とをさらに備えている。なお、推定部71及び設定変更部72は制御部70の一機能として実現されてもよい。以下、推定部71による各工程時間の推定について説明する。
【0048】
図2は、上記水処理装置1を用いて実施される本実施形態に係る水処理方法の各工程を示すとともに、各工程における原水ポンプ22のオン/オフ状態及び各バルブの開閉状態を示している。
図2中の丸印は、原水ポンプ22のオン状態又はバルブの開状態を示し、空欄は原水ポンプ22のオフ状態又はバルブの閉状態を示している。
【0049】
まず、第1充水工程では、原水ポンプ22が作動し、原水バルブ23及びエア抜きバルブ56がそれぞれ開放される。これにより、原水配管21を通じて導水管14内に原水が供給され、孔14Cから原水空間S1に原水が供給される。
【0050】
第1充水工程において、一次側圧力センサ61は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定し、制御部70は測定された圧力値を順次記憶する。これにより、第1充水工程中における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示すデータ(
図3)が得られる。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側圧力を示している。なお、二次側圧力センサ62も、中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を3秒以下の間隔で測定し、制御部70は測定された圧力値を順次記憶する。
【0051】
推定部71は、記憶された圧力測定データに基づいて、第1充水工程の開始から終了までに要する時間を推定する。具体的には、推定部71は、第1充水工程の開始(
図3中の時点t0)から一次側の圧力の変化の変曲点(同図中の時点t1、圧力が急上昇し始める時点)に到達するまでの時間に基づいて、第1充水工程に要する時間を推定する。この時点t1は、ハウジング12内の原水がエア抜き配管55に流入し始めるタイミングに相当する。つまり、ハウジング12の原水空間S1が原水で満たされるタイミングに相当する。
【0052】
第1充水工程が終了すると濾過工程に移る。濾過工程では、エア抜きバルブ56が閉じられると共に、処理水バルブ51が開放される。原水は、中空糸膜11の外面から内面に向かって膜壁を透過し、膜の中空部を通じて処理水空間S2に流入する。その後、処理水が出口12Aを通してハウジング12の外に流出し、処理水配管50を通じて処理水槽(図示しない)に回収される。
【0053】
濾過工程において、一次側圧力センサ61は中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を測定し、二次側圧力センサ62は中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を測定する。この圧力測定の間隔は、第1充水工程と同様に3秒以下でもよいがこれに限定されず、3秒より長くてもよい。
【0054】
濾過工程後には、濾過中に中空糸膜11の外面に付着した不純物を除去するための洗浄運転が実施される。洗浄運転には、逆洗準備工程、逆洗工程、エア抜き工程、第2充水工程、散気盤バブリング工程、第3充水工程、導水管バブリング工程、排水工程及び圧抜き工程が含まれる。
【0055】
まず、逆洗準備工程(圧抜き工程)では、原水ポンプ22がオンからオフに切り替わる。
【0056】
次に、逆洗工程では、原水バルブ23及び処理水バルブ51が閉じられると共に、エアバルブ42及び排水バルブ54が開放される。すなわち、エアバルブ42の開放と同時に中空糸膜モジュール10の二次側の処理水に、コンプレッサによって加圧されたエアの圧力が瞬間的に付加される。これにより、中空糸膜モジュール10の二次側の処理水がエアにより加圧され、処理水は中空糸膜11の内面から外面に向かって膜壁を透過する。これにより、中空糸膜11の外面に付着した不純物は剥がれ落ちやすい状態になる。このとき、一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62が3秒以下の間隔で圧力測定を行っているため、中空糸膜11が内面から加圧された後であって、膜表面の不純物が剥がれ落ちやすい状態になる前の状態の圧力をも検知することができる。
【0057】
このように、逆洗工程において、一次側圧力センサ61は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する。これにより、逆洗工程中における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示すロギングデータ(
図4)が得られる。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側圧力を示している。
図4に示すように、一次側圧力は、逆洗工程の開始後瞬間的に上昇して最大圧力に到達し、その後低下して一定になる。この一次側圧力の瞬間的な上昇は、その後に急激な減圧が生じていることからも分かるが、加圧された処理水が大量に中空糸膜11を透過し始めたことに起因するものと推測される。そして、原水の排水配管53への排出に伴って一次側圧力が急激に低下し、その後に、一次側圧力が次第に低下する。このとき一次側圧力が次第に低下するのは、原水空間S1内の水量が次第に減ることに起因しているものと推測される。そして、一次側の圧力が一定になるときは、原水空間S1中の処理水が全てハウジング12から排出されたときであると推測される。
【0058】
推定部71は、制御部70に記憶された圧力測定データに基づいて、逆洗工程に要する時間を推定する。具体的には、推定部71は、逆洗工程の開始(
図4中の時点t0)から一次側の圧力が一定になるまで(同図中の時点t1)の時間に基づいて、逆洗工程に要する時間を推定する。なお、一次側の圧力が一定になったことを推定するには、その後に一次側圧力が一定の値に安定することが検出されることが必要である。このため、推定部71は、時点t1よりも後の測定データを参照することによって、時点t0から時点t1に基づいて逆洗工程に要する時間を推定する。
【0059】
なお、逆洗工程において、二次側圧力センサ62も中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を3秒以下の間隔で測定してもよい。この場合、
図4と同様の圧力ロギングデータが得られる。そして、推定部71は、逆洗工程の開始から二次側の圧力が一定になるまでの時間に基づいて、逆洗工程に要する時間を推定してもよい。
【0060】
次に、エア抜き工程(圧抜き工程)では、エアバルブ42及び排水バルブ54が閉じられると共に、圧抜きバルブ58が開放される。これにより、中空糸膜モジュール10の二次側に溜まっているエアが圧抜き配管57を通して排出される。
【0061】
次に、第2充水工程では、第1充水工程と同様に、原水ポンプ22が作動し、原水バルブ23及びエア抜きバルブ56がそれぞれ開放される。そして、第1充水工程と同様に、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力が3秒以下の間隔で測定され、その圧力測定の結果に基づいて第2充水工程の開始から終了までに要する時間が推定される。
【0062】
次に、散気盤バブリング工程では、原水ポンプ22がオンからオフに切り替わり、原水バルブ23が閉じられるとともに、第1エアバルブ32が開放される。なお、エア抜きバルブ56は開放されたままに維持される。これにより、エア供給口12Cからハウジング12内にエアが供給され、当該エアが散気盤15により中空糸膜束に向かって分散する。これにより、中空糸膜束が気泡によって揺動し、膜表面に付着した不純物が剥がれ落ちる。
【0063】
散気盤バブリング工程においても、一次側圧力センサ61は中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を測定し、二次側圧力センサ62は中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を測定する。この圧力測定の間隔は、3秒以下でもよいがこれに限定されず、3秒より長くてもよい。
【0064】
次に、第3充水工程では、第1及び第2充水工程と同様に、原水ポンプ22が作動し、原水バルブ23及びエア抜きバルブ56がそれぞれ開放される。これにより、散気盤バブリング工程で減った原水空間S1内の原水が補充される。そして、第1及び第2充水工程と同様に、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力が3秒以下の間隔で測定され、その圧力測定の結果に基づいて第3充水工程の開始から終了までに要する時間が推定される。
【0065】
次に、導水管バブリング工程では、原水ポンプ22がオンからオフに切り替わり、原水バルブ23が閉じられ、第2エアバルブ33が開放される。これにより、コンプレッサによる加圧エアが、エア入口14Bから導水管14内に供給され、孔14Cを通じて原水空間S1に供給される。これにより、中空糸膜束がバブリング洗浄される。
【0066】
導水管バブリング工程においても、一次側圧力センサ61は中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を測定し、二次側圧力センサ62は中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を測定する。この圧力測定の間隔は、3秒以下でもよいがこれに限定されず、3秒より長くてもよい。
【0067】
次に、排水工程では、エア抜きバルブ56が閉じられると共に、排水バルブ54が開放される。なお、第2エアバルブ33は開放されたまま維持される。これにより、原水空間S1内の原水がエアにより押され、排水口12Dからハウジング12の外に排出される。
【0068】
排水工程において、一次側圧力センサ61は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する。これにより、排水工程中における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示すロギングデータ(
図5)が得られる。
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側圧力を示している。
図5に示すように、一次側圧力は、排水工程の開始から一定時間経過後に上昇し、最大圧力になった後、低下し、その後一定になる。
【0069】
推定部71は、記憶された圧力測定データに基づいて、排水工程の開始から終了までに要する時間を推定する。具体的には、推定部71は、排水工程の開始(
図5中の時点t0)から一次側の圧力が一定になるまで(同図中の時点t1)の時間に基づいて、排水工程に要する時間を推定する。なお、一次側の圧力が一定になったことを推定するには、その後に一次側圧力が一定の値に安定することが検出されることが必要である。このため、推定部71は、時点t1よりも後の測定データを参照することによって、時点t0から時点t1に基づいて排水工程に要する時間を推定する。
【0070】
最後に、圧抜き工程では、排水バルブ54が開放されたままで第2エアバルブ33が閉じられる。これにより、ハウジング12内(原水空間S1)のエア抜きが行われる。以上のプロセスによって中空糸膜モジュール10が洗浄された後、第1充水工程に戻り、濾過運転が再開される。
【0071】
図2中の一連のプロセス(第1充水工程~圧抜き工程)が終了した後、設定変更部72は、充水工程、逆洗工程及び排水工程の推定時間に基づいて、これらの工程の設定時間を変更する。なお、この設定時間の変更は、設定変更部72により自動で実施される場合に限定されず、ユーザが手動で変更してもよい。
【0072】
以上の通り、本実施形態に係る水処理装置1によれば、中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化に基づいて充水工程、逆洗工程及び排水工程の各工程時間が推定されるため、現場において各工程時間を実測する必要はない。このため、工程時間の実測に要するコストや手間を抑制することができる。また、推定時間に基づいて各工程時間を再設定することにより、余分な工程時間を減らすことができる。したがって、コストや手間を抑えつつ濾過運転の稼働率を高めることができる。
【0073】
なお、充水工程、逆洗工程及び排水工程だけでなく、逆洗準備工程、エア抜き工程、圧抜き工程においても中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側の圧力を3秒以下の間隔で測定し、その測定結果に基づいて当該工程の開始から終了までに要する時間を推定してもよい。具体的には、これら逆洗準備工程、エア抜き工程、圧抜き工程の各工程の開始から圧力がゼロになるまでの時間に基づいて、当該工程に要する時間を推定してもよい。そしてこの推定時間に基づいて、当該工程の設定時間を変更してもよい。
【0074】
逆洗工程において、エアではなく液体を用いて2次側の処理液を加圧してもよい。この場合、逆洗工程における中空糸膜モジュール10の一次側圧力は、時間経過に伴って
図6に示すように変化する。すなわち、一次側圧力は、逆洗開始後上昇し、開始時点t0から時間が経過した時点t1以降ほぼ一定になる。そして、推定部71は、逆洗工程の開始(
図7中の時点t0)から一次側の圧力が一定になるまで(同図中の時点t1)の時間に基づいて、逆洗工程に要する時間を推定する。
【0075】
また自動で設定時間を変更する場合の頻度は特に限定されず、例えば1時間に1回でもよいし、1日に1回でもよいし、1週間に1回でもよいし、1月に1回でもよい。この頻度は、原水の種類(例えば、河川水、排水又は下水)や季節等に応じて適宜決定される。
【0076】
また充水工程、逆洗工程及び排水工程の全てについて設定時間を変更してもよいがこれに限定されず、一部の工程についてのみ設定時間を変更してもよい。設定時間変更の対象となる工程は、現場の状況に応じて適宜決定される。例えば、原水ポンプ22の流量変動が大きい場合や原水配管21による充水の状況を目視確認するのが困難な場合には、充水工程の設定時間を変更することが有効である。
【0077】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る水処理装置及び水処理方法について説明する。実施形態2は、基本的に実施形態1と同様であるが、逆洗工程における工程時間の推定が実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0078】
実施形態2では、推定部71は、逆洗工程の開始から一次側の圧力が最大圧力に到達するまでの時間に基づいて、逆洗工程に要する時間を推定する。すなわち、
図4のグラフ中における時点t0から時点t2までの時間が、逆洗工程に要する時間として推定される。この推定方法は、膜表面に付着した不純物が、例えば無機成分主体の剥離性が良いものである場合に好適に用いることができる。つまり、剥離性の良い不純物の場合、逆洗水が中空糸膜11を透過し始めると同時に膜表面から剥離するため、一次側圧力が最大値を示す時点t2に達したところで、逆洗が事実上終了したと推測できる。
【0079】
またエアに代えて液体により逆洗する場合も、上記同様に工程時間の推定が可能である。
図7は、逆洗の開始前に処理水をポンプにより予め循環させ、逆洗工程の開始と同時に中空糸膜11の二次側を一気に加圧した場合のグラフである。
図7の横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側圧力を示している。
図7に示すように、この場合も一次側圧力は、逆洗開始後の所定時間の経過後に瞬間的に最大圧力まで上昇する(時点t2)。そして、その後、一次側圧力は次第に低減し、一定の圧力に安定する(時点t1)。この最大圧力に到達するまでの時間、すなわち
図7のグラフ中の時点t0~時点t2までの時間を、逆洗工程に要する時間として推定することができる。
【0080】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る水処理装置及び水処理方法について説明する。実施形態3は、基本的に実施形態1と同様であるが、推定部71がバブリング工程の時間の長短を推定する点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0081】
図2中の一連の工程(第1充水工程~圧抜き工程)からなるサイクルは繰り返され、各サイクルの充水工程及び排水工程において工程時間が推定される。本実施形態における推定部71は、充水工程又は排水工程の推定時間に基づいて、バブリング工程の時間の長短を推定する。
【0082】
具体的には、上記サイクルを繰り返したときに充水工程の推定時間が減少傾向である場合には、ハウジング12内における濁質成分の蓄積量が増加傾向であるため、推定部71はバブリング工程の時間が望ましい時間長さに対して短い(バブリングが足りていない)と推定する。一方、上記サイクルを繰り返したときに充水工程の推定時間が一定又は増加傾向である場合には、ハウジング12内における濁質成分の蓄積量が一定又は減少傾向であるため、推定部71はバブリング工程の時間が望ましい時間長さに対して長い又は長過ぎると推定する。
【0083】
このような推定結果に基づいて、バブリング工程の時間を調整することにより、ハウジング12内の濁質成分の蓄積を抑制しつつバブリング工程の時間を可能な限り短縮し、濾過運転の稼働率を高めることができる。例えば、SS(Suspended Solid)成分が多い排水が原水として用いられる場合には、このようなバブリング時間の最適化が有効である。なお、充水工程の推定時間に代えて排水工程の推定時間が用いられてもよい。また充水工程又は排水工程の推定時間の変動傾向を判断するタイミングは特に限定されず、例えば10サイクル毎でもよいし、1日に1回でもよいし、1週間に1回でもよい。
【0084】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る水処理装置及び水処理方法について説明する。実施形態4は、基本的に実施形態1と同様であるが、推定部71が濾過工程の時間の長短を推定する点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0085】
図8は、
図2中の一連の工程からなるサイクルを繰り返した場合における中空糸膜モジュール10の膜間差圧の変動を示すグラフである。膜間差圧とは、中空糸膜モジュール10の一次側圧力と二次側圧力との差である。
図8において、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の膜間差圧を示している。また
図8中、例えば時点t0~t1、時点t1~t2及び時点t2~t3の間が、それぞれ1つのサイクルに相当する。
【0086】
実施形態4における推定部71は、濾過工程における中空糸膜モジュール10の膜間差圧の変動に基づいて、濾過工程の時間の長短を推定する。具体的には、推定部71は、濾過工程の開始時点(例えば、
図3中の時点t0、t1、t2及びt3)における膜間差圧が、連続するサイクル間において上昇傾向にある場合には、濾過工程の時間が望ましい長さよりも長いと推定する。一方、推定部71は、濾過工程の開始時点における膜間差圧が、連続するサイクル間において一定又は下降傾向にある場合、濾過工程の時間が望ましい長さよりも短いと推定する。
【0087】
このような推定に基づき、膜間差圧の過剰な上昇を抑制しつつ、濾過運転の稼働率及び処理水の回収率が上がるように濾過工程の時間を最適化することができる。例えば、地下水や水道水が原水として用いられる場合には、濾過工程の時間を標準的な30分よりも長く延ばすことにより、稼働率及び水回収率を上げることができる。なお、膜間差圧の初期値の変動傾向を推定するための期間は特に限定されず、例えば10サイクルに1回の頻度でもよいし、1日又は1週間に1回の頻度でもよい。
【0088】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5に係る水処理装置及び水処理方法について説明する。実施形態5は、基本的に実施形態1と同様であるが、推定部71が中空糸膜モジュール10の薬液浸漬工程の時間の長短を推定する点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0089】
まず、中空糸膜モジュール10の薬液浸漬工程について、
図9及び
図10に基づいて説明する。薬液浸漬工程は、中空糸膜11の内部に入り込んだファウリング成分を薬品により洗い流す工程である。実施形態5に係る水処理装置1Aは、実施形態1の構成に加えて薬液供給部80をさらに備える。薬液供給部80は、薬液ポンプ81と、薬液配管82とを含む。
図9に示すように、薬液配管82は、上流端側に薬液ポンプ81が設置されると共に、下流端が原水配管21のうち原水バルブ23よりも下流側の部分に接続されている。
【0090】
図10は、薬液浸漬における各工程での原水ポンプ22及び薬液ポンプ81のオン/オフ状態並びに各バルブの開閉状態を示している。
図10中、丸印がポンプのオン状態又はバルブの開状態を示し、空欄がポンプのオフ状態又はバルブの閉状態を示している。
【0091】
まず、薬液注入工程では、薬液ポンプ81が作動するとともに、原水バルブ23及びエア抜きバルブ56がそれぞれ開放される。これにより、ハウジング12の原水空間S1に薬液が供給される。薬液の種類は特に限定されないが、例えば硫酸、硝酸又は塩酸等の酸類の他、酸化剤、アルカリ剤、界面活性剤、キレート剤又はこれらの組み合わせを用いることができる。
【0092】
次に、充水工程では、薬液ポンプ81を停止し、原水ポンプ22が作動する。これにより、原水配管21及び導水管14を通じて原水空間S1に原水が供給される。
【0093】
次に、浸漬工程では、原水ポンプ22を停止すると共に原水バルブ23を閉じ、所定時間待機する。これにより、中空糸膜11が薬液を含む原水中で所定時間保持される。
【0094】
次に、エアバブリング工程では、第1エアバルブ32が開放される。これにより、薬液を含む原水が原水空間S1に充たされた状態で中空糸膜11がバブリング洗浄される。
【0095】
次に、排水工程では、エア抜きバルブ56及び第1エアバルブ32が閉じられると共に、排水バルブ54及び第2エアバルブ33が開放される。これにより、薬液及び不純物を含む原水がエアにより押され、ハウジング12の外に排出される。その後の圧抜き工程では、排水バルブ54が開放されたままで第2エアバルブ33が閉じられ、ハウジング12内(原水空間S1)が圧抜きされる。
【0096】
次に、充水工程では、上記と同様、原水ポンプ22が作動し、排水バルブ54が閉じられると共に原水バルブ23及びエア抜きバルブ56が開放される。これにより、原水空間S1内に原水が再び充たされる。
【0097】
次に、エアバブリング工程では、原水ポンプ22を停止し、原水バルブ23を閉じ、第1エアバルブ32を開放する。これにより、ハウジング12内にエアが供給され、当該エアが散気盤15により中空糸膜11に向かって上向きに分散する。
【0098】
次に、排水工程では、エア抜きバルブ56及び第1エアバルブ32が閉じられると共に、排水バルブ54及び第2エアバルブ33が開放される。これにより、原水空間S1内の水がエアによりハウジング12の外に押し出される。その後、圧抜き工程では、第2エアバルブ33のみが閉じられ、原水空間S1内が圧抜きされる。
【0099】
以上のようにして、中空糸膜モジュール10の薬液浸漬工程が実施される。この薬液浸漬工程は、
図2の運転サイクルを繰り返す際に所定の頻度で、例えば1日に1回、1週間に1回又は1月に1回等の頻度で実施されてもよい。なお、
図10中の最後の4つの工程(充水~圧抜き)からなるサイクルは、ハウジング12内の薬液が十分に排出されるまで所定回数繰り返される。
【0100】
本実施形態における推定部71は、逆洗工程の推定時間に基づいて、中空糸膜モジュール10の薬液浸漬工程の時間の長短を推定する。具体的には、推定部71は、薬液浸漬工程の前後に実施される逆洗工程の推定時間を比較し、当該推定時間が一定又は長くなる傾向にある場合、薬液浸漬工程の時間(
図10中の浸漬工程の時間)が、望ましい時間長さに対して短いと推定する。一方、推定部71は、薬液浸漬工程の前後に実施される逆洗工程の推定時間を比較し、当該推定時間が短くなる傾向にある場合、薬液浸漬工程の時間(
図10中の浸漬工程の時間)が、望ましい時間長さに対して長いと推定する。このような推定に基づき、薬液浸漬による洗浄効果を確保しつつ、濾過運転の稼働率及び処理水の回収率が上がるように薬液浸漬工程の時間を最適化することができる。
【0101】
なお、本実施形態では、中空糸膜モジュール10の一次側から薬液を注入する場合を説明したが、中空糸膜モジュール10の二次側から薬液を注入し、当該薬液を二次側から一次側に押し出してもよい。
【実施例0102】
(実施例1)
塩化鉄模擬水を原水として使用し、これを
図1の構成を備えた水処理装置を用いて濾過した。具体的には、下記の表1中の各工程を順に実施し、その後上記実施形態のように圧力測定のログデータに基づいて工程の設定時間を表1の通り変更した。その結果、安定な濾過運転を維持しつつ、濾過運転の稼働率を3.6%向上させることができた。
【0103】
【0104】
また逆洗時に透過液を使用し、下記の表2中の各工程を順に実施した。そして、上記実施形態のように圧力測定のログデータに基づいて工程の設定時間を表2の通り変更した。その結果、安定な濾過運転を維持しつつ、濾過運転の稼働率を2.5%向上させることができた。
【0105】
【0106】
(実施例2)
工業用水を原水として使用し、これを
図9の構成を備えた水処理装置を用いて濾過した。そして、上記実施形態の通り、逆洗工程の推定時間の変動傾向に基づいて薬液浸漬工程(次亜塩素酸ナトリウム濃度が100mg/lの水中に中空糸膜を浸漬)の設定時間を表3の通り変更した。表3において、No.7~10の工程からなるサイクルの繰り返し回数は5回とした。薬液浸漬工程の時間を短縮することにより、濾過運転の稼働率を向上させることができた。
【0107】
【0108】
また中空糸膜モジュールの2次側から薬液を注入し、表4中の各工程を順に実施することにより薬液浸漬工程を実施した。そして、上記実施形態の通り、逆洗工程の推定時間の変動傾向に基づいて薬液浸漬工程の設定時間を表4の通り変更した。これにより、薬液浸漬工程の時間を短縮し、濾過運転の稼働率を向上させることができた。
【0109】
【0110】
今回開示された実施形態及び実施例は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。