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特開2022-171565研磨用組成物、研磨方法および研磨済基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171565
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨方法および研磨済基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221104BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047909
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2021077571
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章太
(72)【発明者】
【氏名】陳 景智
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA09
5F057AA14
5F057AA16
5F057AA28
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA08
5F057EA09
5F057EA10
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA22
5F057EA26
5F057EA28
5F057EA29
5F057EA32
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、研磨用組成物を用いた研磨において、特定の材料の適度に高い研磨速度、および2種以上の異なる材料の間の適切な研磨速度比が実現される。
【解決手段】本発明は、砥粒と、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子と、多価カルボン酸(塩)と、酸化剤とを含有し、pHが6未満である、研磨用組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子と、多価カルボン酸(塩)と、酸化剤とを含有し、pHが6未満である、研磨用組成物。
【請求項2】
側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ビニルアルコールと、他のモノマーとの共重合体、および前記共重合体の誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記多価カルボン酸(塩)は、分子内に水酸基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、下記式(I)で示されるポリアルキレンオキシド基を構造中に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨用組成物:
【化1】

上記式(I)中、Xは2以上の整数であり、かつnは2以上の整数である。
【請求項6】
前記側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンチレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリヘプチレングリコール、ポリオクチレングリコール、ポリノニレングリコール、およびポリデシレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
前記側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記砥粒は、表面に有機酸官能基が共有結合した砥粒である、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む研磨対象物を研磨するために用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する、研磨方法。
【請求項11】
前記研磨対象物は、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項12】
前記研磨対象物が基板であり、請求項10または11に記載の研磨方法によって前記基板を研磨することを含む、研磨済基板の製造方法。
【請求項13】
前記基板は、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む、請求項12に記載の研磨済基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨方法および研磨済基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業においては、通常、半導体基板(例えばウェハ)表面の平坦度を高めるために、平坦化技術が使用されている。化学機械研磨(chemical mechanical polishing, CMP)は、一般的に知られている平坦化技術の1つである。化学機械研磨技術は、例えば、シリカ、アルミナ、セリア等の砥粒、防蝕剤、界面活性剤等を含む研磨用組成物を使用して、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する技術である。
【0003】
近年、半導体基板として、ゲルマニウム材料を含むシリコン基板(本明細書において、「ゲルマニウム含有基板」とも称する)も普及してきている。よって、ゲルマニウム含有基板の研磨に適用される研磨用組成物へのニーズも次第に増加してきている。
【0004】
特許文献1には、(A)無機粒子、有機粒子、またはこれらの混合物もしくは複合体と、(B)少なくとも1種の酸化剤と、(C)水性媒体と、を含む化学機械研磨組成物が開示されている。また、この文献の化学機械研磨組成物には、当該化学機械研磨組成物を、ゲルマニウム元素製またはシリコンゲルマニウム製の材料に対する化学機械研磨に適用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-527298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化学機械研磨のプロセスにおいて、特定の材料に対する高い研磨速度の向上が要求されている。また、2以上の異なる材料を含む研磨対象物を研磨するとき、この研磨対象物の表面に段差が生じる場合があり、この段差の低減が要求されている。また、2以上の異なる材料を含む研磨対象物を研磨するとき、ある材料が、他の材料の表面以下まで過剰に削れるディッシングと呼ばれる現象が生じる場合があり、このディッシングの低減が要求されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の化学機械研磨組成物では、特定の材料の高い研磨速度を実現しつつ、2種以上の異なる材料を含む研磨対象物を研磨するときの段差の低減、およびディッシングの低減を行うことは難しいとの問題がある。
【0008】
そして、本発明者は、検討の結果、段差およびディッシングと、各材料の研磨速度とが関係することを見出した。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、研磨用組成物を用いた研磨において、特定の材料の適度に高い研磨速度、および2種以上の異なる材料の間の適切な範囲の研磨速度比を実現しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題を解決するための一態様としては、以下の手段が挙げられる。
【0011】
砥粒と、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子と、多価カルボン酸(塩)と、酸化剤とを含有し、pHが6未満である、研磨用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、研磨用組成物を用いた研磨において、特定の材料の適度に高い研磨速度、および2種以上の異なる材料の間の適切な研磨速度比を実現しうる手段が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0014】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下の範囲)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0015】
<研磨用組成物>
本発明の一態様は、砥粒と、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子と、多価カルボン酸(塩)と、酸化剤とを含有し、pHが6未満である、研磨用組成物に関する。
【0016】
上記課題が解決されうるメカニズムを本発明者は以下のように推測している。本発明の一態様に係る研磨用組成物において、酸化剤は、研磨対象物中の特定の材料に作用して、特定の材料の研磨を容易とする。これより、酸化剤は、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料、ポリシリコン等)の研磨速度を向上させることに寄与する。また、多価カルボン酸(塩)は、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料、ポリシリコン等)の研磨速度を向上させることに寄与する。この理由は、詳細は不明であるが、研磨用組成物中の電気伝導度や、多価カルボン酸(塩)自身の分子構造による特性等に由来すると考えられる。そして、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、研磨対象物中の特定の材料の表面に吸着して、特定の材料の親水性を低下させ、研磨用組成物と特定の材料との反発力を高める。よって、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料、ポリシリコン等)の研磨速度を低下させることに寄与する。また、本発明の一態様に係る研磨用組成物のpHが6未満であることで、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料、ポリシリコン等)の研磨速度が過剰に高くなること、および他の特定の材料(例えば、酸化ケイ素等)の研磨速度が過剰に低くなることが抑制される。これらの結果、本発明の一態様に係る研磨用組成物を用いた研磨において、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度が適度に高く、かつ過剰に高くなることもなく、優れた範囲となる。また、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料およびポリシリコンの間、ゲルマニウム含有材料および酸化ケイ素の間等)で適切な範囲の研磨速度の比が実現される。そして、高い研磨効率での研磨が実現され、段差およびディッシングの低減も良好に実現されることとなる。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0017】
以下、研磨用組成物に含まれうる各成分や、研磨対象物等について説明する。
【0018】
[砥粒]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、砥粒を含む。砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨することで、研磨速度を向上させるよう作用する。
【0019】
砥粒は、特に制限されず、無機粒子および有機粒子のいずれであってもよい。無機粒子としては、特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子等が挙げられる。有機粒子としては、特に制限されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチル(polymethyl methacrylate, PMMA)粒子等が挙げられる。これらの中でも、砥粒は、シリカ(シリカ砥粒)が好ましく、コロイダルシリカ(コロイダルシリカ砥粒)がより好ましい。
【0020】
砥粒は、表面修飾されていてもよい。シリカ等の砥粒は、酸性条件下でゼータ電位の値がゼロに近いため、酸性条件下では砥粒同士が互いに電気的に反発せず凝集を起こしやすい。これに対し、酸性条件下でもゼータ電位が比較的大きい正または負の値を有するよう表面修飾された砥粒は、酸性条件下においても互いに強く反発して良好に分散する。その結果、研磨用組成物の保存安定性が向上する。そして、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。このような表面修飾された砥粒は、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の金属を分子構造内に有するカップリング剤、または、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基等の官能基を有するカップリング剤等を砥粒と混合し、砥粒の表面に物理的に吸着または化学的に結合させること等により得られる。また、シリカ等の砥粒は、塩基性条件下では、表面修飾如何に関わらずゼータ電位は負の値を示すため、基本的には良好に分散する。但し、表面修飾した砥粒は未修飾の砥粒よりもゼータ電位の絶対値がより大きいため、さらに安定的に分散しうる。
【0021】
表面修飾された砥粒としては、特に制限されないが、表面に有機酸官能基が共有結合した(本明細書において、「有機酸が固定化された」とも称する)砥粒が好ましい。さらに、これらの中でも、表面に有機酸が固定化されたシリカ(表面に有機酸が固定化されたシリカ砥粒)が好ましく、表面に有機酸が固定化されたコロイダルシリカ(表面に有機酸が固定化されたコロイダルシリカ砥粒)がより好ましい。有機酸官能基は、酸の状態であっても、塩の状態であってもよい。これらの砥粒によれば、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。有機酸のコロイダルシリカ表面への固定化は、有機酸の官能基をコロイダルシリカの表面に化学的に結合させることにより行われる。コロイダルシリカと有機酸を単に共存させただけでは、有機酸をコロイダルシリカ表面に固定化させることはできない。有機酸の1種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化させたければ、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”,Chem.Commun.246-247(2003)に記載されている方法により行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3-mercaptopropyl)trimethoxysilane)等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後、過酸化水素でチオール基を酸化することにより、表面にスルホン酸が固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。本願の実施例で使用されたコロイダルシリカもこの方法によって製造されている。あるいは、カルボン酸をコロイダルシリカ表面に固定化させたいのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”,Chemistry Letters,3,228-229(2000)に記載されている方法により行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステル(2-nitrobenzyl ester)を含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後、光照射することにより、表面にカルボン酸が固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0022】
砥粒の形状は、特に制限されず、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱などの多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有するいわゆる繭型形状、複数の粒子が一体化しているいわゆる会合型球形状、複数の粒子がほぼ一列につながった数珠型形状、表面に複数の突起を有するいわゆる金平糖形状、ラグビーボール形状、ラグビーボール形状よりもさらに細い針型形状等、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。これらの中でも、繭型形状であることが好ましい。繭型形状とすることで、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0023】
砥粒の平均一次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは7nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上であり、よりさらに好ましくは25nm以上であり、特に好ましくは30nm以上である。これらの範囲であると、研磨速度がより向上する。また、砥粒の平均一次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは120nm以下であり、より好ましくは80nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下であり、特に好ましくは40nm以下である。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。なお、BET法により砥粒の比表面積を測定することができ、測定された比表面積に基づいて、砥粒の平均一次粒子径の値を算出できる。
【0024】
砥粒の平均二次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上であり、特に好ましくは50nm以上である。これらの範囲であると、研磨速度がより向上する。また、砥粒の平均二次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは250nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下であり、特に好ましくは100nm以下である。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。砥粒の平均二次粒子径の値は、動的光散乱法により測定することができる。
【0025】
砥粒は、市販品を使用してもよく、合成品を使用してもよい。
【0026】
砥粒は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
研磨用組成物中の砥粒の濃度は、特に制限されないが、研磨用組成物の総質量に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.5質量%以上である。これらの範囲であると、研磨速度がより向上する。また、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。また、研磨用組成物中の砥粒の濃度は、特に制限されないが、研磨用組成物の総質量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下である。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0028】
[側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子を含む。側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、特定の材料の研磨速度を低下させるよう作用する。
【0029】
側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子としては、このような構造のものであれば特に制限されないが、下記式(I)で示されるポリアルキレンオキシド基を構造中に含むことが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
上記式(I)中、Xは2以上の整数であり、かつnは2以上の整数である。
【0032】
上記式(I)中のC2xの部分は、アルキレン基部分を表す。アルキレン基部分は、直鎖状のアルキレン基であっても、分岐状のアルキレン基であってもよい。また、上記式(I)で示されるポリアルキレンオキシド基を構造中に含む水溶性高分子は、直鎖状のアルキレン基部分を有する構成単位と、分岐状のアルキレン基部分を有する構成単位とを含んでいてもよい。
【0033】
上記式(I)中、Xは、2以上の整数であれば特に制限されないが、好ましくは3以上の整数である。また、Xは、特に制限されないが、好ましくは12以下の整数であり、より好ましくは6以下の整数であり、さらに好ましくは5以下の整数であり、特に好ましくは4以下の整数である。これらの中でも、Xは、3であることが特に好ましい。
【0034】
上記式(I)中、nは、繰り返し単位数(構成単位数)を表す。nは、2以上の整数であれば特に制限されないが、好ましくは4以上の整数であり、より好ましくは5以上の整数であり、さらに好ましくは6以上の整数であり、特に好ましくは12以上の整数である。また、nは、特に制限されないが、好ましくは150以下の整数であり、より好ましくは100以下の整数であり、さらに好ましくは50以下の整数であり、特に好ましくは20以下の整数である。
【0035】
上記式(I)の化合物を使用することで、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0036】
また、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子としては、ラクタム構造を有さず、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子が好ましい。
【0037】
側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子としては、特に制限されないが、例えば、ポリアルキレングリコールが挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンチレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリヘプチレングリコール、ポリオクチレングリコール、ポリノニレングリコール、ポリデシレングリコール等が挙げられる。側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンチレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリヘプチレングリコール、ポリオクチレングリコール、ポリノニレングリコール、およびポリデシレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、ポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0038】
なお、ここで、例えば、ポリプロピレングリコールは、「ポリトリメチレンエーテルグリコール」、「ポリメチルエチレンエーテルグリコール」、「ポリジメチルメチルエーテルグリコール」などの総称である。上記のポリブチレングリコール以下のポリアルキレングリコールについても、同様に、直鎖構造を有するポリアルキレングリコール、および種々の分岐構造を有するポリアルキレングリコールの総称である。
【0039】
これらの化合物を使用することで、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0040】
側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上である。これらの範囲であると、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。また、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは3,000以下であり、より好ましくは1,000未満であり、さらに好ましくは800以下である。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0041】
側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリエチレンオキシド(Sigma-Aldrich製)を標準物質として、以下の条件で測定することができる。
【0042】
装置:東ソー株式会社製 型式:HLC-8320GPC
カラム:KF-802.5(Shodex社製)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1mL/min
検出器:LS Laser Light Scattering Detector,
Shodex RI detector
オーブン温度:30℃
注入量:100μl。
【0043】
側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、市販品を使用してもよく、合成品を使用してもよい。
【0044】
側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
研磨用組成物中の側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の濃度(研磨用組成物1L中の側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは0.01g/L以上であり、より好ましくは0.1g/L以上であり、さらに好ましくは0.5g/L以上であり、特に好ましくは1g/L以上であり、最も好ましくは2g/L以上である。これらの範囲であると、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等)がより低下する。また、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。また、研磨用組成物中の側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の濃度(研磨用組成物1L中の側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは20g/L以下であり、より好ましくは10g/L以下であり、さらに好ましくは5g/L以下であり、特に好ましくは2.5g/L以下である。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0046】
[側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子をさらに含んでいてもよい。側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子は、特定の材料の研磨速度を低下させるよう作用する。この作用から、2種以上の異なる材料を含む研磨対象物を研磨するときの段差およびディッシングの低減効果のさらなる向上が期待される。
【0047】
側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子としては、このような構造のものであれば特に制限されないが、ビニルアルコール単位(-CH-CH(OH)-により表される構造部分;以下「VA単位」ともいう。)を構造内に含む化合物等が好ましい。
【0048】
VA単位を構造内に含む化合物は、全繰り返し単位が実質的にVA単位から構成されていてもよい。また、VA単位を構造内に含む化合物は、VA単位に加え、非ビニルアルコール単位(ビニルアルコール以外のモノマーに由来する構成単位、以下「非VA単位」ともいう。)をさらに含む化合物であってもよい。非VA単位としては、特に制限されず、例えば、エチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2-ブテンジオール等に由来する構成単位が挙げられる。ビニルアルコールに由来する構成単位を含むポリマーは、非VA単位を含む場合、一種類の非VA単位のみを含んでもよく、二種類以上の非VA単位を含んでもよい。VA単位を構造内に含む化合物において、全繰り返し単位のモル数に占めるVA単位のモル数の割合は、特に制限されないが、好ましくは50%以上であり、より好ましくは65%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、特に好ましくは75%以上である(上限100%)。
【0049】
側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体(側鎖中にアルコール性水酸基を有するポリビニルアルコール誘導体)、ビニルアルコールと、他のモノマーとの共重合体(側鎖中にアルコール性水酸基を有する、ビニルアルコールと、他のモノマーとの共重合体)、および前記共重合体の誘導体(側鎖中にアルコール性水酸基を有する、ビニルアルコールと、他のモノマーとの共重合体の誘導体)からなる群より選択される少なくとも1種等が好ましい。
【0050】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、特に制限されないが、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは65モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは75モル%以上である(上限100モル%)。
【0051】
ポリビニルアルコール誘導体としては、例えば、変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。変性ポリビニルアルコールは、非VA単位として、ビニルアルコール単位のアルコール性水酸基の一部を他の官能基に置換した構造(以下、「変性VA単位」とも称する。)を含む。
【0052】
変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限されないが、例えば、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、リン酸変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、アミノ変性ポリビニルアルコール、4級アミノ変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコールを環状アセタール化することにより得られる化合物(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルエチラール、ポリビニルメチラール等)等が挙げられる。
【0053】
ビニルアルコールと、他のモノマーとの共重合体の誘導体としては、特に制限されないが、例えば、VA単位および変性VA単位に加えて、例えば、エチレン由来の構成単位、長鎖アルキル基を有するビニルエーテル由来の構成単位、アクリロイル基およびメタクリロイル基のうちの少なくとも一方を有する化合物由来の構成単位等の構成単位をさらに含む化合物等が挙げられる。
【0054】
また、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子としては、ラクタム構造を有さず、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子が好ましい。
【0055】
これらのことから、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0056】
これらの化合物を使用することで、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0057】
側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは3,000以上であり、さらに好ましくは8,000以上である。また、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは100,000以下であり、さらに好ましくは50,000以下である。これらの範囲であると、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0058】
側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリ(ビニルアルコール)(Sigma-Aldrich製)を標準物質として、以下の条件で測定することができる。
【0059】
装置:東ソー株式会社製 型式:HLC-8320GPC
カラム:OHpak SB-806HQ + SB-803 HQ(Shodex社製)
溶離液:0.1M NaCl水溶液
流量:1mL/min
検出器:LS Laser Light Scattering Detector,
Shodex RI detector
オーブン温度:40℃
注入量:100μl。
【0060】
側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子は、市販品を使用してもよく、合成品を使用してもよい。
【0061】
側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
研磨用組成物中の側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の濃度(研磨用組成物1L中の側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは0.01g/L以上であり、より好ましくは0.05g/L以上であり、さらに好ましくは0.1g/L以上であり、特に好ましくは0.3g/L以上である。これらの範囲であると、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。また、研磨用組成物中の側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の濃度(研磨用組成物1L中の側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは10g/L以下であり、より好ましくは5g/L以下であり、さらに好ましくは1g/L以下であり、特に好ましくは0.8g/L以下である。これらの範囲であると、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等)、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0063】
[ラクタム構造を有する水溶性高分子]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、ラクタム構造を有する水溶性高分子を含んでいてもよいが、ラクタム構造を有する水溶性高分子を実質的に含有しないことが好ましい。ラクタム構造を有する水溶性高分子を実質的に含有しないことによって、本発明の効果がより向上する。
【0064】
本明細書において、「ラクタム構造を有する水溶性高分子を実質的に含有しない」とは、研磨用組成物中のラクタム構造を有する水溶性高分子の濃度(研磨用組成物の総質量に対するラクタム構造を有する水溶性高分子の質量)が1質量ppm未満であることを表す。本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、ラクタム構造を有する水溶性高分子を含有しないこと、すなわち、研磨用組成物中のラクタム構造を有する水溶性高分子の濃度が0質量ppmであることが特に好ましい。
【0065】
本明細書における「ラクタム構造」としては、例えば、β-ラクタム構造、γ-ラクタム構造、δ-ラクタム構造、ε-カプロラクタム構造、その他のラクタム構造等が挙げられる。ラクタム構造を有する水溶性高分子としては、例えば、ラクタム構造を含むモノマーに由来する構成単位を含む水溶性高分子等が挙げられる。なお、本明細書において、「ラクタム構造を含むモノマー」には、ラクタムの窒素原子に重合性基(例えば、ビニル基)を備えるモノマーが含まれる。
【0066】
ラクタム構造を有する水溶性高分子としては、特に制限されないが、例えば、ラクタム構造を含むモノマーの単独重合体もしくは共重合体、ラクタム構造を含むモノマーと、他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。他のモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、ビニルアルコール、酢酸ビニル等が挙げられる。共重合体のタイプは、特に制限されないが、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、その他のタイプの共重合体等が挙げられる。
【0067】
ラクタム構造を有する水溶性高分子の一例としては、ラクタム構造を含むモノマーのホモポリマー(ポリラクタム)が挙げられる。ポリラクタムとしては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルバレロラクタム、ポリビニルラウロラクタム、ポリビニルピペリドン等が挙げられる。
【0068】
ラクタム構造を有する水溶性高分子の重量平均分子量の下限値は、特に制限されないが、例えば、1,000以上、5,000以上、10,000以上等が挙げられる。また、ラクタム構造を有する水溶性高分子の重量平均分子量の上限値は、特に制限されないが、例えば、2,800,000以下、1,200,000以下、50,000以下等が挙げられる。なお、ラクタム構造を有する水溶性高分子の重量平均分子量の測定方法は、ラクタム構造を有する水溶性高分子が側鎖中にアルコール性水酸基を有しない場合は、上記の側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の測定方法と同様である。また、ラクタム構造を有する水溶性高分子が側鎖中にアルコール性水酸基を有する場合は、上記の側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子の測定方法と同様である。
【0069】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物がラクタム構造を有する水溶性高分子を実質的に含有しないとき、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、ラクタム構造を有さず、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子であることが好ましい。
【0070】
また、本発明の一実施形態に係る研磨用組成物がラクタム構造を有する水溶性高分子を実質的に含有しないとき、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子は、ラクタム構造を有さず、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子であることが好ましい。
【0071】
[多価カルボン酸(塩)]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、多価カルボン酸(塩)を含む。多価カルボン酸(塩)は、特定の材料の研磨速度を向上させるよう作用する。
【0072】
本明細書において、「多価カルボン酸(塩)」とは、多価カルボン酸が、多価カルボン酸そのものであっても、多価カルボン酸の塩であってもよいことを表す。そして、「多価カルボン酸(塩)を含む」とは、多価カルボン酸および多価カルボン酸の塩のうちの少なくとも一方(多価カルボン酸、多価カルボン酸の塩、またはこれらの両方)を含むことを表す。
【0073】
多価カルボン酸(塩)としては、特に制限されず、公知のカルボン酸、公知のカルボン酸の塩等が挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸(塩)としては、ジカルボン酸、ジカルボン酸の塩、トリカルボン酸、トリカルボン酸の塩が好ましく、トリカルボン酸、トリカルボン酸の塩がより好ましい。
【0074】
また、多価カルボン酸(塩)は、分子内に水酸基を有することが好ましい。多価カルボン酸である、またはその塩を構成する、ジカルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、2-ペンテン二酸、メチレンコハク酸(イタコン酸)、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、2,4-ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸、グルタル酸、2,5-フランジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、タルトロン酸、酒石酸等が挙げられる。多価カルボン酸である、またはその塩を構成する、トリカルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アコニット酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、トリメリット酸、クエン酸、イソクエン酸、アガリン酸等が挙げられる。多価カルボン酸である、またはその塩を構成する、4価以上のポリカルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ピロメリト酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸等が挙げられる。
【0075】
これらのことから、多価カルボン酸(塩)としては、例えば、リンゴ酸、リンゴ酸の塩、タルトロン酸、タルトロン酸の塩、酒石酸、酒石酸の塩、クエン酸、クエン酸の塩、イソクエン酸、イソクエン酸の塩、アガリン酸、アガリン酸の塩が好ましく、クエン酸、クエン酸の塩、イソクエン酸、イソクエン酸の塩、アガリン酸、アガリン酸の塩がより好ましく、クエン酸、クエン酸の塩がさらに好ましい。
【0076】
これらの多価カルボン酸(塩)を使用することで、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等)、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0077】
多価カルボン酸(塩)としては、多価カルボン酸の塩が好ましい。多価カルボン酸の塩は、多価カルボン酸の全てのカルボキシ基が塩を構成していてもよく、多価カルボン酸の一部のカルボキシ基のみが塩を構成していてもよいが、多価カルボン酸の一部のカルボキシ基のみが塩を構成していることが好ましい。
【0078】
塩の種類としては、特に制限されず、公知の塩の種類が挙げられる。具体例としては、アルカリ金属の塩、第2族元素の塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、アンモニウム塩が好ましい。
【0079】
これらの多価カルボン酸の塩を使用することで、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等)、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0080】
これらのことから、多価カルボン酸(塩)としては、ジカルボン酸のアンモニウム塩、トリカルボン酸のアンモニウム塩が好ましく、リンゴ酸のアンモニウム塩、タルトロン酸のアンモニウム塩、酒石酸のアンモニウム塩、クエン酸のアンモニウム塩、イソクエン酸のアンモニウム塩、アガリン酸のアンモニウム塩がより好ましく、クエン酸のアンモニウム塩、イソクエン酸のアンモニウム塩、アガリン酸のアンモニウム塩がさらに好ましく、クエン酸のアンモニウム塩が特に好ましい。また、クエン酸のアンモニウム塩としては、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸二水素アンモニウムが好ましく、クエン酸水素二アンモニウムがより好ましい。
【0081】
なお、多価カルボン酸(塩)は、後述するpH調整剤としての機能を兼ねていてもよい。
【0082】
多価カルボン酸(塩)は、市販品を使用してもよく、合成品を使用してもよい。
【0083】
多価カルボン酸(塩)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
研磨用組成物中の多価カルボン酸(塩)の濃度(研磨用組成物1L中の多価カルボン酸(塩)の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは0.01g/L以上であり、より好ましくは0.05g/L以上であり、さらに好ましくは0.1g/L以上であり、特に好ましくは0.5g/L以上である。これらの範囲であると、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等)がより向上する。また、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。また、研磨用組成物中の多価カルボン酸(塩)の濃度(研磨用組成物1L中の多価カルボン酸(塩)の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは10g/L以下であり、より好ましくは5g/L以下であり、さらに好ましくは3g/L以下であり、特に好ましくは1.5g/L以下である。これらの範囲であると、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等がより良好な範囲となる。
【0085】
[酸化剤]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、酸化剤を含む。酸化剤は、特定の材料の研磨速度を向上させるよう作用する。
【0086】
酸化剤としては、特に制限されないが、例えば、0.3V以上の標準電極電位を有するものが好ましい。このような酸化剤を使用することで、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等)、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。上記の標準電極電位の上限は、特に制限はないが、3.0V以下、2.5V以下、または2.0V以下等が好ましい。0.3V以上の標準電極電位を有する酸化剤としては、特に制限されないが、例えば、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、有機酸化剤、オゾン水、銀(II)の塩、鉄(III)の塩等が挙げられる、また、例えば、過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソりん酸、ペルオキソ硫酸、過ほう酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、硫酸、過硫酸、ジクロロイソシアヌル酸、これらの塩等が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ヨウ素酸、次亜塩素酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが好ましく、過酸化水素がより好ましい。
【0087】
なお、標準電極電位とは、酸化反応に関与するすべての化学種が標準状態となっているときの電極電位のことをいい、下記の数式1で表される。
【0088】
【数1】
【0089】
数式1中、Eは標準電極電位であり、△Gは酸化反応の標準ギブス(Gibbs)エネルギー変化であり、Kはその平衡定数(酸化剤が酸化反応を起こす際の平衡定数)であり、Fはファラデー定数(ここで、ファラデー定数Fは、電気素量(1.602×10-19[coulomb])とアボガドロ定数N(6.022×1023[mol-1])の積:96485[coulomb/mol])であり、Rはモル気体定数(ここで、モル気体定数Rは、ボルツマン定数kとアボガドロ定数Nの積:8.314[J・K-1・mol-1])であり、Tは絶対温度[K]であり、nは酸化反応に関与する電子数である。なお、lnはネイピア数e(≒2.718)を底とする自然対数である。数式1からわかるように、標準電極電位は温度に伴って変動するため、本明細書では、25℃における標準電極電位を採用する。なお、水溶液系の標準電極電位については、例えば改定4版化学便覧(基礎編)II,pp464~468(日本化学会編)に記載されている。
【0090】
酸化剤は、市販品を使用してもよく、合成品を使用してもよい。
【0091】
酸化剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0092】
研磨用組成物中の酸化剤の濃度(研磨用組成物1L中の酸化剤の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは0.1g/L以上であり、より好ましくは1g/L以上であり、さらに好ましくは6g/L以上であり、特に好ましくは10g/L以上である。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度がより向上する。また、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。また、研磨用組成物中の酸化剤の濃度(研磨用組成物1L中の酸化剤の質量(g))は、特に制限されないが、好ましくは100g/L以下であり、より好ましくは50g/L以下であり、さらに好ましくは30g/L以下であり、特に好ましくは20g/L以下である。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0093】
[pH調整剤]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、pH調整剤をさらに含んでもよい。pH調整剤は、研磨用組成物のpH値を所望の値に調整するよう作用する。
【0094】
なお、本明細書において、pH調整剤とは、上記の多価カルボン酸(塩)以外の化合物であって、研磨用組成物のpHを調整する機能を有する化合物を表すものとする。
【0095】
pH調整剤としては、特に制限されないが、例えば、公知の酸または塩基を使用することができる。
【0096】
pH調整剤としての酸は、例えば、無機酸、有機酸、キレート剤等が挙げられる。pH調整剤としての無機酸の具体例としては、特に制限されないが、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、フッ化水素酸(HF)、硼酸(HBO)、炭酸(HCO)、次亜リン酸(HPO)、亜リン酸(HPO)、リン酸(HPO)等が挙げられる。pH調整剤としての有機酸としては、特に制限されないが、例えば、モノカルボン酸、有機硫酸等が挙げられる。モノカルボン酸の具体例としては、特に制限されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、ヒドロキシ酢酸、サリチル酸、グリセリン酸、乳酸、グリオキシル酸、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、フェノキシ酢酸等が挙げられる。また、有機硫酸の具体例としては、特に制限されないが、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸等が挙げられる。pH調整剤としての塩基は、例えば、アルカリ金属の水酸化物またはその塩、第2族元素の水酸化物またはその塩、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。第2族元素の具体例としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
【0097】
これらの中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸が好ましく、硫酸、硝酸がより好ましく、硝酸がさらに好ましい。このようなpH調整剤を使用することで、特定の材料の研磨速度(例えば、ゲルマニウム含有材料等)、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0098】
pH調整剤は、市販品を使用してもよく、合成品を使用してもよい。
【0099】
pH調整剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0100】
pH調整剤の濃度は、特に制限されないが、研磨用組成物のpHが6未満となる濃度であることが好ましく、後述する好ましいpHの範囲内となる濃度であることがより好ましい。
【0101】
[pH]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物のpHは、6未満である。
【0102】
研磨用組成物のpHの下限は、特に制限されないが、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度がより向上する。また、2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。また、腐食がより生じ難くなり、多様な材料を含む研磨対象物への適用が可能となる。また、安全性がより向上し、取り扱いがより容易となる。また、研磨用組成物のpHの上限は、6未満であれば特に制限されないが、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。これらの範囲であると、特定の材料(例えば、ゲルマニウム含有材料等)の研磨速度、および2種以上の異なる材料の間(例えば、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のシリコン含有化合物との間等)の研磨速度の比がより良好な範囲となる。なお、研磨用組成物のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製 LAQUA(登録商標))により評価することができる。
【0103】
[分散媒]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、分散媒をさらに含んでもよい。分散媒は、研磨用組成物中の各成分を分散または溶解させるよう作用する。
【0104】
分散媒中の水の含有量は、特に制限されないが、分散媒の総質量に対して50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、水のみであることがさらに好ましい。水としては、研磨対象物の汚染や他の成分の作用を阻害することを防止するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100質量ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、水としては、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0105】
分散媒としては、有機溶媒をさらに含有していてもよい。有機溶媒としては、特に制限されず公知の有機溶媒を用いることができる。
【0106】
有機溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
[他の成分]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、上記の各成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、公知の研磨用組成物に使用される成分等が挙げられる。他の成分としては、例えば、アミノ酸、キレート剤、金属防食剤、防腐剤、抗カビ剤等が挙げられる。
【0108】
[研磨用組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物の製造方法は、砥粒、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子、多価カルボン酸(塩)、および酸化剤を混合することを含み、製造される研磨用組成物のpHが6未満となるものであれば、特に制限されない。この際、必要に応じて、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子、pH調整剤、分散媒、他の成分をさらに混合してもよい。各成分を混合する際の混合方法は特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。また混合温度は特に制限されないが、一般的には10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0109】
[研磨対象物]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物を適用する研磨対象物は、特に制限されず、例えば、CMP分野で用いられる公知の研磨対象物等が挙げられる。
【0110】
研磨対象物としては、特に制限されないが、例えば、平面を有する部材が好ましく、基板がより好ましく、半導体基板がさらに好ましい。基板としては、特に制限されないが、例えば、単一層からなる基板、2以上の層が積層した構造を有する基板、表面上に2種類以上の物質が並んだ構造を有する基板等が挙げられる。これらの中でも、表面上に2種類以上の物質が並んだ構造を有する基板が好ましく、表面上に2種類または3種類の物質が並んだ構造を有する基板がより好ましく、表面上に2種類の物質が交互に並んだ構造を有する基盤がさらに好ましい。
【0111】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物に適用される研磨対象物を構成する材料は、特に制限されない。しかしながら、本発明の一実施形態に係る研磨用組成物に適用される研磨対象物は、シリコンおよびゲルマニウムのうちの少なくとも一方を含む材料を含むことが好ましく、ゲルマニウム含有材料を含むことがより好ましく、SiGe(1-X)(ただし0≦X<1)で表されるゲルマニウム含有材料を含むことがさらに好ましく、シリコンゲルマニウム(SiGe(1-Y)(ただし0<Y<1)で表される材料)を含むことがよりさらに好ましく、SiGe(1-Z)(ただし0.01≦Z<1)で表される材料を含むことが特に好ましい。ここで、Zは、0.05以上0.95以下が好ましく、0.1以上0.90以下がより好ましい。本発明の一実施形態に係る研磨用組成物をこれらの材料を含む研磨対象物に適用することで、特定の材料の研磨速度がより良好な範囲となる。
【0112】
また、本発明の一実施形態に係る研磨用組成物に適用される研磨対象物は、2種以上の材料を含むことが好ましい。2種以上の材料を含む研磨対象物としては、特に制限されないが、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む研磨対象物が好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む研磨対象物を研磨するために用いられることが好ましい。ここで、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物としては、特に制限されないが、例えば、ケイ素-酸素結合を有する材料、ケイ素-ケイ素結合を有する材料、ケイ素-窒素結合を有する材料等が挙げられる。また、ケイ素-酸素結合を有する材料としては、特に制限されないが、例えば、酸化ケイ素、BD(ブラックダイヤモンド:SiOCH)、FSG(フルオロシリケートグラス)、HSQ(水素シルセスキオキサン)、CYCLOTENE、SiLK、MSQ(Methyl silsesquioxane)等が挙げられる。また、ケイ素-ケイ素結合を有する材料としては、特に制限されないが、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン、poly-Si)、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、n型ドープ単結晶シリコン、p型ドープ単結晶シリコン等が挙げられる。そして、ケイ素-窒素結合を有する材料としては、特に制限されないが、例えば、窒化ケイ素(SiN)、炭窒化ケイ素(SiCN)等が挙げられる。これらの中でも、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物としては、ケイ素-酸素結合を有する材料、ケイ素-ケイ素結合を有する材料が好ましく、酸化ケイ素、ポリシリコンがより好ましい。
【0113】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物をこれらの2種以上の材料を含む研磨対象物に適用することで、特定の材料の研磨速度がより良好な範囲となる。また、2種以上の異なる材料の間の研磨速度の比がより良好な範囲となる。
【0114】
よって、本発明の一実施形態に係る研磨用組成物に適用される研磨対象物は、ゲルマニウム含有材料と、ケイ素-酸素結合を有する材料およびケイ素-ケイ素結合を有する材料のうちの少なくとも一方(ケイ素-酸素結合を有する材料、ケイ素-ケイ素結合を有する材料、またはこれらの両方)とを含むことが好ましく、シリコンゲルマニウムと、酸化ケイ素およびポリシリコンのうちの少なくとも一方(酸化ケイ素、ポリシリコン、またはこれらの両方)とを含むことがより好ましく、シリコンゲルマニウムと、酸化ケイ素と、ポリシリコンとを含むことがさらに好ましい。
【0115】
また、本発明の一実施形態に係る研磨用組成物に適用される研磨対象物は、上記以外の他の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、特に制限されないが、例えば、銅、アルミニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、チタン、タングステン、これらの合金等の金属等が挙げられる。また、例えば、アルミナ等の金属酸化物等が挙げられる。そして、例えば、窒化チタン、窒化タンタル等の金属窒化物等が挙げられる。
【0116】
なお、シリコンおよびゲルマニウムのうちの少なくとも一方を含む材料、ゲルマニウム含有材料、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物、および他の材料は、それぞれ、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
[研磨方法および研磨済基板の製造方法]
本発明の他の一態様は、上記の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する、研磨方法に関する。本発明の一実施形態に係る研磨方法において、使用する研磨用組成物および適用する研磨対象物の詳細は、それぞれ、上記で説明した通りである。これより、本発明の一実施形態に係る研磨方法において、好ましい研磨対象物の一例としては、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む研磨対象物が挙げられる。
【0118】
本発明の一実施形態に係る研磨方法において、研磨手法、研磨条件および研磨装置等の詳細については、特に制限されず、公知の手法、条件および装置等を使用することができる。
【0119】
研磨ステップで使用する研磨装置として、一般的な化学機械研磨プロセスで用いる研磨装置を使用することができる。かかる研磨装置には、研磨対象物を保持するキャリアおよび回転数を変更することのできるモーター等が設置されていると共に、研磨パッド(または研磨布)を貼り付けることのできる研磨定盤を備える。
【0120】
研磨パッドとしては、特に制限されないが、例えば、一般の不織布、ポリウレタン樹脂製パッド(ポリウレタン製パッド)、および多孔質フッ素樹脂製パッド等を使用することが可能である。さらに、必要に応じて、研磨パッドに溝加工を施すこともでき、これにより、研磨用組成物が研磨パッドの溝中にたまるようになる。
【0121】
研磨ステップのパラメータ条件にも特に制限はなく、実際の必要に応じて調整を行うことができる。研磨定盤の回転速度は、特に制限されないが、例えば、10~500rpm(0.2~8.3s-1、なお、60rpm=1s-1である。以下同様)とすることができ、キャリアの回転速度は、特に制限されないが、例えば、10~500rpm(0.2~8.3s-1)とすることができる。また、研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、特に制限されないが、例えば、0.1~10psi(0.7~68.9kPa、なお、1psi=6894.76Paである。以下同様)とすることができ、2~3psi(13.8~20.7kPa)が好ましい。研磨時間は、特に制限されないが、例えば、10~180秒とすることができ、20~150秒が好ましく、30~120秒がより好ましい。研磨用組成物の流量は、特に制限されないが、例えば、10~500ml/minとすることができる。研磨用組成物を研磨パッドへ供給する方法にも特に制限はなく、例えば、ポンプ等による連続供給の方法を採用できる。
【0122】
研磨ステップ終了後、水流中で研磨対象物を洗浄し、回転乾燥機等で研磨対象物に付着している水滴を飛ばして乾燥してもよい。
【0123】
本発明のその他の一態様は、上記の研磨用組成物を用いて基板を研磨することを含む、または、研磨対象物が基板であり、上記の研磨方法によって基板を研磨することを含む、研磨済基板の製造方法に関する。本発明の一実施形態に係る研磨済基板の製造方法において、使用する研磨用組成物、適用する研磨対象物、および使用する研磨方法の詳細は、それぞれ、上記で説明した通りである。本発明の一実施形態に係る研磨済基板の製造方法において、好ましい基板の一例としては、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む基板が挙げられる。
【0124】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0125】
本発明は、下記態様および形態を包含する:
[1]砥粒と、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子と、多価カルボン酸(塩)と、酸化剤とを含有し、pHが6未満である、研磨用組成物;
[2]側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子をさらに含む、上記[1]に記載の研磨用組成物;
[3]前記側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ビニルアルコールと、他のモノマーとの共重合体、および前記共重合体の誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、上記[2]に記載の研磨用組成物;
[4]前記多価カルボン酸(塩)は、分子内に水酸基を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の研磨用組成物;
[5]前記側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、下記式(I)で示されるポリアルキレンオキシド基を構造中に含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の研磨用組成物:
【0126】
【化2】
【0127】
上記式(I)中、Xは2以上の整数であり、かつnは2以上の整数である;
[6]前記側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンチレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリヘプチレングリコール、ポリオクチレングリコール、ポリノニレングリコール、およびポリデシレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の研磨用組成物;
[7]前記側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000未満である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の研磨用組成物;
[8]前記砥粒は、表面に有機酸官能基が共有結合した砥粒である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の研磨用組成物;
[9]ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む研磨対象物を研磨するために用いられる、上記[1]~[8]のいずれかに記載の研磨用組成物;
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する、研磨方法;
[11]前記研磨対象物は、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む、上記[10]に記載の研磨方法;
[12]上記[1]~[8]のいずれかに記載の研磨用組成物を用いて基板を研磨することを含む、または、前記研磨対象物が基板であり、上記[10]または[11]に記載の研磨方法によって前記基板を研磨することを含む、研磨済基板の製造方法;
[13]前記基板は、ゲルマニウム含有材料と、ゲルマニウム含有材料以外のケイ素含有化合物とを含む、上記[12]に記載の研磨済基板の製造方法。
【実施例0128】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0129】
<研磨用組成物の調製>
下記表1および2に示される組成に従って、砥粒、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子、側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子、多価カルボン酸(塩)またはその比較成分、酸化剤、およびpH調整剤のうちの使用する成分を、分散媒である超純水中で混合し(混合温度:約25℃、混合時間:約10分)、実施例および比較例に係る研磨用組成物を調製した。なお、pH調整剤の濃度は、下記表1および2に示されるpHの値となる濃度とした。研磨用組成物のpHを、pHメーター(堀場製作所製LAQUA(登録商標))を用いて確認した(pH値測定時の研磨用組成物温度は25℃)。また、下記表1および2中の「-」はその成分を添加していないことを表す。下記表1および2における各成分の詳細は以下のとおりである。
【0130】
[砥粒]
・表面にスルホン酸基が固定されたコロイダルシリカ(表面にスルホン酸が固定化されたコロイダルシリカ):(一次平均粒子径:35nm、二次平均粒子径:70nm、繭型形状)。
【0131】
[側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子]
・PPG400:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400);
・PPG700:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量700);
・TPG:トリプロピレングリコール(繰り返し単位数3のポリプロピレングリコール、重量平均分子量192);
ここで、PPG400、PPG700およびTPGの分子は、それぞれ、OH-[-CHCH(CH)O-]-H(nは繰り返し単位数)の構造を有する。
【0132】
[側鎖中にアルコール性水酸基を有する水溶性高分子]
・PVA4000:ポリビニルアルコール(重量平均分子量4,000);
・PVA10000:ポリビニルアルコール(重量平均分子量10,000);
・PVA22000:ポリビニルアルコール(重量平均分子量22,000);
・S-PVA:スルホン酸変性ポリビニルアルコール(重量平均分子量10,000)。
【0133】
[多価カルボン酸(塩)またはその比較成分]
・クエン酸H(NH:クエン酸水素二アンモニウム(分子内に水酸基を有する多価カルボン酸の塩);
・マレイン酸:(多価カルボン酸);
・酢酸アンモニウム:(モノカルボン酸の塩)。
【0134】
[酸化剤]
・過酸化水素:(濃度31質量%過酸化水素水、下記表1および2に記載の値は過酸化水素量換算)。
【0135】
[pH調整剤]
・硝酸:(濃度70質量%硝酸水溶液、下記表1および2に記載の値は硝酸量換算);
・硫酸:(濃度62.5質量%硫酸水溶液、下記表1および2に記載の値は硫酸量換算);
・酢酸:(濃度約100質量%濃度の溶液)。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
<評価>
[研磨速度の測定]
上記で得られた研磨用組成物を用い、以下の研磨条件下でシリコンゲルマニウム(SiGe)基板(Silicon Valley Microelectronic, Inc製、シリコンゲルマニウムは、具体的にSi0.75Ge0.25である)、ポリシリコン(poly-Si)基板(アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)、酸化ケイ素(SiO)基板(アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)をそれぞれ研磨したときの研磨速度を測定した。
【0139】
研磨装置:荏原製作所社製 FREX 300E
研磨パッド:ポリウレタン製パッド
研磨圧力:1.0psi(6.9kPa)
定盤回転数:90rpm(1.5s-1
ヘッド回転数:90rpm(1.5s-1
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:300mL/分
研磨時間:60秒。
【0140】
研磨対象物の研磨前および研磨後の厚さを、光干渉式膜厚測定システム(フィルメトリクス社製;Filmetric F20により測定した。研磨速度を次式により算出した。これらの結果を下記表3に示す。
【0141】
【数2】
【0142】
上式中、厚さの単位は「Å」(10Å=1nm、以下同様)、処理時間の単位は「分(min)」、研磨速度の単位は「Å/min」である。なお、処理時間は、具体的には、研磨時間を意味する。
【0143】
なお、本評価において、SiGe基板の研磨速度は、30Å/min(3.0nm/min)以上70Å/min(7.0nm/min)以下であれば優れた効果が得られたと判断した。
【0144】
この理由は、本評価において、SiGe基板の研磨速度が30Å/min以上であれば、SiGeの高い研磨効率による良好な研磨効果が得られる一方、SiGe基板の研磨速度が30Å/min未満では、SiGeの研磨効率が低く、十分な研磨効果が得られないからである。また、本評価において、SiGe基板の研磨速度が70Å/min以下であれば、SiGeの研磨速度と、SiGe以外の材料(本実験では、poly-Si、SiO)の研磨速度とのバランスに優れ、段差およびディッシングについて優れた低減効果が期待できる一方、SiGe基板の研磨速度が70Å/min超過では、SiGeの研磨速度のみが過剰に高くなり、SiGeの研磨速度と、SiGe以外の材料(本実験では、poly-Si、SiO)の研磨速度とのバランスが崩れ、十分な段差およびディッシングの低減効果が期待できないからである。
【0145】
上記の範囲の中でも、研磨効率、段差およびディッシングの低減効果の観点から、本評価において、SiGe基板の研磨速度は、35Å/min(3.5nm/min)以上65Å/min(6.5nm/min)以下であればより優れた効果が得られたと判断し、40Å/min(4.0nm/min)以上60Å/min(6.0nm/min)以下であれば特に優れた効果が得られたと判断した。
【0146】
[研磨速度の選択比の計算]
上記で得られたSiGe基板の研磨速度、poly-Si基板の研磨速度、およびSiO基板の研磨速度を用いて、poly-Si基板の研磨速度に対するSiGe基板の研磨速度の比(選択比SiGe/poly-Si)、およびSiO基板の研磨速度に対するSiGe基板の研磨速度の比(選択比SiGe/SiO)を計算した。これらの結果を下記表3に示す。
【0147】
なお、本評価において、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOは、それぞれ、1.0以上3.0以下であれば優れた効果が得られたと判断した。
【0148】
この理由は、本評価において、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOが、それぞれ、1.0以上であれば、SiGeの研磨効果が十分であり、所望の段差の構築が期待される一方、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOが、それぞれ、1.0未満では、SiGeの研磨効果が不足し、所望の段差の構築が困難となると考えられるからである。また、本評価において、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOが、それぞれ、3.0以下であれば、SiGeのロス量が小さく、所望の段差の構築が期待される一方、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOが、それぞれ、3.0超過では、SiGeの研磨速度のみが過剰に高くなり、SiGeのロス量が大きくなり、所望の段差の構築が困難となると考えられるからである。
【0149】
上記の範囲の中でも、所望の段差の構築およびSiGeのロス量の観点から、本評価において、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOは、それぞれ、1.2以上2.0以下であればより優れた効果が得られたと判断し、それぞれ、1.4以上1.7以下であれば特に優れた効果が得られたと判断した。
【0150】
なお、本評価において、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOが、それぞれ、1.0以上であれば、上記の効果に加えて、研磨後のSiGe残渣の除去性が向上するとの効果も得られることを確認した。また、本評価において、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOが、それぞれ、1.2以上である場合は、研磨後のSiGe残渣の除去性がより向上し、それぞれ、1.4以上である場合は、研磨後のSiGe残渣の除去性がさらに向上する。
【0151】
なお、本評価において、選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOの両方が上記の範囲内であることが特に好ましい。
【0152】
【表3】
【0153】
上記表1~3に記載のように、実施例1~21に係る研磨用組成物は、砥粒と、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子と、多価カルボン酸(塩)と、酸化剤とを含有し、pHが6未満である。上記表1~3より、実施例1~21に係る研磨用組成物によれば、適度に高いSiGeの研磨速度、ならびに良好な範囲の選択比SiGe/poly-Siおよび選択比SiGe/SiOが実現されることが確認された。これらの結果から、実施例1~21に係る研磨用組成物は、SeGeを含む研磨対象物における高い研磨効率での研磨効果とともに、SiGeと、poly-Siとを含む研磨対象物、およびSiGeと、SiOとを含む研磨用組成物における、優れた段差およびディッシングの低減効果が期待される。
【0154】
一方、砥粒を含まない比較例1に係る研磨用組成物、側鎖中にアルコール性水酸基を有しない水溶性高分子を含まない比較例2に係る研磨用組成物、多価カルボン酸(塩)を含まない比較例3および5に係る研磨用組成物、酸化剤を含まない比較例4に係る研磨用組成物は、SiGe基板の研磨速度、選択比SiGe/poly-Si、選択比SiGe/SiOのうちの少なくとも1つ(SiGe基板の研磨速度、選択比SiGe/poly-Si、および選択比SiGe/SiOからなる群より選択される少なくとも1つ)が上記の優れた結果の範囲から外れることが確認された。これらの結果から、比較例1~5に係る研磨用組成物は、SeGeを含む研磨対象物の研磨効率が不十分であるか、SiGeと、poly-SiおよびSiOのうちの少なくとも一方(poly-Si、SiO、またはこれらの両方)とを含む研磨用組成物における、段差およびディッシングの低減効果が不十分であるか、またはこれらの全てが不十分となると考えられる。
【0155】
本出願は、2021年4月30日に出願された日本特許出願番号2021-077571号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。