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特開2022-171633プローブ・チップ、3軸ケーブル及びプローブ・チップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171633
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】プローブ・チップ、3軸ケーブル及びプローブ・チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/06 20060101AFI20221104BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20221104BHJP
   G01R 13/20 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01R1/06 F
G01R1/067 D
G01R1/06 E
G01R13/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074755
(22)【出願日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/181,922
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/730,096
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジー・クニーリム
(72)【発明者】
【氏名】ジョサイア・エイ・バートレット
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ダブリュ・ルシネック
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・トーマス・エンクイスト
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA22
2G011AC11
2G011AC31
2G011AC32
(57)【要約】
【課題】CMRRを改善し、プローブ・チップを長くできるようにする。
【解決手段】3軸ケーブル30を有するアイソレーション型プローブ用プローブ・チップは、ケーブル30の一端部にある導電性プローブ・チップ・インタフェース48と、インタフェース48に電気的に接続された信号導体32と、信号導体32を囲む基準導体36と、基準導体36を囲み、プローブ・チップの端部で基準導体36と電気的に接続されるシールド導体40と、信号導体32と基準導体36との間の第1絶縁体34と、基準導体36とシールド導体40との間の第2絶縁体38と、シールド導体40の内側にある高透磁率材料44とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸ケーブルを有するアイソレーション型プローブ用のプローブ・チップであって、
上記ケーブルの一端部の導電性プローブ・チップ・インタフェースと、
上記ケーブルの全長を横断し、上記導電性プローブ・チップ・インタフェースと電気的に接続される信号導体と、
上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体を囲む基準導体と、
少なくとも上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体を囲み、上記プローブ・チップの端部で上記基準導体と電気的に接続されるシールド導体と、
上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体と上記基準導体との間にある第1絶縁体と、
上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体と上記シールド導体との間にある第2絶縁体と、
上記シールド導体の内側にある高透磁率材料と
を具えるプローブ・チップ。
【請求項2】
上記高透磁率材料が、上記ケーブルの一端又は両端にコモン・モード・チョークを有し、上記シールド導体が、上記コモン・モード・チョークを収容する導電性シェルを更に有する請求項1のプローブ・チップ。
【請求項3】
上記シールド導体の外側に高透磁率材料を更に具える請求項1のプローブ・チップ。
【請求項4】
上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記シールド導体と上記基準導体との間にある請求項1から3のいずれかのプローブ・チップ。
【請求項5】
上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記第2絶縁体の材料と一体化されている請求項1から3のいずれかのプローブ・チップ。
【請求項6】
3軸ケーブルを有するプローブ用のチップの製造方法であって、
上記3軸ケーブルのシールド導体にアクセスする処理と、
上記3軸ケーブル内の上記シールド導体と基準導体との間に高透磁率材料を挿入する処理と、
上記シールド導体を上記基準導体に電気的に接続する処理と
を具えるチップ製造方法。
【請求項7】
上記シールド導体にアクセスする処理が、上記ケーブルの端部にある上記シールド導体の編組をほどく処理と、上記シールド導体で上記高透磁率材料を包み込んでから上記シールド導体を上記基準導体に電気的に接続する処理とを有する請求項6のチップ製造方法。
【請求項8】
上記シールド導体にアクセスする処理が、上記ケーブルの端部において上記シールド導体の一部を除去する処理を含み、上記方法が、
上記高透磁率材料を保持するために上記ケーブルの各端部に上記シールド導体より差し渡しの大きな編組を配置する処理と、
上記差し渡しの大きな編組を上記シールド導体にはんだ付けする処理と
を更に具える請求項6のチップ製造方法。
【請求項9】
上記シールド導体にアクセスする処理が、
上記ケーブルの端部をほつれ防止材で被覆する処理と、
上記ほつれ防止材を切り詰める処理と、
上記ケーブルの端部に上記シールド導体を露出させる開口部を形成する処理と
を有し、
上記高透磁率材料を挿入する処理が、
上記高透磁率材料を上記シールド導体に対抗して上記開口部の中へスライドさせる処理と、
上記ほつれ防止材を除去する処理と
を有する請求項6のチップ製造方法。
【請求項10】
3軸ケーブルであって、
上記ケーブルの全長を横断する信号導体と、
上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体を囲む基準導体と、
上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体を囲み、上記ケーブルの端部で上記基準導体と電気的に接続されるシールド導体と、
上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体と上記基準導体との間にある第1絶縁体と、
上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体と上記シールド導体の間にある第2絶縁体と、
上記シールド導体の内側にある高透磁率材料と
を具える3軸ケーブル。
【請求項11】
上記高透磁率材料は、上記ケーブルの一端部又は両端部にコモン・モード・チョークを有し、上記ケーブルが上記シールド導体に電気的に接続された導電性金属シェルを更に具える請求項10の3軸ケーブル。
【請求項12】
上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記シールド導体と上記基準導体との間にある請求項10の3軸ケーブル。
【請求項13】
上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記第2絶縁体の材料に一体化されている請求項10の3軸ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関し、より詳細には、試験測定プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
試験測定システムには、多くの場合、オシロスコープなどの試験測定装置と、試験測定プローブが含まれている。プローブは、概して、被試験デバイス(DUT)上の1つ以上の試験ポイントに物理的に接続され、試験ポイントから試験測定装置の入力部に目的の信号を結合するために使用される。
【0003】
テクトロニクス社のIsoVu(登録商標)プローブなどのアイソレーション型プローブは、光又はRFアイソレーションなどのガルバニック・アイソレーションを使用して、プローブの基準電圧をオシロスコープの基準電圧(通常は、アース・グランド)から切り離す(非特許文献1参照)。これにより、電源設計者などのユーザは、大きなコモン・モード電圧が存在していても、広帯域幅、高電圧の差動信号を正確に決定できる。なお、「IsoVu」は、テクトロニクス社の商標登録第5931196号の日本の登録商標である。
【0004】
アイソレーション型プローブを使用するアプリケーションの例には、スイッチング電源の設計、ワイドバンド・ギャップGaN(窒化ガリウム)及びSiC(炭化ケイ素)デバイス用のパワーFET(電界効果トランジスタ)の設計/解析、インバータの設計、モータ駆動系の設計、BCI測定又はESD(静電放電)測定、電流シャント測定などがある。アイソレーション型プローブがコモン・モード電圧を除去する能力は、プローブのコモン・モード除去比(CMRR:Common Mode Rejection Ratio、同相信号除去比)によって測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10302676号公報
【特許文献2】特開2017-173324号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「IsoVu絶縁プローブ」、テクトロニクス、[online]、[2022年4月27日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes/probes/isovu-isolated-probes>
【非特許文献2】「「GaNパワーデバイス」において日本が出願最多、バルク結晶分野で活発な活動 -令和3年度特許出願技術動向調査の結果について-」、経済産業省、[online]、[2022年4月27日検索]、インターネット<https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220427002/20220427002.html>
【非特許文献3】「絶縁 (電気)」の記事、特に「insulation」と「isolation」の違いの説明、Wikipedia(日本語版)、[オンライン]、[2022年4月28日検索]、インターネット<http://ja.wikipedia.org/wiki/絶縁_(電気)>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アイソレーション型プローブは、典型的には、センサ・ヘッド部と、センサ・ヘッドからDUT上の試験ポイントまで延びるプローブ・チップとを含む。アイソレーション型プローブ・チップは、通常、CMRRが低く、これは、その長さと相関がある。これは、コモン・モード信号電流が、アイソレーションされた基準「グランド」編組(braid:ブレード)の全長にわたって流れ、高周波にかなりの損失を生じるためである。これにより、センサ・ヘッドへの入力部の信号導体と基準導体の間に電圧差が生じ、CMRR性能が低下する。
【0008】
その結果、アイソレーション型プローブ用の従来のチップは、通常、長さが比較的短く設計されている。例えば、テクトロニクスのIsoVuアイソレーション型プローブに現在利用可能なプローブ・チップには、ケーブル長が6インチ(約15.2cm)を超えるオプションはない。長さが短いと、優れたCMRR性能を維持するのには非常に有益であるが、これらのプローブ・チップを狭い範囲で操作する必要のある測定に使用するのが困難になる。IsoVu(登録商標)プローブ・チップは、概して、米国特許第10,302,676号に記載されているように、それぞれが一連のフェライトを通して提供される中心導体及び基準編組を有する同軸ケーブルを含む。
【0009】
開示された装置及び方法の実施形態は、従来技術における欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の実施形態は、コモン・モード電流が基準導体から離れた経路を流れる3軸(Triaxial)ケーブルを含む。これにより、基準導体(グランド又は基準編組とも呼ばれる)を流れる電流が減少する。高周波信号(これは、20kHz~300GHzの無線周波数レンジの信号を意味する)の場合、これによって、さらに成果が大きくなることがある。基準編組を流れる電流を減らすと、コモン・モード除去比(CMRR)が増加し、信号を測定する装置でのより高い精度での測定につながる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、従来の3軸ケーブルの一部を示す図である。
図2図2は、3軸ケーブルを有するプローブ・チップの一実施形態の一部を示す図である。
図3図3は、3軸ケーブルを有するプローブ・チップの一実施形態の一部を示す図である。
図4図4は、ケーブルの各端部からジャケット/外側の絶縁体の一部が除去されたケーブルを示す。
図5図5は、第2絶縁体上の内部高透磁率材料を示す。
図6図6は、内部高透磁率材料の周りを包むシールド導体を示す。
図7図7は、シールド編組に塗布されたほつれ防止材を示す。
図8図8は、点線で示すようにケーブルの端部の大部分が切り詰められることを示す。
図9図9は、高透磁率材料を挿入できるように広げられたシールド導体を示す。
図10図10は、くさびなしで高透磁率材料を挿入できるように広げられたシールド導体を示す。
図11図11は、シールド導体の下の高透磁率材料の位置を示す。
図12図12は、シールド導体の下の高透磁率材料のその他の位置を示す。
図13図13は、ほつれ防止材を除去し、最終的にケーブルがPCBに接続されることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、通常の3軸ケーブル(triaxial cable、3重同軸ケーブル)の一部を示す図である。本願で使用される場合、「同軸(coaxial又はcoax)」という用語は、中心(又は信号)導体と、この周りを囲む絶縁体と、次いで、この周りを囲む第2(又は基準)導体とから構成されるケーブルを意味する。第2導体は、典型的には、編組(braid:ブレード)から構成される。用語「3軸又は3重同軸(triaxial又はtriax)」は、第2絶縁体と第3(又はシールド)導体(これも、通常、編組から構成される)とを有するケーブルを指す。本願の説明では、これらのコンポーネントが、ケーブルの軸に沿って、ケーブルの全長を横断している又はケーブルの全長に渡って延びているものとして言及する。本願で使用される用語「絶縁体(insulator)」は、電気絶縁性を与える材料を含み、電界を加えると分極されることがある誘電体を含む。
【0013】
図1において、3軸ケーブル10は、第1絶縁体14で囲まれた信号導体12を有している。基準導体16は、この説明では、グランド、基準又は内部導体とも呼ぶこともあり、第1絶縁体の周りを囲んでいる。第2絶縁体18は、基準導体の周りを囲み、次に、第3(又はシールド)導体20によって囲まれる。ジャケット(又は鎧装:sheath)22で、これらの構成要素を覆って、ケーブルを形成しても良い。これは、ケーブルの全長の側面図なので、中心導体12より下のケーブルの下側の層は、上側の層と一致している。
【0014】
上述したように、アイソレーションされた試験測定装置において、プローブ・チップが同軸ケーブルを使用する場合、同軸の基準導体に流れるコモン・モード電流によって電圧降下が生じ、これが、信号導体と基準導体の間の差動の測定値と直列になるため、測定値が劣化する。3軸ケーブルは、コモン・モード電流を、別のシールド導体に流すために使用されることがあるが、これには、基準導体がコモン・モード電流の流れる二次経路を形成しないように、通常、試験測定装置に差動入力段が必要である。
【0015】
概して、アイソレーション型プローブ用の従来のチップのほとんどは、長さが6インチ未満の2つの導体を有する標準的な同軸ケーブルを使用している。短いことによって、基準導体の長さ、従って、基準導体の抵抗が最小限に抑えられるので、良好なCMRR性能を維持するのに有益である。しかし、長さが短いために、狭い範囲で操作する必要がある測定(例えば、環境室(environmental chamber)内に伸ばして幅広い温度でDUTを試験するなど)に、これらの製品を使用するのが困難になる。従来の同軸アイソレーション型プローブ・チップでは、基準導体の外側にフェライトが存在する。3重同軸(Triax)の手法では、シールド導体の外側に、追加のシールド導体と、追加のフェライトを追加する。CMRRの改善により、より長いチップの開発が可能になる。
【0016】
本願の実施形態は、3軸ケーブルの基準導体とシールド導体の間に挿入されるフェライトなどの高透磁率材料を利用する。これにより、シールド導体に比較して、基準導体のコモン・モード・インピーダンスを増加させて、コモン・モード電流をシールド導体へと強制する。この技術は、どのくらいのコモン・モード電流の流れを、基準導体ではなくて、シールド導体中に維持するよう誘導するのかに加えて、シールドの外側に高透磁率材料を使用して、コモン・モード電流全体の流れを最小限に抑えることと組み合わせても良い。高透磁率材料は、高い透磁率、低い電気伝導性を有し、かつ損失の多い材料を含んでもよい。透磁率は、材料が、磁場を加えるのに応答して取得する磁化の尺度である。本願の説明の目的の観点から、「高い透磁率」を有する材料とは、μ0(真空の透磁率)を一桁以上超える透磁率を有するものとする。
【0017】
図2は、シールド導体の内側に高透磁率材料を有する3軸ケーブルを用いたプローブ・チップの一実施形態を示す。本質的に、シールド導体以外の信号導体及び基準導体の周囲の高透磁率材料は、平衡信号と不平衡信号との間の変換を行う装置であるバランを形成する。このバランは、シールド導体の抵抗のコモン・モードの低下が、信号導体から基準導体への差動信号に影響を与えるのを防ぐ。
【0018】
シールド導体のない標準的な同軸構造を使用する同様の長さの製品は、典型的には、500MHzで20dB未満のCMRR性能を発揮する。本願の実施形態は、内側に高透磁率材料があるシールド導体を使用して、500MHzで約50dBのCMRR性能を提供する。
【0019】
3軸ケーブル30は、信号導体32と、第1絶縁体34と、基準導体36と、第2絶縁体38と、シールド導体40とを有し、オプションでジャケット42で覆われている。高透磁率材料44(この場合はフェライト)は、シールド導体と第2絶縁体との間に存在する。高透磁率材料は、ケーブル内の複数の場所に存在する可能性があることに注意されたい。多くの場合、これらは、ケーブルが接続される試験測定装置の近くと、プローブ・チップ・インタフェース48のそばの他端部の近くに存在することになろう。なお、この図は側面図であり、導体及び絶縁体は、少なくともケーブルの全長を横断する。一実施形態では、シールド導体は、ケーブルの全長を横断し、ケーブルの端部を超えて延びる。これは、ケーブルの全長の断面側面図なので、信号導体32より下のケーブルの下側の層は、上側の層と一致している。
【0020】
試験測定装置の端部において、信号導体は、プリント回路基板50上のケーブル・ランチ(cable launch)58に接続される。金属又は他の導電性の円筒シェル52がPCB50を囲んでいる。はんだ又は他の材料54によって、導電性円筒シェル52は、基準導体36に接続される。同様に、はんだ56は、第2絶縁体38が終わる点を過ぎたところで、シールド導体40を基準導体36に接続する。インピーダンスを増加させ、もって、被試験回路のコモン・モード負荷を最小限に抑えるために、より高い透磁率の材料46が、ジャケットの外側又はそうでなければシールド導体の外側に存在しても良い。このようにして、高透磁率材料46は、ケーブル全体に流れるコモン・モード電流を阻害するように機能するが、高透磁率材料44が、更に、基準導体に流れるコモン・モード電流を阻害するので、流れるコモン・モード電流の大部分はシールド導体40に沿って進む。
【0021】
代替の実施形態では、3軸ケーブルは、図3に示すように、コモン・モード・チョークを介して電気的に接続されても良い。コモン・モード・チョークは、概して、接続点を有するハウジングの内部に含まれる磁気コアの形態の高透磁率材料を含む。信号導体32及び基準導体36は、チョーク41上のピンその他の接続点に接続され、このとき、信号導体32は接続点1に接続され、基準導体36は接続点2に接続される。チョークの反対側では、基準出力端子35が接続点3に接続され、プローブ・チップの信号出力導体33が接続点4に接続される。信号は、チョークを通って信号導体32から出力導体33へと流れる。
【0022】
3軸ケーブルのシールド導体40は、導電性シェル52に接続され、ケーブルの全長を超えてシールド導体が事実上延長される。高透磁率材料は、このシールド導体の内側に存在することになる。基準出力端子35をシェル52に接続して、図2に示す実施形態と同様に、シールド導体を基準導体に接続する。この例では、図2の実施形態の端部のPCBにコモン・モード・チョークを示すが、コモン・モード・チョークは、ケーブルの一方の端部又は両端部に存在する可能性があることに留意されたい。
【0023】
図4図13は、内部高透磁率材料を用いる3軸ケーブルの製造方法を示す。「製造」という用語は、既存の3軸ケーブルを変更すること又は3軸ケーブルを最初から製造することを含んでいても良い。簡単のため、図2の3軸ケーブルの構成要素の多くは、以下の図では言及しないが、依然としてケーブルの一部である。概して、このプロセスは、何らかの方法でシールド導体にアクセスすることを含み、これには、シールド導体の編組をほどく処理又は剥ぎ取る処理が含まれても良い。これにより、シールド導体の下に高透磁率材料を挿入できるであろう。別の方法では、内部基準編組とシールド導体との間の第2絶縁体は、絶縁体/誘電体中に粒状フェライト又は他の高透磁率材料を用いて製造されても良い。
【0024】
図4は、ケーブルの各端部から、ジャケット/外部絶縁体42の一部を除去したケーブルを示す。これにより、シールド導体40が露出する。外部高透磁率材料46は、シールド導体又は外部絶縁体42の外側にある。図5は、第2絶縁体38上の内部高透磁率材料44を示す。
【0025】
図6は、内部高透磁率材料44の周りを包むシールド導体40を示す。シールド導体が、内部高透磁率材料自体を包み込んでもよい。これに代えて、差し渡し(端から端までの長さ)がもっと大きな編組をシールド導体にはんだ付けして高透磁率材料を封入しても良い。元々のシールド導体又は差し渡しがもっと大きな編組(今やシールド導体として機能)のいずれかが、次に基準導体36にはんだ付けされ、本実施形態によるケーブルを形成する。
【0026】
別の実施形態では、シールド導体が、高透磁率材料の挿入を可能にするためのアクセスを提供するように広げられても良い。なお、図7では、ほつれ防止材60がシールド編組に塗布され、シールド編組が広げられたときにも、ほつれないようにしており、これは、他の実施形態でも使用されて良い。ほつれ防止材は、ゴム接着剤のような材料(良好な接着特性がありながら除去も容易に可能な材料)から構成されても良い。
【0027】
図8では、ほつれ防止材60を含むケーブルの端部の大部分が、点線で示すように切り落とされている。これにより、シールド導体と外部絶縁体(使用された場合)の端部へのアクセスが可能になる。図9では、シールド導体40が、高透磁率材料44を挿入できるように広げられている。これには、シールド導体40を広げるためのくさび(wedge)62として何らかの種類の非吸収材料(プラスチック又はテフロン(登録商標)など)の使用が含まれても良い。これに代えて、図10に示すように、高透磁率材料が広げるのを可能にするように構成されていれば、くさびが必要ないこともある。
【0028】
図11及び図12に示すように、高透磁率材料44は、図12に示す最終的な位置に到達するまで、シールド導体40の下をスライドさせても良い。最後に、図13に示すように、ほつれ防止材60を除去し、ケーブルをPCB50に接続する。
【0029】
このようにして、コモン・モード電流は、ケーブルのシールド導体に結合される。これにより、DUTからのリターン・パスの信号を、DUT信号の測定に影響を与える干渉なしに通過させることができる。この実施形態は、一体化した高透磁率材料を有するように既存のケーブルを変形したもの又は一体化した高透磁率材料を有するように発展させた新しいケーブルを提供する。
【0030】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0031】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0032】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0033】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0034】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様との関連においても利用できる。
【0035】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。

実施例
【0036】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0037】
実施例1は、3軸ケーブルを有するアイソレーション型プローブ用のプローブ・チップであって、上記ケーブルの一端部の導電性プローブ・チップ・インタフェースと、上記ケーブルの全長を横断し、上記導電性プローブ・チップ・インタフェースと電気的に接続される信号導体と、上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体を囲む基準導体と、少なくとも上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体を囲み、上記プローブ・チップの端部で上記基準導体と電気的に接続されるシールド導体と、上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体と上記基準導体との間にある第1絶縁体と、上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体と上記シールド導体との間にある第2絶縁体と、上記シールド導体の内側にある高透磁率材料とを具える。
【0038】
実施例2は、実施例1のプローブ・チップであって、上記高透磁率材料が、上記ケーブルの一端部又は両端部にコモン・モード・チョークを有し、上記シールド導体が、上記コモン・モード・チョークを収容する導電性シェルを更に有している。
【0039】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかのプローブ・チップであって、上記シールド導体の外側に高透磁率材料を更に具える。
【0040】
実施例4は、実施例1から3のいずれかのプローブ・チップであって、上記導電性プローブ・チップ・インタフェースと反対側の上記ケーブルの端部に接続されたプリント基板を更に具える。
【0041】
実施例5は、実施例4のプローブ・チップであって、上記プリント基板が、コモン・モード・チョークを含む。
【0042】
実施例6は、実施例1から5のいずれかのプローブ・チップであって、上記高透磁率材料がフェライトを含む。
【0043】
実施例7は、実施例1から6のいずれかのプローブ・チップであって、上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記シールド導体と上記基準導体との間にある。
【0044】
実施例8は、実施例1から7のいずれかのプローブ・チップであって、上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記第2絶縁体の材料と一体化されている。
【0045】
実施例9は、3軸ケーブルを有するアイソレーション型プローブ用チップの製造方法であって、上記3軸ケーブルのシールド導体にアクセスする処理と、上記3軸ケーブル内の上記シールド導体と基準導体との間に高透磁率材料を挿入する処理と、上記シールド導体を上記基準導体に電気的に接続する処理とを具える。
【0046】
実施例10は、実施例9の製造方法であって、上記シールド導体の外側に高透磁率材料を配置する処理を更に具える。
【0047】
実施例11は、実施例9及び10のいずれかの製造方法であって、上記シールド導体にアクセスする処理が、上記ケーブルの端部にある上記シールド導体の編組をほどく処理と、上記シールド導体で高透磁率材料を包み込んでから上記シールド導体を上記基準導体に電気的に接続する処理とを有する。
【0048】
実施例12は、実施例9から11のいずれかの製造方法であって、上記シールド導体にアクセスする処理が、上記ケーブルの端部において上記シールド導体の一部を除去する処理を含み、上記方法が、上記高透磁率材料を保持するために上記ケーブルの各端部に上記シールド導体より差し渡し(端から端までの長さ)の大きな編組(braid:ブレード)を配置する処理と、上記差し渡しの大きな編組を上記シールド導体にはんだ付けする処理とを更に具える。
【0049】
実施例13は、実施例9から12のいずれかの製造方法であって、上記シールド導体にアクセスする処理が、上記ケーブルの端部をほつれ防止材で被覆する処理と、上記ほつれ防止材を切り詰める処理と、上記ケーブルの端部に上記シールド導体を露出させる開口部を形成する処理とを有し、上記高透磁率材料を挿入する処理が、上記高透磁率材料を上記シールド導体に対抗して上記開口部の中へスライドさせる処理と、上記ほつれ防止材を除去する処理とを有する。
【0050】
実施例14は、実施例13の方法であって、上記開口部を形成する処理が、上記シールド導体を広げるために、上記高透磁率材料以外の材料のくさびを使用する処理を含む。
【0051】
実施例15は、3軸ケーブルであって、上記ケーブルの全長を横断する信号導体と、上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体を囲む基準導体と、上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体を囲み、上記ケーブルの端部で上記基準導体と電気的に接続されるシールド導体と、上記ケーブルの全長にわたって上記信号導体と上記基準導体との間にある第1絶縁体と、上記ケーブルの全長にわたって上記基準導体と上記シールド導体の間にある第2絶縁体と、上記シールド導体の内側にある高透磁率材料とを具える。
【0052】
実施例16は、実施例15のケーブルであって、上記シールド導体の外側に高透磁率材料を更に具える。
【0053】
実施例17は、実施例15又は16のいずれかのケーブルであって、上記高透磁率材料は、上記ケーブルの一端部又は両端部にコモン・モード・チョークを有し、上記ケーブルが上記シールド導体に電気的に接続された導電性金属シェルを更に具える。
【0054】
実施例18は、実施例15から17のいずれかのケーブルであって、上記高透磁率材料がフェライトを含む。
【0055】
実施例19は、実施例15から18のいずれかのケーブルであって、上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記シールド導体と上記基準導体との間にある。
【0056】
実施例20は、実施例15から19のいずれかのケーブルであって、上記シールド導体の内側にある上記高透磁率材料が、上記第2絶縁体の材料に一体化されている。
【0057】
明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0058】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0059】
10 3軸ケーブル(3重同軸ケーブル)
12 信号導体(第1導体)
14 第1絶縁体
16 基準導体(第2導体)
18 第2絶縁体
20 シールド導体(第3導体)
22 ジャケット又は鎧装
30 3軸ケーブル(3重同軸ケーブル)
32 信号導体(第1導体)
34 第1絶縁体
36 基準導体(第2導体)
38 第2絶縁体
40 シールド導体(第3導体)
41 チョーク
42 ジャケット/外部絶縁体
44 内側の高透磁率材料
46 高透磁率材料
48 プローブ・チップ・インタフェース
50 プリント基板
52 導電性円筒形シェル
54 はんだ
56 はんだ
58 ケーブル・ランチ(cable launch)
60 ほつれ防止材
62 くさび
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】