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特開2022-172157テープ付きウェーハの加工装置及びその加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172157
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】テープ付きウェーハの加工装置及びその加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20221108BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B24B9/00 601G
H01L21/304 601B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129831
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2018081523の分割
【原出願日】2018-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】下田 杏優華
(57)【要約】
【課題】エッジトリミングの加工品質の向上とスループットの向上を両立することができるテープ付きウェーハの加工装置及びその加工方法を提供する。
【解決手段】ウェーハWの裏面をチャックテーブル16に保持し、チャックテーブル16を、中心軸16Aを中心に回転移動させながら、出射部54からの紫外光を面取部66に貼着されたテープ60に向けて照射した後、チャックテーブル16を、中心軸16Aを中心に回転移動させながら、紫外光によって硬化した光硬化接着剤62を含む面取部66をテープ60と共にブレード72によって切削する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の最外周に面取部を有するウェーハと、
前記ウェーハの前記表面に光硬化接着剤を介して貼着されるとともに、前記光硬化接着剤が硬化する波長の光を透過可能なテープと、
中心軸を中心として回転し、前記テープ付きウェーハの裏面を保持するテーブルと、
前記テーブルを回転させながら、前記面取部に前記光を照射する光照射手段と、
前記テーブルを回転させながら、前記光によって硬化した前記光硬化接着剤を含む前記面取部を前記テープと共に切削するブレードと、
を備える、テープ付きウェーハの加工装置。
【請求項2】
前記光照射手段から前記面取部よりも内側に向かう光を遮断する遮光部材を備える、請求項1に記載のテープ付きウェーハの加工装置。
【請求項3】
表面の最外周に面取部を有するウェーハと、前記ウェーハの前記表面に光硬化接着剤を介して貼着されるとともに、前記光硬化接着剤が硬化する波長の光を透過可能なテープと、中心軸を中心として回転し、前記テープ付きウェーハの裏面を保持するテーブルと、を備える加工装置に適用されるテープ付きウェーハの加工方法であって、
前記テープ付きウェーハの裏面を保持し、
前記テーブルを回転させながら、前記面取部に前記光を照射し、
前記テーブルを回転させながら、前記光によって硬化した前記光硬化接着剤を含む前記面取部を前記テープと共に切削する、テープ付きウェーハの加工方法。
【請求項4】
前記面取部よりも内側に向かう光を遮光部材によって遮断する、請求項3に記載のテープ付きウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックグラインドテープ等のテープが貼着されたテープ付きウェーハを加工するテープ付きウェーハの加工装置及びその加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に半導体素子が形成されたウェーハは、ダイシング装置によって切断又は溝入れ等の切削加工が施される。ダイシング装置は、スピンドルによって高速回転される薄い円盤状のブレードと、ウェーハを吸着保持するチャックテーブルと、を備え、チャックテーブルに吸着保持されたウェーハに対し、高速回転するブレードによってウェーハを、例えば格子状のダイシングラインに沿って切削加工する。ブレードとチャックテーブルは、ダイシング装置に備えられたX、Y、Z、θ方向の各移動部によって相対的に移動される。これによって、ウェーハがダイシングラインに沿って切削加工される。
【0003】
近年、半導体製造分野においてはウェーハが年々大型化する傾向にある。また、実装密度を高めるためにウェーハの薄膜化が進んでおり、ウェーハを薄膜化するために、ウェーハの裏面を研削するバックグラインド(裏面研削)が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、表面に半導体素子が形成されたウェーハを個々のチップに分割する方法として、DBG(Dicing Before Grinding)法と称されるダイシング方法が提案されている。DBG法は、ウェーハの表面(半導体素子の形成面)側からダイシングラインに沿って所定の深さの切削溝を形成して、ウェーハの表面に保持用のテープを貼着した後、切削溝に到達するまでウェーハの裏面を研削することで個々のチップに分割する方法である。
【0005】
ところで、ウェーハの外周端部には、例えば断面形状が略円弧形状の面取部が形成されている。このため、DBG法によってウェーハを薄く研削すると、面取部がナイフエッジのように鋭利となるので、ウェーハに割れを発生させる原因となる。そこで、特許文献2には、ウェーハの裏面を研削する前に、面取部の一部をブレードによって切削するエッジトリミング加工を実施することが提案されている。引用文献2のエッジトリミング加工によれば、接着剤を介してウェーハの表面にシートを貼着した後、一つのブレードを使用してシートと共に面取部の一部を切削している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-213662号公報
【特許文献2】特開2015-217461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のウェーハ加工装置は、エッジトリミング加工中にシート(テープに相当)の接着剤がブレードに付着して目詰まりが発生するので、エッジトリミングの加工品質が低下するという問題があった。
【0008】
上記の目詰まりの問題は、ウェーハ専用の番手の大きいブレードによって接着剤(具体的には接着剤の層)を切削したことに原因がある。そこで、接着剤専用の番手の小さいブレードを準備しておき、このブレードでテープ及び接着剤層を切削した後、ウェーハ専用のブレードに交換してウェーハの面取部の一部を切削すれば、上記の目詰まりの問題を解消することができる。しかしながら、このように番手の異なる2種類のブレードを準備する上記の加工方法は、ブレードの交換に時間がかかるのでスループットが低下するという問題があった。
【0009】
このように従来の技術では、スループットを低下させることなく、エッジトリミングの加工品質の低下を防止することは困難であった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、エッジトリミングの加工品質の向上とスループットの向上を両立することができるテープ付きウェーハの加工装置及びその加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のテープ付きウェーハの加工装置は、本発明の目的を達成するために、表面に平坦部及び平坦部の外周部に沿って形成された面取部を有するウェーハと、ウェーハの表面の全面に光硬化接着剤を介して貼着されるとともに、光硬化接着剤が硬化する波長の光を透過可能なテープと、を含むテープ付きウェーハに対し加工を行うテープ付きウェーハの加工装置において、中心軸を有し、テープ付きウェーハの裏面を保持するテーブルと、テーブルに対向して配置され、面取部に貼着されたテープに向けて光を照射する光照射手段と、テーブルに対向して配置され、光によって硬化した光硬化接着剤を含む面取部の一部を面取部に貼着されたテープと共に切削するブレードと、光照射手段とブレードとに対し、中心軸を中心としてテーブルを相対的に回転移動させる回転移動手段と、を備える。
【0012】
本発明のテープ付きウェーハの加工装置の一形態は、光の照射領域に配置され、光照射手段から平坦部に向かう光を遮蔽する遮蔽部材を備えることが好ましい。
【0013】
本発明のテープ付きウェーハの加工装置の一形態は、光硬化接着剤は、紫外線硬化接着剤であり、光照射手段は、紫外線照射手段であることが好ましい。
【0014】
本発明のテープ付きウェーハの加工方法は、本発明の目的を達成するために、表面に平坦部及び平坦部の外周部に沿って形成された面取部を有するウェーハと、ウェーハの表面の全面に光硬化接着剤を介して貼着されるとともに、光硬化接着剤が硬化する波長の光を透過可能なテープと、を含むテープ付きウェーハに対し加工を行うテープ付きウェーハの加工方法において、テープ付きウェーハの裏面を、中心軸を有するテーブルに保持するウェーハ保持工程と、テーブルとテーブルに対向して配置された光照射手段とを中心軸を中心に相対的に回転移動させながら、光照射手段からの光を面取部に貼着されたテープに向けて照射する光照射工程と、テーブルとテーブルに対向して配置されたブレードとを中心軸を中心に相対的に回転移動させながら、光によって硬化した光硬化接着剤を含む面取部の一部を面取部に貼着されたテープと共にブレードによって切削する切削工程と、を備える。
【0015】
本発明のテープ付きウェーハの加工方法の一形態は、光照射工程において、光照射手段から平坦部に向かう光を遮蔽部材によって遮蔽することが好ましい。
【0016】
本発明のテープ付きウェーハの加工方法の一形態は、光硬化接着剤は、紫外線硬化接着剤であり、光照射手段は、紫外線照射手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エッジトリミングの加工品質の向上とスループットの向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明が適用されたダイシング装置の斜視図
図2図1に示したダイシング装置の加工部の構造を示す斜視図
図3図2に示した加工部の要部平面図
図4】紫外線硬化接着剤を介してテープが貼着されたウェーハの要部断面図
図5】エッジトリミング加工方法を説明するためのフローチャート
図6】エッジトリミング用のブレードがスピンドルに装着された加工部の平面図
図7】ブレードの下降移動位置を示したウェーハの要部断面図
図8】ウェーハの外周部にエッジトリミング部が形成されたウェーハの要部断面図
図9】紫外光を一括照射した場合のトリミングラインを示した説明図
図10】実施形態の加工装置によるトリミングラインを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係るテープ付きウェーハの加工装置及びその加工方法の好ましい実施形態について詳説する。
【0020】
図1は、本発明が適用されたダイシング装置10の全体斜視図である。
【0021】
図1に示すダイシング装置10は、一対のブレード12A、12Bが対向して配置されたツインスピンドルダイサーと称されるダイシング装置である。このダイシング装置10は、加工部20を備えている。この加工部20は、先端部にブレード12A、12Bが装着された高周波モータ内蔵型の一対のスピンドル14A、14Bと、円盤状のウェーハWが搭載されてウェーハWを吸着保持するチャックテーブル16と、ウェーハWの表面を観察するカメラ18(図3参照)とを有している。
【0022】
また、ダイシング装置10には、加工済みのウェーハWをスピン洗浄する洗浄部22と、複数枚のウェーハWを収納したカセットが載置されるロードポート24と、ウェーハWを搬送する搬送装置26とがそれぞれ所定の位置に配置される。更に、ダイシング装置10には、ダイシング装置10の各部の動作を制御する制御部28が内蔵されている。
【0023】
図2は、加工部20の構造を示す斜視図である。
【0024】
図2に示すように、加工部20は、Xキャリッジ30を備える。Xキャリッジ30は、Xベース32に設けられたXガイド34、34によってガイドされ、リニアモータ36によって矢印X-Xで示すX軸方向に駆動される。Xキャリッジ30の上面にはθ方向に回転する回転テーブル38が固定されている。この回転テーブル38には、円盤状のチャックテーブル16が設けられており、このチャックテーブル16は、その中心軸16Aが回転テーブル38の回転中心に合致された状態で回転テーブル38に設けられている。よって、チャックテーブル16は、Xキャリッジ30によってX軸方向に移動され、かつ回転テーブル38によってθ方向に回転される。なお、実施形態のチャックテーブル16は、本発明の構成要素であるテーブルの一例であり、実施形態の回転テーブル38は、本発明の構成要素である回転移動手段の一例である。
【0025】
加工部20は、Xベース32を跨ぐように門型に構成されたYベース40を備える。Yベース40の壁面には、一対のYキャリッジ42A、42Bが設けられる。一対のYキャリッジ42A、42Bは、Yベース40の壁面に固定されたYガイド44、44によってガイドされ、図示しないモータとボールスクリューとからなる駆動装置によって矢印Y-Yで示すY軸方向に駆動される。
【0026】
Yキャリッジ42A、42Aには、Zキャリッジ46A、46Bが設けられる。Zキャリッジ46A、46Bは、Yキャリッジ42A、42Bに設けられた不図示のZガイドにガイドされ、図示しないモータとボールスクリューとからなる駆動装置によって矢印Z-Zで示すZ軸方向に駆動される。Zキャリッジ46A、46Bにはスピンドル14A、14Bが互いに対向した状態で固定され、スピンドル14A、14Bの先端部に装着されたブレード12A、12Bが互いに対向して配置される。
【0027】
上記構成の加工部20によれば、ブレード12A、12BはYキャリッジ42A、42BによってY軸方向にインデックス送りされるとともに、Zキャリッジ46A、46BによってZ軸方向に切り込み送りされる。また、チャックテーブル16は、前述の如く、Xキャリッジ30によってX軸方向に切削送りされるとともに、チャックテーブル16によってθ方向に回転される。このようにウェーハWとブレード12A、12Bとを相対的に移動させることにより、ウェーハWの表面(半導体素子の形成面)にダイシングラインに沿った切削溝65(図4参照:ハーフカット)が形成される。この切削溝65は、ウェーハWの厚さよりも浅い分離用の溝である。
【0028】
なお、前述のX軸方向とは水平方向における一つの方向を指し、Y軸方向とは水平方向においてX軸方向に直交する方向を指す。また、Z軸方向とはX軸方向及びY軸方向にそれぞれ直交する鉛直方向を指し、θ方向とは鉛直軸を中心軸とする回転方向を指す。
【0029】
上記の如くダイシング装置10の本来の機能は、ウェーハWの表面に形成されたダイシングラインを、高速回転するブレード12A、12Bによって切削加工することにより、ウェーハWの表面に分離用の切削溝を形成するものであるが、実施形態では、このダイシング装置10を使用してウェーハWの面取部の一部を切削するエッジトリミング加工を実施する。以下、エッジトリミング加工を実施するための構成について説明する。
【0030】
図3は、加工部20の要部平面図である。
【0031】
図3に示すように、Zキャリッジ46Aには、L字状のアーム52を介して紫外線照射装置50が設けられている。この紫外線照射装置50は、紫外光をスポット照射する出射部54(図4参照)を有し、この出射部54はチャックテーブル16に対向して配置されている。なお、実施形態の紫外線照射装置50は、本発明の構成要素である光照射手段の一例である。また、図3ではカメラ18が示されており、このカメラ18はZキャリッジ46Bに取り付けられている。このカメラ18は、高倍率の顕微鏡56及び低倍率の顕微鏡58を備えている。
【0032】
ここで、ウェーハWについて説明する。図4は、ウェーハWの表面にバックグライディング用のテープ60が紫外線硬化接着剤62を介して貼着されたウェーハWの要部断面図である。
【0033】
図3図4に示すようにウェーハWは、その表面に円形の平坦部64と、平坦部64の外周部に沿って形成された平面視リング状の面取部66とを有する。平坦部64は、半導体素子の形成面である。また、面取部66は、図4の如く、断面形状が略円弧状に形成された面取面68を有している。平坦部64及び面取部66を含むウェーハWの表面の全面に、紫外線硬化接着剤62を介してテープ60が貼着されている。このテープ60は、紫外線硬化接着剤62が硬化する波長の光、すなわち、紫外光を透過可能なテープである。なお、ウェーハWの表面の平坦部64には、図2に示したブレード12A、12Bによって複数本の切削溝65が既に形成されている。
【0034】
紫外線照射装置50には、遮蔽板70が設けられている。遮蔽板70は、出射部54から出射される紫外光の照射領域に対し、ウェーハWの平坦部64と面取部66との境界部にZ軸方向に沿って配置されている。このような遮蔽板70を備えることにより、出射部54から出射された紫外光のうち平坦部64に向かう紫外光が、遮蔽板70によって遮蔽される。実施形態では、遮蔽板70を紫外線照射装置50に設けたが、これに限定されず、例えば、加工部20を構成する構成部材に遮蔽板70を設けてもよい。なお、実施形態の遮蔽板70は、本発明の構成要素である遮蔽部材の一例である。
【0035】
次に、前記の如く構成された加工部20によるエッジトリミング加工方法について、図5に示したフローチャートを参照して説明する。
【0036】
まず、S10に示すウェーハ保持工程では、ウェーハWの裏面をチャックテーブル16に保持させる。このとき、チャックテーブル16の中心軸16A(図3参照)に、円盤状のウェーハWの中心が合致するようにウェーハWをチャックテーブル16に保持させることが好ましい。
【0037】
次に、S20に示す紫外線照射装置の位置設定工程では、ウェーハWの面取部66に対する紫外線照射装置50の位置を設定する。具体的には、紫外線照射装置50の出射部54から出射される紫外光が、チャックテーブル16に保持されたウェーハWの面取部66に有効に照射されるように、チャックテーブル16をX軸方向に移動させるとともに、Zキャリッジ46AをY軸方向及びZ軸方向に移動させて、紫外線照射装置50の位置を図3及び図4に示す位置に設定する。この時、遮蔽板70は、図4の如く、ウェーハWの平坦部64と面取部66との境界部にZ軸方向に沿って配置される。なお、紫外線照射装置50の位置は、あらかじめ設定された位置でも構わない。
【0038】
次に、S30に示す照射工程では、チャックテーブル16をその中心軸16Aを中心に回転移動させながら、出射部54から紫外光を出射する。これにより、チャックテーブル16の中心軸16Aを中心とする同心円上の面取部66に、出射部54からの紫外光が照射されるので、面取部66の紫外線硬化接着剤62は、面取部66のテープ60を透過した紫外光により硬化していき、所定の露光量に到達したところで完全に硬化する。
【0039】
ところで、S30の光照射工程中は、出射部54から出射された紫外光のうち平坦部64に向かう紫外光が、遮蔽板70によって遮蔽されているので、平坦部64の紫外線硬化接着剤62が紫外光によって硬化するのが防止されている。このように、平坦部64の紫外線硬化接着剤62の硬化を防止することにより、その紫外線硬化接着剤62の接着力を維持することができる。したがって、エッジトリミング加工の後工程で実施される裏面研削工程中において、テープ60が平坦部64から剥離するのを防止することができる。これにより、安定した裏面研削を実施することができる。また、ウェーハWの平坦部64に紫外光を嫌うデバイスが形成されている場合には、このデバイスを紫外光から保護することができる。
【0040】
一方、紫外光の露光量は、一般的には「露光量(H)」=「照度 lx (ルクス)」×「露光時間 s (秒)」であらわされるが、実施形態の加工方法では、紫外光の光量とチャックテーブル16のθ軸速度の逆数と回転回数との積であらわされる。すなわち、実施形態の加工方法によれば、光量を小さくしたり、露光時間を短くしたりした場合でもチャックテーブル16の回転回数を増やすことによって所定の露光量を得ることができる。これにより、紫外光による面取部66の温度上昇を抑制することができるので、面取部66から平坦部64に与える温度の影響を抑えることができる。
【0041】
次に、S40に示すブレード装着工程では、図3に示したスピンドル14Bに、エッジトリミング用のブレード72(図6参照)を装着する。
【0042】
次に、S50に示すブレードの位置設定工程では、ウェーハWの面取部66に対するブレード72の位置を設定する。具体的には、面取部66の厚さ方向における面取部66の一部が、面取部66に貼着されたテープ60と共にブレード72によって切削されるように、チャックテーブル16をX軸方向に移動させるとともに、Zキャリッジ46BをY軸方向及びZ軸方向に移動させて、ブレード72の位置を面取部66の上方に設定する(図6参照)。なお、図6は、エッジトリミング用のブレード72がスピンドル14Bに装着された加工部20の平面図である。ブレード72の位置は、あらかじめ設定された位置でも構わない。
【0043】
次に、S60に示す切削工程では、チャックテーブル16をその中心軸16Aを中心に回転移動させながら、ブレード72を面取部66に向けて図7の二点鎖線で示す位置に下降移動することで、エッジトリミング加工を開始する。これにより、面取部66の一部が面取部66に貼着されたテープ60と共にブレード72によって切削されていき、しかも、面取部66の紫外線硬化接着剤62は紫外光によって硬化しているので、ブレード72に紫外線硬化接着剤62が目詰まりすることなく、ブレード72によるエッジトリミング加工が円滑に行われていく。そして、チャックテーブル16が1回転したところで、図8のウェーハの要部断面図の如く、ウェーハWの外周部に安定した形状のエッジトリミング部74が形成される。以上で、実施形態の加工部20によるエッジトリミング加工が終了する。その後、前述した裏面研削工程が実施される。
【0044】
上記の裏面研削工程では、切削溝65に到達するまでウェーハWの裏面を研削する。このような裏面研削工程において、その前工程に実施形態の切削工程(S60)を備えているので、面取部66がナイフエッジのような鋭利とならず、これによって、ウェーハWが割れるのを防止することができる。なお、裏面研削工程は公知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
このように実施形態によれば、ウェーハWの裏面をチャックテーブル16に保持し、チャックテーブル16を、その中心軸16Aを中心に回転移動させながら、出射部54からの紫外光を面取部66に貼着されたテープ60に向けて照射した後、チャックテーブル16を、その中心軸16Aを中心に回転移動させながら、紫外光によって硬化した紫外線硬化接着剤62を含む面取部66の一部を面取部66に貼着されたテープ60と共にブレード72によって切削するので、エッジトリミングの加工品質の向上とスループットの向上を両立することができる。
【0046】
なお、実施形態の加工方法では、S30の光照射工程の後にS40のブレード装着工程を実施したが、S40のブレード装着工程は、少なくともS50のブレードの位置設定工程よりも前で実施されていればよいので、例えば、S10のウェーハ保持工程の前で実施してもよく、また、S10のウェーハ保持工程とS20の紫外線照射装置の位置設定工程との間で実施してもよい。
【0047】
一方、実施形態によれば、以下の効果も得ることができる。
【0048】
比較例として、ウェーハWの平坦部64にマスクを被覆し、このウェーハWに対して紫外光を一括照射することで、面取部66の紫外線硬化接着剤62のみを予め硬化させたウェーハWを準備する。そして、このウェーハWをチャックテーブル16に搭載する。このときに、図9の如く、ウェーハWの中心WCがチャックテーブル16の中心軸16Aに対してずれた状態で、ウェーハWがチャックテーブル16に保持された場合、平面視リング形状の紫外光の照射領域の中心と、ブレード72によるトリミング加工ライン(図9の一点鎖線Aを参照)の中心(チャックテーブル16の中心軸16Aと等価)とがずれるので、ブレード72が紫外光の非照射領域(つまり、マスク)を切削する場合がある。そうするとブレード72は、非硬化状態の紫外線硬化接着剤62を切削するので、その紫外線硬化接着剤62によって目詰まりが発生する。このような問題を解消するためには、紫外光の照射領域を大きくとる必要があるが、これはチップのイールドロス(収量低下)になるので採用することはできない。また、搬送装置26の搬送精度を改善することも考えられるが、これは装置のコストアップにつながるので採用することは難しい。また、紫外線の照射領域がトリミング加工ラインAの内側に残った場合、裏面研削工程においてテープ60がウェーハWから剥離する場合があるので、研削品質の低下やテープ60とウェーハWとの間に研削水が侵入することに起因してイールドが低下するおそれがある。
【0049】
これに対して、実施形態は、チャックテーブル16にウェーハWを保持し、チャックテーブル16を回転させながら面取部66に紫外光を照射して、面取部66の紫外線硬化接着剤62を硬化させた後、ウェーハWをチャックテーブル16に保持したままの状態で(すなわち、チャックテーブル16とウェーハWとの相対位置(保持位置)を変えることなく)、チャックテーブル16を回転させながらブレード72によってエッジトリミングを実施するものである。つまり、実施形態は、光照射工程(S30:図5参照)時におけるチャックテーブル16とウェーハWとの相対位置と、切削工程(S60:図5参照)時におけるチャックテーブル16とウェーハWとの相対位置とを不変であり、光照射工程と切削工程を同一のチャックテーブル16でウェーハWを保持した状態で行うものである。これにより、図10の如く、ウェーハWの中心WCがチャックテーブル16の中心軸16Aに対してずれている場合でも、紫外光の照射領域の中心とブレード72によるトリミング加工ライン(図10の一点鎖線Bを参照)の中心とが一致するので、ブレード72は、紫外光の非照射領域を切削することなく、紫外光の照射領域のみを切削する。したがって、実施形態によれば、非硬化状態の紫外線硬化接着剤62を切削することに起因するブレード72の目詰まりを防止することができる。また、紫外光の照射領域は、チャックテーブル16の中心軸16Aに対するウェーハWの中心WCのずれのみに依存するので、既存の搬送装置26の搬送精度を改善することなく、安定したエッジトリミング加工を実施することができる。また、本実施形態では、紫外線の照射領域がトリミング加工ラインAの内側に残らずに除去することが可能であるため、裏面研削工程においてテープ60がウェーハWから剥離することがない。よって、研削品質の低下やテープ60とウェーハWとの間に研削水が侵入することに起因するイールドの低下は発生しない。
【0050】
以上説明した実施形態では、光硬化接着剤として紫外線硬化接着剤62を例示したが、これに限らず、例えば、可視光、近赤外光又は近紫外光で硬化される光硬化接着剤を適用することもできる。この場合、テープ60は、可視光、近赤外光又は近紫外光の波長を透過するものとし、光照射手段は、可視光、近赤外光又は近紫外光を照射するものとする。
【0051】
また、実施形態では、チャックテーブル16をその中心軸16Aを中心に回転移動させてエッジトリミング加工を実施したが、チャックテーブル16を固定して、チャックテーブル16の中心軸16Aを中心に紫外線照射装置50とブレード72を回転移動させてエッジトリミング加工を実施してもよい。
【0052】
また、実施形態では、遮蔽板70を設けることにより、出射部54から出射された紫外光のうち平坦部64に向かう紫外光を遮蔽したが、出射部54のように面取部66に向けて紫外光をスポット照射するものの場合は、遮蔽板70は必ずしも設ける必要はない。ただし、このような出射部54であっても平坦部64に向かう漏れ光も存在することを考慮すると、遮蔽板70を設けることが好ましい。また、スポット照射ではなく拡散照射する形態の出射部の場合は、遮蔽板70を設けることがより好ましい。
【符号の説明】
【0053】
W…ウェーハ、10…ダイシング装置、12A、12B…ブレード、14A、14B…スピンドル、16…チャックテーブル、18…カメラ、20…加工部、22…洗浄部、24…ロードポート、26…搬送装置、28…制御部、30…Xキャリッジ、32…Xベース、34…Xガイド、36…リニアモータ、38…回転テーブル、40…Yベース、42…Yキャリッジ、44…Yガイド、46A、46B…Zキャリッジ、50…紫外線照射装置、52…アーム、54…出射部、56、58…顕微鏡、60…テープ、62…紫外線硬化接着剤、64…平坦部、66…面取部、68…面取面、70…遮蔽板、72…ブレード、74…エッジトリミング部
図1
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図8
図9
図10