(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172214
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】接合方法及び接合装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20221108BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133848
(22)【出願日】2022-08-25
(62)【分割の表示】P 2020122432の分割
【原出願日】2017-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2016223645
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ッ石 創
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 功
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
(72)【発明者】
【氏名】角田 真生
(72)【発明者】
【氏名】前田 栄裕
(72)【発明者】
【氏名】桑野 郁祐
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法及び接合装置を提供する。
【解決手段】第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法であって、保持部の保持面から突起部が少なくとも部分的に突出した状態で保持面に第1の基板を保持することにより、第1の基板の一部の領域に突出部を形成する形成段階と、第1の基板の突出部の少なくとも一部を第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、接触領域を拡大させることにより第1の基板および第2の基板を接合する接合段階とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法であって、
保持部の保持面から突起部が少なくとも部分的に突出した状態で前記保持面に前記第1の基板を保持することにより、前記第1の基板の一部の領域に突出部を形成する形成段階と、
前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合段階と
を含む接合方法。
【請求項2】
前記第1の基板に前記突出部が形成された後に、前記第1の基板の位置を計測する計測段階を更に含む請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記突出部は、前記第1の基板における前記一部の領域以外の領域よりも大きな曲率を有する請求項1または請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記形成段階は、前記突起部に前記第1の基板の前記一部の領域を当接させ、前記第1の基板の前記一部の領域以外の部分を前記保持面に保持することにより、前記第1の基板に前記突出部を形成する請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記第1の基板に前記突出部が形成された状態で、前記第1の基板および前記第2の基板の位置合わせを行う位置合わせ段階を更に含む請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記接合段階は、前記第2の基板を保持しつつ、前記第1の基板の保持を解放する請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記第2の基板を湾曲させる段階を更に有し、
前記接合段階では、前記第1の基板の前記突出部と、湾曲した前記第2の基板の表面とを接触させる請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記接合段階は、前記第1の基板の前記突出部を前記第2の基板に接触させた後、前記突出部および前記第2の基板の間に予め定められた接合強度が形成された後に、前記接触領域の拡大を開始する請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項9】
前記接合段階は、前記第1の基板の前記突出部を前記第2の基板に接触させた後、前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方の振動が収束した後に、前記接触領域の拡大を開始する請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項10】
前記接合段階は、前記第1の基板の前記突出部を前記第2の基板に接触させた後に前記第1の基板の保持を解放したとき、解放された前記第1の基板の振動が収束するまで、前記第1の基板の一部を保持し続けることにより、前記接触領域の拡大を抑制する段階を更に有する請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項11】
前記第1の基板の前記突出部を前記第2の基板の表面に接触させる前に、少なくとも前記突出部に隣接する領域において前記第1の基板の保持を解除する段階を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項12】
前記計測段階は、前記第1の基板に形成されたアライメントマークの検出を含む請求項2に記載の接合方法。
【請求項13】
第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法であって、
保持部の保持面からの突出量が固定である突起部を備える前記保持部の前記保持面に前記第1の基板を保持することにより、前記第1の基板の一部の領域に突出部を形成する形成段階と、
前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合段階と
を含む接合方法。
【請求項14】
前記第1の基板に前記突出部が形成された後に、前記第1の基板の位置を計測する計測段階を更に含む請求項13に記載の接合方法。
【請求項15】
前記突出部は、前記第1の基板における前記一部の領域以外の領域よりも大きな曲率を有する請求項13または請求項14に記載の接合方法。
【請求項16】
第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法であって、
前記第1の基板の一部の領域に、前記第1の基板における前記一部の領域以外の領域から一定の突出量で突出する突出部を形成する形成段階と、
前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合段階と
を含む接合方法。
【請求項17】
前記第1の基板に前記突出部が形成された後に、前記第1の基板の位置を計測する計測段階を更に含む請求項16に記載の接合方法。
【請求項18】
前記突出部は、前記第1の基板における前記一部の領域以外の領域よりも大きな曲率を有する請求項16または請求項17に記載の接合方法。
【請求項19】
第1の基板と第2の基板とを接合する接合装置であって、
前記第1の基板を保持面に保持する保持部と、
前記保持部の前記保持面から少なくとも部分的に突出する突起部を含み、前記第1の基板の一部の領域に突出部を形成する形成部と、
前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面の一部に接触させて接触領域を形成し、前記第1の基板の保持を解放して前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合部と
を備える接合装置。
【請求項20】
前記突起部は、前記保持部の前記保持面から、予め定められた固定量突出する請求項19に記載の接合装置。
【請求項21】
第1の基板と第2の基板とを接合する接合装置であって、
前記第1の基板の一部の領域に、前記第1の基板における前記一部の領域以外の領域から一定の突出量で突出する突出部を形成する形成部と、
前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面の一部に接触させて接触領域を形成し、前記第1の基板の保持を解放して前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合部と
を備える接合装置。
【請求項22】
第1の基板と第2の基板とを接合する接合装置であって、
前記第1の基板を保持する保持面と、前記保持面からの突出量が固定である突起部とを有する保持部と、
前記保持面に前記第1の基板を保持することにより前記第1の基板の一部の領域に形成された突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合部と
を備える接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法及び接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二つの基板を貼り合わせることにより、二つの基板が積層された積層基板を製造する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2012-186243号公報
【0003】
二つの基板を貼り合わせる過程で、二つの基板の間に気泡等が残る場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法であって、保持部の保持面から突起部が少なくとも部分的に突出した状態で前記保持面に前記第1の基板を保持することにより、前記第1の基板の一部の領域に突出部を形成する形成段階と、前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合段階とを含む接合方法が提供される。
【0005】
本発明の第2の態様においては、第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法であって、保持部の保持面からの突出量が固定である突起部を備える前記保持部の前記保持面に前記第1の基板を保持することにより、前記第1の基板の一部の領域に突出部を形成する形成段階と、前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合段階とを含む接合方法が提供される。
【0006】
本発明の第3の態様においては、第1の基板と第2の基板とを接合する接合方法であって、前記第1の基板の一部の領域に、前記第1の基板における前記一部の領域以外の領域から一定の突出量で突出する突出部を形成する形成段階と、前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合段階とを含む接合方法が提供される。
【0007】
本発明の第4の態様においては、第1の基板と第2の基板とを接合する接合装置であって、前記第1の基板を保持面に保持する保持部と、前記保持部の前記保持面から少なくとも部分的に突出する突起部を含み、前記第1の基板の一部の領域に突出部を形成する形成部と、前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面の一部に接触させて接触領域を形成し、前記第1の基板の保持を解放して前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合部とを備える接合装置が提供される。
【0008】
本発明の第5の態様においては、第1の基板と第2の基板とを接合する接合装置であって、前記第1の基板の一部の領域に、前記第1の基板における前記一部の領域以外の領域から一定の突出量で突出する突出部を形成する形成部と、前記第1の基板の前記突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面の一部に接触させて接触領域を形成し、前記第1の基板の保持を解放して前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合部とを備える接合装置が提供される。
【0009】
本発明の第6の態様においては、第1の基板と第2の基板とを接合する接合装置であって、前記第1の基板を保持する保持面と、前記保持面からの突出量が固定である突起部とを有する保持部と、前記保持面に前記第1の基板を保持することにより前記第1の基板の一部の領域に形成された突出部の少なくとも一部を前記第2の基板の表面に接触させて接触領域を形成し、前記接触領域を拡大させることにより前記第1の基板および前記第2の基板を接合する接合部とを備える接合装置が提供される。
【0010】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】基板210、230を接合する手順を示す流れ図である。
【
図6】接合装置100の動作を示す模式的断面図である。
【
図7】接合装置100の動作を示す模式的断面図である。
【
図8】接合装置100の動作を示す模式的断面図である。
【
図9】基板210、230の接合過程を示す模式的断面図である。
【
図10】接合装置100の動作を示す模式的断面図である。
【
図11】基板210、230の接合過程を示す模式的断面図である。
【
図12】基板210、230の接合過程を示す模式的断面図である。
【
図13】基板210、230の接合過程を示す模式的断面図である。
【
図14】接合波の進行過程を示す模式的断面図である。
【
図15】接合波の進行過程を示す模式的断面図である。
【
図16】接合波の進行過程を示す模式的断面図である。
【
図18】基板ホルダ260を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図19】接合波の進行過程を示す模式的断面図である。
【
図20】接合波の進行過程を示す模式的断面図である。
【
図21】基板ホルダ260を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図22】基板ホルダ260を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図23】基板ホルダ260を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図24】基板ホルダ260を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図30】基板ホルダ260、290を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図31】基板ホルダ260、290を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図32】基板ホルダ270を用いた接合の過程を説明するグラフである。
【
図33】基板ホルダ260、290を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図34】基板ホルダ260、290を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図35】使用する基板ホルダに対する接合手順の適用例を示す図である。
【
図36】基板ホルダ260、296を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【
図37】基板ホルダ260、296を用いた接合過程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、互いに積層して接合する基板210、230の模式的平面図である。それぞれの基板210、230は、スクライブライン211、231、アライメントマーク213、233、および回路領域214、234を有する。アライメントマーク213、233および回路領域214、234は、それぞれ複数設けられる。
【0014】
アライメントマーク213、233は、基板210、230の表面に形成された構造物の一例であり、図示の例では回路領域214相互の間に配されたスクライブライン211、231に重ねて配される。アライメントマーク213、233は、二つの基板210、230を接合するときに、基板210、230相互の位置合わせ指標として使用される。
【0015】
回路領域214、234は、同じ構造を有する複数のものが、基板210、230の表面に周期的に配される。回路領域214、234の各々には、フォトリソグラフィ技術等より形成された半導体装置、配線、保護膜等の構造物が設けられる。基板210を他の基板210、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等の接続部も回路領域214、234に配される。接続部も、基板210の表面に形成された構造物の一例である。
【0016】
図2は、基板210、230を接合する手順を示す流れ図である。まず、相互に重ね合わせて接合する基板210、230を、基板ホルダ220、240等の保持部材にそれぞれ保持させる(ステップS101)。これにより、基板210、230を保護して取り扱いを容易にする。
【0017】
図3は、一方の基板210を保持する基板ホルダ220の模式的断面図である。基板ホルダ220は、本体部229および突起部材250を有する。
【0018】
本体部229は、保持面221、通気路222、および凹部223を有する。保持面221は、本体部229の図中上面に形成された平坦な面を有し、基板210の裏面に接する。
【0019】
通気路222は、保持面221に開口する複数の吸気孔を一端に有する。また、通気路222の他端は、制御バルブ124を介して、基板ホルダ220の外部に設けられた負圧源125および開放端126に選択的に結合される。
【0020】
制御バルブ124は、後述する接合装置100の制御部150の制御の下に、通気路222を負圧源125または開放端126に選択的に連通させる。制御バルブ124が通気路222を負圧源125に連通させた場合、保持面221の開口に負圧が作用して基板ホルダ220に搭載された基板210が吸着される。制御バルブ124が通気路222を開放端126に連通した場合は保持面221の吸着力が解消されるので、基板ホルダ220による基板210の保持が解除される。
【0021】
凹部223は、保持面221の略中央に形成されている。凹部223は、保持面221から窪んだ内部に突起部材250を収容する。突起部材250は、平坦な底面を有し、凹部223の底面に、接着剤、両面テープ、磁力、ねじ、嵌め合い構造等の固定手段により固定される。また、突起部材250は、略中央に、上方に向かって突出し、図中上端の面を基板210に対する当接面とする当接部251を有する。
【0022】
当接部251は、図示の例では、円柱状をなしている。突起部材250の底面から当接部251の上端までの高さAは、凹部223の深さBよりも高く、これにより、当接部251の上端は保持面221の表面から突出する。このため、基板210が保持面221に吸着された段階で、当接部251の上端は、基板210の下面に当接し、基板210の中央部の領域Cを、下面から上面に向かって、すなわち、領域Cが本体部229から離れる方向に押し上げる。その結果、保持面221に吸着されて基板ホルダ220に保持された基板210の中央部には、基板210の他の領域よりも大きな曲率で隆起した突出部215が形成される。すなわち、突起部材250は、保持面221に保持された基板210の一部の領域に当接することにより突出部215を形成する形成部の一例である。
【0023】
なお、突起部材250により基板210の一部に形成される突出部215の曲率は、突出部215全体で一定であるとは限らず、突出部215は、少なくとも一部において、基板210における突出部215以外の領域よりも大きな曲率を有する。基板210の突出部215以外の領域が平坦な場合すなわち当該領域の曲率が零の場合、突起部材250により突出部215が形成された基板210では、平坦な基板210の突出部215のみが、湾曲した部分を有する形状となる。
【0024】
また、基板210における突出部215以外の領域も湾曲している場合には、突出部215の部分的な曲率が、基板210の他の領域の曲率よりも小さくなる場合もあり得る。例えば、突出部215の形状が円錐形の一部を含むものである場合は、円錐の側面に対応する部分の曲率が零になる場合もある。また、基板210の例えば周縁部が裏面側に大きく湾曲している場合は、その周縁部の曲率よりも突出部215の曲率が小さくなる場合がある。しかしながら、いずれの場合も、突出部215全体は、基板210の突出部215以外の領域が形成する仮想のひと続きの平面または曲面から突出した形状をなす。
【0025】
突出部215の頂点を通り且つ基板210の厚さ方向に沿った平面で突出部215を切断したときの断面で見て、少なくとも突出部215の先端部における表面の曲率が、基板210の中央部以外の領域の曲率よりも大きい。先端部の表面の曲率は、突出部215の先端部と他方の基板230とが接触したときに、接触領域の面積および形状等が、先端部および他の基板230との間に接合不良を生じさせる程の気泡が生じないもしくは挟み込まれない面積および形状になるときの曲率である。
【0026】
突出部215の高さDは、基板210の中央部以外の領域における表面を基準としたときの突出部215の頂点の高さであり、保持面221からの当接部251の突出量に略相当する。
【0027】
図4は、基板210に接合される他の基板230を保持する基板ホルダ240の模式的断面図である。基板ホルダ240は、保持面241および通気路242が形成された本体部249を有する。
【0028】
全体に平坦な基板ホルダ240の保持面241には、通気路242に連通する複数の開口が配される。通気路242の一端は、制御バルブ144を介して、基板ホルダ240の外部に設けられた負圧源145および開放端146に選択的に結合される。
【0029】
制御バルブ144は、制御バルブ124と同様に、後述する接合装置100の制御部150により制御され、通気路242を負圧源145または開放端146に選択的に連通させる。
【0030】
再び
図2を参照すると、上記のように、それぞれ基板ホルダ220、240に保持された基板210、220は、基板ホルダ220、240と共に、接合装置100に搬入される(ステップS102)。
【0031】
図5は接合装置100の構造を示す模式図である。また、
図5は、ステップS102で、基板210、230が搬入された直後の状態を示す図でもある。
【0032】
接合装置100は、枠体110、固定ステージ121、移動ステージ141、および制御部150を備える。
【0033】
固定ステージ121は、枠体110の天板113に下向きに固定され、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有し、基板ホルダ220を吸着して保持する。基板210を保持した基板ホルダ220は、基板210の表面が下向きになるように固定ステージ121に搬入される。
【0034】
また、天板113の図中下面には、図中下向きに固定された上顕微鏡122および上活性化装置123が、固定ステージ121の側方に配される。上顕微鏡122は、固定ステージ121に対向して配置された移動ステージ141上の基板230の上面を観察できる。上活性化装置123は、移動ステージ141に保持された基板230の上面を清浄にして活性化するプラズマを発生する。
【0035】
枠体110の底板111の図中上面には、X方向駆動部131、Y方向駆動部、および移動ステージ141が積層して配される。基板230を保持した基板ホルダ240は、基板230の表面が上向きになるように移動ステージ141の上面に搬入される。
【0036】
X方向駆動部131は、底板111と平行に、図中に矢印Xで示す方向に移動する。Y方向駆動部132は、X方向駆動部131上で、底板111と平行に、図中に矢印Yで示す方向に移動する。X方向駆動部131およびY方向駆動部132の動作を組み合わせることにより、移動ステージ141は、底板111と平行に二次元的に移動できる。
【0037】
Y方向駆動部132と移動ステージ141との間には、Z方向駆動部133が配される。Z方向駆動部133は、矢印Zで示す底板111に対して垂直な方向に、Y方向駆動部132に対して移動ステージ141を移動させる。これにより、移動ステージ141を固定ステージ121に接近させることができる。X方向駆動部131、Y方向駆動部132およびZ方向駆動部133による移動ステージ141の移動量は、干渉計等を用いて高精度に計測される。
【0038】
Y方向駆動部132の図中上面には、下顕微鏡142および下活性化装置143が移動ステージ141の側方に搭載される。下顕微鏡142は、Y方向駆動部132と共に移動して、固定ステージ121に保持された下向きの基板210の下面を観察できる。下活性化装置143は、Y方向駆動部132と共に移動して、固定ステージ121に保持された基板210の図中下面を清浄にして活性化するプラズマを発生する。
【0039】
なお、上活性化装置123および下活性化装置143に代わる活性化装置を接合装置100とは別の場所に設けて、予め活性化した基板210、230を接合装置100に搬入してもよい。
【0040】
接合装置100は、更に制御部150を備える。制御部150は、X方向駆動部131、Y方向駆動部132、Z方向駆動部133、上活性化装置123、および下活性化装置143の動作を制御する。
【0041】
なお、基板210、230の接合に先立って、制御部150は、上顕微鏡122および下顕微鏡142の相対位置を予め較正しておく。上顕微鏡122および下顕微鏡142の較正は、例えば、上顕微鏡122および下顕微鏡142を共通の焦点Fに合焦させて、相互に観察させることにより実行できる。また、共通の標準指標を上顕微鏡122および下顕微鏡142で観察してもよい。
【0042】
再度
図2を参照すると、制御部150は、上記のようにして搬入された基板210、230のそれぞれについて、
図6に示すように、移動ステージ141を移動させることにより、対向する基板210、230を上顕微鏡122および下顕微鏡142を用いて観察し、これにより、複数のアライメントマーク213、233の位置を計測する(ステップS103)。
【0043】
上顕微鏡122および下顕微鏡142の相対位置は予め較正されているので、この計測により、基板210、230の相対位置が精度よく検出される。この段階で下顕微鏡142が観察する基板210は、突起部材250を有する基板ホルダ220に保持された状態で固定ステージ121に保持されている。よって、下顕微鏡142は、突出部215が形成された状態の基板210を観察して、突出部215を含む基板210の表面におけるアライメントマーク213の位置を検出する。
【0044】
このように、アライメントマーク213の位置を検出する前に突起部材250により基板210に突出部215を形成し、突出部215が形成された状態でアライメントマーク213の位置を検出している。これにより、アライメントマーク213の位置を検出した後に基板210に突出部215を形成する場合と異なり、アライメントマークの位置検出後に基板210の中央部に変形による変位が生じることを抑制できる。従って、位置合わせ精度の低下を抑制できる。
【0045】
また、基板ホルダ220への基板210の保持動作中に基板210に突出部215が形成されるため、基板210を保持した後に基板210の一部を押して突出部215を形成する動作をする接合装置と異なり、突出部215形成のために工数が増加することも回避できる。
【0046】
なお、アライメントマーク213の位置を検出した後に基板210に突出部215を形成した場合、突出部215形成に伴う基板210の中央部の変形により、特に中央部におけるアライメントマーク213の位置が、検出された位置からずれてしまう。また、基板210の中央部に突出部215を形成するために押圧力を与えたとき、中央部以外の領域が押圧力に引っ張られて、中央部以外の領域の位置が、アライメントマーク213を検出したときの位置からずれてしまう。このため、位置情報に対する信頼性が低下し、また、当該位置情報に基づく位置合わせ精度が低下する。
【0047】
換言すれば、突出部215を形成した後にアライメントマーク213の位置を検出して基板210、230を位置合わせするという手順を遵守すれば、基板ホルダ220以外の機材を用いて突出部215を形成して、基板210、230を積層してもよい。そのような機材としては、保持面の中央から突出または退避するプッシュロッドを備えたステージ装置を例示できる。
【0048】
制御部150は、検出された基板210、230の相対位置情報に基づいて、基板210、230の位置合わせに必要な移動ステージ141の移動方向および移動量を算出する。
【0049】
次に、制御部150は、
図7に示すように、上活性化装置123および下活性化装置143を動作させながら移動ステージ141を走査させることにより、基板210、230の表面を活性化する(ステップS104)。活性化された基板210、230の表面は、互いに接触させることにより、接着剤等の介在物、溶接、圧着等の加工なしに、相互に接合できる状態になる。
【0050】
次に、制御部150は、先にステップS103で算出した情報に基づいて移動ステージ141を移動させて、
図8に示すように、基板210、230を相互に位置合わせする(ステップS105)。
図9は、接合装置100において位置合わせされた基板210、230の状態を示す模式的な断面図である。
【0051】
この段階では、制御部150は、制御バルブ144を制御して、移動ステージ141上に保持された基板ホルダ240の通気路242を負圧源145に連通させている。これにより、基板230が保持面241に吸着されている。
【0052】
また、制御部150は、制御バルブ124を制御して、固定ステージ121に保持された基板ホルダ220の通気路222も、負圧源125に連通させている。これにより、基板210が基板ホルダ220の保持面に吸着されている。
【0053】
次に、
図10に示すように、制御部150はZ方向駆動部133を動作させて、移動ステージ141を上昇させる。これにより、基板230が上昇し、やがて、基板210、230が互いに接触する。
【0054】
図11は、接合装置100において基板210、230が接触し始めた状態を示す模式的な断面図である。固定ステージ121に保持された基板210には、図中下方に向かって突出した突出部215が形成されている。よって、移動ステージ141の上昇により基板210、230が互いに接近したときに、まず、突出部215が基板230の表面に接触する。
【0055】
換言すれば、突出部215は、基板210の他の領域よりも隆起しているので、基板210下面の全領域のうち、突出部215の先端が、確実に最初に基板230の表面に接触する。このとき、突出部215の先端を基板230の表面の中心に接触させることが好ましい。基板210、230の表面は、ステップS104において既に活性化されているので、基板210、230の接触点には、基板210、230の一部が接触により接合した接合起点209が形成される(ステップS106:
図2)。
【0056】
接合起点209は、基板210,230同士が接触した領域である接触領域であり、貼り合わせを開始するときに形成される接触領域である。接合起点209は、面積を有する領域であってもよい。貼り合わせる一対の基板210、230における貼り合わせの起点は、基板210の一部を基板230の一部に押し付けることにより、基板210,230の間に挟まれた雰囲気等が押し出されて、基板210、230同士が直接に接触して形成される。
【0057】
この接触により、活性化された二つの基板210、230の接触領域が、水素結合のような化学結合により結合する。二つの基板210、230を一部で接触させた後、制御部150は、二つの基板210、230が互いに接触した状態を維持する。このとき、基板210、230同士を押し付けることにより、接触した一部の面積を大きくすることにより接触領域を広げてもよい。
【0058】
また、制御部150は、制御バルブ124、144を制御して、基板ホルダ220、240の各々の通気路222、242をいずれも負圧源125に連通させている。よって、基板210、230は、それぞれ基板ホルダ220、240に吸着されており、接合起点209以外の部分で、基板210、230が接触することは抑制されている。
【0059】
接触状態を維持した状態で所定の時間が経過すると、二つの基板210、230の貼り合わせの過程で基板210、230間に位置ずれが生じない大きさの結合力が二つの基板210の間に確保される。これにより、基板210、230の互いに接触した一部に貼り合わせの起点が形成される。
【0060】
制御部150は、次に、固定ステージ121側において、制御バルブ124を切り換えて、基板ホルダ220の通気路222を大気圧へ開放端に連通させる。これにより、基板ホルダ220による基板210の保持が解除され(ステップS107)、活性化された表面相互の分子間力等により、基板210、230が相互に自律的に接合される。
【0061】
このとき、
図12に示すように、基板210、230の接合された接触領域が、接合起点209から、基板210、230の径方向外側に向かって順次拡大する。これにより、接合領域が順次拡がっていく接合波が発生し、基板210、230の接合が進行する(ステップS108)。
【0062】
図13は、上記のような基板210、230の接合波の進行が完了した状態を示す模式的断面図であり、
図11、12と同じ視点で示されている。図示の通り、基板210、230は全面にわたって接触し、更に接合されている。これにより基板210、230の接合は完了し(ステップS109)、二つの基板210、220は一体的な積層基板201となる。このように、接合装置100は、突出部215を形成された基板210を含む二つの基板210、230を保持する保持部である移動ステージ141および固定ステージ121を備え、一方の基板210の突出部215を他方の基板230に接触させて接合起点209を形成し、更に、接合起点209から接触領域を拡大させることにより基板210、230を接合する接合部を形成する。
【0063】
図中上側の固定ステージ121に吸着された基板ホルダ240による基板210の吸着は、ステップS106において既に解除されている。よって、形成された積層基板201は、移動ステージ141に保持された基板ホルダ240に保持されている。この後、積層基板201は、接合装置100から搬出されるが(ステップS110)、積層基板201の搬出は、基板ホルダ240による保持を先に解除して積層基板201単独で搬出してもよいし、基板ホルダ240に保持させたまま基板ホルダ240と共に搬出した後、積層基板201を基板ホルダ240から分離してもよい。
【0064】
なお、上記の例では、
図1に示した基板210、230のように、回路領域214等を有する基板210、230を位置合わせして接合した。これに代えて、回路領域214等が形成されていないガラス基板および半導体基板等を、接合装置100を用いて接合してもよい。この場合は、
図2に示した接合手順において、ステップS103の位置計測およびステップS105の位置合わせを省略してもよい。
【0065】
図14、
図15、および
図16は、基板210、230の接合において、接合起点209から外周に向かって接合波が進行する過程で生じる基板210、230間の位置ずれを説明する図である。これらの図では、接合の過程にある基板210、230において、基板210、230の接合領域と非接合領域との境界Kすなわち接合波の先端の付近が拡大して示される。
【0066】
尚、位置ずれとは、二つの基板210、230の間で対応するアライメントマーク213同士、または、互いに対応する接続部同士の、所定の相対位置からのずれである。位置ずれ量が閾値よりも大きい場合は、接続部同士が接触しない又は適切な電気的導通を得ることができない、もしくは接合部間に所定の接合強度が得られない。
【0067】
図14に示すように、境界Kの直近においては、基板ホルダ220による保持から解放された基板210において、図中下面側においては伸び、図中上面側においては収縮する変形が生じる。更に、
図15に示すように、基板210、230において境界Kの位置が移動すると、上記の変形が生じる場所も境界Kと共に移動する。
【0068】
上記のような変形を伴って接触した基板210、230が相互に接合されると、基板210の伸びが、基板230に接合されることにより固定され、基板210が、基板230に対して拡大したかのようになる。このため、図中に点線のずれとして現れるように、基板ホルダ240に保持された下側の基板230と、基板ホルダ220から解放された上側の基板210との間に、基板210の伸び量に相当する位置ずれが生じる。
【0069】
更に、
図16に示すように、上記のような位置ずれは、境界Kが基板210、230の外周に向かって累積され、外周に近づくほど位置ずれが大きくなる。
【0070】
図17は、上記のように、接合の過程で生じる位置ずれに対する対策として用意された基板ホルダ260の模式的断面図である。基板ホルダ260は、保持面261と通気路262とを含む本体部269を有する。
【0071】
基板ホルダ260の保持面261は、周縁部から中央部に向けて高さが徐々に増加する断面形状を有し、図示の例では、周縁部から中央部に向けて厚さが徐々に増加する断面形状を有する。これにより、保持面261は、例えば球面をなす。また、保持面261には、通気路262に連通する複数の開口が配される。通気路262の一端は、制御バルブ144を介して、基板ホルダ260の外部に設けられた負圧源145および開放端146に結合される。なお、保持面261の形状が球面に限られないことはもちろんであり、例えば、放物線をその対称軸を中心として回転させた曲面またはその一部である放物面、円筒を中心軸に沿って切ったときの外周面である円筒面等のように、非回転体形状であってもよい。
【0072】
制御部150の制御により制御バルブ144が通気路242を負圧源145に連通させることによって、基板230は基板ホルダ260に吸着される。基板ホルダ260の保持面261は曲面なので、基板ホルダ260に吸着した基板230は、保持面261の形状に倣って湾曲する。
【0073】
基板ホルダ260の保持面261に基板230が吸着された場合、図中に一点鎖線で示す基板210の厚さ方向の中心部Eに比較して、基板230の図中上面である表面は、中心から周縁部に向けて面方向に拡大変形される。また、基板230の図中下面である裏面においては、基板230の中心から周縁部に向けて面方向に縮小変形される。
【0074】
図18は、接合装置100において、移動ステージ141側の基板230の保持に基板ホルダ260を用いた場合を示す模式的断面図である。図示の状態は、
図2に示したステップS106で基板210、230に接合起点209を形成した段階に対応する。
【0075】
図中上側の基板ホルダ220に保持された基板210は、突起部材250の当接部251により形成された局部的な突出部215を有する。よって、基板210、230を接触させたとき、基板ホルダ260の保持面261が平坦である場合に比べて、より確実に突出部215の略中央の一点に接合起点209が形成される。
【0076】
次に、基板ホルダ220による基板210の保持を解除して、
図19に示すように、基板210、230の間で接合波を進行させる(ステップS108:
図2)。
【0077】
図示のように、隆起した保持面261を有する基板ホルダ260に保持された基板230の上側表面は、保持面261の湾曲した形状に倣うことにより、倍率が拡大している。このため、基板ホルダ240による基板210の保持が解除され、基板210が変形しながら基板230に接合したとき、基板210の変形が基板230の湾曲変形により相殺され、基板210、230間に位置ずれを生じることなく積層基板201を形成できる。
【0078】
なお、上記の倍率は、設計値では基板の中心から距離X0に位置する構造物が、実際に製造された基板では中心からの距離X1に位置する場合に、差分(X1-X0)を距離X0で除することにより得られた値である。倍率は、例えばppm(Parts Per Million)を単位として表される。
【0079】
また、上記の例では、保持面261の中央が隆起した基板ホルダ260を用いたが、保持面261の中央が陥没した基板ホルダ260を用いることにより、保持した基板230の表面を収縮させて、倍率を縮小することもできる。これにより、基板210の回路領域214が設計仕様に対して小さい場合に、基板230をそれに合わせて位置ずれを抑制することもできる。
【0080】
なお、接合の過程で生じる倍率の変化量は、基板210に形成される突出部215の高さにも影響を受ける。よって、基板ホルダ220における突起部材250が保持面221から突出する突出量の多寡に応じて、対向する基板230を保持する基板ホルダ240の曲率を調整してもよい。より具体的には、例えば、高さがより大きい突起部材250を有する基板ホルダ240を使用する場合に、より大きな曲率で中央側が隆起する基板ホルダ240を選択して使用してもよい。
【0081】
図20は、接合の過程で生じる位置ずれに対する他の対策を説明する図である。図示の状態は、基板210、230の間で接合波が進行している状態(ステップS108:
図2)を示す。
【0082】
図示の方法では、平坦な保持面241を有する基板ホルダ240に下側の基板230を保持し、上側の基板210を基板ホルダ220の保持から開放すると共に、下側の基板230も、基板ホルダ240の保持から開放する。上側の基板210からの引っ張り力により、下側の基板230が基板ホルダ240から浮き上がって湾曲する。これにより、下側の基板230の表面が伸びるように形状が変化するので、この伸び量の分、上側の基板210の表面の伸び量との差が小さくなる。従って、二つの基板210、230間の異なる変形量に起因する位置ずれが抑制される。
【0083】
換言すれば、基板230の曲げ量すなわち伸び変形量を調整することにより、基板210、230間の倍率差による位置ずれを小さくすることができる。このように、平坦な保持面241を有する基板ホルダ240を用いた場合でも、基板210,230の位置ずれを抑制できる。
【0084】
なお、両方の基板ホルダ220、240による保持を解除する場合、基板210、230の接合強度が十分に高くなるまで、接合起点209が形成される位置で基板210、230を接触させた状態を積極的に維持することにより、基板210,230の予期せぬ位置に接合起点209が形成されて積層基板201に気泡が残ることを防止できる。ステップS109(
図2)で基板210、230の接合が完了した後は、いずれかの基板ホルダ220、240により、積層基板201を改めて保持してもよい。
【0085】
重ね合わせ過程において、基板210の変形が生じている境界K付近の領域に、図中上方から基板210に対して吸着力を作用させると、補正をしなかった場合の変形に対して、より大きな変形が基板210に生じる。
【0086】
なお、補正目的で基板230の保持を解除する場合には、保持力を完全に消失させることに換えて、保持力を弱くするにとどめてもよい。このように、基板ホルダ240による基板230の保持力を調整することによっても、基板230の倍率を調節でき、基板210との倍率差による位置ずれを補正できる。
【0087】
図21、
図22、
図23、および
図24は、
図5に示した接合装置100、
図3に示した基板ホルダ220、および
図17に示した基板ホルダ260を用いた基板210、230の他の接合方法を示す図である。使用する部材についての重複する個別の説明は省く。
【0088】
図21に示すように、基板210を保持して接合装置100に搬入された基板ホルダ220が移動ステージ141に保持されている。また、基板230を保持して接合装置100に搬入された基板ホルダ260が固定ステージ121に保持されている。
【0089】
次いで、位置計測(ステップS103)、基板活性化(ステップS104)、および基板位置合わせ(ステップS105)の後、
図22に示すように、突出部215が形成された基板210を移動ステージ141により上昇させて、接合起点209が形成される(ステップS106)。更に、
図23に示すように、基板ホルダ220による基板210の保持を解除して(ステップS107)、接合波を進行させる(ステップS108)。
【0090】
基板210、230において接合波が進行するにつれて、図中下側に位置する基板ホルダ220の保持が解除された基板210は、図中上側の基板ホルダ240に保持された基板230に接合して、
図24に示すように、積層基板201が形成される。このように、接合装置100においては、下側の基板210を解放して、積層基板201を形成することもできる。
【0091】
図25は、平坦な保持面271を有する他の基板ホルダ270の模式的断面図である。図は、基板ホルダ270が基板210を保持し、更に、固定ステージ121に保持された状態を示す。
【0092】
基板ホルダ270は、本体部279および突起部材250を有する。突起部材250と、突起部材250を収容する保持面271の凹部273の形状は、
図3に示した基板ホルダ220の突起部材250および凹部223と等しいので重複する説明は省く。
【0093】
本体部279は、互いに独立した2系統の通気路272、274を有する。一方の通気路272は、保持面271の外周側に配された複数の開口を有する。通気路272の他端は、制御バルブ124を介して、基板ホルダ270の外部に設けられた負圧源125および開放端126に結合される。制御バルブ124は、接合装置100の制御部150の制御の下に、通気路272を、負圧源125または開放端126に選択的に連通させる。
【0094】
制御バルブ124が通気路272を負圧源125に連通させると、保持面271の開口に負圧が作用し、保持面271の外周側に基板210が吸着される。制御バルブ124により通気路272が開放端126に連通すると、基板ホルダ270の保持面271における基板210の吸着が解除される。
【0095】
他方の通気路274は、保持面271において、突起部材250を収容した凹部273の周囲に配された複数の開口を有する。通気路274の他端は、制御バルブ127を介して、基板ホルダ270の外部に設けられた負圧源128および開放端129に結合される。制御バルブ127は、接合装置100の制御部150の制御の下に、通気路274を負圧源128または開放端129に選択的に連通させる。
【0096】
制御バルブ127が通気路274を負圧源128に連通させると、保持面271の開口に負圧が作用し、凹部273の周囲で基板210が保持面271に吸着される。制御バルブ127が通気路274を開放端129に連通させると、凹部273の周囲では基板210の吸着が解除される。
【0097】
基板ホルダ270に基板210を保持させる段階(ステップS101:
図2)においては、両方の通気路272、274を両方ともに負圧源125、129に連通させ、保持面271全体で基板210を吸着する。これにより、当接部251が当接した領域Tにおいて、基板210に突出部215が形成される。
【0098】
図26は、次の段階を示す図である。この段階は、基板ホルダ270が基板210を保持した段階(ステップS101)の後であって、基板210に対する位置計測を開始する段階(ステップS103)の前に実行される。
【0099】
制御部150は、基板210におけるアライメントマーク213の位置計測を開始する前に、制御バルブ127を制御して通気路274を開放端129に連通させてもよい。これにより、基板ホルダ270における突起部材250周囲の吸着力が解消し、吸着されなくなった領域の基板210が保持面271から遠ざかる。
【0100】
従って、基板210の突出部215の先端部における曲率が減少して、図中下面になる側基板210の表面の変形量も減少するので、突出部215を形成したことによる基板210の中央部における表面の変形が緩和される。ただし、通気路274を開放端129に連通させる段階は必須ではなく、通気路274を負圧源145に接続したままステップS103の計測を開始してもよい。
【0101】
この状態で、アライメントマーク213の位置計測(ステップS103)を実行する。これにより、基板210の中央部において、基板210を保持面271に吸着した状態すなわち基板210の中央部に突出部215が形成された状態でのアライメントマーク213の位置と、基板210を保持面271から解放されて基板210が基板230に接合されるときのアライメントマーク213の位置との差が小さくなるため、基板210、230の位置合わせ精度を向上できる。
【0102】
図27は、他の基板ホルダ290の模式的断面図である。基板ホルダ290は、本体部299および突起部材280を有する。
【0103】
本体部299は、保持面291、通気路292、294、および凹部293を有する。保持面291は、本体部299の図中上面に平坦な面を有する。また、保持面291の中央には、保持面291から陥没した凹部293が設けられる。更に、本体部299は、厚さ方向に貫通した複数の通気路292、294を有する。
【0104】
一方の通気路292は、保持面291の中央部以外の全域に分布する複数の開口を有する。また、通気路292の他端は、制御バルブ144を介して、基板ホルダ290の外部に設けられた負圧源145および開放端146に結合される。制御バルブ124は、接合装置100の制御部150の制御の下に、通気路292を負圧源145または開放端146に選択的に連通される。
【0105】
制御バルブ144が通気路292を負圧源145に連通した場合、保持面291の開口に負圧が作用するので、基板210は、基板ホルダ290の保持面291に吸着される。制御バルブ144が通気路292を開放端146に連通した場合、保持面291の吸着力が解消されるので、基板ホルダ220の保持面291への基板210の吸着が解除される。
【0106】
他方の通気路294は、凹部293の底部に開口する一端を有する。通気路294の他端は、制御バルブ147を介して、基板ホルダ290の外部に設けられた負圧源148および開放端149に結合される。制御バルブ124は、接合装置100の制御部150の制御の下に、通気路222を負圧源125または開放端126に選択的に連通させる。
【0107】
図28は、突起部材280の斜視図である。突起部材280は、当接部281、周壁部282および通気路284を有する。突起部材280も、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部の一例である。
【0108】
当接部281は、突起部材280の中央で図中上方に突出した突起の先端に配される。周壁部282は、突起部材280の外周に沿って環状に配される。これにより、当接部281と周壁部282との間には、溝部283が形成される。
【0109】
通気路284は、溝部283の内部に一端を開口し、突起部材280の下面まで貫通する。突起部材280を本体部299の凹部293に収容した場合、通気路284は、本体部299の通気路294に連通する。よって、制御バルブ147が通気路294を負圧源148に連通した場合、突起部材280の溝部283の内部に負圧が作用することにより、基板210が溝部283に対して吸着される。すなわち、溝部283は基板210を吸引する吸着部の一例である。制御バルブ147が通気路294を開放端149に連通した場合は、突起部材280の溝部283における吸着力が解消される。
【0110】
突起部材280を本体部299の凹部293に収容した状態では、当接部281の少なくとも一部、および、周壁部282の少なくとも一部は、保持面291から突出する。図示の例では、周壁部282の高さは、当接部281よりも低い。
【0111】
再び
図27を参照すると、突起部材280の周壁部282の高さGは凹部293の深さHよりも大きく、周壁部282の図中上端は、保持面291から突出している。更に、当接部281の高さJは、図示の例では、周壁部282よりも更に高く、当接部281の図中上端は、周壁部282から更に突出している。
【0112】
図29は、
図5に示した接合装置100、
図17に示した基板ホルダ260、および
図27に示した基板ホルダ290を用いた基板210、230の接合手順を示す流れ図である。
図29に示した手順のうち、
図2に示した手順と同じ操作については、同じ符号を付して説明を簡略化する。
【0113】
まず、基板210、230が、それぞれ基板ホルダ290、260に保持される(ステップS101)。ここで、基板ホルダ290は、本体部299の通気路292と、突起部材280の溝部283との両方で基板210を吸着する。
【0114】
これにより、基板210の中央部以外の領域は、本体部299の保持面291に吸着される。また、基板210の中央部の一部が突起部材280の当接部281に当接することにより、中央部に突出部215が形成される。更に、突出部215の外周部の一部は、突起部材280の周壁部282の上端に当接し、これにより、基板210の中央部が溝部283に吸着される。
【0115】
次いで、基板ホルダ290、260に保持された基板210、230は、
図30に示すように、接合装置100に搬入される(ステップS102)。図示の例では、一方の基板210を保持した基板ホルダ290は移動ステージ141に搬入され、他方の基板230を保持した基板ホルダ260は固定ステージ121に搬入される。
【0116】
位置計測(ステップS103)、基板活性化(ステップS104)、および基板位置合わせ(ステップS105)が実施された後、
図31に示すように、制御部150が制御バルブ144を切り換えて、基板ホルダ290における保持面291の通気路292を開放端146に連通する。これにより、基板210の中央部を除く領域の保持面291への吸着が解除される(ステップS111)。
【0117】
なお、保持面291による保持を解除した場合に、通気路292を通じて保持面291の表面に流体を噴出させることにより、基板210を保持面291から積極的に引き離してもよい。これにより、基板210の解放を促進して、次のステップに進むまでの時間を短縮できる。また、噴出する流体により基板210を保持面291から押し離すことにより、突出部215における基板210の変形を緩和することができる。
【0118】
図32は、基板ホルダ290に保持された基板210の突出部215の断面形状の変化を示すグラフである。図示の曲線Pのように、保持面291および突起部材280の両方が基板210を吸着している場合、基板210の中央部が当接部281に密着することにより、突出部215が形成される。
【0119】
基板ホルダ290の保持面291における吸着を解除して、更に、通気路292から噴出した流体により基板210の外周側を押し上げると、突出部215の外周部分は、矢印Xで示すように変形して、突出部215の高さを変えることなく、図示の曲線Rのように、突出部215の先端部の曲率が曲線Pに比べて小さくなる。
【0120】
更に、通気路292からの流体の噴出を停止すると、押し上げ力が作用しなくなった基板210の突出部215は、矢印Yで示すように、突出部215の高さを変えることなく、図示の曲線Qのように、突出部215の先端部の曲率が曲線Rに比べて大きく且つ曲線Pに比べて小さくなる。曲線Qの状態では、曲率は、積極的な流体の噴出が無かった曲線Pの場合よりも低く、突出部215における基板210の変形は緩和される。
【0121】
また、保持面291による保持を解除した場合、保持面291から離れる基板210に振動が生じる場合がある。振動を残したまま次のステップを実行すると、基板210、230の位置合わせ精度に影響を及ぼす場合があるので、ステップS111の後、次のステップを実行する前に、基板の振動の振幅の大きさが、例えば、基板210、230が中心以外の部分で接触しない大きさになるまで、または、基板の振動により接合波の進行速度が変化して基板210、230間のずれ量が許容値を超えてしまうことがない大きさになるまで、待ってもよい。
【0122】
ステップS111の段階では、基板ホルダ290は、突起部材280の溝部283による基板210の吸着を継続している。このため、基板210には、依然として当接部281により突出部215が形成されている。この状態で、
図33に示すように、制御部150は、Z方向駆動部133により移動ステージ141を上昇させて、基板210の突出部215を他方の基板230に接触させて接合起点209を形成する(ステップS106)。
【0123】
なお、基板210の外周側の部分は、保持面291による保持から解放されているが、突起部材280による吸着力が、基板210を基板230から遠ざける方向に作用している。このため、基板210、230に接合起点209が形成されても、そのまま接触領域が拡がってしまうことは防止される。
【0124】
次に、制御部150は、制御バルブ147により通気路294、284を開放端149に連通させる。これにより、
図34に示すように、突起部材280による基板210の吸着は解除され(ステップS107)、基板210、230における接合波が進行する(ステップS108)。このとき、接合波の進行中に基板210、230間の位置ずれが生じないように、制御部150は、突起部材280の当接部281が基板210を基板230に押し付けた状態を維持するように移動ステージ141の位置を制御する。
【0125】
なお、ステップS106に、外周側が保持されていない状態の基板210が接合起点209形成のために基板230に接触した場合、基板210の外周側が振動を生じる場合がある。基板210に振動を残したまま次のステップを実行すると、基板210、230の位置合わせ精度に影響を及ぼす場合があるので、次のステップの実行は、上記したように、基板の振動が十分に小さくなるまで待ってもよい。
【0126】
その後、
図2に関して説明した場合と同様に、接合波が外周に到達して接合が完了するのを待って(ステップS109)、形成された積層基板201を接合装置100から搬出する。このように、突起部材280にも吸着機能をもたせて、基板210、230の接合過程をきめ細かく制御してもよい。
【0127】
また、上記の例では、突起部材280における当接部281の高さJは、周壁部282の高さGよりも大きい。しかしながら、当接部281の高さJは、周壁部282の高さGと同じであってもよい。高さGが当接部281の高さJと等しい場合は、基板210に対する吸引力が大きいので、突起部材280による基板210の保持が確実になる。
【0128】
図35は、基板210、230の接合に使用する基板ホルダ220、240、260、270、290と、
図2および
図29に示した接合手順との対応関係を示す表である。
【0129】
図示の表において、「突起部材の無いホルダ」とは、
図4等に示した平坦な基板ホルダ240、
図17に示した湾曲した保持面261を有する基板ホルダ260等を指す。また、図示の表において、「突起部材付きのホルダ」とは、
図3等に示した突起部材250を有する基板ホルダ220、
図27等に示した周壁部282を有する突起部材280を有する基板ホルダ290等を指す。
【0130】
また、図示の表において、「
図2の手順」とは、基板ホルダ240、260における基板230の保持の解除(ステップS107)を、専ら保持面241、261において実行する手順を意味する。図示の表において、「
図29の手順」とは、基板ホルダ220、280における基板210の保持の解除を、保持面241、261(ステップS111)と、突起部材280(ステップS112)の異なる段階において実行する手順を意味する。
【0131】
更に、図示の表において、「保持を継続」とは、接合が完了するまで基板230の保持を継続することを意味する。なお、固定ステージ121側と、移動ステージ141側との両方の基板ホルダ220、240が基板210、220の保持を解除しない場合は、基板210、220は接合されないので、適合する接合の手順は存在しない。また、突起部材280を有する基板ホルダ290を、いずれの側でも使用しない場合については、手順の選択の余地がないので、図示の表に適合は記載しない。
【0132】
図示のように、それ自体が基板210を吸着して接合を抑制する突起部材280を備えた基板ホルダ290を用いる場合は、
図29に示した手順を実行できる。更に、突起部材280を有する基板ホルダ290において基板210の保持を継続し、突起部材280の無い基板ホルダ240の側で、基板230の保持を解除しても、基板210、220を接合することができる。更に、
図20を参照して説明したように、両方の基板210、230の保持を解除して接合を進行させることにより、接合の過程で変化する倍率に起因する位置ずれを抑制できる。
【0133】
ただし、突起部材280で基板210を吸着して、接合波の進行を抑制できる基板ホルダ290を用いた場合であっても、当該基板ホルダ290を固定ステージ121側に保持させて、基板210を重力方向下向きに保持している場合は、突起部材280による基板中央付近の吸着だけでは基板接合を抑制し切れない場合がある。よって、固定ステージ121側に突起部材280付きの基板ホルダ290を用いた場合は、
図2に示した手順を適用してもよい。
【0134】
なお、
図35に示した一連の方法において、突起部材付の基板ホルダに保持された基板は解放せず、突起部材が無い基板ホルダに保持された基板を解放して基板同士を接合する場合、解放された基板が固定された基板の突出部に倣って変形しない場合がある。このような場合は、突出部における接合が適正に行われない虞がある。このような場合も、例えば、次に説明する方法で、基板全体を接合させてもよい。ひとつの方法は、両ステージに突起部材付の基板ホルダを用い、両基板ホルダの突起部材同士を突き合せた状態で、両基板ホルダから基板を解放する方法である。また、他の方法として、両基板ホルダの突起部材をそれぞれ後述するように可動式にし、二つの基板の突出部同士を接触させた後、両突起部材の突出量がそれぞれ小さくなるように基板ホルダ間に圧力をかけて、突出部同士の接触領域を徐々に広げていく方法がある。
【0135】
上記の例では、基板ホルダ220、240、260、270、290等の通気路222、242、262、272、274、284、294、322、331、332、352、382、292を、開放端129、146、149に連通させて基板210、220の保持を解除した。しかしながら、通気路222、242、262、272、274、284、294、322、331、332、352、382、292を、正の圧力を生じる圧力源に連通させることにより、基板210、220を能動的に解放してもよい。
【0136】
また、
図2に示したように、専ら基板ホルダ220、240の保持面221、241で基板210、220を保持する手順では、基板210、220に正圧を作用させるタイミングは、基板210、220に接合起点209が形成された後に、少なくとも一方の基板210、220を解放する時点(ステップS107)となる。これにより、基板210、220における接合波の形成および進行を促進し、基板接合のスループットを向上できる。
【0137】
一方、
図29に示したように、基板ホルダ220、240の保持面221、241と、突起部材280とで段階的に基板210、220の保持を解除する手順では、基板210、220に正圧を作用させるタイミングは、保持面による保持が解除される時点(ステップS111)でもよいし、突起部材280による保持が解除された時点(ステップS112)でもよい。特に、二つの基板210、220が互いに接触する前に、保持面による保持が解除される時点(ステップS111)で正圧を作用させた場合は、正圧が作用したこと自体により基板210、220に生じる衝撃、振動等の影響が、位置合わせ等の計測に及ぶことを防止できる。
【0138】
図36および
図37は、基板ホルダ290の代わりに使用できる基板ホルダ296の構造と使用方法を示す模式的断面図である。基板ホルダ290と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0139】
図36に示すように、基板ホルダ296の本体部298は中央寄りが陥没し、外周に向かって徐々に厚くなる形状を有して、図中下側の移動ステージ141に搬入される。移動ステージ141に対向する固定ステージ121には、中央が厚く、外周に近づくほど薄くなる形状の本体部269を有する基板ホルダ260が、基板230と共に保持される。
【0140】
図37に示すように、上記のような形状の基板ホルダ260、296を組み合わせて使用した場合、基板ホルダ260、296の各々において保持面261、297に保持された基板230、210は、互いに略相補的な形状をなす。図示の例では、基板ホルダ260に突起部材280が設けられており、これにより、基板210の中央には突出部215が形成されている。この場合、突出部215の先端部の曲率は、基板ホルダ296の保持面297の曲率すなわち基板210の突出部215が形成された領域以外の領域の曲率よりも大きい。
【0141】
これにより、基板210、230が接近して接合起点が形成された時点で、基板210、230の多くの部分は、略一定の間隔で対面している。これにより、基板210、230の間で接合波が進行する場合に、基板ホルダ296から解放された基板210が基板230に向けて移動する移動量が小さくなる。これにより、接合波の進行中に生じる基板210、230間のずれを小さくすることができる。
【0142】
また、基板210、230の間の位置ずれを補正する場合に、基板ホルダ260単独で補正するよりも、両方の基板ホルダ260、296の各々で補正することにより、補正可能な範囲を大きくすることができ、また、補正ピッチを小さくすることができる。
【0143】
図38は、他の基板ホルダ401の構造を示す部分断面図である。基板ホルダ401は、本体部319および突起部材301を備える。
【0144】
本体部319は、平坦な保持面311の一部に凹部313を有する。凹部313の底面は、本体部319を厚さ方向に貫通する。また、凹部313の内面には、内側に向かって突出したリブ部312が配される。
【0145】
突起部材301は、当接部材320、中間部材330、およびナット340を備える。当接部材320は、全体として円盤状の形状を有し、厚さ方向に貫通する通気路322を有する。また、当接部材320は、上面に突出した当接部321を有する。後述するように突起部材301が凹部313の内部に固定された場合、当接部321は保持面311から突出する。これにより、当接部321は、保持面311に保持された基板210に突出部215を形成できる。すなわち、突起部材301は、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部の一例である。
【0146】
また、中間部材330は、当接部材320を上端で支持しつつ、図中上端に設けられたフランジ状の部分を本体部319のリブ部312上面に当接させることにより、凹部313の内部に留まる。中間部材330の外周下端には、ねじ山333が配される。なお、当接部材320は、接着剤、両面テープ、ねじ込み等により中間部材330に対して固定される。
【0147】
更に、中間部材330は、上面に水平に形成された通気路331と、中心を高さ方向に貫通する通気路332とを有する。通気路331、332は、中間部材330の上面に支持された当接部材320の通気路322と連通し、図示しない負圧源に接続される。これにより、基板ホルダ401においては、凹部313の内部においても、基板210を吸着できる。
【0148】
ナット340は、中間部材330のねじ山333と螺合するねじ山343を内面に有する。また、ナット340は、本体部319のリブ部312の内径よりも大きな外径を有する。これにより、ナット340を、中間部材330の下端からねじ込むことにより、中間部材330とナット340とでリブ部312を挟んで、突起部材301を、本体部319に固定できる。また、ナット340を緩めることにより、突起部材301を本体部319から取り外すことができる。
【0149】
図39は、突起部材301に代えて、基板ホルダ401の本体部319に取り付けることができる他の突起部材302の構造を示す断面図である。突起部材302は、当接部材350、中間部材330、およびナット340を備える。
【0150】
突起部材302において、中間部材330およびナット340は、突起部材301のものと等しい。これに対して、当接部材320は、全体として円盤状の形状を有し、厚さ方向に貫通する通気路352を有する点、および、上面に突出した当接部351を有する点では、突起部材301の当接部材320と共通する構造を有する。
【0151】
当接部材350は更に、当接部351の周囲に設けられた周壁部353を有する点で、当接部材320と異なる形状を有する。周壁部353は、突起部材302が凹部313の内部に固定された場合、保持面311から突出する。ただし、突出量は、当接部351よりも小さい。
【0152】
これにより、突起部材302を備えた基板ホルダ401に基板210が保持された場合、当接部351が当接することにより基板210に突出部215が形成されると共に、当接部351と周壁部353との間の空間を減圧することにより突出部215の外周部を吸着できる。すなわち、突起部材302は、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部の一例である。
【0153】
上記のように、基板ホルダ401は、突起部材301、302を交換することにより、異なる方法による基板の接合に使用できる。これにより、高価な本体部319の稼働率を向上させ、積層基板201の生産性を向上できる。なお、更に、当接部の高さが異なる複数の突起部材を用意して、当接部の突出量等を調節できるようにしてもよい。この場合、基板210、230間の目標とする接合強度、基板210、230の表面の活性化度合、および、基板210、230間の位置ずれの補正量等に応じて、突起部材を交換してもよい。また、複数の突起部材301、302を用意しなくても、中間部材330とリブ部312の間、または、中間部材330と当接部材320との間に厚さが異なるシムを挿入することによっても、当接部321、351の突出量を調節することができる。
【0154】
図40は、また他の基板ホルダ402の構造を示す部分断面図である。基板ホルダ402は、本体部319および突起部材303を備える。
【0155】
本体部319は、平坦な保持面311の一部に凹部313を有する。凹部313の底面は、本体部319を厚さ方向に貫通する。また、凹部313の内面には、内側に向かって突出したリブ部314が配される。
【0156】
突起部材303は、当接部材320、中間部材330、およびリング部材360を備える。当接部材320は、突起部材301の当接部材320と同様に、全体として円盤状の形状を有し、厚さ方向に貫通する通気路322を有する。また、当接部材320は、上面に突出した当接部321を有する。突起部材303が本体部319の凹部313に固定された場合、当接部321は保持面311から突出する。これにより、当接部321は、保持面311に保持された基板210に突出部215を形成できる。すなわち、突起部材303は、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部の一例である。
【0157】
中間部材330は、当接部材320を上端で支持する。当接部材320は、接着剤、両面テープ、ねじ込み等により中間部材330に対して固定される。また、中間部材330は、図中上端に設けられ、側方に向かって拡がったフランジ状の部分を、本体部319のリブ部314上面に当接させることにより、凹部313の内部から下方に脱落することを防止している。更に、
図40に示す中間部材330は、
図38の突起部材301における中間部材330よりも、下方に延在する部分が短い。これにより、中間部材330の下端は、凹部313の内側に位置して、リブ部314の下面と略同じ高さまで延在する。
【0158】
中間部材330は、上面に水平に形成された通気路331と、中心を高さ方向に貫通する通気路332とを有する。通気路331、332は、中間部材330の上面に支持された当接部材320の通気路322と連通し、図示しない負圧源に接続される。
【0159】
リング部材360は、中間部材330の内側に挿入される筒状の案内部361と、案内部361の下端から案内部361の径方向に拡がるフランジ部362とを有する。よって、突起部材303を本体部319に固定する場合は、図中上側から凹部313に挿入した中間部材330に、リング部材360の案内部361を下側から挿入し、中間部材330とリング部材360のフランジ部により、本体部319のリブ部314を挟む。中間部材330とリング部材360との固定は、接着剤370や磁石等を使用できる。
【0160】
このように、基板ホルダ402においては、構造が簡単で組み立て工数も少ない。尚、
図40に示す例において、リング部材360を不要とし、中間部材330をリブ部314に接着剤等を用いて直接固定してもよい。
【0161】
図41は、また他の基板ホルダ403の構造を示す部分断面図である。基板ホルダ403は、本体部319および突起部材304を備える。
【0162】
本体部319は、平坦な保持面311の一部に凹部313を有する。凹部313の底面は、本体部319を厚さ方向に貫通する。また、凹部313の内面には、内側に向かって突出したリブ部315が配される。
【0163】
突起部材304は、単一の部品により形成される。突起部材304の上部は、リブ部315の内径よりも大きな径を有する円盤をなし、図中上面の中央部に当接部381を有する突起が配される。また、円盤部分には、通気路382が開口する。
【0164】
突起部材304の下部は、リブ部315の内側に挿通できる外径を有する円筒形をなす。円筒部分の下端には、図中上方にいくに従って外径が小さくなるテーパ部383が設けられる。
【0165】
突起部材304は、下端部分をリブ部315の内側に挿通した後、テーパ部383にOリングを嵌めることにより、本体部319に固定される。Oリング390は、自身の弾性により、テーパ部383の径が狭くなる上方に付勢され、突起部材304と本体部319との間でガタが生じることを防止する。また、突起部材304上端の円盤部分と、本体部319のリブ部315上面との間にスペーサを入れることにより、当接部381の突出量を調節できる。突起部材304は、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部の一例である。
【0166】
図42は、他の基板ホルダ501の部分的な模式的断面図である。なお、基板ホルダ501は、
図38から
図41に示した他の基板ホルダ401~404と共通の本体部319に対して、基板ホルダ401~404とは異なる構造を有する突起部材405を組み合わせて形成される。
【0167】
基板ホルダ501の突起部材405は、当接部材420、中間部材430およびねじ部材440を有する。当接部材420は、当接部421および基部422を含む。基部422は、平坦な円盤状の形状を有する。当接部421は、基部422の中央に隆起して形成される。基部422は、当接部421よりも広い面積を有し、当接部421の周囲に拡がっている。
【0168】
中間部材430は、陥没部431、周溝432、ねじ山433、および上側フランジ部434を有する。陥没部431は、中間部材430の上面に形成され、当接部材420の基部422を収容できる広さを有する。当接部材420を陥没部431に収容した場合は、当接部421の上端が、中間部材430の上面よりも図中上方に突出する。中間部材430の陥没部431に収容された当接部材420は、接着材等により、中間部材430に対して固定される。
【0169】
また、中間部材430は、側面の周囲を一周する周溝432を有する。周溝432にはOリング490が収容される。更に、中間部材430は、中心を高さ方向に貫通するねじ穴の内面に、ねじ山433を有する。ねじ山433は、次に説明するねじ部材440のねじ山443と螺合する。
【0170】
中間部材430は、図中上端側は、本体部319の凹部313内面に形成されたリブ部312の内径よりも大きな外径を有する上側フランジ部434を形成する。これに対して、中間部材430の図中下端側は、リブ部312の内径よりも小さな外径を有する。よって、中間部材430を、保持面311側から本体部319に取り付けた場合、中間部材430の下端は、本体部319のリブ部312の内側に挿通される。
【0171】
ねじ部材440は、下側フランジ部442およびねじ山443を有する。ねじ山443は、既に説明した通り、中間部材430のねじ山と螺合する寸法および形状を有する。下側フランジ部442は、本体部319におけるリブ部312の内径よりも大きな外径を有する。よって、ねじ部材440を、保持面311とは反対側から本体部319に取り付け、中間部材430とねじ部材440のねじ山433、443を螺合させた場合、本体部319のリブ部312が、中間部材430の上側フランジ部434と、ねじ部材440の下側フランジ部442との間に挟まれる。これにより、突起部材405が本体部319からはずれなくなる。
【0172】
ここで、上側フランジ部434と下側フランジ部442との間隔は、リブ部312の厚さよりも大きい。よって、突起部材405は、本体部319に対して上下に変位可能に取り付けられる。基板ホルダ501においては、上側フランジ部434とリブ部312との間に、皿ばね450が配される。皿ばね450は、リブ部312から遠ざかる方向に上側フランジ部434を付勢する。これにより、突起部材405は、その可動範囲において、当接部421がもっとも大きく突出した状態に突起部材405を維持する。
【0173】
上記のような突起部材405を備えた基板ホルダ501を用いて、接合装置100で基板210、230を接合する場合、基板ホルダ501に基板210を保持させた当初は、保持面311から突出した当接部421により、基板210に突出部215が形成される。すなわち、突起部材405は、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部の一例である。接合起点を形成する際、基板210の突出部215を貼り合わせる基板230に接触させた状態で、更に、移動ステージ141を上昇させることにより、皿ばね450の付勢力に抗して突起部材405の突出量を減少させる。突起部材405の突出量の減少に伴って、基板210、230間の接触領域の大きさが大きくなる。これにより、起点形成時に基板210、230間の接触領域の大きさを調整することができる。
【0174】
なお、基板ホルダ501においては、例えば、中間部材430の下面とねじ部材440の下側フランジ部442との間に挟んだ調整シム461を、異なる厚さのものと交換することにより、当接部421の突出量を調整できる。また、基板ホルダ501においては、図示のように皿ばね450とリブ部312との間に挟んだ調整シム462を、異なる厚さのものと交換することにより、当接部421が基板210を押圧する圧力を調整できる。皿ばね450のための調整シム462は、中間部材430の上側フランジ部434と皿ばね450との間に挟んでもよい。
【0175】
上記した各実施例において、基板ホルダの保持面からの突起部材の突出量を調整する場合、当接部の高さが異なる複数の突起部材を用意し、形成すべき接合起点の大きさ、接合波の速度、接合中に生じる基板間の位置ずれ量等に応じて、突起部材を選択して使用してもよい。また、突起部材の突出量の変化に応じて接合中に生じる基板間の位置ずれ量が変化する場合、突起部材の突出量に応じて、
図17に示すような基板ホルダ260の保持面261の凸量すなわち保持面261に保持される基板の補正量を調節してもよい。
【0176】
図43は、基板ホルダ502の模式的断面図である。基板ホルダ502は、皿ばね450および一方の調整シム462を省いたことを除いて、基板ホルダ501と同じ構造を有する。
【0177】
基板ホルダ502においても、突起部材405は、本体部319に対する突出量が変化するように変位可能に取り付けられる。よって、例えば、図中に白抜き矢印Zにより示すように、加圧流体により突起部材405を、図中下方から上方に向かって付勢することにより、皿ばね450を備えた基板ホルダ501と同じ機能を実現できる。更に、加圧流体の圧力を外部から調整することにより、基板210、230を接合する過程で、当接部421による圧力を調整できる。
【0178】
図44は、他の基板ホルダ503の模式的断面図である。基板ホルダ503は、本体部319自体を整形して、保持面311に当接部321を設けた構造を有する。このように、本体部319に別部材の突起部材405を設けることなく、当接部を形成した基板ホルダ503を用いても、基板210、230を接合する場合の接合起点を制御できる。このように基板ホルダ503に形成された当接部は、保持面に保持された基板210、230の一部の領域に当接することにより前記突出部を形成する突起部の一例である。
【0179】
図45は、また他の基板ホルダ504の模式的断面図である。基板ホルダ504は、本体部319自体を整形して、保持面311に当接部351および周壁部353を設けた構造を有する。このような本体部319を有する基板ホルダ504において、当接部351および周壁部353の間に開口する通気路を設けることにより、
図27に示した基板ホルダ290と同じ機能を有する基板ホルダ504を単純な構造で形成できる。この場合、当接部351は、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部を構成する。
【0180】
上記した、基板ホルダ401、402、403、501、502、503、504に当接部を形成するさまざまな構造は、基板ホルダを用いることなく基板を接合する接合装置においては、基板を保持するステージに設けてもよい。
【0181】
また、本実施例では、基板ホルダまたはステージに、突出部215を形成するための突起部材を設けた例を示したが、これに代えて、基板ホルダまたはステージを貫通し且つ基板ホルダまたはステージに保持された基板に向けて移動可能に配置した突起部材を用いてもよい。この場合、突起部材を移動させるアクチュエータを用いて、基板ホルダまたはステージの保持面からの突出量を制御可能にしてもよい。また、この場合、突起部材によって基板に突出部を形成した後、アライメントマークの位置を計測することにより、位置計測後の基板間のずれを抑制することができる。突起部材およびアクチュエータで、基板210の一部の領域に突出部215を形成する形成部が構成される。
【0182】
また、本実施例において、基板210の突出部215は、基板ホルダに保持される前の元の状態から突出した分、伸び変形または縮み変形している。このため、突出部215が伸び変形または縮み変形した状態で基板230の中央部に接合される場合がある。この場合、基板ホルダ220の保持面221からの突起部材250の突出量、または、突出部215の変形量に応じた変形量で基板230の中央部における表面を予め変形させるように、基板ホルダ240の保持面241の凸量や形状を設定してもよい。
【0183】
または、基板ホルダ240の中央部を変形させるアクチュエータを有する変形機構を基板ホルダ240の下方に設け、基板ホルダ220の保持面221からの突起部材250の突出量、または、突出部215の変形量に応じた駆動量でアクチュエータを駆動させることによって基板ホルダ240を変形させることにより、基板230を予め変形させてもよい。
【0184】
または、突起部材250が設けられた基板ホルダに保持された基板210を当該基板ホルダから解放することにより、他の基板ホルダに保持された他の基板230に基板210を接合する場合において、基板230の中心部以外の領域を他の基板ホルダの保持した状態で、
図20に示したように、基板230の中心部の吸着を解除しておく、または、吸着力を弱めておく。これにより、起点形成時に基板210の突出部215が他の基板230に接触したときに、基板210、230間の吸引力により基板230を他の基板ホルダから剥がしてもよい。これにより、基板210の突出部215に生じる変形と同様の変形を基板230の中心部にも生じさせることができるので、基板210の突出部215の変形量と基板230の中心部の変形量との差を小さくすることができ、これら変形量の差による位置ずれを抑制することができる。
【0185】
この場合、他の基板ホルダの吸着領域を複数の領域に分けて、領域毎に個別に吸着力の制御をしてもよい。吸着方法が真空チャックである場合は、基板230に作用する圧力を領域毎に制御し、静電チャックである場合は、各領域に印加する電圧を個別に制御する。
【0186】
起点形成後は、基板210を基板ホルダから解放することにより接合波を形成する。このとき、基板230の中心部は、起点から基板210との接合が進行すると共に、基板210の自重により他の基板ホルダに向けて戻され、基板210の突出部215および基板230の中心部に生じた変形が同時に変形前の状態に戻されていく。これにより、接合波の進行中に、基板210、230間に変形量の差によるずれが発生することを抑制することができる。
【0187】
また、基板ホルダ220からの基板210の保持を解除したとき、突出部215に生じていた伸び変形が解放されて、突出部215が形成される前の状態に向けて復元することがある。この場合、突出部215における基板210の表面の平面方向の位置が、アライメントマーク213の位置を検出したときの位置からずれることがある。この場合も、上記したと同様に、このずれ量を予め測定または予測しておき、このずれ量を補正可能な変形量で基板230の中央部における表面を予め変形させておく。もしくは、この解放による復元量またはずれ量を考慮して、アライメントマーク213の位置計測、または、移動ステージ141の位置制御を行ってもよい。
【0188】
更に、本実施例において、当接部251、281、321、351、381、421 が円柱状をなした例を示したが、当接した基板210に傷や破損が生じないように、当接面と周面とで形成される角部を面取りすることが好ましい。また、円柱状の当接部に代えて、半球状、錐体状、および、切頭錐体状等の円柱以外の形状をなした当接部を用いてもよい。半球状をなした当接部を用いる場合、基板210の突出部215の先端部に必要とされる曲率と等しい曲率で湾曲した当接面を有する当接部を用いてもよい。必要となる曲率とは、突出部215の先端部と他方の基板230との間に気泡が生じないもしくは挟み込まれない状態で突出部215と基板230とが接触可能となるときの、接触領域の面積および形状等に対応する曲率である。
【0189】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0190】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0191】
100 接合装置、110 枠体、111 底板、113 天板、121 固定ステージ、122 上顕微鏡、123 上活性化装置、124、127、144、147 制御バルブ、125、128、145、148 負圧源、126、129、146、149 開放端、131 X方向駆動部、132 Y方向駆動部、133 Z方向駆動部、141 移動ステージ、142 下顕微鏡、143 下活性化装置、150 制御部、201 積層基板、209 接合起点、210、230 基板、211、231 スクライブライン、213、233 アライメントマーク、214、234 回路領域、215 突出部、220、240、260、270、290、296、401、402、403、501、502、503、504 基板ホルダ、221、241、261、271、291、297、311 保持面、222、242、262、272、274、284、294、322、331、332、352、382、292 通気路、223、273、293、313 凹部、229、249、269、279、298、299、319 本体部、250、280、301、302、303、304、405 突起部材、251、281、321、351、381、421 当接部、282、353 周壁部、283 溝部、312、314、315 リブ部、320、350、420 当接部材、330、430 中間部材、333、343、433、443 ねじ山、340 ナット、360 リング部材、361 案内部、362 フランジ部、370 接着剤、383 テーパ部、390、490 Oリング、422 基部、431 陥没部、432 周溝、434 上側フランジ部、440 ねじ部材、442 下側フランジ部、450 皿ばね、461、462 調整シム