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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172553
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】吸引保持テーブル及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221110BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221110BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20221110BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20221110BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20221110BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/304 631
H01L21/304 621C
B24B41/06 L
B24B49/12
B23Q17/00 A
B23Q7/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078408
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勇輝
【テーマコード(参考)】
3C029
3C033
3C034
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C029EE20
3C033BB04
3C033CC10
3C033HH27
3C033HH30
3C034AA08
3C034BB73
3C034CA22
3C034DD10
3C034DD20
5F057BB02
5F057BB06
5F057BB09
5F057CA14
5F057DA11
5F057FA13
5F057FA32
5F057FA34
5F131AA02
5F131AA21
5F131AA22
5F131CA07
5F131CA32
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB25
5F131DB52
5F131EA05
5F131EA24
5F131EB01
5F131EB02
5F131EB54
5F131EB55
(57)【要約】
【課題】反りのある被保持物を吸引保持する。
【解決手段】被保持物を吸引保持する吸引保持テーブルであって、回転軸を中心に回転可能な台座部と、該台座部から立設し該回転軸を中心とする円の周上に等間隔に並ぶ複数の保持部と、を備え、複数の該保持部は、それぞれ、上面に吸引口が形成された保持面を有し、該保持面に載る被保持物を該吸引口から吸引できる。好ましくは、複数の該保持部は、3つ以上である。より好ましくは、複数の該保持部は、該回転軸に重ならない。さらに好ましくは、該回転軸を中心とする該円は、該被保持物の径よりも小さい。被保持物は、反りの状態や大きさに無関係に各保持部の保持面に接触した状態で各保持部に載るため、被保持物と、各保持部の吸引口と、が近接した状態となる。そのため、各保持部は、吸引口から被保持物を容易に吸引できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持物を吸引保持する吸引保持テーブルであって、
回転軸を中心に回転可能な台座部と、
該台座部から立設し該回転軸を中心とする円の周上に等間隔に並ぶ複数の保持部と、を備え、
複数の該保持部は、それぞれ、上面に吸引口が形成された保持面を有し、該保持面に載る被保持物を該吸引口から吸引できることを特徴とする吸引保持テーブル。
【請求項2】
複数の該保持部は、3つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸引保持テーブル。
【請求項3】
複数の該保持部は、該回転軸に重ならないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸引保持テーブル。
【請求項4】
該回転軸を中心とする該円は、該被保持物の径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吸引保持テーブル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吸引保持テーブルと、
該吸引保持テーブルの上方に設けられ、該吸引保持テーブルに保持された被保持物を撮像できる撮像カメラと、
該吸引保持テーブルに保持された該被保持物を上方から吸引保持して該被保持物を搬送できる搬送ユニットと、
該被保持物を保持する保持ユニットと、
該保持ユニットに保持された該被保持物を加工する加工ユニットと、を備え、
該搬送ユニットは、該撮像カメラを使用することで検出された該吸引保持テーブルにおける該被保持物の位置に基づいて決定された搬送動作で該吸引保持テーブルから該保持ユニットに該被保持物を搬送できることを特徴とする加工装置。
【請求項6】
該搬送ユニットは、該被保持物を吸引保持する吸引パッドを有し、該吸引パッドの中心と、該被保持物の中心と、が重なる状態で該被保持物を吸引保持することを特徴とする請求項5に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反りのある板状の被加工物を吸引保持できる吸引保持テーブル、及び該吸引保持テーブルを含み反りのある該被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に組み込まれるデバイスチップの製造工程では、半導体等で形成されたウェーハの表面にIC、LSI等の複数のデバイスが形成される。その後、ウェーハをデバイス毎に切断すると、個々のデバイスチップが形成される。近年、デバイスチップが搭載される電子機器の小型化・軽量化の傾向が著しく、電子機器に搭載されるデバイスチップにも薄型化が求められている。そこで、切断される前のウェーハは、研削装置で裏面側から研削されて薄化される。
【0003】
研削装置は、ウェーハ等の被加工物を吸引保持する保持ユニット(チャックテーブル)と、保持ユニットに吸引保持された被加工物を研削する研削ユニットと、を備える。研削ユニットは、環状に配置された研削砥石が下面に装着された研削ホイールと、該研削ホイールの回転軸となるスピンドルと、を備える。研削ホイールを回転させて研削砥石を環状軌道上で移動させ、研削ホイールを下降させて研削砥石を被加工物の被加工面に接触させると、該被加工物が研削される。
【0004】
研削装置では、高精度な加工を実現するために、被加工物を保持ユニット上の所定の位置に精密に載せる必要がある。そのため、保持ユニットに被加工物を搬送する前に、該被加工物の位置が位置決めテーブルで精密に調整される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-255568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研削装置の被加工物となるウェーハの材質や厚さ、表面に形成されるデバイスの構成次第では、ウェーハに反りが生じる場合がある。特許文献1に記載の位置決めテーブルでは、反りが生じて外周が浮き上がった被加工物の位置を精密に調整することは容易ではない。そこで、例えば、反りのある被加工物を吸引保持テーブルの保持面上で吸引保持して被加工物の反りを矯正し、反りが矯正された状態の被加工物の位置を検出して該位置を調整する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、被加工物の径に対応する大きさの保持面を有する吸引保持テーブルで被加工物を保持しようとすると、保持面の外周部分において、該保持面及び該被加工物の間の隙間から吸引力(負圧)が漏れる。そこで、被加工物の反りの量の小さい中央部を小径の保持面を有する吸引保持テーブルで吸引保持することも考えられるが、被加工物の外周部が保持されないため、被加工物の全体にわたる反りを矯正できない。反りが残る被加工物の位置を精密に調整するのは、やはり困難である。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、反りのある被保持物を吸引保持できる吸引保持テーブルと、該吸引保持テーブルを使用して該被保持物の位置を精密に合わせて該被保持物を加工できる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、被保持物を吸引保持する吸引保持テーブルであって、回転軸を中心に回転可能な台座部と、該台座部から立設し該回転軸を中心とする円の周上に等間隔に並ぶ複数の保持部と、を備え、複数の該保持部は、それぞれ、上面に吸引口が形成された保持面を有し、該保持面に載る被保持物を該吸引口から吸引できることを特徴とする吸引保持テーブルが提供される。
【0010】
好ましくは、複数の該保持部は、3つ以上である。
【0011】
また、好ましくは、複数の該保持部は、該回転軸に重ならない。
【0012】
さらに、好ましくは、該回転軸を中心とする該円は、該被保持物の径よりも小さい。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、上述の吸引保持テーブルと、該吸引保持テーブルの上方に設けられ、該吸引保持テーブルに保持された被保持物を撮像できる撮像カメラと、該吸引保持テーブルに保持された該被保持物を上方から吸引保持して該被保持物を搬送できる搬送ユニットと、該被保持物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットに保持された該被保持物を加工する加工ユニットと、を備え、該搬送ユニットは、該撮像カメラを使用することで検出された該吸引保持テーブルにおける該被保持物の位置に基づいて決定された搬送動作で該吸引保持テーブルから該保持ユニットに該被保持物を搬送できることを特徴とする加工装置が提供される。
【0014】
好ましくは、該搬送ユニットは、該被保持物を吸引保持する吸引パッドを有し、該吸引パッドの中心と、該被保持物の中心と、が重なる状態で該被保持物を吸引保持する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様にかかる吸引保持テーブルは、回転軸を中心に回転可能な台座部と、該台座部から立設し該回転軸を中心とする円の周上に等間隔に並ぶ複数の保持部と、を備える。複数の該保持部は、それぞれ、上面に吸引口が形成された保持面を有し、該保持面に載る被保持物を該吸引口から吸引できる。
【0016】
この吸引保持テーブルで被保持物を吸引保持する際には、複数の保持部の上にわたって被保持物を載せる。このとき、被保持物は、反りの状態や大きさに無関係に各保持部の保持面に接触した状態で各保持部に載るため、被保持物と、各保持部の吸引口と、が近接した状態となる。そのため、各保持部は、吸引口から被保持物を容易に吸引できる。
【0017】
各保持部で被保持物を吸引保持すると、被保持物が各保持面の形状に倣って反りが低減される。そのため、この被保持物の外周を撮像カメラで撮影すると被保持物の位置をより精密に特定できる。そして、搬送ユニットで被保持物を保持するのも容易となり、特定された被保持物の位置に基づいて搬送ユニットの搬送動作を決定して所定の位置に該被保持物を精密に搬送でき、該被保持物を搬送先で精密に加工できる。
【0018】
したがって、本発明の一態様によると、反りのある被保持物を吸引保持できる吸引保持テーブルと、該吸引保持テーブルを使用して該被保持物の位置を精密に合わせて該被保持物を加工できる加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】加工ユニットで加工される被保持物を模式的に示す斜視図である。
図2】吸引保持テーブルを模式的に示す斜視図である。
図3図3(A)は、吸引保持テーブルを模式的に示す側面図であり、図3(B)は、吸引保持テーブルに載せられた被保持物を模式的に示す断面図である。
図4】吸引保持テーブルに被保持物を搬送する様子を模式的に示す平面図である。
図5図5(A)は、吸引保持テーブルに吸引保持された被保持物を模式的に示す断面図であり、図5(B)は、撮像カメラで撮像される被保持物を模式的に示す断面図である。
図6】搬送ユニットで上方から保持される被保持物を模式的に示す平面図である。
図7】搬送ユニットで上方から保持される被保持物を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る吸引保持テーブルで吸引される被保持物について説明する。図1には、被保持物1を模式的に示す斜視図が含まれている。被保持物1は、例えば、Si、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料からなる略円板状のウェーハ等である。ただし、被保持物1は、これに限定されない。
【0021】
被保持物1の表面1bには、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の複数のデバイスが形成される。そして、被保持物1を裏面1a側から研削して所定の厚さに薄化し、薄化された被保持物1をデバイス毎に分割すると、複数のデバイスチップを形成できる。デバイスチップの製造工程では、被加工物を研削する研削装置や、被加工物を分割する切削装置及びレーザー加工装置等の各種の加工装置が使用される。
【0022】
被保持物1を被加工物として加工する加工装置の一例として、被加工物を研削する研削装置について説明する。図1は、研削装置(加工装置)2を模式的に示す斜視図である。研削装置2は、保持面4aに載せられた被加工物を吸引保持する保持ユニット(チャックテーブル)4と、保持ユニット4の上方に昇降可能に配設されて研削ユニット(加工ユニット)6と、を備える。
【0023】
保持ユニット4は、被加工物と同等の径の多孔質部材(不図示)を有する。該多孔質部材は、保持ユニット4の上面の中央に形成された凹部に収容されており、この多孔質部材の上面が保持面4aとなる。保持ユニット4は、一端が多孔質部材の底面に達する吸引路を内部に有し、この吸引路の他端に吸引源が接続されている。そして、被加工物を保持面4a上に載せ、該吸引源を作動させて吸引路及び多孔質部材を介して負圧を被加工物に作用させると、被加工物が保持ユニット4で吸引保持される。
【0024】
研削ユニット(加工ユニット)6は、保持ユニット4の保持面4aに概ね垂直なスピンドル8を備え、スピンドル8の下端に円板状のホイールマウント10が固定されている。スピンドル8の上端には図示しないモーター等の回転駆動源が接続されており、この回転駆動源を作動させると、スピンドル8が回転する。
【0025】
研削ホイール14は、ホイールマウント10の底面に固定される。研削ホイール14は、中央部に形成された開口部を有する環状のホイール基台16と、ホイール基台16の底面に環状に配設された砥石18と、を備える。ホイール基台16は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。研削ホイール14がホイールマウント10に装着される際、ホイール基台16の上面がホイールマウント10の底面に対面する。
【0026】
ホイールマウント10には、ボルト等の固定具12がスピンドル8に沿った方向に通される複数の貫通孔が設けられており、ホイール基台16の上面にはホイールマウント10に形成された貫通孔に対応する配置で固定穴(不図示)が形成されている。ホイール基台16の上面をホイールマウント10の底面に当て、固定具12をホイールマウント10の貫通孔に通してホイール基台16の固定穴に締め込むと、研削ホイール14を研削ユニット6に固定できる。
【0027】
研削装置2で被加工物を研削する際には、保持ユニット4を保持面4aに略垂直な回転軸の周りに回転させるとともに、研削ユニット6のスピンドル8の上端に接続された回転駆動源を作動させてスピンドル8を回転させる。すると、研削ホイール14の砥石18が環状軌道に沿って回転移動する。その後、研削ユニット6を下降させると、砥石18の底面が被加工物の上面(被保持物1の裏面1a)に接触し、被加工物が研削される。
【0028】
被加工物の全域を高精度に所定の厚みに研削するためには、保持ユニット4上で該被加工物を所定の位置に精密に位置付ける必要がある。より詳細には、保持ユニット4の中心と、被加工物の中心と、の位置が合うように、かつ、研削ホイール14の砥石18が回転する環状軌道を被加工物の中心の上方を通るように、被加工物の位置が調整される必要がある。
【0029】
研削装置2には、複数の被加工物を収容するカセットが搬入され、該カセットから次々に被加工物が引き出されて各被加工物が研削され、カセットに再び収容される。ここで、カセットから引き出された被加工物は、保持ユニット4に搬送される前に位置決めユニットで位置が調整される。そして、位置が精密に調整された被加工物を所定の搬送動作で保持ユニット4に搬送することで保持ユニット4の保持面4a上の所定の位置に被加工物を精密に位置付ける。
【0030】
従来、位置決めユニットでは、被加工物に外周から複数のピンを当接させることで被加工物の位置を調節する。ここで、研削装置2等の加工装置で加工される半導体ウェーハ等の被加工物は、材質や厚み、表面に形成されるデバイス等の構成次第で反りが生じることがある。位置決めユニットでは、反りが生じて変形している被加工物の位置を所定の位置に位置付けるのは容易ではない。
【0031】
そこで、本実施形態に係る吸引保持テーブルを使用して、被加工物を被保持物1として該吸引保持テーブルで吸引保持し、被保持物1を撮像カメラで撮像して外周や中心等の位置を特定する。そして、特定されたこれらの位置に基づいて搬送ユニットによる搬送動作を決定し、該搬送ユニットで被加工物である被保持物1を保持ユニット4に搬送して、保持ユニット4の保持面4a上の所定の位置に被保持物1を精密に位置付ける。
【0032】
次に、本実施形態に係る吸引保持テーブルについて説明する。図2は、吸引保持テーブル20を模式的に示す斜視図であり、図3(A)は、吸引保持テーブル20を模式的に示す側面図である。吸引保持テーブル20は、台座部22と、該台座部22の上面22aから立設した複数の保持部26と、を備える。
【0033】
台座部22は、被保持物1の径に対応した径の円板状または円柱状に形成される。台座部22の底部には、図示しないモーター等の回転駆動源が接続されており、台座部22は、この回転駆動源により回転軸24を中心に回転できる。
【0034】
複数の保持部26は、回転軸24を中心とする円22bの周上で上面22aに等間隔に並ぶ。複数の保持部26の数は、3つ以上であることが好ましく、3つであることが特に好ましい。回転軸24を中心とする円22bの径は、被保持物1の径よりも小さい。そして、円22bの径は被保持物1の径の半分よりも大きいことが好ましい。例えば、被保持物1が8インチ径のSiウェーハである場合、円22bの径は130mm程度であることが好ましい。また、複数の保持部26は回転軸24に重ならない。
【0035】
複数の保持部26は円筒状の部材であり、それぞれ、吸引口30が形成された保持面34を上面に有する。図3に示す通り、保持部26の内部には上面22aに略垂直な方向に沿った吸引路32が形成されており、この吸引路32の上端が吸引口30に達する。さらに、台座部22の内部には、図示しない通気路が形成されており、この通気路の一端にポンプ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0036】
例えば、台座部22の内部に形成された該通気路は、各保持部26の吸引路32に達する。または、台座部22は保持部26の数と同じ数の通気路を有し、それぞれの該通気路が各保持部26の吸引路32に達する。すなわち、吸引保持テーブル20は、各保持部26に達する統一された一つの吸引系統を有してもよく、各保持部26にそれぞれ達する個別の吸引系統を有してもよい。
【0037】
各保持部26の高さは、反りを有する被保持物1の反りの大きさよりも大きいことが好ましい。より詳細には、保持部26は、後述の通り被保持物1を各保持部26に載せたとき、被保持物1の表面1bの最も低い部分が台座部22の上面22aに接触しない高さであることが好ましい。ただし、被保持物1の反りの大きさは被保持物1の種別等により異なるため、保持部26の高さは吸引保持テーブル20で吸引保持される被保持物1に生じうる反りの大きさを考慮して決定されるとよい。
【0038】
各保持部26の保持面34の外径は、例えば、10mm以下であることが好ましい。ただし、これに限定されない。各保持部26の高さは統一されており、すべての保持面34は同一面に含まれる。後述のように、各保持部26の上には被保持物1が載せられる。この状態で吸引源を作動させると、台座部22の内部に形成された該通気路と、各保持部26の吸引路32と、を通じて該保持面34に載る被保持物1を吸引口30から吸引できる。
【0039】
次に、本実施形態に係る吸引保持テーブル20の使用方法として、該吸引保持テーブル20に被保持物1を搬送し、被保持物1を吸引保持テーブル20で吸引保持する方法について説明する。例えば、吸引保持テーブル20が研削装置2等の加工装置に組み込まれる場合、該加工装置で加工される被加工物として被保持物1がカセットに収容され、該加工装置に被保持物1が搬入される。
【0040】
図4は、被保持物1が第1の搬送ユニット36により吸引保持テーブル20に搬送される様子を模式的に示す平面図である。加工装置は、例えば、カセットに収容された被保持物1をカセットから搬出して吸引保持テーブル20に搬送する第1の搬送ユニット36を備える。
【0041】
第1の搬送ユニット36は、移動部36aと、一端が移動部36aに支持された板状の支持部36bと、を備える。移動部36aはカセットや吸引保持テーブル20に向けて進退可能であるとともに昇降可能であり、第1の搬送ユニット36は、移動部36aを移動させることで支持部36bを所定の位置に移動できる。
【0042】
第1の搬送ユニット36は、カセットの内部の被保持物1の下方に支持部36bを進入させ、支持部36bで被保持物1を持ち上げ、支持部36bを後退させることでカセットから被保持物1を搬出する。そして、図4に示す通り、被保持物1を吸引保持テーブル20の上方に搬送する。このとき、被保持物1は、吸引保持テーブル20の各保持部26の上方を覆うとともに上面22aと重なるように位置付けられる。
【0043】
なお、図4に示す通り、このとき支持部36bが各保持部26とは重ならないように支持部36bの進入方向や吸引保持テーブル20の台座部22の向きが調整される。また、支持部36bの先端部には、該先端部が保持部26と重ならないための切り欠き部36cが形成されていてもよい。
【0044】
その後、第1の搬送ユニット36は、支持部36bを下降させて被保持物1を下降させる。すると、被保持物1が各保持部26の上に載り、支持部36bによる被保持物1の支持が解かれる。その後、移動部36aを後退させることで支持部36bを吸引保持テーブル20から引き抜く。すると、吸引保持テーブル20の保持部26に被保持物1が残る。図3(B)は、吸引保持テーブル20に載せ置かれた被保持物1を模式的に示す断面図である。
【0045】
図3(B)に示す通り、各保持部26は、被保持物1の中央ではない領域において該被保持物1を支持する。ここで、被保持物1の裏面1aは各保持面34の一端に接触するため、被保持物1は保持部26の吸引口30に近接している。そのため、この状態で保持部26の吸引路32に接続された吸引源を作動させると被保持物1に負圧を作用でき、保持面34に載る被保持物1が吸引口30から吸引される。
【0046】
図5(A)は、吸引保持テーブル20に吸引保持された被保持物1を模式的に示す断面図である。図5(A)に示す通り、吸引される被保持物1は、吸引口30に接近するように次第に変形し、吸引口30を塞ぐまで変形する。その結果、保持部26の保持面34の全域に被保持物1の裏面1aが接触し、被保持物1の形状が保持面34に倣う。そして、被保持物1は、最終的に反りが低減された状態で吸引保持テーブル20に吸引保持される。
【0047】
このように、本実施形態に係る吸引保持テーブル20は、被保持物1の中央部を支持せず浮かせるため、被保持物1をその反りの状態や大きさに無関係に各保持部26の保持面34に接触させることができる。このとき、被保持物1と、各吸引口30と、が近接した状態となるため、各保持部26は、吸引口30から被保持物1を容易に吸引できる。そして、各保持部26で被保持物1を吸引保持すると、被保持物1が各保持面34の形状に倣って反りが低減される。
【0048】
本実施形態に係る吸引保持テーブル20によると、被保持物1を吸引保持により固定でき、かつ、被保持物1の反りを低減できるため、例えば、被保持物1の外周をカメラで撮影することで被保持物1の該外周の位置を精密に検出できる。そして、精密に検出された被保持物1の外周の位置に基づいて、被保持物1の中心位置を精密に特定できる。
【0049】
また、被保持物1を吸引保持テーブル20から保持ユニット4(図1参照)に搬送する際においても、被保持物1の反りが低減されていれば搬送ユニットで被保持物1を保持するのも容易となる。そして、特定された被保持物1の位置に基づいて搬送ユニットの搬送動作を決定することで保持ユニット4の所定の位置に被保持物1を精密に搬送でき、被保持物1を搬送先で精密に加工できる。
【0050】
次に、被保持物1の位置を撮像カメラで検出する過程と、吸引保持テーブル20から被保持物1を搬出する過程について説明する。図5(B)は、撮像カメラ20aで被保持物1の外周を検出する様子を模式的に示す断面図である。撮像カメラ20aは、吸引保持テーブル20の台座部22の外周の上方に配設され、下方に向けられている。撮像カメラ20aは、例えば、CCDセンサーやCMOSセンサー等の撮像素子を備える。
【0051】
撮像カメラ20aを使用して被保持物1の外周を撮像して撮像画像を取得し、該撮像画像に特定の画像処理を施すと、撮像画像に写る領域における被保持物1の外周を検出でき、吸引保持テーブル20上における該外周の位置を特定できる。その後、台座部22に接続された回転駆動源を作動させて回転軸24の周りに台座部22を所定の角度で回転させることで、被保持物1の外周を撮像する撮像カメラ20aの撮像位置を切り替える。
【0052】
被保持物1の外周の複数の箇所を撮像カメラ20aにより撮像し、被保持物1の外周の複数の箇所の位置を特定できると、吸引保持テーブル20における被保持物1の各部の位置を算出できる。例えば、被保持物1の中央の位置を特定できる。
【0053】
図6は、研削ユニット(加工ユニット)6で加工される被加工物となる被保持物1を吸引保持テーブル20から保持ユニット4に搬送する第2の搬送ユニット38を模式的に示す平面図である。また、図7は、吸引保持テーブル20上で第2の搬送ユニット38で吸引保持される被保持物1を模式的に示す断面図である。
【0054】
第2の搬送ユニット38について説明する。第2の搬送ユニット38は、吸引保持テーブル20の台座部22の上面22aに略平行な方向に沿って伸長する腕部40と、腕部40の先端に固定された支持体42と、を備える。腕部40の図示しない基端側には軸部が固定されており、この軸部を回転させることで腕部40が移動し、吸引保持テーブル20上と、保持ユニット4上と、の間で支持体42を移動できる。
【0055】
支持体42は、例えば、被保持物1の径よりも小さい径の環状部材であり、上下方向に沿った複数の貫通孔が設けられている。それぞれの貫通孔には、該貫通孔に沿って昇降可能なピン44が挿通されている。ピン44は、貫通孔の径よりも小さい径の円柱体と、貫通孔の径よりも大きい径の頭部と、を備え、頭部が貫通孔の周りで支持体42に掛かることでピン44が支持体42に支持される。
【0056】
それぞれのピン44の円柱体の下端には、円板状の吸引パッド48が固定されている。ピン44の円柱体の周囲には、支持体42の下面に上端が接し、吸引パッド48の上面に下端が接するコイルばね等の弾性部材46が巻かれている。吸引パッド48に上向きな力が印加された場合、ピン44の円柱体が支持体42の貫通孔の内側で上昇し、ピン44の頭部が支持体42から浮くとともに弾性部材46が縮められて吸引パッド48に反発力がかかる。
【0057】
吸引パッド48には下方に露出する多孔質部材54が収容されており、この多孔質部材54に通じた吸引路(不図示)が吸引パッド48を上下に貫く。この吸引路は吸引パッド48の上面の中央に設けられた接続部50に達しており、この接続部50には吸引チューブ52の一端が接続される。接続部50の他端には、図示しない吸引源が接続されている。
【0058】
吸引保持テーブル20に吸引保持された被保持物1を第2の搬送ユニット38で保持して該吸引保持テーブル20から搬出する際には、腕部40を移動させて吸引パッド48を移動させて、被保持物1の裏面(上面)1aに吸引パッド48を載せる。このとき、図7に示す通り撮像カメラ20aを使用して位置が特定された被保持物1の中心1dに多孔質部材54の中心54bを重ねる。
【0059】
次に、吸引チューブ52に接続された吸引源を作動させて多孔質部材54を介し被保持物1に負圧を作用させ、吸引パッド48で被保持物1を吸引保持する。その後、吸引保持テーブル20の保持部26の吸引路32に接続された吸引源を停止させ、吸引保持テーブル20による被保持物1の吸引保持を解除する。そして、腕部40を上昇し移動させることで被保持物1を吸引保持テーブル20から搬出し、保持ユニット4(図1参照)に該被保持物1を搬送させる。
【0060】
このとき、第2の搬送ユニット38は、被保持物1の中心1dが保持ユニット4の保持面4aの中心と重なるように被保持物1を搬送する。そして、保持ユニット4で被保持物1を吸引保持し、第2の搬送ユニット38の吸引パッド48による被保持物1の吸引保持を解除する。保持ユニット4の保持面4aの中心に被保持物1の中心1dが重ねられた状態で被保持物1が保持ユニット4に吸引保持されていると、研削ユニット(加工ユニット)6による被保持物1の加工を適切に実施できる。
【0061】
このように、第2の搬送ユニット38は、撮像カメラ20aを使用することで検出された吸引保持テーブル20における被保持物1の位置に基づいて決定された搬送動作で吸引保持テーブル20から保持ユニット4に被保持物1を搬送する。したがって、本実施形態に係る吸引保持テーブル20を有し該吸引保持テーブル20を利用して被保持物1の位置決めを実施できる研削装置(加工装置)2を使用すると、反りのある被保持物1の位置を精密に合わせて被保持物1を加工できる。
【0062】
なお、上述の実施形態では、被保持物1の中心1dに吸引パッド48の多孔質部材54の中心54bを重ね第2の搬送ユニット38で被保持物1を搬送する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。吸引パッド48の多孔質部材54の中心54bが被保持物1の中心1dに重ねられなくても、第2の搬送ユニット38は、保持ユニット4の保持面4aの中心に被保持物1の中心1dが合うように被保持物1を搬送すればよい。この場合、被保持物1のそのような搬送を実現できるように第2の搬送ユニット38の搬送動作が決定される。
【0063】
また、上記の実施形態では、第2の搬送ユニット38の吸引パッド48で被保持物1の中心1dを含む領域を吸引保持する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、第2の搬送ユニット38の吸引パッド48は吸引保持テーブル20の保持部26が並ぶ円22bと重なる形状の環状の吸引パッドを備えてもよい。この場合、各保持部26の上において被保持物1の最も反りの矯正された領域を該吸引パッドで吸引保持できるため、第2の搬送ユニット38による被保持物1の搬送の精度が高まる。
【0064】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0065】
1 被保持物
1a 裏面
1b 表面
1d 中心
2 研削装置
4 保持ユニット
4a 保持面
6 研削ユニット
8 スピンドル
10 ホイールマウント
12 固定具
14 研削ホイール
16 ホイール基台
18 砥石
20 吸引保持テーブル
20a 撮像カメラ
22 台座部
22a 上面
22b 円
24 回転軸
26 保持部
30 吸引口
32 吸引路
34 保持面
36 第1の搬送ユニット
36a 移動部
36b 支持部
36c 切り欠き部
38 第2の搬送ユニット
40 腕部
42 支持体
44 ピン
46 弾性部材
48 吸引パッド
50 接続部
52 吸引チューブ
54 多孔質部材
54b 中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7