IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172627
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221110BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078615
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 百合香
(72)【発明者】
【氏名】花井 まどか
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AD311
4C083AD312
4C083CC02
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】本発明は、肌の弾力向上及び/又はたるみ肌の改善に有効な皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【解決手段】ヘパリン類似物質は、肌の弾力向上及び/又はたるみ肌の改善に有効な皮膚外用剤の有効成分として用いられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン類似物質を含有し、肌の弾力向上に用いられる、皮膚外用剤。
【請求項2】
ヘパリン類似物質を含有し、たるみ肌の改善に用いられる、皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の弾力向上又はたるみ肌改善に用いられる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表面側から、角層、表皮層、真皮層、皮下組織層で構成されている。角質層には、胞間脂質、NMF、皮脂膜により水分を保持することで、外界の刺激から肌を保護し、角質層の水分蒸発を防いでいる。一方、角層の胞間脂質、NMF、皮脂膜が減少すると、角質層の水分が蒸発しやすくなり、肌の乾燥及び肌荒れなどのトラブルを招来する。また、真皮層は線維芽細胞がコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を生成し、細胞外マトリックスと呼ばれるコラーゲン線維やエラスチン線維を含む構造を合成することで、肌の弾力を保っている。一方、線維芽細胞が衰えると、真皮層のコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸が減少し、肌の弾力が低下し、たるみなどを招来する。
【0003】
皮膚外用剤は、角質層に有効成分を届けることで肌のトラブルを改善する目的で用いられる。ヘパリン類似物質は、皮膚外用剤の有効性成分として、優れた保湿作用が注目されている。ヘパリン類似物質による保湿の作用メカニズムとしては、角層細胞間脂質のラメラ構造の回復促進と2次結合水量の増加に基づくもの(非特許文献1)、基礎発汗を誘導し角層水分量を増加させるもの(非特許文献2)等と考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】The Nishinihon journal of dermatology 69(1), 44-50, 2007-02-01
【非特許文献2】日本皮膚科学会雑誌 129(10), 2165-2172, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肌の弾力低下は老けた印象を与え、さらにたるみ肌を招来した場合にはその印象がより顕著となる。従って、肌の弾力向上やたるみの改善を求める声は多い。しかしながら、皮膚外用剤は角質層に対して肌トラブルを改善する有効成分を届けることができるに過ぎないため、通常、真皮層におけるトラブルに基づく肌の弾力低下やたるみ肌は外用剤で改善することができないと認識されている。
【0006】
そこで本発明は、肌の弾力向上及び/又はたるみ肌の改善に有効な皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、角質層における作用効果を奏することしか知られていないヘパリン類似物質に、肌の弾力を向上させる効果及び/又はたるみ肌を改善する効果があることを予期せず見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ヘパリン類似物質を含有し、肌の弾力向上に用いられる、皮膚外用剤。
項2. ヘパリン類似物質を含有し、たるみ肌の改善に用いられる、皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用剤によれば、肌の弾力を向上させ及び/又はたるみ肌を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、ヘパリン類似物質を含有することを特徴とする。以下、本発明の皮膚外用剤について詳述する。
【0011】
ヘパリン類似物質
ヘパリン類似物質とは、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、保湿作用や血流量増加作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0012】
本発明で使用されるヘパリン類似物質の由来については、特に制限されないが、例えば、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたもの、食用獣の組織(例えば、ウシやブタ等の気管軟骨を含む肺臓)から抽出したもの等が挙げられる。本発明のTGase発現促進剤では、ヘパリン類似物質として、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質が好適に使用される。
【0013】
本発明の皮膚外用剤におけるヘパリン類似物質の配合量については、該剤の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~5重量%、好ましくは0.03~3重量%、更に好ましくは0.1~1重量%が挙げられる。
【0014】
その他の成分
本発明の皮膚外用剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、上記ヘパリン類似物質成分以外の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、老化防止剤、収斂剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分、生薬成分等が挙げられる。
【0015】
また、本発明の皮膚外用剤は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、低級アルコール、多価アルコール等の水性基剤;油類、鉱物油、ワックス類・ロウ類、エステル油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、脂肪酸エステル高級アルコール、コレステロール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル等の油性基剤;界面活性剤、増粘剤、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、香料、清涼化剤、着色剤、分散剤、流動化剤、湿潤剤等の添加剤等が挙げられる。
【0016】
製剤形態
本発明の皮膚外用剤の性状については経皮適用できることを限度として特に制限されないが、例えば、液状、固形状、半固形状(ゲル状、軟膏状、ペースト状)等が挙げられる。
【0017】
また、本発明の皮膚外用剤の製剤形態については経皮適用できることを限度として特に制限されないが、例えば、皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品、化粧料、皮膚洗浄料等が挙げられ、より、具体的には、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等の皮膚外用医薬品;クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等の皮膚外用医薬部外品;ファンデーション、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、軟膏剤、パック剤等の化粧料;ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、リンス等の皮膚洗浄料等が挙げられる。
【0018】
用途
本発明の皮膚外用剤は、肌の弾力向上を目的とする用途、及び/又はたるみ肌を改善する目的で用いる。たるみ肌を改善する形態としては、顔全体のリフトアップ及び/又はたるみが気になる部分を改善する形態が挙げられる。
【0019】
また、本発明の皮膚外用剤の用量については、剤形、製剤形態、適用する症状の程度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、1回当たり、皮膚1cm2当たり、ヘパリン類似物質が0.001~5μg程度となる量で、1日1~数回程度の頻度で適用することができる。本発明の皮膚外用剤は、肌の弾力向上及び/又はたるみ肌改善を効果的に得るために、例えば15日以上、好ましくは30日以上継続して適用することが好ましい。
【実施例0020】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
30歳代~50歳代の、肌の弾力低下及び/又はたるみ肌を自覚する男女28名(なお、2人を除いて、乾燥肌及び/又は炎症等の角質層のトラブルは特になかった)が、ヘパリン類似物質を0.3%配合したクリームを1日2回、弾力低下及び/又はたるみが気になる部位に塗布した。クリーム使用前の肌状態と比較して、15日後及び30日使用後の肌の状態に対する満足度を評価した。具体的には、肌の弾力向上効果及びたるみ改善(顔全体(フェイスライン)のリフトアップ、及びたるみが気になる部分の改善)の程度について、かなり満足・満足・やや満足・どちらともいえない・やや不満・不満・かなり不満の7段階で評価し、それぞれの評価で回答した人数の割合(%)を導出した。さらに、かなり満足、満足、及びやや満足と回答した人数の合計の割合(%)を、有効指数として導出した。15日後の結果を表1に示し、30日後の結果を表2に示す。表中、各数値の単位は%である。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
表1及び表2から明らかなとおり、ほとんどの人が肌の弾力向上を実感でき、特に30日後には、全員に近い人が肌の弾力向上を実感できた。また、肌の弾力向上にとどまらず、およそ7割以上の人がたるみの改善まで実感できた。