(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172714
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】樹脂の製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 212/02 20060101AFI20221110BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221110BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20221110BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20221110BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C08F212/02
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
C08F8/00
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078811
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 知昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 英治
(72)【発明者】
【氏名】三好 太朗
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF24P
2H225AF48P
2H225AH03
2H225AH04
2H225AH17
2H225AH36
2H225AH38
2H225AJ04
2H225AJ13
2H225AJ42
2H225AJ48
2H225AJ53
2H225AN02P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN42P
2H225AN54P
2H225AN63P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC15
2H225EA01P
4J100AB02Q
4J100AB07P
4J100AB07Q
4J100AL08P
4J100AR09Q
4J100AR10Q
4J100BA02H
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA03H
4J100BA03Q
4J100BA04H
4J100BA04Q
4J100BA10Q
4J100BA12P
4J100BA22Q
4J100BA56P
4J100BC03Q
4J100BC04H
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
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4J100BC49Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100HA08
4J100HA19
4J100HA31
4J100HA61
4J100HB25
4J100HC13
4J100JA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ラフネス性能と耐エッチング性能とに優れるパターンを形成可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造において有用な樹脂を、容易に、かつ、高精度で製造し得る製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び、上記樹脂の反応中間体に相当する樹脂を提供する。
【解決手段】下記一般式(P-1)で表される化合物及び共重合可能なモノマー化合物を重合する工程を含む、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂の製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び、上記樹脂の反応中間体に相当する樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(P-1)で表される化合物及び共重合可能なモノマー化合物を重合する工程を含む、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂の製造方法。
【化1】
一般式(P-1)中、
R
1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L
1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar
p1は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M
+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【請求項2】
前記共重合可能なモノマー化合物の少なくとも1種が、下記一般式(A-1)で表される化合物である、請求項1に記載の樹脂の製造方法。
【化2】
一般式(A-1)中、
R
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
Ar
a1は、(n+1)価の芳香環基、又は(n+1)価の芳香族複素環基を表す。
nは1~4の整数を表す。
Y
1は水素原子又は置換基を表す。nが2~4の整数を表す場合は、複数のY
1は同一であっても良く、異なっていても良い。
【請求項3】
上記一般式(P-1)で表される化合物が下記一般式(P-2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の樹脂の製造方法。
【化3】
一般式(P-2)中、
M
+は、上記一般式(P-1)におけるM
+と同義である。
【請求項4】
前記重合工程に溶媒が使用され、前記溶媒の全量を基準とした、アルコール系溶媒の含有量が20質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒の全量を基準とした、アルコール系溶媒の含有量が50質量%以上である、請求項4に記載の樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、乳酸メチル、乳酸エチル、及びジアセトンアルコールからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項4又は5に記載の樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記重合工程を実施する前に、上記一般式(P-1)で表される化合物を含有する溶液を孔径0.05~5μmのフィルターを通してから重合工程を実施する、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記重合工程の後に、上記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位中のカチオンM+と有機カチオンとを交換させる工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂がさらに酸分解性基を有する繰り返し単位を有する樹脂である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記一般式(A-1)中のY
1が、水素原子、又は下記式(AY-1)~(AY-3)のいずれかで表される基である、請求項2~9のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【化4】
式(AY-1)中、R
a11、及びR
a12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
a2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【化5】
式(AY-2)中、R
a3はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【化6】
式(AY-3)中、R
a4~R
a6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【請求項11】
前記一般式(A-1)で表される化合物が、下記式(A-2)~(A-5)のいずれかで表される化合物である、請求項2~10のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【化7】
式(A-3)中、R
b11、及びR
b12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
b2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【化8】
式(A-4)中、R
b3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
【化9】
式(A-5)中、R
b4~R
b6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【請求項12】
前記一般式(A-1)で表される化合物が、前記式(A-3)~(A-5)のいずれかで表される化合物であり、前記重合工程の後に前記一般式(A-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位を下記式(AP-1)で表される繰り返し単位に変換する工程を含む、請求項11に記載の樹脂の製造方法。
【化10】
【請求項13】
前記式(AP-1)で表される繰り返し単位の少なくとも一部を下記式(AP-2)で表される繰り返し単位へ変換する工程を含む、請求項12に記載の樹脂の製造方法。
【化11】
式(AP-2)中、Y
2は酸の作用により脱離する基を表す。
【請求項14】
前記一般式(A-1)で表される化合物が、前記式(A-2)で表される化合物であり、前記重合工程の後に前記一般式(A-2)で表される繰り返し単位の少なくとも一部を下記式(AP-2)で表される繰り返し単位へ変換する工程を含む、請求項11に記載の樹脂の製造方法。
【化12】
式(AP-2)中、Y
2は酸の作用により脱離する基を表す。
【請求項15】
前記式(AP-2)中、Y
2が下記式(AY-4)で表される基である、請求項13又は14に記載の樹脂の製造方法。
【化13】
式(AY-4)中、R
c11、及びR
c12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
c2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法を含む、前記樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法により前記樹脂を製造する工程と、
前記樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上に感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程と、
前記感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程と、
現像液を用いて、前記露光された感活性光線性又は感放射線性膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
【請求項18】
下記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位、及び下記式(A-2)~(A-5)のいずれかで表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂。
【化14】
一般式(P-1)中、
R
1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L
1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar
p1は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M
+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【化15】
式(A-3)中、R
b11、及びR
b12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
b2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【化16】
式(A-4)中、R
b3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
【化17】
式(A-5)中、R
b4~R
b6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いることができる樹脂の製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(LargeScale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感光性組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
リソグラフィーの方法として、感光性組成物によりレジスト膜を形成した後、得られた膜を露光して、その後、現像する方法が挙げられる。特に、近年、露光の際に、ArFエキシマレーザーに加えて、EB(Electron Beam)、EUV(Extreme ultraviolet)光を用いる検討がなされており、EUV露光に適した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の開発がなされている。
【0003】
このような組成物に用いられる樹脂として、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アニオン基を有する水溶性モノマーを重合して前駆体ポリマーを合成し、当該前駆体ポリマーを水で洗浄した後、当該前駆体ポリマーを有機カチオンと塩交換させることを特徴とする、露光により分解して酸を発生する構成単位を有する高分子化合物の製造方法が開示されている。
特許文献2には、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を備えた第1単量体と、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を生じる基を備えた第2単量体とを含んだ反応系を、塩基性化合物の存在下で重合させることを含んだ感活性光線性又は感放射線性樹脂の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-1715号公報
【特許文献2】特開2011―168698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成される感活性光線性又は感放射線性膜には種々の性能が要求されるが、高いラフネス性能と高い耐エッチング性能との両立は要求される性能として重要である。
また、上記要求を満たす感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物をより容易に製造可能な製造方法も求められている。
【0007】
そこで本発明は、ラフネス性能と耐エッチング性能とに優れるパターンを形成可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造において有用な樹脂を、容易に、かつ、高精度で製造し得る製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び、上記樹脂の反応中間体に相当する樹脂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
[1]
下記一般式(P-1)で表される化合物及び共重合可能なモノマー化合物を重合する工程を含む、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂の製造方法。
【0010】
【0011】
一般式(P-1)中、
R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arp1は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【0012】
[2]
上記共重合可能なモノマー化合物の少なくとも1種が、下記一般式(A-1)で表される化合物である、[1]に記載の樹脂の製造方法。
【0013】
【0014】
一般式(A-1)中、
R2は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
Ara1は、(n+1)価の芳香環基、又は(n+1)価の芳香族複素環基を表す。
nは1~4の整数を表す。
Y1は水素原子又は置換基を表す。nが2~4の整数を表す場合は、複数のY1は同一であっても良く、異なっていても良い。
【0015】
[3]
上記一般式(P-1)で表される化合物が下記一般式(P-2)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載の樹脂の製造方法。
【0016】
【0017】
一般式(P-2)中、
M+は、上記一般式(P-1)におけるM+と同義である。
【0018】
[4]
上記重合工程に溶媒が使用され、上記溶媒の全量を基準とした、アルコール系溶媒の含有量が20質量%以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
[5]
上記溶媒の全量を基準とした、アルコール系溶媒の含有量が50質量%以上である、[4]に記載の樹脂の製造方法。
[6]
上記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、乳酸メチル、乳酸エチル、及びジアセトンアルコールからなる群より選択される少なくとも一つである、[4]又は[5]に記載の樹脂の製造方法。
【0019】
[7]
上記重合工程を実施する前に、上記一般式(P-1)で表される化合物を含有する溶液を孔径0.05~5μmのフィルターを通してから重合工程を実施する、[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
[8]
上記重合工程の後に、上記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位中のカチオンM+と有機カチオンとを交換させる工程を含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
[9]
上記樹脂がさらに酸分解性基を有する繰り返し単位を有する樹脂である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【0020】
[10]
上記一般式(A-1)中のY1が、水素原子、又は下記式(AY-1)~(AY-3)のいずれかで表される基である、[2]~[9]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【0021】
【0022】
式(AY-1)中、Ra11、及びRa12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Ra2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0023】
【0024】
式(AY-2)中、Ra3はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0025】
【0026】
式(AY-3)中、Ra4~Ra6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0027】
[11]
上記一般式(A-1)で表される化合物が、下記式(A-2)~(A-5)のいずれかで表される化合物である、[2]~[10]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【0028】
【0029】
式(A-3)中、Rb11、及びRb12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Rb2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0030】
【0031】
式(A-4)中、Rb3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
【0032】
【0033】
式(A-5)中、Rb4~Rb6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0034】
[12]
上記一般式(A-1)で表される化合物が、上記式(A-3)~(A-5)のいずれかで表される化合物であり、上記重合工程の後に上記一般式(A-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位を下記式(AP-1)で表される繰り返し単位に変換する工程を含む、[11]に記載の樹脂の製造方法。
【0035】
【0036】
[13]
上記式(AP-1)で表される繰り返し単位の少なくとも一部を下記式(AP-2)で表される繰り返し単位へ変換する工程を含む、[12]に記載の樹脂の製造方法。
【0037】
【0038】
式(AP-2)中、Y2は酸の作用により脱離する基を表す。
【0039】
[14]
上記一般式(A-1)で表される化合物が、上記式(A-2)で表される化合物であり、上記重合工程の後に上記一般式(A-2)で表される繰り返し単位の少なくとも一部を下記式(AP-2)で表される繰り返し単位へ変換する工程を含む、[11]に記載の樹脂の製造方法。
【0040】
【0041】
式(AP-2)中、Y2は酸の作用により脱離する基を表す。
【0042】
[15]
上記式(AP-2)中、Y2が下記式(AY-4)で表される基である、[13]又は[14]に記載の樹脂の製造方法。
【0043】
【0044】
式(AY-4)中、Rc11、及びRc12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Rc2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0045】
[16]
[1]~[15]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法を含む、上記樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法。
[17]
[1]~[15]のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法により上記樹脂を製造する工程と、
上記樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上に感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程と、
上記感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程と、
現像液を用いて、上記露光された感活性光線性又は感放射線性膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
【0046】
[18]
下記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位、及び下記式(A-2)~(A-5)のいずれかで表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂。
【0047】
【0048】
一般式(P-1)中、
R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arp1は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【0049】
【0050】
式(A-3)中、Rb11、及びRb12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Rb2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0051】
【0052】
式(A-4)中、Rb3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
【0053】
【0054】
式(A-5)中、Rb4~Rb6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、ラフネス性能と耐エッチング性能とに優れるパターンを形成可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造において有用な樹脂を、容易に、かつ、高精度で製造し得る製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び、上記樹脂の反応中間体に相当する樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、本発明の趣旨に反しない限り、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を含む基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中において、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
置換基としては、特に断らない限り、1価の置換基が好ましい。
【0057】
本明細書において、「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光: Extreme Ultraviolet)、X線、及び、電子線(EB:Electron Beam)を意味する。
本明細書において、「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書において、「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及び、EUV光等による露光のみならず、電子線、及び、イオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0058】
本明細書において、表記される2価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。また、上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく、「X-O-CO-Z」であってもよい。
【0059】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び、分散度(以下「分子量分布」ともいう。)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:ジメチルホルムアミド、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0060】
本明細書において、酸解離定数(pKa)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0061】
また、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。この具体的な方法としては、熱力学サイクルに基づいて、水溶液中におけるH+解離自由エネルギーを計算することで算出する手法が挙げられる。H+解離自由エネルギーの計算方法については、例えばDFT(密度汎関数法)により計算することができるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
【0062】
本明細書中において、pKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
また、本明細書中において、pKaは、上述した通り「水溶液中でのpKa」を指すが、水溶液中でのpKaが算出できない場合には、「ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中でのpKa」を採用するものとする。
「固形分」とは、感活性光線性又は感放射線性膜を形成する成分を意味し、溶剤は含まれない。また、感活性光線性又は感放射線性膜を形成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0063】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基の種類、置換基の位置、及び置換基の数は特に制限されない。置換基の数は例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基Tから選択できる。
【0064】
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;アルケニル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
[樹脂の製造方法]
本発明の樹脂の製造方法は、下記一般式(P-1)で表される化合物及び共重合可能なモノマー化合物を重合する工程を含む、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂の製造方法である。
【0066】
【0067】
一般式(P-1)中、
R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arp1は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
一般式(P-1)中の各基については、後述する。
【0068】
このような構成により、ラフネス性能と耐エッチング性能とに優れるパターンを形成可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造において有用な樹脂を、容易かつ高精度で製造し得るものにできるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。
先ず、本発明の樹脂の製造方法は、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂の製造方法である。このように、製造される樹脂においては、酸発生部位が樹脂に組み込まれる構成となるため、感活性光線性又は感放射線性膜の露光部にて発生した酸が、未露光部に拡散しすぎることが抑制されて、ラフネス性能に優れたパターンが得られるものと考えられる。
また、本発明の樹脂の製造方法は、上記一般式(P-1)で表される化合物及び共重合可能なモノマー化合物を重合する工程を含む。ここで、一般式(P-1)で表される化合物は、芳香環基又は芳香族複素環基を有しており、これらの基は剛直な基である。そして、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に使用される樹脂は、同様に、剛直な基として芳香環基又は芳香族複素環基を有することになることから、耐エッチング性能に優れるパターンが得られるものと考えられる。
また、イオン性モノマー化合物としての一般式(P-1)で表される化合物は、対カチオンとしてのM+がリチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表すことにより、モノマー溶液におけるイオン性モノマー化合物の溶解性は、例えば対カチオンがナトリウムカチオンである場合と比較して向上する。その詳細な理由は明らかではないが、ナトリウムカチオンの場合は有機溶媒による溶媒和を受けにくく、溶解度が下がっていると推測される。
上記のように、モノマー溶液におけるイオン性モノマー化合物の溶解性が向上すれば、モノマー溶液における重合溶媒の使用量の削減などによる製造コストの低減が可能であるともに、例えば対カチオンがナトリウムカチオンである場合においては、重合溶媒に対する溶解性の観点で共重合自体が難しいモノマーについて、対カチオンを、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンとすることにより、モノマーの共重合を所望に実施することができ、製造適用範囲が広がり得る。
以上に述べた理由等により、共重合工程において、一般式(P-1)で表される化合物を使用することで、樹脂を容易に製造することができるものと考えられる。
更に、本発明の、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂の製造方法は、対カチオンとしてのM+がリチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表すため、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生することが難しい一般式(P-1)で表される化合物を重合する工程を経由するものである。これにより、重合工程において、酸による樹脂の分解等の意図しない反応を高次元で抑制することができ、ひいては、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂を高精度で製造することができるものと考えられる。
【0069】
以下、かかる樹脂の製造方法における、一般式(P-1)で表される化合物及び共重合可能なモノマー化合物を重合する工程(工程(1)ともいう)について説明する。
【0070】
<工程(1)(重合工程)>
本発明における工程(1)は、一般式(P-1)で表される化合物及び共重合可能なモノマー化合物を重合する工程をいう。
【0071】
(重合開始剤)
上記の工程(1)における反応は、通常は、重合開始剤を更に含んでいる。重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤及びパーオキサイドなどのラジカル開始剤を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)などが挙げられる。なお、所望により、開始剤を複数回に分けて添加してもよい。
【0072】
(溶媒)
上記の工程(1)における反応は、典型的には液相で行う。即ち、上記の反応系は、典型的には、溶媒を更に含んでいる。
この溶媒としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルコール系溶媒、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、環状ラクトン、鎖状又は環状のケトン、アルキレンカーボネート、カルボン酸アルキル、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル、などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0073】
アルコール系溶媒としては、-OHを含む溶媒であれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、ジアセトンアルコール等を挙げることができる。
【0074】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
【0075】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
なお、アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、アルコール系溶媒に包含される。
【0076】
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
環状ラクトンとしては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-オクタノイックラクトン、α-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0077】
鎖状又は環状のケトンとしては、例えば、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、3-メチルブタノン、ピナコロン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン、2-メチル-3-ペンタノン、4,4-ジメチル-2-ペンタノン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、2,2,4,4-テトラメチル-3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、5-メチル-3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-メチル-3-ヘプタノン、5-メチル-3-ヘプタノン、2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、3-ノナノン、5-ノナノン、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、5-ヘキセン-2-オン、3-ペンテン-2-オン、シクロペンタノン、2-メチルシクロペンタノン、3-メチルシクロペンタノン、2,2-ジメチルシクロペンタノン、2,4,4-トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、4-エチルシクロヘキサノン、2,2-ジメチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6-トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2-メチルシクロヘプタノン、3-メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0078】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
カルボン酸アルキルとしては、例えば、酢酸ブチルが好ましく挙げられる。
【0079】
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル、酢酸-2-(2-エトキシエトキシ)エチル、酢酸-3-メトキシ-3-メチルブチル、酢酸-1-メトキシ-2-プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
【0080】
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
上記の重合反応は、窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。また、必要に応じて、連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタンなど)の存在下で重合を行ってもよい。
【0082】
反応系のモノマー濃度は、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは25~50質量%である。
反応温度は、通常は10℃~150℃であり、好ましくは30℃~120℃であり、更に好ましくは40~100℃である。
反応時間は、通常は1~48時間であり、好ましくは1~24時間であり、更に好ましくは1~12時間である。
【0083】
好ましい一態様として、上記重合工程に溶媒が使用され、上記溶媒の全量を基準とした、アルコール系溶媒の含有量が20質量%以上であることが好ましい。
上記溶媒の全量を基準とした、アルコール系溶媒の含有量が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることさらに好ましい。
【0084】
上記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、乳酸メチル、乳酸エチル、及びジアセトンアルコールからなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0085】
〔一般式(P-1)で表される化合物〕
以下に、一般式(P-1)で表される化合物について記載する。
【0086】
【0087】
一般式(P-1)中、
R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arp1は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【0088】
R1のアルキル基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
アリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又はヨウ素原子が好ましい。
アルキル基、アリール基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
R1は、水素原子であることが好ましい。
【0089】
L1の2価の連結基としては、特に限定されないが、アルキレン基、シクロアルキレン基、芳香環基、芳香族複素環基、-C(=O)-、-O-、及び、これらの複数を組み合わせてなる2価の連結基が挙げられる。
アルキレン基としては、特に限定されないが、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、炭素数が1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数が1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。
シクロアルキレン基としては、特に限定されないが、炭素数が3~20のシクロアルキレン基が好ましく、炭素数が3~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~6のシクロアルキレン基がさらに好ましい。
【0090】
芳香環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよく、炭素数が6~20の芳香環基が好ましく、炭素数が6~14の芳香環基がより好ましく、炭素数6~10の芳香環基がさらに好ましい。
芳香族複素環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
アルキレン基、シクロアルキレン基、芳香環基、芳香族複素環基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
好ましい一態様として、L1は単結合であることが好ましい。
【0091】
Arp1の芳香環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよく、炭素数が6~20の芳香環基が好ましく、炭素数が6~14の芳香環基がより好ましく、炭素数6~10の芳香環基がさらに好ましい。
芳香族複素環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
芳香環基、芳香族複素環基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
【0092】
M+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
アンモニウムカチオンとしては、アンモニウムカチオン(NH4
+)、テトラアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられるが、アンモニウムカチオン(NH4
+)が好ましい。
テトラアルキルアンモニウムカチオンにおけるアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、複数のアルキル基は同一であっても、異なっていても良い。
M+は、リチウムカチオン又はアンモニウムカチオン(NH4
+)であることが好ましいく、リチウムカチオンであることがより好ましい。
【0093】
上記一般式(P-1)で表される化合物は下記一般式(P-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0094】
【0095】
一般式(P-2)中、
M+は、上記一般式(P-1)におけるM+と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0096】
以下、一般式(P-1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0097】
【0098】
一般式(P-1)で表される化合物は、常法により合成できる。例えば、特許第6705121号等に記載の合成法を使用することができる。
【0099】
上記一般式(P-1)で表される化合物は、1種で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
工程(1)における一般式(P-1)で表される化合物の含有量は、モノマーの総量に対して、0.5モル%~30モル%であることが好ましく、1モル%~20モル%であることがより好ましい。
【0100】
上記重合工程(工程(1))を実施する前に、上記一般式(P-1)で表される化合物を含有する溶液を孔径0.05~5μmのフィルターを通してから重合工程を実施することが好ましい。
孔径は、0.05~5μmであり、0.1~3μmであることがより好ましい。
フィルターとしては、特に限定されないが、メンブレンフィルター、カートリッジフィルター、シリンジフィルター等が挙げられる。
【0101】
(共重合可能なモノマー化合物)
以下に、共重合可能なモノマー化合物について記載する。上記共重合可能なモノマー化合物は、上記一般式(P-1)で表される化合物と共重合可能な化合物である。
上記共重合可能なモノマー化合物は、特に限定されないが、共重合可能なモノマー化合物の少なくとも1種が、下記一般式(A-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0102】
【0103】
一般式(A-1)中、
R2は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
Ara1は、(n+1)価の芳香環基、又は(n+1)価の芳香族複素環基を表す。
nは1~4の整数を表す。
Y1は水素原子又は置換基を表す。nが2~4の整数を表す場合は、複数のY1は同一であっても良く、異なっていても良い。
【0104】
R2のアルキル基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
アリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又はヨウ素原子が好ましい。
アルキル基、アリール基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
R2は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
【0105】
Ara1は、(n+1)価の芳香環基、又は(n+1)価の芳香族複素環基を表す。まず、nが1の場合の2価の芳香環基、2価の芳香族複素環基について以下に記載する。
2価の芳香環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよく、炭素数が6~20の芳香環基が好ましく、炭素数が6~14の芳香環基がより好ましく、炭素数6~10の芳香環基がさらに好ましい。
2価の芳香族複素環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
上記芳香環基、芳香族複素環基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
【0106】
(n+1)価の芳香環基としては、上記2価の芳香環基から、(n-1)個の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(n+1)価の芳香族複素環基としては、上記2価の芳香族複素環基から、(n-1)個の水素原子を除してなる基が挙げられる。
【0107】
Y1の置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
アルキルカルボニル基におけるアルキル基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
アリールカルボニル基におけるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
ヘテロアリールカルボニル基におけるヘテロアリール基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
アリールオキシカルボニル基におけるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
【0108】
上記アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
上記アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基は、複数の置換基を有していても良い。
また、好ましい一態様として、置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基を挙げることができる。
【0109】
アリール基としては、上記アリールカルボニル基におけるアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
ヘテロアリール基としては、上記ヘテロアリールカルボニル基におけるヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
アルコキシ基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
アリールオキシ基におけるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
ヘテロアリールオキシ基におけるヘテロアリール基としては、特に限定されないが、上記ヘテロアリールカルボニル基におけるヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
【0110】
上記一般式(A-1)中のY1は、水素原子、又は下記式(AY-1)~(AY-3)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0111】
【0112】
式(AY-1)中、Ra11、及びRa12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Ra2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0113】
【0114】
式(AY-2)中、Ra3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0115】
【0116】
式(AY-3)中、Ra4~Ra6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0117】
式(AY-1)中、Ra11、Ra12、及びRa2のアルキル基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
Ra11、Ra12、及びRa2のアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Ra11、Ra12、及びRa2のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
好ましい一態様として、Ra12、Ra2は、それぞれ独立に、アルキル基である態様が挙げられる。
また好ましい一態様として、Ra11は水素原子であり、Ra12、Ra2は、それぞれ独立に、アルキル基である態様が挙げられる。
【0118】
式(AY-2)中、Ra3のアルキル基としては、特に限定されないが、上記Ra11、Ra12、及びRa2のアルキル基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Ra3のアルコキシ基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
Ra3のアリール基としては、特に限定されないが、上記Ra11、Ra12、及びRa2のアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Ra3のアリール基オキシ基におけるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Ra3のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、上記Ra11、Ra12、及びRa2のヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Ra3は、アルキル基であることが好ましい。
【0119】
式(AY-3)中、Ra4~Ra6のアルキル基としては、特に限定されないが、上記Ra11、Ra12、及びRa2のアルキル基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Ra4~Ra6のアリール基としては、特に限定されないが、上記Ra11、Ra12、及びRa2のアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Ra4~Ra6のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、上記Ra11、Ra12、及びRa2のヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Ra4~Ra6は、それぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。
【0120】
上記一般式(A-1)で表される化合物が、下記式(A-2)~(A-5)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0121】
【0122】
式(A-3)中、Rb11、及びRb12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Rb2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0123】
【0124】
式(A-4)中、Rb3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
【0125】
【0126】
式(A-5)中、Rb4~Rb6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0127】
式(A-3)中、Rb11、Rb12、及びRb2のアルキル基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアルキル基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rb11、Rb12、及びRb2のアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rb11、Rb12、及びRb2のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
【0128】
式(A-4)中、Rb3のアルキル基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアルキル基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rb3のアルコキシ基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
Rb3のアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rb3のアリール基オキシ基におけるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Rb3のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
【0129】
式(A-5)中、Rb4~Rb6のアルキル基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアルキル基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rb4~Rb6のアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rb4~Rb6のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
上記一般式(A-1)で表される化合物が、上記式(A-3)~(A-5)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0130】
上記共重合可能なモノマー化合物としては、上記一般式(A-1)で表される化合物以外の、上記一般式(P-1)で表される化合物と共重合可能な化合物を適宜使用することができる。
【0131】
以下、上記共重合可能なモノマー化合物の具体例を例示するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0132】
【0133】
上記共重合可能なモノマー化合物は、1種で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
工程(1)における上記共重合可能なモノマー化合物の含有量は、モノマーの総量に対して、70モル%~99.5モル%であることが好ましく、80モル%~99モル%であることがより好ましい。
【0134】
工程(1)における上記一般式(P-1)で表される化合物の含有量及び上記一般式(A-1)で表される化合物の含有量の合計量は、モノマーの総量に対して、70モル%~100モル%であることが好ましく、80モル%~100モル%であることがより好ましい。
【0135】
工程(1)において、上記一般式(P-1)で表される化合物及び上記共重合可能なモノマー化合物を重合して、樹脂Pを合成することができる。樹脂Pは、上記樹脂の反応中間体に相当するものである。
樹脂Pは、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。
【0136】
GPC法によりポリスチレン換算値として、樹脂Pの重量平均分子量は、30,000以下が好ましく、1,000~30,000がより好ましく、3,000~30,000が更に好ましく、5,000~15,000が特に好ましい。
樹脂Pの分散度(分子量分布)は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1.2~3.0が更に好ましく、1.2~2.0が特に好ましい。
【0137】
本発明の樹脂の製造方法は、上記重合工程(工程(1))の後に、上記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位中のカチオンM+と有機カチオンとを交換させる工程を含むことが好ましい。
以下に、本発明の樹脂の製造方法における、上記工程(1)の後に、上記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位中のカチオンM+と有機カチオンとを交換させる工程(工程(2)ともいう)について説明する。
【0138】
<工程(2)>
本発明における工程(2)は、上記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位中のカチオンM+と有機カチオンとを交換させる工程をいう。
【0139】
上記交換(塩交換)は、上記樹脂Pと有機カチオンを有する化合物(以下、化合物Aともいう)とを、溶媒下にて反応させることにより行うことができる。
【0140】
化合物Aは上記交換に使用される化合物であり、カチオン部としての有機カチオン、アニオン部を有するものである。
アニオン部としては、非求核性イオンが好ましく、例えば、臭素イオン、塩素イオン等のハロゲンイオン、炭酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等を挙げることができる。
【0141】
化合物Aにおけるカチオン部の有機カチオンは、特に限定されないが、式(ZaI)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaI)」ともいう。)、又は、式(ZaII)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaII)」ともいう。)が好ましい。
【0142】
【0143】
上記式(ZaI)において、
R201、R202、及びR203は、それぞれ独立に、有機基を表す。
R201、R202、及びR203としての有機基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましい。また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基及びペンチレン基)、及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-が挙げられる。
【0144】
式(ZaI)における有機カチオンの好適な態様としては、後述する、カチオン(ZaI-1)、カチオン(ZaI-2)、式(ZaI-3b)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI-3b))、及び式(ZaI-4b)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI-4b))が挙げられる。
【0145】
まず、カチオン(ZaI-1)について説明する。
カチオン(ZaI-1)は、上記式(ZaI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムカチオンである。
アリールスルホニウムカチオンは、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
また、R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又はカルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-)が挙げられる。
アリールスルホニウムカチオンとしては、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及びアリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0146】
アリールスルホニウムカチオンに含まれるアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環構造を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基が挙げられる。アリールスルホニウムカチオンが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0147】
R201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基(例えば、炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~15)、アリール基(例えば、炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~15)、シクロアルキルアルコキシ基(例えば、炭素数1~15)、ハロゲン原子(例えば、フッ素及びヨウ素)、水酸基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルキルチオ基、又はフェニルチオ基が好ましい。
上記置換基は可能な場合更に置換基を有していてもよく、上記アルキル基が置換基としてハロゲン原子を有して、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基となっていることも好ましい。
【0148】
次に、カチオン(ZaI-2)について説明する。
カチオン(ZaI-2)は、式(ZaI)におけるR201~R203が、それぞれ独立に、芳香環を有さない有機基を表すカチオンである。芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
R201~R203としての芳香環を有さない有機基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
R201~R203としては、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基がより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基が更に好ましい。
【0149】
R201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、並びに、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
R201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0150】
次に、カチオン(ZaI-3b)について説明する。
カチオン(ZaI-3b)は、下記式(ZaI-3b)で表されるカチオンである。
【0151】
【0152】
式(ZaI-3b)中、
R1c~R5cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表す。
R6c及びR7cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、t-ブチル基等)、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基を表す。
Rx及びRyは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
【0153】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとRx、及びRxとRyは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよく、この環は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族のヘテロ環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0154】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。このアルキレン基中のメチレン基が酸素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。
R5cとR6c、及びR5cとRxが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。
【0155】
R1c~R5c、R6c、R7c、Rx、Ry、並びに、R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとRx、及びRxとRyがそれぞれ互いに結合して形成する環は、置換基を有していてもよい。
【0156】
次に、カチオン(ZaI-4b)について説明する。
カチオン(ZaI-4b)は、下記式(ZaI-4b)で表されるカチオンである。
【0157】
【0158】
式(ZaI-4b)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
R13は、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子及びヨウ素原子等)、水酸基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を含む基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R14は、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子及びヨウ素原子等)、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を含む基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合は、それぞれ独立して、水酸基等の上記基を表す。
R15は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成するのが好ましい。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、及び上記ナフチル基、並びに、2つのR15が互いに結合して形成する環は置換基を有してもよい。
【0159】
式(ZaI-4b)において、R13、R14、及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基は、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等が好ましい。
また、R13~R15、並びに、Rx及びRyの各置換基は、それぞれ独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成するのも好ましい。
【0160】
次に、式(ZaII)について説明する。
式(ZaII)中、R204及びR205は、それぞれ独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R204及びR205のアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204及びR205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェンが挙げられる。
R204及びR205のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はペンチル基)、又は炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はノルボルニル基)が好ましい。
【0161】
R204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。R204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~15)、アリール基(例えば、炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基が挙げられる。また、R204及びR205の置換基は、それぞれ独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0162】
以下に有機カチオンの具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
(溶媒)
上記の工程(2)における反応は、典型的には液相で行う。即ち、上記の反応系は、典型的には、溶媒を含んでいる。
この溶媒としては、各成分を溶解して、上記塩交換を行うことができるものである限り特に限定されないが、例えば、水、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、およびそれらを2種以上用いる混合溶媒等を挙げることができる。
【0167】
反応温度は、0~40℃程度が好ましく、10~30℃程度がより好ましい。
反応時間は、樹脂Aと交換用化合物(化合物A)との反応性や反応温度等によっても異なるが、通常、10分間以上24時間以下が好ましく、0.25~6時間がより好ましい。
上記工程(2)の交換における化合物Aの使用量は、通常、1モルの上記樹脂P中の一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位のモル数に対してに対して、1~3モル程度が好ましい。
【0168】
本発明の樹脂の製造方法は、下記の態様を含むことが好ましい。
上記一般式(A-1)で表される化合物が、上記式(A-3)~(A-5)のいずれかで表される化合物であり、上記重合工程の後に上記一般式(A-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位を下記式(AP-1)で表される繰り返し単位に変換する工程を含む、樹脂の製造方法。
【0169】
【0170】
上記重合工程の後に上記一般式(A-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位を下記式(AP-1)で表される繰り返し単位に変換する工程(以下、工程(3)ともいう)における反応は、典型的には、加水分解反応であり、上記重合工程(工程(1))の後であれば、特に限定されない。
好ましい一態様として、工程(3)は、上記工程(2)の前であっても良く、上記工程(2)の後であっても良く、上記工程(2)と同時に行われていても良い。工程(3)は、上記工程(2)の前であることが好ましい。
上記工程(3)は、常法により行うことができる。
【0171】
また、本発明の製造方法は、上記式(AP-1)で表される繰り返し単位の少なくとも一部を下記式(AP-2)で表される繰り返し単位へ変換する工程(以下、工程(4)ともいう)を含むことが好ましい。
【0172】
【0173】
式(AP-2)中、Y2は酸の作用により脱離する基を表す。
【0174】
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、式(Y1)~(Y5)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
式(Y5):-C(=O)R51
【0175】
式(Y1)、及び式(Y2)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アリール基(単環若しくは多環)、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3~20のシクロアルキル基が挙げられ、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数6~20のアリール基が挙げられ、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基が挙げられる。
Rx1~Rx3のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
Rx1~Rx3のアルケニル基としては、特に限定されないが、ビニル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を含む基、又は、ビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0176】
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を含む基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基において、メチレン基の1つ以上が、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を含む基で置き換わっていてもよい。
また、R38は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。R38と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
【0177】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0178】
【0179】
ここで、L1及びL2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を含む基で置き換わっていてもよい。
なお、L1及びL2のうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及びL1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
【0180】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arとしては、アリール基が好ましい。
【0181】
式(Y5)中、R51は、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アルコキシ基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アリール基(単環若しくは多環)、アリールオキシ基、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)を表す。
上記アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アリール基(単環若しくは多環)、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)は、それぞれ、上記Rx1~Rx3としてのアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アリール基(単環若しくは多環)、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0182】
R51のアルコキシ基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
R51のアリール基オキシ基におけるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
【0183】
上記工程(4)は、上記重合工程(工程(1))の後であり、上記工程(3)の後であれば、特に限定されないが、好ましい一態様として、工程(4)は、上記工程(2)の前であっても良く、上記工程(2)の後であっても良い。また、工程(4)は、上記工程(2)と同時に行われていても良い。
【0184】
上記工程は、上記式(AP-1)で表される繰り返し単位におけるフェノール性水酸基の少なくとも一部を酸の作用により脱離する基Y2にて保護する工程であり、常法により行うことができる。
上記式(AP-1)で表される繰り返し単位におけるフェノール性水酸基の少なくとも一部を酸の作用により脱離する基Y2にて保護するものであり、上記フェノール性水酸基の酸の作用により脱離する基Y2にて保護する割合は、合成される樹脂の構成に応じて、適宜選択することができる。
【0185】
また、本発明の樹脂の製造方法は、下記の態様を含むことが好ましい。
上記一般式(A-1)で表される化合物が、上記式(A-2)で表される化合物であり、上記重合工程の後に上記一般式(A-2)で表される繰り返し単位の少なくとも一部を下記式(AP-2)で表される繰り返し単位へ変換する工程を含む、樹脂の製造方法。
【0186】
【0187】
式(AP-2)中、Y2は酸の作用により脱離する基を表す。
Y2は、上記工程(4)中の式(AP-2)におけるY2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0188】
上記重合工程の後に上記一般式(A-2)で表される化合物に由来する繰り返し単位を下記式(AP-1)で表される繰り返し単位に変換する工程(以下、工程(5)ともいう)は、上記重合工程(工程(1))の後であれば、特に限定されないが、好ましい一態様として、工程(5)は、上記工程(2)の前であっても良く、上記工程(2)の後であっても良い。また、工程(5)は、上記工程(2)と同時に行われていても良い。
【0189】
上記工程は、上記式(A-2)で表される繰り返し単位におけるフェノール性水酸基の少なくとも一部を酸の作用により脱離する基Y2にて保護する工程であり、常法により行うことができる。
上記式(A-2)で表される繰り返し単位におけるフェノール性水酸基の少なくとも一部を酸の作用により脱離する基Y2にて保護するものであり、上記フェノール性水酸基の酸の作用により脱離する基Y2にて保護する割合は、合成される樹脂の構成に応じて、適宜選択することができる。
【0190】
上記式(AP-2)中、Y2が下記式(AY-4)で表される基であることが好ましい。
【0191】
【0192】
式(AY-4)中、Rc11、及びRc12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Rc2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
*は結合位置を表す。
【0193】
式(AY-4)中、Rc11、Rc12、及びRc2のアルキル基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアルキル基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rc11、Rc12、及びRc2のアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
Rc11、Rc12、及びRc2のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、上記式(AY-1)中のRa11、Ra12、及びRa2のヘテロアリール基と同様のものを挙げることができ、また好ましい範囲も同様である。
好ましい一態様として、Rc12、Rc2は、それぞれ独立に、アルキル基である態様が挙げられる。
また好ましい一態様として、Rc11は水素原子であり、Rc12、Rc2は、それぞれ独立に、アルキル基である態様が挙げられる。
【0194】
本発明の樹脂の製造方法により製造された樹脂は、反応終了後、常法に従って、単離、精製することができる。
【0195】
((A)樹脂)
本発明の樹脂の製造方法により製造される樹脂(以下、樹脂(A)ともいう)は、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位(以下、繰り返し単位(a1)ともいう)を有する。
上記樹脂は、露光により酸を発生する化合物である。
上記繰り返し単位(a1)は、典型的には、下記の一般式(P-11)で表される繰り返し単位である。
【0196】
【0197】
一般式(P-11)中、
R11は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L11は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arp11は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M11
+は、有機カチオンを表す。
【0198】
R11のアルキル基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
アリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又はヨウ素原子が好ましい。
アルキル基、アリール基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
R11は、水素原子であることが好ましい。
【0199】
L11の2価の連結基としては、特に限定されないが、アルキレン基、シクロアルキレン基、芳香環基、芳香族複素環基、-C(=O)-、-O-、及び、これらの複数を組み合わせてなる2価の連結基が挙げられる。
アルキレン基としては、特に限定されないが、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、炭素数が1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数が1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。
シクロアルキレン基としては、特に限定されないが、炭素数が3~20のシクロアルキレン基が好ましく、炭素数が3~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~6のシクロアルキレン基がさらに好ましい。
【0200】
芳香環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよく、炭素数が6~20の芳香環基が好ましく、炭素数が6~14の芳香環基がより好ましく、炭素数6~10の芳香環基がさらに好ましい。
芳香族複素環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
アルキレン基、シクロアルキレン基、芳香環基、芳香族複素環基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
好ましい一態様として、L1は単結合であることが好ましい。
【0201】
Arp11の芳香環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよく、炭素数が6~20の芳香環基が好ましく、炭素数が6~14の芳香環基がより好ましく、炭素数6~10の芳香環基がさらに好ましい。
芳香族複素環基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
芳香環基、芳香族複素環基は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述の置換基Tを挙げることができる。
【0202】
M11
+の有機カチオンは、特に限定されないが、上記式(ZaI)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaI)」ともいう。)、又は、上記式(ZaII)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaII)」ともいう。)が好ましい。
【0203】
上記樹脂において、繰り返し単位(a1)は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0204】
上記樹脂において、繰り返し単位(a1)の含有量は、樹脂の全繰り返し単位に対して、0.5~30モル%が好ましく、1~20モル%がより好ましく、2~15モル%がさらに好ましい。
【0205】
上記樹脂が、上記樹脂の製造方法を含む、上記樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法(以下、「本発明の組成物の製造方法」ともいう)に用いられる場合は、樹脂(A)は、典型的には、酸分解性樹脂であり、通常、酸の作用により分解し極性が増大する基(以下、「酸分解性基」ともいう。)を含み、酸分解性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
従って、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、後述する(酸分解性基を有する繰り返し単位)以外に、(不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位)が好ましい。
【0206】
(酸分解性基を有する繰り返し単位(a2))
上記樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位(「繰り返し単位(a2)」ともいう。)を更に有していてもよい。
【0207】
酸分解性基とは、酸の作用により分解して極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、樹脂(A)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位を有する。この繰り返し単位を有する樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(典型的には、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基が挙げられる。
【0208】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0209】
なかでも、極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0210】
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、式(Y1)~(Y5)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
式(Y5):-C(=O)R51
【0211】
式(Y1)、及び式(Y2)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又は、アリール基(単環若しくは多環)、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3~20のシクロアルキル基が挙げられ、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数6~20のアリール基が挙げられ、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基が挙げられる。
Rx1~Rx3のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、単環であっても、多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等を挙げることができる。
Rx1~Rx3のアルケニル基としては、特に限定されないが、ビニル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を含む基、又は、ビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
本発明の組成物の製造方法における組成物が、例えば、EUV露光用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である場合、Rx1~Rx3で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、及び、Rx1~Rx3の2つが結合して形成される環は、更に、置換基として、フッ素原子又はヨウ素原子を有しているのも好ましい。
【0212】
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を含む基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基において、メチレン基の1つ以上が、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を含む基で置き換わっていてもよい。
また、R38は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。R38と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
本発明の組成物の製造方法における組成物が、例えば、EUV露光用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である場合、R36~R38で表される1価の有機基、及び、R37とR38とが互いに結合して形成される環は、更に、置換基として、フッ素原子又はヨウ素原子を有しているのも好ましい。
【0213】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0214】
【0215】
ここで、L1及びL2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を含む基で置き換わっていてもよい。
なお、L1及びL2のうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及びL1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、L2が2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基、及び、アダマンタン基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0216】
本発明の組成物の製造方法における組成物が、例えば、EUV露光用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である場合、L1及びL2で表される、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、これらを組み合わせた基は、更に、置換基として、フッ素原子又はヨウ素原子を有しているのも好ましい。また、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、フッ素原子及びヨウ素原子以外に、酸素原子等のヘテロ原子が含まれている(つまり、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を含む基で置き換わっている)のも好ましい。
また、本発明の組成物の製造方法における組成物が、例えば、EUV露光用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である場合、Qで表されるヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、及び、これらを組み合わせた基において、ヘテロ原子としては、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子であるのも好ましい。
【0217】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arとしては、アリール基が好ましい。
本発明の組成物の製造方法における組成物が、例えば、EUV露光用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である場合、Arで表される芳香環基、並びに、Rnで表されるアルキル基、シクロアルキル基、及び、アリール基は、置換基としてフッ素原子又はヨウ素原子を有しているのも好ましい。
【0218】
式(Y5)中、R51は、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アルコキシ基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アリール基(単環若しくは多環)、アリールオキシ基、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)を表す。
上記アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アリール基(単環若しくは多環)、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)は、それぞれ、上記Rx1~Rx3としてのアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、アリール基(単環若しくは多環)、又は、ヘテロアリール基(単環若しくは多環)と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0219】
R51のアルコキシ基としては、特に限定されないが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
R51のアリール基オキシ基におけるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
【0220】
繰り返し単位の酸分解性が優れる点から、極性基を保護する脱離基において、極性基(又はその残基)に非芳香族環が直接結合している場合、上記非芳香族環中の、上記極性基(又はその残基)と直接結合している環員原子に隣接する環員原子は、置換基としてフッ素原子等のハロゲン原子を有さないのも好ましい。
【0221】
酸の作用により脱離する基は、他にも、3-メチル-2-シクロペンテニル基のような置換基(アルキル基等)を有する2-シクロペンテニル基、及び、1,1,4,4-テトラメチルシクロヘキシル基のような置換基(アルキル基等)を有するシクロヘキシル基でもよい。
【0222】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、式(A)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0223】
【0224】
L1は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表し、R1は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表し、R2は酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい基を表す。ただし、L1、R1、及びR2のうち少なくとも1つは、フッ素原子又はヨウ素原子を有する。
L1は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、及び、芳香環基、芳香族複素環基等)、及び、これらの複数が連結した連結基が挙げられる。なかでも、L1としては、-CO-、芳香環基、又は、-芳香環基-フッ素原子若しくはヨウ素原子を有するアルキレン基-が好ましく、-CO-、又は、-芳香環基-フッ素原子若しくはヨウ素原子を有するアルキレン基-がより好ましい。
芳香環基としては、特に限定されないが、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキレン基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、2以上が好ましく、2~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0225】
R1は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子が有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
アリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
上記アリール基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0226】
R2は、酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基としては、上述した式(Y1)~(Y5)で表され、かつ、フッ素原子又はヨウ素原子を有してもよい基が挙げられる。
【0227】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0228】
【0229】
式(AI)において、Xa1は、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環又は多環)、アルケニル基(直鎖状又は分岐鎖状)、又は、アリール(単環又は多環)基を表す。ただし、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状、又は分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、単環又は多環(単環又は多環のシクロアルキル基等)を形成してもよい。
【0230】
Xa1により表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH2-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基、又は、1価の有機基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xa1としては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0231】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtとしては、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH2-基、-(CH2)2-基、又は、-(CH2)3-基がより好ましい。
【0232】
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基が挙げられる。
Rx1~Rx3のアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましい。また、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。なかでも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を含む基、又は、ビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0233】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0234】
式(AI)で表される繰り返し単位としては、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xa1が水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)が好ましい。
【0235】
酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、式中、Xa1は、H、CH3、CF3、又は、CH2OHを表し、Rxa及びRxbは、それぞれ独立に、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位としては、式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0242】
【0243】
式(B)において、Xbは、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Lは、単結合、又は、置換基を有してもよい2価の連結基を表す。Ry1~Ry3は、それぞれ独立に、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、単環状若しくは多環状のシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又は、単環若しくは多環のアリール基を表す。ただし、Ry1~Ry3のうち少なくとも1つはアルケニル基、アルキニル基、単環若しくは多環のシクロアルケニル基、又は、単環若しくは多環のアリール基を表す。
Ry1~Ry3の2つが結合して、単環又は多環(単環又は多環のシクロアルキル基、シクロアルケニル基等)を形成してもよい。
【0244】
Xbにより表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH2-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基、又は、1価の有機基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xbとしては、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0245】
Lの2価の連結基としては、-Rt-基、-CO-基、-COO-Rt-基、-COO-Rt-CO-基、-Rt-CO-基、及び、-O-Rt-基が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基、又は、芳香環基を表し、芳香環基が好ましい。
Lとしては、-Rt-基、-CO-基、-COO-Rt-CO-基、又は、-Rt-CO-基が好ましい。Rtは、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。芳香環基が好ましい。
【0246】
Ry1~Ry3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Ry1~Ry3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Ry1~Ry3のアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基が挙げられる。
Ry1~Ry3のアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Ry1~Ry3のアルキニル基としては、エチニル基が好ましい。
Ry1~Ry3のシクロアルケニル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基の一部に二重結合を含む構造が好ましい。
Ry1~Ry3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。なかでも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Ry1~Ry3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基、又は、シクロアルケニル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基、-SO2-基及び-SO3-基等のヘテロ原子を含む基、ビニリデン基、又は、それらの組み合わせで置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基又はシクロアルケニル基は、シクロアルカン環又はシクロアルケン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
式(B)で表される繰り返し単位は、例えば、Ry1がメチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、又は、アリール基であり、Ry2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基又はシクロアルケニル基を形成している態様が好ましい。
【0247】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0248】
式(B)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級エステル系繰り返し単位(Xbが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Lが-CO-基を表す繰り返し単位)、酸分解性ヒドロキシスチレン3級アルキルエーテル系繰り返し単位(Xbが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Lがフェニル基を表す繰り返し単位)、酸分解性スチレンカルボン酸3級エステル系繰り返し単位(Xbが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Lが-Rt-CO-基(Rtは芳香族基)を表す繰り返し単位)である。
【0249】
不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、その上限値としては、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が特に好ましい。
【0250】
不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、式中、Xb及びL1は上記記載の置換基、連結基のいずれかを表し、Arは芳香族基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’’又は-COOR’’’:R’’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基等の置換基を表し、R’は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、単環状若しくは多環状のシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又は、単環若しくは多環のアリール基を表し、Qは酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基、-SO2-基及び-SO3-基等のヘテロ原子を含む基、ビニリデン基、又はそれらの組み合わせを表し、n及びmは0以上の整数を表す。
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0256】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、その上限値としては、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が更に好ましく、60モル%以下が特に好ましい。
好ましい一態様として、上記酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、20モル%より大きいことが好ましい。
【0257】
樹脂(A)に含まれる繰り返し単位(a1)及び繰り返し単位(a2)の含有量の合計(繰り返し単位(a1)及び繰り返し単位(a2)がそれぞれ複数存在する場合はそれらの合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%が更に好ましい。
なお、樹脂(A)が、繰り返し単位(a1)及び繰り返し単位(a2)のみ有する場合は、樹脂(A)に含まれる繰り返し単位(a1)及び繰り返し単位(a2)の合計量は、100モル%になる。
【0258】
(酸基を有する繰り返し単位(a3))
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位(「繰り返し単位(a3)」ともいう。)を有していてもよい。
酸基としては、pKaが13以下の酸基が好ましい。上記酸基の酸解離定数は、13以下が好ましく、3~13がより好ましく、5~10が更に好ましい。
樹脂(A)が、pKaが13以下の酸基を有する場合、樹脂(A)中における酸基の含有量は特に制限されないが、0.2~6.0mmol/gの場合が多い。なかでも、0.8~6.0mmol/gが好ましく、1.2~5.0mmol/gがより好ましく、1.6~4.0mmol/gが更に好ましい。酸基の含有量が上記範囲内であれば、現像が良好に進行し、形成されるパターン形状に優れ、解像性にも優れる。
酸基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、又はイソプロパノール基が好ましい。
また、上記ヘキサフルオロイソプロパノール基は、フッ素原子の1つ以上(好ましくは1~2つ)が、フッ素原子以外の基(アルコキシカルボニル基等)で置換されてもよい。
酸基としては、このように形成された-C(CF3)(OH)-CF2-も好ましい。また、フッ素原子の1つ以上がフッ素原子以外の基に置換されて、-C(CF3)(OH)-CF2-を含む環を形成してもよい。
酸基を有する繰り返し単位は、上述の酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有する繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であるのが好ましい。
酸基を有する繰り返し単位は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい。
【0259】
酸基を有する繰り返し単位としては、以下の繰り返し単位が挙げられる。
【0260】
【0261】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0262】
【0263】
式(1)中、Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。aは1~3の整数を表す。bは0~(5-a)の整数を表す。
【0264】
以下、酸基を有する繰り返し単位を以下に例示する。式中、aは1又は2を表す。
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
なお、上記繰り返し単位のなかでも、以下に具体的に記載する繰り返し単位が好ましい。式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2又は3を表す。
【0270】
【0271】
【0272】
酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましい。また、その上限値としては、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、95モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下が更に好ましい。
なお、樹脂(A)が、繰り返し単位(a1)、繰り返し単位(a2)、及び繰り返し単位(a3)のみ有する場合は、樹脂(A)に含まれる繰り返し単位(a1)、繰り返し単位(a2)、及び繰り返し単位(a3)の合計量は、100モル%になる。
【0273】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像性、耐熱性、及び感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
樹脂(A)は、例えば、特開2020-95068号公開の[0080]~[0105]、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0370]~[0414]、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0415]~[0433]、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落[0236]~[0237]、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0433]に記載される繰り返し単位を有していても良い。
【0274】
樹脂(A)としては、(特に、組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合)繰り返し単位の全てが、エチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する繰り返し単位で構成されることが好ましい。特に、繰り返し単位の全てが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されるのも好ましい。この場合、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができ、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
【0275】
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。
GPC法によりポリスチレン換算値として、樹脂(A)の重量平均分子量は、30,000以下が好ましく、1,000~30,000がより好ましく、3,000~30,000が更に好ましく、5,000~15,000が特に好ましい。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1.2~3.0が更に好ましく、1.2~2.0が特に好ましい。分散度が小さいものほど、解像度、及びレジスト形状がより優れ、更に、レジストパターンの側壁がよりスムーズであり、ラフネス性にもより優れる。
【0276】
本発明は、下記一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位、及び下記式(A-2)~(A-5)のいずれかで表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂にも関する。
【0277】
【0278】
一般式(P-1)中、
R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。
L1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arp1は、芳香環基、又は芳香族複素環基を表す。
M+は、リチウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【0279】
【0280】
式(A-3)中、Rb11、及びRb12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Rb2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0281】
【0282】
式(A-4)中、Rb3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、又はヘテロアリール基を表す。
【0283】
【0284】
式(A-5)中、Rb4~Rb6は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0285】
上記樹脂は、上記樹脂(A)の反応中間体に相当する樹脂である。
上記樹脂における、一般式(P-1)の各基は、上記本発明の樹脂の製造方法の工程(1)で記載される一般式(P-1)の各基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
上記樹脂における、式(A-3)の各基は、上記本発明の樹脂の製造方法の工程(1)で記載される式(A-3)の各基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
上記樹脂における、式(A-4)の各基は、上記本発明の樹脂の製造方法の工程(1)で記載される式(A-4)の各基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
上記樹脂における、式(A-5)の各基は、上記本発明の樹脂の製造方法の工程(1)で記載される式(A-5)の各基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0286】
上記樹脂の重量平均分子量、及び分散度は、それぞれ、上記本発明の樹脂の製造方法の工程(1)で記載される上記樹脂Pの重量平均分子量、及び分散度と同様であり、好ましい範囲も同様である。
上記樹脂は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。上記樹脂は、例えば、本願明細書の実施例を参照して合成することができる。
【0287】
上記樹脂において、一般式(P-1)で表される化合物に由来する繰り返し単位(繰り返し単位(b1)ともいう)は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0288】
上記樹脂において、繰り返し単位(b1)の含有量は、樹脂の全繰り返し単位に対して、0.5~30モル%が好ましく、1~20モル%がより好ましく、2~15モル%がさらに好ましい。
【0289】
また、上記樹脂において、式(A-2)~(A-5)のいずれかで表される化合物に由来する繰り返し単位(繰り返し単位(b2)ともいう)は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0290】
上記樹脂において、繰り返し単位(b2)の含有量は、樹脂の全繰り返し単位に対して、70~99.5モル%が好ましく、80~99モル%がより好ましく、85~98モル%がさらに好ましい。
【0291】
上記樹脂(A)の反応中間体に相当する上記樹脂に含まれる繰り返し単位(b1)及び繰り返し単位(b2)の含有量の合計(繰り返し単位(b1)及び繰り返し単位(b2)がそれぞれ複数存在する場合はそれらの合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%が更に好ましい。
なお、上記樹脂が、繰り返し単位(b1)及び繰り返し単位(b2)のみ有する場合は、上記樹脂に含まれる繰り返し単位(b1)及び繰り返し単位(b2)の合計量は、100モル%になる。
【0292】
〔本発明の樹脂の製造方法を含む、上記樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法〕
本発明の組成物の製造方法における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「組成物」、又は「本発明の組成物」ともいう)が含み得る成分について詳述する。
上記の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、典型的には、レジスト組成物であり、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。上記の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0293】
上記の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記樹脂を含有する。上記樹脂は、上記の本発明の樹脂の製造方法により製造される樹脂(樹脂(A))である。
樹脂(A)は、上述の通りである。
【0294】
本発明の組成物において、樹脂(A)の含有量は、組成物の全固形分に対して、50.0~99.9質量%が好ましく、60.0~99.0質量%がより好ましく、70.0~98.0質量%が更に好ましい。
樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0295】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂(A)に加えて、繰り返し単位(a1)を有さない樹脂(樹脂(A’)ともいう)を含有しても良い。
樹脂(A’)としては、繰り返し単位(a1)を有さない樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、樹脂(A)において、繰り返し単位(a1)を有さない樹脂を挙げることができる。
本発明の組成物が樹脂(A’)を含有する場合は、本発明の組成物において、樹脂(A)の含有量と樹脂(A’)の含有量の比は、質量比で、9:1~8:2であることが好ましい。
【0296】
<(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物>
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記樹脂(A)とは異なる活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(化合物(B)、イオン性化合物(B)、光酸発生剤、又は光酸発生剤(B)ともいう)を含んでいてもよい。光酸発生剤は、露光により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤(B)は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤(B)が、低分子化合物の形態である場合、の分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。
本発明において、光酸発生剤(B)が、低分子化合物の形態であるのが好ましい。
【0297】
好ましい一態様として、光酸発生剤(B)は、オニウム塩であるのが好ましい。
【0298】
光酸発生剤(B)としては、例えば、「M21
+ X-」で表される化合物(オニウム塩)が挙げられ、露光により有機酸を発生する化合物であるのが好ましい。
上記有機酸として、例えば、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及びカンファースルホン酸等)、カルボン酸(脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、及びアラルキルカルボン酸等)、カルボニルスルホニルイミド酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド酸、及びトリス(アルキルスルホニル)メチド酸が挙げられる。
【0299】
「M21
+ X-」で表される化合物において、M21
+は、有機カチオンを表す。
有機カチオンとしては特に制限されない。また、有機カチオンの価数は、1又は2価以上であってもよい。
なかでも、上記有機カチオンとしては、特に限定されないが、上記式(ZaI)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaI)」ともいう。)、又は、上記式(ZaII)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaII)」ともいう。)が好ましい。
【0300】
「M21
+ X-」で表される化合物において、X-は、有機アニオンを表す。
有機アニオンとしては、特に制限されず、1又は2価以上の有機アニオンが挙げられる。
有機アニオンとしては、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンが好ましく、非求核性アニオンがより好ましい。
【0301】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、及びカンファースルホン酸アニオン等)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、及びアラルキルカルボン酸アニオン等)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが挙げられる。
【0302】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であっても、シクロアルキル基であってもよく、炭素数1~30の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数3~30のシクロアルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、例えば、フルオロアルキル基(フッ素原子以外の置換基を有していてもよい。パーフルオロアルキル基であってもよい)であってもよい。
【0303】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおけるアリール基としては、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、及び、ナフチル基が挙げられる。
【0304】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基、及び、アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、ニトロ基、フッ素原子及び塩素原子等のハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(炭素数1~15が好ましい)、アルキル基(炭素数1~10が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3~15が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、アルコキシカルボニル基(炭素数2~7が好ましい)、アシル基(炭素数2~12が好ましい)、アルコキシカルボニルオキシ基(炭素数2~7が好ましい)、アルキルチオ基(炭素数1~15が好ましい)、アルキルスルホニル基(炭素数1~15が好ましい)、アルキルイミノスルホニル基(炭素数1~15が好ましい)、及び、アリールオキシスルホニル基(炭素数6~20が好ましい)が挙げられる。
【0305】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、炭素数7~14のアラルキル基が好ましい。
炭素数7~14のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及び、ナフチルブチル基が挙げられる。
【0306】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンが挙げられる。
【0307】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、及び、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基が挙げられ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0308】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、フッ素化燐(例えば、PF6
-)、フッ素化ホウ素(例えば、BF4
-)、及び、フッ素化アンチモン(例えば、SbF6
-)が挙げられる。
【0309】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子若しくはフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、又は、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。なかでも、パーフルオロ脂肪族スルホン酸アニオン(炭素数4~8が好ましい)、又は、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオンがより好ましく、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、パーフルオロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、又は、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンが更に好ましい。
複数の非求核性アニオンは、連結基を介して互いに結合してもよい。
【0310】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN1)で表されるアニオンも好ましい。
【0311】
【0312】
式(AN1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表す。
置換基は特に制限されないが、電子求引性基ではない基が好ましい。電子求引性基ではない基としては、例えば、炭化水素基、水酸基、オキシ炭化水素基、オキシカルボニル炭化水素基、アミノ基、炭化水素置換アミノ基、及び、炭化水素置換アミド基が挙げられる。
また、電子求引性基ではない基としては、それぞれ独立に、-R’、-OH、-OR’、-OCOR’、-NH2、-NR’2、-NHR’、又は、-NHCOR’が好ましい。R’は、1価の炭化水素基である。
【0313】
上記R’で表される1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、及びブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、及びブチニル基等のアルキニル基等の1価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、及びアダマンチル基等のシクロアルキル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、及びノルボルネニル基等のシクロアルケニル基等の1価の脂環炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、及びメチルアントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、及びアントリルメチル基等のアラルキル基等の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
なかでも、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭化水素基(シクロアルキル基が好ましい)又は水素原子が好ましい。
【0314】
Lは、2価の連結基を表す。
Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-O-CO-O-、-COO-、-CONH-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、アルキレン基(炭素数1~6が好ましい)、シクロアルキレン基(炭素数3~15が好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~6が好ましい)、及び、これらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。なかでも、2価の連結基としては、-O-CO-O-、-COO-、-CONH-、-CO-、-O-、-SO2-、-O-CO-O-アルキレン基-、-COO-アルキレン基-、又は、-CONH-アルキレン基-が好ましく、-O-CO-O-、-O-CO-O-アルキレン基-、-COO-、-CONH-、-SO2-、又は、-COO-アルキレン基-がより好ましい。
【0315】
Lとしては、例えば、下記式(AN1-1)で表される基が好ましい。
*a-(CR2a
2)X-Q-(CR2b
2)Y-*b (AN1-1)
【0316】
式(AN1-1)中、*aは、式(AN1)におけるR3との結合位置を表す。
*bは、式(AN1)における-C(R1)(R2)-との結合位置を表す。
X及びYは、それぞれ独立に、0~10の整数を表し、0~3の整数が好ましい。
R2a及びR2bは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
R2a及びR2bがそれぞれ複数存在する場合、複数存在するR2a及びR2bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ただし、Yが1以上の場合、式(AN1)における-C(R1)(R2)-と直接結合するCR2b
2におけるR2bは、フッ素原子以外である。
Qは、*A-O-CO-O-*B、*A-CO-*B、*A-CO-O-*B、*A-O-CO-*B、*A-O-*B、*A-S-*B、又は、*A-SO2-*Bを表す。
ただし、式(AN1-1)中のX+Yが1以上、かつ、式(AN1-1)中のR2a及びR2bのいずれもが全て水素原子である場合、Qは、*A-O-CO-O-*B、*A-CO-*B、*A-O-CO-*B、*A-O-*B、*A-S-*B、又は、*A-SO2-*Bを表す。
*Aは、式(AN1)におけるR3側の結合位置を表し、*Bは、式(AN1)における-SO3
-側の結合位置を表す。
【0317】
式(AN1)中、R3は、有機基を表す。
上記有機基は、炭素原子を1以上有していれば特に制限はなく、直鎖状の基(例えば、直鎖状のアルキル基)でも、分岐鎖状の基(例えば、t-ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基)でもよく、環状の基であってもよい。上記有機基は、置換基を有していても、有していなくてもよい。上記有機基は、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を有していても、有してなくてもよい。
【0318】
なかでも、R3は、環状構造を有する有機基であるのが好ましい。上記環状構造は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。環状構造を含む有機基における環は、式(AN1)中のLと直接結合しているのが好ましい。
上記環状構造を有する有機基は、例えば、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を有していても、有してなくてもよい。ヘテロ原子は、環状構造を形成する炭素原子の1つ以上と置換していてもよい。
上記環状構造を有する有機基は、例えば、環状構造の炭化水素基、ラクトン環基、及び、スルトン環基が好ましい。なかでも、上記環状構造を有する有機基は、環状構造の炭化水素基が好ましい。
上記環状構造の炭化水素基は、単環又は多環のシクロアルキル基が好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよい。
上記シクロアルキル基は、単環(シクロヘキシル基等)でも多環(アダマンチル基等)でもよく、炭素数は5~12が好ましい。
上記ラクトン基及びスルトン基としては、例えば、上述した式(LC1-1)~(LC1-21)で表される構造、及び、式(SL1-1)~(SL1-3)で表される構造のいずれかにおいて、ラクトン構造又はスルトン構造を構成する環員原子から、水素原子を1つ除いてなる基が好ましい。
【0319】
非求核性アニオンとしては、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状のアルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0320】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN2)で表されるアニオンも好ましい。
【0321】
【0322】
式(AN2)中、oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0323】
Xfは、水素原子、フッ素原子、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基、又はフッ素原子を有さない有機基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCF3であることがより好ましく、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0324】
R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R4及びR5が複数存在する場合、R4及びR5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R4及びR5で表されるアルキル基は、炭素数1~4が好ましい。上記アルキル基は置換基を有していてもよい。R4及びR5としては、水素原子が好ましい。
【0325】
Lは、2価の連結基を表す。Lの定義は、式(AN1)中のLと同義である。
【0326】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。なかでも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び、複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。単環の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。なかでも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0327】
アリール基は、単環又は多環であってもよい。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及び、アントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環又は多環であってもよい。なかでも、多環の複素環基である場合、より酸の拡散を抑制できる。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及び、ピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及び、デカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又は、デカヒドロイソキノリン環が好ましい。
【0328】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、及び、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及び、スルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0329】
式(AN2)で表されるアニオンとしては、SO3
--CF2-CH2-OCO-(L)q’-W、SO3
--CF2-CHF-CH2-OCO-(L)q’-W、SO3
--CF2-COO-(L)q’-W、SO3
--CF2-CF2-CH2-CH2-(L)q-W、又は、SO3
--CF2-CH(CF3)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q及びWは、式(AN2)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0330】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN3)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0331】
【0332】
式(AN3)中、Arは、アリール基(フェニル基等)を表し、スルホン酸アニオン、及び、-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、例えば、フッ素原子及び水酸基が挙げられる。
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4が好ましく、2~3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0333】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基が挙げられる。
【0334】
Bは、炭化水素基を表す。
Bとしては、脂肪族炭化水素基が好ましく、イソプロピル基、シクロヘキシル基、又は更に置換基を有してもよいアリール基(トリシクロヘキシルフェニル基等)がより好ましい。
【0335】
非求核性アニオンとしては、ジスルホンアミドアニオンも好ましい。
ジスルホンアミドアニオンは、例えば、N-(SO2-Rq)2で表されるアニオンである。
ここで、Rqは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましい。2個のRqは互いに結合して環を形成してもよい。2個のRqが互いに結合して形成される基は、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、フルオロアルキレン基が好ましく、パーフルオロアルキレン基が更に好ましい。上記アルキレン基の炭素数は2~4が好ましい。
【0336】
また、非求核性アニオンとしては、下記式(d1-1)~(d1-4)で表されるアニオンも挙げられる。
【0337】
【0338】
【0339】
式(d1-1)中、R51は置換基(例えば、水酸基)を有していてもよい炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基)を表す。
【0340】
式(d1-2)中、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素原子にはフッ素原子が置換されない)を表す。
Z2cにおける上記炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記炭化水素基における炭素原子(好ましくは、上記炭化水素基が環状構造を有する場合における、環員原子である炭素原子)は、カルボニル炭素(-CO-)であってもよい。上記炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいノルボルニル基を有する基が挙げられる。上記ノルボルニル基を形成する炭素原子は、カルボニル炭素であってもよい。
また、式(d1-2)中の「Z2c-SO3
-」は、上述の式(AN1)~(AN3)で表されるアニオンとは異なるのが好ましい。例えば、Z2cは、アリール基以外が好ましい。また、例えば、Z2cにおける、-SO3
-に対してα位及びβ位の原子は、置換基としてフッ素原子を有する炭素原子以外の原子が好ましい。例えば、Z2cは、-SO3
-に対してα位の原子及び/又はβ位の原子は環状基中の環員原子であるのが好ましい。
【0341】
式(d1-3)中、R52は有機基(好ましくはフッ素原子を有する炭化水素基)を表し、Y3は直鎖状、分岐鎖状、若しくは、環状のアルキレン基、アリーレン基、又は、カルボニル基を表し、Rfは炭化水素基を表す。
【0342】
式(d1-4)中、R53及びR54は、それぞれ独立に、有機基(好ましくはフッ素原子を有する炭化水素基)を表す。R53及びR54は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0343】
有機アニオンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0344】
また、光酸発生剤はカチオン部とアニオン部を有し、両者が共有結合で連結した構造のベタイン化合物であってもよい。
【0345】
本発明の組成物中の光酸発生剤(B)の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。また、上記含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
光酸発生剤(B)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0346】
<酸拡散制御剤(C)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
酸拡散制御剤は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。
酸拡散制御剤の種類は特に制限されず、例えば、塩基性化合物(CA)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(CB)、及び、活性光線又は放射線の照射により酸拡散制御能が低下又は消失する化合物(CC)が挙げられる。
化合物(CC)としては、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩化合物(CD)、及び、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(CE)が挙げられる。
また、例えば、塩基性化合物(CA)の具体例としては、国際公開第2020/066824号の段落[0132]~[0136]に記載のものが挙げられ、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(CE)の具体例としては、国際公開第2020/066824号の段落[0137]~[0155]に記載のものが挙げられ、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(CB)の具体例としては、国際公開第2020/066824号の段落[0156]~[0163]に記載のものが挙げられ、カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(CE)の具体例としては、国際公開第2020/066824号公報の段落[0164]に記載のものが挙げられる。
また、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩化合物(CD)の具体例としては、国際公開第2020/158337号の段落[0305]~[0314]に記載のものが挙げられる。
【0347】
上記以外にも、例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544A1号の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190A1号の段落[0403]~[0423]、及び米国特許出願公開2016/0274458A1号の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0348】
本発明の組成物に酸拡散制御剤が含まれる場合、酸拡散制御剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分に対して、0.1~15.0質量%が好ましく、1.0~15.0質量%がより好ましい。
本発明の組成物において、酸拡散制御剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0349】
<疎水性樹脂>
本発明の組成物は、更に、樹脂(A)とは異なる疎水性樹脂を含んでいてもよい。
疎水性樹脂はレジスト膜の表面に偏在するように設計されるのが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質の均一な混合に寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂の添加による効果として、水に対するレジスト膜表面の静的及び動的な接触角の制御、並びに、アウトガスの抑制が挙げられる。
【0350】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の点から、フッ素原子、珪素原子、及び、樹脂の側鎖部分に含まれたCH3部分構造のいずれか1種以上を有するのが好ましく、2種以上を有するのがより好ましい。また、上記疎水性樹脂は、炭素数5以上の炭化水素基を有するのが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
疎水性樹脂としては、国際公開第2020/004306号の段落[0275]~[0279]に記載される化合物が挙げられる。
【0351】
本発明の組成物が疎水性樹脂を含む場合、疎水性樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~20.0質量%が好ましく、0.1~15.0質量%がより好ましい。
【0352】
<溶剤>
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
溶剤は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及び、アルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含んでいるのが好ましい。なお、上記溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
【0353】
本発明者らは、このような溶剤と上述した樹脂とを組み合わせて用いると、組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となることを見出している。その理由は必ずしも明らかではないが、これら溶剤は、上述した樹脂の溶解性、沸点及び粘度のバランスが良いため、レジスト膜の膜厚のムラ及びスピンコート中の析出物の発生等を抑制できることに起因していると本発明者らは考えている。
成分(M1)及び成分(M2)の詳細は、国際公開第2020/004306号の段落[0218]~[0226]に記載され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0354】
上述した通り、溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。この場合、成分(M1)及び(M2)以外の成分の含有量は、溶剤の全量に対して、5~30質量%が好ましい。
【0355】
本発明の組成物中の溶剤の含有量は、固形分濃度が0.5~30質量%となるように定めるのが好ましく、1~20質量%となるように定めるのがより好ましい。こうすると、本発明の組成物の塗布性を更に向上させられる。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味するものであり、上述の通り、感活性光線性又は感放射線性膜を形成する成分を意味する。
固形分濃度とは、本発明の組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量の質量百分率である。
「全固形分」とは、本発明の組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
【0356】
<界面活性剤>
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含むと、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成できる。
界面活性剤は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、国際公開第2018/19395号の段落[0218]及び[0219]に開示された界面活性剤が挙げられる。
【0357】
これら界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
【0358】
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2.0質量%が好ましく、0.0005~1.0質量%がより好ましく、0.1~1.0質量%が更に好ましい。
【0359】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は、現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又は、カルボキシル基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物)を更に含んでいてもよい。
【0360】
本発明の組成物は、溶解阻止化合物を更に含んでいてもよい。ここで「溶解阻止化合物」とは、酸の作用により分解して有機系現像液中での溶解度が減少する、分子量3000以下の化合物である。
【0361】
本発明の組成物の製造方法は、上記組成物に含まれる上記樹脂と、必要により上記組成物に含まれ得るその他の成分を混合する工程を含んでいても良い。
【0362】
[用途]
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0363】
〔パターン形成方法〕
上記樹脂の製造方法を用いたパターン形成方法の手順は特に制限されないが、以下の工程を有するのが好ましい。
工程1:樹脂の製造方法により上記樹脂を製造する工程と、
工程2:上記樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上に感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程
工程3:感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程
工程4:現像液を用いて、露光された感活性光線性又は感放射線性膜を現像し、パターンを形成する工程
以下、上記それぞれの工程の手順について詳述する。
【0364】
<工程1:樹脂製造工程>
工程1は、樹脂の製造方法により、上記樹脂を製造する工程である。本発明の樹脂の製造方法は、上述の通りである。
【0365】
<工程2:感活性光線又は感放射線性膜形成工程>
工程2は、上記樹脂を含有する感活性光線又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上に感活性光線又は感放射線性膜(典型的には、「レジスト膜」である)を形成する工程である。
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、本発明の製造方法により製造された樹脂を含有する。
【0366】
感活性光線又は感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に感活性光線性又は感放射線性膜を形成する方法としては、例えば、感活性光線又は感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。
なお、塗布前に感活性光線又は感放射線性樹脂組成物を必要に応じてフィルター濾過するのが好ましい。フィルターのポアサイズは、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。また、フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製が好ましい。
【0367】
感活性光線又は感放射線性樹脂組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上に、スピナー又はコーター等の適当な塗布方法により塗布できる。塗布方法は、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。スピナーを用いたスピン塗布をする際の回転数は、1000~3000rpmが好ましい。
感活性光線又は感放射線性樹脂組成物の塗布後、基板を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、反射防止膜)を形成してもよい。
【0368】
乾燥方法としては、例えば、加熱して乾燥する方法が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて実施してもよい。加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。加熱時間は30~1000秒が好ましく、60~800秒がより好ましく、60~600秒が更に好ましい。
【0369】
感活性光線又は感放射線性膜の膜厚は特に制限されないが、より高精度な微細パターンを形成できる点から、10~120nmが好ましい。
なかでも、EUV露光とする場合、感活性光線又は感放射線性膜の膜厚としては、10~65nmがより好ましく、15~50nmが更に好ましい。また、ArF液浸露光とする場合、感活性光線又は感放射線性膜の膜厚としては、10~120nmがより好ましく、15~90nmが更に好ましい。
【0370】
なお、感活性光線又は感放射線性膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、感活性光線又は感放射線性膜と混合せず、更に感活性光線又は感放射線性膜上層に均一に塗布できるのが好ましい。
トップコートは、特に限定されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落[0072]~[0082]の記載に基づいてトップコートを形成できる。
例えば、特開2013-61648号公報に記載されたような塩基性化合物を含むトップコートを、感活性光線又は感放射線性膜上に形成するのが好ましい。トップコートが含み得る塩基性化合物の具体的な例は、前述する感活性光線又は感放射線性樹脂組成物が含んでいてもよい塩基性化合物が挙げられる。
また、トップコートは、エーテル結合、チオエーテル結合、水酸基、チオール基、カルボニル結合、及び、エステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも1つ含む化合物を含むのも好ましい。
【0371】
<工程3:露光工程>
工程3は、感活性光線又は感放射線性膜を露光する工程である。
露光の方法としては、形成した感活性光線又は感放射線性膜に所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射する方法が挙げられる。
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、及び電子線が挙げられ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1~200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、EUV(13nm)、X線、及び電子ビームが挙げられる。
【0372】
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うのが好ましい。ベークにより露光部の反応が促進され、感度及びパターン形状がより良好となる。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。
加熱時間は10~1000秒が好ましく、10~180秒がより好ましく、30~120秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光機及び/又は現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークともいう。
【0373】
<工程4:現像工程>
工程4は、現像液を用いて、露光された感活性光線又は感放射線性膜を現像し、パターンを形成する工程である。
現像液は、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0374】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止して現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒が好ましく、20~120秒がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
【0375】
アルカリ現像液は、アルカリを含むアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。アルカリ水溶液の種類は特に制限されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩、無機アルカリ、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルコールアミン、又は、環状アミン等を含むアルカリ水溶液が挙げられる。中でも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であるのが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。また、アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
【0376】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0377】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含有しないのが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、95質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0378】
<他の工程>
上記パターン形成方法は、工程4の後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むのが好ましい。
【0379】
アルカリ現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、純水には、界面活性剤を適当量添加してもよい。リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0380】
有機系現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、レジストパターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いるのが好ましい。
【0381】
リンス工程の方法は特に限定されず、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、及び、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
また、本発明のパターン形成方法は、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含んでいてもよい。本工程により、ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。また、本工程により、レジストパターンがなまされ、パターンの表面荒れが改善される効果もある。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~250℃(好ましくは90~200℃)で、通常10秒間~3分間(好ましくは30秒間~120秒間)行う。
【0382】
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程4にて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に限定されないが、工程4で形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。ドライエッチングは、酸素プラズマエッチングが好ましい。
【0383】
本発明の組成物、及び本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含まないのが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量は、1質量ppm以下が好ましく、10質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。下限は特に制限させず、0質量ppt以上が好ましい。ここで、金属不純物としては、例えば、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Pb、Ti、V、W、及びZnが挙げられる。
【0384】
各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルターを用いた濾過の詳細は、国際公開第2020/004306号の段落[0321]に記載される。
【0385】
また、各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、例えば、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する方法、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う方法、及び、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う方法等が挙げられる。
【0386】
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材とを組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル及びゼオライト等の無機系吸着材、並びに、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減するためには、製造工程における金属不純物の混入を防止する必要がある。製造装置から金属不純物が十分に除去されたかどうかは、製造装置の洗浄に使用された洗浄液中に含まれる金属成分の含有量を測定して確認できる。使用後の洗浄液に含まれる金属成分の含有量は、100質量ppt(parts per trillion)以下が好ましく、10質量ppt以下がより好ましく、1質量ppt以下が更に好ましい。下限は特に制限させず、0質量ppt以上が好ましい。
【0387】
リンス液等の有機系処理液には、静電気の帯電、引き続き生じる静電気放電に伴う、薬液配管及び各種パーツ(フィルター、O-リング、及び、チューブ等)の故障を防止するため、導電性の化合物を添加してもよい。導電性の化合物は特に制限されないが、例えば、メタノールが挙げられる。添加量は特に制限されないが、好ましい現像特性又はリンス特性を維持する点で、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は特に制限させず、0.01質量%以上が好ましい。
薬液配管としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、又は、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、若しくは、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフロオロアルコキシ樹脂等)で被膜された各種配管を使用できる。フィルター及びO-リングに関しても同様に、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又は、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフロオロアルコキシ樹脂等)を使用できる。
【0388】
<電子デバイスの製造方法>
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及びこの製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスの好適態様としては、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に搭載される態様が挙げられる。
【実施例0389】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0390】
実施例1A~1E、実施例2A~2B、実施例3A~3B、実施例4~6、実施例7A~7B、実施例8、実施例9A~9C、実施例10~11、実施例12A~12B、実施例13~16、比較例1A~1B、比較例2~16
表1に記載のモノマー、表1に記載の溶媒を使用して、以下のように、樹脂P-1A~P-1E、樹脂P-2A~P-2B、樹脂P-3A~P-3B、樹脂P-4~P-6、樹脂P-7A~P-7B、樹脂P-8、樹脂P-9A~P-9C、樹脂P-10~P-11、樹脂P-12A~P-12B、樹脂P-13~P-16、樹脂PC-1A~PC-1B、樹脂PC-2~PC-16を合成し、各樹脂の合成における許容重合濃度を評価した。
【0391】
[許容重合濃度]
モノマーの総質量が50gになるように、下記表1のモル比でモノマーを秤量し、表1に記載の溶媒を添加し、30分撹拌して溶解させたのち、メンブレンフィルター(孔径0.5μm)を通してモノマー溶液を調液した。
なお、溶媒量は「モノマーの総質量」が「モノマーの総質量+溶媒の総質量(総溶媒量)」に対して40質量%になるように総溶媒量を算出し、総溶媒量の20質量%を反応容器に別に加えて、総溶媒量の80質量%を上記のモノマー溶液に使用した。
上記のようにして得られたモノマー溶液に開始剤(ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、10mol%)溶解させ、そのモノマー溶液を80℃に加熱した総溶媒量の20質量%の溶媒を含む上記反応容器に4時間かけて滴下した。その後2時間80℃で反応を行い、放冷して反応を停止した。得られた反応液の13C-NMR(nuclear magnetic resonance)測定を行い、樹脂中のモノマー組成比を確認した。
樹脂中のモノマーSに由来する繰り返し単位のモル比がモノマーSの仕込み時のモル比に対して90%以上である場合、重合許容と判断した。重合許容と判断できない場合には、反応溶液のモノマー濃度を上記の40質量%から5質量%ずつ下げて実験を行い、重合許容となる濃度(許容重合濃度)を算出した。
評価結果を表1に示す。
【0392】
【0393】
【0394】
表1において、「モノマーの総質量」が「モノマーの総質量+溶媒の総質量(総溶媒量)」に対して40質量%となり、重合許容と判断できる場合は、「>40」と記載した。
一方で、「モノマーの総質量」が「モノマーの総質量+溶媒の総質量(総溶媒量)」に対して15質量%であり、重合許容と判断できない場合は、「<15」と記載した。
表1において、溶媒比(質量比)は、「溶媒A/溶媒B」としての比率を示す。
【0395】
表1におけるモノマーSの構造を以下に示す。
【0396】
【0397】
表1におけるモノマーA-1、A-2の構造を以下に示す。
【0398】
【0399】
表1における溶剤は、以下の通りである。
SV-1: メタノール
SV-2: エタノール
SV-3: 2-プロパノール
SV-4: 1-メトキシ-2-プロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
SV-5: 乳酸エチル
SV-6: 酢酸ブチル
SV-7: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SV-8: 2-ペンタノン
【0400】
表1より明らかであるが、実施例1A~16、では、それぞれ対応する比較例に対して重合許容濃度が高いことが分かる。これは、モノマー溶液におけるモノマーSの溶解性が高いことを示しているものと考えられるため、上記一般式(P-1)におけるM+により、重合工程で使用する溶媒の量を減らすことができ、製造コストの低減が可能である。
従って、共重合工程において、一般式(P-1)で表される化合物を使用することで、樹脂を容易に製造することができることが分かる。
【0401】
実施例A-1~A-3(樹脂PP-1~PP-3、PI-1の合成)
以下のように、樹脂PP-1~PP-3、及びPI-1を合成した。
得られた樹脂PP-1~PP-3、及びPI-1における各繰り返し単位の組成比(モル%比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)も示す。
なお、樹脂PP-1~PP-3、及びPI-1の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF))により測定した。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0402】
実施例A-1 (樹脂PP-1の合成)
【0403】
【0404】
上記表1に記載の実施例1A(樹脂P-1A)で得られた反応溶液を用いて以下の合成を行った。得られた反応液に酢酸エチル(1000mL)、水(500mL)、トリフェニルスルホニウムブロミド(6.94g、20.2mmol)を添加し30分、室温(23℃)で撹拌した。水層を除去した後、水(500mL)を加えて分液、水層除去を行う操作を3回繰り返し有機層を洗浄した。得られた有機層を濃縮後、酢酸エチル200gを加えて希釈した後、2000gのヘキサン/酢酸エチル=8/2(質量比)中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。100gのヘキサン/酢酸エチル=8/2(質量比)を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、48.5gの樹脂(PI-1)を得た。
得られた樹脂(PI-1)(48.5g)をアセトニトリル(450mL)に溶解させ、トリエチルアミン(15.1g、149mmol)を添加した。そこに常法により合成した1-クロロ-1-エトキシエタン(14.1g、130mmol)を添加し室温で3時間反応させた。得られた反応液に水(500mL)、酢酸エチル(1000mL)を添加して分液操作を行い水層を除去した。得られた有機層を濃縮した後、酢酸エチル200gを加えて希釈した後、2000gのヘキサン/酢酸エチル=9/1(質量比)中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。100gのヘキサン/酢酸エチル=8/2(質量比)を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、47.0gの樹脂(PP-1)を得た。得られた樹脂(PP-1)のMwは8500、分散度は1.80であり、繰り返し単位の組成比(モル比)は、左から順に60/35/5であった。
【0405】
実施例A-2 (樹脂PI-1の合成)
【0406】
【0407】
化合物(A-2)(47.3g、268mmol)、化合物(S-1)(2.69g、14.1mmol)を秤量し、溶媒SV-4(40.5g)、溶媒SV-1(13.5g)を添加して30分撹拌して溶解させたのち、メンブレンフィルター(孔径0.5μm)を通してモノマー溶液を調液した。得られたモノマー溶液にジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(6.50g、28.3mmol)を溶解させ滴下用モノマー溶液とした。反応容器に溶媒SV-4(15.8g)、溶媒SV-1(5.25g)を添加して80℃に加熱し、そこに滴下用モノマー溶液を。4時間かけて滴下した。その後2時間80℃で反応を行い、放冷して反応を停止した。得られた反応液に5N塩酸(11.3mL、56.5mmol)を添加し、90℃に加熱して3時間反応させた後放冷して反応を停止した。得られた反応液に酢酸エチル(1000mL)、水(500mL)、炭酸水素ナトリウム(7.12g、84.8mmol)トリフェニルスルホニウムブロミド(4.84g、14.1mmol)を添加し30分、室温で撹拌した。水層を除去した後、水(500mL)を加えて分液、水層除去を行う操作を3回繰り返し有機層を洗浄した。得られた有機層を濃縮後、酢酸エチル150gを加えて希釈した後、1500gのヘキサン/酢酸エチル=8/2(質量比)中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。100gのヘキサン/酢酸エチル=8/2(質量比)を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、32.1gの樹脂(PI-1)を得た。得られた樹脂(PI-1)のMwは8000であり、分散度は1.80であり、繰り返し単位の組成比(モル比)は、左から順に95/5であった。
【0408】
実施例A-3 (樹脂PP-2の合成)
【0409】
【0410】
樹脂(PP-2)は、上記の樹脂PP-1の合成に用いたものと同様の方法で合成した樹脂PI-1を用い、樹脂PP-1の合成における1-クロロ-1-エトキシエタンを(2-(1-クロロエトキシ)エチル)シクロヘキサンに変更した以外は樹脂PP-1と同様の合成法で合成を行った。得られた樹脂(PP-2)のMwは8200であり、分散度は1.82であり、繰り返し単位の組成比(モル比)は、左から順に60/35/5であった。
【0411】
実施例A-4 (樹脂PP-3の合成)
【0412】
【0413】
樹脂(PP-3)は、上記の樹脂PP-1の合成に用いたものと同様の方法で合成した樹脂PI-1を用い、樹脂PP-1の合成における1-クロロ-1-エトキシエタンを1-クロロ-1-メトキシ-2,2-ジメチルプロパンに変更した以外は樹脂PP-1と同様の合成法で合成を行った。得られた樹脂(PP-3)のMwは7900であり、分散度は1.79であり、繰り返し単位の組成比(モル比)は、左から順に61/34/5であった。
【0414】
実施例2-1~実施例2-3、比較例2C-1~比較例2C-3
[再現性のバラつき]
樹脂(PP-1~PP-3)、及び下記樹脂(PP-1C~PP-3C)をそれぞれ、繰り返し合成を行ったときの組成比再現性のバラつき([再現性のバラつき]について、以下のように評価した。
上記合成法に基づき、各樹脂の合成を計5回行い、各回における樹脂の全繰り返し単位に対する、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(モル%)を求め、5回分の平均値を算出した。全ての回において、酸分解性基を有する繰り返し単位の上記含有量(モル%)が、上記平均値±2mol%以内に収まっている場合をA、±2mol%以内に収まらない場合をBとして評価した。なお、実用上Aであることが好ましい。
評価結果を表2に示す。
【0415】
比較用の樹脂(PP-1C~PP-3C)として、以下に記載の方法で合成した、上記樹脂(PP-1~PP-3)とそれぞれ同組成の樹脂を使用した。
【0416】
樹脂PP-1Cの合成
【0417】
【0418】
化合物(S-4)(20.2g、105mmol)と、化合物(S-1)(21.6g、180mmol)と、化合物(SR-4)(6.70g、15mmol)と、重合開始剤、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(6.91g、30mmol)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルとメタノールの質量比(3/1)の混合溶媒(155g)に溶解させた。反応容器中に同混合溶媒(38.8g)を入れ、窒素ガス雰囲気下、80℃の系中に4時間かけて滴下した。反応溶液を2時間に亘って加熱撹拌した後、これを室温まで放冷した。
上記反応溶液を、250gの酢酸エチルを加えることにより希釈した。希釈した溶液を4000gのヘキサン/酢酸エチル=8/2(質量比)中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。200gのヘキサン/酢酸エチル=8/2(質量比)を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、35.5gの樹脂(PP-1C)を得た。得られた樹脂(PP-1C)のMwは8000であり、分散度は1.75であり、繰り返し単位の組成比(モル比)は、左から順に60/35/5であった。
【0419】
樹脂PP-2C~PP-3Cは、それぞれ樹脂PP-1Cと同様に合成した。なお上述の通り、樹脂PP-2C、PP-3Cにおける各繰り返し単位の組成比は、それぞれ樹脂PP-2、PP-3における各繰り返し単位の組成比と同様である。
【0420】
【0421】
表2より明らかであるが、実施例2-1~2-3によれば、各実施例に対応する比較例と比較して、より高精度に樹脂が製造できることが分かる。
【0422】
(実施例3-1~3-3、及び、比較例3C-1~3C-2)
<レジスト組成物の調製>
表3に示す成分を表3に示す溶剤に溶解させて、これを0.02μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物を調製した。
また、表中、括弧内の数値は、含有量(質量部)であり、各略号は、それぞれ下記を示す。
D-1: トリ-n-オクチルアミン
E-1: サリチル酸
SA-1: γ-ブチロラクトン
SA-2: シクロヘキサノン
SA-3: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SA-4: プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0423】
樹脂PR-1~PR-2における各繰り返し単位の組成比(モル%比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)も示す。
なお、樹脂PR-1~PR-2の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF))により測定した。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
樹脂PR-1は、下記で示される高分子化合物である。PR-1は、特開2013-1715の実施例1に準じて製造した。PR-1のMwは13400であり、分散度は1.57であった。
【0424】
【0425】
樹脂PR-2は、下記で示される樹脂である。樹脂PR-2は、実施例A-1に準じて製造した。PR-2のMwは8200であり、分散度は1.80であった。
【0426】
【0427】
【0428】
<パターン形成方法:EB露光、アルカリ現像(ポジ)>
上記のレジスト組成物を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で90秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成させた。
上記レジスト膜を、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50keV)を用いて、パターン照射を行った。この際、1:1のラインアンドスペースパターンが形成されるように描画を行った。電子線描画後直ぐに、110℃で90秒間ホットプレート上で加熱し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを形成し、得られたパターンを下記方法で評価した。
【0429】
<性能評価>
[ラフネス性能]
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-9220)を用いて観察した。線幅50nmの1:1ラインアンドスペースのレジストパターンを解像するときの露光量(電子線照射量)を感度(Eop)とした。
上記の感度を示す照射量における100nmラインパターン(線幅50nmの1:1ラインアンドスペースのパターン)の長さ方向10μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定し、標準偏差を求め、3σ(nm)を算出した。
【0430】
[耐エッチング性能]
上記のレジスト組成物を用いて、シリコンウエハー上に膜厚200nmのレジスト膜を形成した後、ドライエッチング装置((株)日立製作所製、HITACHI U-621)でAr/C4F6/O2ガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用い、シリコンウエハを温度23℃の条件で60秒間ドライエッチング処理した。走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、S-4800)にて各パターンの断面形状を観察し、残膜量を求め、エッチング速度を算出した。
(判定基準)
A:エッチング速度が15Å/sec未満の場合
B:エッチング速度が15Å/sec以上の場合
なお、実用上Aであることが好ましい。
【0431】
得られた評価結果を表3に示す。
【0432】
上記表3に示すように、本発明の製造方法により得られる樹脂を含むレジスト組成物により、ラフネス性能と耐エッチング性能とに優れるパターンを形成することが可能であることが分かる。
一方で、比較例によれば、これらの性能が不十分であった。