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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172752
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】研削装置及び被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20221110BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20221110BHJP
   B24B 47/20 20060101ALI20221110BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20221110BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20221110BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B24B7/04 B
B24B41/06 L
B24B47/20
B24B49/10
B24B49/16
H01L21/304 631
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078923
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】宮本 弘樹
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA16
3C034CB01
3C034CB14
3C034DD07
3C034DD10
3C043BA02
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA01
5F057AA05
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB07
5F057BB08
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB40
5F057BC06
5F057BC10
5F057CA14
5F057DA11
5F057EB16
5F057EB18
5F057FA13
5F057GA03
5F057GA27
5F057GB03
5F057GB04
5F057GB25
(57)【要約】
【課題】適切な加工送り速度で被加工物を研削することが可能な研削装置を提供する。
【解決手段】被加工物を研削する研削装置であって、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、スピンドルを有しスピンドルの先端部に装着された研削ホイールでチャックテーブルによって保持された被加工物を研削する研削ユニットと、チャックテーブルと研削ユニットとを保持面と平行な加工送り方向に沿って所定の加工送り速度で相対的に移動させる移動機構と、被加工物の研削中に研削ホイールにかかる負荷に対応する値を測定する加工負荷測定ユニットと、加工負荷測定ユニットによって測定された値に応じて加工送り速度を調整する制御ユニットと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研削する研削装置であって、
該被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
スピンドルを有し該スピンドルの先端部に装着された研削ホイールで該チャックテーブルによって保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、
該チャックテーブルと該研削ユニットとを該保持面と平行な加工送り方向に沿って所定の加工送り速度で相対的に移動させる移動機構と、
該被加工物の研削中に該研削ホイールにかかる負荷に対応する値を測定する加工負荷測定ユニットと、
該加工負荷測定ユニットによって測定された値に応じて該加工送り速度を調整する制御ユニットと、を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、該加工負荷測定ユニットによって測定された値が許容範囲の上限値を超える場合に、該加工送り速度を減少させることを特徴とする請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
該制御ユニットは、該加工負荷測定ユニットによって測定された値が許容範囲の下限値未満である場合に、該加工送り速度を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の研削装置。
【請求項4】
該移動機構は、該チャックテーブルに連結されたボールねじと、該ボールねじを回転させるボールねじモータと、を含み、
該加工負荷測定ユニットは、該ボールねじモータの電流値を測定し、
該制御ユニットは、該ボールねじモータの電流値に応じて該加工送り速度を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の研削装置。
【請求項5】
該研削ユニットは、該スピンドルを回転させるスピンドルモータを含み、
該加工負荷測定ユニットは、該スピンドルモータの電流値を測定し、
該制御ユニットは、該スピンドルモータの電流値に応じて該加工送り速度を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の研削装置。
【請求項6】
研削装置を用いて被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、
該研削装置は、該被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、スピンドルを有し該スピンドルの先端部に装着された研削ホイールで該チャックテーブルによって保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、を備え、
該被加工物を該保持面で保持する保持ステップと、
該保持面と平行な加工送り方向において該被加工物と該研削ホイールに含まれる研削砥石とが互いに離隔し、且つ、該研削砥石の下面が該被加工物の上面から所定の距離下方に位置付けられるように、該チャックテーブルと該研削ユニットとの位置関係を調節する準備ステップと、
該研削ホイールを回転させつつ該被加工物と該研削ホイールとを該加工送り方向に沿って所定の加工送り速度で相対的に移動させ、該研削砥石によって該被加工物を一端側から他端側まで研削する研削ステップと、を含み、
該研削ステップでは、該被加工物の研削中に該研削ホイールにかかる負荷に対応する値を測定し、該値に応じて該加工送り速度を調整することを特徴とする被加工物の研削方法。
【請求項7】
該研削ステップでは、該値が許容範囲の上限値を超える場合に該加工送り速度を減少させることを特徴とする請求項6に記載の被加工物の研削方法。
【請求項8】
該研削ステップでは、該値が許容範囲の下限値未満である場合に該加工送り速度を増加させることを特徴とする請求項6又は7に記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を研削する研削装置、及び、研削装置を用いて被加工物を研削する被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、互いに交差する複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
近年では、電子機器の小型化に伴い、デバイスチップに薄型化が求められている。そこで、分割前のウェーハを研削装置で研削して薄化する工程が実施されることがある。研削装置は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、被加工物を研削する研削ユニットとを備えており、研削ユニットには研削砥石を含む研削ホイールが装着される。研削装置は、研削ホイールを回転させて研削砥石を被加工物に接触させることにより、被加工物を研削する。
【0004】
研削装置を用いてウェーハ等の被加工物を研削する際には、チャックテーブルによって保持された被加工物の中心が研削砥石の軌跡と重なるように、チャックテーブルと研削ユニットとの位置関係が調節される。そして、チャックテーブルと研削ホイールとをそれぞれ回転させながら研削ホイールをチャックテーブルの保持面に向かって下降させると、研削砥石の下面が被加工物の上面側に接触して被加工物が研削される。このような研削方式は、インフィード研削と呼ばれる。
【0005】
一方、被加工物の研削には、クリープフィード研削と称される研削方式が用いられることもある。クリープフィード研削では、研削砥石が被加工物の外側に位置付けられ、且つ、研削砥石の下面が被加工物の上面よりも下方に位置付けられるように、チャックテーブルと研削ユニットとの位置関係が調節される。そして、研削ホイールを回転させつつチャックテーブルを保持面と平行な加工送り方向(水平方向)に沿って移動させる。これにより、被加工物の上面側が研削砥石によって被加工物の側面から円弧状に削り取られ、被加工物が研削される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-28550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クリープフィード研削では、研削砥石が被加工物の側面に衝突するため、研削砥石には加工送り方向と平行な横方向の力(横負荷)がかかる。そして、被加工物の研削時に研削砥石に大きな横負荷が作用すると、研削砥石の破損(折れ等)が発生することがある。
【0008】
また、例えばシリコンウェーハのような円盤状の被加工物にクリープフィード研削を施す場合には、加工送りが進行するにつれて被加工物のうち研削砥石と接触する領域の面積が徐々に増加し、研削砥石にかかる横負荷の大きさが変化する。そのため、被加工物の全体を同一のコンディションで研削することが難しく、被加工物の被研削面に不規則なパターン(濃淡)を有する加工痕(ソーマーク)が残存しやすい。その結果、研削後の被加工物の表面粗さが不均一になりやすくなる。
【0009】
なお、研削砥石に作用する横負荷は、加工送り速度が大きいほど増大する。そのため、加工送り速度を低く設定して研削砥石に作用する横負荷を低減すると、研削砥石の破損が生じにくくなるとともに、被加工物の被研削面に不規則な加工痕が形成されにくくなる。しかしながら、加工送り速度を低速に維持すると、被加工物の研削に要する時間が増大し、加工効率が低下してしまう。
【0010】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、適切な加工送り速度で被加工物を研削することが可能な研削装置、及び、該研削装置を用いた被加工物の研削方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、被加工物を研削する研削装置であって、該被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、スピンドルを有し該スピンドルの先端部に装着された研削ホイールで該チャックテーブルによって保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、該チャックテーブルと該研削ユニットとを該保持面と平行な加工送り方向に沿って所定の加工送り速度で相対的に移動させる移動機構と、該被加工物の研削中に該研削ホイールにかかる負荷に対応する値を測定する加工負荷測定ユニットと、該加工負荷測定ユニットによって測定された値に応じて該加工送り速度を調整する制御ユニットと、を備える研削装置が提供される。
【0012】
なお、好ましくは、該制御ユニットは、該加工負荷測定ユニットによって測定された値が許容範囲の上限値を超える場合に、該加工送り速度を減少させる。また、好ましくは、該制御ユニットは、該加工負荷測定ユニットによって測定された値が許容範囲の下限値未満である場合に、該加工送り速度を増加させる。
【0013】
また、好ましくは、該移動機構は、該チャックテーブルに連結されたボールねじと、該ボールねじを回転させるボールねじモータと、を含み、該加工負荷測定ユニットは、該ボールねじモータの電流値を測定し、該制御ユニットは、該ボールねじモータの電流値に応じて該加工送り速度を調整する。また、好ましくは、該研削ユニットは、該スピンドルを回転させるスピンドルモータを含み、該加工負荷測定ユニットは、該スピンドルモータの電流値を測定し、該制御ユニットは、該スピンドルモータの電流値に応じて該加工送り速度を調整する。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、研削装置を用いて被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、該研削装置は、該被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、スピンドルを有し該スピンドルの先端部に装着された研削ホイールで該チャックテーブルによって保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、を備え、該被加工物を該保持面で保持する保持ステップと、該保持面と平行な加工送り方向において該被加工物と該研削ホイールに含まれる研削砥石とが互いに離隔し、且つ、該研削砥石の下面が該被加工物の上面から所定の距離下方に位置付けられるように、該チャックテーブルと該研削ユニットとの位置関係を調節する準備ステップと、該研削ホイールを回転させつつ該被加工物と該研削ホイールとを該加工送り方向に沿って所定の加工送り速度で相対的に移動させ、該研削砥石によって該被加工物を一端側から他端側まで研削する研削ステップと、を含み、該研削ステップでは、該被加工物の研削中に該研削ホイールにかかる負荷に対応する値を測定し、該値に応じて該加工送り速度を調整する被加工物の研削方法が提供される。
【0015】
なお、好ましくは、該研削ステップでは、該値が許容範囲の上限値を超える場合に該加工送り速度を減少させる。また、好ましくは、該研削ステップでは、該値が許容範囲の下限値未満である場合に該加工送り速度を増加させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る研削装置は、被加工物の研削中に研削ホイールにかかる負荷に対応する値を測定する加工負荷測定ユニットと、加工負荷測定ユニットによって測定された値に応じて加工送り速度を調整する制御ユニットとを備える。これにより、研削ホイールにかかる負荷に応じて加工送り速度を適度に増減させることが可能となり、加工送り速度を必要以上に低速にすることなく研削ホイールに過度な加工負荷がかかることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】研削装置を示す一部断面側面図である。
図2図2(A)は準備ステップにおけるチャックテーブル及び研削ユニットを示す側面図であり、図2(B)は研削ステップにおけるチャックテーブル及び研削ユニットを示す側面図である。
図3】制御ユニットを示すブロック図である。
図4】加工送り速度の調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る研削装置の構成例について説明する。図1は、研削装置2を示す一部断面側面図である。なお、図1において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向、前後方向)とY軸方向(第2水平方向、左右方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0019】
研削装置2は、研削装置2を構成する各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。基台4の上面側には、直方体状の開口4aが設けられている。そして、開口4aの内側には、研削装置2による加工の対象となる被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)6が設けられている。
【0020】
チャックテーブル6の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面6aを構成している。保持面6aは、チャックテーブル6の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0021】
また、基台4の内側には、チャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させる移動機構(移動ユニット)8が設けられている。移動機構8は、チャックテーブル6に連結されたボールねじ10を備える。ボールねじ10は、X軸方向に沿って配置されており、チャックテーブル6又はチャックテーブル6を支持する移動プレート(不図示)に設けられたナット部(不図示)に螺合されている。また、ボールねじ10の端部には、ボールねじ10を回転させるボールねじモータ12が連結されている。ボールねじモータ12としては、例えばパルスモータが用いられる。
【0022】
ボールねじモータ12によってボールねじ10を所定の回転速度で回転させると、チャックテーブル6がボールねじ10の回転速度に対応する加工送り速度でX軸方向に沿って移動する。これにより、チャックテーブル6と後述の研削ユニット28とが保持面6aと平行な加工送り方向に沿って所定の加工送り速度で相対的に移動する。
【0023】
また、チャックテーブル6には、チャックテーブル6を保持面6aと概ね垂直な回転軸(Z軸方向と概ね平行な回転軸)の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。すなわち、チャックテーブル6の回転軸は保持面6aと垂直な方向に沿って設定されている。
【0024】
チャックテーブル6及び移動機構8の後方(図1の紙面右側)には、直方体状の支持構造14が設けられている。そして、支持構造14の表面側(前面側)には、移動機構(移動ユニット)16が設けられている。
【0025】
移動機構16は、支持構造14の表面側に固定された一対のガイドレール18を備える。一対のガイドレール18は、Y軸方向において互いに離隔した状態で、Z軸方向に沿って配置されている。また、一対のガイドレール18には、平板状の移動プレート20がガイドレール18に沿ってスライド可能に装着されている。
【0026】
移動プレート20の裏面側(背面側)には、ナット部22が設けられている。また、一対のガイドレール18の間にはボールねじ24がZ軸方向に沿って設けられており、ボールねじ24はナット部22に螺合されている。そして、ボールねじ24の端部には、ボールねじ24を回転させるボールねじモータ26が連結されている。ボールねじモータ26としては、例えばパルスモータが用いられる。
【0027】
移動プレート20の表面側(前面側)には、被加工物11を研削する研削ユニット28が装着されている。研削ユニット28は、移動プレート20の表面側に固定された中空の円柱状の支持部材30を備える。支持部材30には、円柱状のハウジング32が収容されている。ハウジング32の下面側は、ゴム等でなる緩衝部材34を介して支持部材30の底面によって支持されている。
【0028】
ハウジング32には、Z軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル36が収容されている。スピンドル36の先端部(下端部、一端部)は、ハウジング32から露出しており、支持部材30の底部に設けられた開口を介して支持部材30の下面から下方に突出している。また、スピンドル36の基端部(上端部、他端部)には、スピンドル36を回転させるスピンドルモータ38が連結されている。
【0029】
スピンドル36の先端部には、金属等でなる円盤状のマウント40が固定されている。そして、マウント40の下面側に、被加工物11を研削する環状の研削ホイール42が装着される。例えば研削ホイール42は、ボルト等の固定具(不図示)によってマウント40に固定される。これにより、スピンドル36の先端部に研削ホイール42が装着される。
【0030】
研削ホイール42は、アルミニウム、ステンレス等の金属でなりマウント40と概ね同径に形成された環状の基台44を備え、基台44の上面側がマウント40の下面側に固定される。また、基台44の下面側には複数の研削砥石46が固定されている。例えば、複数の直方体状の研削砥石46が、基台44の周方向に沿って概ね等間隔で環状に配列される。研削砥石46は、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等でなる砥粒を、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等の結合材(ボンド材)で固定することによって形成される。ただし、研削砥石46の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。また、研削砥石46の数も任意に設定できる。
【0031】
ボールねじモータ26によってボールねじ24を所定の回転速度で回転させると、移動プレート20がボールねじ24の回転速度に対応する速度でガイドレール18に沿って移動(昇降)する。これにより、チャックテーブル6と研削ユニット28とが、保持面6aと垂直な方向(Z軸方向)に沿って所定の速度で相対的に移動する。
【0032】
また、研削ホイール42は、スピンドルモータ38からスピンドル36及びマウント40を介して伝達される動力により、チャックテーブル6の保持面6aと概ね垂直な回転軸(Z軸方向と概ね平行な回転軸)の周りを回転する。すなわち、研削ホイール42の回転軸は保持面6aと垂直な方向に沿って設定されている。
【0033】
チャックテーブル6によって保持された被加工物11の上面側に回転する研削砥石46を接触させると、被加工物11の上面側が削り取られる。これにより、被加工物11に研削加工が施され、被加工物11が薄化される。
【0034】
また、研削装置2は、被加工物11の研削中に研削ホイール42にかかる負荷(加工負荷)に対応する値(負荷対応値)を測定する加工負荷測定ユニットを備える。図1には、移動機構8に接続された加工負荷測定ユニット48と、研削ユニット28に接続された加工負荷測定ユニット50とを図示している。
【0035】
例えば、加工負荷測定ユニット48はボールねじモータ12の電流値を測定する電流計であり、加工負荷測定ユニット50はスピンドルモータ38の電流値を測定する電流計である。なお、加工負荷測定ユニット48はボールねじモータ12に内蔵されていてもよく、加工負荷測定ユニット50はスピンドルモータ38に内蔵されていてもよい。
【0036】
ボールねじモータ12でボールねじ10を回転させてチャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させている間に研削砥石46が被加工物11に接触すると、被加工物11及び研削ホイール42に負荷がかかる。そして、チャックテーブル6の移動速度を維持するために必要なボールねじモータ12のトルク及び電流値が増大する。その結果、加工負荷測定ユニット48によって測定されるボールねじモータ12の電流値が変化する。
【0037】
また、スピンドルモータ38でスピンドル36を回転させている間に研削砥石46が被加工物11に接触すると、被加工物11及び研削ホイール42に負荷がかかる。そして、スピンドル36の回転速度を維持するために必要なスピンドルモータ38のトルク及び電流値が増大する。その結果、加工負荷測定ユニット50によって測定されるスピンドルモータ38の電流値が変化する。
【0038】
上記のように、被加工物11の研削中に研削ホイール42にかかる負荷の変化は、ボールねじモータ12及びスピンドルモータ38の電流値に反映される。そのため、加工負荷測定ユニット48,50によって測定される電流値は、研削ホイール42の負荷対応値に相当する。
【0039】
なお、研削装置2に搭載される加工負荷測定ユニットの種類に制限はない。例えば研削装置2は、チャックテーブル6にかかる負荷を測定する荷重測定器(ロードセル)や、スピンドル36にかかる負荷を測定する荷重測定器(ロードセル)を有していてもよい。この場合、荷重測定器によって測定される荷重値が負荷対応値に相当する。また、ボールねじモータ26に接続された電流計を加工負荷測定ユニットとして用いることもできる。
【0040】
研削装置2の各構成要素(チャックテーブル6、移動機構8、移動機構16、研削ユニット28、加工負荷測定ユニット48,50等)は、研削装置2を制御する制御ユニット(制御部、制御装置)52に接続されている。制御ユニット52は、研削装置2の構成要素の動作を制御する制御信号を生成して、研削装置2の稼働を制御する。
【0041】
例えば制御ユニット52は、コンピュータによって構成され、研削装置2の稼働に必要な演算を行う演算部と、研削装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを含む。演算部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0042】
上記の研削装置2によって被加工物11が研削される。例えば被加工物11は、シリコン等の半導体でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを含む。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって、複数の矩形状の領域に区画されている。そして、ストリートによって区画された複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス(不図示)が形成されている。
【0043】
被加工物11をストリートに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。また、被加工物11の分割前に、被加工物11の裏面11b側を研削装置2によって研削して被加工物11を薄化することにより、薄型化されたデバイスチップが得られる。
【0044】
なお、被加工物11の種類、材質、大きさ、形状、構造等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる円盤状のウェーハ(基板)であってもよい。また、被加工物11は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。
【0045】
本実施形態においては、チャックテーブル6と研削ホイール42とを保持面6aと平行な加工送り方向に沿って相対的に移動させて被加工物11を研削するクリープフィード研削を実施することにより、被加工物11を薄化する。以下、研削装置2を用いた被加工物の研削方法の具体例を説明する。
【0046】
まず、被加工物11をチャックテーブル6の保持面6aで保持する(保持ステップ)。例えば被加工物11は、表面11a側が保持面6aに対向し、裏面11b側が上方に露出するように、チャックテーブル6上に配置される。この状態で保持面6aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がチャックテーブル6によって吸引保持される。なお、被加工物11の表面11a側には、樹脂等でなり被加工物11の表面11a側(デバイス等)を保護する保護シートが貼付されていてもよい。この場合には、被加工物11が保護シートを介してチャックテーブル6の保持面6aで保持される。
【0047】
次に、チャックテーブル6と研削ユニット28との位置関係を調節する(準備ステップ)。図2(A)は、準備ステップにおけるチャックテーブル6及び研削ユニット28を示す側面図である。
【0048】
準備ステップでは、保持面6aと平行な加工送り方向(X軸方向)において被加工物11と研削砥石46とが互いに離隔し、且つ、研削砥石46の下面が被加工物11の上面(裏面11b)から所定の距離下方に位置付けられるように、チャックテーブル6と研削ユニット28との位置関係が調節される。
【0049】
具体的には、まず、被加工物11が研削ホイール42と重ならず研削ホイール42の前方(図2(A)における紙面左側)に配置されるように、チャックテーブル6のX軸方向における位置が移動機構8(図1参照)によって調節される。また、研削砥石46の下面が被加工物11の上面よりも下方に位置付けられるように、研削ユニット28のZ軸方向における位置が移動機構16(図1参照)によって調節される。このときの被加工物11の上面と研削砥石46の下面との高さ位置(Z軸方向における位置)の差ΔHが、後述の研削ステップにおける被加工物11の研削量(研削前後の被加工物11の厚さの差)の目標値に相当する。
【0050】
次に、研削ホイール42を回転させつつチャックテーブル6と研削ユニット28とを加工送り方向(X軸方向)に沿って相対的に移動させ、研削砥石46によって被加工物11を一端側から他端側まで研削する(研削ステップ)。図2(B)は、研削ステップにおけるチャックテーブル6及び研削ユニット28を示す側面図である。
【0051】
研削ステップでは、被加工物11をクリープフィード研削によって研削する。具体的には、まず、スピンドルモータ38(図1参照)によってスピンドル36を回転させることにより、研削ホイール42をチャックテーブル6の保持面6aと概ね垂直な回転軸の周りで回転させる。研削ホイール42の回転数は、例えば1000rpm以上3000rpm以下に設定される。
【0052】
そして、研削ホイール42が回転し、且つ、チャックテーブル6が回転していない状態で、チャックテーブル6を移動機構8(図1参照)によって移動させる。具体的には、ボールねじモータ12によってボールねじ10を所定の回転速度で回転させることにより、チャックテーブル6を所定の速度でX軸方向に沿って移動させる。これにより、チャックテーブル6と研削ホイール42とが加工送り方向に沿って所定の加工送り速度で相対的に移動して接近する。加工送り速度(チャックテーブル6の移動速度)は、例えば1mm/s以上20mm/s以下に設定される。
【0053】
チャックテーブル6が移動して被加工物11の一端(被加工物11の移動方向における前端、図2(B)における紙面右端)が研削砥石46の軌道に到達すると、被加工物11の一端部が研削砥石46によって削り取られる。そして、チャックテーブル6は、被加工物11の他端(被加工物11の移動方向における後端、図2(B)における紙面左端)が研削砥石46の軌跡と重なる位置に配置されるまで、X軸方向に沿って移動する。その結果、被加工物11が研削砥石46によって一端側から他端側まで研削され、被加工物11の全体が薄化される。
【0054】
なお、研削ユニット28の内部又は近傍には、純水等の液体(研削液)を供給するための研削液供給路(不図示)が設けられている。そして、被加工物11が研削砥石46によって研削される際には、研削液が被加工物11及び研削砥石46に供給される。これにより、被加工物11及び研削砥石46が冷却されるとともに、研削加工によって発生した屑(研削屑)が洗い流される。
【0055】
上記のように、クリープフィード研削ではチャックテーブル6が保持面6aと平行な加工送り方向(水平方向)に沿って移動し、研削砥石46が被加工物11の側面に衝突する。そのため、研削砥石46には加工送り方向と平行な横方向の力(横負荷)がかかる。そして、被加工物11の研削時に研削砥石46に大きな横負荷が作用すると、研削砥石46の破損(折れ等)が発生することがある。
【0056】
また、例えばシリコンウェーハのような円盤状の被加工物11にクリープフィード研削を施す場合には、加工送りが進行するにつれて被加工物11のうち研削砥石46と接触する領域の面積が徐々に増加し、研削砥石46にかかる横負荷の大きさが変化する。そのため、被加工物11の全体を同一のコンディションで研削することが難しく、被加工物11の被研削面(裏面11b)に不規則なパターン(濃淡)を有する加工痕(ソーマーク)が残存しやすい。その結果、研削後の被加工物11の表面粗さが不均一になりやすくなる。
【0057】
被加工物11に作用する横負荷は、加工送り速度が大きいほど増大する。そのため、加工送り速度を低く設定して研削砥石46にかかる横負荷を低減すると、研削砥石46の破損が生じにくくなるとともに、被加工物11に不規則な加工痕が形成されにくくなる。しかしながら、加工送り速度を低速に維持すると、被加工物11の研削に要する時間が増大し、加工効率が低下してしまう。
【0058】
そこで、研削ステップでは、被加工物11の研削中に研削ホイール42にかかる負荷に対応する値(負荷対応値)を測定し、負荷対応値に応じて加工送り速度を調整する。これにより、研削ホイール42にかかる負荷に応じて加工送り速度が適度に増減する。その結果、加工送り速度を必要以上に低速にすることなく研削ホイール42に過度な加工負荷がかかることを防止できる。
【0059】
研削ステップにおける加工送り速度は、制御ユニット52によって制御される。図3は、制御ユニット52を示すブロック図である。図3には、制御ユニット52の機能的な構成を示すブロックに加えて、移動機構8のボールねじモータ12及び加工負荷測定ユニット48,50を示すブロックを図示している。
【0060】
制御ユニット52は、加工送り速度を調整する速度調整部60と、速度調整部60による加工送り速度の調整に用いられる情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部70とを含む。そして、制御ユニット52からボールねじモータ12に制御信号が入力されてボールねじ10(図1参照)の回転速度が制御されることにより、加工送り速度が調整される。
【0061】
速度調整部60は、研削ホイール42(図1等参照)にかかる負荷に対応する値(負荷対応値)と閾値とを比較する負荷比較部62を含む。負荷比較部62には、加工負荷測定ユニット48,50によって測定された測定値が負荷対応値として入力される。
【0062】
具体的には、加工負荷測定ユニット48がボールねじモータ12の電流値を測定する電流計である場合には、加工負荷測定ユニット48から負荷比較部62にボールねじモータ12の電流値が入力される。また、加工負荷測定ユニット50がスピンドルモータ38(図1参照)の電流値を測定する電流計である場合には、加工負荷測定ユニット50から負荷比較部62にスピンドルモータ38の電流値が入力される。以下では代表例として、加工負荷測定ユニット48から負荷比較部62に負荷対応値(ボールねじモータ12の電流値)が入力される場合の制御ユニット52の動作について説明する。
【0063】
また、記憶部70は、負荷対応値の閾値を記憶する閾値記憶部72を含む。例えば閾値記憶部72には、負荷対応値の許容範囲を定める上限値及び下限値が閾値として記憶される。加工負荷測定ユニット48から負荷比較部62にボールねじモータ12の電流値が入力される場合には、ボールねじモータ12の電流値の上限値及び下限値が閾値として閾値記憶部72に記憶される。
【0064】
加工負荷測定ユニット48から負荷比較部62に負荷対応値が入力されると、閾値記憶部72から閾値(負荷対応値の上限値及び下限値)が読み出されて負荷比較部62に入力される。そして、負荷比較部62は負荷対応値と閾値とを比較することにより、負荷対応値が許容範囲内であるか、許容範囲の上限値を超えているか、又は許容範囲の下限値未満であるかを判定する。
【0065】
また、速度調整部60は、加工送り速度を決定する速度決定部64を含む。速度決定部64には負荷比較部62による判定の結果が入力され、速度決定部64は負荷比較部62の判定結果に基づいて被加工物11の研削に適した加工送り速度を決定する。
【0066】
具体的には、記憶部70は、加工送り速度の決定に用いられる情報(速度情報)を記憶する速度情報記憶部74を含む。例えば速度情報記憶部74には、現在の加工送り速度と、加工送り速度の補正値(増減値)とが記憶される。負荷比較部62から速度決定部64に判定結果が入力されると、速度情報記憶部74から速度情報が読み出されて速度決定部64に入力される。そして、速度決定部64は、負荷比較部62の判定結果と速度情報とに基づいて加工送り速度を決定する。
【0067】
例えば、負荷対応値が許容範囲の上限値を超えていると判定された場合には、速度決定部64は現在の加工送り速度から補正値を差し引いた値を変更後の加工送り速度に設定する。これにより、加工送り速度が補正値分だけ下がる。一方、負荷対応値が許容範囲の下限値未満であると判定された場合には、速度決定部64は現在の加工送り速度に補正値を加算した値を変更後の加工送り速度に設定する。これにより、加工送り速度が補正値分だけ上がる。
【0068】
加工送り速度の補正値(増減値)は、被加工物11の研削に支障がない範囲内で適宜設定される。例えば、加工送り速度の補正値は、現在の加工送り速度の1/10以上1/2以下に設定できる。また、負荷対応値が許容範囲内である場合には、現在の加工送り速度が維持される。
【0069】
なお、速度情報記憶部74に記憶される速度情報に制限はない。例えば速度情報記憶部74には、負荷対応値の取り得る数値範囲と、負荷対応値がその数値範囲内である場合に適した加工送り速度とを示すデータセットを複数セット含むテーブルが、速度情報として記憶されてもよい。この場合には、測定された負荷対応値が属する数値範囲に対応する加工送り速度が、変更後の加工送り速度に設定される。
【0070】
また、速度調整部60は、ボールねじモータ12を制御するモータ制御部66を含む。モータ制御部66には、速度決定部64によって決定された加工送り速度が入力される。そして、モータ制御部66はボールねじモータ12に制御信号を出力し、チャックテーブル6(図1参照)の移動速度が速度決定部64によって決定された加工送り速度と一致するように、ボールねじモータ12の回転速度(ボールねじ10の回転速度)を制御する。
【0071】
このようにして、加工送り速度が研削ホイール42(図1等参照)にかかる負荷に応じて調整される。なお、上記では加工負荷測定ユニット48から速度調整部60に負荷対応値(ボールねじモータ12の電流値)が入力される場合について説明したが、加工負荷測定ユニット50から速度調整部60に負荷対応値(スピンドルモータ38の電流値)が入力される場合にも、同様に加工送り速度が調整される。この場合には、閾値記憶部72にスピンドルモータ38の電流値の上限値及び下限値が閾値として記憶され、負荷比較部62はスピンドルモータ38の電流値と閾値とを比較する。
【0072】
次に、研削ステップにおける加工送り速度の調整方法の具体例について説明する。図4は、加工送り速度の調整方法を示すフローチャートである。以下、主に図3及び図4を参照して、加工送り速度を調整する手順について説明する。
【0073】
研削装置2(図1参照)で被加工物11を研削する際は、まず、前述の通り保持ステップ及び準備ステップが実施される。その後、研削ホイール42を回転させつつチャックテーブル6と研削ユニット28とを加工送り方向に沿って相対的に移動させる(図2(B)参照)。これにより、被加工物11の研削(研削ステップ)が開始される(ステップS1)。
【0074】
被加工物11の研削が開始されると、加工負荷測定ユニットによる負荷対応値の測定も開始される(ステップS2)。例えば、加工負荷測定ユニット48によってボールねじモータ12の電流値が測定される。又は、加工負荷測定ユニット50によってスピンドルモータ38の電流値が測定される。そして、測定された負荷対応値が制御ユニット52の負荷比較部62に入力される。
【0075】
負荷比較部62は、加工負荷測定ユニット48,50から入力された負荷対応値と、閾値記憶部72に記憶されている閾値とを比較する(ステップS3)。そして、負荷対応値が許容範囲内である場合には(ステップS3でYES)、現在の加工送り速度が適切であると判定され、加工送り速度が維持される(ステップS4)。一方、負荷対応値が許容範囲外である場合には(ステップS3でNO)、現在の加工送り速度が不適切であると判定され、加工送り速度が変更される。
【0076】
具体的には、負荷対応値が許容範囲の上限値を超えている場合には(ステップS5でYES)、速度決定部64によって現在の加工送り速度よりも小さい変更後の加工送り速度が決定される。そして、モータ制御部66はボールねじモータ12を制御して、チャックテーブル6の移動速度を変更後の加工送り速度と一致させる。これにより、加工送り速度が下がり(ステップS6)、研削ホイール42(図1等参照)にかかる加工負荷が低減される。
【0077】
一方、負荷対応値が許容範囲の下限値未満である場合には(ステップS5でNO)、速度決定部64によって現在の加工送り速度よりも大きい変更後の加工送り速度が決定される。そして、モータ制御部66はボールねじモータ12を制御して、チャックテーブル6の移動速度を変更後の加工送り速度と一致させる。これにより、加工送り速度が上がり(ステップS7)、被加工物11の研削に要する時間が短縮される。
【0078】
加工送り速度の調整後は、被加工物11の加工が続行され(ステップS8でNO)、引き続き負荷対応値の測定と加工送り速度の調整とが継続される。そして、被加工物11の研削が完了すると(ステップS8でYES)、加工送りが停止される。
【0079】
上記の研削装置2による被加工物11の研削は、制御ユニット52で研削装置2(図1等参照)の各構成要素の動作を制御することによって実現される。具体的には、制御ユニット52のメモリ(記憶部70)には、保持ステップ、準備ステップ、研削ステップを順に実施するために必要な研削装置2の各構成要素の一連の動作を記述するプログラムが記憶されている。そして、被加工物11の研削を実行する際には、制御ユニット52は該プログラムを実行し、研削装置2の各構成要素に制御信号を順次出力する。これにより、研削装置2の稼働が制御され、本実施形態に係る被加工物の研削方法が自動で実施される。
【0080】
以上の通り、本実施形態に係る研削装置は、被加工物11の研削中に研削ホイール42にかかる負荷に対応する値を測定する加工負荷測定ユニット48,50と、加工負荷測定ユニット48,50によって測定された値に応じて加工送り速度を調整する制御ユニット52とを備える。これにより、研削ホイール42にかかる負荷に応じて加工送り速度を適度に増減させることが可能となり、加工送り速度を必要以上に低速にすることなく研削ホイール42に過度な加工負荷がかかることを防止できる。
【0081】
なお、本実施形態に係る被加工物の研削方法において、クリープフィード研削(準備ステップ及び研削ステップ)の実施回数は、被加工物11の材質、研削量等に応じて適宜設定できる。すなわち、準備ステップ及び研削ステップは2回以上実施されてもよい。また、研削ステップにおける加工送り速度の調整の回数(頻度)も自由に設定できる。
【0082】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0083】
11 被加工物
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
2 研削装置
4 基台
4a 開口
6 チャックテーブル(保持テーブル)
6a 保持面
8 移動機構(移動ユニット)
10 ボールねじ
12 ボールねじモータ
14 支持構造
16 移動機構(移動ユニット)
18 ガイドレール
20 移動プレート
22 ナット部
24 ボールねじ
26 ボールねじモータ
28 研削ユニット
30 支持部材
32 ハウジング
34 緩衝部材
36 スピンドル
38 スピンドルモータ
40 マウント
42 研削ホイール
44 基台
46 研削砥石
48,50 加工負荷測定ユニット
52 制御ユニット(制御部、制御装置)
60 速度調整部
62 負荷比較部
64 速度決定部
66 モータ制御部
70 記憶部
72 閾値記憶部
74 速度情報記憶部
図1
図2
図3
図4