(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172822
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221110BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079071
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】多賀 稜
【テーマコード(参考)】
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA02
5F057BA12
5F057CA18
5F057DA01
5F057DA11
5F057EC02
5F057FA15
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA43
5F131CA06
5F131EA05
5F131EB46
(57)【要約】
【課題】Warpが良好でありかつナノトポグラフィが良好なウェーハを製造できるウェーハの製造方法を提供すること。
【解決手段】保持手段によりウェーハを押圧してウェーハの第一主面を樹脂に接触させることと、ウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げながら保持手段から保持手段と第二主面との間にエアー噴射を行うことで、ウェーハの第二主面の保持手段による保持を開放した状態で、ウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げることと、エアー噴射を行いながらウェーハと保持手段とを離間させることと、ウェーハと保持手段との離間後、樹脂を硬化させて平坦化樹脂層を含む複合体を得ることと、平坦化樹脂層を基準面として複合体を吸着保持した状態でウェーハの第二主面を研削または研磨することと、ウェーハの第二主面を吸着保持した状態でウェーハの第一主面を研削または研磨することを含むウェーハの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの製造方法であって、
第一主面及び前記第一主面とは反対側の第二主面を有するウェーハを準備することと、
前記ウェーハの前記第二主面を保持手段によって保持することと、
前記ウェーハの前記第一主面と向き合うように、可塑状態の樹脂を配置することと、
前記保持手段により前記ウェーハを押圧して、前記ウェーハの前記第一主面を前記樹脂に接触させることと、
前記ウェーハの前記第一主面上に前記樹脂を押し広げながら、前記保持手段から該保持手段と前記第二主面との間にエアー噴射を行うことで、前記ウェーハの前記第二主面の前記保持手段による保持を開放した状態で、前記ウェーハの前記第一主面上に前記樹脂を押し広げることと、
前記エアー噴射を行いながら前記ウェーハと前記保持手段との間に隙間を形成して、前記ウェーハと前記保持手段とを離間させることと、
前記ウェーハと前記保持手段との前記離間後、前記樹脂を硬化させて平坦化樹脂層とし、前記ウェーハと前記ウェーハの前記第一主面に接する前記平坦化樹脂層とを含む複合体を得ることと、
前記平坦化樹脂層を基準面として前記複合体を吸着保持し、その状態で前記ウェーハの前記第二主面を研削または研磨することと、
前記ウェーハから前記平坦化樹脂層を除去することと、
前記ウェーハの前記第二主面を吸着保持し、その状態で前記ウェーハの前記第一主面を研削または研磨することを含むことを特徴とするウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記ウェーハと前記保持手段との前記離間において、前記保持手段の高さを変えず待機することで、前記樹脂の流動によって前記ウェーハと前記保持手段との間に前記隙間を形成し、前記隙間の形成を前記保持手段に加わった荷重値から把握することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記ウェーハと前記保持手段との前記離間において、前記保持手段の退避によって前記ウェーハと前記保持手段との間の前記隙間を形成することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの製造方法に関する。特に、本発明は、反りおよびナノトポグラフィが良好なウェーハを製造する被覆形成方法および平面研削技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板ウェーハには、反りが小さくて良好であり、特にWarpが小さくて良好であり、かつナノトポグラフィ(以下NT)と呼ばれる短い波長のうねりが小さくて良好であることも求められる。後者を達成するための技術として、ウェーハの片面に樹脂を被覆して研削する加工方法(例えば特許文献1~4)がある。
【0003】
例えば、特許文献2には、保持手段によって吸引保持されたウェーハの一方の面に液状樹脂を押し広げて液状樹脂の膜を形成した後、保持手段の吸引面から下方にエアーを噴出して、このエアーの噴出圧力でウェーハを吸引面から押し下げ、ウェーハを保持手段から確実に離脱させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献5には、樹脂の被覆を行う前のセットアップ時に、吸引口から気体を噴出しながら押圧部とステージとの間の距離を変化させた際の圧力変化を記憶することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-148866号公報
【特許文献2】特開2020-92161号公報
【特許文献3】特開2007-134371号公報
【特許文献4】特開2010-155298号公報
【特許文献5】特許第5670208号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された方法では、樹脂押圧時の保持手段(定盤)形状が樹脂厚み分布に転写され、加工後のウェーハ形状(反り)に影響を及ぼすことがあった。従来技術として、特許文献2には、樹脂押圧後(ウェーハを保持手段である上定盤から離反させた後)に音波を供給することで、ウェーハの変形要素を復元させる方法が開示されているが、樹脂押圧中に保持手段形状の転写を抑制する技術はなかった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、Warpが良好でありかつナノトポグラフィが良好なウェーハを製造できるウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、ウェーハの製造方法であって、
第一主面及び前記第一主面とは反対側の第二主面を有するウェーハを準備することと、
前記ウェーハの前記第二主面を保持手段によって保持することと、
前記ウェーハの前記第一主面と向き合うように、可塑状態の樹脂を配置することと、
前記保持手段により前記ウェーハを押圧して、前記ウェーハの前記第一主面を前記樹脂に接触させることと、
前記ウェーハの前記第一主面上に前記樹脂を押し広げながら、前記保持手段から該保持手段と前記第二主面との間にエアー噴射を行うことで、前記ウェーハの前記第二主面の前記保持手段による保持を開放した状態で、前記ウェーハの前記第一主面上に前記樹脂を押し広げることと、
前記エアー噴射を行いながら前記ウェーハと前記保持手段との間に隙間を形成して、前記ウェーハと前記保持手段とを離間させることと、
前記ウェーハと前記保持手段との前記離間後、前記樹脂を硬化させて平坦化樹脂層とし、前記ウェーハと前記ウェーハの前記第一主面に接する前記平坦化樹脂層とを含む複合体を得ることと、
前記平坦化樹脂層を基準面として前記複合体を吸着保持し、その状態で前記ウェーハの前記第二主面を研削または研磨することと、
前記ウェーハから前記平坦化樹脂層を除去することと、
前記ウェーハの前記第二主面を吸着保持し、その状態で前記ウェーハの前記第一主面を研削または研磨することを含むことを特徴とするウェーハの製造方法を提供する。
【0009】
本発明のウェーハの製造方法によれば、エアー噴射を行いながらウェーハの第二主面の保持手段による保持を開放した状態でウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げ、エアー噴射を行いながらウェーハと保持手段とを離間させ、この離間後に樹脂を硬化させることにより、保持手段の形状がウェーハに転写されることを抑制でき、その結果、Warpが良好でありかつナノトポグラフィが良好なウェーハを製造できる。
【0010】
前記ウェーハと前記保持手段との前記離間において、前記保持手段の高さを変えず待機することで、前記樹脂の流動によって前記ウェーハと前記保持手段との間に前記隙間を形成し、前記隙間の形成を前記保持手段に加わった荷重値から把握してもよい。
【0011】
例えば、エアー噴射をしながら保持手段の高さを変えずに待機することによって、ウェーハと保持手段との離間を行うことができる。
【0012】
或いは、前記ウェーハと前記保持手段との前記離間において、前記保持手段の退避によって前記ウェーハと前記保持手段との間の前記隙間を形成してもよい。
【0013】
このように、保持手段をウェーハに対して退避させることによって、ウェーハと保持手段との離間を行ってもよい。このようにすることで、比較的短時間で、ウェーハと保持手段との間の隙間を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のウェーハの製造方法であれば、保持手段の形状がウェーハに転写されることを抑制でき、その結果、Warpが小さくて良好でありかつナノトポグラフィが小さくて良好なウェーハを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のウェーハの製造方法の一例を示す概略フロー図である。
【
図2】本発明のウェーハの製造方法の他の一例を示す概略フロー図である。
【
図3】従来のウェーハの製造方法一例を示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、Warpが良好でありかつナノトポグラフィが良好なウェーハを製造できるウェーハの製造方法の開発が求められていた。
【0017】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、エアー噴射を行いながらウェーハの第二主面の保持手段による保持を開放した状態でウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げ、エアー噴射を行いながらウェーハと保持手段とを離間させ、この離間後に樹脂を硬化させることにより、保持手段の形状がウェーハに転写されることを抑制でき、その結果、Warpが良好でありかつナノトポグラフィが良好なウェーハを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
即ち、本発明は、ウェーハの製造方法であって、
第一主面及び前記第一主面とは反対側の第二主面を有するウェーハを準備することと、
前記ウェーハの前記第二主面を保持手段によって保持することと、
前記ウェーハの前記第一主面と向き合うように、可塑状態の樹脂を配置することと、
前記保持手段により前記ウェーハを押圧して、前記ウェーハの前記第一主面を前記樹脂に接触させることと、
前記ウェーハの前記第一主面上に前記樹脂を押し広げながら、前記保持手段から該保持手段と前記第二主面との間にエアー噴射を行うことで、前記ウェーハの前記第二主面の前記保持手段による保持を開放した状態で、前記ウェーハの前記第一主面上に前記樹脂を押し広げることと、
前記エアー噴射を行いながら前記ウェーハと前記保持手段との間に隙間を形成して、前記ウェーハと前記保持手段とを離間させることと、
前記ウェーハと前記保持手段との前記離間後、前記樹脂を硬化させて平坦化樹脂層とし、前記ウェーハと前記ウェーハの前記第一主面に接する前記平坦化樹脂層とを含む複合体を得ることと、
前記平坦化樹脂層を基準面として前記複合体を吸着保持し、その状態で前記ウェーハの前記第二主面を研削または研磨することと、
前記ウェーハから前記平坦化樹脂層を除去することと、
前記ウェーハの前記第二主面を吸着保持し、その状態で前記ウェーハの前記第一主面を研削または研磨することを含むことを特徴とするウェーハの製造方法である。
【0019】
一方で、特許文献1~5は、保持手段からエアー噴射を行いながらウェーハ上に樹脂を押し広げ、ウェーハと保持手段とを離間させることは記載も示唆もしていない。
【0020】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、図面においては、説明のために、研削前のウェーハの凹凸や、保持手段の反り等を誇張して示しているが、本発明のウェーハの製造方法において、研削前のウェーハの凹凸や保持手段の反りは、図示したほど大きいものに限定されるものではない。
【0021】
図1及び2は、それぞれ、本発明のウェーハの製造方法の例を示す概略フロー図である。
図2の例は、
図2(E)及び
図2(F)の工程が
図1(E)及び
図1(F)と異なる以外、
図1の例と同じである。以下では、
図1の例を代表として説明し、
図2の例については、
図2(E)及び
図2(F)の工程のみを説明する。
【0022】
まず、
図1(A)に示すように、第一主面1A及びこの第一主面1Aとは反対側の第二主面1Bを有するウェーハ1を準備する。準備するウェーハ1は特に限定されない。
【0023】
次に、
図1(B)に示すように、ウェーハ1の第二主面1Bを保持手段2によって保持する。この例では、ウェーハ1の第二主面1Bを保持手段としての上定盤2に真空吸着させて、保持する。上定盤2を上下に貫く貫通孔2aを通して真空吸引することにより、上定盤2がウェーハ1を真空吸着することができる。
【0024】
一方で、
図1(B)に示すように、ウェーハ1の第一主面1Aと向き合うように、可塑状態の樹脂5を配置する。この例では、平坦な面を有するガラス定盤3(下定盤)の上に光透過性フィルム4を敷き、その上に可塑状態、例えば液状の樹脂5を供給する。樹脂5は、硬化できるものであれば、特に限定されない。
【0025】
次に、
図1(C)に示すように、保持手段2によりウェーハ1を押圧して、ウェーハ1の第一主面1Aを樹脂5に接触させる。この例では、保持手段としての上定盤2を降下させて上定盤2に吸着保持したウェーハ1を樹脂5に上から押し付けていき、ウェーハ1の第一主面1Aを樹脂5に接触させる。
【0026】
樹脂5とウェーハ1とが接触した後に、エアー噴射を開始する。この例では、
図1(D)に示すように、樹脂5とウェーハ1の第1主面1Aとが接触するポイント(上定盤2に加わる荷重が設定荷重(A)を上回った位置)で、上定盤2から上定盤2とウェーハ1の第二主面1Bとの間へのエアー噴射を開始する。エアーの噴射は、例えば、上定盤2の貫通孔2aを通して行うことができる。
【0027】
続いて、エアー噴射を継続させながら、樹脂5が十分に広がるまで上定盤2を降下させる。すなわち、ウェーハ1の第一主面1A上に樹脂5を押し広げながらエアー噴射を行う。それにより、本発明では、ウェーハ1の第二主面1Bの保持手段2による保持を開放した状態で、ウェーハ1の第一主面1上に樹脂5を押し広げる。
【0028】
エアー噴射を行っている間、ウェーハ1の第二主面1Bの一部が上定盤2に接触(例えば点接触)しても良いが、ウェーハ1の第二主面1Bの保持手段2による保持が開放された状態を保つ。
【0029】
このようにエアー噴射しながら樹脂5を上から押圧することで、上定盤2とウェーハ1の第2主面1Bとの間にエアークッション層が形成され、それにより、上定盤2の形状がウェーハ1に転写されるのを抑制することができる。
【0030】
次いで、設定した停止荷重(B)で上定盤2の降下を停止する。この例では、保持手段である上定盤2の高さを変えずに待機する。この間もエアー噴射は継続する。それにより、樹脂5が自然に広がっていき、
図1(E)に示すように、ウェーハ1と上定盤2との間に隙間2bが形成される。これにより、ウェーハ1と上定盤2とを離間させる。
【0031】
続いて、
図1(E)のように、樹脂5が自然に広がり、上定盤2とウェーハ1との間隔が十分に確保されたタイミングで、エアー噴射を停止する。例えば、上定盤2に加わった荷重値を把握し、設定荷重(C)まで荷重が低下したら、エアー噴射を停止する。
【0032】
または、
図2(E)に示すように、設定した停止荷重(B)を検出後、エアー噴射を継続させながら上定盤2を退避させ(上方向に移動させ)、上定盤2とウェーハ1との間隔が十分に確保されたら、エアー噴射を停止することによって、上定盤2とウェーハ1とを離間させ、これらの間に隙間2bを形成してもよい。
【0033】
ウェーハ1と上定盤2との隙間を十分に確保した状態でエアー噴射を停止することにより、ウェーハ1や樹脂5の弾性によって再度ウェーハ1と上定盤2とが接触するのを防ぐことができる。この結果、上定盤2の形状がウェーハ1を通して樹脂厚みに転写されてしまうのをより確実に防ぐことができる。
【0034】
次に、ウェーハ1と上定盤2との離間後、
図1(F)に示すように、樹脂5を硬化させて平坦化樹脂層6とし、ウェーハ1とウェーハ1の第一主面1Aに接する平坦化樹脂層6とを含む複合体10を得る。
【0035】
この例では、下定盤3がガラス定盤であるため、下定盤3の下方から紫外線を照射することにより、紫外線が下定盤3及び光透過性フィルム4を透過して、樹脂5に当たり、樹脂5を硬化させることができる。なお、樹脂5の硬化手段は紫外線照射に限らず、樹脂5の種類に応じて適宜変更できる。例えば樹脂5が熱硬化性樹脂である場合には、熱などの外部刺激によって硬化を行うこともできる。
【0036】
図2に示す例においても、
図2(E)のようにウェーハ1と上定盤2との離間後、
図2(F)に示す状態で樹脂5を硬化させて平坦化樹脂層6とする。
【0037】
次に、
図1(G)に示すように、平坦化樹脂層6を基準面として複合体10を例えば研削ステージ20に移載して、複合体10を吸着保持する。研削ステージ20は、例えば多孔質セラミック製であり、真空吸着して複合体10を保持することができる。
【0038】
次いで、
図1(H)に示すように、研削ステージ20により吸着保持した状態でウェーハ1の第二主面1Bを研削または研磨する。この例では、研削ホイール30を用いてウェーハ1の第二主面1Bを研削(第1研削)し、研削した第二主面1Cを得る。例えば、研削後のTTVが1μm以下となるように研削する。
【0039】
次いで、
図1(I)に示すように、ウェーハ1から平坦化樹脂層6を除去する。この例では、光透過性フィルム4も同時に除去される。
【0040】
次いで、
図1(J)に示すように、ウェーハ1を反転させて、ウェーハ1の研削した第二主面1Cを研削ステージ20により吸着保持し、その状態でウェーハ1の第一主面1Aを研削または研磨する。この例では、研削ホイール30を用いてウェーハ1の第一主面1Aを研削し、研削した第一主面1Dを得る。
【0041】
このようにして得られたウェーハ1は、
図1(K)に示すように、研削した第1主面1D及び第2主面1Cを有する。このウェーハ1は、エアー噴射を行いながらウェーハ1の第二主面1Bの保持手段(上定盤)2による保持を開放した状態でウェーハ1の第一主面1A上に樹脂5を押し広げ、エアー噴射を行いながらウェーハ1と保持手段2とを離間させ、この離間後に樹脂5を硬化させることにより、保持手段(上定盤)2の形状がウェーハ1に転写されるのを防ぐことができる。つまり、Warp(反り)が小さくて良好なウェーハを製造することができる。また、平坦化樹脂層6がウェーハ1の第一主面1A上に接して形成されている状態で第二主面1Bを研削し、次いでウェーハ1を反転させ第一主面1Aを研削することにより、ナノトポグラフィを目標値未満にして良好にすることができる。
【0042】
一方、従来例のウェーハの製造方法では、例えば
図3を参照しながら以下に説明するように、Warpが小さくて良好なウェーハを製造することはできない。
【0043】
図3に概略フロー図を示す従来例のウェーハの製造方法は、主に、
図3(D)が
図1(D)及び
図2(D)に例として示す本発明のウェーハの製造方法と異なる。すなわち、
図3に示す従来の方法では、樹脂5とウェーハ1とが接触した後も、エアー噴射を行わず、保持手段(上定盤)2によるウェーハ1の第二主面1Bの保持を維持した状態で、ウェーハ1の第一主面1A上に樹脂5を押し広げ続ける。その結果、
図3(E)に示したように、上定盤2による保持を開放した後、上定盤2の形状が転写されたウェーハ1が得られる。その結果、第二主面1B及び第一主面1Aの研削後に得られるウェーハ1は、
図3(K)に示すように、Warpが大きいものとなってしまう。
【実施例0044】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
[実験内容]
(ウェーハ上への平坦化樹脂層の形成)
<実施例1-1~1-4>
実施例1-1~1-4では、
図1(A)~
図1(F)と同様のフローに従い、以下の条件で、ウェーハとウェーハの第一主面に接する平坦化樹脂層とを含む複合体を作製した。
【0046】
◇被覆物(平坦化樹脂層)形成条件
・ウェーハとしては、直径300mmのP型Si単結晶ウェーハを用いた。
・樹脂としてUV硬化性樹脂、光透過性フィルムとしてPETフィルムを用いた。
・平坦なガラス定盤(下定盤)にPETフィルムを敷き、そのPETフィルム上にUV硬化性樹脂を10ml滴下した。
・ウェーハの第二主面をセラミック定盤(上定盤)に吸着保持し、上記樹脂に向かって下降していくことで、樹脂を押圧した。
【0047】
・押圧制御では、上定盤を保持するサーボモータで駆動させ、所定荷重(A)100Nを検出したタイミングで真空吸着を停止し、エアー噴射を開始した。
・エアー噴射を継続しながら上定盤を降下させ、停止荷重(B)2000Nで上定盤の降下を停止させた。これにより、ウェーハの第二主面の上定盤による保持を開放した状態で、ウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げた。
・エアー噴射したたま待機することで樹脂が自然に広がり、上定盤に加わる荷重が減少した。これにより、ウェーハと上定盤との間に隙間を形成し、ウェーハと上定盤とを離間させた。
・上定盤に加わる荷重が設定荷重(C)まで減少した後、エアー噴射を停止した。
・紫外線を照射し、樹脂を硬化させて、平坦化樹脂層とした。(紫外線照射時はウェーハと上定盤との間に隙間あり)
・ここで、エアー噴射停止までのウェーハと上定盤間との隙間による転写の影響を考慮して、設定荷重(C)は1500N(実施例1-1)、1000N(実施例1-2)、500N(実施例1-3)、100N(実施例1-4)とした4例を実施した。
・樹脂硬化用の光源としては波長365nmのUV-LEDを用いた。
【0048】
<比較例2>
比較例2では、
図3(A)~
図3(F)と同様のフローに従い、ウェーハとウェーハの第一主面に接する平坦化樹脂層とを含む複合体を作製した。具体的には、押圧の制御を、実施例1-1から以下の通りに変更した。
【0049】
・押圧制御では、上定盤を保持するサーボモータで駆動させ、停止荷重(B)2000Nで上定盤の降下を停止させた。この間はエアー噴射をせず、上定盤でウェーハを保持した状態で、ウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げた。
・その後、真空吸着を停止し、エアー噴射を開始した。
・上定盤を上昇させ停止して、さらにエアー噴射を停止させた。これにより、ウェーハと上定盤との間に隙間を形成した。
・紫外線を照射し、樹脂を硬化させ、平坦化樹脂層とした。(紫外線照射時はウェーハと上定盤との間に隙間あり)
・樹脂硬化用の光源としては波長365nmのUV-LEDを用いた。
【0050】
<実施例2-1~2-3>
実施例2-1~2-3では、
図2(A)~
図2(F)と同様のフローに従い、ウェーハとウェーハの第一主面に接する平坦化樹脂層とを含む複合体を作製した。具体的には、押圧の制御を、実施例1-1から以下の通りに変更した。
【0051】
・押圧制御では、上定盤を保持するサーボモータで駆動させ、所定荷重(A)100Nを検出したタイミングで真空吸着を停止し、エアー噴射を開始した。
・エアー噴射を継続しながら上定盤を降下させ、停止荷重(B)2000Nで上定盤の降下を停止させた。これにより、ウェーハの第二主面の上定盤による保持を開放した状態で、ウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げた。
・次に、エアー噴射を継続しながら上定盤を所定距離Lだけ上昇させ停止させた後、エアー噴射を停止した。これにより、ウェーハと上定盤との間に隙間が形成された。
・紫外線を照射し、樹脂を硬化させ、平坦化樹脂層とした。(紫外線照射時はウェーハと上定盤との間に隙間あり)
・ここで、ウェーハと上定盤間との隙間による転写の影響を考慮して、上記所定距離Lは2μm(実施例2-1)、5μm(実施例2-2)、10μm(実施例2-3)とした3例を実施した。
・樹脂硬化用の光源としては波長365nmのUV-LEDを用いた。
【0052】
(研削加工)
<比較例1>
比較例1では、実施例1-1で用いたのと同様の直径300mmのP型Si単結晶ウェーハを準備し、このウェーハに対し、以下の条件で研削加工を行った。
【0053】
<実施例1-1~1-4、比較例2、実施例2-1~2-3>
実施例1-1~1-4、比較例2、実施例2-1~2-3では、先に作製した複合体に対し、以下の条件で研削加工を行った。
【0054】
◇研削加工条件
・研削加工には、ディスコ社製のDFG8360を使用した。
・研削ホイールとしてダイヤ砥粒が結合されたものを用いた。
以降の研削加工方法は、<比較例1>とそれ以外(<比較例2>、<実施例1-1~1-4>、<実施例2-1~2-3>)で異なるため個別に記載する。
【0055】
<比較例1>
第一研削加工条件(裏面(第二主面)研削)
・ウェーハの表面(第一主面)側を研削ステージに真空吸着し、裏面(第二主面)の研削加工を行った。(平坦化樹脂層無し)
【0056】
第二研削加工条件(表面(第一主面)研削)
・第一研削面(研削した第二主面)を研削ステージに真空吸着し、表面(第一主面)の研削加工を行った。
・チャックテーブルの軸角度を調整することで、ウェーハ厚みばらつきが1μm以下となるように調整を行った。
【0057】
<比較例2>、<実施例1-1~1-4>、<実施例2-1~2-3>
第一研削加工条件(裏面(第二主面)研削)
・複合体の被覆物(平坦化樹脂層)側を真空吸着し、裏面(第二主面)の研削加工を行った。
・研削後に平坦化樹脂層を剥離した。
【0058】
第二研削加工条件(表面(第一主面)研削)
・第一研削面(研削した第二主面)を研削ステージに真空吸着し、表面(第一主面)の研削加工を行った。
・チャックテーブルの軸角度を調整することで、ウェーハ厚みばらつきが1μm以下となるように調整を行った。
【0059】
(鏡面研磨加工)
以上のようにして研削加工を行った各ウェーハの表裏面(研削した第一及び第二主面)に対し、鏡面研磨加工を行った。
【0060】
[測定結果]
鏡面研磨後の各ウェーハのWarp及びナノトポグラフィ(NT)を以下のように測定した。
【0061】
WarpおよびNTの測定には、光学干渉式の平坦度・NT測定装置(KLA社製:WaferSight2+)を用いた。
NTの指標としては、SQMM 2mm×2mmを使用した。
結果を以下の表1に示す。
【0062】
【0063】
比較例1では、平坦化樹脂層を形成せずに研削を行ったため、Warp及びNTともに不良となった。
【0064】
比較例2では、平坦化樹脂層を形成して研削を行ったことでNTは良好となったが、上定盤による保持を維持したままウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げ続けたため、定盤形状の転写が起こり、Warp不良となった。
【0065】
一方、実施例1-1、1-2、1-3及び1-4では、エアー噴射を行いながら、上定盤による保持を開放した状態でウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げ、上定盤とウェーハとが離間した状態で樹脂を硬化させて平坦化樹脂層を形成したことにより、定盤形状の転写が緩和し、比較例2と比較してWarpが改善した。
【0066】
特に、エアー噴射停止荷重を500N以下とした実施例1-3及び1-4では、エアー噴射停止時のウェーハと上定盤との隙間が十分に確保されたため、Warpがさらに改善している。
【0067】
また、その一方、実施例2-1、2-2及び2-3でも、エアー噴射を行いながら、上定盤による保持を開放した状態でウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げ、上定盤とウェーハとが離間した状態で樹脂を硬化させて平坦化樹脂層を形成したことにより、定盤形状の転写が緩和し、比較例2と比較してWarpが改善した。
【0068】
また特に、エアー噴射中に上定盤を退避させる距離を5μm以上とした実施例2-2及び2-3では、エアー噴射停止時のウェーハと上定盤との隙間が十分に確保されたため、Warpがさらに改善している。
【0069】
以上の結果から、平坦化樹脂層形成時に、エアー噴射を行いながら、上定盤による保持を開放した状態でウェーハの第一主面上に樹脂を押し広げ、上定盤とウェーハとが離間した状態で樹脂を硬化させて平坦化樹脂層を形成したことにより、定盤形状の転写を防ぐことができたことが分かる。
【0070】
更に、上定盤を待機することで上定盤とウェーハとの離間を行う場合、より望ましくは、エアー噴射停止時の荷重は500N以下とした方が良いことが分かる。
【0071】
また、加工時間短縮の観点では、エアー噴射中に上定盤を退避させる方が良く、より望ましくは、上定盤を退避させる距離は5μm以上とした方が良いことが分かる。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…ウェーハ、 1A…第一主面、 1B…第二主面、 1C…研削した第二主面、 1D…研削した第一主面、 2…保持手段(上定盤)、 2a…貫通孔、 2b…隙間、 3…下定盤、 4…光透過性フィルム、 5…樹脂、 6…平坦化樹脂層、 10…複合体、 20…研削ステージ、 30…研削ホイール。