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  • 特開-調理設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172859
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】調理設備
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20221110BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20221110BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A47J37/12 331
H02N11/00 A
H01L35/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079152
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】521196567
【氏名又は名称】磯田 幸宏
(71)【出願人】
【識別番号】521196578
【氏名又は名称】水戸 洋彦
(71)【出願人】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】磯田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】水戸 洋彦
(72)【発明者】
【氏名】桑折 仁
【テーマコード(参考)】
4B059
【Fターム(参考)】
4B059AA01
4B059AB02
4B059AE03
4B059BG10
4B059DA05
(57)【要約】
【課題】 本発明は、食油から伝わる熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電部を用いて、調理設備の省スペース化を図ることが可能であると共にこれまで廃熱されていた熱エネルギーを有効に活用することができる調理設備の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、食油を用いて加熱調理を行う調理設備であって、食油から伝わる熱を放熱する放熱部と、前記放熱部から放熱される熱を電力に変換する熱電発電部とを備えることを特徴とする調理設備の提供を目的とする。また、本発明に係る調理設備において、前記放熱部が、フライヤー及び廃食油濾過装置の少なくとも一方であることが好ましく、前記熱電発電部で変換された電力が、フライヤー及び廃食油濾過装置の少なくとも一方に供給されることが好ましい。更に、本発明に係る調理設備は、換気ファンを備え、前記熱電発電部で変換された電力が、前記換気ファンに供給されることが好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を電力に変換する熱電発電部を備えることを特徴とする調理設備。
【請求項2】
食油を用いて加熱調理を行う調理設備であって、
食油から伝わる熱を放熱する放熱部を更に備え、
前記熱電発電部が、前記放熱部から放熱される熱を電力に変換する
請求項1に記載の調理設備。
【請求項3】
前記放熱部が、フライヤー及び廃食油濾過装置の少なくとも一方である
請求項1又は2に記載の調理設備。
【請求項4】
前記熱電発電部で変換された電力が、フライヤー及び廃食油濾過装置の少なくとも一方に供給される
請求項1から3のいずれか一項に記載の調理設備。
【請求項5】
更に換気ファンを備え、
前記熱電発電部で変換された電力が、前記換気ファンに供給される
請求項1から4のいずれか一項に記載の調理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンビニエンスストア内の調理スペースや、ファーストフード店・各種飲食店の厨房内に、食油(フライ油)を加熱して食材の揚げ加工を行うフライヤーが提供されている。フライヤーでは、ヒーターによって食油を加熱するために多くの商用電力が使用されている。この電力のエネルギーは食油を加熱した後はフライヤーから廃熱として捨てられている。さらに食油は長時間200℃付近の高温にさらされる過程で劣化する。そのため、調理の際、目視や酸化値測定により、加熱開始から所定時間経過した食油が新たな食油に取り換えられている。このような状況下、調理コストの高騰を避ける観点から、劣化の進行を抑える食油の改良が行われているが、食油自体の価格が高い。
【0003】
また、加熱中の食油の劣化を抑える装置(例えば、下記の非特許文献1)が提供されている。更に、新たな食油に取り換えられた劣化状態にある食油(廃食油)をリサイクルするため、例えば、フライヤーの下方に配されて、フライヤーから受けた廃食油を濾過する廃食油濾過装置も提供されている(例えば、下記の特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-74819号公報
【特許文献2】実用新案登録第3215206号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社ボトルネック ソリューションズ,食油活性化装置「カラット君」(インターネットURL:https://karattokun.bn-solutions.jp/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フライヤーや前述の各種装置(食油の劣化を抑える装置や廃食油濾過装置等のフライヤー周りの装置。以下、単に「周辺装置」と言う場合がある)は、商用電源によって稼働する。また、周辺装置の数が増えれば、その分、当該周辺装置に商用電源を供給するためのケーブルを増やさなければならない。特に、都市部の店舗において、広い調理空間(厨房等)を確保できない等の事情から、ケーブル等を配する十分なスペースを設けることが難しい。その結果、多くの周辺装置を調理設備に設置できない場合も想定される。
【0007】
一方、調理に用いられる食油は、フライヤーによって非常に高温に加熱され、高い熱エネルギーを有する。それにも関わらず、フライヤー内の食油は、食材を揚げるために利用されるのみであった。換言すれば、調理に用いられた食油の持つ熱エネルギーは、食油と接触する種々の部位から散逸し、廃熱されていた。
【0008】
そこで、本発明者は、熱電発電部(ゼーベック素子等を含む熱電発電モジュール)を用いて、例えば、フライヤーによって加熱された食油の持つ熱エネルギーから調理設備の装置稼働用の電気エネルギーを得ることで、設備の省スペース化を図ると共にこれまで廃熱されていた熱エネルギーを有効に活用できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る調理設備は、
熱を電力に変換する熱電発電部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る調理設備は、
食油を用いて加熱調理を行う調理設備であって、
食油から伝わる熱を放熱する放熱部を更に備え、
前記熱電発電部が、前記放熱部から放熱される熱を電力に変換する
ことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記食油は、例えば、後述するフライヤーに新たに投入される食油のみならず、フライヤーから排出される廃食油や、廃食油濾過装置で濾過された再生食油を含む。
【0012】
また、本発明に係る調理設備において、
前記放熱部が、フライヤー及び廃食油濾過装置の少なくとも一方であってもよい。
【0013】
更に、本発明に係る調理設備において、
前記熱電発電部で変換された電力は、フライヤー及び廃食油濾過装置の少なくとも一方に供給されてよい。
【0014】
更に、本発明に係る調理設備は、
換気ファンを備え、
前記熱電発電部で変換された電力が、前記換気ファンに供給されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食油から伝わる熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電部を用いて、調理設備の省スペース化を図ることが可能であると共にこれまで廃熱されていた熱エネルギーを有効に活用することができる。また調理設備に使用する電力を少なくし、省エネルギーとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る調理設備の構成概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る調理設備を詳細に説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る調理設備1の全体構成を説明する。ここで、図1は、本実施形態に係る調理設備1の構成概略図である。図1に示されるように、本実施形態に係る調理設備1は、フライヤー2、熱電発電部3、廃食油濾過装置4、換気部5、バッテリー(2次電池)6を備える。
【0018】
フライヤー2は、油槽21を含む。油槽21は、上部が開口する金属製(例えば、ステンレス製)の箱状部材である。食材を揚げるための食油は、油槽21の内部に配される。また、油槽21の内部に配された食油は、油槽21の近傍に配設される電気ヒーターやガスバーナー等の熱源(図示しない)によって加熱される。
【0019】
また、フライヤー2は、ハウジング22を含む。ハウジング22は、油槽21や廃食油濾過装置4等を収容する金属製(例えば、ステンレス製)の箱状部材である。更に、ハウジング22は、ハウジング22の上部から下方側に凹設される凹空間22Uを備える。本実施形態において、油槽21は、凹空間22U内に収められる。このとき、油槽21の外側面21Sと凹空間22Uの側面22S(ハウジング22の内側面)との間に、例えば、数cm程度の隙間が形成される。
【0020】
次に、熱電発電部3(31)は、例えば、フライヤー2の所定位置に設けられ、食油から伝わる熱(フライヤー2の油槽21から放熱される熱)を調理設備1に備わる種々の装置の駆動電力に変換する熱電素子からなる熱電デバイス(例えば、ゼーベック素子)を含む。なお、本実施形態において、フライヤー2(例えば、油槽21等)は、熱電発電部31側に熱を放熱する放熱部として機能する。
【0021】
熱電発電部3(31)の例として、高温側電極と低温側電極を介してn型のBiTeとp型のBiTeとを接続する熱電素子が挙げられるが、これに限定されない。また、熱電発電部3の数も限定されないが、より多くの電力を得るため複数の熱電発電部3を設けることが好ましい。
【0022】
更に、熱電発電部31の取付位置も限定されないが、油槽21から離間した位置(例えば、凹空間22Uの側面22S(ハウジング22の内側面))であることが好ましい。凹空間22Uの側面22Sのように、油槽21から離間した位置に熱電発電部31を取り付ければ、熱電発電部31の低温側電極は、空気より熱伝導率の高い金属製部材(凹空間22Uの側面22S)に接触する。そのため、熱電発電部31に伝わる熱が凹空間22Uの側面22S側に排出される結果、熱電発電部31内の温度勾配が維持される。これとは異なり、仮に、熱電発電部31と油槽21とを接触させる場合、熱電発電部31の裏面にヒートシンクなど設置することが好ましい。
【0023】
更に、熱電発電部31は、バッテリー6と電気的に接続されることが好ましい。これにより、熱電発電部31で得られた電力を、発電の度にバッテリー6に蓄電することができる。その結果、比較的大きな駆動電力が必要な部材や装置(例えば、フライヤー2の熱源や廃食油濾過装置4の後述するポンプ装置44等)の主電力又は補助電力として、バッテリー6に蓄電された総電力を利用することができる。その結果、商用電源を供給するための配線を省くことができ、調理設備1の省スペース化を図ると共に、食油から伝わる熱エネルギーを有効に活用することができる。
【0024】
次に、廃食油濾過装置4は、フライヤー2から供給される廃食油を濾過し、フライヤー2で利用可能な再生食油を生成するための装置である。本実施形態における廃食油濾過装置4は、フライヤー2の下方側に配設される。また、廃食油濾過装置4は、フライヤー2から下方側に延在する管路23を介してフライヤー2と接続する。
【0025】
より詳しくは、廃食油濾過装置4は、フライヤー2からの廃食油を受ける受槽41、受槽41の内部に設けられる濾過材42、受槽41を収容するケース43、濾過材42で濾過された再生食油を汲み上げるポンプ装置44、一端がポンプ装置44に接続すると共に、他端がフライヤー2の油槽21に臨む循環路45等を含む。廃食油濾過装置4において、濾過材42で濾過されてポンプ装置44で汲み上げられた再生食油は、循環路45を通じて油槽21に戻される。
【0026】
フライヤー2から廃食油濾過装置4に供給された廃食油の温度も高温である。そのため、廃食油濾過装置4に供給された後の廃食油の熱は、受槽41、濾過材42、ケース43等の種々の部位に伝わる。よって、熱電発電部32(熱電発電部31と同様の熱電素子であってよい)を廃食油濾過装置4の適宜位置に取り付けることで、放熱される熱を調理設備1に備わる種々の装置の駆動電力に変換することができる。
【0027】
本実施形態における熱電発電部32の取付位置は、特に限定されないが、廃食油に触れる部位(受槽41内や濾過材42)ではなく、これらの部位から離間する箇所(例えば、受槽41やケース43の外側面43S)であることが好ましい。熱電発電部32をこのように配置することで、受槽41や濾過材42からの熱を十分受けながら、熱に耐えきれず破損する可能性を低減できる。なお、本実施形態において、廃食油濾過装置4(例えば、受槽41、濾過材42、ケース43等)は、熱電発電部32側に熱を放熱する放熱部として機能する。
【0028】
また、熱電発電部32は、バッテリー6と電気的に接続されることが好ましい。これにより、熱電発電部32で得られた電力を発電の度にバッテリー6に蓄電することができる。その結果、比較的大きな駆動電力が必要な部材や装置(例えば、フライヤー2の熱源や廃食油濾過装置4のポンプ装置44等)の主電力又は補助電力として、バッテリー6に蓄電された総電力を利用することができる。その結果、商用電源を供給するための配線を省き、調理設備1の省スペース化を図ることができると共に、食油から伝わる熱エネルギーを有効に活用することができる。
【0029】
図示される調理設備1は、フライヤー2(ハウジング22の内側面22S)に熱電発電部31を設け、廃食油濾過装置4(ケース43の外側面43S)に熱電発電部32を設けているが、この態様に限られない。例えば、フライヤー2又は廃食油濾過装置4のいずれかに熱電発電部3を設けてもよいし、それ以外の箇所に設けてもよい。
【0030】
次に、換気部5は、図1に示されるように、フライヤー2の上方側に設けられる。調理の際、換気部5の駆動により、フライヤー2近傍が換気される。本実施形態における換気部5は、換気ダクト51、換気ファン52等を含む。
【0031】
ここで、換気ファン52は、熱電発電部3(31,32)及びバッテリー6の少なくとも1つと電気的に接続されることが好ましい。特に、換気ファン52と、熱電発電部3(31,32)とが電気的に接続されることがより好ましい。
【0032】
前述のように、熱電発電部3(31,32)が発電するタイミングは、食油が温められる調理中やその直後(以下、「調理中等」と言う場合がある)の時点である。そのため、調理中等のタイミングに連動して、熱電発電部3(31,32)から換気ファン52に電力を供給することができる。すなわち、調理者の操作(例えば、電気スイッチの押下)を介さずに、自動的に換気ファン52を駆動することができる。
【0033】
換気ファン52が、少なくとも調理中等に動作すれば、フライヤー2近傍を十分換気することができる。従って、本実施形態によれば、換気ファン52のスイッチ等を省くことができると共に、調理中等以外のタイミングにおける換気ファン52の無駄な動作を防ぐことができる。
【0034】
ところで、本実施形態に係る調理設備1は、他の装置を備えてもよい。他の装置として、フライヤー2(油槽21)や廃食油濾過装置4(受槽41)内の食油の劣化測定センサ(酸価値測定センサ、極性化合物の測定センサ等)、これらのセンサによって取得された測定データを管理コンピュータに送信するための通信モジュール等が挙げられる。この場合、熱電発電部31,32で発電された電力やバッテリー6に蓄電された電力は、これらの電気機器にも供給されることが好ましい。
【実施例0035】
フライヤー2の下方に設置された廃食油濾過装置4(実用新案登録第3215206号で開示された装置)のケース43(外側面43S)に、熱電発電部3(40mm角×3.95mm厚の(株)ジーマックス社製BiTeモジュール)を貼り付けた。この状態で、フライヤー2で加熱した食油(廃食油)を廃食油濾過装置4に移動させた。ここで、廃食油濾過装置4で濾過された直後の廃食油の温度は120℃であった。また、この廃食油の酸価値は3であった。
【0036】
廃食油濾過装置4にフライヤー2から加熱した廃食油を移動させた後、5分後及び30分後でもケース43(外側面43S)の温度は、62~70℃に保たれていた。また、このときの熱電発電部3の温度差(ケース外側面43Sの温度-熱電変換部3の裏面の温度)は、28~22.5℃であった。
【0037】
本実験で用いた熱電変換部3に使用される一枚のBiTe系材料の熱電デバイスの公表値(下表1)を参照すると、上記温度差に近い「温度差30℃」において、電圧0.48V、出力0.024Wが得られる。また、濾過された食油の酸化値は2に改善された。
【0038】
【表1】
【0039】
本発明の実施形態について詳細に説明した。ただし、前述の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、前述の実施形態から変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…調理設備
2…フライヤー
3(31,32)…熱電発電部
4…廃食油濾過装置
5…換気部
図1