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特開2022-173065二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173065
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221110BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20221110BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221110BHJP
   C08J 7/043 20200101ALI20221110BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221110BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221110BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B15/08 J
B32B27/36
C08J7/043 A
H05K9/00 Q
H05K1/03 610M
C08L67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043076
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2021078732
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021082771
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小井土 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4F100
4J002
5E321
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB34
4F006AB64
4F006AB65
4F006AB76
4F006BA01
4F006CA08
4F006EA05
4F006EA06
4F071AA45
4F071AA86
4F071AA89
4F071AF04Y
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF30
4F071AF40Y
4F071AF61
4F071AG28
4F071AH12
4F071AH13
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AB01
4F100AB01B
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AB24
4F100AB24B
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK42
4F100AK42A
4F100BA02
4F100BA07
4F100EJ38
4F100EJ38A
4F100EJ42
4F100GB43
4F100JA11
4F100JA11A
4F100JG05
4F100JG05A
4F100JK02
4F100JK07
4J002CC182
4J002CD012
4J002CD022
4J002CD032
4J002CF08W
4J002CF08X
4J002ER006
4J002EU186
4J002EU196
4J002EU226
4J002EX016
4J002EX066
4J002EX076
4J002EX086
4J002FD090
4J002FD142
4J002FD146
4J002FD170
4J002GF00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
5E321AA23
5E321BB21
5E321BB53
5E321GG05
(57)【要約】
【課題】
優れた低誘電特性を有する二軸延伸フィルムを提供することにある。
【解決手段】
2種以上のポリエステルを含み、そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート樹脂(A)であり、28GHzにおける誘電正接が0.0040以下である、二軸延伸フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のポリエステルを含み、
そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート樹脂(A)であり、
28GHzにおける誘電正接が0.0040以下である、二軸延伸フィルム。
【請求項2】
28GHzにおける誘電率が3.15以上3.25以下である、請求項1に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項3】
長手方向(MD)及び幅方向(TD)の引張破断強度がいずれも150MPa以上である、請求項1又は2に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項4】
23℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)いずれも3.5GPa以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項5】
120℃、85%RHの環境下に96時間静置した後、さらに室温(23℃)で18時間静置した際の長手方向(MD)及び幅方向(TD)の引張破断強度がいずれも100MPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項6】
120℃、85%RHの環境下に96時間静置した後、さらに室温(23℃)で18時間静置した際の長手方向(MD)及び幅方向(TD)の強度保持率がいずれも50%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項7】
前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)を35質量%以上70質量%以下含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項8】
結晶性ポリエステル(B)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項9】
前記結晶性ポリエステル(B)は、前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)よりもガラス転移温度が高い、請求項8に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項10】
前記結晶性ポリエステル(B)が、ポリエチレンナフタレート樹脂である、請求項8又は9に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項11】
前記ポリエチレンナフタレート樹脂は、全ジカルボン酸成分中、2,6-ナフタレンジカルボン酸以外のその他の共重合成分としてのベンゼン骨格を有する酸成分が5モル%以下である、請求項10に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項12】
フィルム厚みが40~150μmである、請求項1~11のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有し、該硬化樹脂層が、架橋剤を不揮発成分に対して70質量%以上含有する樹脂組成物から形成される、硬化樹脂層付きフィルム。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化樹脂層付きフィルムの前記硬化樹脂層上に金属層を備える、金属積層フィルム。
【請求項15】
前記金属層がパターン化された、請求項14に記載の金属積層フィルム。
【請求項16】
前記金属層が銅又は銀からなる、請求項14又は15に記載の金属積層フィルム。
【請求項17】
高速通信回路用である、請求項1~12のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項18】
透明アンテナ用基材フィルムとして用いられる、請求項17に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項19】
高速通信回路用である、請求項13に記載の硬化樹脂層付きフィルム。
【請求項20】
透明アンテナ用基材フィルムとして用いられる、請求項19に記載の硬化樹脂層付きフィルム。
【請求項21】
高速通信回路用である、請求項14~16のいずれか1項に記載の金属積層フィルム。
【請求項22】
透明アンテナ用基材フィルムとして用いられる、請求項21に記載の金属積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気、電子機器の高性能、高機能化に伴い、情報の高速通信対応が必要とされている。例えば、スマートフォンにおいては、5G(第五世代移動通信システム)の高速通信サービスの開始に伴い、民生分野だけではなく、産業分野(工場、自動車などの車両等)でも高速通信サービスが普及する状況にある。
5Gの高速大容量のデータ通信には、「ミリ波」(波長1~10mm、周波数30~300GHz)帯の電波が用いられる。ミリ波の長所としては、一度に送信できるデータが大容量であること、得られる画像が高精細化できること等が挙げられる。
【0003】
一方で、回路基板に前記ミリ波のような高周波のデジタル信号を流すと、送信されたデジタル信号の一部が回路基板の配線上で熱として消費される誘電損失が起こり、減衰したデジタル信号として受信側に到達する、いわゆる「伝送損失」が発生する。そのため、使用する部材においても、伝送損失低減対策が必要とされる状況にある。前記伝送損失は、誘電損失と導体損失の総和であり、該誘電損失αは下記式(1)から算出される。
【0004】
【数1】
【0005】
なお、fは周波数、cは光速、εは比誘電率、tanδは誘電正接である。
【0006】
例えば、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)では、伝送損失低減として、樹脂フィルムには誘電損失αの低減が求められている。より具体的には、εやtanδを下げること、特にはtanδを下げる試みがなされている。
【0007】
樹脂フィルムの低誘電率化や低誘電正接化には、種々の材料が提案されているが、その中でも、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、誘電率及び誘電正接がともに低く、高周波信号を扱う各種電気部品の絶縁層として広く使用されている(非特許文献1)。
しかしながら、フッ素樹脂は、機械的特性、加工性及びコストなどの点から制限が多く、汎用性のある樹脂フィルムが要望されている。
【0008】
汎用性が高い樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐候性、機械的強度、透明性などに優れており、かつ、価格的にも入手し易いことから、包装材料、光学用途などの各種用途に使用されているが、低誘電特性に関してはあまり検討されていない。
【0009】
例えば、特許文献1には、優れた低誘電特性を有するポリエステルフィルムとして、内部に5~45体積%の空洞を含有する積層二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。空洞を含有することで、空隙(空気)を分散させることができ、低誘電率化や低誘電正接化を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-352470号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「高周波対応部材の開発動向と5G、ミリ波レーダーへの応用」、技術情報協会、第3章、第2節、p.77-84「高速、高周波対応FPCの開発動向と低伝送損失化」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載の空洞含有積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、異種材料を混合して空洞を形成するものであるが、このような場合、空洞のサイズあるいは異種材料の分散状態を制御することが難しく、例えば、異種材料の分散状態が不十分な場合には、所望する低誘電特性が得られないことがある。
【0013】
本発明で解決しようとする課題は、上記の問題点を解決し、空洞を有しなくても優れた低誘電特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。本発明は、その一態様において以下の[1]~[10]を要旨とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]2種以上のポリエステルを含み、そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート樹脂(A)であり、28GHzにおける誘電正接が0.0040以下である、二軸延伸フィルム。
[2]28GHzにおける誘電率が3.15以上3.25以下である、上記[1]に記載の二軸延伸フィルム。
[3]長手方向(MD)及び幅方向(TD)の引張破断強度がいずれも150MPa以上である、上記[1]又は[2]に記載の二軸延伸フィルム。
[4]23℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)いずれも3.5GPa以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
[5]120℃、85%RHの環境下に96時間静置した後、さらに室温(23℃)で18時間静置した際の長手方向(MD)及び幅方向(TD)の引張破断強度がいずれも100MPa以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
[6]120℃、85%RHの環境下に96時間静置した後、さらに室温(23℃)で18時間静置した際の長手方向(MD)及び幅方向(TD)の強度保持率がいずれも50%以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
[7]前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)を35質量%以上70質量%以下含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
[8]結晶性ポリエステル(B)を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
[9]前記結晶性ポリエステル(B)は、前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)よりもガラス転移温度が高い、上記[8]に記載の二軸延伸フィルム。
[10]前記結晶性ポリエステル(B)が、ポリエチレンナフタレート樹脂である、上記[8]又は[9]に記載の二軸延伸フィルム。
[11]前記ポリエチレンナフタレート樹脂は、全ジカルボン酸成分中、2,6-ナフタレンジカルボン酸以外のその他の共重合成分としてのベンゼン骨格を有する酸成分が5モル%以下である、上記[10]に記載の二軸延伸フィルム。
[12]フィルム厚みが40~150μmである、上記[1]~[11]のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
[13]上記[1]~[12]のいずれかに記載の二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有し、該硬化樹脂層が、架橋剤を不揮発成分に対して70質量%以上含有する樹脂組成物から形成される、硬化樹脂層付きフィルム。
[14]上記[13]に記載の硬化樹脂層付きフィルムの前記硬化樹脂層上に金属層を備える、金属積層フィルム。
[15]前記金属層がパターン化された、上記[14]に記載の金属積層フィルム。
[16]前記金属層が銅又は銀からなる、上記[14]又は[15]に記載の金属積層フィルム。
[17]高速通信回路用である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
[18]透明アンテナ用基材フィルムとして用いられる、上記[17]に記載の二軸延伸フィルム。
[19]高速通信回路用である、上記[13]に記載の硬化樹脂層付きフィルム。
[20]透明アンテナ用基材フィルムとして用いられる、上記[19]に記載の硬化樹脂層付きフィル
[21]高速通信回路用である、上記[14]~[16]のいずれかに記載の金属積層フィルム。
[22]透明アンテナ用基材フィルムとして用いられる、上記[21]に記載の金属積層フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルムは、優れた低誘電特性を有する。
したがって、本発明の二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルムは、高速通信回路用に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<<二軸延伸フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る二軸延伸フィルム(以下、「本フィルム」と称することがある)は、2種以上のポリエステルを含み、そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート(以下、「PBN」とも称する)樹脂(A)であり、28GHzにおける誘電正接が0.0040以下である。
本フィルムは、二軸延伸フィルムであるため、薄膜とすることができ、かつ、特定の混合ポリエステルを使用して誘電正接を特定の範囲内に調整しているので低誘電特性を有する。
さらに、本フィルムは、特定の混合ポリエステルを使用して結晶化速度をコントロールしているため、PBN樹脂(A)単体だと困難である押出成形や延伸加工にも優れる。
【0018】
1.物性
まず、本フィルムの物性について説明する。
【0019】
(1)誘電正接
本フィルムは、28GHzにおける誘電正接が0.0040以下となるものであり、好ましくは0.0039以下、より好ましくは0.0038以下、特に好ましくは0.0035以下、とりわけ好ましくは0.0030以下である。下限値は、特に限定されるものではないが、0.0010以上であり、好ましくは0.0015以上、より好ましくは0.0020以上、さらに好ましくは0.0025以上である。
誘電正接が0.0040以下であれば、フィルムが優れた低誘電特性を有しているといえ、高速通信回路用として好適に使用することができる。
なお、誘電正接は、混合するポリエステルの種類や含有量、延伸条件等によって調整することができる。また、誘電正接は実施例に記載の方法により測定した。
【0020】
(2)誘電率
本フィルムの28GHzにおける誘電率は、3.15以上3.25以下であることが好ましい。上限値は、より好ましくは3.24以下、さらに好ましくは3.23以下、特に好ましくは3.22以下、とりわけ好ましくは3.21以下である。
誘電率がかかる範囲であれば、フィルムが優れた低誘電特性を有しているといえ、高速通信回路用として好適に使用することができる。
なお、誘電率は、混合するポリエステルの種類や含有量、延伸条件等によって調整することができる。また、誘電率は実施例に記載の方法により測定した。
【0021】
(3)引張破断強度
本フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)の引張破断強度は、いずれも150MPa以上であることが好ましい。より好ましくは154MPa以上、さらに好ましくは170MPa以上、特に好ましくは173MPa以上、とりわけ好ましくは175MPa以上である。上限値は特に制限されないが、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれも、通常500MPa以下、好ましくは300MPa以下である。
本フィルムの引張破断強度が150MPa以上であれば、十分な機械的特性が得られる。
なお、引張破断強度は、混合するポリエステルの種類や含有量、延伸条件等によって調整することができる。また、引張破断強度は実施例に記載の方法により測定した。
【0022】
なお、本発明において、フィルムの長手方向(MD)とは、フィルムの製造工程でフィルムが進行する方向、すなわちフィルムロールの巻き方向をいう。
また、フィルムの幅方向(TD)とは、フィルム面に平行かつ長手方向と直交する方向をいい、すなわち、フィルムロール状としたときロールの中心軸と平行な方向である。
上記長手方向(MD)は機械方向や縦方向ともいい、上記幅方向(TD)は横方向ともいう。
【0023】
(4)貯蔵弾性率
23℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)いずれも3.5GPa以上であることが好ましい。より好ましくは3.6GPa以上、さらに好ましくは3.7GPa以上、特に好ましくは3.8GPa以上である。上限値は、特に制限されないが、通常10GPa以下、好ましくは8.0GPa以下である。
本フィルムの貯蔵弾性率が3.5GPa以上であれば、フィルムのコシが良好となり、フィルムにしわができにくく、ハンドリング性に優れる。
なお、貯蔵弾性率は実施例に記載の方法により求めた値である。
【0024】
(5)湿熱試験後の引張特性
120℃、85%RHの環境下に96時間静置した後、さらに室温(23℃)で18時間静置した際の長手方向(MD)及び幅方向(TD)の引張破断強度は、いずれも100MPa以上であることが好ましく、105MPa以上であることがより好ましく、110MPa以上であることがさらに好ましく、120MPa以上であることが特に好ましく、130MPa以上であることがとりわけ好ましい。上限値は、特に制限されないが、通常300MPa以下、好ましくは250MPa以下である。
本フィルムの湿熱試験後の引張破断強度が、100MPa以上であれば、耐加水分解性に優れ、十分な耐候性を有するフィルムとなる。
また、120℃、85%RHの環境下に96時間静置した後、さらに室温(23℃)で18時間静置した際の長手方向(MD)及び幅方向(TD)の強度保持率は、いずれも50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、65%以上であることが特に好ましい。上限値は、特に制限されないが、100%以下である。
本フィルムの湿熱試験後の強度保持率が、50%以上であれば、フィルムとして十分な耐候性を有する。
【0025】
(6)ヘーズ
本フィルムのヘーズは、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。本フィルムのヘーズが上記上限値以下であれば、良好な透明性を有すると言える。
なお、下限値は特に制限されるものではないが、通常0.01%以上である。
【0026】
(7)熱収縮率
本フィルムの150℃で30分間加熱したときの熱収縮率は、長手方向(MD)と幅方向(TD)のいずれも5.0%以下であることが好ましい。熱収縮率が5.0%以下であることによって、本フィルムは耐熱性、特に高温下での寸法安定性に優れ、実用上問題なく使用することができる。
かかる観点から、本フィルムの熱収縮率は、4.0%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下であることが特に好ましい。下限については特に限定されるものではないが、通常0.01%以上である。
【0027】
(8)厚み
本フィルムの厚みは、1~250μmであることが好ましく、5~200μmであることがより好ましく、10~150μmであることがさらに好ましい。1μm以上とすることでフィルム強度が実用範囲内に保たれる。250μm以下とすることで、モバイル機器等に組み込むことが容易であり、高速通信回路用として好適に使用することができる。
中でも、透明アンテナ用基材フィルムとして用いる場合には、本フィルムの厚みは40~150μmであることが好ましい。当該厚みの下限値は、50μmであることがより好ましく、さらに好ましくは75μm、特に好ましくは100μmである。また、当該厚みの上限値は、140μmであることが好ましく、さらに好ましくは130μmである。
なお、厚みは製膜及び延伸条件によって調整することができる。
【0028】
2.成分
次に、本フィルムを構成する成分について説明する。
【0029】
本フィルムは、2種以上のポリエステルを含み、そのうちの少なくとも1種がPBN樹脂(A)である。
本フィルムがPBN樹脂(A)を含有することで、優れた低誘電特性を有する機構については定かではないが、芳香環のスタッキングによって双極子の運動が抑制されるためだと推定している。
一般的に、誘電体を電場内に置くと、双極子が配向する。そして、交流電場の位相に追随するように、双極子が回転・反転する。この双極子の回転・反転運動に伴って摩擦が生じ、誘電損失が発生する。
したがって、双極子の運動を抑制することが、優れた低誘電特性に繋がると推定している。
【0030】
より具体的に説明すると、芳香環のスタッキングによって双極子の運動を抑制する観点から、スタッキングが強いと抑制効果が大きくなると考えられ、より具体的にはベンゼン骨格よりもナフタレン骨格を有することでより良好な低誘電特性が発揮できると考えられる。したがって、低誘電特性の観点からは、芳香環は、ベンゼン骨格よりもナフタレン骨格であることが好ましい。
【0031】
<ポリブチレンナフタレート樹脂(A)>
本フィルムを構成するPBN樹脂(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸を、ジオール成分(a-2)として1,4-ブタンジオールを含むポリエステルであり、好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸と1,4-ブタンジオールを主成分とする、すなわち、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸を50モル%以上、ジオール成分(a-2)として1,4-ブタンジオールを50モル%以上含むことが好ましい。
特に、本発明で用いるPBN樹脂(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸を90モル%以上、ジオール成分(a-2)として1,4-ブタンジオールを90モル%以上含むことがより好ましい。
【0032】
前記PBN樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分(a-1)は、2,6-ナフタレンジカルボン酸を含み、ジカルボン酸成分(a-1)のうち、2,6-ナフタレンジカルボン酸が92モル%以上であることがより好ましく、94モル%以上であることがさらに好ましく、96モル%以上であることが特に好ましく、98モル%以上であることがとりわけ好ましく、ジカルボン酸成分(a-1)の全て(100モル%)が2,6-ナフタレンジカルボン酸であることが最も好ましい。ジカルボン酸成分(a-1)として、2,6-ナフタレンジカルボン酸を90モル%以上とすることにより、PBN樹脂(A)のガラス転移温度及び結晶性が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性及び機械的特性が向上する。また、ジカルボン酸成分(a-1)として、2,6-ナフタレンジカルボン酸を90モル%以上とすることにより、ナフタレン骨格の含有量が多くなり、スタッキングによる双極子の運動抑制効果が高くなる。そして、結果として低誘電特性が向上する。
【0033】
前記PBN樹脂(A)は、成形性や耐熱性の向上を目的として、2,6-ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分を共重合してもよい。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられるが、これらの中でも成形性の観点から、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸が好ましい。また、これらの中でも低誘電特性の観点からは、スタッキングの強いナフタレン骨格を有する酸成分等が好ましく、例えば、テレフタル酸やイソフタル酸等のようなベンゼン骨格を有する酸成分は5モル%以下であることが好ましく、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。これらの酸成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、前記2,6-ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分の含有量は、2,6-ナフタレンジカルボン酸を含む全酸成分中10モル%以下であることが好ましい。
【0034】
前記PBN樹脂(A)を構成するジオール成分(a-2)は、1,4-ブタンジオールを含み、ジオール成分(a-2)のうち、1,4-ブタンジオールが92モル%以上であることがより好ましく、94モル%以上であることがさらに好ましく、96モル%以上であることが特に好ましく、98モル%以上であることがとりわけ好ましく、ジオール成分(a-2)の全て(100モル%)が1,4-ブタンジオールであることが最も好ましい。ジオール成分(a-2)として、1,4-ブタンジオールを90モル%以上とすることにより、混合するポリエステルとの相溶性が向上し、さらにはPBN樹脂(A)のガラス転移温度及び結晶性が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性及び機械的特性が向上する。
【0035】
前記PBN樹脂(A)は、成形性や耐熱性の向上を目的として、1,4-ブタンジオール以外のジオール成分を共重合してもよい。具体的には、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ビスフェノール、スピログリコール、2,2,4,4,-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、イソソルバイド等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらのジオール成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール成分の含有量は、1,4-ブタンジオールを含む全ジオール成分中10モル%以下であることが好ましい。
【0036】
前記PBN樹脂(A)の含有量は、二軸延伸フィルムを100質量%としたときに、5質量%以上70質量%以下であることが好ましい。当該含有量が5質量%以上であれば、PBN樹脂(A)の有する低誘電特性が発揮される。また、当該含有量が70質量%以下であれば、後述する少なくとも1種のポリエステルの含有量を適切量確保できるため、フィルム製膜時の押出成形性や延伸加工性を向上させながら、低誘電特性、機械的特性、耐候性のバランスを良好なものとすることができる。
【0037】
その中でも、低誘電特性をより優れたものとする観点からは、前記PBN樹脂(A)の含有量は、35質量%以上70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは45質量%以上62質量%以下、特に好ましくは50質量%以上60質量%以下である。
【0038】
PBN樹脂(A)のガラス転移温度(Tg(A))は、50℃以上130℃以下であることが好ましく、58℃以上125℃以下であることがより好ましく、65℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度(Tg(A))がかかる範囲にあれば、耐熱性と押出成形性のバランスに優れる。
なお、ガラス転移温度(Tg(A))は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0039】
<少なくとも1種のポリエステル>
本フィルムは、前記PBN樹脂(A)以外に、少なくとも1種のポリエステルを含む混合ポリエステルにより構成される。
【0040】
前記少なくとも1種のポリエステルとしては、特に制限されず、下記のようなジカルボン酸成分及びジオール成分からなるものが挙げられる。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0041】
ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、p-キシリレングリコ-ル、ビスフェノールA-エチレングリコ-ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル、ジメチロ-ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジメチロ-ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ-ルプロピオン酸カリウム等が挙げられる。
上記化合物の中から、それぞれ適宜1種以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステルを合成すればよい。
なお、前記少なくとも1種のポリエステルには、上記PBN樹脂(A)に相当するポリエステルが含まれるが、本発明の混合ポリエステルにおいて、前記少なくとも1種のポリエステルは、上記PBN樹脂(A)とは異なるものを用いる。
【0042】
前記少なくとも1種のポリエステルとしては、結晶性ポリエステル(B)であることが好ましく、さらに、前記結晶性ポリエステル(B)は、前記PBN樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いことがより好ましい。
【0043】
PBN樹脂(A)に対して、前記結晶性ポリエステル(B)を混合することにより、PBN樹脂(A)の結晶化速度をコントロールし、押出成形性や延伸加工性に優れたフィルムを得ることができる。
また、前記結晶性ポリエステル(B)が、PBN樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いことで、PBN樹脂(A)単体よりもガラス転移温度の高い樹脂組成物が得られ、耐熱性が良好となる。
さらに、前記結晶性ポリエステル(B)を混合することで、高い結晶性を維持することができ、低誘電特性、機械的特性及び耐候性のバランスが優れたフィルムとすることができる。
【0044】
前記結晶性ポリエステル(B)としては、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂等が好ましく、低誘電特性、機械的特性及び耐候性のバランス向上の観点から、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」とも称する)樹脂を含有することがより好ましい。ポリエチレンナフタレート樹脂は、構造中にナフタレン骨格を有するため、芳香環のスタッキングによる双極子の運動抑制効果が大きく、本フィルムの低誘電特性をより優れたものとすることができる。
【0045】
(ポリエチレンナフタレート樹脂)
前記PEN樹脂は、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよいが、全ジカルボン酸成分中、2,6-ナフタレンジカルボン酸以外のその他の共重合成分としてのベンゼン骨格を有する酸成分が5モル%以下であることが好ましい。なお、その他の共重合成分を含まず、ジカルボン酸成分の全て(100モル%)が2,6-ナフタレンジカルボン酸であってもよい。
中でも、高い結晶性を維持する観点からは、ホモポリエステルが好ましい。また、ナフタレン骨格の含有量を多くすることでスタッキングによる双極子の運動抑制効果を高め、低誘電特性を向上させやすくする観点からも、ホモポリエステルが好ましい。
また、ホモポリエステルと共重合ポリエステルをブレンドしてもよいが、ホモポリエステルと1種の共重合ポリエステルをブレンドした場合は、前記結晶性ポリエステル(B)を2種用いたものとする。
【0046】
PEN樹脂が、ホモポリエステルからなる場合、ジカルボン酸成分(b-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸と、ジオール成分(b-2)としてエチレングリコールとを重縮合させて得られる。
【0047】
一方、PEN樹脂が、共重合ポリエステルからなる場合、ジカルボン酸成分(b-1)としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸が必須成分であり、これに必要に応じて、その他の共重合成分が加えられる。
他の共重合成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;p-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からイソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸が好ましい。また、これらの中でも低誘電特性の観点からは、スタッキングの強いナフタレン骨格を有する共重合成分が好ましい。これらの共重合成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
ジオール成分(b-2)としては、エチレングリコールが必須成分であり、これに必要に応じ、その他の共重合成分として、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、スピログリコール、2,2,4,4,-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、イソソルバイド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールSなどのビスフェノール化合物若しくはその誘導体又はそれらのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられ、これらのうち1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類が好ましい。
特にフィルム強度の保持の観点から、ビスフェノール類を用いることが好ましい。
また、ビスフェノール類としてはビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。これらの共重合成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
PEN樹脂を構成する共重合ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分(b-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸を含み、ジオール成分(b-2)としてエチレングリコールと、ビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物と、を含むことが好ましい。
【0050】
前記共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分中にその他の共重合成分を好ましくは0モル%以上10モル%以下、より好ましくは0モル%以上8モル%以下、さらに好ましくは0モル%以上6モル%以下、特に好ましくは0モル%以上4モル%以下、とりわけ好ましくは0モル%以上2モル%以下含有する。
ジカルボン酸成分中のその他の共重合成分の含有量を上記数値範囲内とすることにより、共重合ポリエステルのガラス転移温度及び結晶性が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性及び機械的特性が向上する。
特に好ましい形態としては、上述のとおり、その他の共重合成分としてスタッキングの強いナフタレン骨格を有する共重合成分を用いることであり、例えば、テレフタル酸やイソフタル酸等のようなベンゼン骨格を有する酸成分は5モル%以下であることが好ましく、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。
【0051】
前記共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分中に2,6-ナフタレンジカルボン酸を好ましくは90モル%以上、より好ましくは92モル%以上、さらに好ましくは94モル%以上、特に好ましくは96モル%以上、とりわけ好ましくは98モル%以上含有し、ジカルボン酸成分の全て(100モル%)が2,6-ナフタレンジカルボン酸であってもよい。
ジカルボン酸成分中の2,6-ナフタレンジカルボン酸の含有量を上記数値範囲内とすることにより、共重合ポリエステルのガラス転移温度及び結晶性が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性及び機械的特性が向上する。また、ジカルボン酸成分中の2,6-ナフタレンジカルボン酸の含有量を上記数値範囲内とすることにより、ナフタレン骨格の含有量が多くなり、スタッキングによる双極子の運動抑制効果が高くなる。そして、結果として低誘電特性が向上する。
【0052】
前記共重合ポリエステルは、ジオール成分中にその他の共重合成分を好ましくは4モル%以上70モル%以下、より好ましくは4.2モル%以上60モル%以下、さらに好ましくは4.4モル%以上50モル%以下、特に好ましくは4.6モル%以上40モル%以下、とりわけ好ましくは4.8モル%以上30モル%以下含有する。
ジオール成分中のその他の共重合成分の含有量を上記数値範囲内とすることにより、共重合ポリエステルのガラス転移温度が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性が向上する。
また、結晶性を制御することができるため、結晶化速度を遅くし、フィルムの押出成形性、延伸加工性の向上が可能となる。
また、当該含有量が70モル%以下であると、融点が高くなりすぎることがない。したがって、成形温度を高く設定する必要がなく、熱分解する懸念がない。
【0053】
前記共重合ポリエステルは、ジオール成分中にエチレングリコールを好ましくは30モル%以上96モル%以下、より好ましくは40モル%以上95.8モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上95.6モル%以下、特に好ましくは60モル%以上95.4モル%以下、とりわけ好ましくは70モル%以上95.2モル%以下含有する。
ジオール成分中のエチレングリコールの含有量を上記数値範囲内とすることにより、共重合ポリエステルの結晶性が保持され、ひいては本フィルムの耐熱性が向上する。
【0054】
PEN樹脂等の前記結晶性ポリエステル(B)の含有割合は、低誘電特性、機械的特性、耐候性及び成形性のバランスの観点から、PBN樹脂(A)100質量部に対して、50質量部以上1000質量部以下含むことが好ましく、より好ましくは55質量部以上980質量部以下、さらに好ましくは60質量部以上950質量部以下であり、特に好ましくは65質量部以上900質量部以下である。
本フィルム中の前記結晶性ポリエステル(B)の含有割合が50質量部以上であれば、結晶化速度を遅くすることができるため、フィルム製膜時の押出成形性や延伸加工性を向上させることができる。
また、50質量部以上であれば、ガラス転移温度が向上し、本フィルムの耐熱性を向上させることができる。
一方、前記結晶性ポリエステル(B)の含有割合が1000質量部以下であれば、PBN樹脂(A)の低誘電特性、機械的特性及び耐候性のバランスを大きく損なうことがないため、得られる本フィルムの誘電特性、機械的特性及び耐候性のバランスが良好なものとなる。
【0055】
その中でも、低誘電特性をより優れたものとする観点からは、PEN樹脂等の前記結晶性ポリエステル(B)の含有割合は、PBN樹脂(A)100質量部に対して、50質量部以上185質量部以下で含むことが好ましく、より好ましくは55質量部以上150質量部以下、さらに好ましくは60質量部以上125質量部以下、特に好ましくは65質量部以上110質量部以下である。
【0056】
例えば、前記結晶性ポリエステル(B)としてPEN樹脂を用いた場合、前記PBN樹脂(A)及び前記PEN樹脂は、どちらもナフタレン骨格を有する樹脂であるが、前記PBN樹脂(A)の増加に伴って誘電正接が低下し、低誘電特性をより優れたものとすることができる。かかる理由としては、密度が関係していると考えられる。
誘電率は分極の度合いを示すパラメータであり、単位体積あたりの分子の数が多いほど双極子の総和が増大するため、密度が高いほど誘電率は大きくなると考えられる。
一方、誘電正接は、交流電圧を印加すると双極子が振動することで発生するエネルギー損失の度合いを示すパラメータである。このことから、密度が高い場合、双極子の振動が互いに打ち消し合うことでエネルギー損失、すなわち誘電正接が小さくなると考えられる。
つまり、本フィルムが前記PBN樹脂(A)及び前記PEN樹脂を含有する場合、PBN樹脂(A)の含有量が増えるに伴って密度が高くなるため、誘電正接が効果的に低下する。
【0057】
また、本発明に用いる前記結晶性ポリエステル(B)は、前記PBN樹脂(A)よりもガラス転移温度が高く、それらのガラス転移温度の差は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。
PBN樹脂(A)と前記結晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度の差が上記下限値以上であることで、本フィルムのガラス転移温度が好適な範囲となり、耐熱性及び押出成形性に優れたフィルムが得られる。
PBN樹脂(A)と前記結晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度の差の上限値については、特に限定されないが、通常150℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。
【0058】
前記結晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度(Tg(B))は、70℃以上200℃以下であることが好ましく、75℃以上190℃以下であることがより好ましく、80℃以上180℃以下であることがさらに好ましい。前記結晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、本フィルムのガラス転移温度が好適な範囲となり、耐熱性及び押出成形性に優れたフィルムが得られる。
なお、ガラス転移温度は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0059】
<他の樹脂>
本フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲において、PBN樹脂(A)及び前記少なくとも1種のポリエステル以外の他の樹脂を含むことを許容することができる。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0060】
<粒子>
本フィルムは、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステルなどのポリマー製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0061】
<添加剤>
また、本フィルムは一般的に配合される添加剤を適宜含むことができる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性及び多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、及び、着色剤などの添加剤が挙げられる。
【0062】
3.製造方法
次に、本フィルムの製造方法について説明する。
【0063】
本発明の二軸延伸フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は本フィルムを製造する方法の一例であり、本フィルムはかかる製造方法により製造されるフィルムに限定されるものではない。
【0064】
本発明の実施形態の一例に係る本フィルムの製造方法は、PBN樹脂(A)及び少なくとも1種のポリエステルを含有する樹脂組成物をフィルム状に成形し、二軸延伸する製造方法である。
【0065】
PBN樹脂(A)及び少なくとも1種のポリエステル、その他の樹脂、及び添加剤を混練し、樹脂組成物を得る方法は特に限定されないが、なるべく簡便に樹脂組成物を得るために、押出機を用いて溶融混練することによって製造するのが好ましい。樹脂組成物を構成する原料を均一に混合するために、同方向二軸押出機を用いて溶融混練するのが好ましい。
混練温度は、用いる全ての重合体のガラス転移温度(Tg)以上であり、かつ結晶性樹脂に対しては、その重合体の結晶融解温度(Tm)以上であることが好ましい。使用する重合体のガラス転移温度(Tg)や結晶融解温度(Tm)に対して、なるべく混練温度が高い方が、重合体の一部のエステル交換反応が生じやすく、相溶性が向上しやすいものの、必要以上に混練温度が高くなると樹脂の分解が起こるため好ましくない。このことから、混練温度は255℃以上340℃以下が好ましく、260℃以上330℃以下がより好ましく、270℃以上320℃以下がさらに好ましく、280℃以上310℃以下が特に好ましい。混練温度がかかる範囲であれば、重合体の分解を生じることなく、相溶性や溶融成形性を向上させることができる。
【0066】
得られた樹脂組成物を、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって成形して二軸延伸フィルムを作製することができる。それぞれの成形方法において、装置及び加工条件は特に限定されない。
本フィルムは例えば、以下の方法により製造することが好ましい。
【0067】
混合して得られた樹脂組成物より、実質的に無定型で配向していないフィルム(以下、「未延伸フィルム」とも称する)を押出法で製造する。この未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を押出機により溶融し、フラットダイ又は環状ダイから押出した後、急冷することによりフラット状又は環状の未延伸フィルムとする押出法を採用することができる。この際、場合によって、複数の押出機を使用した積層構成としてもよい。
【0068】
次に、上記の未延伸フィルムを、フィルムの長手方向(MD)及びこれと直角な幅方向(TD)で、延伸効果、フィルム強度等の点から、少なくとも一方向に通常1.1~5.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々1.1~5.0倍の範囲で延伸する。
【0069】
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを、前記樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、Tg~Tg+60℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に1.1~5.0倍、好ましくは1.5~4.5倍、より好ましくは2.0~4.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によってTg~Tg+60℃の温度範囲内で横方向に1.1~5.0倍、好ましくは1.5~4.8倍、より好ましくは2.0~4.6倍に延伸することにより製造することができる。延伸倍率がかかる範囲であれば、フィルムを均一に延伸でき、配向結晶化が誘起されてフィルムの強度をディスプレイ用途に好適な範囲にできる。
また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、Tg~Tg+60℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に1.1~5.0倍に延伸することにより製造することができる。
【0070】
上記方法により延伸された二軸延伸フィルムは、引き続き熱固定される。熱固定をすることにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の処理温度は、好ましくは前記樹脂組成物の結晶融解温度Tm-1~Tm-80℃の範囲を選択する。熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、延伸時の応力が緩和され、十分な耐熱性や機械特性が得られ、破断やフィルム表面の白化などのトラブルがない優れたフィルムが得られる。
【0071】
本発明においては、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させる為に、熱固定中に幅方向に0~15%、好ましくは3~10%の範囲で弛緩を行うことが好ましい。弛緩が十分に行われ、フィルムの幅方向に均一に弛緩することで、幅方向の収縮率が均一になり、常温寸法安定性に優れたフィルムが得られる。また、フィルムの収縮に追従した弛緩が行われる為、フィルムのタルミ、テンター内でのバタツキがなく、フィルムの破断もない。
【0072】
4.用途
本発明の二軸延伸フィルムは、優れた低誘電特性を有する。
したがって、高速通信回路用に好適に用いることができる。高速通信回路用途としては、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)や、透明なフィルム上に視認されない超微細金属メッシュ配線を形成した透明アンテナ等が挙げられる。中でも、本フィルムが高い透明性を有する場合には、高い透明性が求められる透明アンテナ用基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0073】
なお、上記透明アンテナは、意匠性を損なうことがないため、モバイル機器のみならず、窓ガラスなどの建造物や車体のガラス等に貼付して5G電波を受信することができる。本フィルムが十分な耐候性をも有する場合には、屋外で使用する用途にも好ましく用いることができる。
【0074】
<<硬化樹脂層付きフィルム>>
本発明の二軸延伸フィルムは、金属層に対する密着性向上を目的として、必要に応じて、二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有していてもよく、該硬化樹脂層は、架橋剤を不揮発成分に対して70質量%以上含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。なかでも、二軸延伸フィルムの両表層上に硬化樹脂層を設けることがより好ましい。ここで、硬化樹脂層を有する二軸延伸フィルムは、硬化樹脂層付きフィルムと称し、二軸延伸フィルムとは区別される。
なお、二軸延伸フィルムと前記硬化樹脂層との間には、その他の層を有していてもよい。
【0075】
1.物性
まず、本発明の硬化樹脂層付きフィルムの物性について説明する。
【0076】
(1)オリゴマー(エステル環状三量体)析出量
本発明に係る硬化樹脂層は、金属層に対する密着性向上だけでなく、加熱によるフィルム表面へのオリゴマーの析出防止にも効果がある。オリゴマーの析出を低減させることで、オリゴマーが析出・白化して起こるフィルム外観の白化による視認性低下を抑制することができる。
本発明の硬化樹脂層付きフィルムにおいて、二軸延伸フィルムの両表層上に硬化樹脂層を有する態様では、少なくとも一方の硬化樹脂層表面のオリゴマー(エステル環状三量体)析出量は、0.50mg/m以下であることが好ましく、0.40mg/m以下であることがより好ましく、0.30mg/m以下であることがさらに好ましく、0.20mg/m以下であることが特に好ましい。
オリゴマー析出量が0.50mg/m以下であれば、表面にオリゴマーが析出・結晶化して起こるフィルム外観の白化による視認性の低下、後加工での欠陥の発生及び工程内や部材の汚染などがなく好ましい。下限値は特に制限されないが、0.01mg/m以上である。
なお、オリゴマー析出量は実施例に記載の方法により得られる値である。
【0077】
(2)厚み
硬化樹脂層の厚み(乾燥後)としては、0.003~1.0μmが好ましく、0.005~0.5μmがより好ましく、0.01~0.2μmがさらに好ましい。厚みが1.0μm以下であれば、硬化樹脂層の外観や耐ブロッキング性が十分である。一方、厚みが0.003μm以上であれば、フィルムから析出するオリゴマー析出量が少なく、良好となる。
【0078】
2.成分
次に、硬化樹脂層を構成する成分について説明する。
【0079】
硬化樹脂層は、上述のとおり、架橋剤を不揮発成分に対して70質量%以上含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。
【0080】
<架橋剤>
前記架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用でき、例えば、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。
これらの中でも、硬化樹脂層上に金属層を設ける場合、耐久密着性が向上するという観点から、オキサゾリン化合物が好適に用いられる。
また、加熱によるフィルム表面へのオリゴマーの析出防止や、硬化樹脂層の耐久性向上という観点からは、メラミン化合物が好適に用いられる。
【0081】
(オキサゾリン化合物)
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基及びシクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上のモノマーを使用することができる。
硬化樹脂層の耐久性向上の観点から、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは3~9mmol/g、さらに好ましくは5~8mmol/gの範囲である。
【0082】
(メラミン化合物)
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられる。
また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0083】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン及びビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物や、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。
ポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテル等が、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0084】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)及びイソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物及びカルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネート又は脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0085】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール及びエチルフェノールなどのフェノール系化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール及びエタノールなどのアルコール系化合物;イソブタノイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物;ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン及びエチレンイミンなどのアミン系化合物;アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム及びシクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0086】
また、イソシアネート化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
【0087】
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上のカルボジイミド構造を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
【0088】
カルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0089】
カルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100~1000、好ましくは250~700、より好ましくは300~500の範囲である。上記範囲で使用することで、硬化樹脂層の耐久性が向上する。
【0090】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩及びヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0091】
(シランカップリング化合物)
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基などの加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有化合物;p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシランなどのスチリル基含有化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有化合物;トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート基含有化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基含有化合物などが挙げられる。
【0092】
これらの架橋剤は、単独でも2種以上の併用であってもよいが、2種以上併用することにより、硬化樹脂層上に設ける金属層との密着性及び加熱後のオリゴマーの析出防止性を向上させることができる。その中でも、特に硬化樹脂層上の金属層との密着性を向上させられるオキサゾリン化合物と、加熱後のオリゴマーの析出防止性が良好なメラミン化合物との組み合わせが好ましい。
【0093】
また、硬化樹脂層上の金属層との密着性をより向上させるためには、3種以上の架橋剤を組み合わせることがより好ましく、3種以上の架橋剤の組み合わせとしては、架橋剤の1つとしてメラミン化合物を選択することが好適であり、メラミン化合物と組み合わせる相手方の架橋剤としては、オキサゾリン化合物とエポキシ化合物、カルボジイミド化合物とエポキシ化合物がさらに好ましい。
【0094】
かかる架橋剤を含有する場合、同時に架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などを併用することができる。
【0095】
本発明に係る硬化樹脂層を形成する樹脂組成物中の全不揮発成分に対する割合として、前記架橋剤は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。70質量%以上であれば、硬化樹脂層上に設けた金属層との密着性及び加熱後のオリゴマー析出防止性が良好となる。
【0096】
<バインダー樹脂>
前記樹脂組成物は、硬化樹脂層の外観の向上や、硬化樹脂層上に設ける金属層との密着性向上等のために、本発明の主旨を損なわない範囲において、バインダー樹脂を含有することも可能である。
前記バインダー樹脂としては、従来公知のものを使用できるが、硬化樹脂層上に設ける層との密着性向上の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0097】
<粒子>
また、前記樹脂組成物は、ブロッキング、滑り性改良を目的として、粒子を含有することも可能である。その平均粒径は、フィルムの透明性の観点から、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。一方、滑り性をより効果的に向上させるために、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、特に好ましくは硬化樹脂層の膜厚よりも大きい範囲である。
なお、粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。
【0098】
<その他>
さらに、本発明の主旨を損なわない範囲において、前記樹脂組成物には必要に応じて、架橋触媒、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することが可能である。
【0099】
なお、硬化樹脂層中の各種化合物(成分)の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
【0100】
3.製造方法
次に、硬化樹脂層の形成方法について説明する。
【0101】
硬化樹脂層の形成方法について説明するが、以下の説明は、硬化樹脂層を形成する方法の一例であり、かかる形成方法に限定されるものではない。
【0102】
前記樹脂組成物は、一般的に、水、有機溶剤、又はこれらの混合液により希釈されていることが好ましく、硬化樹脂層は、樹脂組成物の希釈液を、フィルムの表面に塗布液としてコーティングして、乾燥することにより形成するとよい。
フィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレイコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗布方法を用いることができる。
なお、塗布剤(塗布液)のフィルムへの塗布性、密着性を改良するために、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0103】
フィルム表面には必要に応じてコーティングを施すことができ、コーティングにより、前記硬化樹脂層を形成するとよい。硬化樹脂層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティングがあるが、インラインコーティングで行うことが好ましい。インラインコーティングは、フィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、原料であるポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングするが、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に幅方向(横方向)に延伸する方法が好ましい。なお、インラインコーティングによって硬化樹脂層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液又は水分散体として、固形分濃度が0.1~50質量%程度を目安に調整した塗布液を用いることが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の1種以上の有機溶剤を含有していてもよい。
【0104】
フィルム上に硬化樹脂層を形成する際の乾燥及び硬化条件に関しては、特に制限されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより硬化樹脂層を設ける場合、好ましくは80~200℃で3~40秒間、より好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより硬化樹脂層を設ける場合は、好ましくは70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0105】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに関わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
【0106】
4.用途
本発明の硬化樹脂層付きフィルムは、上述のとおり、オリゴマーの析出を低減させることができるため、フィルム外観の白化による視認性低下も抑制することができる。そのため、本発明の硬化樹脂層付きフィルムは、透明性を損なわず、優れた低誘電特性を有する。
したがって、高速通信回路用に好適に用いることができる。高速通信回路用途としては、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)や、透明なフィルム上に視認されない超微細金属メッシュ配線を形成した透明アンテナ等が挙げられる。中でも、高い透明性が求められる透明アンテナ用基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0107】
<<金属積層フィルム>>
本発明の金属積層フィルムにおいて、前記硬化樹脂層上には金属層を有していてもよい。なお、前記硬化樹脂層と金属層との間には、その他の層を有していてもよい。
【0108】
1.物性
まず、本発明の金属積層フィルムの物性について説明する。
【0109】
(1)厚み
金属層の厚みは、2~30μmであることが好ましく、3~25μmであることがより好ましい。金属層の厚みが上記下限値以上であると、導電性が十分に担保され、上記上限値以下であると金属層を設けた際に視認性の低減を抑制することができる。
なお、金属層の厚みはサンプル断面を電子顕微鏡で観察する方法により、測定できる。
【0110】
2.成分
次に、金属層を構成する成分について説明する。
【0111】
金属層は、金属を主成分として含有する層である。ここでいう、主成分とは、金属層の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を金属が占めるという意味である。
使用する金属に関しては、銅、銅合金、銀、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などが挙げられるが、電磁波遮蔽特性の観点から、銅、銀が好ましく、柔軟性(フレキシブル性)の観点から、銅がより好ましい。
【0112】
金属層は、二軸延伸フィルム及び硬化樹脂層付きフィルムが有する透明性を保持する観点から、例えば、メッシュ形状やワイヤー形状のようにパターン化されていることが好ましい。
【0113】
3.用途
本発明の金属積層フィルムは、上述のとおり、透明性を損なわず、優れた低誘電特性を有する。
したがって、高速通信回路用に好適に用いることができる。高速通信回路用途としては、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)や、透明なフィルム上に視認されない超微細金属メッシュ配線を形成した透明アンテナ等が挙げられる。中でも、高い透明性が求められる透明アンテナ用基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0114】
<<語句の説明など>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0115】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0116】
1.評価方法
(1)誘電正接及び誘電率
実施例又は比較例で得られたフィルムについて、株式会社エーイーティー社製の誘電率測定システム(空洞共振器(TEモード)、制御ソフトウェア、ベクトルネットワークアナライザMS46122B(アンリツ株式会社製))を用いてJIS R1641に準じて、周波数10GHz及び、28GHz、40GHzにおける誘電正接及び誘電率を測定した。
【0117】
(2)引張破断強度
実施例又は比較例で得られたフィルムについて、引張試験機(株式会社島津製作所製 引張試験機AG-1kNXplus)を用い、JIS K 7127:1999に準じた方法により引張破断強度を測定した。試験片は、フィルムを測定方向の長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離40mmでチャックし、引張速度200mm/分で引っ張り、破断点における応力を引張破断強度として3回測定し、それぞれの平均値を求めた。
なお、上記引張試験はフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれ実施した。
【0118】
(3)粘弾性測定による貯蔵弾性率
実施例又は比較例で得られたフィルムについて、動的粘弾性測定装置(機種名:「DMS6100」、SIIナノテクノロジー(株)製)を用い、JISK7244-1:1998に準じた方法により引張変形の動的粘弾性を測定した。試験は、-70℃から300℃まで3℃/分で昇温し、周波数10Hz、歪み0.07%で引張変形した際の貯蔵弾性率のうち、23℃における値を求めた。
【0119】
(4)湿熱試験後の引張破断強度及び強度保持率
実施例又は比較例で得られたフィルムを測定方向の長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出し、JISC60068-2-66:2001に準じて湿熱試験を実施した。湿熱試験は、エスペック株式会社製の高度加速寿命試験装置(EHS-221M)を用い、120℃、85%RHの環境下に96時間静置した後、さらに室温(23℃)で18時間静置した。湿熱試験後の試験片について、引張試験機(株式会社島津製作所製 引張試験機AG-1kNXplus)を用い、JIS K 7127:1999に準じた方法により引張破断強度を測定した。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離40mmでチャックし、引張速度200mm/分で引っ張り、破断点における応力を引張破断強度として3回測定して平均値を求め、下記式に従って強度保持率を算出した。なお、上記引張試験はフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれ実施した。
強度保持率=([湿熱試験後の引張破断強度]/[(2)で測定した引張破断強度])×100
【0120】
(5)ガラス転移温度
実施例又は比較例で得られたフィルムについて、DSC8000(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分にて一度融解温度まで昇温させたのちに降温速度10℃/分にて降温させ、次いで、加熱速度10℃/分の昇温過程におけるガラス転移温度を測定した。
【0121】
(6)結晶融解温度
実施例又は比較例で得られたフィルムについて、DSC8000(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分にて一度融解温度まで昇温させたのちに降温速度10℃/分にて降温させ、次いで、加熱速度10℃/分の昇温過程における結晶融解温度を測定した。
【0122】
(7)成形性
押出成形において、キャストロールで冷却固化して延伸前シートを得る際に、結晶化して白化せずに透明なフィルムが得られた場合には○、結晶化して白化したフィルムが得られた場合には×と評価した。
【0123】
(8)熱収縮率
本フィルムを測定方向の長さ120mm、幅10mmの長方形に切り出し、端部から長さ100mmのところに印をつけたものを用いた。これら試験片の端部をクリップで挟んで吊り下げ、150℃で30分間加熱した。冷却後、試験片端部から印までの長さを測定して熱収縮率を求めた。
なお、測定は長手方向(MD)及び幅方向(TD)の両方行った。
【0124】
(9)ヘーズ
ヘーズメーターNDH-7000II(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7136(2000年)に基づいて、全光線透過率及び拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
【0125】
(10)フィルムの厚み
本フィルムの厚みについては、1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定し、その平均を厚みとした。
【0126】
(11)硬化樹脂層の厚み
硬化樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、硬化樹脂層断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
【0127】
(12)加熱による硬化樹脂層表面のオリゴマー(エステル環状三量体)析出量
実施例で得られた硬化樹脂層付きフィルムについて、縦300mm、横225mmのサイズの試料サンプルとして、所定の温度(180℃)に保った熱風式オーブン中、120分間熱処理を施した。熱処理後、測定面を内面として、縦200mm、横125mmの上部が開いている箱型の形状を作製した。
次いで、上記の箱型形状の中にDMF(ジメチルホルムアミド)10mLを入れて3分放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:LC-7A 移動相A:アセトニトリル、移動相B:2%酢酸水溶液、カラム:三菱ケミカル株式会社製「MCI GEL ODS 1HU」、カラム温度:40℃、流速:1mL/分、検出波長:254nm)に供給して、DMF中のエステル環状三量体量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、硬化樹脂層表面のオリゴマー(エステル環状三量体)量(mg/m)とした。DMF中のエステル環状三量体は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
なお、標準試料は、予め分取したエステル環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し、作製した。
【0128】
2.材料
実施例及び比較例において使用したポリエステル原料やポリエステルフィルムは、以下のとおりである。
【0129】
[PBN樹脂(A)]
PBN樹脂(A)として、ジカルボン酸成分(a-1):2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分(a-2):1,4-ブタンジオール=100モル%のホモPBNを用いた。当該PBN樹脂のガラス転移温度(Tg(A))は77℃であった。
【0130】
[PEN樹脂]
少なくとも1種のポリエステルとして、結晶性ポリエステル(B)である、ジカルボン酸成分:2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分:エチレングリコール=100モル%のホモPENを用いた。当該PEN樹脂のガラス転移温度(Tg)は121℃であった。以下、PEN樹脂を(B)とする。
【0131】
[ポリエチレンテレフタレートフィルム]
PETフィルムとして、厚み50μmの二軸延伸PETフィルム(三菱ケミカル株式会社製「ダイアホイル T100-50」)を用いた。
【0132】
また、硬化樹脂層を形成するための樹脂組成物としては、下記を用いた。
【0133】
[樹脂組成物]
(A1):ヘキサメトキシメチロールメラミン
(A2):オキサゾリン化合物であるエポクロス(株式会社日本触媒製)
オキサゾリン基量7.7mmоl/g
(A3):ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
(B1):平均粒径0.07μmのシリカ粒子
【0134】
なお、実施例で用いた塗布液の組成は表1に示すとおりである。より具体的には、下記表1に示す組成にて撹拌混合して得られる樹脂組成物を水で希釈して、塗布液を調整した。
【0135】
【表1】
【0136】
(実施例1)
ペレット状の(A)10質量%に対して、ペレット状の(B)を90質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が900質量部)、ドライブレンドした後、285℃に設定したΦ40mm二軸押出機にて溶融混練し、ギャップ1.0mmのTダイ内からフィルムとして押出し、105℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約450μmの膜状物(キャストフィルム)を得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:170℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度130℃、延伸温度135℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に4.0倍延伸を行い、その後テンター内にて熱固定しながら、幅方向(TD)にフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
【0137】
(実施例2)
ペレット状の(A)20質量%に対して、ペレット状の(B)を80質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が400質量部)、ドライブレンドした後、キャストロール温度を100℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:160℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度120℃、延伸温度125℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に3.9倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
【0138】
(実施例3)
ペレット状の(A)30質量%に対して、ペレット状の(B)を70質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が233質量部)、ドライブレンドした後、キャストロール温度を95℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:155℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度115℃、延伸温度120℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に3.9倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
【0139】
(実施例4)
ペレット状の(A)40質量%に対して、ペレット状の(B)を60質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が150質量部)、ドライブレンドした後、キャストロール温度を90℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:145℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度105℃、延伸温度110℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に3.8倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
【0140】
(実施例5)
ペレット状の(A)50質量%に対して、ペレット状の(B)を50質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が100質量部)、ドライブレンドした後、キャストロール温度を81℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:135℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度95℃、延伸温度100℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に4.0倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
【0141】
(実施例6)
ペレット状の(A)60質量%に対して、ペレット状の(B)を40質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が67質量部)、ドライブレンドした後、キャストロール温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:133℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度95℃、延伸温度100℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に3.7倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
【0142】
(実施例7)
実施例6の長手方向(MD)延伸後、幅方向(TD)延伸前に、一軸延伸フィルムの両面に、前記塗布液を塗布し、厚み(乾燥後)が0.04μmの硬化樹脂層を有する二軸延伸フィルム(硬化樹脂層付きフィルム)を得た。
なお、実施例7においては、長手方向(MD)に100℃で3.0倍延伸した。さらに、テンター内にて100℃で予熱した後、幅方向(TD)に110℃で4.5倍に延伸した。最後に200℃で熱処理を施し、二軸延伸フィルムの厚みが125μmとなるように製膜した。
得られた硬化樹脂層付きフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
また、得られた硬化樹脂層付きフィルムの加熱による硬化樹脂層表面のオリゴマー析出量の評価結果を下記表3に示す。
【0143】
(比較例1)
ペレット状の(A)100質量%を使用し、キャストロールの温度を75℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを製膜しようとしたところ、結晶化と思われる白化が起き、キャストロールへの密着不良のため、外観が悪く、厚みの不均一なフィルムとなり、延伸可能な非晶フィルムが採取できなかった。したがって、表2の成形性を×とした。
【0144】
(比較例2)
ペレット状の(B)100質量%を使用し、キャストロールの温度を110℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:175℃)で加熱して長手方向(MD)に2.6倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度125℃、延伸温度130℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に3.8倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
【0145】
(比較例3)
二軸延伸PETフィルムについて評価を行った結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
なお、表3中の0.17/0.17は、片面のオリゴマー析出量が0.17mg/m、もう片面のオリゴマー析出量が0.17mg/mであることを意味する。
【0149】
さらに、以下表4に、実施例1~7、比較例2及び3のフィルムについて、10GHz及び40GHzにおける誘電正接と誘電率を示す。
【0150】
【表4】
【0151】
本発明の二軸延伸フィルムは、上記実施例1~6から明らかなように、高周波数帯域で低誘電特性を有することから、伝送損失が小さく、5Gの高速大容量のデータ通信に適用が可能である。また、引張破断強度が大きいことから、十分な機械的特性を有する。さらに、貯蔵弾性率が大きいことから、フィルムのコシが強く、ハンドリング性が良好である。また、湿熱試験後の引張破断強度及び強度保持率が良好なことから、耐加水分解性に優れており、十分な耐候性を有するといえる。加えて、熱収縮率が小さく、耐熱性にも優れ、さらに、ヘーズが小さく、透明性に優れる。
これらの特性に加え、汎用性の高いポリエステルフィルムであることから、コスト的にも有利であり、かつ製造も容易である。
【0152】
本発明の硬化樹脂層付きフィルムにおいては、実施例7の結果から、二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有することで、硬化樹脂層表面のオリゴマー析出量を低減させ得る。
したがって、本発明の硬化樹脂層付きフィルムは、視認性も良好であり、特に高い透明性が求められる透明アンテナ用基材フィルムとして好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルムは、優れた低誘電特性を有するため、高速通信回路用、特に、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)や、透明なフィルム上に視認されない超微細金属メッシュ配線を形成した透明アンテナ等に好適に用いることができる。
中でも、本発明の二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルムが高い透明性を有する場合には、上記透明アンテナ用基材フィルムとして好ましく用いることができる。
特に、本発明の二軸延伸フィルム、硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルムが、低誘電特性、機械的特性及び耐候性のバランスに優れる場合には、上記用途の中でも、屋外での使用にも好適に用いることができる。