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特開2022-173086ブラックレジスト用感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜の製造方法、ならびに該硬化膜を有するカラーフィルターおよび隔壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173086
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ブラックレジスト用感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜の製造方法、ならびに該硬化膜を有するカラーフィルターおよび隔壁
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20221110BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221110BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20221110BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20221110BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221110BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221110BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221110BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221110BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 505
G03F7/031
G03F7/004 504
G03F7/075 501
G02B5/20 101
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/10
H05B33/12 E
H05B33/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067297
(22)【出願日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2021078591
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠樹
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
3K107
【Fターム(参考)】
2H148BD11
2H148BE36
2H148BF16
2H148BG06
2H148BH04
2H148BH18
2H225AC00
2H225AC31
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC54
2H225AD06
2H225AN33P
2H225AN39P
2H225AP03P
2H225BA05P
2H225BA16P
2H225BA32P
2H225CA18
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC25
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107EE22
3K107EE27
3K107FF14
3K107GG06
3K107GG12
(57)【要約】
【課題】形成した膜面側の反射率を低減することができ、微細なパターン形成が可能で、PCT後においてもガラス基板との密着性が高い遮光膜を形成することが可能なブラックレジスト用感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、(a)エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、(b)光重合性化合物と、(c)オキシムエステル系光重合開始剤と、(d)遮光剤と、(e)カップリング剤と、(f)フッ素原子およびエチレン性不飽和結合を分子内に有する界面活性剤と、(g)溶剤とを含む、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物であって、前記(a)成分が特定の構造を有する樹脂であり、溶剤を除く固形分中に(e)成分を0.01~10質量%、(f)成分を0.01~10質量%含有するブラックレジスト用感光性樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、
(b)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(c)オキシムエステル系光重合開始剤と、
(d)遮光剤と、
(e)少なくともカルボキシ基と反応性を有する官能基を持つカップリング剤と、
(f)フッ素原子およびエチレン性不飽和結合を分子内に有する界面活性剤と、
(g)溶剤と、
を含む、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物であって、
前記(a)成分は下記一般式(1)で表される樹脂であり、溶剤を除く固形分中に(e)成分を0.01~10質量%、(f)成分を0.01~10質量%含有することを特徴とする、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立して炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して0~3の数である。Gは、それぞれ独立して(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)で表される置換基または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1~20の数である。)
【化2】
【化3】
(式(2)、(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。)
【化4】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。)
【請求項2】
(d)成分がカーボンブラックであり、(g)成分を除く固形分中に30~60質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を、基材上に塗布し、乾燥させて、前記ブラックレジスト用感光性樹脂組成物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、
前記放射線を照射された塗膜を現像し、未露光部分を除去する現像工程と、
前記現像後の塗膜を加熱硬化する加熱硬化工程と、
を含む、硬化膜の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の硬化膜を遮光膜として有するカラーフィルター。
【請求項6】
請求項3に記載の硬化膜で形成した隔壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物、当該組成物を用いた硬化膜、および当該硬化膜の製造方法に関するものであり、さらには、その硬化膜を適用した、カラーフィルター等の遮光膜、また、有機ELの画素定義層(PDL)や光変換層等として適用される隔壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種表示装置において、表面の反射防止と視野角補正の位相差機能をどこかに付ける必要性があるため、カラーフィルターや円偏光板にその機能を付加して視認性を良好にしている。例えば、有機EL表示装置においては、円偏光板を利用していることが多く、表面の反射防止効果が十分にあるが、一方で有機ELの発光の一部を吸収してしまう効果もあるため、有機ELの発光効率を低下させ、これにより、モバイル機器においては電力消費を大きくしてしまうことになる。このため、円偏光板に代わる部材として、カラーフィルターと反射防止膜を組合せる方式も検討されてきているが、この場合、外光の反射防止効果を十分に発現し、電力消費も可能な限り低減させるために、カラーフィルターのブラックマトリックスの低反射化も求められるようになってきている。
【0003】
表示装置において、装置の構成によってブラックマトリックスをガラス等の透明基板を通して視認する場合と、ブラックマトリックスという遮光膜の膜面側から視認する場合があり、遮光膜面側の低反射化は、バインダー樹脂の低屈折率化による低反射化等が検討されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/129324号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの知見によると、特許文献1に記載の遮光性樹脂組成物では、1~2μmの膜厚において高遮光で10μm以下といった高精細のブラックマトリックスを形成できるという条件まで満たせる感光性樹脂組成物にはまだまだ課題がある。また、2~10μmの膜厚で、インクジェット法等により有機EL発光層や色域調整等のための光変換層を形成するための隔壁を形成する場合に、感光性樹脂組成物で形成したパターンの断面形状を適正なものとし、さらに低反射機能も具備することができるといったように、必要となる特性を同時に満足することができる技術についてもまだまだ課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構造を有する不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含むブラックレジスト用感光性樹脂組成物の配合設計を工夫することにより、カラーフィルター用高精細ブラックマトリックスや各種隔壁を形成するのに好適であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
(1)本発明の感光性樹脂組成物は、
(a)エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、
(b)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(c)オキシムエステル系光重合開始剤と、
(d)遮光剤と、
(e)少なくともカルボキシ基と反応性を有する官能基を持つカップリング剤と、
(f)フッ素原子およびエチレン性不飽和結合を分子内に有する界面活性剤と、
(g)溶剤と、
を含む、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物であって、
前記(a)成分は下記一般式(1)で表される樹脂であり、溶剤を除く固形分中に(e)成分を0.01~10質量%、(f)成分を0.01~10質量%含有することを特徴とする、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物である。
【0008】
【化1】
【0009】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立して炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して0~3の数である。Gは、それぞれ独立して(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)で表される置換基または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1~20の数である。)
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
(式(2)、(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。)
【0013】
【化4】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。)
【0014】
(2)本発明はまた、(1)の感光性樹脂組成物において、(d)成分がカーボンブラックであり、(g)成分を除く固形分中に30~60質量%含有することを特徴とするブラックレジスト用感光性樹脂組成物である。
【0015】
(3)本発明はまた、(1)又は(2)の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜である。この硬化膜はカラーフィルターのブラックマトリックスとしての遮光膜や各種隔壁として利用することができる。
【0016】
(4)本発明はまた、(1)又は(2)の感光性樹脂組成物を、基材上に塗布し、乾燥させて、感光性樹脂組成物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、
前記放射線を照射された塗膜を現像し、未露光部分を除去する現像工程と、
前記現像後の塗膜を加熱硬化する加熱硬化工程と、
を含む、硬化膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1~2μmの膜厚において高遮光で10μm以下といった高精細のブラックマトリックスを形成でき、OD3/μmといった高遮光の硬化膜面においても反射率を5%以下といった低いレベルに抑えることができることが分かった。また、2μm以上といった膜厚で隔壁を形成したとき、隔壁として必要とされるパターン断面形状や表面の撥インキ特性を付与することができることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物について詳細に説明する。本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、前記の、(a)エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、(b)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(c)オキシムエステル系光重合開始剤と、(d)遮光剤と、(e)少なくともカルボキシ基と反応性を有する官能基を持つカップリング剤と、(f)フッ素原子およびエチレン性不飽和結合を分子内に有する界面活性剤と、(g)溶剤と、を含む。
【0019】
1.感光性樹脂組成物
[(a)成分]
(a)成分は、エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂である。(a)成分を含むことにより、感光性樹脂組成物に、光重合性モノマーと組合せての光硬化性と、アルカリ現像に対する可溶性とを付与することができる。
【0020】
(a)成分であるアルカリ可溶性樹脂は、下記式(1)で表される。
【化5】
【0021】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立して炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して0~3の数である。Gは、それぞれ独立して(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)で表される置換基または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1~20の数である。)
なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、これらの一方または両方を意味する。後述の「(メタ)アクリル酸」や「(メタ)アクリレート」などについても、同じように総称を意味する。
【0022】
【化6】
【0023】
【化7】
【0024】
(式(2)、(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。)
【0025】
【化8】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。)
【0026】
次に、上記一般式(1)で表される(a)エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0027】
先ず、下記一般式(5)で表される、1分子内にいくつかのオキシアルキレン基を有してもよい、ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a-1)(以下、単に「エポキシ化合物(a-1)」ともいう)に、(メタ)アクリル酸か、下記一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸誘導体か、または下記一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体のいずれか又は2種以上を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートであるジオール化合物を得る。なお、上記ビスアリールフルオレン骨格は、ビスフェノールフルオレン骨格であることが好ましい。
【0028】
【化9】
【0029】
(式(5)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0~3の数である。)
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
(式(6)、(7)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。)
【0033】
上記エポキシ化合物(a-1)と上記(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる化合物は、式(8)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(h)(以下、単に「一般式(8)で表されるジオール(h)」ともいう)である。
【0034】
【化12】
【0035】
(式(8)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)で表される置換基または下記一般式(3)で表される置換基であり、Rは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0~3の数である。)
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
(式(2)、(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。)
【0039】
一般式(8)で表されるジオール(h)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物を反応させての、一般式(1)で表されるエチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。
【0040】
溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0041】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応においては触媒を使用することが好ましく、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が記載されている。
【0042】
次に、上記エポキシ化合物(a-1)と上記(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体との反応で得られる一般式(8)で表されるジオール(h)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸無水物(i)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(j)とを反応させて、下記一般式(1)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0043】
【化15】
【0044】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0~3の数である。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)で表される置換基または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して、水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1~20の数である。)
【0045】
【化16】
【0046】
【化17】
【0047】
(式(2)、(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。)
【0048】
【化18】
【0049】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2である。)
【0050】
一般式(1)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分は、一般式(8)で表されるジオール(h)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(i)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(j)とを併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0051】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(i)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらの酸一無水物等が含まれる。
【0052】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0053】
また、上記脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0054】
また、上記芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0055】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸であることが好ましい。
【0056】
また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸においては、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(j)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等が含まれる。
【0058】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。
【0059】
また、上記脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。
【0060】
また、芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸等が含まれる。
【0061】
また、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、例えば、国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物群であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、ターフェニルジオール等)の2個のヒドロキシル基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基が反応してエステル結合した形の酸二無水物である。これらの化合物を以下、芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステルと記載する。
【0062】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることが好ましい。また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物、および芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステルは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
一般式(8)で表されるジオール(h)と酸成分(i)および(j)との反応については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0064】
ここで、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(h)、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(i)、テトラカルボン酸二無水物(j)とのモル比が(h):(i):(j)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0065】
たとえば、酸一無水物(i)、酸二無水物(j)を用いる場合には、重合性不飽和基を含有するジオール(h)に対する酸成分の量〔(i)/2+(j)〕のモル比[〔(i)/2+(j)〕/(h)]が0.5~1.0となるように反応させることが好ましい。ここで、モル比が0.5以上である場合には、未反応の重合性不飽和基を含有するジオールの含有量を増大させることがないのでアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。一方、モル比が1.0以下である場合には、式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大するのを抑制できることから、アルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(h)、(i)および(j)の各成分のモル比は、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0066】
このときの(i)ジカルボン酸またはトリカルボン酸またはその酸一無水物と(j)テトラカルボン酸またはその酸二無水物とのモル比(i)/(j)は、0.01以上10.0以下が好ましく、0.02以上3.0未満がより好ましい。モル比(i)/(j)が上記範囲内であると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量を得ることができる。なお、モル比(i)/(j)が小さいほど分子量は大きくなり、アルカリ溶解性は低下する傾向にある。
【0067】
また、上記反応で合成されるエチレン性不飽和結合含有アルカリ可溶性樹脂は、溶解速度を調整する観点から、重量平均分子量(Mw)が1000以上20000以下であることが好ましく、2000以上10000以下であることがより好ましく、酸価が30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)で求めることができる。また、酸価は、例えば、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて求めることができる。
【0068】
なお、上記(a)成分であるエチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
[(b)成分]
(b)成分は、少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物である。(b)成分を含むことにより、露光感度および現像性を良好なものとすることができる。
【0070】
(b)成分少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、3個以上10個以下の(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。上記光重合性化合物が、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することにより、光重合性化合物の放射線(例えば紫外線)に対する高い感度が得られる。
【0071】
上記(b)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、デンドリマー型多官能アクリレート、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマーなどが含まれる。これらの光重合性化合物は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記樹枝状ポリマーの例には、多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の中の炭素-炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状ポリマーが含まれる。具体的には、一般式(9)で表される多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基と一般式(10)で表される多価メルカプト化合物のチオール基とを反応させて得られる樹枝状ポリマーが含まれる。
【0073】
【化19】
【0074】
(式(9)中、Rは水素原子またはメチル基であり、RはR(OH)のk個のヒドロキシル基の内s個のヒドロキシル基を式中のエステル結合に供与した残り部分である。好ましいR(OH)としては、炭素数が2~8の非芳香族の直鎖または分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、またはこれらの多価アルコールまたは多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。kおよびsは独立に2~20の整数であり、k≧sである。)
【0075】
【化20】
【0076】
(式(10)中、Rは単結合または2~6価のC1~C6の炭化水素基であり、qはRが単結合であるときは2であり、Rが2~6価の基であるときは2~6の整数である。)
【0077】
一般式(9)で表される多官能(メタ)アクリレートの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アルコキシ変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
一般式(10)で表される多価メルカプト化合物の例には、1,2-ジメルカプトエタン、1,3-ジメルカプトプロパン、1,4-ジメルカプトブタン、ビスジメルカプトエタンチオール、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)などが含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
また、上記樹枝状ポリマーの合成に際しては、必要に応じて重合防止剤を加えてよい。重合防止剤の例には、ヒドロキノン系化合物、フェノール系化合物が含まれる。これらの具体例には、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、p-tert-ブチルカテコール、クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール(BHT)などが含まれる。
【0080】
上記(a)成分と上記(b)成分との配合割合は、重量比(a)/(b)で50/50以上90/10以下が好ましく、60/40以上80/20以下がより好ましい。上記(a)成分の配合割合が50/50以上であると、光硬化後の硬化膜の硬度が十分であり、また、未露光部において塗膜の酸価が十分高いためにアルカリ現像性が良く、直線的でシャープなパターンを形成できる。また、上記(a)成分の配合割合が、90/10以下であると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が十分なので、所望する架橋構造の形成を行うことができる。また、樹脂成分における酸価が適当で、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が過度に高くないことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0081】
[(c)成分]
(c)成分は、ケトオキシムを含むオキシムエステル系光重合開始剤である。(c)成分を含むことにより、遮光剤を一定以上含み、遮光度の大きなブラックレジスト用感光性樹脂組成物においても、放射線(例えば紫外線)が照射された部分の反応が十分に進行し、現像時の硬化した部分の溶解性を低下させて所望するパターンを形成することができる。
【0082】
オキシムエステル系光重合開始剤の例には、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボキシレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-o-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-o-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-o-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジエン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセテート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセテート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシムなどが含まれる。
【0083】
さらに、より高感度な化合物群として、一般式(11)または一般式(12)で表されるO-アシルオキシム系光重合開始剤が含まれる。これら化合物群の中で、遮光剤を高顔料濃度で用いて遮光膜パターンを形成する場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるO-アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0084】
【化21】
【0085】
式(11)中、R、R10は、それぞれ独立に、C1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基またはC4~C12の複素環基であり、R11はC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基またはC7~C20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基はC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0086】
【化22】
【0087】
式(12)中、R12およびR13はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R14は独立して炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR12~R14の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0088】
以上例示したオキシムエステル系光重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
また、オキシムエステル系光重合開始剤と併用することができる光重合開始剤の例には、アセトフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、イミダゾール化合物などが含まれる。なお、本発明でいう光重合開始剤は増感剤を含む意味で使用される。
【0090】
なお、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上述の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加してもよい。そのような化合物の例には、ベンゾフェノンと組みわせて使用すると効果のあるアミン系化合物が含まれる。
【0091】
(c)成分の含有量は(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、4質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。(c)成分の含有量が3質量部以上であると、適度な光重合の速度を有するので、十分な感度を担保できる。また、(c)成分の含有量が30質量部以下であると、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0092】
[(d)成分]
(d)成分は、遮光剤であり、黒色顔料、混色有機顔料を例示することができる。
【0093】
黒色顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラック、カーボンブラック、チタンブラック、酸化クロム、酸化鉄などが含まれる。
【0094】
混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色を混合して、擬似黒色化されたものが含まれる。
【0095】
上記(d)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0096】
なお、(d)成分として混色有機顔料を用いる場合に使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
【0097】
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0098】
上記遮光剤の中では、黒色顔料であるカーボンブラックが遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との相溶性が良好な点で好ましい。
【0099】
(d)成分の配合割合については、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形分に対して30質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下がより好ましく、45質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。遮光剤が、感光性樹脂組成物中の固形分に対して30質量%以上であると、遮光性を十分に得ることができる。遮光剤が、60質量%以下であると、十分な量の感光性樹脂を含むため、所望する現像特性および膜形成能を得ることができる。
【0100】
上記(d)成分は分散媒に分散させた遮光剤分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、その際には分散剤を添加することができる。分散剤は、顔料(遮光成分)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0101】
分散媒の例には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等が含まれる。
【0102】
分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。とくに、上記分散剤は、遮光剤への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下、数平均分子量(Mn)が1000以上100000以下の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、遮光剤に対して1質量%以上35質量%以下が好ましく、2質量%以上25質量%以下がより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0103】
[(e)成分]
(e)成分は、カップリング剤である。本発明に係るブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、ガラス等の無機材料の表面と硬化膜との間の化学結合による密着性を向上させる観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤を含む。
【0104】
カップリング剤としては、アルカリ現像液での現像に寄与する(a)成分等に含まれるカルボキシ基との反応性が一定以上ある、反応性基を有するものを好ましく用いることができ、その反応性基としては、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基、エポキシ基、メルカプト基等を例示することができる。そのカップリング剤の具体例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。保存安定性を重視する場合には、カルボキシ基との反応性が比較的小さいものの方が有利になるため、ウレイド基またはそれと同じくらいのカルボキシ基との反応性を有する基を選択することが好ましい。
【0105】
カップリング剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して、0.01質量%以上10質量%以下とする。0.01質量%以上5質量%以下が好ましい。カップリング剤の含有量が、0.01質量%以上であると、ガラス基板と硬化膜との間で十分な密着性を得ることができる。カップリング剤の含有量を10質量%以下であると、凝集異物の発生を抑制できる。
【0106】
[(f)成分]
(f)成分は、フッ素原子およびエチレン性不飽和結合を分子内に有する界面活性剤である。このような(f)成分を含有することにより、固形分中の遮光剤を除いた樹脂組成物の屈折率を小さい方向に誘導することができ、製膜時に膜表面付近に存在する界面活性剤がアルカリ現像時に溶出して、形成した膜の撥インキ効果がアルカリ現像後に低下することを抑制することができることから、例えばOD3/μmといった高遮光の硬化膜面においても反射率を5%以下といった低いレベルに抑えることができる。また、2μm以上といった膜厚で隔壁を形成したとき、隔壁として必要とされるパターン断面形状や表面の撥インキ特性を付与することができる。とくに、エチレン性不飽和結合を有することにより、上記(a)成分や(b)成分との結合することが可能であることから、効果的に上記の作用を発現させることができると推測される。
【0107】
(f)成分の例は、エチレン性不飽和基を有する側鎖とパーフルオロアルキル基又はパーフルオロエーテル基を有する側鎖とを有する重合体であり、特開2010-164965や特開2010-250256に記載されている重合体を特に制限なく使用することができる。具体的な界面活性剤としては、メガファックRS-56、RS-72-A、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90(DIC社製)等を例示することができる。この(f)成分は、感光性樹脂組成物の固形分に対して、0.01質量%以上10質量%以下とする。好ましい下限値としては、0.05質量%以上であり、より好ましい下限値は0.1質量%以上である。一方、好ましい上限値は5.0質量%以下であり、より好ましい上限値は3.0質量%以下であり、さらに好ましい上限値は2.5質量%以下である。0.01質量%未満であると、期待される効果を硬化膜に付与することができないおそれがあり、また、10質量%超過では表面の撥インキ性が強くなりすぎ、特に直上に製膜しようとする場合に均一な製膜ができなくなるおそれがあるからである。
【0108】
[(g)成分]
(g)成分は、溶剤である。(g)成分を含むことにより、上述の(a)~(f)成分を含む液体状の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0109】
(g)成分の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類などが含まれる。(g)成分は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0110】
(g)成分の含有量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物の全質量に対して60質量%以上90質量%以下が好ましい。(g)成分の含有量が、60質量%以上であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布しやすい粘度とすることができ、90質量%以下であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布した後の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0111】
[その他の成分]
本発明に係るブラックレジスト用感光性樹脂組成物には、必要に応じて、(a)成分以外のその他の樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、(f)成分以外のその他の界面活性剤等の添加剤を配合することができる。
【0112】
(a)成分以外のその他の樹脂成分の例には、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が含まれる。
【0113】
エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jER YX4000:三菱ケミカル株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの共重合体、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、リカレジンHBE-100:新日本理化株式会社製)などのグリシジル基を有するエポキシ化合物、1,4-シクロヘキサンジメタノール-ビス3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,1-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-m-ジオキサン(例えば、アラルダイトCY175:ハンツマン社製)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、CYRACURE UVR-6128:ダウ・ケミカル社製)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)などの脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB・JP-100:日本曹達株式会社製)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。
【0114】
硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。
【0115】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。レベリング剤や消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。
【0116】
(f)成分以外のその他の界面活性剤の例には、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2-ラウリル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが含まれる。
【0117】
本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、上述の(a)~(g)成分を混合することにより得ることができる。また、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、上記(a)~(f)成分を合計で80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことが望ましい。
【0118】
2.遮光膜および隔壁の製造方法
カラーフィルター等の遮光膜および隔壁の製造方法は、工程的にはほぼ同一であり、以下に説明する。
【0119】
本発明に係る遮光膜の製造方法は、(1)上述のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥させて、上記ブラックレジスト用感光性樹脂組成物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、(2)上記塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、(3)放射線を照射された塗膜を現像し、未露光部分を除去する現像工程と、(4)現像後の塗膜を加熱硬化する加熱硬化工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0120】
[塗膜形成工程]
塗膜形成工程は、上述のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥させて、塗膜を形成する工程である。
【0121】
上記基材は、公知のものを用いることができる。基材の例には、ガラス基板、シリコンウエハ、およびプラスチック基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等)等を挙げることができ、基材上にITOや金などの透明電極が蒸着あるいはパターニングされたものなども含まれる。また、前記基材上に有機EL等の発光層のような表示機能を形成した後の基材をも含まれる。
【0122】
感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。上記塗布方法の例には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコート機、ランドコート機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法などが含まれる。これらの方法によって、上記感光性樹脂組成物を所望の厚さに塗布することができる。
【0123】
上述の方法で塗布された感光性樹脂組成物の乾燥方法は、公知の乾燥方法を用いることができる。上記乾燥方法は、オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせることによって行うことができる。上記加熱温度および加熱時間は、使用する溶剤に応じて適宜選択でき、用いる基材の耐熱温度も考慮した上で、例えば、60~110℃で、1~5分間行われることが好ましい。
【0124】
[露光工程]
露光工程は、上述の塗膜層の一部にフォトマスクを介して放射線を照射し、上記塗膜(感光性樹脂組成物)のパターンに対応した部分を光硬化させる工程である。
【0125】
上記フォトマスクは公知のものを用いることができる。フォトマスクの例には、ハーフトーンマスク、グレートーンマスク等の多階調マスクが含まれる。グレートーンマスクは、透光性を有する基板上に、遮光部および回折格子が形成される。回折格子はスリット、ドット、メッシュ等の光透過領域の間隔が、露光に用いる光の解像度限界以下の間隔であり、当該構成により、光の透過率を制御する。ハーフトーンマスクは、透光性を有する基板上に、遮光部および半透過部が形成される。半透過部により露光に用いる光の透過率を制御する。
【0126】
露光工程における、露光装置およびその露光照射条件は適宜選択できる。照射される放射線の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などが含まれる。上記放射線の中では、紫外線であることが好ましい。また、放射線を照射する装置には、公知の露光装置(超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等)を用いることができる。また、照射する放射線の波長は250nm以上400nm以下であることが好ましい。放射線の露光量は、25mJ/cm以上3000mJ/cm以下であることが好ましい。
【0127】
[現像工程]
現像工程は、放射線が照射された塗膜をアルカリ現像し、未露光部の塗膜を除去する工程である。
【0128】
塗膜の現像方法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。なお、上記現像方法は、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて行うことができる。
【0129】
また、現像に適した現像液の例には、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等が含まれる。これらの中では、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05~3質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23~28℃の温度で行うことが好ましい。なお、現像工程では、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いることができる。
【0130】
[加熱硬化工程]
加熱硬化工程は、現像後の露光部(塗膜)を熱処理して、本硬化(ポストベーク)する工程である。
【0131】
現像後の露光部(塗膜)を加熱する方法は、公知の方法(オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせ)よって行うことができる。加熱温度は、塗膜が本硬化(ポストベーク)する温度で、基材の耐熱性を考慮した温度であれば特に制限されない。加熱温度は、80~250℃の温度で20~120分間行われることが好ましい。
【実施例0132】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0133】
先ず、本発明の(a)成分であるアルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下のとおりに行った。
【0134】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0135】
[固形分濃度]
固形分濃度は、合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させた重量〔W(g)〕、および160℃にて2時間加熱した後の重量〔W(g)〕を用いて次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W-W)/(W-W
【0136】
[酸価]
酸価は、樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0137】
[分子量]
分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0138】
合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(5)の化合物に示されるArがフェニレン基であり、lが0であり、エポキシ当量250g/eq)
AA :アクリル酸
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MAA :メタクリル酸
MMA :メタクリル酸メチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
GMA :メタクリル酸グリシジル
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TPP :トリフェニルホスフィン
PTMA :ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)
DPHA :ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物
HQ :ハイドロキノン
BzDMA :ベンジルジメチルアミン
【0139】
[合成例1]
還留冷却器付き500mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(114.4g、0.23モル)、AA(33.2g、0.46モル)、PGMEA(157g)およびTEAB(0.48g)を仕込み、100~105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(35.3g、0.12モル)、THPA(18.3g、0.12モル)を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂溶液(a)-1を得た。樹脂溶液の固形分濃度は56.5質量%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0140】
[合成例2]
窒素導入管および還流冷却管付き1000ml四つ口フラスコ中に、MAA(61.98g、0.72モル)と、MMA(43.25g、0.43モル)と、CHMA(48.45g、0.29モル)と、AIBN(7.09g)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル(432g)と、を仕込み、80~85℃で窒素気流下、8時間撹拌して重合させた。さらに、上記四つ口フラスコ内にGMA(73.69g、0.52モル)と、TPP(1.76g)と、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(0.10g)と、を仕込み、80~85℃で16時間撹拌し、アクリレート樹脂溶液(a)-2(固形分濃度:35.5質量%、重量平均分子量(Mw):21500、酸価(固形分換算):50mgKOH/g)を得た。
【0141】
[合成例3]
1Lの4つ口フラスコ内に、PTMA20g(メルカプト基0.19モル)、DPHA212g(アクリル基2.12モル)、PGMEA58g,HQ0.1g、及びBzDMA0.01gを加え、60℃で12時間反応させて、樹枝状ポリマー溶液(b)-3(固形分濃度は80質量%)を得た。得られた樹枝状ポリマーにつき、ヨードメトリー法にてメルカプト基の消失を確認した。得られた樹枝状ポリマーのMwは10000であった。
【0142】
表1~2に記載の配合量(単位は質量%)で実施例1~10、比較例1~5のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。表1~2中で使用した配合成分は以下のとおりであるが、表1~2に記載してある(a)~(f)成分の質量の数字は固形分のみの質量であり、溶剤の質量は(g)成分に加算した。
【0143】
(アルカリ可溶性樹脂)
(a)-1:上記合成例1で得られた樹脂
(a)-2:上記合成例2で得られた樹脂
【0144】
(光重合性化合物)
(b)-1:ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート混合物(KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製、「KAYARAD」は同社の登録商標)
(b)-2:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(アロニックスM-450、東亜合成株式会社製、「アロニックス」は同社の登録商標)
(b)-3:合成例3の樹枝状ポリマー
【0145】
(光重合開始剤)
(c):アデカアークルズNCI-831(株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)
【0146】
(遮光剤)
(d)成分のカーボンブラック濃度20質量%、高分子分散剤濃度5質量%のPGMEA溶剤の顔料分散液(固形分25%)として混合。表1~2中は(d)成分および分散剤の固形分としての量。
【0147】
(カップリング剤)
(e)-1:3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン
(e)-2:ビニルトリエトキシシラン
【0148】
(界面活性剤)
(f)UV反応型表面改質剤 メガファックRS-72-A(DIC製、「メガファック」は同社の登録商標)
(h)含フッ素基・親油性基含有オリゴマー メガファックF-560(DIC製、「メガファック」は同社の登録商標)
(溶剤)
(g):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
[評価]
(光学濃度および反射率評価用および接触角評価用硬化膜の作製)
表1~2に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.5μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして硬化膜を作製した。次いで、パターン形成用のネガ型フォトマスクを介さずに、i線照度30mW/cmの高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの紫外線を照射して露光した。
【0152】
上記露光した上記硬化膜を23℃、0.15%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を行った後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、光学濃度、反射率評価用硬化膜を得た。
【0153】
[光学濃度評価]
(評価方法)
段差計「テンコールP-17」を用いて、本硬化(ポストベーク)後の膜厚を測定し、マクベス透過濃度計「X-rite 361T(V)」を用いて光学濃度(OD)を測定した。測定した膜厚と光学濃度(OD)から膜厚1μmあたりの光学濃度(OD)を算出した。
【0154】
[反射率評価]
(評価方法)
反射率評価用の硬化膜付き基板に対して、紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて入射角2°で硬化膜側(ガラス基板とは反対側)の反射率を測定した。
【0155】
[接触角評価]
(評価方法)
接触角評価用の硬化膜付き基板に対して、接触角計「PCA-11」(協和界面科学株式会社製)を用いて25℃の条件においてPGMEAの接触角を測定した。
○:接触角が20°以上
×:接触角が20°未満
【0156】
(パターン現像性評価用の硬化膜(塗膜)付き基板の作製)
表1~2に示されるブラックレジスト用感光性樹脂組成物を、125mm×125mmのガラス基板上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、露光ギャップを100μmに調整し、乾燥塗膜の上に、5、7、10μm開口のネガ型フォトマスクを被せ、超高圧水銀ランプ(波長365nm、i線照度30mW/cm)で80mJ/cmの紫外線を照射して、感光部分の光硬化反応(露光)を行った。
【0157】
次に、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間から+10秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去して、ガラス基板上に画素パターンが形成されるかを確認した。
【0158】
[パターン現像性評価]
(評価方法)
○:5、7、10μmの開口のマスクで形成したパターンが基板上に形成されている
△:7、10μmの開口のマスクで形成したパターンが基板上に形成されている
×:10μmの開口のマスクで形成したパターンのみが基板上に形成されている
【0159】
(ガラス基板への密着性(PCT密着性)評価用硬化膜の作製)
表1~2に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして硬化膜を作製した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)した。この硬化膜付き基板をプレッシャークッカー試験(PCT)の条件121℃、2気圧、湿度100%下に5時間曝露して、PCT密着性の評価用硬化膜を得た。
【0160】
[PCT密着性評価]
(評価方法)
評価用硬化膜に、太佑機材社製商品名「Super Cutter Guide」を使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、マス目の上にセロハンテープ(ニチバン製)を貼ってから剥がすテープ剥離試験を行ない、以下の基準で評価した。
○:マス目の中の硬化物が全く剥離していない
×:マス目の中の硬化物に剥離しているものが見られる
【0161】
上記評価結果を表3~4に示す。
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
実施例1~10の感光性樹脂組成物から得られた塗膜は、フッ素原子およびエチレン性不飽和結合を分子内に有する界面活性剤を用いることにより、該界面活性剤を配合していない比較例1や、分子内に含フッ素基を有するがエチレン性不飽和結合は有さない界面活性剤(h)を用いた比較例5に対して、塗膜面側の反射率が低減していることがわかる。また、接触角評価においても差があることが分かる。接触角が20°以上となると、OLED向けの隔壁のように、撥インク性が求められる用途に好適である。また、実施例1~10と比較例2を比べることにより、(a)成分として一般式(1)の樹脂を用いた場合に、反射率を低減させた上で、1.2μmの膜厚において5μmといった微細なパターンの形成が可能であることがわかる。さらに、実施例1~10と比較例3~4を比べることにより、カップリング剤としてカルボキシ基と相互作用することが可能で一定の反応性を有する反応性基を有するものを用いることにより、高温高湿条件に曝露した後の膜を形成したガラス基板との密着性も十分確保できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、形成した膜面側の反射率を低減することができ、微細なパターン形成が可能で、PCT後においてもガラス基板との密着性が高い、品質の良好なブラックマトリクス(または遮光膜)を形成することができ、特にカラス基板等の透明基板を通してではなく、遮光膜面側から視認する形式となる、有機ELを始めとする各種表示デバイスや各種センサーのカラーフィルターの遮光膜として有用である。また、μLEDを始めとする各種表示装置において、画素を区切るための隔壁としても活用することができる。