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特開2022-173145試験測定装置及び波形サンプリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173145
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】試験測定装置及び波形サンプリング方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/06 20060101AFI20221110BHJP
   G01R 27/28 20060101ALI20221110BHJP
   G01R 13/34 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
G01R27/06
G01R27/28 T
G01R13/34 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076435
(22)【出願日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】63/184,723
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/735,025
(32)【優先日】2022-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】カン・タン
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028BE10
2G028CG15
2G028CG20
2G028CG22
2G028DH06
2G028DH11
2G028GL07
2G028LR10
(57)【要約】
【課題】試験測定装置にTDR機能を持たせる。
【解決手段】試験測定装置10は、被試験デバイス(DUT)に接続されるポート12と、信号源制御信号32を受信してDUTに印加する入射信号を生成するTDR信号源28と、サンプル・クロックを受信してTDR信号源28からの入射信号及びDUTからのTDR信号又はTDT信号をサンプリングして、入射波形及びTDR/TDT波形を生成するADCと、プロセッサ22と、入射波形及びTDR/TDT波形を表示する表示部26とを有する。プロセッサ22は、クロック合成部16を制御してサンプル・クロック及び信号源制御信号30を生成し、TDR信号源28の周期、サンプル・クロックの周期及びサンプル数を使用して、入射波形及びTDR/TDT波形中のサンプルの時間位置を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイス(DUT)に接続するように構成された1つ以上のポートと、
信号源制御信号を受信すると共に上記DUTに印加される入射信号を生成するように構成された時間領域反射率測定(TDR)信号源と、
サンプル・クロックを受信し、上記TDR信号源からの入射信号及び上記DUTからの時間領域反射(TDR)信号又は時間領域透過(TDT)信号をサンプリングして入射波形及びTDR/TDT波形を生成するように構成された1つ以上のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)と、
1つ以上のプロセッサであって、
上記サンプル・クロック及び上記信号源制御信号を生成するようにクロック合成部を制御する処理と、
上記TDR信号源の周期、上記サンプル・クロックの周期及びサンプルの数を使用して上記入射波形及び上記TDR/TDT波形内のサンプルの時間位置を決定する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成された上記1つ以上のプロセッサと、
上記入射波形と上記TDR/TDT波形を表示するように構成された表示部と
を具える試験測定装置。
【請求項2】
上記1つ以上のプロセッサが、
RET(i)=mod(i*Tsample,TTDR
に従って時間位置を決定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成され、このとき、Tsampleは、上記サンプル・クロックの周期であり、TTDRは、TDRクロック信号の周期であって、クロック分周回路で乗算した初期TDRクロック信号に等しい請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
サンプル周期が、
sample_RET=mod(TTDR,Tsample
に等しい請求項2の試験測定装置。
【請求項4】
上記信号源制御信号が、予備TDRクロック信号から構成され、
上記TDR信号源が、クロック分周回路とステップ信号生成部とを有し、上記クロック分周回路は、上記信号源制御信号を受信してTDRクロックを生成するように構成され、上記ステップ信号生成部は上記TDRクロックを受信して上記DUTに印加する上記入射信号を生成する請求項1の試験測定装置。
【請求項5】
上記信号源制御信号が、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)クロック信号を含み、
上記TDR信号源が、
上記DACクロック信号を受信してパターン波形信号を生成するように構成されたDACと、
発振信号を生成する局部発振器と、
上記DACからの上記パターン波形信号と上記局部発振器からの上記発振信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成するように構成されたミキサと
を有する請求項1の試験測定装置。
【請求項6】
上記信号源制御信号が、周波数選択信号を含み、
上記TDR信号源が、上記周波数選択信号を受信し、上記入射信号として正弦波を生成するように構成された信号生成部を有する請求項1の試験測定装置。
【請求項7】
上記1つ以上のADCが、上記入射信号を受信するように構成された入射ADCと、上記DUTからの上記TDR/TDT信号を受信するように構成されたTDR/TDT ADCとを有する請求項5又は6の試験測定装置。
【請求項8】
時間領域反射率測定信号源を有するリアル等価時間オシロスコープを用いて波形をサンプリングする方法であって、
サンプル・クロック及び信号源制御信号を生成するためにクロック合成部を制御する処理と、
時間領域反射率測定(TDR)信号源を使用して、信号源制御信号を受信し、被試験デバイス(DUT)に印加する入射信号を生成する処理と、
上記サンプル・クロックを1つ以上のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)で受信し、上記TDR信号源からの上記入射信号及び上記DUTからのTDR/TDT信号をサンプリングして入射波形及びTDR/TDT波形を生成する処理と、
上記TDR信号源の周期、サンプル・クロックの周期及びサンプルの個数とを用いて上記入射波形及び上記TDR/TDT波形内におけるサンプルの時間位置を決定する処理と、
上記入射波形及び上記TDR/TDT波形を表示する処理とを具える波形サンプリング方法。
【請求項9】
サンプルの時間位置を決定する処理が、
RET(i)=mod(i*Tsample,TTDR
に従ってサンプルの時間位置を決定する処理を更に含み、このとき、Tsampleはサンプル・クロックの周期であり、TTDRはTDRクロック信号の周期であって、クロッ分周回路で乗算された初期TDRクロック信号に等しい請求項8の波形サンプリング方法。
【請求項10】
サンプル周期が、
sample_RET=mod(TTDR,Tsample
に等しい請求項9の波形サンプリング方法。
【請求項11】
上記信号源制御信号が、予備TDRクロック信号から構成され、上記TDR信号源を用いて上記信号源制御信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理が、
上記予備TDRクロック信号にクロック分周回路を適用してTDRクロックを生成する処理と、
ステップ信号生成部を使用して上記TDRクロックを受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理と
を有する請求項8の波形サンプリング方法。
【請求項12】
上記信号源制御信号が、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)クロック信号を含み、上記TDR信号源を使用して上記信号源制御信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理が、
DACを使用してDACクロック信号を受信し、パターン波形信号を生成する処理と、
発振信号を生成する処理と、
上記DACからの上記パターン波形信号と上記発振信号とを混合して、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理と
を含む請求項8の波形サンプリング方法。
【請求項13】
上記信号源制御信号が、周波数選択信号を含み、上記TDR信号源を用いて上記信号源制御信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理が、
信号生成部を使用して、上記周波数選択信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号として正弦波を生成する処理を含む請求項8の波形サンプリング方法。
【請求項14】
1つ以上のADCで上記入射信号をサンプリングする処理が、上記TDR信号源からの上記入射信号を入射ADCにおいて、上記DUTからの上記TDR/TDT信号をTDR/TDT ADCにおいて、サンプリングする処理を含む請求項12又は13の波形サンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置、より詳細にはリアル等価時間(RET)オシロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
高速システムの試験/デバッグには、オシロスコープ(「スコープ」)によって取り込まれた波形についての信号インテグリティ(品質、忠実性)分析が含まれる。こうしたオシロスコープとしては、リアルタイム(RT:real-time)オシロスコープ、等価時間(ET:equivalent-time、即ち、サンプリング)オシロスコープ、リアル等価時間(RET:real-equivalent-time)オシロスコープが含まれる。RTオシロスコープは、概して、被試験デバイス(DUT)によって生成された信号を表す波形全体を1つのトリガ・イベントで捕捉(キャプチャ)し、1つの連続レコードに多数のデータ・ポイントを捕捉する。ETオシロスコープは、通常、トリガ・イベントごとに1つの入力サンプルを測定し、波形全体を再構築(reconstruct:再現)するのに十分なサンプルが収集されるまで、毎回わずかな遅延を追加しながら、このプロセスを繰り返す。RETオシロスコープは、RTオシロスコープよりは低いが、ETオシロスコープよりは高いレートでサンプリングし、ソフトウェア・クロック・リカバリを使用してハードウェア・トリガを使用せずに波形を再構築する。
【0003】
高速システムの試験/デバッグには、ネットワーク解析も含まれる。ネットワーク解析は、時間領域反射率測定(TDR:time domain reflectometry)若しくは時間領域透過率測定(TDT:time domain transmissometry)、又はベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)を使用して実行されることがある。ネットワーク解析の詳細な情報については、テクトロニクス社による「DSA8300型サンプリング・オシロスコープ用IConnect SW」https://www.tek.com/en/datasheet/product-software/iconnect-dsa (以下「IConnect(日本の商標登録第4,520,972号)」)で入手できる。別のリソースとしては、キーサイト・テクノロジー社の「S-Parameter Design」、https://www.keysight.com/us/en/assets/7018-06743/application-notes/5952-1087.pdf (以下「S-Parameter Design」)で入手できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2021/0263085号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「IConnect SW for DSA8300 Sampling Oscilloscope」、Tektronix, Inc.、[online]、[2022年5月4日検索]、インターネット<https://www.tek.com/en/datasheet/product-software/iconnect-dsa8300>
【非特許文献2】「S-Parameter Design」、Keysight Technologies, Inc.、[online]、[2022年5月4日検索]、インターネット<https://www.keysight.com/us/en/assets/7018-06743/application-notes/5952-1087.pdf>
【非特許文献3】「TDR/TDT測定」、イリソ電子工業株式会社、コネクタ用語集、[online]、[2022年5月4日検索]、インターネット<https://www.iriso.co.jp/jp/technology/knowledge/tdr-tdt/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
典型的には、TDR信号源を有するETオシロスコープは、時間領域のTDRやTDTを測定できる。次いで、時間領域のTDR/TDTの結果は、周波数領域のSパラメータに変換される。TDR/TDT及びSパラメータにより、データ・リンクのインピーダンス、チャンネルの反射及び挿入損失、並びに、障害が生じたチャンネルでのクロストークの影響を確認できる。高速シリアル・データ試験では、Sパラメータを使用してエンベッド/ディエンベッド処理を行うことがある。また、RETオシロスコープにTDR機能があれば、有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施形態は、TDR及びTDT測定を実行するために、TDR機能をRETオシロスコープに組み込んでいる。RETオシロスコープでTDR/TDTを測定するために、他の2種類の信号も考慮される。実施形態では、オシロスコープ内のTDR信号源とサンプリング回路が、システム・クロックを共有する。この装置は、高速デジタル信号のクロックをリカバリするために通常使用される標準のRETソフトウェア・クロック・リカバリを必要とせずに、取り込んだサンプルをパターン波形に直接マッピングする。しかしながら、更に詳細に説明するように、実施形態は、TDR信号源をRETオシロスコープに組み合わせる以上のものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、試験測定装置の一実施形態を示す。
図2図2は、Sパラメータ測定又はTDR/TDT測定を図式に表したものを示す。
図3図3は、ステップ信号から構成されるTDR信号源を有する試験測定装置の一実施形態の一部分のブロック図を示す。
図4図4は、TDRステップ信号の一実施形態の図を示す。
図5図5は、時間領域測定に使用されるTDR期間全体の一部を示す図である。
図6図6は、プリント回路基板のトレースの反射損失(リターン・ロス)のグラフを示す。
図7図7は、プリント回路基板のトレースの挿入損失のグラフを示す。
図8図8は、測定された信号のアイ・ダイアグラムと、VNAで測定されたSパラメータと、TDR/TDTで測定されたSパラメータとを用いてディエンベッドされた信号のアイ・ダイアグラムを示す。
図9図9は、DACとミキサの信号源から構成されるTDR信号源を有する試験測定装置の一実施形態の一部のブロック図を示す。
図10図10は、DAC及びミキサのTDR信号源のスペクトル図を示す。
図11図11は、様々なTDR信号源のスペクトル図を示す。
図12図12は、掃引正弦信号源を有する試験測定装置の一実施形態の一部の構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、TDR機能を有する試験測定装置10の一実施形態を示す。以下の説明では、この装置をRETオシロスコープと呼ぶが、オシロスコープに限定することを意図するものではない。図1は、本開示のいくつかの構成によるリアル等価時間(real-equivalent-time)試験測定装置10の例のブロック図を示す。試験測定装置10は、1つ以上のポート12を含み、これは、任意の電気信号伝達媒体であっても良い。ポート12は、レシーバ、トランスミッタ又はトランシーバを有していても良い。各ポート12は、試験測定装置10のチャンネルを構成しても良い。RETオシロスコープの一例は、2021年2月22日に出願され、米国特許出願公開第2021/0263085号として公開され、その全体が参照により本願に組み込まれる米国特許出願第17/182,056号('056号米国特許出願)において説明されている。
【0010】
ポート12は、DUTから信号を受信し、それをサンプラ・トラック・アンド・ホールド回路14に送る。トラック・アンド・ホールド回路14は、1つ以上の高分解能アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)18がアクイジション(データ取り込み)を可能とするのに充分な期間、各信号を安定して保持する。このADCは、1つ以上のプロセッサ22の制御下で、クロック合成部(シンセサイザ)16からサンプル・クロックを受信しても良い。
【0011】
ADC18は、トラック・アンド・ホールド回路14からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。ADC18は、等価時間試験測定装置よりも大きいが、リアルタイム試験測定装置よりは小さいサンプリング・レートを有していても良い。例えば、ADC18は、数GS/sから数十GS/sで信号をサンプリングできる(「S/s」は「サンプル毎秒」を意味する)。一部の構成では、ADC18は、1GS/sから100GS/sの間でアナログ信号をサンプリングできる。その他の構成では、ADC18は、2GS/sから25GS/sの間でアナログ信号をサンプリングできる。ADC18からのデジタル化された信号は、次いで、アクイジション・メモリ20に記憶できる。即ち、サンプリング・レートは、ナイキスト周波数(サンプリング・レートの半分である)が、ADC18のアナログ帯域幅より低くなるように設定される。ADC18は、12ビットADCのような単一の高分解能ADCとしても良い。
【0012】
1つ以上のプロセッサ22は、メモリからの命令を実行するように構成されてもよく、そのような命令によって示される任意の方法や関連するステップを実行しても良い。これらには、アクイジション・メモリ20から取り込まれた信号を受信する処理、ハードウェア・トリガを使用せずに被試験信号を再構築(reconstruct:再現)する処理、高いアクイジション・レートでサンプルを取り込む処理などが含まれても良い。
【0013】
試験測定装置10上のメモリ20又はその他の任意のメモリは、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ又は任意の他のメモリ形式として実装されても良い。メモリは、データ、コンピュータ・プログラム・プロダクト及びその他の命令を記憶するための媒体として機能する。
【0014】
ユーザ・インタフェース24は、1つ以上のプロセッサ22に結合される。ユーザ・インタフェース24には、表示部26上でGUIを使ってユーザがインタラクティブに操作するのに利用できる、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、その他の任意の操作装置が含まれても良い。表示部26は、波形、測定値及び他のデータをユーザに表示するためのデジタル・スクリーン、ブラウン管ベースのディスプレイ又は他の任意のモニタであっても良い。
【0015】
実施形態の試験測定装置には、時間領域反射率測定(TDR:time domain reflectometry)信号源(ソース)28があり、これは、通常、プロセッサ22が制御するクロック合成部(シンセサイザ)16から制御信号30を受信する。
【0016】
試験測定装置10の構成要素は、試験測定装置10内に統合されているものとして描かれているが、当業者であればわかるように、これらの構成要素の任意のものが試験測定装置10の外部にあっても良い。これらは、有線や無線の通信媒体や機構などの任意の従来の方法で試験測定装置10に結合されても良い。例えば、いくつかの例では、表示部26は、試験測定装置10から遠隔に配置されても良い。
【0017】
図2は、TDR/TDT及びSパラメータの基本的な測定を図式にしたものを示す。入射1信号は、被試験デバイス(DUT)32に送られる入射波形であり、反射1信号は、入射2が終端された状態でのTDR波形を構成する。透過(Through:スルー)2信号は、TDT波形である。波形は、オシロスコープ又は他のデータ・アクイジション装置(デジタイザなど)によって取り込まれる。周波数領域における入射信号に対する反射信号の比は、反射比として定義される。周波数領域における入射信号に対する透過信号の比率は、挿入損失として定義される。例えば、Sパラメータ・デザイン(非特許文献2)を参照されたい。
【0018】
以下の説明において、「入射信号(incident signal)」又は「入射(incident)」という用語は、TDR信号源によって生成された信号又は波形を意味する。用語「時間領域信号」、「時間領域波形」又は「TD波形」は、入射信号に応答してDUTが生成する時間領域反射(TDR:time domain reflection)信号、時間領域透過(TDT:time domain transmission)信号又は他の信号を意味する。
【0019】
図3は、図1の試験測定装置10のような試験測定装置の実施形態の一部を示し、これにおいて、図1のTDR信号源28のようなTDR信号源が、TDRステップ信号36(典型的には、電圧源又は電流源)と、クロック分周回路34とを有している。クロック分周回路34によって生成されたTDRクロックが、TDRステップ信号を駆動し、これが、図2に示す入射信号からなる。この実施形態では、図1のTDR制御信号30は、クロック合成部16からクロック分周回路34へのTDRクロック予備信号から構成される。
【0020】
図3の時間領域(TD)信号は、図2に示す反射/透過信号を含む。RETオシロスコープ・チャンネルは、ブロック38に示すように、入射信号と反射/透過信号の両方を入射波形データ及びTDR/TDT波形データとして取り込む。RETオシロスコープにおけるSパラメータ解析、Zライン(インピーダンス特性)解析などのネットワーク解析は、パターン波形を取得すれば、ETオシロスコープと同様に行うことができる。この実施形態は、1つ以上のADC18のうちの1つのみを用いても良い。
【0021】
RETオシロスコープのADC18は、TDRステップ信号の反復レートとは非同期の固定のサンプル・レートでサンプリングする。図4において、TDRステップ信号は、TTDRの周期を有する。RETオシロスコープは、Tsampleのサンプル周期でサンプリングする。RETオシロスコープでは、エイリアシングを防ぐほど、サンプル・レートが十分ではない。サンプルを信号パターン波形中の対応する位置に配置するのに、数式(1)が使用される。

RET(i)=mod(i*Tsample,TTDR) (1)

ここでmod関数は、i*TsampleをTTDRで割り算した余りを生じる。
【0022】
RETサンプル・レートは、エイリアシングを防止するほど十分には高くない。例えば、サンプル期間を、2GS/sのサンプル・レートとなるTsample=500ピコ秒としながら、'056米国特許出願で説明されているように、アナログ帯域幅を70GHzとすることができる。「クロック合成部」と「クロック分周回路」は、数式(1)のtRETが波形のスパンを十分な密度で覆うように構成できる。例えば:

基準クロック=10MHz。これは、試験装置の典型的な例である。

クロック合成部は、サンプル・クロック=2GHzを、
200*基準クロック=200*10MHz=2GHz
によって生成する。

クロック合成部は、TDRクロック予備信号=2.01GHzを、
201*基準クロック=201*10MHz=2.01GHz
によって生成する。
【0023】
TDRクロックは、TDR/TDT波形のセトリング時間をカバーするように選択される。目標となる10μ秒を超えるTDRクロック周期に対して、次の数式(2)と数式(3)を使用して、RETオシロスコープ用の等価なサンプル周期のためのクロック分周回路の値を選択できる。

sample_RET=mod(TTDR, Tsample) (2)

ここで、modは、除算の剰余を与えるmod演算である。そして、

TDR=TDRクロック予備信号*クロック分周回路 (3)
【0024】
クロック分周回路の値は、Tsample_RETの値とTTDRの値の両方が所望の値に近くなるように、数式(2)及び(3)から選択できる。例えば、数式(2)における余り(これがTsample_RETになる)として、約2.5ピコ秒を得るのには、次のクロック分周回路の値を選択できる。

クロック分周回路=20099 (4)
【0025】
この構成では、TDR周期TTDRは、約10μ秒である。

TDR=TDRクロック予備信号*クロック分周回路=(1/2.01GHz)*20099=9.9995μs (5)
【0026】
図5は、オシロスコープが、通常、TD波形測定を、TTDRの中のウィンドウ持続時間(window duration)Twindowとして示すウィンドウ部分で行うことを示す。RETオシロスコープは、TTDRの全持続時間にわたってサンプルを取り込むが、これは、取り込まれた生のサンプルの中の一部のみがTD波形測定に有用であることを意味する。
【0027】
標準的なSパラメータ測定の場合、周波数分解能は約10MHzである。これは、100ナノ秒の時間ウィンドウを必要とする。反復レートが100kHzの標準的なTDR信号の周期は、10μsである。この場合、Twindowは、TTDRの1%であり、RETオシロスコープの2GS/sのサンプリングに関しては、'056米国特許出願で説明されているように、TDR/TDTの実効サンプリング・レートは、RETサンプリング・レートの1%であるから、20MS/sの実効サンプリング・レートが得られることになる。この20MS/sの実効サンプリング・レートは、標準的なETサンプリング・オシロスコープのサンプリング・レート200kS/sの100倍である。ETオシロスコープに対して、RETオシロスコープの速度の優位性により、より高速な測定が可能になり、同じアクイジション時間に対して、より多くのデータが取得されるため、より高い精度を実現できる。平均で100倍のデータがあれば、測定システムのランダム・ノイズは、次のように20dB低減できる。
【数6】

平均で10倍のデータがあれば、ノイズの低減は、10dBになる。
【0028】
RETオシロスコープの利得段をバイパスすると、プリアンプに起因する垂直ノイズを回避できるため、TDR/TDT測定の垂直ノイズを改善できる。ADCの分解能を高くすれば、ノイズの低減にも有益になる。
【0029】
TDR信号源及びTD測定機能を有するRETオシロスコープは、校正キット(Calkit)を利用して、SOLT(short-open-load-through)校正又は同様の校正を実施する手順を有していても良い。校正により、基準面を正確に確立できる。校正キットをDUT32の代わりに配置することで、図3に示すように校正のために既知の信号をADC18に提供できる。
【0030】
発明者らは、TDR/TDT機能を有するRETオシロスコープを、外部高速ステップ信号源を利用し、リアルタイム・オシロスコープを使ってデモンストレーションした。図6は、2.4インチ(約6.1cm)のプリント回路基板のトレースのS11と呼ばれる反射損失(リターン・ロス)項を、TDR機能を有するRETオシロスコープによって測定されたものを曲線40とし、VNAによって測定されたものを曲線42として、比較して示している。図7は、S21と呼ばれる挿入損失について、同じ2つの出所による曲線40及び42の同様の比較を示す。
【0031】
図8は、16Gb/sのNRZ(ノン・リターン・トゥ・ゼロ)信号のアイ・ダイアグラムを示す。これらは、PCBのトレースが長いほど、より大きなISI(シンボル間干渉)を生じるところ、ディエンベッドの効果をより適切に検証するために、より長めにしたPCBトレースを使用して結果を得ている。左上のアイ・ダイアグラム44は、12インチ(約30.5cm)のPCBトレースの末端部で取り込まれた波形を表す。このアイ・ダイアグラムは、主にチャンネル挿入損失によって引き起こされる大きなISIを示している。アイ・ダイアグラム46は、12インチPCBトレースの前で取り込まれた波形を表す。このアイ・ダイアグラム46は、大きく開いたアイを有する。このアイ・ダイアグラムは、チャンネルの末端部で取り込まれるディエンベッドされた波形の最良の基準(golden reference)として機能する。左下の47は、VNAを利用して測定されたSパラメータを利用してディエンベッドされた波形を表すアイ・ダイアグラムを示し、右下の48は、TDR/TDT機能付きオシロスコープを利用して測定されたSパラメータを利用してディエンベッドされた波形を表すアイ・ダイアグラムである。
【0032】
上記数値の例は、VNAによって測定されたSパラメータと、TDRによって測定されたSパラメータが、周波数が低いほど、近づいてマッチングし、周波数が高いほど差が大きくなることを示している。ディエンベッドの結果は、VNAを用いて測定されたSパラメータとオシロスコープを用いて測定されたSパラメータとの間で同様であり、ディエンベッドされたアイ・ダイアグラムは、最良基準(golden reference)のアイ・ダイアグラムと一致する。
【0033】
ステップ信号のスペクトルは、図11に示すように、1/f特性に従った大きさを有する。そのエネルギーは、周波数が高いほど減少する。ノイズ・レベルが一定であれば、その信号対ノイズ比(SNR)は、周波数が高いほど低下することになる。これは、ステップ信号ベースのTDR/TDT手法の制約である。図6及び図7に示す数値の例は、周波数が高いほど、不正確さが増加することを示す。平均の数を増やすと、SNRを緩和できる。しかし、平均の数を増やすと、TDR/TDT測定の実行にかかる時間が長くなる。
【0034】
図9は、試験測定装置(例えば、RETオシロスコープ)10におけるTDR信号源28の別の実施形態を示す。この実施形態では、TDR信号源は、帯域幅制限パターン波形信号を生成するためのデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)52と、異なる周波数帯域をカバーするための局部発振器(LO)56及びミキサ54とを有する。この実施形態では、信号源制御信号30は、クロック合成部(シンセサイザ)16からDAC52に送られるDACクロック50である。
【0035】
DAC16は、限定された帯域幅にわたって一定のエネルギーを有する複数の高調波を含むパターン波形信号を生成し、そのパターン波形信号をミキサ54に供給できる。任意波形生成装置(AWG:arbitrary waveform generator)は、市販のDACベースの信号生成装置である。TDR/TDT測定の場合、パターン波形信号には複数の高調波が含まれており、通常、各高調波について位相をプログラムして実装される。これにより、DACの垂直レンジをより有効に活用できる。例えば、100個の高調波を生成する場合、全ての高調波の位相を揃えると、時間領域信号は、狭いパルスのように見える。DACの垂直レンジは限られているため、DACから出力される信号のエネルギーが制限される。複数の高調波の位相をランダムにすると、ランダム・ノイズのように見えるパターン波形信号が得られ、時間領域信号のピークを減少させる。同じDAC垂直レンジならば、DACから出力される信号は、より高いエネルギーを持つことになる。これは、SNRを改善し、周波数が高くなっても、より正確なTDR/TDT測定を実現する。
【0036】
ミキサ54が受信したパターン波形信号は、局部発振器56からのLO信号と混合されて、入射信号を生成する。この実施形態では、ADC18は、2つのADCを有する。一方のADC58は、入射信号を受信して、ブロック62に示すような入射波形データを生成する。DUT32も、入射信号を受信し、すると、ADC60へ向けてTDR/TDT信号を生成し、ブロック64に示すようにTDR/TDT波形データ(まとめて「時間領域(TD)波形データ」とも呼ぶ)が生成される。波形データは、表示、分析などに使用しても良い。
【0037】
ミキサは、DACから生成される信号のスペクトルをより高い周波数帯域にシフトするために使用することができ、これにより、より広いスペクトルをカバーすることが可能になる。図10に示すように、周波数f1、f2、…において混合される信号は、TDR/TDT測定用のより高い帯域の信号を生成する。高調波のエネルギーは、より高い周波数と混合されると、ミキサに十分な帯域幅があれば、一定のエネルギー・レベルにとどまることに注意されたい。この特性により、図11に示すように、DAC及びミキサ・ベースのTDR信号源は、ステップ信号ベースのTDR信号源よりも、高い周波数において、SNRが良いという利点が得られる(以下でより詳細に説明する)。
【0038】
図9の試験測定装置(例えば、RETオシロスコープ)は、サンプルを取り込むと、同じ数式(1)を用いてパターン波形信号を生成する。SOLT校正は、システムがステップ信号ベースのTDR信号源を使用する場合と同じように機能する。
【0039】
図12に示す別の実施形態では、RETオシロスコープ10内のTDR信号源28は、正弦信号生成部を有する。オシロスコープは、この実施形態では、一度に1つの周波数を測定する。信号源制御信号30は、クロック合成部16から掃引正弦信号生成部68へ送られる周波数制御信号から構成される。これは、複数の周波数にわたるTDR/TDT測定を行うのに、ステップ信号ベースのTDR信号源を使用するよりも又はDAC及びミキサ・ベースのTDR信号源を使用するよりも、時間がかかる。この手法は、一度に1つの周波数でSパラメータを測定するVNAのように、全ての信号エネルギーが1つの高調波に集中するため、各周波数におけるSNRが最も良くなる。
【0040】
図12の試験測定装置(例えば、RETオシロスコープ)は、サンプルを取り込むと、次いで、正弦信号の周期は既知なので、同じ数式(1)を用いて正弦波形を生成する。SOLT校正は、ステップ信号ベースのTDR信号源を使用する場合と同じように機能する。掃引正弦信号生成部68は、ブロック62に示すように入射波形データを生成するために、入射信号を入射ADC58へ送信すると共に、DUT32にも入射信号を送信する。すると、DUT32は、ADC60に向けてTDR/TDT信号を生成し、ブロック64に示すようにTDR/TDT波形データが生成される。波形データは、表示、分析などに使用しても良い。
【0041】
図11は、本願で説明した3つの異なる実施形態についての周波数に対するマグニチュード(大きさ)の比較を示す。図11は、左側にステップ信号スペクトル、中央にDACミキサ・スペクトル、右側に正弦波を示す。
【0042】
本開示は、TDR機能性を有するRETオシロスコープの様々な実施形態を記載している。RETオシロスコープは、より高い周波数までのSパラメータの測定と高速なデータ波形の捕捉と測定が可能なため、高速シリアル・データ試験/測定に必要なネットワーク解析と波形解析の両方を実行する汎用性の高いツールとなる。RETオシロスコープによる手法(ソリューション)は、ETオシロスコープによる手法よりも大きな利点がある。DACベースのTDR信号源により、RETオシロスコープによる手法は、より高い周波数において、正確なSパラメータを提供する可能性がある。
【0043】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0044】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0045】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0046】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0047】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0048】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。

実施例
【0049】
以下では、開示技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0050】
実施例1は、試験測定装置であって、被試験デバイス(DUT)に接続するように構成された1つ以上のポートと、信号源制御信号を受信すると共に上記DUTに印加される入射信号を生成するように構成された時間領域反射率測定(TDR)信号源と、サンプル・クロックを受信し、上記TDR信号源からの入射信号及び上記DUTからの時間領域反射(TDR)信号又は時間領域透過(TDT)信号をサンプリングして入射波形及びTDR/TDT波形を生成するように構成された1つ以上のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)と、1つ以上のプロセッサであって、上記サンプル・クロック及び上記信号源制御信号を生成するようにクロック合成部を制御する処理と、上記TDR信号源の周期、上記サンプル・クロックの周期及びサンプルの数を使用して上記入射波形及び上記TDR/TDT波形内のサンプルの時間位置を決定する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成された上記1つ以上のプロセッサと、上記入射波形と上記TDR/TDT波形を表示するように構成された表示部とを具える。
【0051】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、tRET(i)=mod(i*Tsample,TTDR)に従って時間位置を決定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成され、このとき、Tsampleは、上記サンプル・クロックの周期であり、TTDRは、TDRクロック信号の周期であって、クロック分周回路で乗算した初期TDRクロック信号に等しい。
【0052】
実施例3は、実施例2の試験測定装置であって、サンプル周期が、
sample_RET=mod(TTDR,Tsample)に等しい。
【0053】
実施例4は、実施例1~3のいずれかの試験測定装置であって、上記信号源制御信号が、予備TDRクロック信号から構成され、上記TDR信号源が、クロック分周回路とステップ信号生成部とを有し、上記クロック分周回路は、上記信号源制御信号を受信してTDRクロックを生成するように構成され、上記ステップ信号生成部は、上記TDRクロックを受信して上記DUTに印加する上記入射信号を生成する。
【0054】
実施例5は、実施例1~4のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のADCは、上記TDR信号源からの上記入射信号と上記DUTからの上記TDR/TDT信号を受信するように構成された1つのADCを有する。
【0055】
実施例6は、実施例1~5のいずれかの試験測定装置であって、上記信号源制御信号が、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)クロック信号を含み、上記TDR信号源が、上記DACクロック信号を受信してパターン波形信号を生成するように構成されたDACと、発振信号を生成する局部発振器と、上記DACからの上記パターン波形信号と上記局部発振器からの上記発振信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成するように構成されたミキサとを有する。
【0056】
実施例7は、実施例6の試験測定装置であって、上記1つ以上のADCは、上記ミキサからの上記入射信号を受信するように構成された入射ADCと、上記DUTからの上記TDR/TDT信号を受信するように構成されたTDR/TDT ADCとを有する。
【0057】
実施例8は、実施例6の試験測定装置であって、上記ミキサ及び上記局部発振器は、上記パターン波形信号のスペクトルをより高い周波数帯域にシフトするように更に構成されている。
【0058】
実施例9は、実施例1~8のいずれかの試験測定装置であって、上記信号源制御信号が、周波数選択信号を含み、上記TDR信号源が、上記周波数選択信号を受信し、上記入射信号として正弦波を生成するように構成された信号生成部を有する。
【0059】
実施例10は、実施例9の試験測定装置であって、上記1つ以上のADCが、上記信号生成部からの上記入射信号を受信するように構成された入射ADCと、上記DUTからの上記TDR/TDT信号を受信するように構成されたTDR/TDT ADCとを有する。
【0060】
実施例11は、時間領域反射率測定信号源を有するリアル等価時間オシロスコープを用いて波形をサンプリングする方法であって、サンプル・クロック及び信号源制御信号を生成するためにクロック合成部を制御する処理と、時間領域反射率測定(TDR)信号源を使用して、信号源制御信号を受信し、被試験デバイス(DUT)に印加する入射信号を生成する処理と、上記サンプル・クロックを1つ以上のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)で受信し、上記TDR信号源からの上記入射信号及び上記DUTからのTDR/TDT信号をサンプリングして入射波形及びTDR/TDT波形を生成する処理と、上記TDR信号源の周期、サンプル・クロックの周期及びサンプルの個数とを用いて上記入射波形及び上記TDR/TDT波形内におけるサンプルの時間位置を決定する処理と、上記入射波形及び上記TDR/TDT波形を表示する処理とを具える。
【0061】
実施例12は、実施例11の方法であって、サンプルの時間位置を決定する処理が、tRET(i)=mod(i*Tsample,TTDR)に従ってサンプルの時間位置を決定する処理を更に含み、このとき、Tsampleはサンプル・クロックの周期であり、TTDRはTDRクロック信号の周期であって、クロッ分周回路で乗算された初期TDRクロック信号に等しい。
【0062】
実施例13は、実施例12の方法であって、サンプル周期は、Tsample_RET=mod(TTDR,Tsample)に等しい。
【0063】
実施例14は、実施例11~14のいずれかの方法であって、上記信号源制御信号が、予備TDRクロック信号を含み、上記TDR信号源を用いて上記信号源制御信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理が、上記予備TDRクロック信号にクロック分周回路を適用してTDRクロックを生成する処理と、ステップ信号生成部を使用して上記TDRクロックを受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理とを有する。
【0064】
実施例15は、実施例14の方法であって、1つ以上のADCで上記入射信号をサンプリングする処理が、上記TDR信号源からの上記入射信号及び上記DUTからの上記TDR/TDT信号を、1つのADCにおいてサンプリングする処理を含む。
【0065】
実施例16は、実施例11~15のいずれかの方法であって、上記信号源制御信号が、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)クロック信号を含み、上記TDR信号源を使用して上記信号源制御信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理が、DACを使用してDACクロック信号を受信し、パターン波形信号を生成する処理と、発振信号を生成する処理と、上記DACからの上記パターン波形信号と上記発振信号とを混合して、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理とを含む。
【0066】
実施例17は、実施例16の方法であって、1つ以上のADCで上記入射信号をサンプリングする処理が、上記TDR信号源からの上記入射信号を入射ADCでサンプリングする処理と、上記DUTからのTDR/TDT信号をTDR/TDT ADCでサンプリングする処理とを含む。
【0067】
実施例18は、請求項16に記載の方法であって、上記パターン波形信号と上記発振信号とを混合する処理が、上記パターン波形信号のスペクトルをより高い周波数帯域にシフトさせる処理を含む。
【0068】
実施例19は、実施例11~16のいずれかの方法であって、上記信号源制御信号が、周波数選択信号を含み、上記TDR信号源を用いて上記信号源制御信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号を生成する処理が、信号生成部を使用して、上記周波数選択信号を受信し、上記DUTに印加する上記入射信号として正弦波を生成する処理を含む。
【0069】
実施例20は、請求項19に記載の方法であって、1つ以上のADCで上記入射信号をサンプリングする処理が、上記TDR信号源からの上記入射信号を入射ADCにおいて、上記DUTからの上記TDR/TDT信号をTDR/TDT ADCにおいて、サンプリングする処理を含む。
【0070】
明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0071】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0072】
10 試験測定装置
12 ポート
14 サンプラ・トラック&ホールド回路
16 クロック合成部
18 サンプラ/ADC
20 アクイジション・メモリ
22 プロセッサ
24 ユーザ・インタフェース
26 表示部
28 時間領域反射率測定(TDR)光源
30 TDR信号源制御信号
32 被試験デバイス(DUT)/校正キット
34 クロック分周回路
36 TDRステップ信号
38 入射波形データとTDR/TDT波形データ
40 RETオシロスコープで測定した曲線
42 ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)で測定した曲線
50 DACクロック
52 DAC
54 ミキサ
56 局部発振器(LO)
58 サンプラ/ADC
60 サンプラ/ADC
62 入射波形データ
64 TDR/TDT波形データ
68 掃引正弦信号生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】