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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173352
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】薬液、薬液収容体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221111BHJP
   G03F 7/32 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
G03F7/32 501
G03F7/32
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152895
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2020538347の分割
【原出願日】2019-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2018154616
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(57)【要約】
【課題】本発明は、シリコン基板又は酸化ケイ素膜付きシリコン基板と接触させた際に、金属残渣欠陥が生じにくい薬液、及び、薬液収容体を提供する。
【解決手段】本発明の薬液は、有機溶剤と金属成分とを含有する薬液であって、金属成分が、酸化チタン粒子、及び、チタンイオンを含有し、チタンイオンの含有量に対する、酸化チタン粒子の含有量の質量比が10~1012である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤と金属成分とを含有する薬液であって、
前記金属成分が、酸化チタン粒子、及び、チタンイオンを含有し、
前記チタンイオンの含有量に対する、前記酸化チタン粒子の含有量の質量比が10~1012である、薬液。
【請求項2】
前記チタンイオンの含有量が、前記薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、請求項1に記載の薬液。
【請求項3】
前記酸化チタン粒子の含有量が、前記金属成分中のチタン成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項1又は2に記載の薬液。
【請求項4】
前記酸化チタン粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項5】
前記金属成分が、鉄イオンを含有し、
前記鉄イオンの含有量が、前記薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項6】
前記金属成分が、酸化鉄粒子を含有し、
前記酸化鉄粒子の含有量が、前記金属成分中の鉄成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項7】
前記金属成分が、酸化鉄粒子を含有し、
前記酸化鉄粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項8】
前記金属成分が、酸化鉄粒子、及び、鉄イオンを含有し、
前記鉄イオンの含有量に対する、前記酸化鉄粒子の含有量の質量比が10~1012である、請求項1~7のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項9】
前記金属成分が、アルミニウムイオンを含有し、
前記アルミニウムイオンの含有量が、前記薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、請求項1~8のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項10】
前記金属成分が、酸化アルミニウム粒子を含有し、
前記酸化アルミニウム粒子の含有量が、前記金属成分中のアルミニウム成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項11】
前記金属成分が、酸化アルミニウム粒子を含有し、
前記酸化アルミニウム粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項12】
前記金属成分が、酸化アルミニウム粒子、及び、アルミニウムイオンを含有し、
前記アルミニウムイオンの含有量に対する、前記酸化アルミニウム粒子の含有量の質量比が10~1012である、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項13】
前記金属成分が、酸化銅粒子を含有し、
前記酸化銅粒子の含有量が、前記金属成分中の銅成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項14】
前記金属成分が、酸化銅粒子を含有し、
前記酸化銅粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1~13のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項15】
前記金属成分が、酸化銅粒子、及び、銅イオンを含有し、
前記銅イオンの含有量に対する、前記酸化銅粒子の含有量の質量比が10~1012である、請求項1~14のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項16】
更に、有機不純物を含有し、
前記有機不純物の含有量が、前記薬液全質量に対して、1000~100000質量pptである、請求項1~15のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項17】
前記薬液全質量に対する水の含有量が500質量ppb以下である、請求項1~16のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項18】
前記有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、炭酸プロピレン、イソプロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソアミルエーテル、及び、ウンデカンからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項19】
容器と、前記容器に収容された請求項1~18のいずれか1項に記載の薬液と、を含有する、薬液収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液、及び、薬液収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィを含む配線形成工程による半導体デバイスの製造の際、プリウェット液、レジスト液(レジスト膜形成用組成物)、現像液、リンス液、剥離液、化学機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)スラリー、及び、CMP後の洗浄液等として、又は、それらの希釈液として、水及び/又は有機溶剤を含有する薬液が用いられている。
近年、フォトリソグラフィ技術の進歩によりパターンの微細化が進んでいる。パターンの微細化の手法としては、露光光源として、紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、及び、EUV(極紫外線)等を用いたパターン形成が試みられている。
形成されるパターンの微細化に伴い、このプロセスに用いる上記の薬液には更なる欠陥抑制性が求められている。
【0003】
従来のパターン形成に用いられる薬液として、特許文献1には、「パターン形成技術において、パーティクルの発生を低減可能な、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液の製造方法(段落[0010])」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-084122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、近年、シリコン基板又は酸化ケイ素膜付きシリコン基板(酸化ケイ素膜で表面が覆われたシリコン基板)と薬液とを接触させた際に、シリコン基板又は酸化ケイ素膜付きシリコン基板上に金属残渣欠陥がより発生しづらい薬液が求められている。
本発明は、シリコン基板又は酸化ケイ素膜付きシリコン基板と接触させた際に、金属残渣欠陥が生じにくい薬液を提供することを課題とする。
また、本発明は、薬液収容体を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できるのを見出した。
【0007】
(1) 有機溶剤と金属成分とを含有する薬液であって、
金属成分が、酸化チタン粒子、及び、チタンイオンを含有し、
チタンイオンの含有量に対する、酸化チタン粒子の含有量の質量比が10~1012である、薬液。
(2) チタンイオンの含有量が、薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、(1)に記載の薬液。
(3) 酸化チタン粒子の含有量が、金属成分中のチタン成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、(1)又は(2)に記載の薬液。
(4) 酸化チタン粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、(1)~(3)のいずれかに記載の薬液。
(5) 金属成分が、鉄イオンを含有し、
鉄イオンの含有量が、薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、(1)~(4)のいずれかに記載の薬液。
(6) 金属成分が、酸化鉄粒子を含有し、
酸化鉄粒子の含有量が、金属成分中の鉄成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、(1)~(5)のいずれかに記載の薬液。
(7) 金属成分が、酸化鉄粒子を含有し、
酸化鉄粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、(1)~(6)のいずれかに記載の薬液。
(8) 金属成分が、酸化鉄粒子、及び、鉄イオンを含有し、
鉄イオンの含有量に対する、酸化鉄粒子の含有量の質量比が10~1012である、(1)~(7)のいずれかに記載の薬液。
(9) 金属成分が、アルミニウムイオンを含有し、
アルミニウムイオンの含有量が、薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、(1)~(8)のいずれかに記載の薬液。
(10) 金属成分が、酸化アルミニウム粒子を含有し、
酸化アルミニウム粒子の含有量が、金属成分中のアルミニウム成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、(1)~(9)のいずれかに記載の薬液。
(11) 金属成分が、酸化アルミニウム粒子を含有し、
酸化アルミニウム粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、(1)~(10)のいずれかに記載の薬液。
(12) 金属成分が、酸化アルミニウム粒子、及び、アルミニウムイオンを含有し、
アルミニウムイオンの含有量に対する、酸化アルミニウム粒子の含有量の質量比が10~1012である、(1)~(11)のいずれかに記載の薬液。
(13) 金属成分が、酸化銅粒子を含有し、
酸化銅粒子の含有量が、金属成分中の銅成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、(1)~(12)のいずれかに記載の薬液。
(14) 金属成分が、酸化銅粒子を含有し、
酸化銅粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、(1)~(13)のいずれかに記載の薬液。
(15) 金属成分が、酸化銅粒子、及び、銅イオンを含有し、
銅イオンの含有量に対する、酸化銅粒子の含有量の質量比が10~1012である、(1)~(14)のいずれかに記載の薬液。
(16) 更に、有機不純物を含有し、
有機不純物の含有量が、薬液全質量に対して、1000~100000質量pptである、(1)~(15)のいずれかに記載の薬液。
(17) 薬液全質量に対する水の含有量が500質量ppb以下である、(1)~(16)のいずれかに記載の薬液。
(18) 有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、炭酸プロピレン、イソプロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソアミルエーテル、及び、ウンデカンからなる群から選ばれる1種以上を含む、(1)~(17)のいずれかに記載の薬液。
(19) 容器と、容器に収容された(1)~(18)のいずれかに記載の薬液と、を含有する、薬液収容体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコン基板又は酸化ケイ素膜付きシリコン基板と接触させた際に、金属残渣欠陥が生じにくい薬液を提供できる。
また、本発明によれば、薬液収容体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施形態に限定されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10-12)」を意味し、「ppq」は「parts-per-quadrillion(10-15)」を意味する。
また、本発明における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さない基と共に置換基を含有する基をも包含する。例えば、「炭化水素基」とは、置換基を有さない炭化水素基(無置換炭化水素基)のみならず、置換基を含有する炭化水素基(置換炭化水素基)をも包含する。この点は、各化合物についても同義である。
また、本発明における「放射線」とは、例えば、遠紫外線、極紫外線(EUV;Extreme ultraviolet)、X線、又は、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。本発明中における「露光」とは、特に断らない限り、遠紫外線、X線又はEUV等による露光のみならず、電子線又はイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0010】
本発明の薬液により上記課題が解決される機序は必ずしも明確ではないが、本発明者はその機序について以下のとおり推測する。なお、以下の機序は推測であり、異なる機序により本発明の効果が得られる場合であっても本発明の範囲に含まれる。
本発明者らは、薬液が酸化チタン粒子及びチタンイオンを含有する際に、その質量比(酸化チタン粒子の質量/酸化イオンの質量)によってシリコン基板又は酸化ケイ素膜付きシリコン基板(以後、これらを総称して「特定基板」ともいう)上での金属残渣欠陥(金属成分由来の残渣)の生じやすさが異なることを知見している。より具体的には、上記質量比が大きすぎる場合、言い換えると、酸化チタン粒子の割合が多すぎる場合、特定基板上にて酸化チタン粒子由来の金属残渣欠陥が多くなりやすいと考えられる。また、上記質量比が小さすぎる場合、言い換えると、チタンイオンの割合が多すぎる場合、チタンイオンよりも卑な他の金属イオンとの間で酸化還元反応が進行しやすくなり、他の金属の粒子(例えば、他の金属の酸化物粒子)が増大し、特定基板上にて金属残渣欠陥が多くなりやすいと考えられる。
【0011】
本発明の薬液は、有機溶剤と金属成分とを含有する薬液であって、金属成分が、酸化チタン粒子、及び、チタンイオンを含有し、チタンイオンの含有量に対する、酸化チタン粒子の含有量の質量比が10~1012である。
以下、本発明の薬液に含まれる成分について詳述する。
【0012】
<有機溶剤>
本発明の薬液(以下、単に「薬液」ともいう)は、有機溶剤を含有する。
本明細書において、有機溶剤とは、上記薬液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上記薬液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶剤に該当する。
また、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意味する。
【0013】
薬液中における有機溶剤の含有量としては特に制限されないが、薬液の全質量に対して、98.0質量%以上が好ましく、99.0質量%超がより好ましく、99.90質量%以上が更に好ましく、99.95質量%超が特に好ましい。上限は、100質量%未満である。
有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を使用してもよい。2種以上の有機溶剤を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0014】
有機溶剤の種類としては特に制限されず、公知の有機溶剤を使用できる。有機溶剤は、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル、ジアルキルスルホキシド、環状スルホン、ジアルキルエーテル、一価アルコール、グリコール、酢酸アルキルエステル、及び、N-アルキルピロリドン等が挙げられる。
【0015】
有機溶剤は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、炭酸プロピレン(PC)、イソプロパノール(IPA)、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)、酢酸ブチル(nBA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソアミルエーテル、及び、ウンデカンからなる群から選択される1種以上が好ましい。
有機溶剤を2種以上使用する例としては、PGMEAとPGMEの併用、及び、PGMEAとPCの併用が挙げられる。
なお、薬液中における有機溶剤の種類及び含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。
【0016】
<金属成分>
薬液は金属成分を含有する。
金属成分は、金属含有粒子及び金属イオンから構成され、例えば、金属成分の含有量という場合、金属含有粒子及び金属イオンの合計含有量を示す。
金属含有粒子は、金属原子が含まれていればよく、例えば、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、及び、金属粒子が挙げられる。なお、金属粒子とは、金属からなる粒子を意味する。
【0017】
薬液に含有される金属成分は、酸化チタン粒子、及び、チタンイオンを含有する。
チタンイオンの含有量に対する、酸化チタン粒子の含有量の質量比が10~1012であり、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、上記質量比は、10~1010が好ましく、10~1010がより好ましく、10~10が更に好ましく、10~10が特に好ましい。
【0018】
チタンイオンの含有量は特に制限されず、0.01~150質量pptの場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、チタンイオンの含有量は、薬液全質量に対して、0.10~100質量pptが好ましく、1.0~70質量pptがより好ましい。
【0019】
酸化チタン粒子の含有量は特に制限されず、金属成分中のチタン成分の含有量に対して、1質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化チタン粒子の含有量は、金属成分中のチタン成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満が好ましく、30~90質量%がより好ましい。
チタン成分とは、チタン原子を含有する成分であり、チタン含有粒子及びチタンイオンが挙げられ、例えば、チタン成分の含有量という場合、チタン含有粒子及びチタンイオンの合計含有量を示す。
チタン含有粒子は、チタン原子が含まれていればよく、例えば、酸化チタン粒子、窒化チタン粒子、及び、チタン粒子が挙げられる。なお、チタン粒子とは、金属チタンからなる粒子を意味する。
【0020】
酸化チタン粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は特に制限されず、40質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化チタン粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は、60質量%以上98質量%未満が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
【0021】
薬液に含有される金属成分は、鉄イオンを含有していてもよい。
鉄イオンの含有量は特に制限されず、薬液全質量に対して、0.01~200質量pptの場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、鉄イオンの含有量は、薬液全質量に対して、0.1~100質量pptが好ましく、1.0~90質量pptがより好ましい。
【0022】
薬液に含有される金属成分は、酸化鉄粒子を含有していてもよい。
酸化鉄粒子の含有量は特に制限されず、金属成分中の鉄成分の含有量に対して、1質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化鉄粒子の含有量は、金属成分中の鉄成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満が好ましく、10~95質量%がより好ましい。
鉄成分とは、鉄原子を含有する成分であり、鉄含有粒子及び鉄イオンが挙げられ、例えば、鉄成分の含有量という場合、鉄含有粒子及び鉄イオンの合計含有量を示す。
鉄含有粒子は、鉄原子が含まれていればよく、例えば、酸化鉄粒子、窒化鉄粒子、及び、鉄粒子が挙げられる。なお、鉄粒子とは、金属鉄からなる粒子を意味する。
【0023】
酸化鉄粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は特に制限されず、40質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化鉄粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は、60質量%以上98質量%未満が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
【0024】
薬液中における、鉄イオンの含有量に対する、酸化鉄粒子の含有量の質量比は特に制限されず、10-2~1014の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、上記質量比は、10~1012が好ましく、10~1010がより好ましく、10~10が更に好ましく、10~10が特に好ましい。
【0025】
薬液に含有される金属成分は、アルミニウムイオンを含有していてもよい。
アルミニウムイオンの含有量は特に制限されず、薬液全質量に対して、0.01~200質量pptの場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、アルミニウムイオンの含有量は、薬液全質量に対して、0.1~100質量pptが好ましく、1.0~90質量pptがより好ましい。
【0026】
薬液に含有される金属成分は、酸化アルミニウム粒子を含有していてもよい。
酸化アルミニウム粒子の含有量は特に制限されず、金属成分中のアルミニウム成分の含有量に対して、1質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化アルミニウム粒子の含有量は、金属成分中のアルミニウム成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満が好ましく、10~95質量%がより好ましい。
アルミニウム成分とは、アルミニウム原子を含有する成分であり、アルミニウム含有粒子及びアルミニウムイオンが挙げられ、例えば、アルミニウム成分の含有量という場合、アルミニウム含有粒子及びアルミニウムイオンの合計含有量を示す。
アルミニウム含有粒子は、アルミニウム原子が含まれていればよく、例えば、酸化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子、及び、アルミニウム粒子が挙げられる。なお、アルミニウム粒子とは、金属アルミニウムからなる粒子を意味する。
【0027】
酸化アルミニウム粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は特に制限されず、40質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化アルミニウム粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は、60質量%以上98質量%未満が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
【0028】
薬液中における、アルミニウムイオンの含有量に対する、酸化アルミニウム粒子の含有量の質量比は特に制限されず、10-2~1014の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、上記質量比は、10~1012が好ましく、10~1010がより好ましく、10~10が更に好ましく、10~10が特に好ましい。
【0029】
薬液に含有される金属成分は、上述した以外の他の金属原子の成分を含有していてもよい。
他の金属原子としては、例えば、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Cu(銅)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Li(リチウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、及び、Zr(ジルコニウム)が挙げられる。
【0030】
薬液に含有される金属成分は、酸化銅粒子を含有していてもよい。
酸化銅粒子の含有量は特に制限されず、金属成分中の銅成分の含有量に対して、1質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化銅粒子の含有量は、金属成分中の銅成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満が好ましく、10~95質量%がより好ましい。
銅成分とは、銅原子を含有する成分であり、銅含有粒子及び銅イオンが挙げられ、例えば、銅成分の含有量という場合、銅含有粒子及び銅イオンの合計含有量を示す。
銅含有粒子は、銅原子が含まれていればよく、例えば、酸化銅粒子、窒化銅粒子、及び、銅粒子が挙げられる。なお、銅粒子とは、金属銅からなる粒子を意味する。
【0031】
酸化銅粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は特に制限されず、40質量%以上100質量%未満の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、酸化銅粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合は、60質量%以上98質量%未満が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
【0032】
薬液中における、銅イオンの含有量に対する、酸化銅粒子の含有量の質量比は特に制限されず、10-2~1014の場合が多い。中でも、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、上記質量比は、10~1012が好ましく、10~1010がより好ましく、10~10が更に好ましく、10~10が特に好ましい。
【0033】
金属成分は、薬液に含まれる各成分(原料)に不可避的に含まれている金属成分でもよいし、処理液の製造、貯蔵、及び/又は、移送時に不可避的に含まれる金属成分でもよいし、意図的に添加してもよい。
【0034】
金属成分の含有量は特に制限されないが、シリコン基板上又は酸化ケイ素膜上に、金属残渣欠陥又は後述する複合物残渣欠陥がより生じにくい点で、薬液の全質量に対して、10~500000質量pptが好ましい。
【0035】
なお、薬液中の金属イオン及び金属含有粒子の種類及び含有量は、SP-ICP-MS法(Single Nano Particle Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)で測定できる。
ここで、SP-ICP-MS法とは、通常のICP-MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)と同様の装置を使用し、データ分析のみが異なる。SP-ICP-MS法のデータ分析は、市販のソフトウェアにより実施できる。
ICP-MS法では、測定対象とされた金属成分の含有量が、その存在形態に関わらず、測定される。従って、測定対象とされた金属含有粒子と、金属イオンとの合計質量が、金属成分の含有量として定量される。
【0036】
一方、SP-ICP-MS法では、金属含有粒子の含有量が測定できる。従って、試料中の金属成分の含有量から、金属含有粒子の含有量を引くと、試料中の金属イオンの含有量が算出できる。
SP-ICP-MS法の装置としては、例えば、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(inductively coupled plasma mass spectrometry、半導体分析用、オプション#200)が挙げられ、実施例に記載した方法により測定できる。上記以外の他の装置としては、PerkinElmer社製 NexION350Sのほか、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8900も使用できる。
【0037】
なお、10nm以下の金属含有粒子はSP-ICP-MSでは測定できないため、特開2009-188333号公報の段落0015~0067に記載の方法(以後、「特定方法」ともいう。)を用いる。
ここで特定方法により、基板上に残った0.5~10nmの粒子数をカウントし、そのカウントに対し、20nmの粒子のSNP-ICP-MSからの換算値を用いる。ここで金属毎に換算値が異なる為に金属毎にこの換算を行う。
換算の具体的方法は以下のとおりである。
例えば、薬液中の20nmの酸化チタン粒子の数がSNP-ICP-MSで10個であり、特定方法で算出される基板上に残った20nmの酸化チタン粒子の数が1個の場合、換算値は10になる。つまり、特定方法で確認できた1nmの酸化チタン粒子の数が100個の場合には、換算値の10倍を元にして、薬液中では1000個(100個×10)と計算する。本発明における10nm以下の粒子数はいずれの金属であれ、この換算方法によって推定する。
【0038】
<有機不純物>
薬液は有機不純物を含有してもよい。
薬液中における有機不純物の含有量は特に制限されないが、シリコン基板上に、後述するシミ状残渣欠陥がより生じにくい点で、薬液全質量に対して、1000~100000質量pptが好ましい。
なお、有機不純物とは、有機溶剤とは異なる有機化合物であって、有機溶剤の全質量に対して、10000質量ppm以下の含有量で含有される有機化合物を意味する。つまり、本明細書においては、上記有機溶剤の全質量に対して10000質量ppm以下の含有量で含有される有機化合物は、有機不純物に該当し、有機溶剤には該当しないものとする。
有機不純物は、被精製物を精製して薬液を得る過程で、薬液に混入する、又は、添加されることが多い。そのような有機不純物としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、及び、これらに由来する化合物(典型的には分解生成物)等が挙げられる。
【0039】
<水>
薬液は、水を含有してもよい。水は、上記有機不純物には含まれない。
水としては特に制限されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、及び、純水等を使用できる。
水は、薬液中に添加されてもよいし、薬液の製造工程において意図せずに薬液中に混合されてもよい。薬液の製造工程において意図せずに混合される場合としては、例えば、水が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶剤)に含有されている場合、及び、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられるが、上記に制限されない。
【0040】
薬液中における水の含有量としては特に制限されないが、薬液の全質量に対して、2.0質量%以下が好ましく、500質量ppb以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0質量%が挙げられる。薬液中における水の含有量は、カールフィッシャー水分測定法を測定原理とする装置を用いて、測定される水分含有量を意味する。
【0041】
<薬液の用途>
本発明の薬液は、半導体デバイスの製造に用いられるのが好ましい。中でも、本発明の薬液を用いて半導体チップを製造することが好ましい。
具体的には、リソグラフィー工程、エッチング工程、イオン注入工程、及び、剥離工程等を含有する半導体デバイスの製造工程において、各工程の終了後、又は、次の工程に移る前に、有機物を処理するために使用され、具体的にはプリウェット液、現像液、リンス液、及び、研磨液等として好適に用いられる。
他にも、薬液は、レジスト膜形成用組成物が含有する樹脂の希釈液等(言い換えれば、溶剤)としても用いてもよい。
【0042】
また、上記薬液は、半導体デバイスの製造用以外の、他の用途にも使用でき、ポリイミド、センサー用レジスト、及び、レンズ用レジスト等の現像液、及び、リンス液としても使用できる。
また、上記薬液は、医療用途又は洗浄用途の溶剤としても使用できる。例えば、配管、容器、及び、基板(例えば、ウェハ、及び、ガラス等)等の洗浄に好適に使用できる。
上記洗浄用途としては、上述のプリウェット液等の液が接する配管及び容器等を洗浄する、洗浄液(配管洗浄液及び容器洗浄液等)として使用するのも好ましい。
【0043】
中でも、薬液は、プリウェット液、現像液、リンス液、研磨液、及び、レジスト膜形成用組成物に好適に用いられる。中でも、プリウェット液、現像液、及び、リンス液に適用した場合、より優れた効果を発揮する。特に、露光光源をEUVとした場合における、プリウェット液、現像液、及び、リンス液に適用した場合、より優れた効果を発揮する。また、これらの液の移送に用いられる配管に用いられる配管洗浄液に適用した場合にも、より優れた効果を発揮する。
【0044】
<薬液の製造方法>
上記薬液の製造方法としては特に制限されず、公知の製造方法が使用できる。中でも、より優れた本発明の効果を示す薬液が得られる点で、薬液の製造方法は、フィルターを用いて有機溶剤を含有する被精製物をろ過して薬液を得る、ろ過工程を有するのが好ましい。
【0045】
ろ過工程において使用する被精製物は、購入等により調達してもよいし、原料を反応させて得てもよい。被精製物としては、不純物の含有量が少ないのが好ましい。そのような被精製物の市販品としては、例えば、「高純度グレード品」と呼ばれる市販品が挙げられる。
【0046】
原料を反応させて被精製物(典型的には、有機溶剤を含有する被精製物)を得る方法として特に制限されず、公知の方法を使用できる。例えば、触媒の存在下において、一又は複数の原料を反応させて、有機溶剤を得る方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、酢酸とn-ブタノールとを硫酸の存在下で反応させ、酢酸ブチルを得る方法;エチレン、酸素、及び、水をAl(Cの存在下で反応させ、1-ヘキサノールを得る方法;シス-4-メチル-2-ペンテンをIpc2BH(Diisopinocampheylborane)の存在下で反応させ、4-メチル-2-ペンタノールを得る方法;プロピレンオキシド、メタノール、及び、酢酸を硫酸の存在下で反応させ、PGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート)を得る方法;アセトン、及び、水素を酸化銅-酸化亜鉛-酸化アルミニウムの存在下で反応させて、IPA(isopropyl alcohol)を得る方法;乳酸、及び、エタノールを反応させて、乳酸エチルを得る方法;等が挙げられる。
【0047】
(ろ過工程)
本発明の薬液の製造方法は、フィルターを用いて上記被精製物をろ過して薬液を得るろ過工程を有することが好ましい。フィルターを用いて被精製物をろ過する方法としては特に制限されないが、ハウジングと、ハウジングに収納されたフィルターカートリッジと、を有するフィルターユニットに、被精製物を加圧又は無加圧で通過させる(通液する)のが好ましい。
【0048】
・フィルターの細孔径
フィルターの細孔径としては特に制限されず、被精製物のろ過用として通常使用される細孔径のフィルターが使用できる。中でも、フィルターの細孔径は、薬液が含有する粒子(金属粒子等)の数を所望の範囲により制御しやすい点で、200nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましく、5nm以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に1nm以上が、生産性の観点から好ましい。
なお、本明細書において、フィルターの細孔径とは、イソプロパノール(IPA)のバブルポイントによって決定される細孔径を意味する。
【0049】
フィルターの細孔径が、5.0nm以下であると、薬液中における含有粒子数をより制御しやすい点で好ましい。以下、細孔径が5.0nm以下のフィルターを「微小孔径フィルター」ともいう。
なお、微小孔径フィルターは単独で用いてもよいし、他の細孔径を有するフィルターと使用してもよい。中でも、生産性により優れる観点から、より大きな細孔径を有するフィルターと使用するのが好ましい。つまり、2以上のフィルターを用いる場合、少なくとも1つのフィルターの細孔径が5.0nm以下であることが好ましい。この場合、予めより大きな細孔径を有するフィルターによってろ過した被精製物を、微小孔径フィルターに通液させれば、微小孔径フィルターの目詰まりを防げる。
すなわち、フィルターの細孔径としては、フィルターを1つ用いる場合には、細孔径は5.0nm以下が好ましく、フィルターを2つ以上用いる場合、最小の細孔径を有するフィルターの細孔径が5.0nm以下が好ましい。
【0050】
細孔径の異なる2種以上のフィルターを順次使用する形態としては特に制限されないが、被精製物が移送される管路に沿って、既に説明したフィルターユニットを順に配置する方法が挙げられる。このとき、管路全体として被精製物の単位時間当たりの流量を一定にしようとすると、細孔径のより小さいフィルターには、細孔径のより大きいフィルターと比較してより大きな圧力がかかる場合がある。この場合、フィルターの間に圧力調整弁、及び、ダンパ等を配置して、小さい細孔径を有するフィルターにかかる圧力を一定にしたり、また、同一のフィルターが収納されたフィルターユニットを管路に沿って並列に配置したりして、ろ過面積を大きくするのが好ましい。このようにすれば、より安定して、薬液中における粒子の数を制御できる。
【0051】
・フィルターの材料
フィルターの材料としては特に制限されず、フィルターの材料として公知の材料が使用できる。具体的には、樹脂である場合、ナイロン(例えば、6-ナイロン及び6,6-ナイロン)等のポリアミド;ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリ(メタ)アクリレート;ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン;ポリビニルアルコール;ポリエステル;セルロース;セルロースアセテート等が挙げられる。
中でも、より優れた耐溶剤性を有し、得られる薬液がより優れた欠陥抑制性能を有する点で、ナイロン(中でも、6,6-ナイロンが好ましい)、ポリオレフィン(中でも、ポリエチレンが好ましい)、ポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリフルオロカーボン(中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が好ましい。)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの重合体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、樹脂以外にも、ケイソウ土、及び、ガラス等であってもよい。
他にも、ポリオレフィン(後述するUPE(超高分子量ポリエチレン)等)にポリアミド(例えば、ナイロン-6又はナイロン-6,6等のナイロン)をグラフト共重合させたポリマー(ナイロングラフトUPE等)をフィルターの材料としてもよい。
【0052】
また、フィルターは表面処理されたフィルターであってもよい。表面処理の方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。表面処理の方法としては、例えば、化学修飾処理、プラズマ処理、疎水処理、コーティング、ガス処理、及び、焼結等が挙げられる。
【0053】
プラズマ処理は、フィルターの表面が親水化されるために好ましい。プラズマ処理して親水化されたフィルターの表面における水接触角としては特に制限されないが、接触角計で測定した25℃における静的接触角が、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。
【0054】
化学修飾処理としては、フィルターにイオン交換基を導入する方法が好ましい。
すなわち、フィルターとしては、イオン交換基を有するフィルターが好ましい。
イオン交換基としては、カチオン交換基及びアニオン交換基が挙げられ、カチオン交換基として、スルホン酸基、カルボキシ基、及び、リン酸基等が挙げられ、アニオン交換基として、4級アンモニウム基等が挙げられる。イオン交換基をフィルターに導入する方法としては特に制限されないが、イオン交換基と重合性基とを含有する化合物をフィルターと反応させ典型的にはグラフト化する方法が挙げられる。
【0055】
イオン交換基の導入方法としては特に制限されないが、フィルターに電離放射線(α線、β線、γ線、X線、及び、電子線等)を照射して、活性部分(ラジカル)を生成させる。この照射後のフィルターをモノマー含有溶液に浸漬して、モノマーをフィルターにグラフト重合させる。その結果、このモノマーが重合して得られるポリマーがフィルターにグラフトする。この生成されたポリマーをアニオン交換基又はカチオン交換基を含有する化合物と接触反応させて、ポリマーにイオン交換基を導入できる。
【0056】
また、フィルターは、放射線グラフト重合法によりイオン交換基を形成した織布、又は、不織布と、従来のガラスウール、織布、又は、不織布のろ過材とを組み合わせた構成でもよい。
【0057】
イオン交換基を有するフィルターを用いると、金属含有粒子及び金属イオンの薬液中における含有量を所望の範囲により制御しやすい。イオン交換基を有するフィルターを構成する材料としては特に制限されないが、ポリフルオロカーボン、及び、ポリオレフィンにイオン交換基を導入した材料等が挙げられ、ポリフルオロカーボンにイオン交換基を導入した材料がより好ましい。
イオン交換基を有するフィルターの細孔径は特に制限されないが、1~30nmが好ましく、5~20nmがより好ましい。イオン交換基を有するフィルターは、既に説明した最小の細孔径を有するフィルターを兼ねてもよいし、最小の細孔径を有するフィルターとは別に使用してもよい。中でも、より優れた本発明の効果を示す薬液が得られる点で、ろ過工程は、イオン交換基を有するフィルターと、イオン交換基を有さず、最小の細孔径を有するフィルターとを使用する形態が好ましい。
既に説明した最小の細孔径を有するフィルターの材料としては特に制限されないが、耐溶剤性等の観点から、一般に、ポリフルオロカーボン、及び、ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ポリオレフィンがより好ましい。
【0058】
従って、ろ過工程で使用されるフィルターとしては、材料の異なる2種以上のフィルターを使用してもよく、例えば、ポリオレフィン、ポリフルオロカーボン、ポリアミド、及び、これらにイオン交換基を導入した材料のフィルターからなる群より選択される2種以上を使用してもよい。
【0059】
・フィルターの細孔構造
フィルターの細孔構造としては特に制限されず、被精製物中の成分に応じて適宜選択すればよい。本明細書において、フィルターの細孔構造とは、細孔径分布、フィルター中の細孔の位置的な分布、及び、細孔の形状等を意味し、典型的には、フィルターの製造方法により制御可能である。
例えば、樹脂等の粉末を焼結して形成すれば多孔質膜が得られ、エレクトロスピニング、エレクトロブローイング、及び、メルトブローイング等の方法により形成すれば繊維膜が得られる。これらは、それぞれ細孔構造が異なる。
【0060】
「多孔質膜」とは、ゲル、粒子、コロイド、細胞、及び、ポリオリゴマー等の被精製物中の成分を保持するが、細孔よりも実質的に小さい成分は、細孔を通過する膜を意味する。多孔質膜による被精製物中の成分の保持は、動作条件、例えば、面速度、界面活性剤の使用、pH、及び、これらの組み合わせに依存する場合があり、かつ、多孔質膜の孔径、構造、及び、除去されるべき粒子のサイズ、及び、構造(硬質粒子か、又は、ゲルか等)に依存し得る。
【0061】
被精製物が負に帯電している粒子を含有する場合、そのような粒子の除去には、ポリアミド製のフィルターが非ふるい膜の機能を果たす。典型的な非ふるい膜には、ナイロン-6膜及びナイロン-6,6膜等のナイロン膜が含まれるが、これらに制限されない。
なお、本明細書で使用される「非ふるい」による保持機構は、フィルターの圧力降下、又は、細孔径に関連しない、妨害、拡散及び吸着等の機構によって生じる保持を指す。
【0062】
非ふるい保持は、フィルターの圧力降下又はフィルターの細孔径に関係なく、被精製物中の除去対象粒子を除去する、妨害、拡散及び吸着等の保持機構を含む。フィルター表面への粒子の吸着は、例えば、分子間のファンデルワールス力及び静電力等によって媒介され得る。蛇行状のパスを有する非ふるい膜層中を移動する粒子が、非ふるい膜と接触しないように十分に速く方向を変られない場合に、妨害効果が生じる。拡散による粒子輸送は、粒子がろ過材と衝突する一定の確率を作り出す、主に、小さな粒子のランダム運動又はブラウン運動から生じる。粒子とフィルターの間に反発力が存在しない場合、非ふるい保持機構は活発になり得る。
【0063】
UPE(超高分子量ポリエチレン)フィルターは、典型的には、ふるい膜である。ふるい膜は、主にふるい保持機構を介して粒子を捕捉する膜、又は、ふるい保持機構を介して粒子を捕捉するために最適化された膜を意味する。
ふるい膜の典型的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜とUPE膜が含まれるが、これらに制限されない。
なお、「ふるい保持機構」とは、除去対象粒子が多孔質膜の細孔径よりも大きいことによる結果の保持を指す。ふるい保持力は、フィルターケーキ(膜の表面での除去対象となる粒子の凝集)を形成することによって向上させられる。フィルターケーキは、2次フィルターの機能を効果的に果たす。
【0064】
繊維膜の材質は、繊維膜を形成可能なポリマーであれば特に制限されない。ポリマーとしては、例えば、ポリアミド等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、及び、ナイロン6,6等が挙げられる。繊維膜を形成するポリマーとしては、ポリ(エーテルスルホン)であってもよい。繊維膜が多孔質膜の一次側にある場合、繊維膜の表面エネルギーは、二次側にある多孔質膜の材質であるポリマーより高いのが好ましい。そのような組合せとしては、例えば、繊維膜の材料がナイロンで、多孔質膜がポリエチレン(UPE)である場合が挙げられる。
【0065】
繊維膜の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を使用できる。繊維膜の製造方法としては、例えば、エレクトロスピニング、エレクトロブローイング、及び、メルトブローイング等が挙げられる。
【0066】
多孔質膜(例えば、UPE、及び、PTFE等を含む多孔質膜)の細孔構造としては特に制限されないが、細孔の形状としては例えば、レース状、ストリング状、及び、ノード状等が挙げられる。
多孔質膜における細孔の大きさの分布とその膜中における位置の分布は、特に制限されない。大きさの分布がより小さく、かつ、その膜中における分布位置が対称であってもよい。また、大きさの分布がより大きく、かつ、その膜中における分布位置が非対称であってもよい(上記の膜を「非対称多孔質膜」ともいう。)。非対称多孔質膜では、孔の大きさは膜中で変化し、典型的には、膜一方の表面から膜の他方の表面に向かって孔径が大きくなる。このとき、孔径の大きい細孔が多い側の表面を「オープン側」といい、孔径が小さい細孔が多い側の表面を「タイト側」ともいう。
また、非対称多孔質膜としては、例えば、細孔の大きさが膜の厚さ内のある位置においてで最小となる膜(これを「砂時計形状」ともいう。)が挙げられる。
【0067】
非対称多孔質膜を用いて、一次側をより大きいサイズの孔とすると、言い換えれば、一次側をオープン側とすると、前ろ過効果を生じさせられる。
【0068】
多孔質膜は、PESU(ポリエーテルスルホン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシアルカンとの共重合体)、ポリアミド、及び、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーを含んでもよいし、ポリテトラフルオロエチレン等を含んでもよい。
中でも、多孔質膜の材料としては、超高分子量ポリエチレンが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、極めて長い鎖を有する熱可塑性ポリエチレンを意味し、分子量が百万以上、典型的には、200~600万が好ましい。
【0069】
ろ過工程で使用されるフィルターとしては、細孔構造の異なる2種以上のフィルターを使用してもよく、多孔質膜、及び、繊維膜のフィルターを併用してもよい。具体例としては、ナイロン繊維膜のフィルターと、UPE多孔質膜のフィルターとを使用する方法が挙げられる。
【0070】
また、フィルターは使用前に十分に洗浄してから使用するのが好ましい。
未洗浄のフィルター(又は十分な洗浄がされていないフィルター)を使用する場合、フィルターが含有する不純物が薬液に持ち込まれやすい。
【0071】
上記のとおり、本発明の実施形態に係るろ過工程は、フィルターの材料、細孔径、及び、細孔構造からなる群より選択される少なくとも1種が異なる2種以上のフィルターに被精製物を通過させる、多段ろ過工程であってもよい。
また、同一のフィルターに被精製物を複数回通過させてもよく、同種のフィルターの複数に、被精製物を通過させてもよい。
【0072】
なお、本発明の薬液を調製する上では、フィルターとして「Purasol SN 200nm」などの金属成分(特に、金属イオン)を選択的に除去し得るフィルター(金属成分除去フィルター)を用いることが好ましい。
【0073】
ろ過工程で使用される精製装置の接液部(被精製物、及び、薬液が接触する可能性のある内壁面等を意味する)の材料としては特に制限されないが、非金属材料(フッ素系樹脂等)、及び、電解研磨された金属材料(ステンレス鋼等)からなる群から選択される少なくとも1種(以下、これらをあわせて「耐腐食材料」ともいう。)から形成されるのが好ましい。例えば、製造タンクの接液部が耐腐食材料から形成される、とは、製造タンク自体が耐腐食材料からなるか、又は、製造タンクの内壁面等が耐腐食材料で被覆されている場合が挙げられる。
【0074】
上記非金属材料としては、特に制限されず、公知の材料が使用できる。
非金属材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂、並びに、フッ素系樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン-エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂、及び、フッ化ビニル樹脂等)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられるが、これに制限されない。
【0075】
上記金属材料としては、特に制限されず、公知の材料が使用できる。
金属材料としては、例えば、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料が挙げられ、中でも、30質量%以上がより好ましい。金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般に90質量%以下が好ましい。
金属材料としては例えば、ステンレス鋼、及びニッケル-クロム合金等が挙げられる。
【0076】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼が使用できる。中でも、ニッケルを8質量%以上含有する合金が好ましく、ニッケルを8質量%以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS(Steel Use Stainless)304(Ni含有量8質量%、Cr含有量18質量%)、SUS304L(Ni含有量9質量%、Cr含有量18質量%)、SUS316(Ni含有量10質量%、Cr含有量16質量%)、及びSUS316L(Ni含有量12質量%、Cr含有量16質量%)等が挙げられる。
【0077】
ニッケル-クロム合金としては、特に制限されず、公知のニッケル-クロム合金が使用できる。中でも、ニッケル含有量が40~75質量%、クロム含有量が1~30質量%のニッケル-クロム合金が好ましい。
ニッケル-クロム合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、及び、インコネル(商品名、以下同じ)が挙げられる。より具体的には、ハステロイC-276(Ni含有量63質量%、Cr含有量16質量%)、ハステロイ-C(Ni含有量60質量%、Cr含有量17質量%)、及び、ハステロイC-22(Ni含有量61質量%、Cr含有量22質量%)が挙げられる。
また、ニッケル-クロム合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、更に、ホウ素、ケイ素、タングステン、モリブデン、銅、及び、コバルト等を含有していてもよい。
【0078】
金属材料を電解研磨する方法は特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、特開2015-227501号公報の段落[0011]~[0014]、及び、特開2008-264929号公報の段落[0036]~[0042]等に記載された方法が使用できる。
【0079】
金属材料は、電解研磨により表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くなっていると推測される。そのため、接液部が電解研磨された金属材料から形成された精製装置を用いると、被精製物中に金属含有粒子が流出しにくいと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていてもよい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を使用できる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われるのが好ましい。
【0080】
(その他の工程)
薬液の製造方法は、ろ過工程以外の工程を更に有していてもよい。ろ過工程以外の工程としては、例えば、蒸留工程、反応工程、及び、除電工程等が挙げられる。
【0081】
(蒸留工程)
蒸留工程は、有機溶剤を含有する被精製物を蒸留して、蒸留済み被精製物を得る工程である。被精製物を蒸留する方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。典型的には、ろ過工程に供される精製装置の一次側に、蒸留塔を配置し、蒸留された被精製物を製造タンクに導入する方法が挙げられる。
このとき、蒸留塔の接液部は特に制限されないが、既に説明した耐腐食材料で形成されるのが好ましい。
【0082】
(反応工程)
反応工程は、原料を反応させて、反応物である有機溶剤を含有する被精製物を生成する工程である。被精製物を生成する方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。典型的には、ろ過工程に供される精製装置の製造タンク(又は、蒸留塔)の一次側に反応槽を配置し、反応物を製造タンク(又は蒸留塔)に導入する方法が挙げられる。
このとき、製造タンクの接液部としては特に制限されないが、既に説明した耐腐食材料で形成されるのが好ましい。
【0083】
(除電工程)
除電工程は、被精製物を除電して、被精製物の帯電電位を低減させる工程である。
除電方法としては特に制限されず、公知の除電方法を使用できる。除電方法としては、例えば、被精製物を導電性材料に接触させる方法が挙げられる。
被精製物を導電性材料に接触させる接触時間は、0.001~60秒が好ましく、0.001~1秒がより好ましく、0.01~0.1秒が更に好ましい。導電性材料としては、ステンレス鋼、金、白金、ダイヤモンド、及び、グラッシーカーボンが挙げられる。
被精製物を導電性材料に接触させる方法としては、例えば、導電性材料からなる接地されたメッシュを管路内部に配置し、ここに被精製物を通す方法等が挙げられる。
【0084】
被精製物の精製は、それに付随する、容器の開封、容器及び装置の洗浄、溶液の収容、並びに、分析等は、全てクリーンルームで行うのが好ましい。クリーンルームは、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス4以上の清浄度のクリーンルームが好ましい。具体的にはISOクラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、及び、ISOクラス4のいずれかを満たすのが好ましく、ISOクラス1又はISOクラス2を満たすのがより好ましく、ISOクラス1を満たすのが更に好ましい。
【0085】
薬液の保管温度としては特に制限されないが、薬液が微量に含有する不純物等がより溶出しにくく、結果としてより優れた本発明の効果が得られる点で、保管温度としては4℃以上が好ましい。
【0086】
<薬液収容体>
上記精製方法により製造された薬液は、容器に収容されて使用時まで保管してもよい。
このような容器と、容器に収容された薬液とをあわせて薬液収容体という。保管された薬液収容体からは、薬液が取り出され使用される。
【0087】
上記薬液を保管する容器としては、半導体デバイス製造用途向けに、容器内のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないのが好ましい。
使用可能な容器としては、具体的には、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及び、コダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0088】
容器としては、薬液への不純物混入(コンタミ)防止を目的として、容器内壁を6種の樹脂による6層構造とした多層ボトル、又は、6種の樹脂による7層構造とした多層ボトルを使用するのも好ましい。これらの容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0089】
この容器の接液部は、既に説明した耐腐食材料(好ましくは電解研磨されたステンレス鋼又はフッ素系樹脂)又はガラスであってもよい。より優れた本発明の効果が得られる点で、接液部の面積の90%以上が上記材料からなるのが好ましく、接液部の全部が上記材料からなるのがより好ましい。
【0090】
薬液収容体の、容器内の空隙率は、2~80体積%が好ましく、2~50体積%がより好ましく、5~30体積%が更に好ましい。
なお、上記空隙率は、式(1)に従って計算される。
式(1):空隙率={1-(容器内の薬液の体積/容器の容器体積)}×100
上記容器体積とは、容器の内容積(容量)と同義である。
空隙率をこの範囲に設定することで、不純物等のコンタミを制限する事で保管安定性を確保できる。
【実施例0091】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0092】
また、実施例及び比較例の薬液の調製にあたって、容器の取り扱い、薬液の調製、充填、保管及び分析測定は、全てISOクラス2又は1を満たすレベルのクリーンルームで行った。
【0093】
(フィルター)
フィルターとしては、以下のフィルターを使用した。
・「Purasol SN 200nm」:UPEメンブレン(材質)Entegris社製、孔径200nm
・「PP 200nm」:ポリプロピレン製フィルター、Entegris社製、孔径200nm
・「Purasol SP 200nm」:UPEメンブレン(材質)Entegris社製、孔径200nm
・「Octolex 5nm」:UPE製Nylonフィルターグラフト、Entegris社製、孔径5nm
・「IEX 15nm」:イオン交換樹脂フィルター、Entegris社製、孔径15nm
・「IEX 16nm」:イオン交換樹脂製フィルター、Entegris社製、孔径16nm
・「IEX 50nm」:イオン交換樹脂フィルター、Entegris社製、孔径50nm
・「IEX 200nm」:イオン交換樹脂フィルター、Entegris社製、孔径200nm
・「PTFE 5nm」:ポリテトラフルオロエチレン製フィルター、Entegris社製、孔径5nm
・「PTFE 7nm」:ポリテトラフルオロエチレン製フィルター、Entegris社製、孔径7nm
・「PTFE 10nm」:ポリテトラフルオロエチレン製フィルター、Entegris社製、孔径10nm
・「PTFE 20nm」:ポリテトラフルオロエチレン製フィルター、Entegris社製、孔径20nm
・「Nylon 5nm」:ナイロン製フィルター、Pall社製、孔径5nm
・「UPE 1nm」:超高分子量ポリエチレン製フィルター、Pall社製、孔径1nm
・「UPE 3nm」:超高分子量ポリエチレン製フィルター、Pall社製、孔径3nm
・「UPE 5nm」:超高分子量ポリエチレン製フィルター、Pall社製、孔径5nm
【0094】
<被精製物>
実施例、及び、比較例の薬液の製造のために、以下の有機溶剤を被精製物として使用した。
・CyHe:シクロヘキサノン
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・MIBC:4-メチル-2-ペンタノール
・nBA:酢酸ブチル
・EL:乳酸エチル
・PC:炭酸プロピレン
・IPA:イソプロパノール
・PGMEE:プロピレングリコールモノエチルエーテル
・PGMPE:プロピレングリコールモノプロピルエーテル
・CPN:シクロペンタノン
また、表中の「原料1」~「原料8」は、各実施例および比較例で用いた有機溶剤が以下のメーカーからの購入品であることを表す。
「原料1」:Honeywell
「原料2」:東洋合成
「原料3」:KHネオケム
「原料4」:昭和電工
「原料5」:KHネオケム
「原料6」:三和油化工業
「原料7」:CCP
「原料8」:BASF
【0095】
<容器>
薬液を収納する容器としては、下記容器を使用した。
・EP-SUS:接液部が電解研磨されたステンレス鋼である容器
・PFA:接液部がパーフルオロアルコキシアルカンでコーティングされた容器
なお、各容器中への薬液の充填率は95体積%(空隙率は5体積%)であった。
充填率は、以下式によって求められる。
充填率=(容器内の薬液の体積/容器の容器体積)×100
【0096】
<精製手順>
上記被精製物から選択した1種を選択し、表1に記載の蒸留精製処理を行った。
なお、表中の「蒸留精製」欄の「有-1」は蒸留塔(理論段数:15段)を用いた減圧蒸留を実施したことを表し、「有-2」は蒸留塔(理論段数:30段)を用いた減圧蒸留を2回実施したことを表し、「有-3」は蒸留塔(理論段数:8段)を用いた減圧蒸留を実施したことを表す。
【0097】
次に、蒸留精製された被精製物を貯蔵タンクに貯蔵して、貯蔵タンクに貯蔵された被精製物を表1に記載のフィルター1~5にこの順で通液させてろ過して、貯蔵タンクに貯蔵した。
次に、貯蔵タンクに貯蔵された被精製物を、表1に記載のフィルター6~7でろ過して、フィルター7でろ過した後の被精製物をフィルター6の上流側に循環し、再度フィルター6~7でろ過する循環ろ過処理を実施した。
循環ろ過処理の後、容器に薬液を収容した。
なお、実施例85~88に関しては、水分量が所定の値となるように、薬液中に水を添加した。
【0098】
なお、上述した一連の精製の過程で、被精製物が接触する各種装置(例えば、蒸留塔、配管、貯蔵タンク等)の接液部は、電解研磨されたステンレスで構成されていた。
【0099】
下記に示す方法で薬液の、有機成分及び金属成分の含有量を測定した。
【0100】
<金属成分の含有量>
薬液中の金属成分(金属イオン、金属含有粒子)の含有量は、ICP-MS及びSP-ICP-MSを用いる方法により測定した。
装置は以下の装置を使用した。
・メーカー:PerkinElmer
・型式:NexION350S
解析には以下の解析ソフトを使用した。
・“SP-ICP-MS”専用Syngistix ナノアプリケーションモジュール
・Syngistix for ICP-MS ソフトウェア
但し、10nm以下の金属含有粒子はSP-ICP-MSでは測定できないため、上述した特定方法を用いた。
【0101】
<有機不純物の含有量>
各種薬液における有機不純物の含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)装置(Agilent社製、GC:7890B、MS:5977B EI/CI MSD)を使用して解析した。
【0102】
<試験>
〔プリウェット液又はリンス液〕
以下に示す方法で、製造した薬液の、プリウェット液又はリンス液として使用した場合の欠陥抑制性を評価した。
まず、直径300mmのシリコン基板、又は、直径300mmの酸化ケイ素膜付きシリコン基板(酸化ケイ素膜で表面が覆われたシリコン基板)に薬液をスピン吐出し、基板を回転させながら、基板の表面に対して、各薬液を0.5cc吐出した。その後、基板をスピン乾燥した。次に、KLA-Tencor社製のウエハ検査装置「SP-5」を用いて、薬液塗布後の基板に存在する欠陥数を計測した(これを計測値とする)。
次に、EDAX(energy-dispersive X-ray spectroscopy)を用いて、欠陥の種類を、金属残渣欠陥、複合物残渣欠陥、及び、シミ状残渣欠陥に分類した。金属残渣欠陥とは金属成分由来の残渣であり、複合物残渣欠陥とは有機物と金属成分との複合体由来の残渣であり、シミ状残渣欠陥とは有機物由来の残渣である。
なお、「Si上での金属残渣」及び「SiO上での金属残渣」がいずれも「D」以上であれば、プリウェット液又はリンス液として好適に用いられる。
【0103】
<個別評価(金属残渣欠陥、複合物残渣欠陥、シミ状残渣欠陥)>
A:対応する欠陥数が20個/基板以下だった。
B:対応する欠陥数が20個/基板を超え、50個/基板以下だった。
C:対応する欠陥数が50個/基板を超え、100個/基板以下だった。
D:対応する欠陥数が100個/基板を超え、150個/基板以下だった。
E:対応する欠陥数が150個/基板を超えた。
【0104】
〔現像液〕
以下に示す方法で、製造した薬液の、現像液として使用した場合を評価した。
まず、以下に示す操作によりレジストパターンを形成した。
直径300mmのシリコン基板、又は、直径300mmの酸化ケイ素膜付きシリコン基板に後述する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で、60秒間に亘ってプリベーク(PB)を行い、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
【0105】
(感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物)
酸分解性樹脂(下記式で表される樹脂(重量平均分子量(Mw):7500):各繰り返し単位に記載される数値はモル%を意味する。):100質量部
【0106】
【化1】
【0107】
下記に示す光酸発生剤:8質量部
【0108】
【化2】
【0109】
下記に示すクエンチャー:5質量部(質量比は、左から順に、0.1:0.3:0.3:0.2とした。)。なお、下記のクエンチャーのうち、ポリマータイプのクエンチャーは、重量平均分子量(Mw)が5000である。また、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0110】
【化3】
【0111】
下記に示す疎水性樹脂:4質量部(質量比は、左から順に、0.5:0.5とした。)なお、下記の疎水性樹脂のうち、左側の疎水性樹脂は、重量平均分子量(Mw)は7000であり、右側の疎水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000である。なお、各疎水性樹脂において、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0112】
【化4】
【0113】
溶剤:
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3質量部
シクロヘキサノン:600質量部
γ-BL(γ-ブチロラクトン):100質量部
【0114】
レジスト膜を形成したウエハをArFエキシマレーザースキャナー(Numerical Aperture:0.75)を用い、25mJ/cmでパターン露光を行った。その後、120℃で60秒間加熱した。次いで、各現像液(薬液)で30秒間パドルして現像した。次いで、4000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させて、ネガ型レジストパターンを形成した。その後、得られたネガ型レジストパターンを、200℃で300秒間加熱した。上記の工程を経て、ライン/スペースが1:1のL/Sパターン(平均パターン幅:45nm)を得た。
得られたサンプルのスペース部において、上述した金属残渣欠陥、複合物残渣欠陥、及び、シミ状残渣欠陥の有無を上記方法に従って、評価した。
【0115】
なお、各実施例において、各フィルター間の圧力の差は、0.01~0.03MPaであった。
表1中、「用途」欄の「用途1」は、各実施例及び比較例に記載の薬液をプリウェット液及びリンス液として用いて上記試験を実施したことを意味する。「用途」欄の「用途2」は、各実施例及び比較例に記載の薬液を現像液として用いて上記試験を実施したことを意味する。
なお、表中、「Si上での金属残渣」では、シリコン基板上での金属残渣欠陥の評価結果を示し、「Si上での複合物残渣」では、シリコン基板上での複合物残渣欠陥の評価結果を示し、「Si上でのシミ状残渣」では、シリコン基板上でのシミ状残渣欠陥の評価結果を示し、「SiO上での金属残渣」では、酸化ケイ素膜付きシリコン基板上での金属残渣欠陥の評価結果を示し、「SiO上での複合物残渣」では、酸化ケイ素膜付きシリコン基板上での複合物残渣欠陥の評価結果を示す。
【0116】
表1中、「酸化Ti粒子/Tiイオン」欄は、チタンイオンの含有量に対する、酸化チタン粒子の含有量の質量比を表す。「Tiイオン量(質量ppt)」欄は、薬液全質量に対するチタンイオンの含有量(質量ppt)を表す。「酸化Fe粒子/Feイオン」欄は、鉄イオンの含有量に対する、酸化鉄粒子の含有量の質量比を表す。「Feイオン量(質量ppt)」欄は、薬液全質量に対する鉄イオンの含有量(質量ppt)を表す。「酸化Al粒子/Alイオン」欄は、アルミニウムイオンの含有量に対する、酸化アルミニウム粒子の含有量の質量比を表す。「Alイオン量(質量ppt)」欄は、薬液全質量に対するアルミニウムイオンの含有量(質量ppt)を表す。「酸化Ti粒子割合(質量%)」欄は、金属成分中のチタン成分の含有量に対する、酸化チタン粒子の含有量(質量%)を表す。「酸化Fe粒子割合(質量%)」欄は、金属成分中の鉄成分の含有量に対する、酸化鉄粒子の含有量(質量%)を表す。「酸化Al粒子割合(質量%)」欄は、金属成分中のアルミニウム成分の含有量に対する、酸化アルミニウム粒子の含有量(質量%)を表す。「0.5-17nmの酸化Ti粒子の割合(質量%)」欄は、酸化チタン粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合(質量%)を表す。「0.5-17nmの酸化Fe粒子の割合(質量%)」欄は、酸化鉄粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合(質量%)を表す。「0.5-17nmの酸化Al粒子の割合(質量%)」欄は、酸化アルミニウム粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合(質量%)を表す。「酸化Cu粒子割合(質量%)」欄は、金属成分中の銅成分の含有量に対する、酸化銅粒子の含有量(質量%)を表す。「0.5-17nmの酸化Cu粒子の割合(質量%)」欄は、酸化銅粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合(質量%)を表す。「水分量」欄は、薬液全質量に対する薬液中の水の含有量(質量ppb)を表す。
また、表1中、「E+数字」は「10数字」を表し、例えば、「3.5E+04」は「3.5×10」を表す。
表1中、「>99」は、99超を表す。「<1」は、1未満を表す。
表1中、「<500ppb」は、500質量ppb未満を表す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
【表9】
【0126】
【表10】
【0127】
【表11】
【0128】
【表12】
【0129】
【表13】
【0130】
【表14】
【0131】
【表15】
【0132】
【表16】
【0133】
【表17】
【0134】
【表18】
【0135】
【表19】
【0136】
【表20】
【0137】
【表21】
【0138】
【表22】
【0139】
【表23】
【0140】
【表24】
【0141】
表1中、各実施例及び比較例に係るデータは、表1[その1]<1>~<6>、表1[その2]<1>~<6>、表1[その3]<1>~<6>、及び、表1[その4]<1>~<6>の各行にわたって示した。
例えば、実施例1においては、表1[その1]<1>に示すように、有機溶剤としてCyHeを用いて、表1[その1]<2>に示すように、フィルター2は「IEX 15nm」であり、表1[その1]<3>に示すように、薬液中の酸化Ti粒子/Tiイオンが3.5E+04であり、表1[その1]<4>に示すように、Alイオン量が32質量pptであり、表1[その1]<5>に示すように、0.5-17nmの酸化Fe粒子の割合が81質量%であり、表1[その1]<6>に示すように、「Si上での金属残渣」が「A」である。その他の実施例、及び、比較例についても同様である。
【0142】
表に示した結果より、本発明の薬液であれば所定の効果が得られることが確認された。
特に、実施例1~8の比較より、チタンイオンの含有量に対する、酸化チタン粒子の含有量の質量比が10~1010である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例9及び10より、鉄イオンの含有量に対する、酸化鉄粒子の含有量の質量比が10~1012である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例11及び12より、アルミニウムイオンの含有量に対する、酸化アルミニウム粒子の含有量の質量比が10~1012である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例13および14(34および35、55および56、76および77)より、チタンイオン(又は、鉄イオン、アルミニウムイオン)の含有量が、薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例16および17(37および38、58および59、79および80)より、酸化チタン粒子(又は、酸化鉄粒子、酸化アルミニウム粒子)の含有量が、金属成分中のチタン成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例18および19(39および40、60および61、81および82)より、酸化チタン粒子(又は、酸化鉄粒子、酸化アルミニウム粒子)のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例20および21(41および42、62および63、83および84)より、有機不純物の含有量が、薬液全質量に対して、1000~100000質量pptである場合、より効果が優れることが確認された。
【0143】
実施例22の薬液(100L)を用いて、容器(EP-SUS)及び<精製手順>で使用する各種装置を洗浄した後、別途用意した実施例22の薬液を上記洗浄した装置に流して、洗浄した容器に回収して、容器中に溶液Aを得た。
また、実施例38の薬液(100L)を用いて、容器(EP-SUS)及び<精製手順>で使用する各種装置を洗浄した後、別途用意した実施例22の薬液を上記洗浄した装置に流して、洗浄した容器に回収して、容器中に溶液Bを得た。
溶液Aおよび溶液Bを用いて「Si上での金属残渣欠陥」の評価を行ったところ、溶液Aのほうが良好な結果が得られた。
【0144】
<実施例(EUV露光)>
まず、レジスト組成物1を、各成分を以下の組成で混合して得た。
・樹脂(A-1):0.77g
・光酸発生剤(B-1):0.03g
・塩基性化合物(E-3):0.03g
・PGMEA(市販品、高純度グレード):67.5g
・乳酸エチル(市販品、高純度グレード):75g
【0145】
・樹脂(A-1)
樹脂(A-1)としては、以下の樹脂を用いた。
【0146】
【化5】
【0147】
・光酸発生剤(B-1)
光酸発生剤(B-1)としては、以下の化合物を用いた。
【0148】
【化6】
【0149】
・塩基性化合物(E-3)
塩基性化合物(E-3)としては、以下の化合物を用いた。
【0150】
【化7】
【0151】
(パターンの形成及び評価)
まず、直径300mmのシリコンウェハ上にレジスト組成物1を塗布し、100℃で60秒間ベーク(PB:Prebake)を行い、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。
【0152】
このレジスト膜をEUV露光機(ASML社製;NXE3350、NA0.33、Dipole 90°、アウターシグマ0.87、インナーシグマ0.35)を用い、反射型マスクを介して露光した。その後、85℃にて60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した。次いで、スプレー法で現像液(酢酸ブチル/FETW製)を30秒間噴霧して現像し、回転塗布法でリンス液を20秒間シリコンウェハ上に吐出してリンスした。続いて、2000rpmの回転数で40秒間シリコンウェハを回転させて、スペース幅が20nm、且つパターン線幅が15nmのラインアンドスペースのパターンを形成した。
上記リンス液としては、上述した実施例44で使用した薬液をそれぞれ用いた。なお、上述した、各種評価を実施したところ、表1と同様の傾向の所望の効果が得られた。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤と金属成分とを含有する薬液であって、
前記金属成分が、酸化チタン粒子、及び、チタンイオンを含有し、
前記チタンイオンの含有量に対する、前記酸化チタン粒子の含有量の質量比が1010 である、薬液であって、
前記チタンイオンの含有量が、前記薬液全質量に対して、0.10~100質量pptであり、
プリウェット液、現像液、または、リンス液に用いられる、薬液。
【請求項2】
前記酸化チタン粒子の含有量が、前記金属成分中のチタン成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項に記載の薬液。
【請求項3】
前記酸化チタン粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1または2に記載の薬液。
【請求項4】
前記金属成分が、鉄イオンを含有し、
前記鉄イオンの含有量が、前記薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、請求項1~のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項5】
前記金属成分が、酸化鉄粒子を含有し、
前記酸化鉄粒子の含有量が、前記金属成分中の鉄成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項6】
前記金属成分が、酸化鉄粒子を含有し、
前記酸化鉄粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項7】
前記金属成分が、酸化鉄粒子、及び、鉄イオンを含有し、
前記鉄イオンの含有量に対する、前記酸化鉄粒子の含有量の質量比が10~1012である、請求項1~のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項8】
前記金属成分が、アルミニウムイオンを含有し、
前記アルミニウムイオンの含有量が、前記薬液全質量に対して、0.10~100質量pptである、請求項1~のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項9】
前記金属成分が、酸化アルミニウム粒子を含有し、
前記酸化アルミニウム粒子の含有量が、前記金属成分中のアルミニウム成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項10】
前記金属成分が、酸化アルミニウム粒子を含有し、
前記酸化アルミニウム粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項11】
前記金属成分が、酸化アルミニウム粒子、及び、アルミニウムイオンを含有し、
前記アルミニウムイオンの含有量に対する、前記酸化アルミニウム粒子の含有量の質量比が10~1012である、請求項1~10のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項12】
前記金属成分が、酸化銅粒子を含有し、
前記酸化銅粒子の含有量が、前記金属成分中の銅成分の含有量に対して、5質量%以上99質量%未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項13】
前記金属成分が、酸化銅粒子を含有し、
前記酸化銅粒子のうち、粒径0.5~17nmである粒子の割合が、60質量%以上98質量%未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項14】
前記金属成分が、酸化銅粒子、及び、銅イオンを含有し、
前記銅イオンの含有量に対する、前記酸化銅粒子の含有量の質量比が10~1012である、請求項1~13のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項15】
更に、有機不純物を含有し、
前記有機不純物の含有量が、前記薬液全質量に対して、1000~100000質量pptである、請求項1~14のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項16】
前記薬液全質量に対する水の含有量が500質量ppb以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項17】
前記有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、炭酸プロピレン、イソプロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソアミルエーテル、及び、ウンデカンからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項18】
前記有機溶剤が酢酸ブチルであり、
現像液に用いられる、請求項1~17のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項19】
前記有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、炭酸プロピレン、イソプロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロキオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソアミルエーテル、および、ウンデカンからなる群から選ばれる1種以上を含み、
プリウェット液、または、リンス液に用いられる、請求項1~18のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項20】
容器と、前記容器に収容された請求項1~19のいずれか1項に記載の薬液と、を含有する、薬液収容体。