IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

特開2022-173891研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース
<>
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図1
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図2
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図3
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図4
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図5
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図6
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図7
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図8
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図9
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図10
  • 特開-研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173891
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】研削ホイール用治具及び研削ホイール用ケース
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20221115BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B24B45/00 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079935
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】前田 夕斗
(72)【発明者】
【氏名】中塚 敦
【テーマコード(参考)】
3C034
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB52
5F057AA35
5F057BA11
5F057CA11
5F057DA11
5F057EB30
(57)【要約】
【課題】マウントに研削ホイールを装着する際にマウントの下方からボルトを挿入可能な研削ホイール用治具を提供する。
【解決手段】円環状の基台の一面側に配置された環状の砥石部を有する研削ホイールを、スピンドルの下端部に取り付けられた円板状のマウントの下面側に装着する際に使用される、研削ホイール用治具であって、研削ホイール用治具は、環状の砥石部を収容する有底円筒状の砥石収容部と、砥石収容部の高さ方向において砥石収容部の底部とは反対側に位置しており、砥石収容部の外径よりも大きな外径を有し、基台の少なくとも一部を収容可能な円環状の基台収容部と、それぞれ、基台収容部の底部に設けられ、ボルトの頭部を収容可能である円筒状の複数のボルト収容部と、を備え、各ボルト収容部は、ボルトの頭部に締結工具を挿入可能な開口を底部に有する研削ホイール用治具を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の基台の一面側に配置された環状の砥石部を有する研削ホイールを、スピンドルの下端部に取り付けられた円板状のマウントの下面側に装着する際に使用される、研削ホイール用治具であって、
該研削ホイール用治具は、
該環状の砥石部を収容する有底円筒状の砥石収容部と、
該砥石収容部の高さ方向において該砥石収容部の底部とは反対側に位置しており、該砥石収容部の外径よりも大きな外径を有し、該基台の少なくとも一部を収容可能な円環状の基台収容部と、
それぞれ、該基台収容部の底部に設けられ、ボルトの頭部を収容可能である円筒状の複数のボルト収容部と、
を備え、
各ボルト収容部は、該ボルトの頭部に締結工具を挿入可能な開口を底部に有することを特徴とする研削ホイール用治具。
【請求項2】
該基台収容部の側部の内周側面は、該基台収容部に収容された該基台を該マウントの下面に接触させたときに、該マウントの外周側面と接触することを特徴とする請求項1に記載の研削ホイール用治具。
【請求項3】
円環状の基台の一面側に配置された環状の砥石部を有する研削ホイールを収容する研削ホイール用ケースであって、
該環状の砥石部を収容する有底円筒状の砥石収容部と、該砥石収容部の高さ方向において該砥石収容部の底部とは反対側に位置しており、該砥石収容部の外径よりも大きな外径を有し、該基台の少なくとも一部を収容可能な円環状の基台収容部と、それぞれ、該基台収容部の底部に設けられ、ボルトの頭部を収容可能である円筒状の複数のボルト収容部と、を備え、各ボルト収容部は、該ボルトの頭部に締結工具を挿入可能な開口を底部に有する研削ホイール用治具と、
該基台収容部の開口を塞ぐ蓋部と、
を備えることを特徴とする研削ホイール用ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルの下端部に取り付けられた円板状のマウントの下面側に研削ホイールを装着する際に使用される研削ホイール用治具と、研削ホイールを収容する研削ホイールケースと、に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ等の被加工物を研削する際には、研削装置が使用される。研削装置は、円柱状のスピンドルを含む研削ユニットを備える。スピンドルは、例えば鉛直方向に略平行に配置されており、スピンドルの下端部には、円板状のマウント(ホイールマウント)が固定されている。マウントの下面側には、円環状の研削ホイールが装着される。
【0003】
被加工物の裏面側(即ち、デバイスが形成されている表面とは反対側)の全体を研削する際に使用される通常の研削装置では、円環状の基台(ホイール基台)を有する通常の研削ホイールが、上述のマウントに装着される。
【0004】
マウントの外周部には、マウントの周方向に沿って複数の貫通穴が設けられており、通常の研削ホイールの基台の一面側(即ち、研削砥石が設けられている他面とは反対側)の外周部には、各貫通穴に対応する様に、基台の周方向に沿って複数のねじ穴が設けられている。
【0005】
通常の研削ホイールをマウントに装着する際には、マウントの上方からマウントの各貫通穴にボルトを挿入し、各ボルトの下端部を研削ホイールのねじ穴に締結する。また、研削ホイールからマウントを取り外す際には、マウントの上方から各ボルトを取り外す。
【0006】
この様な通常の研削ホイールをマウントに対して着脱する際には、研削砥石等を保護するために、研削ホイールの側部及び下部の全体を被覆可能な環状の凹部を有する治具を使用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ところで、被加工物の表面側に設けられているデバイス領域に対応する被加工物の裏面側における円形の所定領域を研削するが、裏面側の外周部を研削せずに残すことで、円板状の凹部を裏面側に形成する、TAIKO(登録商標)と称される研削が知られている。この研削を行う場合には、通常の研削装置とは異なる専用の研削装置が用いられる。
【0008】
当該専用の研削装置では、マウントの下面側の外周部に、マウントの周方向に沿って複数のねじ穴が設けられている。また、マウントに装着される研削ホイールの基台(ホイール基台)は、円環状のフランジを有し、フランジの下面側の外周部には、フランジの周方向に沿って複数の貫通穴が設けられている。
【0009】
フランジの下面側において、複数の貫通穴よりもフランジの中心側には、フランジと略同心状に、フランジよりも小径の円環状の砥石被装着部が固定されている。砥石被装着部の下面側には、基台の周方向に沿って各々セグメント状の複数の研削砥石が配置されている。
【0010】
この様な研削ホイールをマウントに装着する際には、まず、マウントの下方に研削ホイールを配置して、フランジの貫通穴と、マウントのねじ穴とを、位置合わせする。この状態で、フランジの下面側からマウントへボルトを挿入し、各ボルトをマウントのねじ穴に締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011-121128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、通常の研削ホイール用の治具と同様に、研削ホイールの側部及び下部の全体を覆う治具を使用すると、マウントの下方から貫通穴及びねじ穴へボルトを挿入しようとしても、ボルトの挿入は治具により遮られる。
【0013】
一方で、治具を使用しない場合、作業者の手が研削砥石に触れて、作業者が怪我をする可能性や、工具の接触により研削砥石が損傷する可能性がある。また、研削砥石等に付着した研削屑が落下して研削装置の内部が汚染される可能性もある。
【0014】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、マウントに研削ホイールを装着する際にマウントの下方からボルトを挿入可能な研削ホイール用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、円環状の基台の一面側に配置された環状の砥石部を有する研削ホイールを、スピンドルの下端部に取り付けられた円板状のマウントの下面側に装着する際に使用される、研削ホイール用治具であって、該研削ホイール用治具は、該環状の砥石部を収容する有底円筒状の砥石収容部と、該砥石収容部の高さ方向において該砥石収容部の底部とは反対側に位置しており、該砥石収容部の外径よりも大きな外径を有し、該基台の少なくとも一部を収容可能な円環状の基台収容部と、それぞれ、該基台収容部の底部に設けられ、ボルトの頭部を収容可能である円筒状の複数のボルト収容部と、を備え、各ボルト収容部は、該ボルトの頭部に締結工具を挿入可能な開口を底部に有する研削ホイール用治具が提供される。
【0016】
好ましくは、該基台収容部の側部の内周側面は、該基台収容部に収容された該基台を該マウントの下面に接触させたときに、該マウントの外周側面と接触する。
【0017】
本発明の他の態様によれば、円環状の基台の一面側に配置された環状の砥石部を有する研削ホイールを収容する研削ホイール用ケースであって、該環状の砥石部を収容する有底円筒状の砥石収容部と、該砥石収容部の高さ方向において該砥石収容部の底部とは反対側に位置しており、該砥石収容部の外径よりも大きな外径を有し、該基台の少なくとも一部を収容可能な円環状の基台収容部と、それぞれ、該基台収容部の底部に設けられ、ボルトの頭部を収容可能である円筒状の複数のボルト収容部と、を備え、各ボルト収容部は、該ボルトの頭部に締結工具を挿入可能な開口を底部に有する研削ホイール用治具と、該基台収容部の開口を塞ぐ蓋部と、を備える研削ホイール用ケースが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る研削ホイール用治具は、環状の砥石部を収容する砥石収容部を有する。砥石収容部の高さ方向において、砥石収容部の底部とは反対側には、円環状の基台収容部が位置している。基台収容部は、砥石収容部の外径よりも大きな外径を有し、基台の少なくとも一部を収容可能である。
【0019】
この基台収容部の底部には、各々円筒状の複数のボルト収容部が設けられている。各ボルト収容部は、ボルトの頭部に締結工具を挿入可能な挿入穴を底部に有する。それゆえ、研削ホイールが研削ホイール用治具に収容された状態で、マウントの下方から基台の貫通穴にボルトを挿入し、マウントのねじ穴にボルトを締結することで、研削ホイールをマウントに装着できる。
【0020】
更に、砥石部が砥石収容部により収容されているので、着脱作業時において、作業者の砥石部への接触、工具による砥石部の損傷、砥石部や基台からの研削屑の落下等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】研削ユニットの側面図である。
図2図2(A)は被加工物の斜視図であり、図2(B)は研削後の被加工物の断面図である。
図3図3(A)は治具の上部側の斜視図であり、図3(B)は図3(A)の一点鎖線領域の拡大図である。
図4図4(A)は治具の下部側の斜視図であり、図4(B)は図4(A)の一点鎖線領域の拡大図である。
図5】治具に収容された研削ホイールの下方斜視図である。
図6】治具に収容された研削ホイールの上方斜視図である。
図7】研削ホイールをマウントに装着する様子を示す一部断面側面図である。
図8】ケースの一部断面側面図である。
図9】第2の実施形態に係る治具の側面図である。
図10図10(A)はマウントの側面図であり、図10(B)はマウントの一部断面側面図であり、図10(C)はマウントの下面図である。
図11図11(A)は研削ホイールを上昇させた様子を示す図であり、図11(B)は研削ホイールを回転させた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、研削ホイール10が装着される研削ユニット2について説明する。図1は、研削ユニット2の側面図である。なお、図1に示すZ軸方向は、例えば、鉛直方向と平行である。
【0023】
研削ユニット2は、円板状の被加工物11(図2(A)参照)の裏面11b側を研削する際に使用される。図2(A)は、被加工物11の斜視図である。被加工物11は、例えば、円板状のシリコンウェーハである。被加工物11の表面11a側には、複数の分割予定ライン13が格子状に設定されている。
【0024】
複数の分割予定ライン13で区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。複数のデバイス15が形成されているデバイス領域15aの周囲には、デバイス15が形成されておらず略平坦な外周余剰領域15bが存在する。
【0025】
研削ユニット2は、デバイス領域15aに対応する被加工物11の裏面11b側の円形領域を研削して凹部11c(図2(B)参照)を形成する際に使用される。図2(B)は、研削後の被加工物11の断面図である。
【0026】
図1に戻って、研削ユニット2は、円筒状のスピンドルハウジング4を有する。スピンドルハウジング4は、ボールねじ式の研削送りユニット(不図示)によりZ軸方向に沿って移動可能である。スピンドルハウジング4には、円柱状のスピンドル6の一部が回転可能に収容されている。
【0027】
スピンドル6の上端部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が設けられている。スピンドル6の下端部6aは、スピンドルハウジング4の底部よりも下方に突出しており、この下端部6aには、円板状のマウント8の上面8a側の中央部が取り付けられている。
【0028】
マウント8の下面8b側には、マウント8の周方向に沿って略等間隔に複数のねじ穴8cが設けられている。本実施形態では、マウント8の周方向に沿って4つのねじ穴8cが設けられている。但し、図1では、3つのねじ穴8cが示されている。
【0029】
マウント8の下面8b側には、円環状の研削ホイール10が装着される。研削ホイール10は、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。研削ホイール10は、マウント8の外径と略同径の円環状のフランジ12を有する。
【0030】
フランジ12の外周部には、フランジ12の上面12aから下面12bまで貫通する複数の貫通穴12cが形成されている。複数の貫通穴12cは、フランジ12の周方向に沿って略等間隔に離れている。
【0031】
本実施形態では、フランジ12の周方向に沿って4つの貫通穴12cが設けられている。但し、図1では、3つの貫通穴12cが示されている。ねじ穴8cと貫通穴12cとが一対一で対応する様に、フランジ12をマウント8に配置した後、貫通穴12cにはボルト14の軸部14aが挿入され、ねじ穴8cには軸部14aが締結される。
【0032】
なお、貫通穴12cの下面12b側には、ボルト14の頭部14bを収容可能な座ぐり部12dが形成されている。本実施形態のボルト14は、頭部14bに六角穴が形成されている六角穴付きボルトである。また、軸部14aの外径は、5mmである。
【0033】
フランジ12の下面12b側において、フランジ12の外周よりも内側には、フランジ12と同じ金属材料で形成された円環状の砥石被装着部16が固定されている。砥石被装着部16は、フランジ12よりも小さい外径を有しており、フランジ12と略同心状に配置されている。
【0034】
砥石被装着部16の上面16a側は、フランジ12の下面12b側に固定されている。本明細書では、砥石被装着部16及びフランジ12を併せて、基台(ホイール基台)17と称する。
【0035】
砥石被装着部16の下面(一面)16b側には、砥石被装着部16の周方向に沿って環状に、各々セグメント状の複数の研削砥石(砥石部)18が配置されている。なお、環状の砥石部は、1つの円環状(所謂、コンティニュアス型)の研削砥石であってもよい。
【0036】
マウント8に研削ホイール10を装着する際には、図1に示す様に、まず、マウント8の下方に研削ホイール10を配置して、フランジ12の貫通穴12cと、マウント8のねじ穴8cとを、位置合わせする。
【0037】
この状態で、フランジ12の下面12b側から、貫通穴12cにボルト14を挿入し、各ボルト14をマウント8のねじ穴8cに締結する。本実施形態では、マウント8に研削ホイール10を装着する際に、マウント8の下方からボルト14を挿入可能な治具(研削ホイール用治具)20を使用する。
【0038】
図3(A)は、治具20の上部側の斜視図である。本実施形態の治具20は、透光性を有する樹脂で形成されているが、治具20は、透明な樹脂で形成されてもよく、透光性を有しない樹脂や他の材料で形成されてもよい。本実施形態の治具20は、例えば、3Dプリンターで作成できるが、3Dプリンター以外の装置で作成してもよい。
【0039】
治具20は、有底円筒状の砥石収容部22を有する。本実施形態の砥石収容部22の円筒の外径は、102mmであり、治具20の高さ方向20a(即ち、基台収容部24の高さ方向)における砥石収容部22の長さは37mmである。
【0040】
砥石収容部22は、各研削砥石18の外周側面18a及び下面18b(図1参照)の全体を覆うことで、複数の研削砥石18を収容する。砥石収容部22の底部22a側には、砥石収容部22の径方向の中心側に凹む態様で、略半円柱状の凹部22bが形成されている。
【0041】
本実施形態では、砥石収容部22の周方向に沿って略等間隔で4つの凹部22bが形成されている。但し、凹部22bの数は4つに限定されない。なお、研削ホイール10が治具20に収容された状態で、研削砥石18の下面18bは、凹部22bの上面22cに接しない(図6参照)。
【0042】
凹部22bは、作業者が治具20を手で持った際に、治具20の取り扱いを容易にする目的で設けられている。例えば、凹部22bにより、治具20の移動や回転を行い易くなる。
【0043】
治具20の高さ方向20aにおいて、底部22aとは反対側に位置する頂部には、砥石収容部22の外径よりも大きな外径を有する円環状の基台収容部24が連結されている。基台収容部24は、砥石収容部22の頂部の外側に接続している円環状の底部24aを有する。
【0044】
底部24aの外周部には、高さ方向20aに沿って突出する様に、円環状の側部24bが設けられている。側部24b及び底部24aは、それぞれ砥石収容部22と略同じ厚さを有する。
【0045】
基台収容部24の頂部側は、開口24cとなっている。本実施形態の基台収容部24の外径は、124mmであり、高さ方向20aにおける基台収容部24の長さは20mmである。
【0046】
基台収容部24の底部24aには、基台収容部24の周方向に沿って略等間隔で、それぞれ円筒状の複数のボルト収容部26が設けられている。本実施形態では、4つのボルト収容部26が設けられているが、ボルト収容部26の数は、ねじ穴8cの数に応じて適宜変更してよい。
【0047】
1つのボルト収容部26は、治具20を平面視した場合に、2つの凹部22bの間に位置する。ボルト収容部26は、ボルト14の頭部14bの外径と略同径の円柱状の凹部を含む。各ボルト収容部26の底部26aは、基台収容部24の底部24aよりも砥石収容部22の底部22a側に突出している。
【0048】
図3(B)に示す様に、頭部14bがボルト収容部26の底部26aで支持され、頭部14bの全体がボルト収容部26に収容されると、軸部14aは、ボルト収容部26から高さ方向20aに突出する。図3(B)は、図3(A)の一点鎖線領域の拡大図であり、ボルト収容部26にボルト14が収容された状態を示す。
【0049】
ボルト収容部26の底部26aには、円形の開口26b(図4(A)及び図4(B)参照)が形成されている。例えば、開口26bを介して、ボルト14の頭部14bの六角穴には、六角レンチ(締結工具)30(図7参照)が挿入される。
【0050】
本実施形態の頭部14bには六角穴が形成されているが、頭部14bには六角穴に代えて十字穴や四角穴が形成されている場合には、穴の形状に応じて締結工具は適宜選択される。
【0051】
図4(A)は、治具20の下部側の斜視図であり、図4(B)は、図4(A)の一点鎖線領域の拡大図である。なお、図4(B)では、便宜上、頭部14bが底部26aに接した状態で、ボルト収容部26に収容されたボルト14を示している。
【0052】
治具20には、各貫通穴12cにボルト14が挿入された状態で、研削ホイール10が収容される。図5は、治具20に収容された研削ホイール10の下方斜視図である。
【0053】
図5に示す様に、研削ホイール10が治具20に収容されると、フランジ12の下面12bが、基台収容部24の底部24aで支持され、ボルト14の頭部14bが、ボルト収容部26の底部26aで支持される。
【0054】
このとき、図6に示す様に、フランジ12の上面12aは、開口24cから突出しない。また、フランジ12の外周側面は、基台収容部24の側部24bの内周側面24d(図7参照)に接する。
【0055】
図6は、治具20に収容された研削ホイール10の上方斜視図である。なお、図6に示す様に、ボルト14がボルト収容部26に収容されたとき、ボルト14の軸部14aは、上面12aから突出しない。
【0056】
次に、治具20に収容された研削ホイール10をマウント8に装着する手順について説明する。まず、作業者が治具20を手に持ち、ねじ穴8cと貫通穴12cとが一対一で対応する様に向きを調整した上で、治具20を上昇させて、フランジ12の上面12aをマウント8の下面8bに接触させる。
【0057】
このとき、側部24bの内周側面24dの上部が、マウント8の外周側面8dに接触するので、研削ホイール10の回転中心と、マウント8の回転中心とを、容易に位置合わせできる。また、マウント8を側面視した状態でボルト収容部26の位置をねじ穴8cに合わせることにより、ボルト14とねじ穴8cとを容易に位置合わせできる。
【0058】
次いで、開口26bに六角レンチ30を挿入し、各ボルト14をねじ穴8cに締結することで、研削ホイール10をマウント8に装着する(図7参照)。図7は、研削ホイール10をマウント8に装着する様子を示す一部断面側面図である。
【0059】
研削ホイール10の装着後、治具20を研削ホイール10から取り外す。本実施形態では、研削ホイール10が治具20に収容された状態で、マウント8の下方から、ねじ穴8cにボルト14を締結することで、研削ホイール10をマウント8に装着できる。
【0060】
更に、複数の研削砥石18が砥石収容部22により収容されているので、研削ホイール10の着脱作業時における、作業者の研削砥石18への接触、工具による研削砥石18の損傷、研削砥石18や基台17からの研削屑の落下等を防止できる。
【0061】
ところで、研削ホイール10の取り外し時には、装着時と逆の手順を行う。即ち、治具20を下方から研削ホイール10に装着した状態で、各ボルト14を取り外す。その後、研削ホイール10が治具20に収容された状態で、研削ホイール10をマウント8から取り外す。
【0062】
マウント8から取り外された研削ホイール10は、図8に示す様に、治具20と、円板状の蓋部32と、で構成されるケース(研削ホイール用ケース)34に収容された状態で保管される。図8は、ケース34の一部断面側面図である。
【0063】
本実施形態の蓋部32は、治具20と同じ材料で形成されているが、蓋部32は治具20と異なる材料で形成されていてもよい。蓋部32は、内側に円板状の凹部32aを有する。
【0064】
凹部32aの径32bは、基台収容部24の側部24bの外径と略同じであるので、蓋部32は、基台収容部24の開口24cを塞ぐ様に、基台収容部24の上部側に嵌合可能である。開口24cを蓋部32で塞ぐことで、研削ホイール10と、複数のボルト14と、をケース34内に一体的に収容できる。
【0065】
凹部32aには、それぞれ樹脂で形成され各々円柱状の複数のスペーサ32cが、蓋部32の周方向に沿って配置されている。本実施形態では、4つのスペーサ32cが蓋部32の周方向に沿って略等間隔で配置されている。但し、図8では、3つのスペーサ32cが示されている。
【0066】
各スペーサ32cの高さ(厚さ)は、研削ホイール10を治具20に収容した場合の開口24cから上面12aまでの深さ36(図6参照)に対応する。本実施形態のスペーサ32cの径は、スペーサ32cが貫通穴12cに嵌らない様に、フランジ12の貫通穴12cよりも大きい。
【0067】
スペーサ32cを設けることで、ケース34に収容された研削ホイール10のケース34内での移動を抑制できる。なお、円柱状のスペーサ32cに代えて、1つのリング状のスペーサ(不図示)が蓋部32と同心状に設けられてもよいし、複数の円弧状のスペーサ(不図示)が、蓋部32の周方向に沿って設けられてもよい。
【0068】
ところで、研削ホイール10には、被加工物11の径に応じて複数の異なる径のものが存在する。また、研削ホイール10の径に応じて、異なる径の治具20が使用される。それゆえ、研削ホイール10をマウント8に着脱する際にのみ治具20を使用する場合には、研削ホイール10の径に応じた治具20をその都度探す必要が生じる場合がある。
【0069】
しかし、上述の様に、研削ホイール10をケース34内に収容すれば、蓋部32を取り外すだけで、研削ホイール10に応じた径を有する治具20を使用してマウント8に研削ホイール10を装着できるので、治具20の管理が容易になるという利点がある。更に、ボルト14の紛失を防止できるという利点もある。
【0070】
なお、蓋部32の内周側面と、側部24bの外周側面とには、回転により蓋部32と基台収容部24とを固定するための、スクリューキャップの様な係合機構(不図示)が設けられてもよい。また、係合機構に代えて、他の固定機構が設けられてもよい。
【0071】
次に、第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態に係る治具(研削ホイール用治具)40の側面図である。以下では、治具40と治具20との相違点を主に説明する。
【0072】
治具40のボルト収容部26の凹部の深さは、第1の実施形態のボルト収容部26に比べて浅い。それゆえ、第2の実施形態のボルト収容部26に収容されたボルト14は、その軸部14aの先端部が、フランジ12の上面12aから突出する。
【0073】
基台収容部24の側部24bには、各々矩形状の複数の切り欠き24eが形成されている。各切り欠き24eは、ボルト収容部26に対応する位置に配置されているので、作業者は、上面12aから突出する軸部14aの先端部を、治具40の側方から視認できる。
【0074】
治具40は、研削ホイール10をマウント8に対して回転して装着する際に使用される。第2の実施形態で使用されるマウント8は、ねじ穴8cよりも下面8b側に、ねじ穴8cと略同じ幅を有する円弧状の長溝8eを含む(図10(A)から図10(C)参照)。
【0075】
図10(A)は第2の実施形態に係るマウント8の側面図であり、図10(B)は第2の実施形態に係るマウント8の一部断面側面図であり、図10(C)は第2の実施形態に係るマウント8の下面図である。
【0076】
外周側面8dのうち、長溝8eの一端部に対応する所定の位置には、マーク8fが付されている。マーク8fは、例えば、レーザー加工により刻印されている。長溝8eの他端部の上部には、上述のねじ穴8cが設けられている。
【0077】
このマウント8に対して、研削ホイール10を装着する際には、作業者が、マーク8fとボルト14の軸部14aの先端とが対応する様に、研削ホイール10を収容した治具40の向きを調整すると共に、治具40を上昇させる。
【0078】
図11(A)は、フランジ12の上面12aがマウント8の下面8bに接する様に、研削ホイール10をマウント8に対して上昇させた様子を示す図である。なお、このとき、治具40を使用するが、図11(A)では、便宜上、治具40を省略している。
【0079】
研削ホイール10を上昇させる際には、治具40における側部24bの内周側面24dの上部が、マウント8の外周側面8dに接触するので、研削ホイール10の回転中心と、マウント8の回転中心とを、容易に位置合わせできる。
【0080】
上面12aが下面8bに接触すると、軸部14aが長溝8eに嵌合する。その後、図11(B)に示す様に、治具40と共に研削ホイール10を所定方向に回転させて、ボルト14をねじ穴8cの下方に配置する。
【0081】
図11(B)は、ボルト14がねじ穴8cの直下に位置するまで研削ホイール10をマウント8に対して回転させた様子を示す図である。なお、図11(B)でも、便宜上、治具40を省略している。研削ホイール10を回転させた後、図7と同様に、六角レンチ30を用いて、各ボルト14をねじ穴8cに締結する。
【0082】
第2の実施形態でも、研削ホイール10が治具40に収容された状態で、マウント8の下方から、マウント8のねじ穴8cにボルト14を締結することで、研削ホイール10をマウント8に装着できる。
【0083】
更に、複数の研削砥石18が砥石収容部22により収容されているので、研削ホイール10の着脱作業時における、作業者の研削砥石18への接触、工具による研削砥石18の損傷、研削砥石18や基台17からの研削屑の落下等を防止できる。
【0084】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、第2の実施形態の治具40と、蓋部32とにより、研削ホイール10用のケースを構成することもできる。
【符号の説明】
【0085】
2:研削ユニット、4:スピンドルハウジング、6:スピンドル、6a:下端部
8:マウント、8a:上面、8b:下面、8c:ねじ穴、8d:外周側面
8e:長溝、8f:マーク、10:研削ホイール
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、11c:凹部
12:フランジ、12a:上面、12b:下面、12c:貫通穴、12d:座ぐり部
13:分割予定ライン
14:ボルト、14a:軸部、14b:頭部
15:デバイス、15a:デバイス領域、15b:外周余剰領域
16:砥石被装着部、16a:上面、16b:下面(一面)
17:基台、18:研削砥石、18a:外周側面、18b:下面
20、40:治具(研削ホイール用治具)、20a:高さ方向
22:砥石収容部、22a:底部、22b:凹部、22c:上面
24:基台収容部、24a:底部、24b:側部、24c:開口、24d:内周側面
24e:切り欠き
26:ボルト収容部、26a:底部、26b:開口、30:六角レンチ(締結工具)
32:蓋部、32a:凹部、32b:径、32c:スペーサ
34:ケース(研削ホイール用ケース)、36:深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11