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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174020
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】重合体組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20221115BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20221115BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20221115BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/08
C08L77/00
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076950
(22)【出願日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2021079461
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中西 伸次
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 優
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB051
4J002BB213
4J002BB214
4J002BB222
4J002CL012
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】ポリオレフィン等の非極性重合体とエチレン・ビニルアルコール系共重合体等のバリア性極性重合体とを用いた多層包材のリサイクル組成物において、押出工程での異物の発生を低減し、透明性、リサイクル性に優れた重合体組成物を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対し、エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)を0.1~20質量部、酸変性ポリオレフィン(d)を0.1~25質量部含有する重合体組成物。該酸変性ポリオレフィン(d)が、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体であり、該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対し、エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)を0.1~20質量部、酸変性ポリオレフィン(d)を0.1~25質量部含有する重合体組成物であって、
該酸変性ポリオレフィン(d)が、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体であり、該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である、重合体組成物。
【請求項2】
メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が0.01g/10分以上15g/10分未満の酸変性ポリオレフィン(c)をさらに含む、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項3】
前記酸変性ポリオレフィン(c)の含有量が、前記ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対し、0.1~20質量部である、請求項2に記載の重合体組成物。
【請求項4】
前記酸変性ポリオレフィン(d)の密度が0.855~0.895g/cmである、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項5】
前記酸変性ポリオレフィン(d)のグラフト率が0.1~1.0質量%である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項6】
前記酸変性ポリオレフィン(d)が変性エチレン・ブテン共重合体である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系重合体(a)がポリエチレンである、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項8】
前記極性重合体(b)が、エチレン単位含有率が20モル%以上50モル%未満のエチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の重合体組成物を成形してなる成形品。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の重合体組成物を含む層を有する多層包材。
【請求項11】
前記ポリオレフィン系重合体(a)、前記エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)、および前記酸変性ポリオレフィン(d)を溶融混練する工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィン系重合体(a)、前記エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)、および前記酸変性ポリオレフィン(d)を溶融成形する工程を含む、請求項10に記載の多層包材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体組成物に関する。本発明はまた、該重合体組成物を成形してなる成形品及び多層包材に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック包材の廃棄量削減を目的として、以下の重合体組成物を造粒/成形し、多層包材のリグラインド層又はリサイクル層として再生利用するリサイクル技術が知られている。
ポリオレフィンのような非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)のようなバリア性の極性の重合体とを用いた多層包材を製造する際の工程中に発生する端材や製造された多層包材を回収し、粉砕等により微細化したものを溶融混練した重合体組成物。
しかし、このようにして得られる重合体組成物中のエチレン・ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンとは相溶しにくい。その結果、エチレン・ビニルアルコール共重合体がリグラインド層又はリサイクル層内で凝集し、透明性や機械強度の低下を引き起こし、リサイクル後の多層包材の品質に影響する。このため、このようなリサイクルを繰り返す場合のリサイクル性が悪いという問題があった。
【0003】
このような問題に対し、エチレン・ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンを相溶化させるための相溶化剤として、特定の無水マレイン酸変性エチレン共重合体を用いることが知られている。例えば、特許文献1,2には、無水マレイン酸変性エチレン共重合体として、具体的に無水マレイン酸変性エチレン・オクテン共重合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/070237号
【特許文献2】国際公開第2016/109023号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したリサイクル工程において、エチレン・ビニルアルコール共重合体と、ポリオレフィンと、特許文献1や特許文献2に記載されている無水マレイン酸変性エチレン共重合体、具体的には無水マレイン酸変性エチレン・オクテン共重合体とを含む重合体組成物とすることで、得られる重合体組成物の透明性は改善される。しかし、一方で、該重合体組成物を溶融混練した後の造粒/成形する押出工程で、押出出口(ダイスヘッド)付近に異物が付着(「めやに」と呼ばれることもある)する問題が発生する場合があった。押出出口付近に異物が付着すると、これを除去するために生産性が悪化する。また、異物が造粒/成形後の重合体組成物に含有されることで造粒品/成形品の品質が低下する場合もある。また、多層包材のリグラインド層またはリサイクル層として再利用を繰り返した場合、ポリオレフィンの種類によってはリサイクル性が悪化する問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリオレフィン等の非極性重合体とエチレン・ビニルアルコール系共重合体等のバリア性極性重合体とを用いた多層包材の製造工程で発生する端材や製造された多層包材をリサイクルする際に得られる重合体組成物において、押出工程での異物の発生の低減を可能とし、なおかつ透明性に優れた成形品を得ることができ、リサイクル性に優れた重合体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリオレフィン系重合体と、極性重合体であるエチレン・ビニルアルコール系共重合体及び/又はポリアミド系重合体に対して、特定の酸変性ポリオレフィンを所定の割合で用いることにより、押出工程での異物の発生を低減することができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
【0008】
[1] ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対し、エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)を0.1~20質量部、酸変性ポリオレフィン(d)を0.1~25質量部含有する重合体組成物であって、該酸変性ポリオレフィン(d)が、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体であり、該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である、重合体組成物。
【0009】
[2] メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が0.01g/10分以上15g/10分未満の酸変性ポリオレフィン(c)をさらに含む、[1]に記載の重合体組成物。
【0010】
[3] 前記酸変性ポリオレフィン(c)の含有量が、前記ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対し、0.1~20質量部である、[2]に記載の重合体組成物。
【0011】
[4] 前記酸変性ポリオレフィン(d)の密度が0.855~0.895g/cmである、[1]~[3]のいずれかに記載の重合体組成物。
【0012】
[5] 前記酸変性ポリオレフィン(d)のグラフト率が0.1~1.0質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の重合体組成物。
【0013】
[6] 前記酸変性ポリオレフィン(d)が変性エチレン・ブテン共重合体である、[1]~[5]のいずれかに記載の重合体組成物。
【0014】
[7] 前記ポリオレフィン系重合体(a)がポリエチレンである、[1]~[6]のいずれかに記載の重合体組成物。
【0015】
[8] 前記極性重合体(b)が、エチレン単位含有率が20モル%以上50モル%未満のエチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)である、[1]~[7]のいずれかに記載の重合体組成物。
【0016】
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の重合体組成物を成形してなる成形品。
【0017】
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の重合体組成物を含む層を有する多層包材。
【0018】
[11] 前記ポリオレフィン系重合体(a)、前記エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)、および前記酸変性ポリオレフィン(d)を溶融混練する工程を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の重合体組成物の製造方法。
【0019】
[12] 前記ポリオレフィン系重合体(a)、前記エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)、および前記酸変性ポリオレフィン(d)を溶融成形する工程を含む、[10]に記載の多層包材の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の重合体組成物によれば、ポリオレフィン系重合体とエチレン・ビニルアルコール系共重合体及び/又はポリアミド系重合体のバリア性極性重合体とを用いた多層包材の製造工程で発生する端材や製造された多層包材をリサイクルする際に得られる重合体組成物(以下、「リサイクル組成物」又は「リグラインド組成物」と称す場合がある。)の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減し、このようなリサイクルを繰り返した場合においてもこの効果を持続させることができる(以下、この効果を「リサイクル性」と称す場合がある。)。
【0021】
本発明の重合体組成物によれば、リサイクルを繰り返した場合であっても、押出工程での異物の発生を低減できるため、異物混入の問題がなく、かつ透明性に優れた多層包材等の成形品を歩留りよく、高生産効率にて成形することができる。
ただし、本発明の重合体組成物は、リサイクル材としてのポリオレフィン系重合体とエチレン・ビニルアルコール系共重合体及び/又はポリアミド系重合体とを含むものに何ら限定されず、これらの一方又は双方がバージン樹脂の場合にも有効に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることする。
【0023】
以下において、共重合体に含まれる単量体単位を単に「単位」と称す場合がある。例えば、プロピレンに基づく単量体単位を「プロピレン単位」と称し、エチレンに基づく単量体単位、α-オレフィンに基づく単量体単位をそれぞれ「エチレン単位」、「α-オレフィン単位」と称す場合がある。
【0024】
本発明において、重合体のメルトフローレート(MFR)、密度、変性重合体のグラフト率は、以下のようにして測定された値である。
【0025】
<MFR>
JIS K7210に従い、190℃(ポリオレフィン系重合体(a)のうちのエチレン系重合体、酸変性ポリオレフィン(c)、酸変性ポリオレフィン(d)の場合)又は210℃(ポリオレフィン系重合体(a)のうちのプロピレン系重合体、エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)、ポリアミド系重合体(b2)の場合)、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0026】
<密度>
JIS K7112に従い、水中置換法で測定される。
【0027】
<グラフト率>
酸変性ポリオレフィン等の変性重合体のグラフト率(変性量、グラフト量とも称される。)は、赤外分光測定装置で測定した際の、後述の原料重合体にグラフトした不飽和カルボン酸及び/又はその無水物(以下、「不飽和カルボン酸成分」と称す場合がある。)の含有率を意味する。不飽和カルボン酸成分の含有率は、例えば、変性重合体を厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中の不飽和カルボン酸成分特有の吸収、具体的には1,900~1,600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。グラフト率は、上記の方法で、予め作成した検量線から求めることもできる。
【0028】
〔重合体組成物〕
本発明の重合体組成物は、ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対し、エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)(以下、「EVOH(b1)」と称す場合がある。)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)を0.1~20質量部、酸変性ポリオレフィン(d)を0.1~25質量部含有する重合体組成物である。
該酸変性ポリオレフィン(d)は、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体であり、該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分であることを特徴とする。
本発明の重合体組成物は、必要に応じて更に酸変性ポリオレフィン(d)とはメルトフローレートが異なる酸変性ポリオレフィン(c)を含有していてもよい。
【0029】
[ポリオレフィン系重合体(a)]
ポリオレフィン系重合体(a)としては、ポリプロピレン;プロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとを共重合したプロピレン系共重合体;低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン;エチレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとを共重合したエチレン系共重合体;ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などが挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン系重合体(a)は、1種類を単独で用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものの2種類以上を混合して用いてもよい。
【0031】
中でも、ポリオレフィン系重合体(a)として、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのプロピレン系重合体、及びポリエチレン、エチレン系共重合体などのエチレン系重合体が好ましい。耐熱性に優れた成形品が得られる観点からは、ポリオレフィン系重合体(a)として、プロピレン系重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。一方、透明性に優れた成形品が得られる観点からは、ポリオレフィン系重合体(a)として、エチレン系重合体が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、高密度ポリエチレンが更に好ましい。
【0032】
ポリオレフィン系重合体(a)のメルトフローレート(MFR:190℃又は210℃、2.16kg)は0.01~10g/10分であることが好ましい。ポリオレフィン系重合体(a)のMFRが0.01g/10分以上であれば、極性重合体(b)とポリオレフィン系重合体(a)の溶融粘度の差が大きくなり過ぎず、重合体組成物中の極性重合体(b)の分散性が良好となり、得られる成形品の耐衝撃性に優れる。一方、ポリオレフィン系重合体(a)のMFRが10g/10分以下であれば、得られる成形品の耐衝撃性が良好となる。ポリオレフィン系重合体(a)のMFRは、5g/10分以下がより好ましく、3g/10分以下が更に好ましく、2g/10分以下が特に好ましい。なお、ポリオレフィン系重合体(a)が複数種類の重合体の混合物である場合、それぞれの重合体のMFRを混合質量比で加重平均した値をポリオレフィン系重合体(a)のMFRとする。後述のEVOH(b1)、ポリアミド系重合体(b2)、酸変性ポリオレフィン(c)、酸変性ポリオレフィン(d)が複数種類の重合体の混合物である場合も、ポリオレフィン系重合体(a)と同様にして、それぞれのMFRを求める。
【0033】
[極性重合体(b)]
極性重合体(b)は、EVOH(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも一つのバリア性極性重合体である。
極性重合体(b)は、EVOH(b1)の1種又は2種以上とポリアミド系重合体(b2)の1種又は2種以上を混合して用いてもよい。EVOH(b1)とポリアミド系重合体(b2)を混合して用いる場合、その混合割合には特に制限はない。
【0034】
<EVOH(b1)>
EVOH(b1)は、エチレン・ビニルエステル共重合体をけん化することにより得ることができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。エチレン・ビニルエステル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等により製造され、エチレン・ビニルエステル共重合体のケン化も、公知の方法で行い得る。
【0035】
EVOH(b1)のエチレン単位含有率は、ISO14663に基づいて測定される値で、20~60モル%が好ましい。エチレン単位含有率が20モル%以上であれば、重合体組成物中のEVOH(b1)の高湿時のガスバリア性、溶融成形性が良好となる。EVOH(b1)のエチレン単位含有率は23モル%以上がより好ましい。また、エチレン単位含有率が60モル%以下であればバリア性に優れる。EVOH(b1)のエチレン単位含有率は55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましく、50モル%未満が特に好ましい。
【0036】
EVOH(b1)のビニルエステル単位のけん化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定される値で、バリア性、熱安定性、耐湿性の観点から、80モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上が更に好ましい。
【0037】
EVOH(b1)のメルトフローレート(MFR:210℃、2.16kg)は0.1~100g/10分であることが好ましい。EVOH(b1)のMFRが100g/10分以下であれば、EVOH(b1)と酸変性ポリオレフィン(c)の溶融粘度の差が大きくなり過ぎず、重合体組成物中のEVOH(b1)の分散性が良好となり、熱安定性に優れる。EVOH(b1)のMFRは50g/10分以下がより好ましく、30g/10分以下が更に好ましい。一方、EVOH(b1)のMFRが0.1g/10分以上であれば、酸変性ポリオレフィン(d)との粘度差が大きくなりすぎず、重合体組成物中のEVOH(b1)の分散性が良好となり、耐衝撃性が良好となる。EVOH(b1)のMFRは0.5g/10分以上がより好ましい。
【0038】
EVOH(b1)は、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には5モル%以下の範囲で、エチレン及びビニルエステル以外の重合性単量体が共重合されていてもよい。このような重合性単量体としては、例えばプロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物等のヒドロキシ基含有α-オレフィン誘導体;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;不飽和カルボン酸またはその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸またはその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0039】
さらに、EVOH(b1)としては、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
【0040】
EVOH(b1)は1種のみを用いてもよく、ビニルエステルの種類、エチレン単位含有率や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0041】
<ポリアミド系重合体(b2)>
ポリアミド系重合体(b2)としては、公知のものを用いることができる。
具体的には、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーが挙げられる。
また、ポリアミド系共重合体としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドや、ポリ-p-フェニレン-3,4’-ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド系重合体をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート、あるいはこれらの末端変性ポリアミド系重合体等が挙げられる。なかでも、好ましくは末端変性ポリアミド系重合体である。
【0042】
ポリアミド系重合体(b2)のメルトフローレート(MFR:210℃、2.16kg)は0.1~30g/10分であることが好ましい。ポリアミド系重合体(b2)のMFRが上記範囲であることにより、相溶化剤としての酸変性ポリオレフィン(d)と最適に反応し、分散性を向上させることが可能となる。
【0043】
ポリアミド系重合体(b2)は1種のみを用いてもよく、共重合組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0044】
[酸変性ポリオレフィン(c)]
酸変性ポリオレフィン(c)としては、ポリオレフィンを酸でグラフト変性させて得られるグラフト変性ポリオレフィンや、オレフィンと酸を共重合させて得られるオレフィン系共重合体が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
なかでも、酸変性ポリオレフィン(c)としては、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体により変性された変性ポリオレフィンが好ましく、ポリオレフィン系重合体(a)との相溶性に優れる観点から、酸変性ポリオレフィン(c)が、ポリオレフィン系重合体(a)と同じ種類のポリオレフィン系重合体を酸変性させたものであることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系重合体(a)がポリプロピレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(c)が酸変性ポリプロピレンであることが好ましく、ポリオレフィン系重合体(a)がポリエチレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(c)が酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0045】
酸変性ポリオレフィン(c)のグラフト変性に用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物が挙げられる。このうち無水マレイン酸が最も好適である。
【0046】
酸変性ポリオレフィン(c)のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)は0.01g/10分以上15g/10分未満であり、好ましくは0.5~10g/10分である。酸変性ポリオレフィン(c)のMFRが上記範囲であることにより、酸変性ポリオレフィン(c)と、ポリオレフィン系重合体(a)及び酸変性ポリオレフィン(d)の粘度のバランスが良好となる。その結果、極性重合体(b)の分散性が向上して、成形品としたときの耐衝撃性が向上する。
【0047】
また、酸変性ポリオレフィン(c)の密度は0.855~0.955g/cmであることが好ましい。酸変性ポリオレフィン(c)の密度が上記範囲であれば、透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができ、リサイクルフィルムの外観を良好に維持できるとともに、機械物性の低下も防ぐことができる。
【0048】
酸変性ポリオレフィン(c)に含有される不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の量としては、酸変性ポリオレフィン(c)の0.001~3質量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体量が上記範囲内の酸変性ポリオレフィン(c)であれば、本発明の重合体組成物中の極性重合体(b)の分散性が向上して、成形性が向上する。
【0049】
酸変性ポリオレフィン(c)は1種のみを用いてもよく、変性前の重合体の種類や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0050】
[酸変性ポリオレフィン(d)]
酸変性ポリオレフィン(d)は、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体(以下、「エチレン共重合体」又は「原料重合体」と称す場合がある。)を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物(不飽和カルボン酸成分)により変性した変性エチレン共重合体であり、当該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分であるものである。
【0051】
このような酸変性ポリオレフィン(d)を用いることで、極性重合体(b)を非極性重合体であるポリオレフィン系重合体(a)中に微細に分散させ、その結果、極性重合体(b)が分散したリサイクル組成物において、ポリオレフィン系重合体(a)の機械強度や透明性を向上させることができる。
【0052】
酸変性ポリオレフィン(d)のMFR(190℃、荷重2.16kg)は15~39g/10分である。酸変性ポリオレフィン(d)のMFRを上記範囲とすることで、透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができ、リサイクル組成物を成形して得られるフィルム(以下、「リサイクルフィルム」と称す場合がある。)の外観を良好に維持できるとともに、機械物性の低下も防ぐことができる。
【0053】
酸変性ポリオレフィン(d)の密度は、好ましくは0.855~0.895g/cmである。酸変性ポリオレフィン(d)の密度を上記範囲とすることで、透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができ、リサイクルフィルムの外観を良好に維持できるとともに、機械物性の低下も防ぐことができる。
【0054】
<変性エチレン共重合体>
酸変性ポリオレフィン(d)の変性エチレン共重合体を構成する炭素数4~8のα-オレフィン単量体としては、例えば、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンの1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、炭素数4~6のα-オレフィン単量体が好ましく、炭素数4のα-オレフィン単量体、即ち、1-ブテンが特に好ましい。
【0055】
変性エチレン共重合体としては、例えば、変性エチレン・ブテン共重合体、変性エチレン・ヘキセン共重合体、変性エチレン・オクテン共重合体が挙げられる。これらの内でも、リサイクル性の観点から、変性エチレン・ブテン共重合体、変性エチレン・ヘキセン共重合体が好ましく、変性エチレン・ブテン共重合体が特に好ましい。
【0056】
更に、変性エチレン共重合体には、エチレン単量体及び上記のα-オレフィン単量体以外の他の単量体単位が含まれていてもよい。
【0057】
<エチレン共重合体>
不飽和カルボン酸成分による変性に供するエチレン共重合体としては、上述の変性エチレン共重合体が得られれば、特に限定されず、公知のエチレン共重合体を使用することができる。
【0058】
変性に供するエチレン共重合体、即ち、原料重合体のMFR(190℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、18~50g/10分であることが好ましい。原料重合体のMFRを上記範囲内とすることで、変性によるMFRの変化を考慮しても、目的とする変性エチレン共重合体が得やすくなる傾向にある。
【0059】
また、原料重合体としては、密度0.855~0.895g/cmのものを好適に使用できる。
【0060】
本発明に好適な原料重合体としては、市販品を用いることもでき、例えば、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズの中から前記の特性に該当するものを適宜選択して用いることができる。
【0061】
本発明において、原料重合体のエチレン共重合体は1種のみを用いてもよく、物性や組成等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
【0062】
<グラフト変性>
エチレン共重合体をグラフト変性する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸といったα,β-エチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の無水物としては、コハク酸2-オクテン-1-イル無水物、コハク酸2-ドデセン-1-イル無水物、コハク酸2-オクタデセン-1-イル無水物、マレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1-ブテン-3,4-ジカルボン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、exo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、endo-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。
【0063】
これらの不飽和カルボン酸成分は、変性すべきエチレン共重合体や変性条件に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いる場合に限らず、2種以上を併用しても良い。これらの不飽和カルボン酸成分は、有機溶剤などに溶解して使用することもできる。
【0064】
エチレン共重合体のグラフト変性は、不飽和カルボン酸成分を添加して、好ましくはラジカル発生剤の存在下に不飽和カルボン酸成分をエチレン共重合体にグラフト重合させることで行うことができる。
【0065】
ここで使用されるラジカル発生剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機の過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ-t-ブタン等のアゾ化合物;ジクミル等の炭素ラジカル発生剤が挙げられる。
【0066】
上記のラジカル発生剤は、変性反応に供するエチレン共重合体の種類、変性剤としての不飽和カルボン酸成分の種類及び変性条件に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ラジカル発生剤は有機溶剤などに溶解して使用することもできる。
【0067】
本発明の変性エチレン共重合体を得る際に行う変性反応としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応法など公知の種々の反応方法を使用することができるが、通常は溶融混練反応法が好ましい。
【0068】
溶融混練反応法よる場合は、前記の各成分を所定の配合比にて均一に混合した後に溶融混練すれば良い。混合には、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸などの多軸混練押出機などが使用される。
【0069】
溶融混練は、重合体が熱劣化しないように、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上で、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の範囲で行う。
【0070】
変性剤としての不飽和カルボン酸成分の配合量は、原料重合体であるエチレン共重合体100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上で、通常30質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。不飽和カルボン酸成分の配合量を上記範囲とすることで、経済的であり、十分な変性を行うことができる。
【0071】
また、ラジカル発生剤の配合量は、原料重合体であるエチレン共重合体100質量部に対し、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上で、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。ラジカル発生剤の配合量を上記下限以上とすることで、十分な変性を行うことができる。また、ラジカル発生剤の配合量を上記上限以下とすることで、エチレン共重合体の変性時の高分子量化(粘度上昇)を所望の範囲に抑えることができ、目的の変性エチレン共重合体を得やすい傾向にある。
【0072】
変性反応においては、エチレン共重合体に不飽和カルボン酸成分が付加するグラフト重合反応が主として起こるが、架橋反応も起こり、この架橋により、得られる変性物は分子量が増大して溶融粘度が高くなる傾向にあるため、ラジカル発生剤の使用量が多過ぎると、グラフト重合反応も起こり易いが、同時にこのような溶融粘度の増大につながる架橋反応も起こり易くなるため、好ましくない。
【0073】
<グラフト率>
酸変性ポリオレフィン(d)である変性エチレン共重合体のグラフト率は0.1~1.0質量%であることが好ましく、0.6~1.0質量%であることがより好ましく、0.8~1.0質量%であることが更に好ましい。グラフト率が上記下限以上であると、良好なリサイクル性を得ることができる。ただし、グラフト率が高過ぎると焼け等が多くなり、その結果、リサイクルフィルムの外観等に悪影響を及ぼすため、酸変性ポリオレフィン(d)の変性エチレン共重合体のグラフト率は上記上限以下であることが好ましい。
【0074】
酸変性ポリオレフィン(d)は1種のみを用いてもよく、物性等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0075】
[配合割合]
本発明の重合体組成物は、ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対して極性重合体(b)を0.1~20質量部、酸変性ポリオレフィン(d)を0.1~25質量部含有する。
【0076】
極性重合体(b)が0.1質量部未満では極性重合体(b)を含有することによるバリア性を十分に得ることができない。一方、極性重合体(b)が20質量部を超えると得られる成形品の耐衝撃性が低下する傾向がある。極性重合体(b)はポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対して1~15質量部含有されることが好ましく、5~10質量部含有されることが特に好ましい。
【0077】
酸変性ポリオレフィン(d)が0.1質量部未満では、重合体組成物中の極性重合体(b)の微分散の効果を十分に得ることができず、リサイクル組成物において、透明性の低下や押出工程における異物発生を十分に防止することができない。一方、酸変性ポリオレフィン(d)が25質量部を超えると押出工程における異物発生を十分に防止することができない。酸変性ポリオレフィン(d)はポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対して0.5~15質量部含有されることが好ましく、1~10質量部含有されることが特に好ましい。
【0078】
本発明の重合体組成物が、酸変性ポリオレフィン(c)を含有する場合、酸変性ポリオレフィン(c)の含有量は、ポリオレフィン系共重合体(a)100質量部に対して0.1~20質量部、特に1~18質量部、とりわけ5~15質量部含有されていることが好ましい。酸変性ポリオレフィン(c)の含有量が上記範囲内であれば、重合体組成物中の極性重合体(b)の分散性がより良好となり、得られる成形品の耐衝撃性が高められる。
【0079】
[その他の成分]
本発明の重合体組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じて、ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、酸変性ポリオレフィン(c)、酸変性ポリオレフィン(d)以外の重合体や任意の添加剤等(以下、これらを「その他の成分」と称す。)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0080】
添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、帯電防止剤を挙げることができる。本発明の重合体組成物中におけるこれらの添加剤の含有量は、その合計で通常50質量%以下であり、20質量%以下が好適であり、10質量%以下がより好適である。
【0081】
[重合体組成物の製造方法]
本発明の重合体組成物を得るための各成分の混合方法について特に制限はなく、ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、及び酸変性ポリオレフィン(d)、必要に応じて用いられる酸変性ポリオレフィン(c)及びその他の成分を一度にドライブレンドして溶融混練する方法;ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、及び酸変性ポリオレフィン(d)、必要に応じて用いられる酸変性ポリオレフィン(c)及びその他の成分の一部を予め溶融混練してから、他の成分を配合して溶融混練する方法;ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、及び酸変性ポリオレフィン(d)、必要に応じて用いられる酸変性ポリオレフィン(c)及びその他の成分の一部又は全部を含有する多層構造体と、他の成分を配合して溶融混練する方法が挙げられる。
【0082】
本発明の重合体組成物の製造方法として、ポリオレフィン系重合体(a)層及び極性重合体(b)層を含む多層包材の回収物、或いはポリオレフィン系重合体(a)層、極性重合体(b)層及び酸変性ポリオレフィン(c)層を含む多層包材の回収物と、酸変性ポリオレフィン(d)を含有する相溶化剤とを溶融混練する方法が好適である。ここで、多層包材の回収物とは、当該多層包材からなる成形品を製造する際に発生するバリ等のスクラップや成形時の不合格品等の回収物である。また、このような回収物を溶融混練する際に配合される添加剤を相溶化剤といい、ここでは、酸変性ポリオレフィン(d)を含有する相溶化剤が用いられる。前記相溶化剤中の酸変性ポリオレフィン(d)の含有率は、5~100質量%が好適である。酸変性ポリオレフィン(d)の含有率は、10質量%以上がより好適であり、20質量%以上がさらに好適であり、50質量%以上が特に好適である。
【0083】
溶融混練のための具体的な方法としては、各成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、多軸混練押出機、例えば日本製鋼所の2軸混練押出機であるTEX25を用いて混練する方法が例示できる。
【0084】
各成分の溶融混練の温度は、前述の酸変性ポリオレフィン(d)のグラフト変性時の温度と同様、通常100~300℃、好ましくは120~280℃、より好ましくは150~250℃である。
【0085】
〔成形品〕
本発明の成形品は本発明の重合体組成物を成形してなるものである。
【0086】
本発明の成形品の形状としては、例えば、フィルム、シート、テープ、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物、各種不定形成形物等が例示される。
【0087】
本発明の重合体組成物の成形方法には特に制限はなく、一般的な重合体組成物に適用可能な成形方法であればいずれも適用することができる。
例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形、熱成形等を挙げることができる。
【0088】
さらに成形においては、成形品の物性を改善したり、目的とする任意の容器形状に成形したりするために、加熱延伸処理が施されることも多い。ここで加熱延伸処理とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート、パリソン状の成形物を、チャック、プラグ、真空力、圧空力、ブロー等により、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、フィルム状に均一に成形する操作を意味する。そして、この延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等が挙げられる。延伸は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよいが、二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は通常60~170℃であり、さらには80~160℃が好ましい。
【0089】
〔多層包材〕
本発明の多層包材は、本発明の重合体組成物を含む層を有する多層包材である。本発明の多層包材は、ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、および酸変性ポリオレフィン(d)、必要に応じて更に酸変性ポリオレフィン(c)を溶融成形する工程を含む本発明の多層包材の製造方法により製造することができる。
即ち、本発明の重合体組成物は、このような多層包材の少なくとも1層(リグラインド層)として用いることができる。
以下、リグラインド層を含有した多層包材について説明する。
【0090】
[リグラインド層含有多層包材]
リグラインド層含有多層包材としては、本発明の重合体組成物よりなるリグラインド層(「Reg層」と記載する場合がある。)を、その積層中に少なくとも1層有していればよく、一般的には、リグラインド層の他に、ポリオレフィン系重合体層(以下「「PO層」」と記載する場合がある。)、EVOH層及び/またはポリアミド系重合体層(以下「PA層」と記載する場合がある。)、必要に応じて酸変性ポリオレフィン(c)層を含有してなる多層包材が好ましい。
【0091】
具体的なReg層含有多層包材の層構成としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
PO層/Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層、
PO層/Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層、
PO層/Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/PO層、
Reg層/EVOH層またはPA層、Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層、
Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層、
Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層、
Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/PO層、
PO層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層またはPA層/Reg層/EVOH層またはPA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層。
【0092】
また、EVOH層とPA層とを含むReg層含有多層包材の層構成としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
PO層/Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PA層/EVOH層/PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/PO層、
PO層/Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PA層/EVOH層/PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層、
PO層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PA層/EVOH層/PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/PO層、
PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層/Reg層/PO層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PA層/EVOH層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/PO層、
PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層/Reg層/PO層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PA層/EVOH層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層、
PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PA層/EVOH層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/PO層、
PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PA層/EVOH層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層、
PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層/Reg層/PO層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層、
PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/PO層、
PA層/酸変性ポリオレフィン(c)層/Reg層/酸変性ポリオレフィン(c)層/EVOH層/酸変性ポリオレフィン(c)層/PO層。
【0093】
リグラインド層含有多層包材の各層の厚みは、層構成、ポリオレフィン系重合体の種類、用途や容器形態、要求される物性等により一概に言えないが、リグラインド層の厚みは通常5~5000μmであり、好ましくは30~1000μmである。EVOH層の厚みは通常5~500μmであり、好ましくは10~200μmである。ポリオレフィン系重合体層の厚みは通常5~5000μmであり、好ましくは30~1000μmである。酸変性ポリオレフィン(c)層を有する場合、その酸変性ポリオレフィン(c)層の厚みは通常5~400μmであり、好ましくは10~150μmである。
【0094】
リグラインド層/ポリオレフィン系重合体層の厚み比率は、通常1/5~10/1であり、好ましくは1/2~5/1である。
リグラインド層/EVOH層の厚み比率は、通常1/1~100/1であり、好ましくは5/1~20/1である。
【0095】
[リグラインド層含有多層包材の製造方法]
リグラインド層含有多層包材は、例えば、前記回収物となる多層包材と同種の樹脂を材料として、同種の方法により成形することにより製造することが可能である。この場合、本発明の重合体組成物の成形方法には特に制限はなく、一般的な重合体組成物に適用可能な成形方法であればいずれも適用することができる。具体的には、前記回収物となる積層体に例示したポリオレフィン系重合体層に用いられるポリオレフィン系重合体、EVOH層に用いられるEVOH、酸変性ポリオレフィン(c)層に用いられる酸変性ポリオレフィン(c)を用い、例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形、熱成形等、なかでも共押出成形及び共射出成形、特には共押出成形といった積層方法によって製造することができる。
【0096】
このようにして得られた多層包材は、再生品、再々生品を問わず、一般的な食品、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。
【実施例0097】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0098】
以下の実施例及び比較例において、変性共重合体及びリグラインド組成物の調製に用いた原材料は次の通りである。
【0099】
[変性共重合体原材料]
<エチレン・ブテン共重合体>
・e-1:三井化学社製 タフマー(登録商標)A35070S(MFR(190℃、荷重2.16kg):35g/10分、密度:0.870g/cm
・e-2:三井化学社製 タフマー(登録商標)A4085S(MFR(190℃、荷重2.16kg):3.6g/10分、密度:0.885g/cm
・e-3:三井化学社製 タフマー(登録商標)A20085S(MFR(190℃、荷重2.16kg):18g/10分、密度:0.885g/cm
・e-4:三井化学社製 タフマー(登録商標)A70050S(MFR(190℃、荷重2.16kg):70g/10分、密度:0.893g/cm
【0100】
<ラジカル発生剤>
・有機過酸化物 日本油脂(株)製 パーヘキサ25B
【0101】
<不飽和カルボン酸成分>
・無水マレイン酸 市販品
【0102】
<エチレン・オクテン共重合体>
・o-1:Dow社製 AFFINITY(登録商標)GA1900(MFR(190℃、荷重2.16kg):1000g/10分、密度:0.870g/cm
【0103】
[リグラインド組成物材料]
<ポリオレフィン系重合体(a)>
・PE:日本ポリエチレン社製 ポリエチレン ノバテック(登録商標)UF230(MFR(190℃、荷重2.16kg):1g/10分、密度:0.921g/cm
・PP:日本ポリプロ社製 ポリプロピレン ノバテック(登録商標)EA7AD(MFR(210℃、荷重2.16kg):1.4g/10分、密度:0.9g/cm
【0104】
<EVOH(b1)>
・EVOH(MFR(210℃、荷重2.16kg):3.8g/10分、密度:1.19g/cm、エチレン単位含有率:32モル%、ケン化度:99.9モル%)
【0105】
<ポリアミド系重合体(b2)>
・Ny:DSM社製 ポリアミド系重合体 1022(MFR(210℃、荷重2.16kg):6.6g/10分、密度:1.13g/cm
【0106】
<酸変性ポリオレフィン(c)>
・c-1:三菱ケミカル社製 無水マレイン酸変性ポリエチレン モディック(登録商標)M512(MFR(190℃、荷重2.16kg):1.0g/10分、密度:0.900g/cm
・c-2:三菱ケミカル社製 無水マレイン酸変性ポリプロピレン P604V(MFR(190℃、荷重2.16kg):1.0g/10分,MFR(230℃、荷重2.16kg):3.2g/10分、密度:0.9g/cm
【0107】
[変性共重合体の作製]
<合成例1>
成分(e-1):100質量部、ラジカル発生剤:0.03質量部、及び不飽和カルボン酸成分:0.15質量部をドライブレンドして混合し、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX25αIII、D=25mmφ、L/D=52.5)を用い、設定温度230℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状の無水マレイン酸により変性された変性エチレン・ブテン共重合体(d-1)を得た。
得られた変性エチレン・ブテン共重合体(d-1)について、前述の方法でMFR(190℃、2.16kg)、密度、グラフト率を測定した。測定結果を表-1に示す。
【0108】
<合成例2~8>
配合組成を表-1に示したように変更した以外は合成例1と同様にして、それぞれ変性共重合体(d-2)~(d-8)を得た。得られた変性共重合体を用いて、合成例1と同様に、MFR(190℃、2.16kg)、密度、グラフト率を測定した。測定結果を表-1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
[ポリエチレン系リグラインド組成物の作製と評価]
<実施例1>
日本ポリエチレン社製 ポリエチレン ノバテック(登録商標)UF230:77質量部、三菱ケミカル社製 EVOH ソアノール(登録商標)DC3203RB:10質量部、三菱ケミカル社製 モディック(登録商標)M512:10質量部に対し、合成例1の変性エチレン・ブテン共重合体(d-1)を相溶化剤として3質量部、ドライブレンドして混合し、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX25αIII、D=25mmφ、L/D=52.5)を用い、設定温度210℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状のリグラインド組成物を得た。得られたリグラインド組成物について、下記(1)~(5)の評価を行った。評価結果を表-2Aに示す。
【0111】
<実施例2~8,10、比較例1~7>
配合組成を表-2A,2Bに示したように変更した以外は実施例1と同様にして、リグラインド組成物を得た。得られたリグラインド組成物について、下記(1)~(5)の評価を行った。評価結果を表-2A,2Bに示す。
【0112】
<実施例9>
日本ポリエチレン社製 ポリエチレン ノバテック(登録商標)UF230:77質量部、DSM社製 Ny 1022:10質量部、三菱ケミカル社製 モディック(登録商標)M512:10質量部に対し、合成例3の変性エチレン・ブテン共重合体(d-3)を相溶化剤として3質量部、ドライブレンドして混合し、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX25αIII、D=25mmφ、L/D=52.5)を用い、設定温度220℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状のリグラインド組成物を得た。得られたリグラインド組成物について、下記(1)~(5)の評価を行った。評価結果を表-2Aに示す。
【0113】
[評価方法]
(1)透明性
(株)GSIクレオス社製単層Tダイフィルム成形機(押出機:50mmφ、リップ開度:0.3mm)を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数20rpmで膜厚0.1mmのフィルムを作製した。得られたフィルムを目視により比較し、透明性が高いフィルムを○、やや不透明なフィルムを△、不透明なフィルムを×とした。
【0114】
(2)内部HAZE
上記にて作製した膜厚0.1mmのフィルムを用い、HAZEメーターを用いて内部ヘイズをn=3にて測定し、平均値を算出した。内部HAZEは重合体組成物中のEVOH又はNyの分散性を評価する指標であり、内部HAZE値が小さいほどEVOH又はNyが微分散しており外観が良好である。本評価では内部HAZE値が20%以下であるとEVOH又はNyの分散性が良好と評価できる。
【0115】
(3)引張破断強度
上記にて作製した膜厚0.1mmのフィルムを用い、JIS K7161に準拠する方法にて引張破断強度をn=3にて測定し、平均値を算出した。引張破断強度が25MPa以上であると機械特性が良好であると言える。
【0116】
(4)異物付着量
2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX25αIII、D=25mmφ、L/D=52.5)を用い、設定温度210℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hでリグラインド組成物の押出を実施した際の、ダイスヘッドにおける低分子量熱分解物の析出量を目視により確認した。
1時間の押出後、ダイスヘッドにおける異物の付着量の程度を確認し、付着が無い場合は◎、付着量が少ない場合は○、やや多い場合は△、多い場合は×とした。
【0117】
(5)リサイクル性
上記で得られたリグラインド組成物について、リグラインド組成物の作製に記載の条件にて再度2軸押出機にて溶融混練を実施した。得られたリサイクル組成物について、上記(1)~(4)の透明性、内部HAZE、引張破断強度、及び異物付着量の評価を行い、一回目の溶融混練にて得られたリグラインド組成物の特性と比較して、同等の場合は○、やや特性の低下がみられる場合は△、特性の低下がみられる場合は×とした。
【0118】
【表2A】
【0119】
【表2B】
【0120】
[ポリプロピレン系リグラインド組成物の作製と評価]
<実施例11>
日本ポリエチレン社製 ポリプロピレン ノバテック(登録商標)EA7AD:77質量部、三菱ケミカル社製 EVOH(登録商標)DC3203RB:10質量部、三菱ケミカル社製 モディック(登録商標)P604V:10質量部に対し、合成例1の変性エチレン・ブテン共重合体(d-1)を相溶化剤として3質量部、ドライブレンドして混合し、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX25αIII、D=25mmφ、L/D=52.5)を用い、設定温度210℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状のリグラインド組成物を得た。得られたリグラインド組成物について、前記(1)~(5)の評価を行った。評価結果を表-3Aに示す。
【0121】
<実施例12~18、比較例8~12>
配合組成を表-3に示したように変更した以外は実施例11と同様にして、リグラインド組成物を得た。得られたリグラインド組成物について、前記(1)~(5)の評価を行った。評価結果を表-3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
[考察]
<ポリエチレン系リグラインド組成物>
表-2Aに示すように、本発明例である変性エチレン・ブテン共重合体(d-1)~(d-4)を相溶化剤として含む本発明の重合体組成物を用いた実施例1~10は、透明性を損なうことなく、異物付着量を無いもしくは少なくすることができた。また、内部HAZE、機械特性、リサイクル性にも優れる結果となった。
これに対して、MFRが2g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(d-5)を用いた比較例1、MFRが13g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(d-6)を用いた比較例2、MFRが59g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(d-7)を用いた比較例3は、やや不透明且つ異物付着量が多く、相溶化剤としての効果が劣る結果となった。
MFRが640g/10分の変性エチレン・オクテン共重合体(d-8)を用いた比較例4は、透明性が高いものの、異物付着量がやや多く、リサイクル性の評価において内部HAZEが大きく悪化し、引張破断強度も低下し、リサイクル性に劣る結果となった。
比較例5,7は、相溶化剤を用いない例を示しており、異物付着量は無いもしくは少ないが、フィルムが不透明ないしはやや不透明でリサイクル性にも劣る。
また、比較例6は、変性エチレン・ブテン共重合体(d-3)の含有量が多い例を示しており、リサイクル性が悪い結果となった。
【0124】
<ポリプロピレン系リグラインド組成物>
表-3に示すように、本発明例である変性エチレン・ブテン共重合体(d-1)~(d-3)を相溶化剤として含む本発明の重合体組成物を用いた実施例11~18は、透明性を損なうことなく、異物付着量を無い又は無くすことができ、リサイクル性にも優れた結果となった。また、内部HAZE、機械特性にも優れる結果となった。
これに対して、MFRが2g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(d-5)を用いた比較例8、MFRが59g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(d-7)を用いた比較例9において、リサイクル性が悪い結果となった。
MFRが640g/10分の変性エチレン・オクテン共重合体(d-8)を用いた比較例10は、リサイクル性が悪い結果となった。
比較例11は、相溶化剤を用いない例を示しており、異物付着量は少ないが、フィルムが不透明であり、またリサイクル性が悪い結果となった。
また、比較例12は、変性エチレン・ブテン共重合体(d-3)の含有量が多い例を示しており、異物付着量が多い結果となった。