(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174051
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】赤外線センサカバー、赤外線センサモジュール及びカメラ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20221115BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20221115BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20221115BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G01J1/02 H
G02B1/118
G02B1/11
H04N5/225 400
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127366
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2018013599の分割
【原出願日】2018-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2017017219
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅行
(57)【要約】
【課題】赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れた赤外線センサカバーを提供する。前記赤外線センサカバーを用いた赤外線センサモジュール、前記赤外線センサカバーを用いたカメラを提供する。
【解決手段】基板と、基板の少なくとも一方の面に設けられた反射防止層と、を有する、赤外線センサカバー。基板の一方の面に多層構造を含む反射防止層が設けられ、基板の他方の面にモスアイ構造を含む反射防止層が設けられることが好ましい。前記赤外線センサカバー及び赤外線センサ本体を含む、赤外線センサモジュール。前記赤外線センサカバー及び赤外線センサ本体を含む、カメラ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板の少なくとも一方の面に設けられた反射防止層と、
を有する近赤外線センサカバーであって、
前記反射防止層が、モスアイ構造を有し、 前記モスアイ構造の隣接する凸部間の平均間隔が、400nm以下である近赤外線センサカバー。
【請求項2】
基板の材料が、ガラス又は樹脂である、請求項1に記載の近赤外線センサカバー。
【請求項3】
基板の材料が、ガラスである、請求項1に記載の近赤外線センサカバー。
【請求項4】
基板の一方の面に多層構造を含む反射防止層が設けられ、基板の他方の面にモスアイ構造を含む反射防止層が設けられた、請求項1~3のいずれか一項に記載の近赤外線センサカバー。
【請求項5】
前記多層構造が、屈折率の異なる複数の層を含む、請求項4に記載の近赤外線センサカバー。
【請求項6】
前記反射防止層が、基材及びモスアイ構造を有し、前記基材の材料が、アクリル樹脂、 ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、又はセルロース樹脂である、請求項2に記載 の近赤外線センサカバー。
【請求項7】
波長850nmにおける透過率が、93%以上である、請求項6に記載の近赤外線センサカバー。
【請求項8】
波長950nmにおける透過率が、93%以上である、請求項6に記載の近赤外線センサカバー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の近赤外線センサカバー及び近赤外線センサ本体を含む、近赤外線センサモジュール。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の近赤外線センサカバー及び近赤外線センサ本体を含む、カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサカバー、赤外線センサモジュール及びカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサは、赤外領域の光を受光し電気信号に変換して必要な情報を取り出して応用する技術やその技術を利用した機器のことで、人間の視覚を刺激しないで物を見ることができる、対象物の温度を遠くから非接触で瞬時に測定することができる等の特徴を有する。その特徴から、例えば、カメラ等の映像装置、非接触の温度計測装置等の用途で用いられている。
【0003】
一般に、赤外線センサは、赤外線センサの本体を保護する目的として、本体の周囲にカバーが設けられている。例えば、特許文献1には、赤外線センサの本体をポリエチレン樹脂製のカバーで覆った赤外線センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている赤外線センサは、カバーの材料が単純なポリエチレン樹脂であるため、赤外線の透過率が十分でなく、赤外線センサの性能が劣る。
赤外線センサのカバーとして、ガラスや樹脂が用いられることが多いが、単純にガラスや樹脂を用いただけでは、赤外線の透過率が十分でなく、赤外線センサの性能が劣る要因となり得る。特に、高度な赤外線センサの性能が求められる用途においては、より高い赤外線の透過率が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、これらの課題を解決し、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れた赤外線センサカバーを提供することにある。また、本発明は、前記赤外線センサカバーを用いた赤外線センサモジュール、前記赤外線センサカバーを用いたカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]基板と、基板の少なくとも一方の面に設けられた反射防止層と、を有する、赤外線センサカバー。
[2]反射防止層が、多層構造を含む反射防止層又はモスアイ構造を含む反射防止層である、[1]に記載の赤外線センサカバー。
[3]多層構造が、屈折率の異なる複数の層を含む、[2]に記載の赤外線センサカバー。
[4]モスアイ構造の隣接する凸部間の平均間隔が、400nm以下である、[2]に記載の赤外線センサカバー。
[5]基板の材料が、ガラス又は樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載の赤外線センサカバー。
[6]基板の材料が、ガラスである、[5]に記載の赤外線センサカバー。
[7]基板の一方の面に多層構造を含む反射防止層が設けられ、基板の他方の面にモスアイ構造を含む反射防止層が設けられた、[1]~[6]のいずれかに記載の赤外線センサカバー。
[8]赤外線が、近赤外線である、[1]~[7]のいずれかに記載の赤外線センサカバー。
[9]波長850nmにおける透過率が、93%以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の赤外線センサカバー。
[10]波長950nmにおける透過率が、93%以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の赤外線センサカバー。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の赤外線センサカバー及び赤外線センサ本体を含む、赤外線センサモジュール。
[12][1]~[10]のいずれかに記載の赤外線センサカバー及び赤外線センサ本体を含む、カメラ。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れる。
また、本発明の赤外線センサモジュールは、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れるため、赤外線センサモジュールの性能に優れる。
更に、本発明のカメラは、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れるため、カメラの性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の赤外線センサカバーの一実施形態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(赤外線センサカバー)
本発明の赤外線センサカバーは、基板と、基板の少なくとも一方の面に設けられた反射防止層と、を有する。
図1に、本発明の赤外線センサカバーの一実施形態を示す。
図1に示す赤外線センサカバー10は、基板20の一方の面に多層構造を含む反射防止層30、基板20の他方の面にモスアイ構造を含む反射防止層40を有するものである。多層構造を含む反射防止層30は、高屈折率層31、低屈折率層32を有する。モスアイ構造を含む反射防止層40は、基材41、モスアイ構造層42を有する。
【0011】
(基板)
基板の材料は、赤外線を透過する材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂;ガラス等が挙げられる。これらの基板の材料の中でも、赤外線の透過率に優れることから、ガラス、樹脂が好ましく、ガラスがより好ましい。
【0012】
基板の表面には、密着性、耐擦傷性等の特性を改良する目的として、コーティング処理、コロナ処理等が施されていてもよい。
基板の形状は、赤外線センサの用途に応じて、適宜選択することができる。
【0013】
(反射防止層)
反射防止層としては、例えば、反射波の干渉により反射防止性能が付与される多層構造を含む反射防止層、微小凹凸構造により反射防止性能が付与されるモスアイ構造を含む反射防止層等が挙げられる。これらの反射防止層の中でも、赤外線の透過率に優れることから、多層構造を含む反射防止層、モスアイ構造を含む反射防止層が好ましく、より赤外線の透過率に優れることから、モスアイ構造を含む反射防止層がより好ましい。
【0014】
本発明の赤外線センサカバーは、基板の少なくとも一方の面に反射防止層が設けられるが、赤外線の透過率に優れることから、基板の両面に反射防止層が設けられることが好ましく、基板の一方の面に多層構造を含む反射防止層が設けられ、基板の他方の面にモスアイ構造を含む反射防止層が設けられることがより好ましい。
【0015】
(多層構造を含む反射防止層)
多層構造を含む反射防止層は、反射波の干渉により反射防止性能が付与される。多層構造を含む反射防止層は、反射波の干渉により反射防止性能が付与されるように多層構造の屈折率が調整されていれば特に限定されず、公知の多層構造を含む反射防止層を用いることができる。
【0016】
多層構造は、反射波の干渉により反射防止性能が付与されるために、屈折率の異なる複数の層を含むことが好ましい。
【0017】
多層構造を含む反射防止層と基板との間には、密着性を高めるための粘着層、耐擦傷性を高めるためのハードコート層、多層構造を積層するための基材等を設けてもよい。
【0018】
(モスアイ構造を含む反射防止層)
モスアイ構造を含む反射防止層は、微小凹凸構造により反射防止性能が付与される。
微細凹凸構造は、複数の凸部及び複数の凸部間に形成される凹部とからなる。
【0019】
微細凹凸構造の隣接する凸部間の平均間隔は、20nm~400nmが好ましく、80nm~300nmがより好ましい。微細凹凸構造の隣接する凸部間の平均間隔が20nm以上であると、陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して凸部を形成する場合に凸部を形成しやすい。また、微細凹凸構造の隣接する凸部間の平均間隔が400nm以下であると、陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して凸部を形成する場合に、細孔間隔を大きくするための電圧を抑制することができ、陽極酸化ポーラスアルミナを工業的に製造しやすい。
本明細書において、隣接する凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察を用いて、隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0020】
凸部の平均高さは、60nm~400nmが好ましく、90nm~350nmがより好ましい。凸部の平均高さが60nm以上であると、最低反射率や特定波長の反射率の上昇を抑制することができ、反射防止性能に優れる。また、凸部の平均高さが400nm以下であると、凸部を形成しやすく、凸部の耐擦傷性に優れる。
本明細書において、凸部の平均高さは、電子顕微鏡観察を用いて、凸部の最頂部と隣接する凹部の最底部との間の垂直距離を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0021】
凸部のアスペクト比(凸部の平均高さ/隣接する凸部間の平均間隔)は、0.8~5.0が好ましく、1.2~4.0がより好ましく、1.5~3.0が更に好ましい。凸部のアスペクト比が0.8以上であると、反射防止性能に優れる。また、凸部のアスペクト比が5.0以下であると、凸部を形成しやすく、凸部の耐擦傷性に優れる。
【0022】
凸部の形状としては、例えば、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。これらの凸部の形状は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの凸部の形状の中でも、空気から微細凹凸構造を形成する材料表面まで連続的に屈折率を増大させて、低反射率と低波長依存性を両立させた反射防止性能を発現させることができることから、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状が好ましく、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状がより好ましい。
凸部は、微細な複数の凸部が合一して1つの凸部となったものであってもよい。
【0023】
微細凹凸構造の製造方法としては、例えば、下記方法1、下記方法2、下記方法3等が挙げられる。
方法1:微細凹凸構造の反転構造を表面に有するモールドを用いて射出成形又はプレス成形を行い、基材の表面に直接微細凹凸構造を形成する方法
方法2:微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持した状態にて、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて硬化樹脂層を形成した後、硬化樹脂層とモールドとを分離する方法
方法3:微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持し、活性エネルギー線硬化性組成物にモールドの微細凹凸構造を転写してからモールドを分離した後、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて硬化樹脂層を形成する方法
これらの微細凹凸構造の製造方法の中でも、微細凹凸構造の転写性に優れ、表面組成の自由度に優れることから、方法2、方法3が好ましく、方法2がより好ましい。
【0024】
モールドとしては、例えば、リソグラフィ法によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド、レーザー加工によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールド、微細凹凸構造を有するマザーモールドから電鋳法等で複製されたレプリカモールド等が挙げられる。これらのモールドの中でも、反射防止性能に優れ、低コストで大面積の微細凹凸構造を形成しやすいことから、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドが好ましい。
【0025】
リソグラフィ法としては、例えば、電子ビームリソグラフィ法、レーザー干渉リソグラフィ法等が挙げられる。
リソグラフィ法によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールドの製造方法としては、例えば、基材の表面にフォトレジスト膜を塗布し、紫外線レーザー、電子線、X線等で露光し、現像することによって、レジストパターンからなる微細凹凸構造を表面に有するモールドを得る方法;前記レジストパターンを介して基材をドライエッチング等によって選択的にエッチングし、レジストパターンを除去して、微細凹凸構造が基材の表面に直接形成されたモールドを得る方法等が挙げられる。
【0026】
複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化する方法等が挙げられる。
【0027】
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化する方法が挙げられる。
アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化する方法によれば、高純度アルミニウムを定電圧で長時間陽極酸化した後、酸化皮膜の全部又は一部を一旦除去し、再び陽極酸化することで、非常に高規則性の細孔が自己組織化的に形成された陽極酸化ポーラスアルミナを形成できるため、好ましい。また、2回目に陽極酸化する工程で陽極酸化処理と孔径拡大処理とを組み合わせることで、断面が矩形でなく三角形や釣鐘型である細孔も形成可能となる。更に、陽極酸化処理及び孔径拡大処理の時間、回数、条件等を適宜調節することにより、細孔最奥部の角度を鋭くすることも可能となる。
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法の具体例は、例えば、特開2015-129706号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0028】
モールドの形状としては、例えば、平板状、ベルト状、ロール状等が挙げられる。これらのモールドの形状の中でも、連続的に微細凹凸構造を転写することができ、基材の生産性に優れることから、ベルト状、ロール状が好ましい。
【0029】
微細凹凸構造は、より簡便に微細凹凸構造を形成することができることから、硬化樹脂層からなることが好ましい。
硬化樹脂層は、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる層である。
【0030】
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する組成物である。
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等が挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性に優れることから、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0031】
活性エネルギー線硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤、及び、必要に応じて、他の添加剤を含むことが好ましい。
【0032】
重合性化合物としては、例えば、分子中にラジカル重合性結合及びカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。これらの重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を有する単官能モノマー、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を有する多官能モノマー等が挙げられる。これらのラジカル重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル、メタクリル又はその両方をいう。
【0034】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマー等が挙げられる。これらのカチオン重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
分子中にラジカル重合性結合及びカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むオリゴマー又は反応性ポリマーとしては、例えば、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル化合物;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;ポリオール(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;カチオン重合型エポキシ化合物;側鎖に前記ラジカル重合性結合を有するモノマーの単独又は共重合ポリマー等が挙げられる。これらの分子中にラジカル重合性結合及びカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むオリゴマー又は反応性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
重合開始剤としては、例えば、公知の光重合開始剤、公知の電子線重合開始剤、公知の熱重合開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
他の添加剤としては、例えば、非反応性のポリマー、酸化防止剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤等が挙げられる。これらの他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
微細凹凸構造の表面に撥水性を付与する(具体的には、微細凹凸構造と水との接触角を90°以上とする)場合、疎水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物として、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましい。
【0039】
微細凹凸構造の表面に親水性を付与する(具体的には、微細凹凸構造と水との接触角が25°以下とする)場合、親水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物として、四官能以上の多官能(メタ)アクリレートと二官能以上の親水性(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
【0040】
活性エネルギー線硬化性組成物の具体的な組成等は、例えば、特開2013-175733号公報、特開2015-129947号公報に記載された組成等が挙げられる。
【0041】
モールドと基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持する方法としては、例えば、モールドと基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を配置した状態でモールドと基材とを押圧することによって、モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性組成物を注入する方法等が挙げられる。
【0042】
基材の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体等のスチレン樹脂;セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリウレタン樹脂;ガラス等が挙げられる。これらの基材の材料の中でも、外線の透過率に優れることから、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂がより好ましい。
【0043】
基材の形態としては、例えば、フィルム、シート等の公知の形態等が挙げられる。これらの基材の形態の中でも、生産性、取り扱い性に優れることから、フィルム、シートが好ましい。
【0044】
基材の製造方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法等の公知の製造方法等が挙げられる。これらの基材の製造方法の中でも、生産性に優れることから、押出成形法、キャスト成形法が好ましい。
【0045】
基材の表面には、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の特性を改良する目的として、コーティング処理、コロナ処理等が施されていてもよい。
【0046】
(赤外線センサカバー用途)
本発明の赤外線センサカバーが対象とする赤外線は、より透過率に優れることから、近赤外線が好ましく、700nm~1500nmがより好ましく、800~1000nmが更に好ましい。
【0047】
本発明の赤外線センサカバーの波長850nmにおける透過率は、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れることから、93%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上が更に好ましい。
本発明の赤外線センサカバーの波長950nmにおける透過率は、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れることから、93%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上が更に好ましい。
【0048】
本発明の赤外線センサカバーと赤外線センサ本体とを含むことで、赤外線センサモジュール、カメラに好適に用いることができ、赤外線センサカバーの近赤外線の透過率に特に優れることから、近赤外線カメラに特に好適に用いることができる。赤外線センサモジュール、カメラは、自動運転やモーションセンサー等に利用される距離・画像センサ、生体認証システム、生体モニタリングシステム、セキュリティシステム、等に用いることができる。
【実施例0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(透過率測定)
実施例・比較例で得られた赤外線センサカバーの透過率を、分光光度計(機種名「U-4000」、(株)日立製作所製)を用い、波長850nmおよび950nmの透過率を測定した。
【0051】
[製造例1]モールドの製造
純度99.99%のアルミニウムインゴットを、外径200mm、内径155mm、長さ350mmに切断した圧延痕のない円筒状のアルミニウム基材に、羽布研磨処理を施した後、過塩素酸/エタノール混合溶液中(体積比=1/4)で電解研磨し、鏡面化した。
得られたアルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で10分間陽極酸化を行った。その後、アルミニウム基材を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に浸漬して、酸化皮膜を除去した。
得られたアルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
得られた酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、30℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った(孔径拡大処理工程)。その後、アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った(酸化皮膜成長工程)。この孔径拡大処理工程と酸化皮膜成長工程とを合計4回繰り返し、最後に孔径拡大処理工程を行って、設計上では平均間隔100nm、深さ200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールドを得た。
【0052】
[製造例2]活性エネルギー線硬化性組成物の調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート25質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート25質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート25質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのエチレンオキサイド変性化合物25質量部を混合し、更に、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)1質量部、第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア819」、BASF社製)0.5質量部及び離型剤(商品名「TDP-2」、日光ケミカルズ(株)製)0.1質量部を加えて混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0053】
[製造例3]モスアイ構造を含む反射防止層の製造
製造例1で得られたロール状のモールドを回転させ、モールドの外周面に沿ってモールドの回転方向にポリエチレンテレフタレート基材(商品名「コスモシャインA4300」、東洋紡(株)製、厚さ75μm)を走行させながら、モールドの外周面と走行している基材との間に、製造例2で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を供給し、紫外線を照射し活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。得られた硬化物をモールドから剥離し、モスアイ構造を含む反射防止層を製造した。
[製造例4]モスアイ構造を含む反射防止層の製造
製造例1で得られたロール状のモールドを回転させ、モールドの外周面に沿ってモールドの回転方向にトリアセチルセルロース基材(商品名「TD80ULM」、富士フイルム(株)製、厚さ80μm)を走行させながら、モールドの外周面と走行している基材との間に、製造例2で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を供給し、紫外線を照射し活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。得られた硬化物をモールドから剥離し、モスアイ構造を含む反射防止層を製造した。
【0054】
[実施例1]
多層構造を含む反射防止層を有する反射防止フィルム(商品名「FHC-ARAF」、東山フィルム(株)製)を、ガラス基板(商品名「S9112」、松浪硝子工業(株)製)の一方の面に粘着層を介して貼りつけ、赤外線センサカバーを得た。
得られた評価結果を、表1に示す。
【0055】
[実施例2]
製造例3で得られたモスアイ構造を含む反射防止層を、ガラス基板(商品名「S9112」、松浪硝子工業(株)製)の一方の面に粘着層を介して貼りつけ、赤外線センサカバーを得た。
得られた評価結果を、表1に示す。
【0056】
[実施例3]
多層構造を含む反射防止層を有する反射防止フィルム(商品名「FHC-ARAF」、東山フィルム(株)製)を、ガラス基板(商品名「S9112」、松浪硝子工業(株)製)の一方の面に粘着層を介して貼りつけ、製造例3で得られたモスアイ構造を含む反射防止層を、前記ガラス基板の他方の面に粘着層を介して貼りつけ、赤外線センサカバーを得た。
得られた評価結果を、表1に示す。
[実施例4]
製造例4で得られたモスアイ構造を含む反射防止層を、ガラス基板(商品名「S9112」、松浪硝子工業(株)製)の一方の面に粘着層を介して貼りつけ、赤外線センサカバーを得た。
得られた評価結果を、表1に示す。
【0057】
[比較例1]
いずれの表面にも反射防止層を設けず、ガラス基板(商品名「S9112」、松浪硝子工業(株)製)そのものを、赤外線センサカバーとした。
得られた評価結果を、表1に示す。
【0058】
【0059】
表1から分かるように、実施例で得られた赤外線センサカバーは、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に優れた。
一方、比較例で得られた赤外線センサカバーは、赤外線の透過率、特に、近赤外線の透過率に劣った。