(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174115
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ペンダント親水性基を有する親水性フィルタ膜、ならびに関連する調製および使用の方法
(51)【国際特許分類】
C08F 283/04 20060101AFI20221115BHJP
B01D 71/78 20060101ALI20221115BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20221115BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20221115BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C08F283/04
B01D71/78
B01D71/44
B01D71/40
B01D71/28
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134720
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2021530102の分割
【原出願日】2019-11-05
(31)【優先権主張番号】62/773,661
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フィリパンシック, ニコラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハムズィク, ジェームス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】比較的高レベルの光開始剤を親水性ポリマーの表面に確実に付着させて、親水性ポリマーにイオン性基をグラフトするための新しい技術を提供する。
【解決手段】溶媒及び光開始剤を含む光開始剤溶液に親水性ポリマーを接触させて、親水性ポリマーの表面に光開始剤を配置することと、光開始剤溶液に表面を接触させて表面に光開始剤を配置した後に、イオン性基を含む荷電モノマーを含むモノマー溶液に表面を接触させることと、表面を電磁放射線に曝露して、イオン性基を親水性ポリマーにグラフトさせることと、を含む、イオン性基を親水性ポリマーにグラフトする方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ポリマーフィルタ膜であって、
親水性ポリマーであって、
ポリマー骨格と、
ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるペンダント親水性基と、
ペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基と、
を含む親水性ポリマー
を含む、多孔質ポリマーフィルタ膜。
【請求項2】
ペンデントイオン性基が、フィルタ膜の非ふるい分け濾過性能を、ペンダントイオン性基を含まないこと以外は同じであるフィルタ膜より向上させるのに有効である、請求項1に記載のフィルタ膜。
【請求項3】
ポリマー骨格がポリアミドである、請求項1または2に記載のフィルタ膜。
【請求項4】
イオン性基が、カチオン性窒素含有基、アニオン性硫黄含有基、またはアニオン性リン含有基である、請求項1から3のいずれかに記載のフィルタ膜。
【請求項5】
イオン性基がカチオン性窒素含有環状芳香族基である、請求項1から4のいずれかに記載のフィルタ膜。
【請求項6】
イオン性基がカチオン性イミダゾールまたはカチオン性アミンである、請求項1から4のいずれかに記載のフィルタ膜。
【請求項7】
イオン性基がアニオン性ホスホン酸またはアニオン性スルホン酸である、請求項1から4のいずれかに記載のフィルタ膜。
【請求項8】
残留光開始剤をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の膜。
【請求項9】
多孔質ポリマーフィルタ膜が少なくとも60パーセントの多孔度を有する、請求項1から8のいずれかに記載の膜。
【請求項10】
多孔質ポリマーフィルタ膜が0.001~1.0ミクロンの範囲の孔径を有する、請求項1から9のいずれかに記載の膜。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の膜を含むフィルタカートリッジ。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の膜を含むフィルタ。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載のフィルタ膜を使用する方法であって、溶媒含有液体を膜に通すことを含む、方法。
【請求項14】
イオン性基を親水性ポリマーにグラフトする方法であって、
溶媒および光開始剤を含む光開始剤溶液に親水性ポリマーを接触させて、親水性ポリマーの表面に光開始剤を配置することと、
光開始剤溶液に表面を接触させて表面に光開始剤を配置した後に、荷電モノマーを含むモノマー溶液に表面を接触させることと、
表面を電磁放射線に曝露して、イオン性基を親水性ポリマーにグラフトさせることと、
を含み、
荷電モノマーはイオン性基を含む、方法。
【請求項15】
親水性ポリマーが多孔質ポリマーフィルタ膜である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が有機溶媒および水を含む、請求項14または15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項14から16のいずれかに記載の方法であって、
光開始剤溶液に表面を接触させた後に、
溶媒の蒸発によって表面を少なくとも部分的に乾燥させることと、
光開始剤溶液を少なくとも部分的に乾燥させた後に、モノマー溶液に膜を接触させることと、
を含む方法。
【請求項18】
光開始剤がベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体である、請求項14から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
光開始剤溶液が0.1~2重量パーセントのベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を含み、光開始剤溶液が水ならびにイソプロパノールおよびメタノールのうちの1つ以上を含む、請求項14から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
荷電モノマーが、ビニルイミダゾール、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリル酸、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、またはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを含む、請求項14から19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の記載は、ペンダントイオン性基を有する親水性ポリマーを含む多孔質ポリマーフィルタ膜、前記フィルタ膜およびそのようなフィルタ膜を含むフィルタを作製する方法、ならびに薬液などの流体を濾過するためにそのフィルタ膜を使用して流体から不要な物質を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ製品は、有用な流体の流れから不要な物質を除去するために使用され、現代産業において不可欠な器具である。フィルタを使用して処理される有用な流体としては、水、液体の工業用溶媒および処理流体、製造または処理に(例えば半導体製造において)使用される工業用ガス、ならびに医療用または医薬用の液体が挙げられる。流体から除去される不要な物質としては、粒子、微生物、および溶存化学種などの不純物および夾雑物が挙げられる。フィルタ用途の具体例としては、半導体およびマイクロ電子デバイスの製造用の液体物質に使用することが挙げられる。
【0003】
濾過機能を発揮するために、フィルタには、フィルタ膜を通る流体から不要な物質を除去する役割を果たすフィルタ膜が含まれる。フィルタ膜は、必要に応じて、平形シートの形状であってもよく、そのシートは巻き取られてもよく(例えば螺旋状に)、平形、プリーツ状、または円盤状であってもよい。あるいは、フィルタ膜は中空糸の形状であってもよい。フィルタ膜は、濾過される流体がフィルタの入口を通って入り、フィルタの出口を通る前にフィルタ膜を必ず通るように、ハウジング内で収容あるいは支持することができる。
【0004】
フィルタ膜は、フィルタの使用、すなわちフィルタによって行われる濾過の種類に基づき選択され得る平均孔径を有する多孔質構造で構築することができる。通常、孔径は、ミクロンまたはサブミクロンの範囲、例えば約0.001ミクロン~約10ミクロンである。約0.001~約0.05ミクロンの平均孔径を有する膜は限外濾過膜として分類されることがある。約0.05ミクロンと約10ミクロンとの間の孔径を有する膜は微多孔質膜と呼ばれることがある。
【0005】
ミクロンまたはサブミクロンの範囲の孔径を有するフィルタ膜は、ふるい分け機構もしくは非ふるい分け機構のいずれか、またはその両方によって流体流れから不要な物質を除去するために有効であり得る。ふるい分け機構は、フィルタ膜の表面で粒子を機械的に保持することによって液体の流れから粒子を除去する濾過の形態であり、これは粒子の移動を機械的に妨害し、粒子をフィルタ内に保持し、フィルタを通る粒子の流れを機械的に妨げるように作用する。通常、その粒子は、フィルタの細孔よりも大きくてよい。「非ふるい分け」濾過機構は、フィルタ膜が、フィルタ膜を通る流体の流れに含有される懸濁粒子または溶存物質を、機械的方法に限らない方法で保持する濾過の形態であり、例えば、微粒子または溶存不純物がフィルタ表面に静電的に引き付けられ保持され、流体流れから除去される静電機構を含む。粒子は溶存していてもよく、または濾材の細孔よりも小さい粒径を有する固体であってもよい。
【0006】
溶存するアニオンまたはカチオンなどのイオン性物質を溶液から除去することは、非常に低い濃度のイオン性夾雑物および粒子がマイクロプロセッサおよびメモリデバイスの品質および性能に悪影響を及ぼし得るマイクロエレクトロニクス産業などの多くの産業において重要である。溶存イオン性物質は、溶存イオン性物質を引き付けるポリマー材料で作製された微多孔質フィルタ膜により、非ふるい分け濾過機構を経由させて除去することができる。そのような微多孔質膜の例としては、超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene:「UPE」)、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロンなどのような化学的に不活性な低表面エネルギーポリマーから作製されるものがある。ナイロンフィルタ膜は、具体的には、ナイロンを高い透過性を示すフィルタ膜にする形成能、およびナイロンの良好な非ふるい分け濾過挙動により、半導体加工産業における様々な異なる濾過用途に使用されている。
【発明の概要】
【0007】
ナイロンなどの親水性ポリマーで作製された濾過膜は、半導体産業およびマイクロエレクトロニクス産業における様々な濾過用途に使用されている。ナイロンを、高い浸透性、親水性、良好な非ふるい分け濾過性能を示す濾過膜に作製形成することができる。ナイロンポリマーは、ナイロンの種類に依存しかつナイロンポリマーの非ふるい分け濾過特性に寄与する固有の表面電荷を有する。全体的な流動特性および膜への濾過特性の損失を最小限に抑えて付加的な荷電機能性を膜に付加できれば、ナイロンなどの親水性ポリマーの非ふるい分け濾過特性を向上させることができる。
【0008】
ポリマーの表面を修飾する1つの一般的な形態は、官能性(イオン性)基をポリマー表面にグラフトすることである。しかし、イオン性荷電基をポリマーにグラフトするための技術は、必ずしも全ての種類のポリマーにグラフトするために有効なわけではない。多くのグラフト技術は、疎水性を有する光開始剤を使用するものである。疎水性表面を有するポリマー、例えばポリエチレンに官能基をグラフトするためには、疎水性光開始剤の使用がうまく機能し得る。他のポリマー、特に親水性表面を呈するナイロンなどのポリマーについては、これらの技術は有用であるとしてもそれほど有効ではない。
【0009】
本明細書では、親水性ポリマーにイオン性基をグラフトするための新しい技術を開示する。この技術は、疎水性光開始剤を溶液中で親水性ポリマーの表面に付与し、続いて任意選択で乾燥工程を行い、次いで前記表面をモノマー溶液で再びぬらすものである。これらの技術により、比較的高レベルの光開始剤を親水性ポリマーの表面に確実に付着させることができる。前記表面に提示される光開始剤のレベルは、親水性ポリマー(フィルタ膜の一部として)をフィルタ膜として有効にする点で有用なまたは有利に高い量で、荷電モノマーを親水性表面にグラフトするために十分なものである。イオン性基をフィルタ膜の親水性ポリマーに化学的に結合する工程は、フィルタ膜を通すことができる流体の量(流速または流束)に実質的ないかなる影響も及ぼさない。つまり、フィルタ膜を通すことができる流体の量(速さまたは流量)は、イオン性基をフィルタ膜に化学的に付加することによって実質的に悪影響を受けない。同時に、フィルタ膜の濾過性能、特に、色素結合能、粒子保持率、および金属イオン除去率によって評価される非ふるい分け濾過性能を、かなりの程度向上させることができる。
【0010】
一態様では、多孔質ポリマーフィルタ膜は、ポリマー骨格と、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基、またはそれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基と、前記ペンデント親水性基とは異なるペンダントイオン性基とを含む親水性ポリマーを含む。
【0011】
別の態様では、イオン性基を親水性ポリマーにグラフトする方法を開示する。この方法は、溶媒および光開始剤を含む光開始剤溶液に親水性ポリマーを接触させて、親水性ポリマーの表面に光開始剤を配置することと、前記表面を光開始剤溶液に接触させてその表面に光開始剤を配置した後に、イオン性基を含む荷電モノマーを含むモノマー溶液に前記表面を接触させることと、前記表面を電磁放射線に曝露して、イオン性基が親水性ポリマーにグラフトされることとを含む。
【0012】
多孔質ポリマーフィルタ膜を調製する方法には、グラフトされたイオン性基を有する親水性ポリマーが含まれる。この方法は、溶媒および光開始剤を含む光開始剤溶液に前記膜を接触させて、その膜の表面に光開始剤を配置することと、前記表面を光開始剤溶液に接触させてその表面に光開始剤を配置した後に、イオン性基を含む荷電モノマーを含むモノマー溶液に前記表面を接触させることと、その表面を電磁放射線に曝露して、イオン性基が親水性ポリマーにグラフトされることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(概略的であり、必ずしも縮尺ではない)は、本明細書に記載のフィルタ製品の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の記載は、親水性ポリマーにイオン性基を化学的に結合する、すなわち「グラフトする」ための新規かつ発明的な方法と、ペンデントイオン性基を含む親水性ポリマー材料と、そのような親水性ポリマー材料を含むフィルタ膜、フィルタ部材、およびフィルタと、流体を濾過するためのフィルタ膜またはフィルタ部材を使用して流体から不要な物質を除去する方法とに関する。
【0015】
出願人は、光開始剤の使用を含むある化学的グラフト技術によって荷電した(「イオン性」)化学基を親水性ポリマーに化学的に結合するには、ある特有の技術的課題を伴うと判断した。これらの技術の多くは、荷電した反応性化合物(例えば「荷電モノマー」)および光開始剤を含有する溶液にポリマー表面を接触させ、次いで、そのポリマーおよび溶液を電磁放射線に曝露するものである。荷電モノマーは、反応性部分(例えば不飽和部分)と、ポリマーに化学的に結合する荷電化学基とを含む。荷電モノマー、ポリマー、および光開始剤を含有する溶液が放射線に曝露されると、光開始剤は不飽和部分と親水性ポリマーとの間の化学反応を開始する。その反応により、不飽和部分がポリマーに化学的に結合される、すなわちポリマーに「グラフトされる」。
【0016】
イオン性基は任意の基とすることができる。ペンダントイオン性基はペンダント親水性基とは異なる。親水性ポリマーがフィルタ膜に含まれる特定の実施形態では、イオン性基は、フィルタ膜の濾過性能、特にフィルタ膜の非ふるい分け濾過性能を向上させるために有効であり得る。記載の親水性ポリマー、特にフィルタ膜に含まれる親水性ポリマーに含まれ得るイオン性基の例としては、カチオン性窒素含有イオン性基、アニオン性硫黄含有イオン性基、およびアニオン性リン含有イオン性基が挙げられ、その例には、これらの化学的対応物(例えば塩または酸)が含まれる。ある特定の例として、ペンダントイオン性基は、カチオン性窒素含有環状芳香族基、カチオン性イミダゾールもしくはカチオン性アミン、またはアニオン性ホスホン酸基もしくはアニオン性スルホン酸基であってもよい。
【0017】
これらの技術を用いて荷電モノマーを親水性ポリマーに結合する場合に、ある特定の技術的課題が存在する。通常の光開始剤(例えばベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体)は疎水性であり、親水性ポリマーの親水性表面に本質的に引き付けられない。結果として生じる課題は、有効量の疎水性光開始剤を親水性ポリマーの表面に配置することである。
【0018】
本明細書では、荷電モノマーを親水性ポリマーまたは親水性ポリマーから作製された物品(多孔質フィルタ膜を含むがこれに限定されない)に化学的に結合する、すなわちグラフトすることができる新しい技術を開示する。この技術は、一般に、親水性ポリマーの表面に光開始剤を配置することと、次いでその表面に荷電モノマーを配置することと、次いで親水性ポリマーの表面に存在する光開始剤および荷電モノマーを放射線に曝露することとを含む。放射線は、光開始剤に不飽和部分と親水性ポリマーとの間の反応を開始させ、それによって不飽和部分がポリマーに化学的に結合、すなわち「グラフト」され、その結果、得られた親水性ポリマーは、共有化学結合を介して親水性ポリマーに化学的に結合した荷電(イオン性)化学基を含む。
【0019】
当該方法のより具体的な例は、親水性ポリマーを含むように作製された多孔質フィルタ膜(例えば親水性多孔質フィルタ膜)にイオン性基をグラフトするものである。この方法は、荷電モノマーの荷電化学基を、フィルタ膜の親水性ポリマー表面に、(好ましくは)その膜の内孔表面を含み、化学的に結合することを含む。当該方法は、溶媒および光開始剤を含有する光開始剤溶液にフィルタ膜を接触させて、親水性ポリマーの内孔表面を含む表面に光開始剤を配置することと、任意選択で、例えば、すすぎ(水を用いる)工程、乾燥(溶媒蒸発)工程、またはすすぎ工程と乾燥工程の両方によって、前記表面から過剰量の光開始剤溶液を除去することと、前記表面を光開始剤溶液に接触させた後、かつ任意選択で前記表面から過剰な光開始剤溶液を除去した後、荷電モノマーを前記表面に配置することと、前記表面(光開始剤および荷電モノマーを有する)を電磁放射線に曝露して、荷電モノマーを親水性ポリマーと反応させ共有化学結合を介して親水性ポリマーに化学的に結合させる、すなわち親水性ポリマーにグラフトさせることとを含むことができる。
【0020】
従来のあるグラフト方法に対して、本明細書は、疎水性光開始剤を使用して、荷電(イオン性)化学基を親水性であるポリマーに化学的に結合するものである。本明細書で使用される場合、親水性ポリマーを記載するための「親水性」という用語は、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、アミノ基、(-NH2)、またはポリマー骨格に結合した同様の官能基などの、ポリマー骨格に結合した十分な量の親水性ペンダント官能基の存在により水分子を引き付けるポリマーを指す。いくつかの実施形態では、ペンデント親水性基は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。親水性ポリマーが多孔質フィルタ膜に形成されると、これらの親水性基は多孔質フィルタ膜への水の吸収を助ける。
【0021】
例示の親水性ポリマーはナイロンポリマーであり、ポリアミドポリマーが含まれる。これは、通常、ポリマー骨格に繰り返しアミド基を含む共重合体および三元共重合体を含むと理解される。一般に、ナイロン樹脂およびポリアミド樹脂には、ジアミンとジカルボン酸との共重合体、またはラクタムとアミノ酸との単独重合体が含まれる。本明細書に記載のフィルタ膜の製造に使用するために好適なナイロンは、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体(ナイロン66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との共重合体(ナイロン610)、ポリカプロラクタムの単独重合体(ナイロン6)、およびテトラメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体(ナイロン46)である。ナイロンポリマーは多様なグレードが入手可能であり、それらは、約15,000~約42,000(数平均分子量)の範囲内の分子量および他の特性においてかなり異なっている。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリマーまたはその物品(例えば多孔質フィルタ膜)は、全体が親水性ポリマーでまたは全体がナイロンポリマーで作製されてもよく、例えばナイロンポリマーなどの親水性ポリマーからなってもよく、または親水性ポリマーから本質的になってもよく、非疎水性または非ナイロンである別のポリマーとブレンドされない。ポリマーは、フッ素化されていなくてもよく、フルオロポリマー、パーフルオロポリマー、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)などの他の種類のポリマーを必要とせず、特定的に排除してもよい。本明細書で使用される場合、特定された成分または材料「から本質的になる」材料は、記述された成分または材料およびわずかな量以下の他の材料を含有する材料、例えば、少なくとも98、99、99.5、99.9、または99.99重量パーセントの特定された成分または材料、および2、1、0.5、0.1、または0.01重量パーセント以下の任意の他の成分または材料を含有する材料である。あるいは、有用または所望であれば、ポリマー(またはフィルタ膜もしくは他の物品)は、親水性ポリマーとブレンドされたある量の非親水性ポリマー、例えば少量(50、40、30、20、10、または5重量パーセント未満)の非親水性モノマーを含んでもよい。
【0023】
記載の方法によれば、光開始剤は、親水性ポリマーの表面、例えば多孔質フィルタ膜または親水性ポリマーを含有する他の物品の表面に配置される。好適な技術により、光開始剤を溶媒に溶解して光開始剤溶液を形成し、次いでこれを親水性ポリマーに付与して光開始剤を前記表面に配置することができる。光開始剤を、水、有機溶媒、または有機溶媒と水との組み合わせであってもよい液体溶媒に溶解して光開始剤溶液を形成してもよい。次いで、噴霧、沈潜、浸漬、吸着などの任意の有用な方法で光開始剤溶液をポリマーに接触させる。
【0024】
光開始剤溶液の溶媒は、光開始剤を溶解し、光開始剤を親水性ポリマーの表面、例えば親水性多孔質ポリマー膜の表面に送達するために有効な任意の溶媒とすることができる。親水性であるポリマーおよび疎水性である光開始剤のためには、溶媒は、望ましくは多量の疎水性光開始剤を、親水性ポリマーで作製されたフィルタ膜の内部孔との接触を含めて親水性ポリマーの表面と首尾よく接触させるために、ポリマーおよび光開始剤の2つの成分のそれぞれと適合性でなければならない。これを達成するために、記載の例示の光開始剤溶液の溶媒は、少なくともいくらかの量の水を含有してもよいが、同時に有用な量の光開始剤を溶解することが可能な溶媒である。光開始剤溶媒の一部として水を含むことは、溶媒をより極性にするために有効であり得、溶媒から親水性ポリマーへの疎水性光開始剤の送達(例えば沈殿)をより効率的にすることができる。さらに、ナイロンなどの親水性ポリマーをより濃縮された例えば純粋な有機溶媒に曝露すると、ハンドリング中にポリマー膜の変形を引き起こしやすい可能性があるので、水がプロセス中の膜のウェブハンドリング性を向上させる可能性がある。
【0025】
「溶媒」という用語は、有用な量の溶解した光開始剤を含有するために有効な任意の液体を指し、その液体が、親水性ポリマーまたは親水性ポリマーを含むように作製された物品、例えば内孔表面を含むポリマーフィルタ膜の表面に溶解した光開始剤を運ぶためのものである。溶媒は、有機溶媒、水、またはその両方を含むことができる。有機溶媒の例としては、アルコール類、特に低級アルコール類(C1~C5アルコール類)が挙げられ、イソプロパノールおよびメタノールが有用な例である。
【0026】
光開始剤溶液のための例示的な溶媒としては、有機溶媒と水との混合物、例えばメタノールと水とのブレンドまたはイソプロパノールと水とのブレンドなどの、水と低級(C1~C4)アルコールとのブレンドが挙げられ、これらからなり、またはこれらから本質的になる。イソプロパノールまたはメタノールなどの低級アルコールと水との組み合わせは、疎水性開始剤、例えばベンゾフェノン(またはその誘導体)を溶解するために特に有効であり得ながら、同時に、親水性ポリマーで作製された多孔質フィルタ膜の表面(内部の細孔表面を含む)などの親水性ポリマーの表面をぬらすのに非常に有効である。疎水性光開始剤(例えばベンゾフェノンまたはその誘導体)を溶解し親水性基材をぬらすための上記の溶媒混合物の有効性によって、溶媒混合物を使用して、多孔質親水性フィルタ膜の内部孔表面を含む親水性ポリマーの表面に有用な量の疎水性光開始剤を効果的に送達することが可能である。溶媒中の有機溶媒(例えば、メタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、またはそれらの混合物)と水との相対量は、任意の有効量であってもよく、例えば、水:有機溶媒の比(重量:重量)は、10:90~90:10、20:80~80:20、例えば、30:70~70:30、または40:60~60:40の範囲であってもよい。
【0027】
光開始剤は、放射線(例えば紫外線)に効果的に応答して、本明細書に記載の荷電モノマーの反応性基と親水性ポリマーとの間の反応を開始する任意の光開始剤とすることができる。例としては、「II型」光開始剤として化学分野で既知の光開始剤が挙げられる。II型光開始剤の既知の有用な例としては、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体が挙げられる。
【0028】
光開始剤溶液中の光開始剤の量は、光開始剤溶液が所望の、有用な、または最大量の光開始剤を親水性ポリマー表面に送達させるのに十分に高い任意の量(濃度)とすることができる。その付与量およびその付与方法は、望ましくは多量の荷電モノマーをポリマー表面と反応させるのに有効な量の光開始剤をポリマー表面に配置するために十分であるべきである。光開始剤溶液中の光開始剤の有用な量は、例えば、最大5重量パーセント、例えば0.1もしくは0.5重量パーセント~4.5重量パーセント、または1もしくは2重量パーセント~3もしくは4重量パーセントの範囲であってもよい。
【0029】
光開始剤溶液は、光開始剤溶液を親水性ポリマーに噴霧し、または親水性ポリマーを光開始剤溶液に沈潜または浸漬するなどの任意の有用な技術によって、親水性ポリマーの表面に付与することができる。望ましくは、親水性ポリマーを含む物品の表面全体を、例えば多孔質フィルタ膜の全ての内面を含んで光開始剤溶液に接触させ、ぬらすことができる。必要であれば、その付与工程は、親水性ポリマーまたは親水性ポリマーを含む物品を、例えば多孔質濾材を圧延または圧搾して多孔質濾材の全ての表面をぬらすことによって操作することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、光開始剤溶液は、0.1~2重量パーセントのベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体、水、ならびにイソプロパノールおよびメタノールのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、光開始剤溶液は、イソプロパノールおよび水の総量100重量部に基づいて、20~80重量部のイソプロパノールおよび80~20重量部パーセントのイソプロパノールを含む。
【0030】
その後、所望であれば、親水性ポリマー表面の表面上にある光開始剤溶液の一部を除去してもよいが、同時に表面上に所望の量の光開始剤溶液を効果的に残すようにする。光開始剤溶液は、必要以上の量で存在してもよく、過剰量は、機械的に除去する1つ以上の任意の技術によって除去されてもよい。多孔質フィルタ膜のための、過剰な光開始剤溶液を除去する技術の例としては、ローラなどの機械的な力もしくは圧力を用いてフィルタ膜を滴下乾燥、圧搾、絞り、折り畳み、もしくは圧延すること、スプレーもしくは水浴(例えば脱イオン水を用いる)ですすぐこと、または、空気流もしくは熱の1つ以上を用いることによって、例えばファンもしくは「エアナイフ」乾燥機、熱、もしくはこれらの組み合わせによって、親水性ポリマー表面に存在する光開始剤溶液から溶媒を蒸発させることが挙げられる。
【0031】
過剰な光開始剤溶液を除去する1つの任意選択の工程により、例えば多孔質親水性フィルタ膜である親水性ポリマーであって、その表面に接触している光開始剤溶液を含む親水性ポリマーを、水、例えば脱イオン水を使用してすすいでもよい。すすぐ工程は、すすぎ(例えば脱イオン)水を親水性ポリマーに噴霧すること、または親水性ポリマー水(例えば脱イオン水)を沈潜または浸漬することなどの任意の有用な技術によって実施することができ、それによって過剰な光開始剤溶液(その有機溶媒を含む)の少なくとも一部が親水性ポリマー表面から除去される。すすぎ工程では、好ましくは親水性ポリマー表面に残存する光開始剤溶液から溶媒の量を低減した場合に、親水性ポリマーの表面に残存するべき光開始剤の有用な量を考慮すべきである。
【0032】
すすぎ工程もしくは機械的乾燥工程またはその両方の後に任意選択で行われてもよく、親水性モノマーの表面から光開始剤溶液の一部を除去する任意選択の別の工程では、光開始剤溶液が表面に接触している親水性ポリマー(例えば多孔質親水性フィルタ膜)を処理して、溶媒を蒸発によって乾燥させることにより光開始剤溶液の溶媒を除去し、親水性ポリマー表面に濃縮された量の光開始剤を残すことができる。親水性ポリマーの表面で光開始剤溶液の溶媒を蒸発させるためのこの種類の乾燥工程は、光開始剤溶液に熱を加えることによって、空気または別の気体流体の流れを光開始剤溶液上に通すことによって、または、周囲条件、例えば室温の空気中で、光開始剤溶液の溶媒の所望の分量を蒸発させるために有効な時間放置することにより、光開始剤溶液から溶媒を蒸発させることによって行うことができる。望ましくは、溶媒の少なくとも40、50、70、または90重量パーセントといったかなりの分量の溶媒を蒸発させ、光開始剤溶液から除去することができる。結果として、濃縮された量の光開始剤は、親水性ポリマーの表面に、好ましくは例えば多孔質濾過膜の内部の細孔を含む表面全体にわたって、かなり均一に分布して残る。
【0033】
任意選択で、所望により、乾燥工程の後、光開始剤が表面に存在する親水性ポリマーを、例えば、脱イオン水を親水性ポリマーに噴霧することによって、親水性ポリマーを脱イオン水に沈潜することによって、または、親水性ポリマーの表面から光開始剤を除去することなく光開始剤を再びぬらすために有効な任意の他の技術によって、水で、例えば脱イオン水で再びぬらしてもよい。
【0034】
記載の方法によれば、光開始剤を親水性ポリマーの表面に配置した(任意選択の乾燥工程またはぬらし工程を伴う)後の次の工程は、荷電モノマーを光開始剤と組み合わせてその表面に配置することとすることができる。荷電モノマーは、任意の有用な技術によって、光開始剤を予め配置した前記表面に配置することができ、有用な例としては、溶媒に溶解した荷電モノマーを含有するモノマー溶液に前記表面を接触させることが挙げられる。その技術の具体的な例としては、噴霧、沈潜、浸漬、吸着などが挙げられる。荷電モノマーを光開始剤と組み合わせて前記表面に首尾よく配置した後、その表面(光開始剤および荷電モノマーを有する)を放射線に曝露して、荷電モノマーを親水性ポリマーに(共有化学結合を介して)化学的に結合する化学反応を開始させる。このプロセスは多くの場合、化学的に「グラフトする」と呼ばれる。
【0035】
荷電モノマーは、不飽和部分(例えば、ビニル、アクリレート、メタクリレートなど)などの反応性部分と、アニオン性またはカチオン性であってもよいイオン性部分とを含む反応性化合物であってもよい。
【0036】
適切なカチオン性荷電モノマーの例としては、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミン(例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、および第四級アミン)、ならびに第四級アンモニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、グアニジニウム、スルホニウム、またはピリジニウムの官能性を有するビニル型が挙げられる。適切なアクリレートモノマーの例としては、2-(ジメチルアミノ)エチル塩酸塩アクリレートおよび[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。適切なメタクリレートモノマーの例としては、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩、N-(3-アミノプロピル)メタクリレート塩酸塩、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート塩酸塩、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、および[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。適切なアクリルアミドモノマーの例としては、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。適切なメタクリルアミドモノマーの例としては、2-アミノエチルメタクリルアミド塩酸塩、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド塩酸塩、およびN-(3-アミノプロピル)-メタクリルアミド塩酸塩が挙げられる。他の適切なモノマーとしては、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミン塩酸塩、ビニルイミダゾリウム塩酸塩、ビニルピリジニウム塩酸塩、およびビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0037】
適切なアニオン性モノマーとしては、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、またはリン酸の官能性を有するビニル型が挙げられる。適切なアクリレートモノマーの例としては、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、および2-(トリフルオロメチル)アクリル酸が挙げられる。適切なメタクリレートモノマーの例としては、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、および3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩が挙げられる。適切なアクリルアミドモノマーの例は、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸である。適切なメタクリルアミドモノマーの例は、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸である。他の適切なモノマーとしては、ビニルスルホン酸(またはビニルスルホン酸ナトリウム塩)、およびビニルホスホン酸(およびその塩)が挙げられる。
【0038】
他の適切なモノマーは、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド(N-(hydroxymethyl)acrylamide:HMAD)、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド((3-acrylamidopropyl)trimethylammonium chloride:APTAC)、および(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド((vinylbenzyl)trimethylammonium chloride:VBTAC)である。
【0039】
モノマー溶液に使用される溶媒の種類は、モノマー溶液を溶解し、有用な量の荷電モノマーを親水性ポリマーの表面に送達するために有効な任意のものとすることができる。モノマー溶液の好適な溶媒は、水、または有機溶媒を添加した水である。溶媒は、有機溶媒、水、またはその両方を含むことができる。有機溶媒の例としては、アルコール類、特に低級アルコール類(C1~C5アルコール類)が挙げられ、イソプロパノール、メタノール、およびヘキシレングリコールが有用な例である。特定のプロセス、モノマー溶液、および荷電モノマーに使用される特有の溶媒は、モノマー溶液中の荷電モノマーの種類および量、親水性ポリマーの種類、および他の要因などの要因に基づくことができる。水および有機溶媒の両方を含有する溶媒において、有機溶媒は、任意の量で、例えば、90、75、50、40、30、20、または10重量パーセント未満の量で含まれてもよい。一例として、有用な溶媒組成物は、水中に1~10重量パーセントのヘキシレングリコールを含有してもよい。
【0040】
モノマー溶液中の荷電モノマーの量は、所望の、有用な、または最大量の荷電モノマーを、モノマー溶液が親水性ポリマー表面に送達するために十分に高い任意の量(濃度)とすることができる。モノマー溶液の量、モノマー溶液中の荷電モノマーの濃度、およびモノマー溶液を親水性ポリマーに付与するために使用される方法は、望ましく多量の荷電モノマーを親水性ポリマー表面と反応させるのに有効な量の荷電モノマーをポリマー表面に配置するために十分であるべきである。モノマー溶液中のモノマーの有用な量は、例えば、最大で5または10重量パーセント、例えば0.5~5重量パーセント、または1もしくは2重量パーセント~3もしくは4重量パーセントの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、荷電モノマーは、ビニルイミダゾール、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリル酸、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、またはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを含む。いくつかの実施形態では、モノマー溶液は、モノマー溶液の総重量に基づいて、90~99.5重量パーセントの脱イオン水に溶解した0.5~10重量パーセントの荷電モノマーを含む。
【0041】
モノマー溶液が親水性ポリマー(それに予め配置された光開始剤を含む)の表面に効果的に送達された後、親水性ポリマー(その表面に光開始剤および荷電モノマーを有する)は、通常はスペクトルの紫外部の電磁放射線、または光開始剤に化学反応を開始させるために有効な別のエネルギー源に曝露され、その化学反応によって荷電モノマーの反応性部分が親水性ポリマーと反応し、親水性ポリマーに化学的に(共有結合的に)結合する。
【0042】
親水性ポリマーに結合することができるイオン性基の量は、親水性モノマーまたは親水性モノマーを含有する濾材に化学的に結合した反応性モノマーの量に関して述べるものであるが、任意の有用な量、例えばイオン性基が結合している親水性フィルタ膜の非ふるい分け濾過機能を高めるために有効な量とすることができる。好ましくは、ペンダントイオン性基の存在および量によって、流動特性などのフィルタ膜の他の特性に実質的なまたは許容できないレベルの有害な影響はもたらされない。
【0043】
例えば、光開始剤が関与するグラフト技術を用いることによってイオン性基が化学的に結合した親水性ポリマーや、このポリマーで作製されたフィルタ膜などの、このポリマーを含む物品または組成物は、(好ましくはないが)非常に少量であるが分析的に検出可能な(残留)量の光開始剤を含んでもよい。
【0044】
本明細書の方法および装置の様々な例において、親水性ポリマーを多孔質フィルタ膜に含めることができる。本明細書で使用される場合、「多孔質フィルタ膜」は、膜の一方の表面から膜の反対側の表面まで延在する多孔質(例えば微多孔質)連結経路を含有する多孔質固体である。その経路は、一般に、濾過される液体が通るべき曲がりくねったトンネルまたは通路を提供する。この液体に含有される細孔より大きい粒子は全て、その粒子を含有する流体が微多孔質膜を通る際に、微多孔質膜への進入が妨げられるか、微多孔質膜の細孔内に捕捉される(すなわち、ふるい分け型濾過機構によって除去される)。細孔より小さい粒子も細孔構造に捕捉または吸収され、例えば非ふるい分け濾過機構によって除去されてもよい。液体および可能な限り低減された量の粒子または溶存物質が微多孔質膜を通る。
【0045】
本明細書に記載の例示の多孔質ポリマーフィルタ膜(イオン性基をその表面にグラフトする工程の前または後のいずれかとみなされる)は、孔径、バブルポイント、および多孔度を含む物理的性質によって特徴を明らかにすることができる。
【0046】
多孔質ポリマーフィルタ膜は、フィルタ膜がフィルタ膜として機能することを有効にする任意の孔径を有してもよく、例えば、本明細書に記載の、微多孔質ポリマーフィルタ膜または限外濾過膜とみなされることもあるサイズ(平均孔径)の細孔を含む。有用または好適な多孔質膜の例としては、約0.001ミクロン~約1または2ミクロン、例えば0.01~0.8ミクロンの範囲の平均孔径を有することができるものであり、その孔径は、除去される不純物の粒径または種類、圧力および圧力降下の要件、ならびにフィルタによって処理される液体の粘度要件を含む1つ以上の要因に基づいて選択される。限外濾過膜は、0.001ミクロン~約0.05ミクロンの範囲の平均孔径を有することができる。孔径は、多くの場合多孔質材料の平均孔径として報告され、これは、水銀ポロシメトリー(Mercury Porosimetry:MP)、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)、液体置換(Liquid Displacement:LLDP)、または原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)などの既知の技術によって測定することができる。
【0047】
バブルポイントも多孔質膜の既知の性質である。バブルポイント試験法により、多孔質ポリマーフィルタ膜の試料を、表面張力が既知の液体に浸してぬらし、試料の片側にガス圧をかける。ガス圧を徐々に上昇させる。ガスが試料を通って流れる最小圧力がバブルポイントと呼ばれる。本明細書に従って有用または好適な多孔質ポリマーフィルタ膜の有用なバブルポイントは、例えば、摂氏20~25度の温度でハイドロフルオロエーテル(hydrofluoroether:HFE)7200を使用し測定して、2~400psiの範囲、例えば20~200psiの範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、バブルポイントは、摂氏20~25度の温度でHFE 7200を使用し測定して、5~200psiの範囲内であってもよい。
【0048】
記載の多孔質ポリマーフィルタ層は、多孔質ポリマーフィルタ層を本明細書に記載されるように有効にする任意の多孔度を有してもよい。例示の多孔質ポリマーフィルタ層は、比較的高い多孔度、例えば少なくとも60、70、または80パーセントの多孔度を有することができる。本明細書で使用される場合、および多孔質体の技術分野では、多孔質体の「多孔度」(空隙率と呼ばれることもある)は、物体の総体積のパーセントとしての物体内の空隙(すなわち「空」)空間の尺度であり、物体の総体積に対する物体の空隙の体積割合として算出される。多孔度が0パーセントの物体は完全に中実である。
【0049】
記載の多孔質ポリマーフィルタ膜は、任意の有用な厚さ、例えば5~100ミクロン、例えば10または20ミクロン~50または80ミクロンの範囲の厚さを有するシートまたは中空繊維の形状とすることができる。
【0050】
記載のフィルタ膜は、液体を濾過してその液体から望ましくない物質(例えば夾雑物または不純物)を除去して、工業プロセスの材料として使用することができる高純度液体を生成するために有用となり得る。フィルタ膜は、ふるい分け機構または非ふるい分け機構のいずれかによって、好ましくは非ふるい分けおよびふるい分けの両機構を組み合わせることによって、被覆フィルタ膜を通して流される液体から溶存または懸濁した夾雑物または不純物を除去するために有用となり得る。親水性フィルタ膜自体(イオン性基が結合する前)が、有効なふるい分けおよび非ふるい分け濾過特性、ならびに所望の流動特性を示してもよい。記載の、化学的に結合したペンダントイオン性基をさらに含む同じ親水性フィルタ膜は、同等のふるい分け濾過特性、有用または同等の(過度に減少しない)流動特性、および向上した(例えば実質的に向上した)非ふるい分け濾過特性を示し得る。
【0051】
本明細書のフィルタ膜は、投入物として高純度液体物質を必要とするあらゆる種類の工業プロセスで有用となり得る。そのようなプロセスの非限定的な例としては、マイクロ電子デバイスまたは半導体デバイスを調製するプロセスが挙げられ、その具体例は、半導体フォトリソグラフィーに使用される液体プロセス物質(例えば溶媒または溶媒含有液)を濾過する方法である。マイクロ電子デバイスまたは半導体デバイスを調製するために使用されるプロセス液体または溶媒に存在する夾雑物の例としては、液体中に溶解した金属イオン、液体中に懸濁した固体微粒子、および液体中に存在するゲル化または凝固した物質(例えばフォトリソグラフィー中に発生する)が挙げられてもよい。
【0052】
記載のフィルタ膜の特定の例としては、例えば半導体フォトリソグラフィーの方法において使用される液体溶媒または他のプロセス液体を濾過するために、半導体またはマイクロ電子の製造用途において使用される薬液または有用な薬液を精製するために使用できるものがある。記載のフィルタ膜を使用して濾過することができる溶媒のいくつかの具体的、非限定的な例としては、酢酸n-ブチル(n-butyl acetate:nBA)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)、酢酸2-エトキシエチル(2-ethoxyethyl acetate:2 EEA)、キシレン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(methyl isobutyl carbinol:MIBC)、メチルイソブチルケトン(methyl Isobutyl Ketone:MIBK)、酢酸イソアミル、ウンデカン、プロピレングリコールメチルエーテル(propylene glycol methyl ether:PGME)、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propylene glycol monomethyl ether acetate:PGMEA)が挙げられる。記載の例示のフィルタ膜は、水、アミン類、またはその両方を含有する溶媒、例えば、NH4OH、水酸化テトラメチルアンモニア(tetramethyl ammonia hydroxide:TMAH)、および同等の溶液などであって、場合によっては水を含有し得る塩基類および水性塩基類から金属類を除去するために有効であり得る。いくつかの実施形態では、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)またはNH4OHから選択される溶媒を含む液体は、本明細書に記載の膜を有するフィルタを通り、溶媒から金属を除去する。いくつかの実施形態では、溶媒含有液体を膜に通して溶媒含有液体から金属を除去すると、溶媒含有液体中の金属の濃度が低減される。
【0053】
親水性ポリマーに化学的に結合した記載のペンダントイオン性基を含む記載のフィルタ膜はまた、フィルタ膜の色素結合能の点から特徴を明らかにすることができる。具体的には、濾過膜の表面には荷電色素を結合することができる。濾過膜に結合することができる色素の量は、分光法によって、色素の吸収周波数において測定された膜の吸収読み取り値の差に基づいて定量的に評価することができる。色素結合能は、負に荷電した色素の使用によって、また、正に荷電した色素の使用によっても算定することができる。記載の好適なフィルタ膜によれば、記載のようにイオン性基が懸垂した親水性ポリマーを使用して作製されたフィルタ膜は、正に荷電した色素、負に荷電した色素、またはその両方に対する色素結合能を有することができ、その色素結合能は、同じ親水性フィルタ膜を含むがペンダントイオン性基を含まない同等のフィルタ膜よりも大きい。すなわち、無ペンダントイオン性基がない親水性ポリマーを使用して作製されたフィルタ膜は、記載のように、ペンダントイオン性基を有する親水性ポリマーを含有する同じフィルタ膜よりも色素結合能が低い(例えば有意に少ない)。
【0054】
ペンダントイオン性基を有する親水性ポリマーを使用して作製された被覆フィルタ膜は、フィルタ膜の1平方センチメートル当たりに少なくとも1マイクログラム(μg/cm2)、例えば1、または10、20、または50μg/cm2より大きいメチレンブルー色素に対する色素結合能を有してもよい。あるいは、またはさらに、記載の被覆フィルタ膜は、少なくとも1μg/cm2、例えば1、10、20、または50μg/cm2を超えるポンソーS色素に対する色素結合能を有してもよい。
【0055】
あるいは、またはさらに、本明細書のフィルタ膜の色素結合能は、本明細書に記載のペンダントイオン性基を含有しないこと以外は同じである親水性ポリマーを使用して作製された同等のフィルタ膜に対し向上した点について評価することができる。本発明の例示のフィルタ膜は、ペンダントイオン性基がない同じ親水性フィルタ膜の色素結合能に対して、少なくとも10、25、50、または100パーセント向上した色素結合能を示すことができる。つまり、親水性ポリマーを使用して作製され、記載のペンダントイオン性基を含有するフィルタ膜は、同じ親水性ポリマーを使用して作製されるがその親水性ポリマーからのイオン性ペンダントを有さない同じフィルタ膜(孔径、多孔度、厚さなどの点において)と比較して、より大きい(例えば有意に大きい)色素結合能、例えば、少なくとも10、25、50、または100パーセント大きい色素結合能を有することができる。
【0056】
粒子保持率は、流体流中に配置された膜によって流体流から除去された試験粒子の数を評価することによって評価することができる。1つの方法では、0.5、1、および2%の単層被覆率を達成するために、8ppmのポリスチレン粒子(0.025μm緑色蛍光ポリマーミクロスフェア、Fluoro-Max(ThermoFisher SCIENTIFIC社から入手可能))を含有する0.1%のTriton X-100の十分な量の供給水溶液を、毎分7ミリリットルの一定の流量で膜に通し、透過液を回収することによって粒子保持率を評価することができる。透過液中のポリスチレン粒子の濃度は、透過液の吸光度から算出することができる。次いで、以下の式を用いて粒子保持率を算出する。
【0057】
記載の複合膜の好適な実施形態では、複合膜は、0.5%、1.0%、1.5%、および2.0%の単層被覆率について90%を超える保持率を示すことができ、0.5%および1.0%の単層被覆率についても95%を超え得る。このレベルの保持率を有することで、本発明の複合膜のこれらの例は、UPEで作製された平形シートおよび中空繊維の同等のフィルタ膜などの現在市販されている多くのフィルタ膜と比較して、より高い保持率レベルを示す。これらの例示の複合膜はまた、有用な、良好な、または非常に良好な流れの速さ(低い流動時間)を可能にし、複合膜をフィルタカートリッジまたはフィルタ製品に組み立てられる機械的特性を示す。
【0058】
さらに、記載のフィルタ膜は、フィルタ膜を通る液体の流れの流速または流束によって特徴を明らかにすることができる。流速は、フィルタ膜がフィルタ膜を通る流体の流れを濾過するために効率的かつ有効になるように十分に高くなければならない。流速、または代わりに考慮されるものとしてフィルタ膜を通る液体の流れに対する抵抗は、流速または流動時間(流速の逆数である)の点から評価することができる。ペンダントイオン性基を有する親水性ポリマーを含む本明細書に記載のフィルタ膜は、好ましくは比較的高いバブルポイントと組み合わせて比較的低い流動時間、および良好な濾過性能(例えば、粒子保持率、色素結合能、またはその両方によって評価される)を好ましく有することができる。有用または好適な流動時間は、例えば、約6,000秒/500mL未満、例えば約4,000または2,000秒/500mL未満とすることができる。
【0059】
膜の水の流動時間は、膜を47mmの円板に切断し、水でぬらした後、一定量の水を保有するためのリザーバに取り付けられたフィルタホルダにその円板を入れることによって求めることができる。リザーバは圧力調整器に接続されている。水は、14.2psi(ポンド/平方インチ)の差圧下で膜を通って流れる。平衡に達した後、500mlの水が膜を通って流れる時間を記録する。
【0060】
好ましくは、親水性ポリマーを使用して作製され、記載のペンダントイオン性基を有するフィルタ膜の流動時間は、ペンダント親水性基を含有しない同じフィルタ膜の流動時間とほぼ等しくすることができ、それより有意に大きいものではない。換言すれば、フィルタ膜の親水性ポリマーにイオン性基を有することによってフィルタ膜の流動特性は実質的にマイナスの影響を受けないが、さらに、フィルタ膜の濾過機能、特に、例えば色素結合能、粒子保持率、またはその両方によって評価されるような膜の非ふるい分け濾過機能をさらに向上させ得る。好適なフィルタ膜によれば、親水性ポリマーおよびペンダントイオン性基を含む本明細書のフィルタ膜の測定される流動時間は、グラフトされたイオン性基を含まない同一の親水性ポリマーの流動時間と、30パーセントまたは20パーセント以下、例えば10パーセント、5または3パーセント以下で異なり得る(例えば大きくなり得る)。
【0061】
記載のフィルタ膜は、多層フィルタ組立体または濾過システムで使用されるフィルタカートリッジなどのより大きなフィルタ構造物に収容することができる。濾過システムでは、例えば多層フィルタ組立体の一部として、またはフィルタカートリッジの一部としてフィルタ膜をフィルタハウジング内に配置し、フィルタ膜を薬液の流路に曝露して、薬液の流れの少なくとも一部をフィルタ膜に通し、その結果、フィルタ膜が薬液からある量の不純物または夾雑物を除去する。多層フィルタ組立体またはフィルタカートリッジの構造物は、流体を、フィルタ入口から複合膜(フィルタ層を含む)を通しフィルタ出口を通して流すことによってフィルタを通る際に複合フィルタ膜を通すための、フィルタ組立体またはフィルタカートリッジ内で複合フィルタ膜を支持する様々な付加的な材料および構造物のうちの1つ以上を含んでもよい。フィルタ組立体またはフィルタカートリッジによって支持されたフィルタ膜は、任意の有用な形、例えば、プリーツ状円筒、円筒形パッド、プリーツのない(平形の)1つ以上の円筒形シート、プリーツ状シートなどとすることができる。
【0062】
プリーツ状円筒の形状のフィルタ膜を含むフィルタ構造物の一例は、以下の部品を含むように調製することができるものであり、その部品のいずれも、フィルタ構築物に含まれてもよいが必須でなくてもよい。その部品は、プリーツ状円筒形被覆フィルタ膜の内側開口部でプリーツ状円筒形被覆フィルタ膜を支持する剛性または半剛性コアと、フィルタ膜の外側でプリーツ状円筒形被覆フィルタ膜の外側を支持しまたは囲む剛性または半剛性ケージと、プリーツ状円筒形被覆フィルタ膜の2つの対向する端部のそれぞれに位置する任意選択のエンドピースまたは「パック」と、入口および出口を含むフィルタハウジングとである。フィルタハウジングは、任意の有用かつ所望のサイズ、形、および材料のものとすることができ、好ましくは適切なポリマー材料から作製することができる。
【0063】
一例として、
図1は、プリーツ状円筒形部材10およびエンドピース22と他の任意選択の部材との製品であるフィルタ部材30を示す。円筒形部材10は、本明細書で説明するようにフィルタ膜12を含み、プリーツ状である。エンドピース22は、円筒形フィルタ部材10の一端に取り付けられる(例えば「ポッティングされる」)。エンドピース22は、好ましくは溶融加工可能なポリマー材料で作製することができる。コア(図示せず)をプリーツ状円筒形部材10の内側開口部24に配置することができ、ケージ(図示せず)をプリーツ状円筒形部材10の外側の周りに配置することができる。第2のエンドピース(図示せず)を、プリーツ状円筒形部材30の第2の端部に取り付ける(「ポッティングする」)ことができる。次に、2つの対向するポッティングされた端部ならびに任意選択のコアおよびケージを有し得られたプリーツ状円筒形部材30を、入口および出口を含みかつ入口に入る流体の全量が出口でフィルタを出る前に必ず濾過膜12を通るように構成されフィルタハウジング内に配置することができる。
【実施例0064】
実施例1
モノマーをナイロンにグラフトするための、脱イオン水とイソプロパノールとの混合物に溶解したベンゾフェノン
この実施例では、ナイロンを表面修飾する間のベンゾフェノンに対して、脱イオン水対イソプロパノールが50:50の混合物を溶媒として使用する方法が、100%のイソプロパノールよりも優れていることを説明する。
【0065】
HFE平均バブルポイントが107psi、水の流動時間が1220秒/500mL、および厚さが165μmのナイロン膜を、以下の2つの方法を用いて表面修飾した。最初の実験では、非修飾のナイロン膜を直径47mmの試片に切断した。工程1では、試片を0.5%ベンゾフェノンの100%イソプロパノール(IPA)溶液に沈潜した。次いで、工程2では、IPAでぬらしたナイロン膜の試片を100%脱イオン水に沈潜した。次いで、工程3では、その脱イオン水交換膜をモノマー溶液に沈潜して、負に荷電したモノマー、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(2-acrylamido-2-methyl-l-propanesulfonic acid:AMPS)を膜に吸い込ませた。工程4では、試片をモノマー溶液から取り出し、直ちに2枚の透明ポリエチレンシートの間に置き、Fusion Systems社の広帯域UVランプに12フィート/分の速度で通した。工程5では、そのUV硬化膜試片を水で洗浄し、メタノール中で2回洗浄し、次いで乾燥させた。このプロセス中、47mmのナイロン試片は、ベンゾフェノンおよびイソプロパノール溶液中にあった時間のために外観的に変形した。第2の実験では、1.0%のベンゾフェノンを49gのイソプロパノールに溶解し、次いで50gの脱イオン水で希釈した。この溶液で、第1の実験の工程1で使用した0.5%ベンゾフェノンの100%イソプロパノール溶液を置き換えた。残りの工程2~5を第1の実験の通りに繰り返した。第2の実験におけるナイロン膜試片は、外観的に変形することなく修飾することができた。
【0066】
実施例2
負に荷電したAMPSモノマーで修飾したナイロン表面
この実施例では、負に荷電したモノマー、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)によるナイロン膜の表面修飾について説明する。
【0067】
負に荷電したナイロン膜を表面修飾によって生成した。表面修飾は、光開始剤を使用して、負に荷電したモノマー、AMPSを膜表面に共有結合的にグラフトすることによって達成した。まず、実施例1と同様の非修飾のナイロン膜を直径47mmの試片に切断し、次いで、0.5%ベンゾフェノンの50%イソプロパノール/50%脱イオン水溶液に沈潜した。次に、膜を100%脱イオン水の溶液中で交換した。次いで、交換した膜をAMPSモノマー溶液(表1A)に沈潜して、膜にモノマー溶液を吸い込ませた。試片をモノマー溶液から取り出し、直ちに2枚の透明ポリエチレンシートの間に置き、Fusion Systems社の広帯域UVランプに12フィート/分の速度で通した。そのUV硬化膜試片を水で洗浄し、メタノール中で2回洗浄し、次いで乾燥させた。元来の膜のHFE平均バブルポイントは107psiと測定されており、そのバブルポイントは表面修飾によって影響を受けなかった。表面修飾による流動時間のパーセント増加率を評価したところ、14%であった。
表1A AMPSモノマー溶液
【0068】
実施例3
負に荷電したVPAモノマーで修飾したナイロン表面
この実施例では、負に荷電したモノマー、ビニルホスホン酸(Vinyl Phosphonic Acid:VPA)によるナイロン膜の表面修飾について説明する。
【0069】
負に荷電したナイロン膜を表面修飾によって生成した。表面修飾は、光開始剤を使用して、負に荷電したモノマー、VPAを膜に共有結合的にグラフトすることによって達成した。まず、実施例1と同様の非修飾のナイロン膜を直径47mmの試片に切断し、次いで、0.5%ベンゾフェノンの50%イソプロパノール/50%脱イオン水溶液に沈潜した。次に、膜を100%脱イオン水の溶液中で交換した。次いで、交換した膜をVPAモノマー溶液(表1B)に沈潜して、膜にモノマー溶液を吸い込ませた。試片をモノマー溶液から取り出し、直ちに2枚の透明ポリエチレンシートの間に置き、Fusion Systems社の広帯域UVランプに12フィート/分の速度で通した。そのUV硬化膜試片を水で洗浄し、メタノール中で2回洗浄し、次いで乾燥させた。元来の膜のHFE平均バブルポイントは107psiと測定されており、そのバブルポイントは表面修飾によって影響を受けなかった。負に荷電した表面修飾による流動時間のパーセント増加率を評価したところ、0.0%であった。
表1B VPAモノマー溶液
【0070】
実施例4
負に荷電したナイロン膜の色素結合能の定量
この実施例では、正に荷電した色素分子、メチレンブルーの取込み率を評価することによって、処理された多孔質ナイロン膜に存在する負電荷の度合いを近似できる方法について説明する。
【0071】
この方法は、表面修飾したナイロン膜に付与された電荷量を評価するために用いられる。最初に、各試片(例えば実施例2および実施例3の試片)をイソプロパノール中で再びぬらし、直ちに50mLの希釈(0.00075%重量パーセンテージ)メチレンブルー色素(Sigma Aldrich社)供給溶液を含有する50mLのコニカルチューブに入れ、チューブに蓋をし、2時間回転させる。2時間の回転後、膜試片をメチレンブルー溶液から取り出し、50mLのイソプロパノール100%溶液を含有する50mLのコニカルチューブに入れ、チューブに蓋をし、0.5時間回転させる。イソプロパノール中で回転させた後、膜試片が青色に染まったことを目視で確認し、試片を乾燥させる。希釈メチレンブルー供給溶液のUV吸光度を測定し、試片を入れて回転させた溶液のUV吸光度と比較する。その回転溶液との比較において元の溶液とのUV吸光度の差を求めることにより、最終的な「色素結合能」(Dye-Binding Capacity:DBC)を算出し、μg/cm2で表すことができる。この数値は、膜の表面の荷電した官能基のレベルの近似値であり、膜イオン交換能のレベルと相関する。ベースのナイロンのメチレンブルーのDBCは0.0μg/cm2であり、負に荷電したAMPSで修飾した実施例2のナイロン表面のDBCを求めたところ43.88μg/cm2であり、VPAで修飾した実施例3のナイロン膜表面のDBCを求めたところ14.3μg/cm2であった。
【0072】
実施例5
正に荷電したAPTACモノマーで修飾したナイロン表面
この実施例では、正に荷電したモノマー、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)によるナイロン膜の表面修飾について説明する。
【0073】
正に荷電したナイロン膜を表面修飾によって生成した。表面修飾は、光開始剤を使用して、正に荷電したモノマー、APTACを膜に共有結合的にグラフトすることによって達成した。まず、実施例1と同様の非修飾のナイロン膜を直径47mmの試片に切断し、次いで、0.5%ベンゾフェノンの50%イソプロパノール/50%脱イオン水溶液に沈潜した。次に、膜を100%脱イオン水の溶液中で交換した。次いで、交換した膜をAPTACモノマー溶液(表1C)に沈潜して、膜にモノマー溶液を吸い込ませた。試片をモノマー溶液から取り出し、直ちに2枚の透明ポリエチレンシートの間に置き、Fusion Systems社の広帯域UVランプに12フィート/分の速度で通した。そのUV硬化膜試片を水で洗浄し、メタノール中で2回洗浄し、次いで乾燥させた。元来の膜のHFE平均バブルポイントは107psiと測定されており、そのバブルポイントは表面修飾によって影響を受けなかった。正に荷電した表面修飾による流動時間のパーセント増加率を評価したところ、13.8%であった。
表1C APTACモノマー溶液
【0074】
実施例6
正に荷電したIMモノマーで修飾したナイロン表面
この実施例では、正に荷電したモノマー、1-ビニルイミダゾール(1-Vinyl Imidazole:IM)によるナイロン膜の表面修飾について説明する。
【0075】
正に荷電したナイロン膜を表面修飾によって生成した。表面修飾は、光開始剤を使用して、正に荷電したモノマー、IMを膜に共有結合的にグラフトすることによって達成した。まず、実施例1と同様の非修飾のナイロン膜を直径47mmの試片に切断し、次いで、0.5%ベンゾフェノンの50%イソプロパノール/50%脱イオン水溶液に沈潜した。次に、膜を100%脱イオン水の溶液中で交換した。次いで、交換した膜をIMモノマー溶液(表1D)に沈潜して、膜にモノマー溶液を吸い込ませた。試片をモノマー溶液から取り出し、直ちに2枚の透明ポリエチレンシートの間に置き、Fusion Systems社の広帯域UVランプに12フィート/分の速度で通した。そのUV硬化膜試片を水で洗浄し、メタノール中で2回洗浄し、次いで乾燥させた。元来の膜のHFE平均バブルポイントは107psiと測定されており、そのバブルポイントは表面修飾によって影響を受けなかった。IM表面修飾による流動時間のパーセント増加率を評価したところ、0.0%であった。
表1D IMモノマー溶液
【0076】
実施例7
正に荷電したAPTACモノマーで、風乾グラフトによって修飾したナイロン表面
この実施例では、風乾した光開始剤を用いたグラフトによる、正に荷電したモノマー、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)を用いたナイロン膜の表面修飾について説明する。
【0077】
正に荷電したナイロン膜を表面修飾によって生成した。表面修飾は、光開始剤を使用して、正に荷電したモノマー、APTACを膜に共有結合的にグラフトすることによって達成した。まず、実施例1と同様の非修飾のナイロン膜を直径47mmの試片に切断した。次いで、膜を溶液から取り出し、動かないようにしながら室温で乾燥させた。次いで、乾燥した膜をAPTACモノマー溶液(表1E)に沈潜して、モノマー溶液を膜に吸い込ませた。試片をモノマー溶液から取り出し、直ちに2枚の透明ポリエチレンシートの間に置き、Fusion Systems社の広帯域UVランプに12フィート/分の速度で通した。そのUV硬化膜試片を水で洗浄し、メタノール中で2回洗浄し、次いで乾燥させた。元来の膜のHFE平均バブルポイントは107psiと測定されており、そのバブルポイントは表面修飾によって影響を受けなかった。正に荷電した表面修飾による流動時間のパーセント増加率を評価したところ、1.6%であった。
表1E APTACモノマー溶液
【0078】
実施例8
正に荷電したAPTACモノマーで風乾グラフトによって修飾した、アルカリプライミングしたナイロン表面。
この実施例では、風乾した光開始剤を用いたグラフトによる、正に荷電したモノマー、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)を用いて、アルカリプライミングしたナイロン膜の表面修飾について説明する。
【0079】
正に荷電したナイロン膜を表面修飾によって生成した。表面修飾は、光開始剤を使用して、正に荷電したモノマー、APTACを膜に共有結合的にグラフトすることによって達成した。まず、実施例1と同様の非修飾のナイロン膜を直径47mmの試片に切断し、次いで、1Mの水酸化ナトリウムでpH11にした脱イオン水(DIW)の溶液に沈潜した。次いで、膜を溶液から取り出し、動かないようにしながら室温で乾燥させた。次いで、0.5%ベンゾフェノンの50%イソプロパノール/50%脱イオン水溶液に膜を沈潜した。次いで、膜を溶液から取り出し、動かないようにしながら室温で乾燥させた。次いで、乾燥した膜をAPTACモノマー溶液(表1F)に沈潜して、モノマー溶液を膜に吸い込ませた。試片をモノマー溶液から取り出し、直ちに2枚の透明ポリエチレンシートの間に置き、Fusion Systems社の広帯域UVランプに12フィート/分の速度で通した。そのUV硬化膜試片を水で洗浄し、メタノール中で2回洗浄し、次いで乾燥させた。元来の膜のHFE平均バブルポイントは107psiと測定されており、そのバブルポイントは表面修飾によって影響を受けなかった。正に荷電した表面修飾による流動時間のパーセント増加率を評価したところ、9.4%であった。
表1F APTACモノマー溶液
【0080】
実施例9
正に荷電したナイロン膜の色素結合能の定量
この実施例では、負に荷電した色素分子、ポンソーSの取込み率を評価することによって、処理された多孔質ナイロン膜に存在する正電荷の度合いを近似できる方法について説明する。
【0081】
この方法は、表面修飾したナイロン膜に付与された電荷量を評価するために用いられる。最初に、各試片(例えば、実施例5、6、7、および8の試片)をイソプロパノール中で再びぬらし、直ちに50mLの希釈(0.005%重量パーセンテージ)ポンソーSレッド色素(Sigma Aldrich社)供給溶液を含有する50mLのコニカルチューブに入れ、チューブに蓋をし、2時間回転させる。2時間の回転後、膜試片をポンソーS溶液から取り出し、50mLのイソプロパノール100%溶液を含有する50mLのコニカルチューブに入れ、チューブに蓋をし、0.5時間回転させる。イソプロパノール中で回転させた後、膜試片が赤色に染まったことを目視で確認し、試片を乾燥させる。そのポンソーS供給溶液のUV吸光度を測定し、試片を入れて回転させた溶液のUV吸光度と比較する。その回転溶液との比較において元の溶液とのUV吸光度の差を求めることにより、最終的な「色素結合能」(Dye-Binding Capacity:DBC)を算出し、μg/cm2で表すことができる。この数値は、膜の表面の荷電した官能基のレベルの近似値であり、膜イオン交換能のレベルと相関する。ナイロンのベースの膜のポンソーSのDBCは34.5μg/cm2であり、正に荷電したAPTACで修飾したナイロン表面のDBCを求めたところ48.90μg/cm2であり、正に荷電したAPTACで、風乾した光開始剤の使用により修飾したナイロン表面のDBCを求めたところ47.44μg/cm2であり、正に荷電したAPTACで、アルカリプライミングおよび乾燥した光開始剤によって修飾したナイロン表面のDBCを求めたところ62.32μg/cm2であり、そしてIMで修飾したナイロン表面のDBCを求めたところ99.61μg/cm2であった。
【0082】
実施例10
ナイロン膜、負に荷電したナイロン膜、および正に荷電した膜のG25ビーズのフィルタ保持率の定量
以下の実施例では、荷電官能基をナイロン膜に付加的に導入することによって、膜の保持特性を維持または向上させることができることを説明する。
【0083】
ナイロン膜、実施例2と同様の方法を用いて負電荷で修飾したナイロン膜、および実施例5と同様の方法を用いて正電荷で修飾したナイロン膜について、G25ビーズ(0.025μm緑色蛍光ポリマーミクロスフェア、Fluoro-Max)のフィルタ保持率を求めた。0.1%のTriton-X(Sigma社)を用いた8ppbのG25ビーズの供給溶液を脱イオン水中で調製し、pHを10.6に調整した。ナイロン膜試片を切断し、膜を47mmフィルタ組立体に固定した。ナイロン膜を含有する膜組立体を脱イオン水でフラッシングした後、pH10.6に調整した0.1%のTriton-Xの脱イオン水溶液でフラッシングした。pH10.6でG25およびTriton-Xで調製した溶液を、0.5、1、2%の単層の算出ビーズ負荷量で膜を通して濾過し、濾液を回収した。回収した濾液試料を、蛍光分光光度計を使用してG25ビーズ濃度を算出することによって、8ppbのG25ビーズ0.1%Triton-X供給溶液と比較する。膜の様々な単層でのパーセント除去率を算出することができる。正電荷で修飾したナイロン膜は、非修飾のナイロン膜と比較した場合、G25ビーズ保持率が向上したことを示した。結果を、表1H、水中での金属除去率の、単層0.5、1、および2%についての保持率(%)に示す。
表1G G25ビーズのフィルタ保持率
【0084】
実施例11
元来のナイロン膜および負に荷電したナイロン膜を使用したDIW中の金属除去率の定量
以下の実施例では、ナイロン膜に負に荷電した官能基を付加的に導入することによって、膜の金属除去特性を向上させることができることを説明する。
【0085】
負に荷電したナイロン膜を実施例2と同様の方法を用いて調製し、複数の47mmの膜試片に切断した。これらの膜試片を、0.35%のHClで数回洗浄し、続いて0.35%のHClに一晩浸漬することによってコンディショニングし、脱イオン水で平衡化した。各試料について、47mm膜試片1つを清浄なPFA 47mmシングルステージフィルタ組立体(Single Stage Filter Assembly、Savillex社)に固定した。膜およびフィルタ組立体をDIWでフラッシングした。21種の金属を含有する水性金属標準物質(SCP Science社)をDIWに添加して、各金属について目標濃度の5ppbを達成した。濾過金属除去効率を求めるために、各フィルタを含有し対応する47mmフィルタ組立体に金属添加DIWを10mL/分で通し、濾液を清浄なPFA瓶に100mLで回収した。金属添加DIWおよび濾液試料の金属濃度を、誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP-MS)を使用して求めた。結果を、表1H、水中での金属除去率の金属除去率(%)に示す。
表1H 水中での金属除去率
【0086】
第1の態様では、多孔質ポリマーフィルタ膜は、ポリマー骨格と、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるペンダント親水性基と、そのペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基とを含む親水性ポリマーを含む。
【0087】
ペンデントイオン性基が、フィルタ膜の非ふるい分け濾過性能を、ペンダントイオン性基を含まないこと以外は同じであるフィルタ膜より向上させるために有効である、第1の態様に記載の第2の態様。
【0088】
ポリマー骨格がポリアミドである、第1または第2の態様に記載の第3の態様。
【0089】
イオン性基が、カチオン性窒素含有基、アニオン性硫黄含有基、またはアニオン性リン含有基である、第1から第3の態様のいずれかに記載の第4の態様。
【0090】
イオン性基がカチオン性窒素含有環状芳香族基である、第1から第4の態様のいずれかに記載の第5の態様。
【0091】
イオン性基がカチオン性イミダゾールまたはカチオン性アミンである、第1から第4の態様のいずれかに記載の第6の態様。
【0092】
イオン性基がアニオン性ホスホン酸またはアニオン性スルホン酸である、第1から第4の態様のいずれかに記載の第7の態様。
【0093】
残留光開始剤をさらに含む、第1から第7の態様のいずれかに記載の第8の態様。
【0094】
多孔質ポリマーフィルタ膜が少なくとも60パーセントの多孔度を有する、第1から第8の態様のいずれかに記載の第9の態様。
【0095】
多孔質ポリマーフィルタ膜が0.001~1.0ミクロンの範囲の孔径を有する、第1から第9の態様のいずれかに記載の第10の態様。
【0096】
第11の態様では、フィルタカートリッジが、第1から第10の態様のいずれかの膜を含む。
【0097】
第12の態様では、フィルタが、第1から第10の態様のいずれかの膜を含む。
【0098】
第13の態様では、第1から第10の態様のいずれかのフィルタ膜を使用する方法が、溶媒含有液体を膜に通すことを含む。
【0099】
第14の態様では、イオン性基を親水性ポリマーにグラフトする方法が、溶媒および光開始剤を含む光開始剤溶液に親水性ポリマーを接触させて、親水性ポリマーの表面に光開始剤を配置することと、前記表面を光開始剤溶液に接触させてその表面に光開始剤を配置した後に、荷電モノマーを含むモノマー溶液に前記表面を接触させることと、前記表面を電磁放射線に曝露して、イオン性基を親水性ポリマーにグラフトさせることとを含み、荷電モノマーはイオン性基を含む。
【0100】
親水性ポリマーが多孔質ポリマーフィルタ膜である、第14の態様に記載の第15の態様。
【0101】
溶媒が有機溶媒および水を含む、第14または第15の態様に記載の第16の態様。
【0102】
前記表面を光開始剤溶液に接触させた後に溶媒の蒸発によって前記表面を少なくとも部分的に乾燥させ、光開始剤溶液を少なくとも部分的に乾燥させた後にモノマー溶液に膜を接触させることを含む、第14から第16の態様のいずれかに記載の第17の態様。
【0103】
光開始剤がベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体である、第14から第17の態様のいずれかに記載の第18の態様。
【0104】
光開始剤溶液が0.1~2重量パーセントのベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を含み、光開始剤溶液が水ならびにイソプロパノールおよびメタノールのうちの1つ以上を含む、第14から第18の態様のいずれかに記載の第19の態様。
【0105】
荷電モノマーが、ビニルイミダゾール、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリル酸、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、またはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを含む、第14から第19の態様のいずれかに記載の第20の態様。
荷電モノマーが、ビニルイミダゾール、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリル酸、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを含む、請求項1に記載の方法。