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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174353
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】液晶組成物、液晶素子及びアンテナ
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/30 20060101AFI20221116BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20221116BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20221116BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20221116BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20221116BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20221116BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20221116BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20221116BHJP
   H01Q 3/34 20060101ALI20221116BHJP
   H01Q 3/44 20060101ALI20221116BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20221116BHJP
   C09K 19/24 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C09K19/30
C09K19/32
C09K19/34
C09K19/12
C09K19/18
C09K19/16
C09K19/14
C09K19/20
H01Q3/34
H01Q3/44
H01Q13/22
C09K19/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019198021
(22)【出願日】2019-10-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 源基
(72)【発明者】
【氏名】初阪 一輝
【テーマコード(参考)】
4H027
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
4H027BA01
4H027BC04
4H027BD02
4H027BD07
4H027BD24
4H027BE04
4H027CB05
4H027CE05
4H027CG04
4H027CM02
4H027CN05
4H027DF04
4H027DK04
5J021AA05
5J021AA08
5J021AB05
5J021AB06
5J021HA01
5J045DA05
5J045DA10
5J045NA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、マイクロ波又はミリ波の電磁波に対してより大きな位相制御を可能とするため、大きな誘電率異方性Δε、大きな屈折率異方性Δnを有する液晶材料において、ネマチック液晶温度範囲が広く、低温下において安定であり、更に熱等の外部刺激に対して高い信頼性を有する、ネマチック液晶組成物、及び、それらを用いた液晶素子、又はアンテナを提供することにある。
【解決手段】一般式(i)で表わされる液晶化合物を有する液晶組成物、又は当該液晶組成物を含む液晶層を備えた、アンテナ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(i)で表される化合物を含む、液晶組成物。
【化1】
(上記一般式(i)中、
i1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むアルキル基又はハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよく、
m1は、1又は2の整数を表し、
i1~Ai3は、それぞれ独立して、下記の基(a)~基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)~基(c)中の水素原子はフッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよいが、Ai1~Ai3中の水素原子の少なくとも一つは塩素原子に置換されており、
i1及びZi2は、それぞれ独立して、単結合、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、又は-C(Ria)=N-N=C(Rib)-を表し、この際、Ria及びRibは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表し、
m1が2のときに複数存在するAi1及びZi1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(ii)及び一般式(iii)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含む、請求項1に記載の液晶組成物。
【化2】
(上記一般式(ii)中、
ii1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよく、
nは、0から2の整数を表し、
ii1及びAii2は、それぞれ独立して、下記の基(a)又は基(b)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
上記基(a)又は基(b)中の水素原子は、それぞれシアノ基、ハロゲン原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐の、アルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよく、
ii11~Xii13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐の、アルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表し、
ii1は、フッ素原子、塩素原子、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はジフルオロメトキシ基を表し、
ii1及びZii2は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、
nが2のときに複数存在するAii1及びZii1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化3】
(上記一般式(iii)中、
iii1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよく、
lは、0から2の整数を表し、
iii1~Aiii3は、それぞれ独立して、下記の基(a)~は基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)又は基(b)中の水素原子はそれぞれ、シアノ基、ハロゲン原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよく、
iii1及びZiii2は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、
lが2以上のときに複数存在するAiii1及びZiii1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
一般式(iv)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含む、請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【化4】
(上記一般式(iv)中、
iv1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよく、
m2は、0、1又は2の整数を表し、
iv1~Aiv3は、それぞれ独立して、下記の基(a)~基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)~基(c)中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはフッ素化アルキル基に置換されていてもよく、
iv1及びZiv2は、それぞれ独立して、単結合、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、又は-C(Riva)=N-N=C(Rivb)-を表し、この際、Ziv2及び0以上2以下存在するZiv1のうち少なくとも1つが-C≡C-を表わし、Riva及びRivbは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表し、
m2が2のときに複数存在するAiv1及びZiv1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、一般式(iv)で表わされる化合物のうち、一般式(i)で表わされる化合物を除く。)
【請求項4】
一般式(v)から選択される化合物を一種又は2種以上をさらに含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化5】
(上記一般式(v)中、
31は、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、-O-又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
31及びM32は、それぞれ独立して、下記の基(a)、基(b)、又は基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、並びに
(c) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、
上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよく、
31及びL32は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、
pは、0、1又は2を表す、
32及び/又はL31がそれぞれ複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
31及びX32は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、
31は、フッ素原子、塩素原子、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はジフルオロメトキシ基を表す。)
【請求項5】
589.0nmにおけるΔnは0.2以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いた、液晶素子。
【請求項7】
アクティブマトリクス方式で駆動する、請求項6に記載の液晶素子。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶組成物の液晶分子の配向方向を可逆的に変えることにより誘電率を可逆的にスイッチングする液晶素子。
【請求項9】
複数のスロットを備えた第1基板と、
前記第1基板と対向し、給電部が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた第1誘電体層と、
前記複数のスロットに対応して配置される複数のパッチと、
前記パッチが設けられた第3基板と、
前記第1基板と前記第3基板との間に設けられた液晶層と、を備え、
前記液晶層は、一般式(i):
【化6】
(上記一般式(i)中、
i1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよく、
m1は、1又は2の整数を表し、
i1~Ai3は、それぞれ独立して、下記の基(a)~基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)~基(c)中の水素原子はフッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよいが、Ai1~Ai3中の水素原子の少なくとも一つは塩素原子に置換されており、
i1及びZi2は、それぞれ独立して、単結合、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、又は-C(Ria)=N-N=C(Rib)-を表し、この際、Ria及びRibは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表し、
m1が2のときに複数存在するAi1及びZi1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる液晶化合物を含有する、アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶組成物及びこれを使用した液晶素子又はアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然界には存在しない特性を発現できるメタマテリアル技術に関する研究が進んでおり、光学分野を始めとする種々の技術分野で注目を集めている。なかでも、メタマテリアル技術を用いることにより電磁波の制御を可能にする観点から、当該メタマテリアル技術を、高周波デバイス、マイクロ波デバイス又はアンテナなどの技術分野に応用することが挙げられる。一般にアンテナの大きさは、電磁波の波長に依存することが知られている。そのため、アンテナを介した電波の送受信可能な自動運転技術の導入等に起因して、メタマテリアル技術を用いるアンテナの小型化に大きな期待が寄せられている。このようなメタマテリアル技術に用いられる材料の一つとして液晶媒質が挙げられる。
【0003】
また、多種多様な機能のシステムをひとつのハードウェアで切り替えて利用する、あるいはソフトウェアによりプログラム的に切り替えて利用するためには、高周波アナログステージで周波数帯又は帯域幅などを電子的に可変できるデバイスの技術開発が必要となる。このため、例えば、電子同調フィルタ、電圧制御発振器、可変特性増幅器、移相器・減衰器といった可変回路又はデバイス等の性能・機能を可変制御できる技術の開発が進められている。
【0004】
液晶媒質を可変機能デバイスに利用した高周波デバイスとして、駆動電圧の無印加と駆動電圧の印加により液晶層の誘電率が変化することを利用して、マイクロストリップ線路を伝搬する電磁波の位相の可変、あるいは当該電磁波の位相の遅延を可能とするマイクロ波帯可変位相器が開示されている(非特許文献1)。
【0005】
また、液晶媒質を利用した可変機能デバイスの液晶層として、高分子分散型液晶(特許文献1参照)、二周波駆動液晶(特許文献2)を用いた技術が報告されている。
さらに、特許文献3では、高周波デバイスの構成成分として液晶材料の使用が提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-315902号公報
【特許文献2】特開2001-237606号公報
【特許文献3】特開2005-120280号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ドルフィ(D.Dolfi),「エレクトロニクスレター(Electronics Letters)」,(英国),1993年,29巻,10号,p.926-927
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1~3に記載の液晶組成物の使用可能な温度範囲を確認すると、特に、低温保存安定性が低いことが確認された。そのため、液晶組成物の低温輸送又は寒冷地における、高周波デバイス等のアンテナの使用ができないという新たな問題が生じる。また、高周波デバイスの分野でも、誘電率異方性Δεがより大きく、駆動温度範囲がより広く、かつ低温下において安定である液晶材料が要求されている。
【0009】
そこで、本発明は、高い屈折率異方性Δnと広い駆動温度範囲とを有し、かつ低温下において安定である、液晶組成物、及びそれを用いた液晶素子又はアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、一般式(i)で表される化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物により上記課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下の一般式(i)で表される化合物を含む、液晶組成物である。
【化1】
(上記一般式(i)中、
i1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよく、
m1は、1又は2の整数を表し、
i1~Ai3は、それぞれ独立して、下記の基(a)~基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)~基(c)中の水素原子はフッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよいが、Ai1~Ai3中の水素原子の少なくとも一つは塩素原子に置換されており、
i1及びZi2は、それぞれ独立して、単結合、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、又は-C(Ria)=N-N=C(Rib)-を表し、この際、Ria及びRibは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表し、
m1が2のときに複数存在するAi1及びZi1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0012】
本発明は、上記液晶組成物を有する液晶層を備えた、液晶素子又はアンテナである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高い屈折率異方性Δnと広い駆動温度範囲とを有し、低温下において安定である液晶組成物を提供することができる。
本発明により、高い屈折率異方性(Δn)と広い駆動温度範囲とを有し、低温下において安定である液晶組成物を有する液晶層を備えた、液晶素子又はアンテナを提供することができる。
本発明により、マイクロ波又はミリ波の電磁波に対してより大きな位相制御を可能とするため、大きな誘電率異方性Δε、高い屈折率異方性Δnを有する液晶材料において、駆動温度範囲が広く、低温下において安定である、液晶組成物、及びそれらを用いた液晶素子又はアンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るアンテナを搭載した車両の概要図の一例である。
図2】本発明に係るアンテナの分解図の一例である。
図3】本発明に係るアンテナ本体の分解図の一例である。
図4】本発明におけるスロットアレイ部の上面図の一例である。
図5】本発明に係るアンテナ本体の投影図の上面図の一例である。
図6図5のアンテナ本体をA-A線で切断した断面図の一形態である。
図7図5のアンテナ本体をA-A線で切断した断面図の別の形態である。
図8】本発明に係るアンテナ本体の投影図を示す上面図の他の一例である。
図9図8のアンテナ本体をC-C線で切断した断面図である。
図10図8のアンテナ本体をB-B線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る液晶組成物は、第一成分として一般式(i)で表わされる化合物を含有する。
【0016】
【化2】
【0017】
上記一般式(i)中、Ri1は、直鎖状の基又は分岐状の基であり、直鎖状の基であることが好ましい。また、Ri1は、炭素原子数1~40の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、好ましくは、炭素原子数2~30の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、より好ましくは、炭素原子数2~19の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、さらに好ましくは、炭素原子数2~10の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、特に好ましくは、炭素原子数2~8の直鎖状のアルキル基を表す。
【0018】
本明細書におけるアルキル基は、特に制限されることは無く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、及び2-エチルヘキシル基等を含み、直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0019】
本明細書におけるハロゲン化アルキル基は、特に制限されることは無く、例えば、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、3-フルオロプロピル、3-クロロプロピル、4-フルオロブチル、4-クロロブチル、5-フルオロペンチル、5-クロロペンチル、6-フルオロヘキシル、6-クロロヘキシル、7-フルオロヘプチル、7-クロロヘプチル、トリクロロメチル基、及びトリフルオロメチル基等を含む。
【0020】
上記一般式(i)のRi1において、当該Ri1中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むアルキレン基又はハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよい。具体的には、Ri1は、炭素原子数1~19であり、かつ直鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~8であり、かつ直鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、又はアルケニルオキシ基がより好ましい。
【0021】
本明細書におけるアルケニル基は、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0022】
【化3】
本明細書におけるアルケニルオキシ基は、式(R6)から式(R10)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0023】
【化4】
本明細書におけるアルコキシ基は、特に制限されることは無く、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、及びヘキソキシ基を含み、直鎖状のアルコキシ基であることが好ましい。
【0024】
i1が結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合において、当該Ri1は、直鎖状の炭素原子数1~5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシ基及び炭素原子数4~5のアルケニル基が好ましい。Ri1が結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合において、直鎖状の炭素原子数1~5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2~5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには、炭素原子及び必要により存在する酸素原子の合計が、5以下であることが好ましい。また、Ri1が結合する環構造がいずれの場合でも、直鎖状であることが好ましい。
【0025】
i1~Ai3はそれぞれ独立して、置換基(S)に置換されてもよい、二価の環式基を表わし、かつAi1~Ai3中の水素原子の少なくとも一つは塩素原子に置換されている。したがって、一般式(i)で表わされる化合物中の環式基の少なくとも1つには塩素原子が存在する。当該環式基としては、基(a)~(c)のいずれかであり、式(a)又は(b)であることがより好ましい。
【0026】
当該置換基(S)としては、フッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0027】
i1~Ai3の具体例としては、以下の(a1)~(a25)で表わされる二価の環式基が挙げられる。
【0028】
【化5】
【化6】
【化7】
【0029】
(上記式中、*は炭素原子又は他の原子と結合する結合手を表わす。)
上記二価の環式基のうち、(a1)~(a3)、(a5)~(a6)、(a9)~(a10)、(a12)~(a25)が好ましく、(a1)~(a3)、(a12)~(a25)がより好ましく、(a1)~(a3)、(a12)~(a18)がさらに好ましい。二価の環式基を好ましい条件にすることにより、熱等の外部刺激に対して高い信頼性を備える。また、二価の環式基を好ましい条件にすることにより、大きな屈折率異方性を得ることができる。
【0030】
液晶性、例えばネマチック液晶性を維持する観点から、Zi1及びZi2はそれぞれ独立して、単結合、-C≡C-、又は-C(Ria)=N-N=C(Rib)-(水素原子、あるいは炭素原子数2、4、6又は8のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基)であることが好ましく、単結合、-C(Ria)=N-N=C(Rib)-(水素原子、あるいは炭素原子数2、4又は6のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基)、又は-C≡C-であることがより好ましい。-C(Ria)=N-N=C(Rib)-中のRia及びRibは、水素原子を表すことが好ましい。Zi1及びZi2が上記条件であると、メソゲンを構成する環構造間の連結基が直線性を確保しやすい。
【0031】
mは、1又は2を表わし、1が好ましい。mが1又は2であると、一般式(i)で表わされる化合物は、3環~4環の液晶化合物に相当し、高い相容性を示す。
【0032】
一般式(i)で表わされる化合物の誘電率異方性(Δε)は、0~35であることが好ましく、3~33であることがより好ましく、4~30であることがさらに好ましい。誘電率異方性が、4~30の範囲であると、その化合物を用いた組成物のΔεは、大きい値を示すため、駆動電圧の低下が可能となり、好ましい。
【0033】
一般式(i)で表わされる化合物の屈折率異方性(Δn)は、0.1~0.7であることが好ましく、0.12~0.65であることがより好ましく、0.15~0.6であることがさらに好ましい。屈折率異方性が、0.15~0.6の範囲であると、その化合物を用いた組成物のΔnは、大きい値を示すため、高周波用途の液晶として好ましい。
【0034】
本発明に係る液晶組成物は、広い液晶相温度範囲(液晶相下限温度と液晶相上限温度の差の絶対値)を有するが、液晶相温度範囲が100℃以上であることが好ましく、130℃以上がより好ましい。また、液晶相上限温度は80℃以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましい。更に、液晶相下限温度は-20℃以下であることが好ましく、-30℃以下がより好ましい。
【0035】
本発明に係る液晶組成物は、20℃における粘度(η)が10から100mPa・sであるが、10から90mPa・sであることが好ましく、10から80mPa・sであることが好ましく、10から70mPa・sであることが好ましく、10から60mPa・sであることが好ましく、10から50mPa・sであることが更に好ましく、10から40mPa・sであることが好ましく、10から30mPa・sであることが特に好ましい。
【0036】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)で表される化合物は単独で使用しても、あるいは2種以上組み合わせて使用してもよい。組み合わせ可能な化合物の種類に特に制限は無いが、誘電率異方性、低温における溶解性、転移温度、複屈折率などの所望の性能に応じて適宜組み合わせて使用する。使用する液晶化合物の種類は、例えば本発明の一つの実施形態としては1種類である。あるいは本発明の別の実施形態では2種類であり、3種類であり、4種類であり、5種類であり、6種類であり、7種類であり、8種類であり、9種類であり、10種類以上である。
【0037】
本発明の液晶組成物の総量に対しての式(i)で表される化合物の好ましい含有量の下限値(質量%)は、1%であり、2%であり、5%であり、8%であり、10%であり、13%であり、15%であり、18%であり、20%であり、22%であり、25%であり、30%であり、40%であり、50%であり、55%であり、60%であり、65%であり、70%であり、75%であり、80%である。又、含有量が多いと析出等の問題を引き起こすため、好ましい含有量の上限値(質量%)は85%であり、75%であり、65%であり、55%であり、45%であり、35%であり、30%であり、28%であり、25%であり、23%であり、20%であり、18%であり、15%であり、13%であり、10%であり、8%であり、5%である。
【0038】
本発明の一般式(i)の好ましい形態は、Ri1が、炭素原子数1~8であり、かつ直鎖状の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、又はアルケニルオキシ基であり、Ai1~Ai3はそれぞれ独立して、上記式(a1)~(a3)又は(a9)であり、Zi1及びZi2はそれぞれ独立して、単結合、-C≡C-、又は-CRia=CRib-(Ria及びRibはそれぞれ独立して、水素原子、あるいは炭素原子数2、4、6又は8のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基)であり、mは、1を表わす。また、一般式(i)で表される化合物の好ましい含有量は、液晶組成物全体(100質量%)に対して、10~80質量%であることが好ましく、15~77質量%であることがより好ましく、20~75質量%であることが特に好ましい。
【0039】
一般式(i)で表される化合物は大きいΔnと高いTni、また良好な溶解性を有し、広い液晶温度範囲や低温安定性等を維持しながら、組成物に非常に大きいΔnを付与できる。
【0040】
本発明における一般式(i)の具体的な構造としては、以下の一般式(i-2-1)~(i-2-64)で表わされる3環の液晶化合物、及び以下の一般式(i-3-1)~(i-3-21)で表わされる4環の液晶化合物からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。当該一般式(i-2-1)~(i-3-21)で表される化合物としては、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に係る液晶組成物は、一般式(i-2-1)~(i-2-65)で表わされる3環の液晶化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物を含有することが好ましい。当該一般式(i-2-1)~(i-2-65)で表される化合物としては、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に係る一般式(i)で表わされる化合物の好適例は、以下の一般式(i-2-1)~(i-2-65)で表わされる3環の液晶化合物は以下の通りである。
【0041】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0042】
(上記一般式(i-2-1)~(i-2-65)中のRi1は、一般式(i)中のRi1と同様である。)
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(i-2-1)~(i-2-65)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(i)の好ましい含有量を適用することができる。
上記3環の液晶化合物のうち、以下の式(i-2-7a)、(i-2-34a)、(i-2-41a)及び(i-2―55a)~(i-2-58a)で表わされる化合物が好ましい。
【化17】
【0043】
(上記式中、R35は炭素原子数1~8のアルキル基、又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、R36は炭素原子数1~8のアルキル基、又は炭素原子数1~8アルコキシル基、又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(i-2-7a)~(i-2-64a)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(i)の好ましい含有量を適用することができる。
【0044】
上記一般式(i-2-1)~(i-2-64)で表わされる3環の液晶化合物の好ましい形態の一例として、以下の一般式(i-2-1.1)~(i-2-64.10)が挙げられる。
【0045】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(i-2-1.1)~(i-2-64.10)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(i)の好ましい含有量を適用することができる。
本発明に係る液晶組成物は、一般式(i-3-1)~(i-3-21)で表わされる4環の液晶化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物を含有することが好ましい。当該一般式(i-3-1)~(i-3-21)で表される化合物としては、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に係る一般式(i)で表わされる化合物の好適例は、以下の一般式(i-3-1)~(i-3-21)で表わされる4環の液晶化合物は以下の通りである。
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【0046】
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(i-2-1)~(i-3-21)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(i)の好ましい含有量を適用することができる。
【0047】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(ii)で表わされる化合物及び一般式(iii)で表わされる化合物からなる群から選択される化合物を1種又は2種以上さらに含有してもよい。
上記一般式(ii)で表わされる化合物の好ましい形態は以下の通りである。
【0048】
【化46】
上記一般式(ii)中、Rii1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表すことが好ましく、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよい。Rii1は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表わすことがより好ましい。
上記一般式(ii)中、Aii1及びAii2は、それぞれ独立して、下記の基(a)又は基(b)のいずれか1種を表わすことが好ましい。
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
上記基(a)又は基(b)中の水素原子は、それぞれシアノ基、ハロゲン原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよい。Aii1及びAii2はそれぞれ独立して、上述した(a1)、(a3)及び(a19)であることがより好ましい。
上記一般式(ii)中、Xii11~Xii13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表す。Xii11~Xii13は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であることがより好ましい。
上記一般式(ii)中、Yii1は、フッ素原子、塩素原子、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はジフルオロメトキシ基を表すことが好ましい。Yii1は、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
上記一般式(ii)中、Zii1及びZii2は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表すことが好ましい。Zii1及びZii2は、それぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-又は-CFO-を表すことがより好ましい。
上記一般式(ii)中、nは、0から2の整数を表すことが好ましく、1又は2がより好ましい。また、上記一般式(ii)中、nが2のときに複数存在するAii1及びZii1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
本発明の液晶組成物の総量に対しての式(ii)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の下限値は、0.9%であり、1.3%であり、2.7%であり、4%であり、5%であり、8%であり、10%であり、11%であり、13%であり、16%であり、19%であり、21%であり、23%である。本発明の液晶組成物中における一般式(ii)の化合物の含有量(質量%)が多いと析出等の問題を引き起こすため、好ましい含有量の上限値は23%であり、20%であり、18%であり、14%であり、13%であり、10%であり、8%であり、5%である。
【0050】
本発明の液晶組成物において、当該組成物全体(100質量)に対する一般式(ii)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の範囲は、2~50%であり、より好ましくは5~40%であり、特に好ましくは10~30%である。
【0051】
上記一般式(iii)で表わされる化合物の好ましい形態は以下の通りである。
【0052】
【化47】
上記一般式(iii)中、Riii1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表すことが好ましく、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよい。Riii1は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表わすことがより好ましい。
上記一般式(iii)中、Aiii1~Aiii3は、それぞれ独立して、下記の基(a)~は基(c)のいずれか1種を表わすことが好ましい。
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)又は基(b)中の水素原子は、それぞれシアノ基、ハロゲン原子、塩素原子、又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよい。Aiii1及びAiii2はそれぞれ独立して、上述した(a1)、(a3)、(a5)、(a10)、(a19)及び(a24)であることがより好ましい。
【0053】
上記一般式(iii)中、Ziii1及びZiii2は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表すことが好ましく、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-又は-CFO-を表すことがより好ましい。
上記一般式(iii)中、lは、0から2の整数を表すことが好ましく、1又は2の整数を表すことがより好ましい。lが2以上のときに複数存在するAiii1及びZiii1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
本発明の液晶組成物の総量に対しての一般式(iii)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の下限値は、0.7%であり、1%であり、2%であり、5%であり、8%であり、10%であり、11%であり、13%であり、16%である。本発明の液晶組成物中における一般式(ii)の化合物の含有量(質量%)が多いと析出等の問題を引き起こすため、好ましい含有量の上限値は23%であり、20%であり、18%であり、14%であり、13%であり、10%であり、8%であり、5%である。
【0055】
本発明の液晶組成物において、当該液晶組成物全体(100質量%)に対する一般式(iii)で表される化合物の好ましい含有量の範囲は2~30%であり、より好ましくは4~25%であり、特に好ましくは6~20%である。
【0056】
本発明において、一般式(ii)及び(iii)で表わされる化合物の具体的な構造を以下説明する。一般式(ii)で表わされる化合物は、以下の一般式(ii.1)~(ii.33)で表わされることが好ましい。
【0057】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
(上記式(ii.1)~(ii.33)中、R36は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、Y35は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表す。)で表される構造が好ましい。
【0058】
本発明において、一般式(iii)で表わされる化合物は、以下の一般式(iii.1)~(iii.9)で表わされることが好ましい。
【0059】
【化52】
(上記式(iii.1)中、R35は炭素原子数1~8のアルキル基、又は炭素原子数1~8アルコキシル基、又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)で表される構造が好ましい。
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(ii.1)~(ii.33)及び一般式(iii.1)~(iii.9)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(iii)の好ましい含有量を適用することができる。
【0060】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(iv)で表わされる化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物をさらに含有することが好ましい。
【0061】
【化53】
【0062】
上記一般式(iv)中、Riv1は、炭素原子数1~40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表すことが好ましく、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されてもよい。
【0063】
上記一般式(iv)中、Aiv1~Aiv3は、それぞれ独立して、下記の基(a)~基(c)のいずれか1種を表わすことが好ましい。
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)~基(c)中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子又は炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはフッ素化アルキル基に置換されていてもよい。
上記一般式(iv)中、Aiv1~Aiv3は、それぞれ独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基が好ましい。
【0064】
上記一般式(iv)中、Ziv1及びZiv2は、それぞれ独立して、単結合、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、又は-C(Riva)=N-N=C(Rivb)-を表し、この際、Ziv2及び0以上2以下存在するZiv1のうち少なくとも1つが-C≡C-を表わし、Riva及びRivbは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表すことが好ましい。
上記一般式(iv)中、Ziv1及びZiv2は、それぞれ独立して、単結合又は-C≡C-が好ましい。また、一般式(iv)で表わされる化合物1分子中には、少なくとも1つの-C≡C-を有することが好ましい。
【0065】
上記一般式(iv)中、m2は、0、1又は2の整数を表すことが好ましい。m2が2のときに複数存在するAiv1及びZiv1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。本発明に係る液晶組成物において、任意成分である一般式(iv)中の記号の説明は以上の通りである。但し、本発明に係る液晶組成物において、一般式(iv)で表わされる化合物のうち、一般式(i)で表わされる化合物を除く。すなわち、本発明に係る液晶組成物において、一般式(iv)で表わされる化合物と、一般式(i)で表わされる化合物とが重複する化合物は、一般式(i)に属する。
【0066】
本発明の液晶組成物の総量に対しての式(iv)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の下限値は、1.7%であり、2%であり、4%であり、4.3%であり、5%であり、5.7%であり、6%である。本発明の液晶組成物中における一般式(v)の化合物の含有量(質量%)が多いと析出等の問題を引き起こすため、好ましい含有量の上限値は23%であり、20%であり、18%であり、14%であり、13%であり、10%であり、8%であり、5%である。本発明の液晶組成物において、一般式(iv)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)は2~20%であり、より好ましくは4~15%であり、特に好ましくは6~12%である。
【0067】
上記一般式(iv)の具体的な構造としては、以下の一般式(iv.1)~(iv.18)で表わされる化合物が挙げられる。
【0068】
【化54】
【化55】
(上記一般式(iv.1)~(iv.18)中、R35は炭素原子数1~8のアルキル基、又は炭素原子数1~8アルコキシル基、又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、R36は炭素原子数1~8のアルキル基、又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表わす。)で表される構造が好ましい。
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(iv.1)~(iv.18)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(iv)の好ましい含有量を適用することができる。
【0069】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(v)から選択される化合物を1種又は2種以上をさらに含有することが好ましい。
【0070】
【化56】
(上記一般式(v)中、
31は、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、-O-又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
31及びM32は、それぞれ独立して、下記の基(a)、基(b)、又は基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、並びに
(c) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、
上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよく、
31及びL32は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、
pは、0、1又は2を表す、
32及び/又はL31がそれぞれ複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
31及びX32は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、
31は、フッ素原子、塩素原子、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はジフルオロメトキシ基を表す。)
本発明における一般式(v)で表わされる化合物は、具体的には、以下の一般式(v-a)で表わされることが好ましい。
【0071】
【化57】
(上記一般式(v-1)中、R31aは炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L31a及びL32aはそれぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、又は-CFO-を表し、M31a及びM32aはそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基又はナフタレン-2,6-ジイル基を表し、X32aは水素原子又はフッ素原子を表し、pは0又は1を表し、Y31aは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表わし、M31a及びM32aに含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよい。)
【0072】
本発明の液晶組成物の総量に対しての式(v)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の下限値は、1.7%であり、2%であり、4%であり、4.3%であり、5%であり、5.7%であり、6%である。本発明の液晶組成物中における一般式(v)の化合物の含有量(質量%)が多いと析出等の問題を引き起こすため、好ましい含有量の上限値は33%であり、30%であり、27%であり、23%であり、20%であり、18%であり、14%であり、13%であり、10%であり、8%であり、5%である。本発明の液晶組成物において、一般式(v)で表される化合物の好ましい含有量の範囲は2~30%であり、より好ましくは4~25%であり、特に好ましくは6~20%である。
本発明における一般式(v)で表わされる化合物の具体的な構造としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0073】
【化58】
【化59】
【化60】
(上記一般式中、R36は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、Y35はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表す。)で表される構造が好ましい。
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(v.1)~(v.20)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(v)の好ましい含有量を適用することができる。
【0074】
また、本発明に係る液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)が2以上の液晶化合物として、以下の一般式(1a)、一般式(1b)で表わされる化合物を含有してもよい。
【0075】
【化61】
(上記一般式(1a)~(1b)中、
11及びR12は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、-O-又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
11、M12、M13、M14、M15、及びM16は、それぞれ独立して、下記の基(a)、基(b)、又は基(c)のいずれか1種を表わし、
(d) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(i) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、並びに
(j) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、
上記の基(d)、基(i)又は基(j)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよく、
11、L12、L13、L14、L15、及びL16は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、
p、q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1又は2を表すが、q+r及びs+tは2以下であり、
12、M13、M15、M16、L11、L13、L14及び/又はL16がそれぞれ複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
11、X12、X13、X14、及びX15は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、
11、及びY12は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はジフルオロメトキシ基を表す。但し、上記一般式(1a)及び(1b)で表わされる化合物は、上記一般式(ii)で表わされる化合物を除く。)
一般式(1a)及び一般式(1b)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましく、一般式(1a)及び一般式(1b)で表される化合物からなる群の含有率の下限値は0質量%であることが好ましく、5質量%であることがより好ましく、16質量%であることが好ましく、上限値は70質量%が好ましく、66質量%が好ましく、58質量%が好ましく、49質量%が更に好ましい。
【0076】
上記一般式(i)~(v)において、選択肢の組み合わせにより形成される構造のうち、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-C≡C-及び-CH=CH-C≡C-は化学的な安定性から好ましくない。またこれら構造中の水素原子がフッ素原子に置き換わったものも同様に好ましくない。また酸素同士が結合する構造、硫黄原子同士が結合する構造及び硫黄原子と酸素原子が結合する構造となることも同様に好ましくない。また窒素原子同士が結合する構造、窒素原子と酸素原子が結合する構造及び窒素原子と硫黄原子が結合する構造も同様に好ましくない。
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)~(ii)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して90~30%であることが好ましく、80~35%であることが好ましく、70~40%であることが好ましい。
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)~(iii)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して95~30%であることが好ましく、85~35%であることが好ましく、80~40%であることが好ましい。
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)~(iv)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して95~30%であることが好ましく、85~35%であることが好ましく、80~40%であることが好ましい。
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)~(v)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して100~40%であることが好ましく、95~45%であることが好まく、90~50%であることが好ましい。
【0077】
本発明に係る液晶組成物は、以下の一般式(L)を含んでもよい。当該一般式(L)で表される化合物を以下に示す。一般式(L)で表される液晶化合物は誘電的にほぼ中性の化合物(誘電率異方性Δεの値が-2~2)に該当する。
【0078】
【化62】
【0079】
(上記一般式(L)中、R21及びR22はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、
21、M22及びM23はお互い独立して
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基及び
(c) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
oは0、1又は2を表し、
21及びL22はお互い独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-を表し、L22が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、M23が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良い。)
また、本発明における一般式(L)で表わされる化合物としては、2以上の芳香族環を有する化合物が好ましい。
【0080】
一般式(L)で表される化合物において、R21及びR22はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されたもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されたものも含む。)が好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から5のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数3から6のアルケニルオキシ基がより好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数1から5のアルコキシ基が特に好ましい。
【0081】
信頼性を重視する場合にはRL1及びRL2はともにアルキル基であることが好ましく、化合物の揮発性を低減させることを重視する場合にはアルコキシ基であることが好ましく、粘性の低下を重視する場合には少なくとも一方はアルケニル基であることが好ましい。
【0082】
分子内に存在するハロゲン原子は0、1、2又は3個が好ましく、0又は1が好ましく、他の液晶分子との相溶性を重視する場合には1が好ましい。
【0083】
21及びR22は、それが結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1~5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシ基及び炭素原子数4~5のアルケニル基が好ましく、それが結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1~5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2~5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0084】
21、M22及びM23はお互い独立してトランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個のCH基が酸素原子に置換されているものを含む)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は窒素原子に置換されているものを含む)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基が好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基又は1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基が特に好ましい。M21、M22及びM23はΔnを大きくすることが求められる場合には芳香族であることが好ましく、応答速度を改善するためには脂肪族であることが好ましく、それぞれ独立してトランス-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を表すことが好ましく、下記の構造を表すことがより好ましく、
【0085】
【化63】
トランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表すことがより好ましい。
【0086】
oは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0087】
21及びL22はお互い独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-が好ましく、単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-又は-CHO-がより好ましく、単結合又は-CHCH-が更に好ましい。
【0088】
上記の選択肢の組み合わせにより形成される構造のうち、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-C≡C-及び-CH=CH-C≡C-は化学的な安定性から好ましくない。またこれら構造中の水素原子がフッ素原子に置き換わったものも同様に好ましくない。また酸素同士が結合する構造、硫黄原子同士が結合する構造及び硫黄原子と酸素原子が結合する構造となることも同様に好ましくない。また窒素原子同士が結合する構造、窒素原子と酸素原子が結合する構造及び窒素原子と硫黄原子が結合する構造も同様に好ましくない。
【0089】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(L)で表される液晶化合物の含有量は、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折率、プロセス適合性、滴下痕、焼き付き、誘電率異方性などの求められる性能に応じて適宜調整する必要がある。
【0090】
本発明に係る液晶組成物に含まれる非重合性液晶化合物の総量に対しての、式(L)で表される化合物の、好ましい含有量の下限値は1質量%であり、上限値は85質量%である。より好ましい含有量の下限値は3質量%であり、上限値は65質量%である。
【0091】
該組成物の粘度を低く保ち、応答速度が速い組成物が必要な場合は上記の下限値が高く上限値が高いことが好ましい。さらに、本発明に係る組成物のTNIを高く保ち、温度安定性の良い組成物が必要な場合は上記の下限値が高く上限値が高いことが好ましい。また、駆動電圧を低く保つために誘電率異方性を大きくしたいときは、上記の下限値を低く上限値が低いことが好ましい。
【0092】
更に詳述すると、一般式(L)は具体的な構造として以下の一般式(L-a)から一般式(L-q)からなる群で表される化合物が好ましい。
【0093】
【化64】
(上記一般式(L-a)~(L-q)中、R23及びR24はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数3~10のアルケニルオキシ基を表す。)
23及びR24はそれぞれ独立して、炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシ基又は炭素数2から10のアルケニル基がより好ましく、炭素数1から5のアルキル基又は炭素数1から10のアルコキシ基が更に好ましい。
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(L-a)~(L-q)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(L)の好ましい含有量を適用することができる。
【0094】
一般式(L-a)から一般式(L-q)で表される化合物中、一般式(L-e)~一般式(L-g)、一般式(L-i)、一般式(L-j)、一般式(L-l)、一般式(L-m)~一般式(L-p)で表される化合物が好ましい。
【0095】
本願発明では一般式(L)で表される化合物を少なくとも1種を含有することが好ましく、1種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましい。
【0096】
本発明に係る液晶組成物は、上記の液晶化合物以外、公知の安定剤、公知の重合性液晶化合物又は重合化合物などの添加剤を使用態様に応じて適宜含んでもよい。
【0097】
上記安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β-ナフチルアミン類、β-ナフトール類、ニトロソ化合物等や下記(AD-1)~(AD-11)等のヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005~1質量%の範囲が好ましく、0.02~0.5質量%が更に好ましく、0.03~0.1質量%が特に好ましい。
【0098】
以下、本発明に係る液晶組成物を用いた液晶素子、より具体的には、アクティブマトリックス方式で駆動する液晶素子、アンテナについて説明する。
【0099】
本発明に係るアンテナは、複数のスロットを備えた第1基板と、前記第1基板と対向し、給電部が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた第1誘電体層と、前記複数のスロットに対応して配置される複数のパッチ電極と、前記パッチ電極が設けられた第3基板と、前記第1基板と前記第3基板との間に設けられた液晶層と、を有し、前記液晶層として、上記一般式(i)で表わされる液晶化合物を含有する。
【0100】
一般式(i)で表わされる液晶化合物を含有する液晶層を利用することにより、大きな誘電率異方性Δε、大きな屈折率異方性Δnを有し、かつネマチック液晶温度範囲が広く、低温下において安定であり、更に熱等の外部刺激に対して高い信頼性を有するアンテナを提供できる。これにより、マイクロ波又はミリ波の電磁波に対してより大きな位相制御を可能とするアンテナを提供できる。
【0101】
以下、図を用いて本発明に係るアンテナについて説明する。
【0102】
図1に示すように、アンテナユニット1が4つ連結されたアンテナ組立体11が車両(自動車)2のルーフ部に取り付けられている。アンテナユニット1は、平面型アンテナであり、ルーフ部に取り付けられていることから、通信衛星方向に対してアンテナユニット1が常に向けられている。これにより、双方で送受信が可能な衛星通信を行うことができる。
【0103】
なお、本明細書における「アンテナ」とは、アンテナユニット1又はアンテナユニット1を複数連結したアンテナ組立体11を含む。
【0104】
本発明に係るアンテナは、衛星通信に使用されるKa帯周波数又はK帯周波数もしくはKu帯周波数において動作することが好ましい。
【0105】
次にアンテナユニット1の構成要素の実施形態の一例を図2に示す。図2は、図1で示すアンテナユニット1の分解図である。具体的には、アンテナユニット1は、アンテナ本体10と、アンテナ本体10を制御する制御板4と、アンテナ本体10及び制御板4とを収容可能な凹部を備えたケース3と、ケース3を封止する上蓋5とを有する構成である。
【0106】
制御板4には、送信機及び/又は受信機が設けられている。送信機は、音声又は画像等のデータといった信号源からの情報を、情報源符号化処理により、例えば、音声符号化又は画像符号化等され、伝送路符号化処理で誤り訂正符号した後、変調されて電波として伝送する機構を有する。一方、受信機は、到来電波を変調して、伝送路復号処理により誤り訂正した後、情報源復号処理により、例えば音声復号又は画像復号を経て、音声又は画像等のデータといった情報へ変換する機構を有する。また、制御板4は、公知のマイクロコンピュータであるCPU、RAM、ROM等により構成されており、アンテナ本体1、送信機及び/又は受信機の各部の動作を統轄的に制御する。制御板4が備えるCPU又はROMには予め格納された各種プログラムをRAMに読み出して実行することにより、所定の処理が実行される。制御板4は、各種の設定情報又は制御プログラムを記憶する記憶部、アンテナ本体1内の液晶層に印加する電圧量及び電圧方向に関する各種演算、電波の送信に関する各種演算、並びに/又は電波の受信における各種演算を実行する演算部、受信又は送信電波の検出あるいは液晶層への印加電圧の検出を行う検出部等の機能を備えている。
【0107】
図2では、円盤型のアンテナ本体1を収容可能なケース3の一例として、6角柱型のケース3及び上蓋5を記載しているが、アンテナ本体1の形状に応じてケース3及び上蓋5を、円柱状、八角柱状、三角柱状など公知の形状に適宜変更できる。
【0108】
アンテナ本体10の構成を説明するために、図3~10を用いて以下説明する。図3は、アンテナ本体10の構成要素を分解した概略図である。
【0109】
図3に示すように、アンテナ本体10は、スロットアレイ部6と、パッチアレイ部7とを備えている。そして、スロットアレイ部6には、円板状の導体P面上にスロット(切り欠き部)8が複数形成されており、スロットアレイ部6の中心部の内部に給電部12が設けられている。また、パッチアレイ部7には、一例として長さLであり幅Wである方形のパッチ9が円板体Qに複数形成されている。そして、アンテナ本体10は、スロット8が複数形成された円板状の導体Pであるスロットアレイ部6と、パッチが複数形成された円板状のパッチアレイ部7とを有し、かつ当該円板状の導体Pの表面上に形成されたそれぞれのスロット8対して、パッチ9が対峙して配置されるよう、パッチアレイ部7とスロットアレイ部6とが貼り合わされた構造を有する。
【0110】
スロットアレイ部6は、円板状の導体Q面上に空いた切り欠き部(以下、スロット8)を放射素子(又は入射素子)として用いるアンテナ部である。そして、スロットアレイ部6は、スロット8と円板状の導体Qの中心部に設けられた給電部12とを有する。一般的には、スロットアレイ部6は、伝送線路の先端で直接励振する、あるいはスロット背面に設けた空洞を介して励振する機構を有する。そして、スロットアレイ部6は、地板を利用したアンテナ又はマイクロストリップ線路等からスロットを介したパッチアンテナへの給電等に用いることができる。図3では、スロットアレイ部6の一例として、ラジアルラインスロットアレイの形態を記載しているが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0111】
図3におけるスロットアレイ部6の上面図を図4に示す。以下、図4を用いてスロットアレイ部6を説明する。スロットアレイ部6は、その中心部に設けられた同軸線により給電する構造を備えている。そのため、図4に示すスロットアレイ部6の中心部には給電部12が設けられている。また、スロットアレイ部6は、円板状の導体Pの表面上に、一組のスロット8(以下スロットペアと称する)が複数形成されている。スロットペア8は、2つの長方形状の切り欠き部が“ハ”の字に配置された構造を備えている。より詳細には、2つの直方体状のスロット8が直交するように配置されており、スロットペア8の一方のスロットが他方のスロットに対して1/4波長離間して配置されている。これによりアンテナの方位角によって異なる回転方向を持つ円偏波を送受信できる。
【0112】
なお、本明細書では、2つのスロット8をスロットペア8と称し、1つのスロット8を単にスロット8と称し、スロット及びスロットペアの総称をスロット(ペア)8と称する。
【0113】
スロットペア8は、円板状の導体基板Pの中心部から放射方向外方に向かってらせん状に複数形成されている。そして、スロットペア8は、らせんに沿って隣接するスロットペア8間の距離がいずれも一定となるよう円盤型の基板表面に形成されている。これにより、スロットアレイ部6の正面で位相が揃って電磁界が強め合うことができ、正面にペンシルビームを形成することができる。
【0114】
なお、図3及び4では、スロット8の形状の一例を直方体の形状として示しているが、本発明におけるスロット8の形状は、直方体に限定されず、円径、楕円形、多角形など公知の形状を採用できる。また、図3及び4では、スロット8の一例として、スロットペアの態様を示しているが、本発明におけるスロット8は、スロットペアに限定されることはない。さらには、円板状の導体基板Pの表面におけるスロット8の配置をらせん状の例を示しているが、スロット8の配置はらせん状に限定されることはなく、スロット8を例えば後述の図8に示すような同心円状に配置してもよい。
【0115】
本発明における給電部12は、電磁波を受信する及び/又は電磁波を放射する機能を有する。そして、本発明における給電部12は、放射素子又は入射素子であるパッチ9で電波を捕らえて発生した高周波電力を受信機に伝送する部分、あるいは高周波電力を供給するため放射素子と給電線とを接続する部分であれば、特に制限されることはなく、公知の給電部及び給電線を利用することができる。図3及び図4では、同軸給電部を一例として示している。
【0116】
パッチアレイ部7は、図3に示すように、長さL、幅Wの方形状のパッチ9を複数有する円板体Qと、スロットアレイ部6との間に充填された液晶層(図示せず)と、を備えている。本実施形態におけるパッチアレイ部7は、いわゆるマイクロストリップアンテナの構成であり、長さLが1/2波長の整数倍に一致する周波数で共振する共振器である。
【0117】
なお、図3では、パッチ9の一例として、長さL、幅Wの方形状のパッチ9を示しているが、パッチ9の形状は、四角形に限定されることはなく、円状のパッチ9であってもよい。図5に本発明の他の実施形態として、円状のパッチ9の実施形態を示す。
【0118】
図5は、本発明におけるアンテナ本体10の上面図であり、より詳細には、アンテナ本体10をパッチアレイ部7から見た場合であって、パッチ9、給電部12、スロットペア8を円板体Qの主面に対して垂直投影した図である。そのため、パッチ9、給電部12、及びスロットペア8を破線で表示している。また、パッチ9の形状が円状である場合、一般的には、TM11モードと呼ばれる電磁界分布で動作させることができる。図5に示す通り、パッチ9の投影体と、スロットペア8の投影体とが重なっていることから、円板状の導体Pの表面上に形成されたそれぞれのスロット8に対して、円板体Qに設けられたパッチ9が対峙して配置される状態が理解できる。このようにそれぞれのスロット8に対して、それぞれのパッチ9が対応して配置される構成を利用することで、電磁結合給電方式によりスロット8からパッチ9へ給電する、あるいは、パッチ9からスロット8へ到来電波を伝播することができる。そのため、電波の送信及び/又は受信が可能なアンテナを提供することができる。
【0119】
一般には、同軸線等の一般的な伝送線路又は平面型伝送線路を用いてパッチアレイ部7の放射素子(例えば、パッチ9)を給電する方法は、直結給電方式及び電磁結合給電方式の2種類に大別される。そのため、本発明における給電方式としては、伝送線路を直接、パッチ9(放射素子)に接続することで放射素子を励振する方法である直結給電方式と、伝送線路とパッチ電極(放射素子)とを直接接続することなく、終端開放又は短絡とした給電線路の周囲に生じる電磁界によりパッチ電極(放射素子)を励振する方法である電磁結合給電方式との2つが挙げられる。本発明では、電磁結合給電方式の態様を示している。
【0120】
本実施形態では、(同軸)給電点12による給電線路は終端開放であるため、当該給電線路の終端が節に一致する電流定在波が生じる。これにより、当該給電線路((同軸)給電点12)を取り巻くような磁界が発生し、この磁界がスロット8へ入射することによりスロット(ペア)8が励振される。そして、スロット(ペア)8の励振により生じた磁界がパッチ9に入射することによってパッチ9が励振される。励振強度が最大になるのはスロット8に入射する磁界が最大のときであるため、給電線路((同軸)給電点12)から発生する磁界が最大となる位置(電流定在波の腹)にスロット(ペア)8を形成することが好ましい。
【0121】
本発明に係るアンテナの好適な態様は、ラジアルスロットラインアレイと、パッチアンテナアレイとを組み合わせた構成である。
【0122】
次に、図5に示すアンテナ本体10の断面図である図6を用いて、アンテナ本体10の実施形態を説明する。図6は、アンテナの構成を示す概略図であることはいうまでもない。
【0123】
図6に示すように、アンテナ本体10は、円板状の第2基板14と、複数のスロット(ペア)8が中心部から放射方向外方に向かって形成された、円板状の第1基板13(円板状の導体Pに対応する。スロットアレイ基板とも称する)と、第2基板14及び第1基板13の間に設けられた第1誘電体層17と、円板状の第1基板13及び円板状の第2基板14の中心部に設けられた給電部12と、円板状の第3基板15(円板体Qに対応する。パッチ基板とも称する。)と、第3基板15に取り付けられたパッチ9(放射素子又は入射素子)と、第3基板15及び第1基板13の間に設けられた液晶層16とを有する。また、給電部12は給電線12aを介して、制御基板に設けられた送信機及び/又は受信機と電気的に接続されている。そして、それぞれのスロットペア8に対してそれぞれのパッチ9が対応している。
【0124】
ここでいう「(それぞれ)スロットペア8に対して(それぞれ)パッチ9が対応している」とは、上述した図5の説明の通り、第2基板14の主面に対してパッチ9を垂直投影した投影面がスロット(ペア)8と重なることをいう。換言すると、第3基板15の主面に対してスロット(ペア)8を垂直投影した投影面がパッチ9と重なることをいう。
【0125】
また、第1基板13、第2基板14及び第3基板15は、同一の面積を有する円板体であることが好ましい。
【0126】
図6において、(同軸)給電部12により給電された電波(矢印)が円筒波になって第1誘電体層17内を放射方向外方へ伝播する間に、スロット(ペア)8から液晶層16へと伝送される様子を記している。そして、スロット(ペア)8は、図4に示したように、いわゆる“ハ”の字型の直交する2つのスロットを1/4波長ずらして配置されていると、円偏波を発生することができる。上述したように、電磁結合給電方式により、スロット(ペア)8が励振されることによってスロット(ペア)8から生じた磁界が、パッチ9に入射してパッチ9が給電励振される。その結果、パッチ9は指向性の高い電波を放射することができる。
【0127】
一方、到来電波を受信する場合は、送受可逆の定理により、上記とは逆にパッチ9が到来電波を受信した後、当該パッチ9の直下に設けられたスロット(ペア)8を介して給電点12に到来電波が伝播される。
【0128】
円偏波は、直線偏波とは異なり、時間経過とともに電界方向が回転する電波であり、GPS又はETCで使用される右旋円偏波と、衛星ラジオ放送等で使用される左旋円偏波とに分類され、本発明に係るアンテナは、いずれの偏波であっても受信することができる。
【0129】
パッチ9と第1基板13との間の液晶層16に電圧を印加することにより液晶層16の液晶分子の配向方向を変えることができる。その結果、液晶層16の誘電率が変わるためスロット(ペア)8の静電容量が変化し、結果的にはスロット(ペア)8のリアクタンス、及び共振周波数を制御することができる。換言すると、液晶層16の誘電率を制御することにより、スロット8のリアクタンス、及び共振周波数を調節できるため、スロット(ペア)8及びパッチ9の励振の調節による各パッチ9への給電を制御することができる。これにより、液晶層16を介する放射電波の調節が可能となる。そのため、例えば、TFTなど液晶層16に印加する電圧を調節する印加電圧調節手段を設けてもよい。また、液晶層16の液晶分子の配向方向を変えることにより屈折率が変化し、その結果として液晶層16を透過する電磁波の位相がずれて、その総合的な結果としてフェーズドアレイ制御が可能となる。
第1基板13及び第2基板14の材料は、銅などの導体であれば特に制限されることはない。また、第3基板15の材料は特に制限されることはなく、使用態様に応じて、ガラス基板、アクリル基板、セラミック(アルミナ)、シリコン、ガラスクロステフロン(PTFE)等の公知の材料を使用することができる。第1誘電体17の材料は、所望の比誘電率に応じて適宜公知の材料を選択することができ、真空であってもよい。さらに、パッチ9の材料は、銅、銀などの導体であれば特に制限されることはない。
【0130】
次に、図7を用いて、アンテナ本体10の他の実施形態を説明する。図7において示す実施形態は、アンテナ本体10のスロットアレイ部6の部分が図6で示す実施形態とは異なる態様である。
【0131】
図7において、アンテナ本体10は、一方の表面に複数のスロット(ペア)8が形成された、中空体の第1基板13と、当該中空体の第1基板13の内部に収容された、円板状の第2基板14、第1誘電体層17、及び給電部12と、円板状の第3基板15と、第3基板15に取り付けられたパッチ9と、第3基板15及び第1基板13の間に設けられた液晶層16とを有し、給電点12は、複数のスロット(ペア)8が形成されていない他方の第1基板13の表面と第2基板14との間に設けられ、かつ第1基板13及び円板状の第2基板14の中心部に設けられている。また、給電部12は給電線12aを介して、制御基板に設けられた送信機及び/又は受信機と電気的に接続されている。そして、それぞれのスロットペア8に対してそれぞれのパッチ9が対応している。また、図7において、中空体の第1基板13の両側面部は、中空体の外方に突出しており、具体的には、水平方向に対して45°の傾斜面を有する。
【0132】
図7において示すように、(同軸)給電部12により給電された電波(矢印)が円筒波になって第1誘電体層17内を放射方向外方へ伝播する。そして、伝播した円筒波が中空体の第1基板13の両側面部で反射されることにより、第2基板14を回り込んだ円筒波が、円板状の第1基板13の外周から中心に向かう進行波(矢印)に変換されて第1誘電体層17内を伝播する。その際、スロット(ペア)8から液晶層16へ進行波が伝送される。これにより、図6で示した実施形態と同様にパッチ9が励振されて、指向性の高い電波を放射することができる。
【0133】
一方、到来電波を受信する場合も同様に、パッチ9が到来電波を受信した後、当該パッチ9の直下に設けられたスロット(ペア)8を介して給電点12に到来電波が伝播する。
【0134】
次に、図8図10を用いて、アンテナ本体10の別の実施形態について説明する。上述した図5図7のアンテナ本体10の実施形態では、第1基板13と第3基板15との間に液晶層16が一様に設けられたアンテナ本体10の構成について説明した。一方、図8図10の実施形態では、パッチ9とスロット8とそれぞれ配置された空間内(以下、密封領域20)に液晶層16が充填されたアンテナ本体10の構成について説明する。
【0135】
図8は、本発明に係るアンテナ本体10の実施形態の一例を示す上面図である。より詳細には、図8は、アンテナ本体10をパッチアレイ部7から見た場合であって、パッチ9、給電部12、スロット8を円板体Qの主面に対して垂直投影した図である。そのため、図5と同様に、パッチ9、給電部12、及びスロット8を破線で表示している。図8では、方形状のパッチ9と、1つの直方体状のスロット8とが密封領域20にそれぞれ対応して配置されている。また、図8に示す通り、パッチ9の投影体と、スロット8の投影体とが重なっていることから、パッチ9の直下にスロット8が形成されている。これにより、図8で示すアンテナ本体10の実施形態は、電磁結合給電方式によりスロット8からパッチ9へ給電する、あるいはパッチ9からスロット8へ到来電波を伝播することができる。そのため、電波の送信及び/又は受信が可能なアンテナを提供することができる。
【0136】
また、図8で示すように、本実施形態において、パッチ9及びスロット8は、円板体Qの中心から円板体Qの外周方向に向かって、同心円状に配置されている。そのため、同軸モード給電により、円錐ビームが出るため、円板体Qの正面で位相が揃って電磁界が強め合うことができる。
【0137】
次に、図8に示すアンテナ本体10の断面図である図9を用いて、アンテナ本体10の実施形態を説明する。なお、図9は、アンテナの構成を示す概略図であることは言うまでもない。
【0138】
図9に示すように、アンテナ本体10は、円板状の第2基板14と、複数のスロット8が中心部から放射方向外方に向かって同心軸状に形成された、円板状の第1基板13と、第2基板14側の第1基板13表面に設けられたバッファー層22と、バッファー層22と第2基板14との間に設けられた第1誘電体層17と、円板状の第1基板13及び円板状の第2基板14の中心部に設けられ、かつ第1誘電体層17と接触するよう設けられた給電部12と、円板状の第3基板15と、第3基板15に取り付けられたパッチ9(放射素子又は入射素子)と、第3基板15及び第1基板13の間のシール壁24によって隔離され、かつパッチ9が設けられた複数の密封領域20内をパッチ9と接触するように充填された液晶層16と、を有する。また、給電部12は給電線12aを介して、制御基板に設けられた送信機及び/又は受信機と電気的に接続されている。そして、それぞれのスロット8に対してそれぞれのパッチ9が対応しており、各密封領域20内には、少なくとも1つのパッチ9と、少なくとも1つのスロット8と、液晶層16とが存在しており、複数の密封領域20のそれぞれはシール壁21,23,24を介して隔離されている。
【0139】
図9には示されていないが、必要により各密封領域20内に液晶層16の電圧を制御するTFT(薄膜トランジスタ)を例えば、第1基板13上に設けてもよい。これにより、液晶層16の電圧の印加をアクティブ方式で制御することができる。また、必要により、各密封領域20内に液晶層16を構成する液晶分子の配向方向を固定するために配向膜を設けてもよい。上記配向膜としては、液晶分子の垂直方向へ配向を容易にするホメオトロピック配向膜又は液晶分子の水平方向へ配向を容易にするホモジニアス配向膜を第1基板13と液晶層16との間に設けてもよい。例えば、ポリイミド配向膜、光配向膜等が挙げられる。
【0140】
次に、図8に示すアンテナ本体10のB-B線で切断した断面図である図10を用いて、本実施形態における密封領域20を説明する。なお、図10は、密封領域20を示す概略図であることは言うまでもない。
【0141】
図10に示すように、密封領域20は、シール壁24と、バッファー層22及び第1基板13と第3基板15とによって、上下四方囲まれた密封空間であり、内部には少なくとも1つのパッチ9と、少なくとも1つのスロット8とが対峙するよう同一の密封空間内に設けられ、かつ液晶層16が充填されている。
【0142】
本実施形態において、シール壁24は、公知の絶縁体などから形成されていてもよい。また、バッファー層22は、公知の誘電体材料などから形成されていてもよい。
【0143】
図10には示していないが、必要により密封領域20内に液晶層16の電圧を制御するTFT(薄膜トランジスタ)を、例えば、第1基板13上に設けてもよい。これにより、液晶層16の電圧の印加をアクティブ方式で制御することができる。当該アクティブ方式よる駆動方法についてより詳細に説明すると、例えば、パッチ9を共通電極とし、かつ第1基板13を画素電極として、第1基板13上に形成されたTFTによりパッチ9と第1基板13との間の電圧を制御して液晶層16の液晶分子の配向を制御する方法、あるいは第1基板13を画素電極とし、かつ第1基板13上に電極層及びTFTを形成して、パッチ9と第1基板13との間の電圧を制御して液晶層16の液晶分子の配向を制御する方法、さらには第1基板13上に櫛歯電極及びTFTを設けて、当該TFTにより液晶層16の液晶分子の配向を制御する方法等が挙げられる。なお、液晶層16の電圧の印加をアクティブ方式で制御する方法は上記方法に限定されることはない。
【0144】
また、この際、各密封領域20内に液晶層16を構成する液晶分子の配向方向を固定するために配向膜を設けてもよい。上記配向膜としては、液晶分子の垂直方向へ配向を容易にするホメオトロピック配向膜又は液晶分子の水平方向へ配向を容易にするホモジニアス配向膜を第1基板13と液晶層16との間に設けてもよい。
【0145】
液晶層16を同調させるために、パッチ9と第1基板13との間の液晶層16に印加する電圧を変調してもよい。例えば上述したように、液晶層16への印加電圧がアクティブ方式を用いて制御されることにより、スロット8の静電容量が変化し、結果的にはスロット8のリアクタンス、及び共振周波数を制御することができる。スロット8の共振周波数は、線路等を伝播する電波から放射されるエネルギーに対して相関関係を有する。そのため、スロット8の共振周波数を調整することにより、スロット8が給電部12からの円筒波エネルギーと実質的に結合しないようにする、あるいは円筒波エネルギーと結合し、自由空間に放射する。このような、スロット8のリアクタンス及び共振周波数の制御は、複数形成されている密封領域20のそれぞれで行うことができる。換言すると、液晶層16の誘電率を制御することにより、各密封空間20内のパッチ9への給電をTFTにより制御することができる。そのため、電波を送信するパッチ9と電波を送信しないパッチとを制御することができるため、液晶層16を介する放射電波の送信及び受信の調節が可能となる。
【実施例0146】
実施例に記載のネマチック液晶組成物を製作し、各種物性値を測定した。以下の実施例及び比較例の組成物は各化合物を表中の割合で含有し、含有量は「質量%」で記載した。実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
【0147】
【化65】
以下の実施例において、特に断りがない限り、トランス体を表す。
【0148】
【表1】
【0149】
(物性値)
TNI(℃):組成物がネマチック相から等方相へ転移する温度(Tni)
Δn :ホスト液晶組成物の25℃、589nmにおける屈折率異方性
【0150】
(実施例1、2及び比較例1)
下記表2に示した液晶化合物を調製し、ネマチック液晶組成物を製作して各種物性値を測定した。実施例1、2は、比較例1の末端がNCSでフッ素置換された3環の化合物において、フッ素を塩素に置換した化合物、又はフッ素を塩素に置換し、アルキル基をアルコキシ基に置換した化合物(一般式(i)で表される化合物)を30%用いている。
【0151】
可視領域のΔnは、数十GHz帯のΔεと相関し、Δnが高いほどGHz帯の誘電率の変化を大きくすることが出来るため、アンテナ用の液晶として好ましい。以下の表2に示す実験結果から、実施例1、2は、比較例1に比べ、Δnがほぼ同等であることが判った。またTniもほぼ同等であることが判った。
【0152】
実施例1、2の液晶組成物と比較例1の液晶組成物とで低温保存安定性を比較したところ、比較例1の液晶組成物は-20℃で240時間後に析出が見られた。それに対して実施例1、2の液晶組成物は240時間経過時点でもネマチック液晶相を維持しており、低温保存安定性に優れることが確認された。
【0153】
【表2】
【0154】
(実施例3、4、比較例2)
下記表3に示した液晶化合物を調製し、ネマチック液晶組成物を製作して各種物性値を測定した。実施例3、4は、比較例2の末端がNCSでフッ素置換された3環の化合物において、フッ素を塩素に置換した化合物、又はフッ素を塩素に置換し、アルキル基をアルコキシ基に置換した化合物(一般式(i)で表される化合物)を24%用いている。
【0155】
可視領域のΔnは、数十GHz帯のΔεと相関し、Δnが高いほどGHz帯の誘電率の変化を大きくすることが出来るため、アンテナ用の液晶として好ましい。以下の表3に示す実験結果から、実施例3、4は、比較例2に比べ、Δnがほぼ同等であり、またTniもほぼ同等であることが判った。
【0156】
実施例3、4の液晶組成物と比較例2の液晶組成物とで低温保存安定性を比較したところ、比較例2の液晶組成物は-20℃で240時間後に析出が見られた。それに対して、実施例3、4の液晶組成物は240時間経過時点でもネマチック液晶相を維持しており、低温保存安定性に優れることが確認された。
【0157】
【表3】
【0158】
(実施例5、比較例3)
下記表4に示した液晶化合物を調製し、ネマチック液晶組成物を製作して各種物性値を測定した。実施例5は、比較例3の末端がNCSでフッ素置換された3環の化合物において、フッ素を塩素に置換した化合物、又はフッ素を塩素に置換し、アルキル基をアルコキシ基に置換した化合物(一般式(i)で表される化合物)を24%用いている。
【0159】
可視領域のΔnは、数十GHz帯のΔεと相関し、Δnが高いほどGHz帯の誘電率の変化を大きくすることが出来るため、アンテナ用の液晶として好ましい。以下の表4に示す実験結果から、実施例5は、比較例3に比べ、Δnがほぼ同等であり、またTniもほぼ同等であることが判った。
【0160】
実施例5の液晶組成物と比較例3の液晶組成物とで低温保存安定性を比較したところ、比較例3の液晶組成物は-20℃で240時間後に析出が見られた。それに対し、実施例5の液晶組成物は240時間経過時点でも液晶相を維持しており、低温保存安定性に優れることが確認された。
【0161】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明によれば、低温保存安定性を長期間維持する高いΔnを有する液晶組成物を提供することを目的とする。そのため、高周波デバイス、マイクロ波デバイス又はアンテナ用の液晶材料に利用することができる。
【0163】
本発明によれば、低温保存安定性を長期間維持する高いΔnを有する液晶組成物を備えたアンテナを提供することを目的とする。
【符号の説明】
【0164】
1:アンテナユニット
2:車両
3:ケース
4:制御板
5:上蓋
6:スロットアレイ部
7:パッチアレイ部
8:スロット
9:パッチ
10:アンテナ本体
11:アンテナ組立体
12:給電部
12a:給電線
13:第1基板
14:第2基板
15:第3基板
16:液晶層
17:第1誘電体層
20:密封領域
21,23,24:シール壁
22:バッファー層
P:導体
Q:円板体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10