(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174388
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】回収重合溶媒精製剤及びそれを用いた回収重合溶媒の精製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20221116BHJP
C01B 39/24 20060101ALI20221116BHJP
C01B 39/38 20060101ALI20221116BHJP
C01B 39/00 20060101ALI20221116BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B01J20/18 B
C01B39/24
C01B39/38
C01B39/00
B01J20/18 D
B01D15/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080147
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加地 栄一
(72)【発明者】
【氏名】若林 保武
(72)【発明者】
【氏名】曽根 誠
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4D017AA04
4D017BA20
4D017CA05
4D017CB10
4D017DA01
4D017EA01
4G066AA20D
4G066AA22D
4G066AA61B
4G066AA62B
4G066AA63D
4G066BA09
4G066DA10
4G073BA63
4G073CZ05
4G073CZ13
4G073CZ25
4G073GA40
4G073UA06
4G073UB39
(57)【要約】
【課題】 重合に使用した回収重合溶媒中に存在する影響物質、不純物を効率よく除去することが可能となる精製剤及びそれを用いた回収重合溶媒の精製方法を提供する。
【解決手段】 水素陽イオン型ベータ型ゼオライト、水素陽イオン型ZSM-5型ゼオライト及び水素陽イオン型Y型ゼオライトからなる群より選択されるハイシリカゼオライトを含む回収重合溶媒精製剤およびそれを用いた回収重合溶媒の精製方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素陽イオン型ベータ型ゼオライト、水素陽イオン型ZSM-5型ゼオライト及び水素陽イオン型Y型ゼオライトからなる群より選択されるハイシリカゼオライトを含むことを特徴とする回収重合溶媒精製剤。
【請求項2】
ハイシリカゼオライトが、SiO2/Al2O3モル比5~10であり、ペレット形状を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の回収重合溶媒精製剤。
【請求項3】
さらに、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ及び粘土よりなる群より選択されるバインダーを含み、ペレット形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の回収重合溶媒精製剤。
【請求項4】
ハイシリカゼオライトが、遷移金属置換ゼオライトであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の回収重合溶媒精製剤。
【請求項5】
チグラー・ナッタ触媒の存在下、オレフィンのスラリー重合を行った際の回収重合溶媒の精製剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の回収重合溶媒精製剤。
【請求項6】
オレフィン重合反応後の回収重合溶媒を水素陽イオン型ベータ型ゼオライト、水素陽イオン型ZSM-5型ゼオライト及び水素陽イオン型Y型ゼオライトからなる群より選択されるハイシリカゼオライトで接触処理することを特徴とする回収重合溶媒の精製方法。
【請求項7】
オレフィン重合反応が、少なくともチタン,マグネシウムおよびハロゲンを含有する固体触媒の存在下、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサンメチルシクロペンタンからなる群より選択される重合溶媒中でオレフィンをスラリー重合する反応であることを特徴とする請求項6に記載の回収重合溶媒の精製方法。
【請求項8】
温度25~50℃、時間1秒~24時間の接触条件にて行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の回収重合溶媒の精製方法。
【請求項9】
接触処理をフローモードで行うことを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の回収重合溶媒の精製方法。
【請求項10】
重合溶剤の脱水処理を行った後に、接触処理を行うことを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の回収重合溶媒の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回収重合溶媒精製剤及びそれを用いた回収重合溶媒の精製方法に関するものであり、特に詳しくはチタン、マグネシウムおよびハロゲンを含有する固体触媒の存在下でオレフィンのスラリー重合に使用した回収重合溶媒であっても、その中に存在する影響物質・不純物を効率よく除去することのできる回収重合溶媒精製剤及びそれを用いた回収重合溶媒の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン、マグネシウムおよびハロゲンを含有する固体触媒である、いわゆるチグラー・ナッタ触媒やメタロセン系触媒などの重合触媒を用いて、重合溶媒中でオレフィンをスラリー重合する方法は広く行われている。工業的にスラリー重合を行う場合、コストおよび廃棄物量低減の観点から、生成ポリマーを分離した後の溶媒は回収され、重合に再利用することが一般的である。この生成ポリマーが分離された回収重合溶媒は、重合反応の原料残余、副生成物および触媒の分解物などの不純物を含み、これらは重合反応に様々な悪影響を与える影響物質となることが懸念されるため、一部のケースを除いてそのまま使用することは避けられている。
【0003】
すなわち、重合溶媒の精製は重合反応の制御に重要な意味を持ち、ポリマーメーカーは独自の精製技術を駆使して、重合反応への影響を低く抑える努力を行っている。近年、重合触媒の高活性化に伴う触媒使用量の低減が進み、また、より高付加価値ポリマー製造のためのメタロセン系触媒と従来のチグラー・ナッタ触媒とを併産(スイング運転)する形態が増えてきている。しかしながら、従来の精製法にて回収された溶媒では、高活性である反面、不純物耐性の低いメタロセン系触媒の性能を低下する状況となり易く、より高度の精製が可能な溶媒回収方法の開発が望まれていた。
【0004】
そして、溶媒に含まれる水分、あるいはアルキルハライドを除去精製する目的で、ゼオライトを使用することが提案されており、例えば、チグラー系またはワッカー系触媒を用いα-オレフィンの重合で得られる生成スラリーから回収した溶媒を、8Å以上の細孔を有する合成ゼオライト、好ましくモレキュラーシーブス10X、モレキュラーシーブス13Xで処理する方法(例えば特許文献1参照。)、また、ゼオライトのナトリウム陽イオンを鉄などの遷移金属イオンに交換することで、高い溶媒精製効果を得る方法(例えば特許文献2参照。)、更に、チグラー・ナッタ触媒の存在下にα-オレフィンをスラリー重合して得られるスラリーから分離された溶媒を、細孔径の異なる2種類のゼオライト、好ましくはモレキュラーシーブス10Xとモレキュラーシーブス3Aの組合せで接触処理することにより、従来除去できなかった微量の重合阻害不純物を除去する方法(例えば特許文献3参照)、等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭57-56924号
【特許文献2】特公平1-58202号
【特許文献3】特公平6-17405号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3のいずれの提案も、精製処理された溶媒をチグラー・ナッタ触媒のスラリー重合に再利用するものであり、例えばメタロセン系触媒に代表される高活性・高精密重合触媒の適用性には検討のなされていないものであり、本発明者らの検討によれば、メタロセン系触媒等に適用した際には活性の低下等が観測されるものであった。
【0007】
そこで、従来のチグラー・ナッタ触媒によるポリオレフィンと高活性・高精密重合を可能とするメタロセン系触媒に代表される高性能触媒によるポリオレフィンのスイング運転においても影響物質・不純物を効率よく除去することを可能とする回収重合溶媒精製剤、それを用いた精製方法の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは回収重合溶媒精製への高い要求に対応できる方法の確立を目指して検討を進め、特定の水素陽イオン型ハイシリカゼオライトを含む回収重合溶媒精製剤が、回収重合溶媒を効率よく精製することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、水素陽イオン型ベータ型ゼオライト、水素陽イオン型ZSM-5型ゼオライト及び水素陽イオン型Y型ゼオライトからなる群より選択されるハイシリカゼオライトを含むことを特徴とする回収重合溶媒精製剤およびそれを用いた回収重合溶媒の精製方法に関するものである。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の回収重合溶媒精製剤は、水素陽イオン型ベータ型ゼオライト、水素陽イオン型ZSM-5型ゼオライト及び水素陽イオン型Y型ゼオライトからなる群より選択されるハイシリカゼオライトを含むものである。ここで、ゼオライトは結晶性アルミノケイ酸塩の総称で、一般式Me2/XO・Al2O3・mSiO2・nH2O(式中、Meはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示し、XはMeの原子価を示す)で表わされる化学組成を有し、またX線回折により識別することのできる独特の結晶構造を有するものである。このようなゼオライトの中でも、水素陽イオン型ベータ型ゼオライト、水素陽イオン型ZSM-5型ゼオライト、水素陽イオン型Y型ゼオライトに属するハイシリカゼオライト、特に水素陽イオン型Y型ゼオライトが、回収重合溶媒の精製に優れた性能を発揮するものであり、水素陽イオン型以外のもの、ベータ型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、Y型ゼオライト以外の(ハイシリカ)ゼオライトは回収重合溶媒の精製が不十分なものとなる。
【0012】
該ハイシリカゼオライトのSiO2/Al2O3(モル比)に制限はなく、中でも特に優れた溶媒精製能を発揮することからSiO2/Al2O3=5~40のものが好ましく、特にSiO2/Al2O3=5~30、5~20、更には5~10のものが好ましい。一般に、SiO2/Al2O3のモル比が高いほどハイシリカゼオライトの酸強度が高くなることが知られているが、驚くべきことに、本発明の回収重合溶媒精製剤では、比較的低いSiO2/Al2O3のモル比を有するハイシリカゼオライトが優れた回収溶媒精製能を発揮する。
【0013】
本発明の回収重合溶媒精製剤を構成するハイシリカゼオライトは、不純物除去能、高耐久性、易再生性の付与を目的に、水素陽イオンの一部を遷移金属イオンで置換したハイシリカゼオライトであってもよく、例えば特公平1-58202号に記載の方法により調製が可能である。その交換率は回収重合溶媒種によって異なるが、一般には全水素陽イオン量の40%以下とすることが好ましく、特に1~20%、更には1~10%であることが好ましい。
【0014】
本発明の回収重合溶媒精製剤を構成するハイシリカゼオライトの形態については、特に制限はなく、一般的な粉末状、粒状、ペレット状などの形態が利用可能であり、特に操作上の観点から粒状ないしペレット状のものが好適で、精製能力の観点からは比表面積の大きな粉末状のものが優れている。なお、ペレット形状とする際には、さらにはシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、粘土等のバインダーを含むものであってもよい。
【0015】
本発明の回収重合溶媒精製剤を構成するハイシリカゼオライトは、一般的に知られる方法により入手可能である。また、市販品として入手したものであってもよく、例えば水素陽イオン型Y型ハイシリカゼオライトとして、(商品名)HSZ-330HUD1A(東ソー(株)製)、水素陽イオン型ベータ型ハイシリカゼオライトとして(商品名)HSZ-931HOD1A(東ソー(株)製)、水素陽イオン型ZSM-5型ハイシリカゼオライトとして、(商品名)HSZ-822HOD1A(東ソー(株)製)、(商品名)HSZ-840HOD1A(東ソー(株)製)、等を挙げることができる。
【0016】
本発明の回収重合溶媒精製剤は、重合反応終了後の回収重合溶媒と接触することにより重合阻害物質・不純物の除去・精製が可能となり、その際には、通常の精製工程である回収重合溶媒のろ過、蒸留、水分除去等を行った後の回収重合溶媒精製の最終段階で接触処理に供することが好ましい。このことは、通常の精製処理で除去できない阻害物質、不純物の除去を本発明の回収重合溶媒精製剤にて除去が可能であることを示すものである。
【0017】
そして、本発明の回収重合溶媒精製剤による回収重合溶媒としては、重合反応により回収された重合溶媒であれば如何なるものであってもよく、中でも副反応による副生成物、触媒に由来する金属含有物質を含むものに適しており、そのような重合反応としては、チグラー・ナッタ触媒の存在下、オレフィンの重合を行うスラリー重合を挙げることができる。
【0018】
この際のチグラー・ナッタ触媒としては、チタン,マグネシウムおよびハロゲンを含有する固体触媒を挙げることができ、適宜、触媒の活性化および/または不純物除害のための有機アルミニウム化合物と組み合わせて、オレフィン重合に使用されるものである。該固体触媒とは、更に詳しくは、マグネシウム化合物とハロゲン含有チタン化合物または該化合物と電子供与体との付加化合物を段階的または一次的に接触させることにより形成される複合固体で、このような触媒は様々に工夫を施された調製法が多く開発されている。しかし、本発明においては、特に限定されることなく公知の各種のものを用いた場合に適用することが可能である。具体的には、特公昭46-34092号,特開昭54-41985号,特開昭55-729号公報,特開昭55-13709号公報、特開昭57-12006号公報、特開昭57-141409号公報、特公平4-22163号公報などに開示された方法を挙げることが出来る。
【0019】
また、オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等のα-オレフィンを挙げることができる。
【0020】
そして、スラリー重合の際の溶媒としては、炭化水素系溶媒であれば特に制限はない。例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの環状構造を有する脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;等を挙げることができる。
【0021】
本発明の回収重合溶媒精製剤を接触する際の回収重合溶媒としては、精製の際の効率をより優れたものとするために、ろ過、蒸留、水分除去等を事前に行うことが好ましく、特にチグラー・ナッタ触媒の存在下、オレフィンの重合を行うスラリー重合を行ったものである場合は、以下の1)~4)に示す処理を行ったものであることが好ましい。
1)生成ポリマーを回収除去の後の溶媒を加水分解し、有機層を分離回収する。場合によっては、加水分解液の水層のpH調製を実施する。
2)1)で回収した有機層を水蒸気蒸留し、流出液から有機層を分液分離する。
3)2)で分離した有機層を単蒸留する。
4)3)で単蒸留した回収溶媒の脱水を目的とし、モレキュラーシーブス3A又は4Aによる接触処理する。
【0022】
そして、回収重合溶媒、前処理された回収重合溶媒と回収重合溶媒精製剤とを接触処理する際の条件は、特に制限はない。中でも、本発明の回収重合溶媒精製剤を構成するハイシリカゼオライトは疎水性でありながら、水分除去能も示すことから、処理の前に脱水処理により水分量を低減させておくことが望ましい。具体的には、カールフィッシャー法により測定された水分量を20ppm以下とすることが望ましい。また、処理温度は処理する回収重合溶媒の凝固点、沸点および粘性などを考慮して、-10℃~150℃の範囲で任意に設定することが出来る。基本的には、温度が高い方が好ましい結果を与えるが、通常25℃~50℃の範囲で処理することで十分な性能を得ることが出来る。また、回収重合溶媒と本発明の回収重合溶媒精製剤との接触処理にあたっては、回収重合溶媒精製剤が気泡を巻き込まないように留意すべきである。回収重合溶媒中へ回収重合溶媒精製剤を静的に浸漬する方法でも良いが、工業的な利用を考慮すれば回収重合溶媒精製剤を充填したカラムに回収重合溶媒をアップフローとなるように通過させることが好ましい。使用するカラム径,充填長さおよび通液する流速をパラメータとし、接触時間を調整することが出来る。接触時間は回収溶媒中の残留不純物量に依存するが、例えば、溶媒5Lとゼオライト10gを接触させる場合、接触時間は1秒~24時間の範囲で任意に調整できる。
【0023】
そして、本発明の回収重合溶媒精製剤は、定期的に、あるいは活性の低下が顕著となった場合に、窒素などの不活性ガスのフロー下に150℃~700℃の範囲の温度にて焼成処理することで、性能を回復させ、再生利用に供することが出来る。
【0024】
本発明の回収重合溶媒精製剤により精製された回収重合溶媒は、再度重合反応の際の重合溶媒として再利用してもポリマーの製造に影響することなく利用することが可能であり、チグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒に代表されるオレフィン重合触媒存在下におけるオレフィンのスラリー重合の際の重合溶媒として再利用することが可能となる。そして、特に重合活性に優れ、精密重合に適したオレフィン重合触媒として知られているメタロセン系触媒によるオレフィンのスラリー重合にも適用可能なものとなる。また、各種反応の反応溶媒として再利用することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、回収重合溶媒を効率的に精製することが可能となり、その産業的価値は極めて高いものである。
【実施例0026】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0027】
なお、断りのない限り、用いた試薬等は市販品、あるいは既知の方法に従って合成したものを用いた。
【0028】
参考例1
特公平4-22163号に記載の方法に従い、チグラー・ナッタ触媒を調製し、エチレン重合を行うことにより重合後の重合溶媒を調製した。
【0029】
(1)チグラー・ナッタ触媒の調製
攪拌装置を備えた1.6Lのオートクレーブにブタノール70g(0.94mol)を入れ、これにヨウ素0.55g、金属マグネシウム粉末11g(0.45mol)およびチタンテトラブトキシド61g(0.18mol)を加え、更に乾燥ヘキサン450mlを加えた後に80℃まで昇温し、発生する水素ガスを排除しながら窒素シール下で一時間攪拌した。続いて、120℃まで昇温して1時間反応を行い、マグネシウムおよびチタンを含む溶液を得た。
【0030】
内容積500mlのフラスコにマグネシウム原子換算0.048モル相当量のマグネシウムおよびチタンを含む溶液を加え、45℃に昇温して、トリ-i-ブチルアルミニウム(0.048mol)のヘキサン溶液を1時間かけて加えた。すべてを加えた後、60℃で1時間攪拌した。次に、メチルヒドロポリシロキサン2.8ml(25℃における粘度30センチストークス,ケイ素0.048グラム原子)を加え、還流下に一時間反応した。45℃に冷却後、i-ブチルアルミニウムジクロライドの50%へキサン溶液82mlを2時間かけて加えた。すべてを加えた後、70℃で1時間攪拌を行った。生成物にヘキサンを加え、デカント法により15回の洗浄を行った。ヘキサンに懸濁した、チタン,マグネシウムおよびハロゲンを含有するチグラー・ナッタ触媒である固体触媒のスラリー(固体触媒9.5gを含む)を得た。その一部を採取し、元素分析したところ、乾燥固体は9.0重量%のTiを含むものであった。
【0031】
(2)エチレン重合
撹拌装置、温度計および圧力計を備えた内容積20Lのステンレススチール製オートクレーブ内を十分窒素で置換し、ヘキサン12Lを仕込み、内温を80℃に調節した。その後、トリ-i-ブチルアルミニウム2.3g(12mmol)、前記(1)で得た固体触媒を含有するスラリーを順次添加した。オートクレーブ内圧を0.1MPaに窒素で調節した後、水素を0.5MPaとなるように加え、次いでオートクレーブ内圧が1.1MPaになるように、連続的にエチレンを加えながら1.5時間の重合を行った。重合終了後冷却し、ポリエチレンを含むスラリーを取り出し、濾過することで固形物を除去した、重合反応後の重合溶媒であるヘキサンを得た。
【0032】
(3)重合溶媒の前処理
(2)で取得した不純物を含む溶媒を、水と接触して加水分解し、分液して有機層を回収した。次いで、水蒸気蒸留により高沸点不純物を除去した。蒸留取得液を分液することで有機層を取得し、窒素雰囲気下に単蒸留を行った。更に、モレキュラーシーブ3Aにより脱水処理をすることで精製前回収重合溶媒であるヘキサン(以下、粗ヘキサンとする場合がある。)を取得した。粗ヘキサン中の含水量をカールフィッシャー法により測定したところ、10ppmであった。粗ヘキサンをガスクロマトグラフィーにて解析したところ、ヘキサン以外のピークが見られ、不純物の存在を確認した。
【0033】
実施例1
撹拌装置を備えた5Lのフラスコを窒素雰囲気下に参考例1により得られた粗ヘキサンを5L(3350g)導入し、ペレット形状の水素陽イオン型Y型ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)HSZ-330HUD1A;SiO2/Al2O3モル比6、アルミナバインダー)を2.5g添加した。その後、室温下に攪拌しながら24時間放置した。精製済のヘキサンの水分量は6ppmに低下していた。また、ハイシリカゼオライトは僅かに黄色味を帯びていた。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0034】
実施例2
直径2.2cmのクロマト用カラムにペレット形状の水素陽イオン型Y型ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)HSZ-330HUD1A、SiO2/Al2O3モル比6、アルミナバインダー)を高さ20cmとなるように充填し、窒素置換を行った。この際のハイシリカゼオライトの充填密度は0.463g/cm3で、ハイシリカゼオライトは34.7gの充填量であった。このカラムに、アップフローとなるように下部より参考例1により得た粗ヘキサンを窒素雰囲気下に流し、滞留時間を130秒と設定して精製ヘキサンを得た。ここでの通液量は5Lとした。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0035】
実施例3
粗ヘキサンの滞留時間を40秒と設定した以外は、実施例2と同様にして精製ヘキサンを得た。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0036】
実施例4
粗ヘキサンの滞留時間を15秒と設定した以外は、実施例2と同様にして精製ヘキサンを得た。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0037】
実施例5
カラム部を50℃に温めた状態としたこと以外は、実施例4と同様にして精製ヘキサンを得た。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0038】
実施例6
ハイシリカゼオライトをペレット形状の水素陽イオンを有するベータ型ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)HSZ-931HOD1A、SiO2/Al2O3モル比27、アルミナバインダー)としたこと以外は、実施例1と同様にして精製ヘキサンを得た。処理ヘキサンの水分量を測定したところ、水分量は7ppmに低下していた。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0039】
実施例7
ハイシリカゼオライトをペレット形状の水素陽イオン型ZSM-5型ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)HSZ-822HOD1A、SiO2/Al2O3モル比23、アルミナバインダー)としたこと以外は、実施例1と同様にして精製ヘキサンを得た。処理ヘキサンの水分量を測定したところ、水分量は8ppmに低下していた。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0040】
実施例8
ハイシリカゼオライトをペレット形状の水素陽イオン型ZSM-5型ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)HSZ-840HOD1A、SiO2/Al2O3モル比40、アルミナバインダー)としたこと以外は、実施例1と同様にして精製ヘキサンを得た。処理ヘキサンの水分量を測定したところ、水分量は9ppmと僅かに低下していた。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0041】
実施例9
ハイシリカゼオライトをペレット形状の水素陽イオン型Y型ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)HSZ-330HUD1C、SiO2/Al2O3モル比6、粘土バインダー)としたこと以外は、実施例4と同様にして精製ヘキサンを得た。ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。評価結果等を表1に示す。
【0042】
比較例1
ハイシリカゼオライトの代わりに、ゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)ゼオラムF-9)を10g用いた以外は、実施例1と同様にして粗ヘキサンの精製を試みた。回収ヘキサンの水分量は5ppmと低減していたが、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークが観察された。評価結果等を表1に示す。
【0043】
比較例2
ハイシリカゼオライトの代わりに、水洗後に乾燥処理したモレキュラーシーブス10X(MS10X、富士フイルム和光純薬(株)製)およびモレキュラーシーブス3A(MS3A、富士フイルム和光純薬(株)製)を用い、この順番に接触処理したこと以外は、実施例1と同様にして粗ヘキサンの精製を試みた。回収ヘキサンの水分量は3ppmと低減していたが、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークが観察された。評価結果等を表1に示す。
【0044】
比較例3
ハイシリカゼオライトをペレット形状のナトリウム陽イオン型Y型ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、(商品名)HSZ-320NAD1C、SiO2/Al2O3モル比5.5、粘土バインダー)としたこと以外は、実施例1と同様にして粗ヘキサンの精製を試みた。回収ヘキサンの水分量を測定したところ、水分量は7ppmに低下していたが、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークが観察された。評価結果等を表1に示す。
【0045】
【0046】
参考例2
購入ヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製,試薬特級)をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、ヘキサン以外のピークは観察されなかった。
本発明の方法は、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンをはじめとする各種のオレフィン重合ポリマーおよびオレフィン共重合ポリマーの製造において再利用される溶媒の精製に有効に利用することができる。