(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174417
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20221116BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20221116BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221116BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221116BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221116BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221116BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/36
A61Q19/00
A61K8/86
A61K9/107
A61K47/12
A61K47/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080202
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山口 知美
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD09F
4C076DD41A
4C076FF16
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC261
4C083AC262
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC902
4C083AD051
4C083AD052
4C083AD491
4C083AD492
4C083BB04
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE12
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】本発明は、分離安定性に優れるキュービック液晶系の乳化組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)エーテル系非イオン性界面活性剤及び(B)高級脂肪酸を含有する乳化組成物は、分離安定性に優れる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エーテル系非イオン性界面活性剤及び(B)高級脂肪酸を含有する乳化組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、及び/又はポリオキシアルキレンステリルエーテルである、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルである、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の総HLB値が11~18である、請求項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の含有量が3~25重量%である、請求項1~4のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の炭素数が14以上である、請求項1~5のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分1重量部当たり0.1~1重量部である、請求項1~6のいずれかに記載の乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物に関する。より詳細には、本発明は、分離安定性に優れる乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物は、薬効性及び使用感において有利な剤型であり、外用組成物に汎用されている。乳化組成物には、ラメラ液晶、逆ヘキサゴナル液晶、キュービック液晶等の液晶が応用される形態があり、いずれも特徴ある乳化系を構成する。
【0003】
キュービック液晶は、高粘度な液晶として知られており、有効成分の浸透性及び吸収性の観点で注目され始めている(非特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Patrick T. Spicer, et. al. (2001), “Novel Process for Producing Cubic Liquid Crystalline Nanoparticles (Cubosomes)”, Langmuir, 17, 5748-5756.
【非特許文献2】Jun Wan, (2018), Phytantriol-based lyotropic liquid crystal as a transdermal delivery system. European Journal of Pharmaceutical Sciences, 125 : 93-101.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キュービック液晶系乳化組成物の分離安定性を向上させる技術については十分検討されていない。
【0006】
そこで、本発明は、キュービック液晶系乳化組成物の分離安定性を向上させる製剤技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、エーテル系非イオン性界面活性剤と高級脂肪酸とを組み合わせて配合することで、分離安定性に優れるキュービック液晶系乳化組成物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)エーテル系非イオン性界面活性剤及び(B)高級脂肪酸を含有する乳化組成物。
項2. 前記(A)成分が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、及び/又はポリオキシアルキレンステリルエーテルである、項1に記載の乳化組成物。
項3. 前記(A)成分が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルである、項1又は2に記載の乳化組成物。
項4. 前記(A)成分の総HLB値が11~18である、項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
項5. 前記(A)成分の含有量が3~25重量%である、項1~4のいずれかに記載の乳化組成物。
項6. 前記(B)成分の炭素数が14以上である、項1~5のいずれかに記載の乳化組成物。
項7. 前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分1重量部当たり0.1~1重量部である、項1~6のいずれかに記載の乳化組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分離安定性に優れるキュービック液晶系乳化組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の乳化組成物は、(A)エーテル系非イオン性界面活性剤(以下において、「(A)成分」とも記載する)及び(B)高級脂肪酸(以下において、「(B)成分」とも記載する)を含有することを特徴とする。以下、本発明の乳化組成物について詳述する。
【0011】
(A)エーテル系非イオン性界面活性剤
本発明の乳化組成物は、(A)成分としてエーテル系非イオン性界面活性剤を含む。本発明において、エーテル系非イオン性界面活性剤は、親水部となるポリオキシアルキレン基と疎水部となる炭化水素基とがエーテル結合した構造をもつ非イオン性界面活性剤をいう。
【0012】
ポリオキシアルキレン基におけるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2~5、好ましくは炭素数2~3のアルキレンオキサイドが挙げられる。これらのアルキレンオキサイドは、エーテル系非イオン性界面活性剤分子中で、単独で又は複数種が組み合わされて含まれていてよい。また、これらのアルキレンオキサイドの付加モル数としては、例えば5~40、より好ましくは7~36が挙げられる。
【0013】
エーテル系非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシアルキレン基とアルキル基とがエーテル結合した構造をもつ非イオン性界面活性剤)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(ポリオキシアルキレン基とアルケニル基とがエーテル結合した構造をもつ非イオン性界面活性剤)、及びポリオキシアルキレンステリルエーテル(ポリオキシアルキレン基とステリル基とがエーテル結合した構造をもつ非イオン性界面活性剤)が挙げられる。
【0014】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基としては、炭素数10~24の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。当該アルキル基の具体例としては、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル(セチル)基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、デシルテトラデシル基等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、1種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは、炭素数12~22(より好ましくは炭素数14~20、さらに好ましくは16~18)の直鎖アルキル基、炭素数14~24(より好ましくは炭素数18~24、さらに好ましくは22~24)の分岐アルキル基が挙げられ、好ましい具体例としては、ヘキサデシル(セチル)基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、デシルテトラデシル基が挙げられ、より好ましい例としてオクタデシル(ステアリル)基が挙げられる。
【0015】
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルにおけるアルケニル基としては、炭素数10~24、好ましくは炭素数12~22、より好ましくは炭素数14~20の、直鎖又は分岐アルケニル基が挙げられる。当該アルケニル基の具体例としては、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル(オレイル)基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられる。これらのアルケニル基は、任意の位置に二重結合を有する。これらのポリオキシアルキレンアルケニルエーテルは、1種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのポリオキシアルキレンアルケニルエーテルの中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは炭素数12~22、より好ましくは炭素数16~20の直鎖アルケニル基が挙げられ、好ましい具体例として、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル(オレイル)基、ノナデセニル基、イコセニル基が挙げられ、より好ましい例としてオクタデセニル(オレイル)基が挙げられる。
【0016】
ポリオキシアルキレンステリルエーテルにおけるステリル基としては、コレステリル基(コレステロール残基)、コレスタリル基(コレスタノール残基)、スチグマステリル基(スチグマステロール残基)、β-シトステリル基(β-シトステロール残基)、ラノステリル基(ラノステロール残基)、及びエルゴステリル基(エルゴステロール残基)、フィトステリル基(フィトステロール残基)、及びこれらの水素付加基等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンステリルエーテルは、1種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのポリオキシアルキレンステリルエーテルの中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはフィトステリル基(フィトステロール残基)が挙げられる。
【0017】
本発明において、(A)成分としては、上記のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、及びポリオキシアルキレンステリルエーテルの中から1種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。上記のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、及びポリオキシアルキレンステリルエーテルの中でも、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルの組み合わせが挙げられる。
【0018】
本発明において、(A)成分の総HLB値としては特に限定されないが、例えば11~18が挙げられる。ここで、HLB値は、一般的に界面活性剤の水・油への親和性を示す値であり、本発明では、グリフィン法で求めたHLB値を採用する。また、総HLB値とは、(A)成分として用いられるすべての化合物について、当該化合物が有する個別のHLB値に、(A)成分全体の重量を1とした場合の当該化合物の重量割合を乗じ、それらを合計した値をいう。例えば、(A)成分として、HLB値が15の化合物aのみを含む場合の総HLB値は、15(=15×1)である。また、(A)成分として、HLB値が10の化合物a1と、HLB値が18の化合物a2とが、a1:a2=4:6(重量比)で含まれる場合の総HLB値は、14.8(=10×0.4+18×0.6)である。分離安定性をより一層向上させる観点から、(A)成分の総HLB値としては、好ましくは12~16、さらに好ましくは13~15、一層好ましくは13.8~14.5が挙げられる。
【0019】
(A)成分として特に好ましい例としては、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(30)フィトステロール、より好ましくは、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、さらに好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテルが挙げられる。
【0020】
本発明の乳化組成物において、(A)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば3~25重量%が挙げられる。分離安定性をより一層向上させる観点から、(A)の含有量としては、好ましくは9~25重量%、より好ましくは10~22重量%、さらに好ましくは12~15重量%が挙げられる。
【0021】
(B)高級脂肪酸
本発明の乳化組成物は、(B)成分として高級脂肪酸を含む。本発明において、高級脂肪酸とは炭素数12以上の脂肪酸である。
【0022】
また、高級脂肪酸は、直鎖脂肪酸及び分岐脂肪酸のいずれであってもよく、また、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。(B)成分の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸等が挙げられ、好ましい具体例としては、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸が挙げられる。
【0023】
これらの高級脂肪酸としては、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記の高級脂肪酸の中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、炭素数が、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、さらに好ましくは18以上の高級脂肪酸が挙げられる。(B)成分の炭素数の上限としては、例えば22以下、好ましくは20以下、より好ましくは19以下が挙げられる。
【0025】
また、上記の高級脂肪酸の中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは分岐脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸が挙げられ、より好ましくは分岐飽和脂肪酸が挙げられる。
【0026】
上記の高級脂肪酸の中でも、本発明で用いられる(B)成分の好ましい具体例としては、イソステアリン酸、イソアラキン酸が挙げられ、特に好ましい具体例としては、イソステアリン酸が挙げられる。
【0027】
本発明の乳化組成物において、(B)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば2~10重量%が挙げられる。分離安定性をより一層向上させる観点から、(B)の含有量としては、好ましくは3~8重量%、より好ましくは4~6重量%が挙げられる。
【0028】
本発明の乳化組成物において、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有比率については、各成分の上記含有量により定まるが、分離安定性をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有比率として、好ましくは0.05~1重量部、より好ましくは0.15~0.7重量部、さらに好ましくは0.3~0.5重量部が挙げられる。
【0029】
水
本発明の乳化組成物は、基剤として水を含む。本発明の乳化組成物における水の含有量としては特に限定されないが、例えば、41重量%以上が挙げられ、好ましくは42~85重量%、より好ましくは43~60重量%、さらに好ましくは44~55重量%が挙げられる。
【0030】
油性基剤
本発明の乳化組成物は、油性基剤を含む。油性基剤としては、乳化組成物に用いられるものを特に限定されることなく用いることができるが、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは液状油が挙げられる。液状油としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等の液状炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコン油;炭素数が6以上12以下の脂肪酸のトリグリセリド(例えば、ツバキ油、ダイズ油、綿実油、胡麻油、サフラワー油、コーン油、ヤシ油、シソ油、及びヒマシ油等の植物油;2-リノレオイル-1,3-ジオクタノイルグリセロール等の合成油)等の中鎖脂肪酸トリグリセリド;エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル(トリイソオクタン酸グリセリン)、ミリスチン酸イソプロピル、ジバラメトキシケイヒ酸-モノエチルへキサン酸グリセリル等のエステル油等が挙げられる。
【0031】
これらの液状油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの液状油の中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは液状炭化水素油、及びエステル油が挙げられる。
【0032】
本発明の乳化組成物における油性基剤の含有量としては特に限定されないが、例えば、5~20重量%が挙げられ、より好ましくは10~15重量%が挙げられる。
【0033】
その他の成分
本発明の乳化組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、上記成分以外の他の成分として、他の界面活性剤(アニオン系界面活性、カチオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤)、増粘剤、他の水性基剤(エタノール、イソプロパノール等の1価低級アルコール;多価アルコール等)、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、香料、清涼化剤、分散剤、湿潤剤等を含んでいてもよい。これらの他の成分の中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはアニオン系界面活性及び多価アルコールが挙げられる。
【0034】
アニオン系界面活性剤としては、リン酸基、カルボキシル基又は硫酸基を有するアニオン系界面活性が挙げられ、これらの1種又は複数種が用いられうる。これらのアニオン系界面活性剤の中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはリン酸基を有するアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0035】
リン酸基を有するアニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテルリン酸又はその塩、モノアルキルリン酸又はその塩等が挙げられる。POEアルキルエーテルリン酸又はその塩としては、POEラウリルエーテルリン酸、POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEセチルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。モノアルキルリン酸又はその塩としては、ラウリルリン酸等が挙げられる。これらのリン酸基を有するアニオン系界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明の乳化組成物がアニオン系界面活性剤を含む場合、アニオン系界面活性剤の含有量としては、例えば1~10重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは3~6重量%が挙げられる。
【0037】
多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられ、これらの1種又は複数種が用いられうる。これらの多価アルコールの中でも、分離安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはグリセリン及び1,3-ブチレングリコールが挙げられる。
【0038】
本発明の乳化組成物が多価アルコールを含む場合、多価アルコールの含有量としては、例えば4~20重量%が挙げられる。分離安定性をより一層向上させる観点から、多価アルコールの含有量としては、好ましくは6~15重量%、より好ましくは8~12重量%が挙げられる。
【0039】
製剤形態
本発明の乳化組成物の性状については特に限定されず、液状、半固形状(ゲル状、ペースト状)及び固形状が挙げられる。使用感の向上効果をより一層高める観点から、製剤形態は、ゲル状、又はペースト状であることがより好ましい。
【0040】
本発明の乳化組成物は、キュービック液晶を形成している。キュービック液晶を形成していることは、小角X線散乱装置によって確認することができる。
【0041】
本発明の乳化組成物の乳化タイプとしては、水中油型乳化物及び油中水型乳化物のいずれであってもよいが、好ましくは水中油型乳化物が挙げられる。
【0042】
本発明の乳化組成物は、化粧料、外用医薬部外品、外用医薬品等の外用剤として使用することができる。本発明の外用組成物の製品形態については、特に制限されないが、例えば、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、乳液剤、ゲル剤、油剤、リニメント剤、エアゾール剤等が挙げられる。
【0043】
用途
本発明の乳化組成物は、通常、外用に用いることができる。外用で用いられる場合の本発明の乳化組成物の適用部位としては特に限定されないが、キュービック液晶独特の高粘性に基づく生体付着性から、好ましくは、保護を要する皮膚部位、及び/又は被服等の着用物に接触する部位に適用することができる。本発明の乳化組成物が適用される具体的な部位としては、例えば、顔、首元、胸元、背中、腕、肘、手、腋窩部、腹部、外陰部、臀部、肛門部、脚、指、足先及び足裏が挙げられ、好ましくは、外陰部、臀部、肛門部等が挙げられ、特に好ましくは外陰部が挙げられる。
【0044】
本発明の乳化組成物の適用対象者としては特に限定されないが、好ましくは、おむつによるかぶれが生じやすい新生児(生後28日まで);乳児(生後28日以降、1歳未満);幼児(1歳から就学前まで);経血及び/又は膣分泌物によるかぶれを生じやすい女性;尿、経血、及び/又は膣分泌物によるかぶれを生じやすい中年齢者(45歳頃以上55歳未満)、高年齢者(55歳以上)が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい適用対象者としては、被服等の着用物、経血、膣分泌物、汗等への接触により皮膚(特に外陰部)が物理的及び/又は化学的刺激を受けやすい中高年齢者(45歳頃以上)が挙げられる。
【0045】
乳化組成物の製造方法
本発明の乳化組成物は、通常の乳化組成物の製造方法に準じて、上記(A)成分及び(B)成分、及び必要に応じて配合される他の成分等を通常の順番で所望量混合することにより調製することができる。
【実施例0046】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
表1及び表2に示す乳化組成物を調製した。先ず、油性基剤(流動パラフィン、トリイソオクタン酸グリセリン、POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム)を所定量混合し、さらに、(A)成分及び(B)成分を添加し、80℃で混合することで油性用組成物を調製した。また別途、水性基剤(精製水、1,3-ブチレングリコール、グリセリン)について、所定量を80℃で混合することで水性用組成物を調製した。これら油性用組成物及び水性用組成物を80℃で混合して乳化操作を行い、乳化組成物を調製した。得られた乳化組成物について、以下の評価を行った。
【0048】
<キュービック液晶の形成確認>
各乳化組成物のキュービック液晶の形成は、小角X線散乱装置によって確認した。具体的には、各乳化組成物にX線を照射し、そこから放出された散乱X線を検出することでピークチャートを得た後、得られたピークパターンと、キュービック液晶に特徴的なピークパターンとを比較することで、各乳化組成物におけるキュービック液晶の形成の有無を確認した。
【0049】
<分離安定性>
各乳化組成物100gをマヨネーズ瓶(140mL)に充填し、25℃6カ月、暗所に保管した。保管後の各乳化組成物の外観を観察し、分離が全く認められず澄明な状態を10点(実施例1)、激しく分離が認められ、振っても均一にならない状態を1点(比較例1)とするビジュアルアナログスケール(VAS)により、分離安定性の程度を10段階で採点した。5点以上を所望の分離安定性とした。結果を表1及び表2に示す。
【0050】
【0051】
【0052】
表1及び表2から明らかな通り、(A)成分及び(B)成分が配合されることで、分離安定性に優れたキュービック液晶が形成されることが分かった。
表3及び表4に示す各乳化組成物を調製し、実施例と同じ方法で、キュービック液晶の形成確認、分離安定性、及び使用感を評価したところ、処方例1~15のいずれの乳化組成物においても、キュービック液晶が形成され、所望の分離安定性が認められた。