(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174532
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ドレッサーボード及び切削ブレードのドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20221116BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20221116BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20221116BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
B24B27/06 J
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080389
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】花見 隆之
(72)【発明者】
【氏名】福原 潤一
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C047AA16
3C047AA32
3C047EE09
3C047EE18
3C158AA03
3C158AA19
3C158AB04
3C158CB01
3C158DA17
5F063AA22
5F063BA17
5F063BA18
5F063BA43
5F063BA47
5F063BA48
5F063DD22
(57)【要約】
【課題】切削ブレードの適切なドレッシングを可能とするドレッサーボードを提供する。
【解決手段】切削ブレードの形状の修正に用いられるドレッサーボードであって、第1の砥粒と、第1の砥粒を固定する第1の結合材とを含む第1の層と、第1の層を挟むように第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、第1の層の厚さは、切削ブレードの幅よりも小さく、第2の層は、第1の砥粒よりも平均粒径が小さい第2の砥粒と、第2の砥粒を固定する第2の結合材とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ブレードの形状の修正に用いられるドレッサーボードであって、
第1の砥粒と、該第1の砥粒を固定する第1の結合材とを含む第1の層と、
該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、
該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、
該第2の層は、該第1の砥粒よりも平均粒径が小さい第2の砥粒と、該第2の砥粒を固定する第2の結合材とを含むことを特徴とするドレッサーボード。
【請求項2】
該第1の砥粒及び該第2の砥粒は、グリーンカーボランダム又はホワイトアランダムであり、
該第1の結合材及び該第2の結合材は、レジンボンドであることを特徴とする、請求項1に記載のドレッサーボード。
【請求項3】
該第1の砥粒の平均粒径は、1μm以上200μm以下であり、
該第2の砥粒の平均粒径は、0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のドレッサーボード。
【請求項4】
切削ブレードの形状の修正に用いられるドレッサーボードであって、
砥粒と、該砥粒を固定する結合材とを含む第1の層と、
該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、
該該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、
該第2の層は、砥粒を含まないことを特徴とするドレッサーボード。
【請求項5】
ドレッサーボードを使用して切削ブレードの形状を修正する切削ブレードのドレッシング方法であって、
該ドレッサーボードは、第1の砥粒と該第1の砥粒を固定する第1の結合材とを含む第1の層と、該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、
該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、
該第2の層は、該第1の砥粒よりも平均粒径が小さい第2の砥粒と、該第2の砥粒を固定する第2の結合材とを含み、
該第1の層及び該第2の層が露出する面が上面となるように、該ドレッサーボードをチャックテーブルによって保持する工程と、
該切削ブレードと該ドレッサーボードとを相対的に移動させて該切削ブレードの先端部を該第1の層に沿って該ドレッサーボードの上面側に切り込ませることにより、該切削ブレードの下面を該第1の層に接触させるとともに該切削ブレードの先端部の両側面を該第2の層に接触させ、該切削ブレードの先端部の形状を修正する工程と、を含むことを特徴とする切削ブレードのドレッシング方法。
【請求項6】
ドレッサーボードを使用して切削ブレードの形状を修正する切削ブレードのドレッシング方法であって、
該ドレッサーボードは、砥粒と該砥粒を固定する結合材とを含む第1の層と、該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、
該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、
該第2の層は、砥粒を含まず、
該第1の層及び該第2の層が露出する面が上面となるように、該ドレッサーボードをチャックテーブルによって保持する工程と、
該切削ブレードと該ドレッサーボードとを相対的に移動させて該切削ブレードの先端部を該第1の層に沿って該ドレッサーボードの上面側に切り込ませることにより、該切削ブレードの下面を該第1の層に接触させるとともに該切削ブレードの先端部の両側面を該第2の層に接触させ、該切削ブレードの先端部の形状を修正する工程と、を含むことを特徴とする切削ブレードのドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削する切削ブレードの形状の修正に用いられるドレッサーボード、及び、該ドレッサーボードを用いた切削ブレードのドレッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが形成されたウェーハを分割して個片化することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。また、複数のデバイスチップを所定の基板上に実装し、実装されたデバイスチップを樹脂でなる封止材(モールド樹脂)で被覆することにより、パッケージ基板が得られる。このパッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップをそれぞれ備える複数のパッケージデバイスが製造される。デバイスチップやパッケージデバイスは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
上記のウェーハ、パッケージ基板等の被加工物の分割には、切削装置が用いられる。切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、被加工物に切削加工を施す切削ユニットとを備えており、切削ユニットには環状の切削ブレードが装着される。切削ブレードを回転させ、チャックテーブルによって保持された被加工物に切り込ませることにより、被加工物が切削、分割される。
【0004】
切削ブレードによる被加工物の切削を継続すると、切削ブレードの先端部が徐々に摩耗し、切削ブレードの先端面が丸みを帯びた形状(R形状)に変化する。そして、摩耗した切削ブレードで被加工物を切削して複数のチップに分割すると、切削ブレードのR形状がチップに反映されてチップの形状が崩れ、チップの品質が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、切削ブレードによって被加工物を切削する前には、切削ブレードの先端部を意図的に摩耗させて切削ブレードの形状を修正するドレッシングが実施される。ドレッシングは、切削ブレードをドレッシングするための部材(ドレッサーボード)を切削装置のチャックテーブルによって保持し、切削ブレードをドレッサーボードに切り込ませることによって実施される。例えば特許文献1には、ドレッサーボードに形成された凸部に切削ブレードを切り込ませることにより、切削ブレードの先端面をフラットに整形する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、切削ブレードの先端面をフラットに整形する場合には、例えば凸部を有するドレッサーボードが用いられる。凸部を有するドレッサーボードは、平板状のドレッサーボードを切削ブレードによって切削し、ドレッサーボードの表面側に複数の線状の溝(凹部)を形成することによって製造される。この溝は、ドレッシングの実施時における切削ブレードのドレッサーボードへの切り込み深さよりも深くなるように形成される。
【0008】
しかしながら、ドレッサーボードに深い溝を形成すると、ドレッサーボードの剛性が低下するとともにドレッサーボードの表面側と裏面側とで応力差が生じ、ドレッサーボードに反りが発生することがある。特に、材料の削減等のために薄いドレッサーボードが用いられる場合には、溝を形成した際に反りがより発生しやすくなる。その結果、ドレッサーボードをチャックテーブルによって平坦に保持できず、切削ブレードをドレッサーボードの凸部に正確に切り込ませることが困難になることがある。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、切削ブレードの適切なドレッシングを可能とするドレッサーボード、及び、該ドレッサーボードを用いた切削ブレードのドレッシング方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、切削ブレードの形状の修正に用いられるドレッサーボードであって、第1の砥粒と、該第1の砥粒を固定する第1の結合材とを含む第1の層と、該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、該第2の層は、該第1の砥粒よりも平均粒径が小さい第2の砥粒と、該第2の砥粒を固定する第2の結合材とを含むドレッサーボードが提供される。
【0011】
なお、好ましくは、該第1の砥粒及び該第2の砥粒は、グリーンカーボランダム又はホワイトアランダムであり、該第1の結合材及び該第2の結合材は、レジンボンドである。また、好ましくは、該第1の砥粒の平均粒径は、1μm以上200μm以下であり、該第2の砥粒の平均粒径は、0.1μm以上20μm以下である。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、切削ブレードの形状の修正に用いられるドレッサーボードであって、砥粒と、該砥粒を固定する結合材とを含む第1の層と、該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、該該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、該第2の層は、砥粒を含まないドレッサーボードが提供される。
【0013】
さらに、本発明の他の一態様によれば、ドレッサーボードを使用して切削ブレードの形状を修正する切削ブレードのドレッシング方法であって、該ドレッサーボードは、第1の砥粒と該第1の砥粒を固定する第1の結合材とを含む第1の層と、該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、該第2の層は、該第1の砥粒よりも平均粒径が小さい第2の砥粒と、該第2の砥粒を固定する第2の結合材とを含み、該第1の層及び該第2の層が露出する面が上面となるように、該ドレッサーボードをチャックテーブルによって保持する工程と、該切削ブレードと該ドレッサーボードとを相対的に移動させて該切削ブレードの先端部を該第1の層に沿って該ドレッサーボードの上面側に切り込ませることにより、該切削ブレードの下面を該第1の層に接触させるとともに該切削ブレードの先端部の両側面を該第2の層に接触させ、該切削ブレードの先端部の形状を修正する工程と、を含む切削ブレードのドレッシング方法が提供される。
【0014】
さらに、本発明の他の一態様によれば、ドレッサーボードを使用して切削ブレードの形状を修正する切削ブレードのドレッシング方法であって、該ドレッサーボードは、砥粒と該砥粒を固定する結合材とを含む第1の層と、該第1の層を挟むように該第1の層に積層された複数の第2の層と、を含み、該第1の層の厚さは、該切削ブレードの幅よりも小さく、該第2の層は、砥粒を含まず、該第1の層及び該第2の層が露出する面が上面となるように、該ドレッサーボードをチャックテーブルによって保持する工程と、該切削ブレードと該ドレッサーボードとを相対的に移動させて該切削ブレードの先端部を該第1の層に沿って該ドレッサーボードの上面側に切り込ませることにより、該切削ブレードの下面を該第1の層に接触させるとともに該切削ブレードの先端部の両側面を該第2の層に接触させ、該切削ブレードの先端部の形状を修正する工程と、を含む切削ブレードのドレッシング方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係るドレッサーボードは、砥粒を含む第1の層と、第1の層を挟むように第1の層に積層された複数の第2の層とを含んで構成される。これにより、ドレッサーボードに予め深い溝を形成することなく切削ブレードのドレッシングを実施することが可能となり、ドレッサーボードの反りの発生が抑制される。その結果、ドレッサーボードがチャックテーブルによって適切に保持され、切削ブレードの形状の修正を適切に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図2(A)は第1の層及び第2の層を示す斜視図であり、
図2(B)は交互に積層された第1の層及び第2の層を示す斜視図である。
【
図3】環状のフレームによって支持されたドレッサーボードを示す斜視図である。
【
図5】チャックテーブルによって保持されたドレッサーボードを示す一部断面正面図である。
【
図6】
図6(A)はドレッシング工程におけるドレッサーボードと切削ブレードとを示す一部断面正面図であり、
図6(B)はドレッシング工程後の切削ブレードを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るドレッサーボードの構成例について説明する。本実施形態に係るドレッサーボードは、切削ブレードの整形(ドレッシング)に用いられる。切削ブレードは、被加工物に切り込んで被加工物を切削する環状の加工工具である。
【0018】
切削ブレードによって切削可能な被加工物の例としては、円盤状のシリコンウェーハが挙げられる。例えばシリコンウェーハは、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、ストリートによって区画された領域にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイスが形成されている。このシリコンウェーハを切削ブレードで切削してストリートに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。
【0019】
ただし、被加工物の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなるウェーハであってもよい。また、被加工物に形成されるデバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物にはデバイスが形成されていなくてもよい。さらに、被加工物は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。
【0020】
切削ブレードで被加工物を加工する際には、まず、切削ブレードのドレッシングが実施される。ドレッシングは、切削ブレードを回転させ、切削ブレードの先端部をドレッサーボードに切り込ませることによって行われる。これにより、切削ブレードの先端部がドレッサーボードと接触して摩耗し、切削ブレードの先端面の形状が修正される。
【0021】
図1は、ドレッサーボード11を示す斜視図である。ドレッサーボード11は、切削ブレードのドレッシングに用いられる直方体状の部材であり、複数の第1の層13と複数の第2の層15とを含む。第1の層13及び第2の層15は、矩形状に形成された板状の部材であり、ドレッサーボード11の厚さ方向(第1の層13及び第2の層15の厚さ方向)において交互に積層されている。
【0022】
第1の層13は、砥粒(第1の砥粒)と、砥粒を固定する結合材(第1の結合材)とを含む。また、第2の層15は、砥粒(第2の砥粒)と、砥粒を固定する結合材(第2の結合材)とを含む。第1の砥粒及び第2の砥粒としては、グリーンカーボランダム(GC)、ホワイトアランダム(WA)等を用いることができる。
【0023】
なお、第2の層15に含まれる砥粒(第2の砥粒)の平均粒径は、第1の層13に含まれる砥粒(第1の砥粒)の平均粒径よりも小さい。例えば、第1の砥粒の平均粒径は1μm以上200μm以下であり、第2の砥粒の平均粒径は0.1μm以上20μm以下である。
【0024】
第1の結合材及び第2の結合材としては、樹脂でなるレジンボンドや、セラミックスでなるビトリファイドボンドを用いることができる。特に、第1の結合材及び第2の結合材としてレジンボンドを用いると、切削ブレードをドレッサーボード11に切り込ませた際における切削ブレードのダメージが抑制されるため、好ましい。
【0025】
例えば、砥粒をフェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂に含浸させた後、樹脂を板状に成形して所定の温度(例えば150℃以上約200℃以下)で焼成することにより、板状の第1の層13及び第2の層15が形成される。なお、第1の層13及び第2の層15に砥粒が含まれていると、レジンボンドの流動性が低下し、第1の層13及び第2の層15の形状が維持されやすくなる。
【0026】
図2(A)は、第1の層13及び第2の層15を示す斜視図である。例えばドレッサーボード11は、大型の第1の層13及び第2の層15を交互に積層した後、第1の層13及び第2の層15を同時に切断することによって製造される。
【0027】
第1の層13は、互いに概ね平行な矩形状の第1面(表面)13a及び第2面(裏面)13bを含む。同様に、第2の層15は、互いに概ね平行な矩形状の第1面(表面)15a及び第2面(裏面)15bを含む。そして、第2の層15は、第1の層13を挟むように第1の層13に積層される。具体的には、第1の層13の第1面13a側には第2の層15の第2面15b側が固定され、第1の層13の第2面13b側には第2の層15の第1面15a側が固定される。例えば、第1の層13と第2の層15とは接着剤を介して貼り合わされる。
【0028】
図2(B)は、交互に積層された第1の層13及び第2の層15を示す斜視図である。積層された第1の層13及び第2の層15を切削ブレード等によって同時に切断することにより、所望の形状及び寸法のドレッサーボード11が得られる。
【0029】
なお、積層される第1の層13及び第2の層15の層数に制限はない。ただし、ドレッサーボード11の最上層と最下層は第2の層15とする。これにより、全ての第1の層13が第2の層15によって挟まれた構造となる。また、後述の通り、第1の層13は切削ブレードの先端面の整形に利用される。そのため、第1の層13の層数は2以上であることが好ましい。これにより、1枚のドレッサーボード11を用いて切削ブレードの先端面の整形を複数回実施することが可能になる。
【0030】
図1に示すように、ドレッサーボード11は、互いに概ね平行な第1面(表面)11aと第2面(裏面)11bとを含む。第1面11aは最上層の第2の層15の第1面15aに相当し、第2面11bは最下層の第2の層15の第2面15bに相当する。
【0031】
また、ドレッサーボード11は、第1面11a及び第2面11bの長辺に接続された一対の第3面(側面)11cと、第1面11a及び第2面11bの短辺に接続された一対の第4面(側面)11dとを含む。一対の第3面11cは、ドレッサーボード11の長さ方向(第1の層13及び第2の層15の長さ方向)及びドレッサーボード11の厚さ方向と概ね平行な矩形状の平坦面である。また、一対の第4面は、ドレッサーボード11の幅方向(第1の層13及び第2の層15の幅方向)及びドレッサーボード11の厚さ方向と概ね平行な矩形状の平坦面である。
【0032】
第3面11c及び第4面11dでは、第1の層13の側面及び第2の層15の側面が露出している。そのため、第3面11c及び第4面11dには、第1の層13の側面及び第2の層15の側面が交互に配列されることによって形成された周期的な縞模様(横縞模様)が表れている。
【0033】
上記のドレッサーボード11を用いて、切削ブレードのドレッシングが行われる。切削ブレードのドレッシングを行う際は、まず、ドレッサーボード11を環状のフレームによって支持する。
図3は、環状のフレーム17によって支持されたドレッサーボード11を示す斜視図である。
【0034】
フレーム17は、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属でなる。フレーム17の中央部には、フレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は、ドレッサーボード11の各辺の長さよりも大きい。そして、ドレッサーボード11は開口17aの内側に配置される。
【0035】
ドレッサーボード11及びフレーム17には、テープ19が貼付される。具体的には、テープ19の中央部がドレッサーボード11に貼付され、テープ19の外周部がフレーム17に貼付される。その結果、ドレッサーボード11がテープ19を介してフレーム17によって支持される。
【0036】
テープ19は、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含む。例えば、基材はポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着層はエポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。また、粘着層は紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の樹脂であってもよい。
【0037】
なお、ドレッサーボード11は、一対の第3面11cの一方にテープ19が貼付されるように配置される。そのため、ドレッサーボード11は、縞模様を呈する一対の第3面11cの他方が上方に露出し、第1面11a、第2面11b、及び縞模様を呈する一対の第4面11dが側方に露出した状態で、フレーム17によって支持される。
【0038】
フレーム17によって支持されたドレッサーボード11に切削ブレードを切り込ませることにより、切削ブレードのドレッシングが行われる。切削ブレードのドレッシングには、切削装置が用いられる。
図4は、切削装置2を示す斜視図である。なお
図4において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0039】
切削装置2は、被加工物及びドレッサーボード11を保持可能なチャックテーブル(保持テーブル)4を備える。チャックテーブル4の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行な平坦面であり、被加工物又はドレッサーボード11を保持する保持面4a(
図5参照)を構成している。保持面4aは、チャックテーブル4の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0040】
チャックテーブル4には、チャックテーブル4をX軸方向に沿って移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)と、チャックテーブル4をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)とが接続されている。また、チャックテーブル4の周囲には、フレーム17を把持して固定する複数のクランプ6(
図5参照)が設けられている。
【0041】
チャックテーブル4の上方には、被加工物及びドレッサーボード11を切削可能な切削ユニット8が設けられている。切削ユニット8は円柱状のハウジング10を備え、ハウジング10にはY軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル12(
図5参照)が収容されている。スピンドル12の先端部(一端部)はハウジング10の外部に露出しており、スピンドル12の基端部(他端部)にはモータ等の回転駆動源が接続されている。
【0042】
スピンドル12の先端部には、被加工物を切削する環状の切削ブレード14が装着される。切削ブレード14は、回転駆動源からスピンドル12を介して伝達される動力によって、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0043】
切削ブレード14としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃とが一体化した切削ブレードである。ハブブレードの切刃は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒と、砥粒を固定するニッケルめっき層等の結合材とを含む電鋳砥石によって構成できる。
【0044】
ただし、切削ブレード14としてワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒と、砥粒を固定する結合材(メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等)とを含む環状の切刃のみによって構成される。
【0045】
切削ユニット8に切削ブレード14が装着されると、切削ブレード14はハウジング10に固定されたブレードカバー16に覆われる。ブレードカバー16は、純水等の切削液が供給されるチューブ(不図示)に接続される一対の接続部18と、一対の接続部18に接続された一対のノズル20とを備える。一対のノズル20は、切削ブレード14の下端部を挟むように切削ブレード14の両側面側(表裏面側)に配置される。また、一対のノズル20にはそれぞれ、切削ブレード14に向かって開口する供給口(不図示)が設けられている。
【0046】
一対の接続部18に切削液が供給されると、一対のノズル20に切削液が流入し、一対のノズル20の噴射口から切削ブレード14の両側面(表裏面)に向かって切削液が供給される。この切削液によって、切削ブレード14と、チャックテーブル4によって保持された被加工物又はドレッサーボード11とが冷却されるとともに、切削加工によって生じた屑(切削屑)が洗い流される。
【0047】
切削ユニット8には、切削ユニット8を移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)が接続されている。移動機構は、切削ユニット8をY軸方向に沿って移動させるとともに、Z軸方向に沿って昇降させる。移動機構により、切削ブレード14の割り出し送り方向における位置や、切削ブレード14の被加工物又はドレッサーボード11への切り込み深さが調節される。
【0048】
上記の切削装置2によって、シリコンウェーハ等の被加工物が切削される。例えば切削ブレード14は、シリコンウェーハをストリートに沿って切削して複数のデバイスチップに分割する。
【0049】
なお、切削ブレード14による被加工物の切削を継続すると、切削ブレード14の先端部が摩耗し、切削ブレード14の先端面が丸みを帯びた形状(R形状)に変化する(
図5参照)。そして、摩耗した切削ブレード14で被加工物を切削して複数のチップに分割すると、切削ブレード14のR形状がチップに反映されてチップの形状が崩れ、チップの品質が低下するおそれがある。
【0050】
そこで、切削ブレード14によって被加工物を加工する前には、切削ブレード14の先端部を意図的に摩耗させて切削ブレード14の形状を修正するドレッシングが実施される。ドレッシングは、切削ブレード14をドレッサーボード11に切り込ませることによって行われる。以下、ドレッサーボード11を使用して切削ブレード14の形状を修正する切削ブレードのドレッシング方法の具体例について説明する。
【0051】
まず、ドレッサーボード11をチャックテーブル4によって保持する(保持工程)。
図5は、チャックテーブル4によって保持されたドレッサーボード11を示す一部断面正面図である。
【0052】
保持工程では、フレーム17によって支持されたドレッサーボード11が、テープ19を介してチャックテーブル4の保持面4a上に配置される。また、フレーム17が複数のクランプ6によって固定される。この状態で保持面4aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、ドレッサーボード11がテープ19を介してチャックテーブル4によって吸引保持される。これにより、ドレッサーボード11は、第1の層13及び第2の層15の側面が露出して縞模様を呈する第3面11c(
図1等参照)が上面となるように、チャックテーブル4によって保持される。
【0053】
次に、切削ブレード14をドレッサーボード11の上面側に切り込ませることにより、切削ブレード14の先端部の形状を修正する(ドレッシング工程)。
図6(A)は、ドレッシング工程におけるドレッサーボード11と切削ブレード14とを示す一部断面正面図である。
【0054】
ドレッシング工程では、まず、チャックテーブル4を回転させ、ドレッサーボード11の長さ方向(第3面11cの長手方向)をX軸方向に合わせる。これにより、ドレッサーボード11は、長さ方向がX軸方向に沿い、厚さ方向がY軸方向に沿い、幅方向がZ軸方向に沿うように配置される。
【0055】
また、切削ユニット8(
図4及び
図5参照)をY軸方向に沿って移動させ、ドレッサーボード11の第1の層13と切削ブレード14とのY軸方向における位置を合わせる。例えば切削ブレード14は、第1の層13の厚さ方向(
図6(A)における紙面左右方向)における中心と切削ブレード14の幅方向(
図6(A)における紙面左右方向)の中心とのY軸方向における位置が一致するように位置付けられる。さらに、切削ユニット8(
図4及び
図5参照)をZ軸方向に沿って移動させ、切削ブレード14の下端をドレッサーボード11の上面(第3面11c)よりも下方に位置付ける。
【0056】
その後、切削ブレード14を回転させつつ、チャックテーブル4をX軸方向に沿って移動させる。これにより、ドレッサーボード11と切削ブレード14とが加工送り方向に沿って相対的に移動し、切削ブレード14の先端部が第1の層13に沿ってドレッサーボード11の上面側に切り込む。その結果、ドレッサーボード11の上面側が切削ブレード14によって切削され、ドレッサーボード11の上面側に直線状の溝が第1の層13に沿って形成される。また、切削ブレード14の先端部がドレッサーボード11との接触によって摩耗し、切削ブレード14の下面(先端面)14aの形状が修正される。
【0057】
ここで、第1の層13の厚さd1は、切削ブレード14の幅Dよりも小さい。そのため、切削ブレード14の下面14aは粒径の大きい砥粒(第1の砥粒)を含む第1の層13に接触し、切削ブレード14の先端部の両側面は粒径の小さい砥粒(第2の砥粒)を含む第2の層15に接触する。そのため、切削ブレード14の下面14aにおいては摩耗が進行しやすく、切削ブレード14の先端部の両側面においては摩耗が進行しにくい。
【0058】
なお、第1の層13及び第2の層15の厚さは、切削ブレード14の幅Dに応じて適宜設定できる。また、第2の層15の厚さd2と、その第2の層15を挟む2枚の第1の層の厚さd1と総和(d2+2d1)が、切削ブレード14の幅Dよりも小さくてもよい。この場合、切削ブレード14をドレッサーボード11に切り込ませると、切削ブレード14の下面14aが2層以上の第1の層13に接触する。
【0059】
図6(B)は、ドレッシング工程後の切削ブレード14を示す正面図である。上記のように切削ブレード14を第1の層13に沿ってドレッサーボード11に切り込ませると、切削ブレード14の先端部のうち第1の層13に接触した領域が優先的に摩耗し、切削ブレード14の下面14aの丸みが徐々に解消される。そして、切削ブレード14の下面14aがフラットな形状になると、切削ブレード14のドレッシングが完了する。
【0060】
なお、切削ブレード14をドレッサーボード11に切り込ませる回数は、切削ブレード14の形状、材質、サイズ等に応じて適宜設定される。切削ブレード14をドレッサーボード11に複数回切り込ませる場合には、切削ブレード14を1層目の第1の層13に沿ってドレッサーボード11に切り込ませた後、切削ブレード14をY軸方向に移動させ、2層目の第1の層13に沿ってドレッサーボード11に切り込ませる。この作業を繰り返すことにより、切削ブレード14を所望の回数ドレッサーボード11に切り込ませることができる。そして、全ての第1の層13に沿って溝が形成されると、使用済みのドレッサーボード11が新品のドレッサーボード11(未使用のドレッサーボード11)に交換される。
【0061】
以上の通り、本実施形態に係るドレッサーボード11は、砥粒を含む第1の層13と、第1の層13を挟むように第1の層13に積層された複数の第2の層15とを含んで構成される。これにより、ドレッサーボード11に予め深い溝を形成することなく切削ブレード14のドレッシングを実施することが可能となり、ドレッサーボード11の反りの発生が抑制される。その結果、ドレッサーボード11がチャックテーブル4によって適切に保持され、切削ブレード14の形状の修正を適切に実施できる。
【0062】
なお、上記の実施形態では、第2の層15が第1の層13よりも平均粒径が小さい砥粒(第2の砥粒)を含んでいる場合について説明した。ただし、第2の層15として、砥粒を含まない層を用いることもできる。この場合、第2の層15に接触する切削ブレード14の先端部の両側面で摩耗が生じにくくなり、切削ブレード14の下面14aがフラットな形状に修正されやすくなる。
【0063】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0064】
11 ドレッサーボード
11a 第1面(表面)
11b 第2面(裏面)
11c 第3面(側面)
11d 第4面(側面)
13 第1の層
13a 第1面(表面)
13b 第2面(裏面)
15 第2の層
15a 第1面(表面)
15b 第2面(裏面)
17 フレーム
17a 開口
19 テープ
2 切削装置
4 チャックテーブル(保持テーブル)
4a 保持面
6 クランプ
8 切削ユニット
10 ハウジング
12 スピンドル
14 切削ブレード
14a 下面(先端面)
16 ブレードカバー
18 接続部
20 ノズル