(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174549
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】切削装置、及び、マウントフランジの修正方法
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20221116BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20221116BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20221116BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20221116BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B24B27/06 M
B24B7/04 Z
B24B49/12
B24B45/00 A
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080424
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】寺田 一貴
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB52
3C034CA09
3C034CA22
3C034CB20
3C034DD18
3C043BA03
3C043CC02
3C043DD01
3C043DD05
3C158AA03
3C158AB04
3C158AC02
3C158AC05
3C158BA09
3C158BC02
3C158BC03
3C158CB03
3C158CB06
3C158DA17
5F063AA23
5F063CA04
5F063DD03
5F063DD22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マウントフランジの切削ブレード等に対する当接面の修正に要する工程や手間を削減することを可能とする新規な技術を提供する。
【解決手段】切削ブレードの状態を検出するブレード検出ユニットを備えた切削装置であって、ブレード検出ユニットは、切削ブレードが挿入される間隔を有して互いに対向して配設された発光部と受光部とを有する検出部とを選択的に覆うカバーと、検出部を露出させる開位置と検出部を覆う閉位置とにカバーを位置づける開閉駆動ユニットとを有し、切削装置は、カバーに付設され、切削ブレードが取り外されてスピンドル23の先端に固定された状態のマウントフランジ24の修正を行う修正具80を備え、カバーが開位置に位置づけられることで、修正具80がマウントフランジ24を修正するための修正位置に位置づけられるとともに、カバーが閉位置に位置づけられることで、修正具80が退避位置に位置づけられる、切削装置とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットで保持された被加工物を切削する切削ブレードがスピンドルに着脱自在に固定される切削ユニットと、該切削ブレードの状態を検出するブレード検出ユニットと、を備えた切削装置であって、
該切削ブレードは、該スピンドル先端に固定されたマウントフランジと、固定具と、の間に固定され、
該ブレード検出ユニットは、
該切削ブレードが挿入される間隔を有して互いに対向して配設された発光部と受光部とを有する検出部と、
該検出部を選択的に覆うカバーと、
該検出部を露出させる開位置と該検出部を覆う閉位置とに該カバーを位置づける開閉駆動ユニットと、を有し、
該切削装置は、
該カバーに付設され、該固定具と該切削ブレードとが取り外されて該スピンドルの先端に固定された状態の該マウントフランジの修正を行う修正具を備え、
該カバーが該開位置に位置づけられることで、該修正具が該マウントフランジを修正するための修正位置に位置づけられるとともに、該カバーが該閉位置に位置づけられることで、該修正具が退避位置に位置づけられる、切削装置。
【請求項2】
該修正具は、
マウントフランジの回転軸に対し垂直な第一面を研磨するための第一研磨面と、
マウントフランジの回転軸に対し平行な第二面を研磨するための第二研磨面と、
を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該スピンドルの先端に固定された該切削ブレードを交換するブレード交換ユニットと、
少なくとも該ブレード交換ユニットと該開閉駆動ユニットとを制御するコントローラと、を備え、
該コントローラは、所定のタイミングで該開閉駆動ユニットを制御して修正具を該修正位置に位置づけ、該マウントフランジの修正を行うように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の切削装置において該マウントフランジの修正を行う修正方法であって、
該マウントフランジを修正する該修正位置に該修正具を位置づける位置づけステップと、
該マウントフランジが固定された該スピンドルを回転させるスピンドル回転ステップと、
回転する該マウントフランジに該修正具を当接させて該マウントフランジを修正する修正ステップと、を備えたマウントフランジの修正方法。
【請求項5】
該マウントフランジは、
該マウントフランジの回転軸に対し垂直な第一面であって、
該切削ブレードがハブブレードである場合のハブ基台の後面、
又は、
該切削ブレードがワッシャーブレードである場合の切り刃の後面、
に当接するための第一面となる環状端面を有し、
該修正ステップでは、該修正具を該環状端面に当接させる、ことを含む、
ことを特徴とする、請求項4に記載のマウントフランジの修正方法。
【請求項6】
該マウントフランジは、
該マウントフランジの回転軸に対し平行な第二面であって、
該切削ブレードがハブブレードである場合のハブ基台の嵌合孔の内周部、
又は、
該切削ブレードがワッシャーブレードである場合の該固定具の前フランジ部の嵌合孔の内周部、
と嵌合するための第二面となるボス外周面を有し、
該修正ステップでは、該修正具を該ボス外周面に当接させる、ことを含む、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のマウントフランジの修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードを備える切削装置、及び、切削ブレードを固定するためのマウントフランジの修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド等の砥粒をボンド材で結合した砥石からなる切削ブレードは、被加工物の切削に伴って摩耗する。摩耗した切削ブレードは新品の切削ブレードに交換できるように、切削装置のスピンドル先端に着脱自在に固定される。
【0003】
切削ブレードは二種類が存在する。一つは、ハブ基台とハブ基台の外周縁に形成された砥石とからなるハブブレードである。ハブブレードは、固定具である固定ナットと、マウントフランジと、で挟持された状態でスピンドルに固定される。もう一つは、リング状の砥石からなるワッシャーブレードである。ワッシャーブレードは、前フランジと固定ナットの組み合わせからなる固定具と、マウントフランジと、で挟持された状態でスピンドルに固定される。
【0004】
スピンドルの軸心に対し、切削ブレードが傾斜して固定されると、回転中に砥石部分がばたつき高精度な加工が施せないことになる。このため、マウントフランジにおいて、切削ブレード、前フランジ等に対する当接面は平坦化されている。
【0005】
しかし、切削中に切削ブレードが空転した場合や破損した場合には、切削ブレードの取り付け時において、この当接面が損傷して平坦面ではなくなってしまう場合がある。
【0006】
このような問題に鑑み、例えば、特許文献1に開示されるように、マウントフランジにおいて当接面となる環状端面を端面修正用治具にて修正し、環状端面を平坦化するための技術が知られている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるような従来技術では、切削装置において被加工物を保持する保持テーブルを治具保持用のテーブルに交換し、テーブルで端面修正治具を保持することで、マウントフランジの当接面を修正するものであった。そして、当接面の修正後には、治具保持用のテーブルを交換して再び保持テーブルに戻し、切削ブレードを取り付けることで被加工物の加工を再開するものであった。
【0009】
しかし、上述した従来の修正の方法では、マウントフランジの当接面となる環状端面の修正に多くの工程と手間を要しており、改善が切望されていた。
【0010】
本発明は以上の問題に鑑み、マウントフランジの切削ブレード等に対する当接面の修正に要する工程や手間を削減することを可能とする新規な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
本発明の一態様によれば、
被加工物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットで保持された被加工物を切削する切削ブレードがスピンドルに着脱自在に固定される切削ユニットと、該切削ブレードの状態を検出するブレード検出ユニットと、を備えた切削装置であって、
該切削ブレードは、該スピンドル先端に固定されたマウントフランジと、固定具と、の間に固定され、
該ブレード検出ユニットは、
該切削ブレードが挿入される間隔を有して互いに対向して配設された発光部と受光部とを有する検出部と、
該検出部を選択的に覆うカバーと、
該検出部を露出させる開位置と該検出部を覆う閉位置とに該カバーを位置づける開閉駆動ユニットと、を有し、
該切削装置は、
該カバーに付設され、該固定具と該切削ブレードとが取り外されて該スピンドルの先端に固定された状態の該マウントフランジの修正を行う修正具を備え、
該カバーが該開位置に位置づけられることで、該修正具が該マウントフランジを修正するための修正位置に位置づけられるとともに、該カバーが該閉位置に位置づけられることで、該修正具が退避位置に位置づけられる、切削装置とする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、
該修正具は、
マウントフランジの回転軸に対し垂直な第一面を研磨するための第一研磨面と、
マウントフランジの回転軸に対し平行な第二面を研磨するための第二研磨面と、
を有する、切削装置とする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、
該スピンドルの先端に固定された該切削ブレードを交換するブレード交換ユニットと、
少なくとも該ブレード交換ユニットと該開閉駆動ユニットとを制御するコントローラと、を備え、
該コントローラは、所定のタイミングで該開閉駆動ユニットを制御して修正具を該修正位置に位置づけ、該マウントフランジの修正を行うように制御する、
切削装置とする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、
上記切削装置において該マウントフランジの修正を行う修正方法であって、
該マウントフランジを修正する該修正位置に該修正具を位置づける位置づけステップと、
該マウントフランジが固定された該スピンドルを回転させるスピンドル回転ステップと、
回転する該マウントフランジに該修正具を当接させて該マウントフランジを修正する修正ステップと、を備えたマウントフランジの修正方法とする。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、
該マウントフランジは、
該マウントフランジの回転軸に対し垂直な第一面であって、
該切削ブレードがハブブレードである場合のハブ基台の後面、
又は、
該切削ブレードがワッシャーブレードである場合の切り刃の後面、
に当接するための第一面となる環状端面を有し、
該修正ステップでは、該修正具を該環状端面に当接させる、ことを含む、
マウントフランジの修正方法とする。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、
該マウントフランジは、
該マウントフランジの回転軸に対し平行な第二面であって、
該切削ブレードがハブブレードである場合のハブ基台の嵌合孔の内周部、
又は、
該切削ブレードがワッシャーブレードである場合の該固定具の前フランジ部の嵌合孔の内周部、
と嵌合するための第二面となるボス外周面を有し、
該修正ステップでは、該修正具を該ボス外周面に当接させる、ことを含む、
マウントフランジの修正方法とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、修正具と、修正具をマウントフランジを修正する修正位置と、退避位置とに移動させる開閉駆動ユニットと、を備えることで、必要に応じマウントフランジの必要箇所を平坦化することが可能となる。このため、従来のように、治具保持用のテーブルに交換する必要がなくなり、マウントフランジの必要箇所の平坦化を短時間で行うことができる。また、切削装置内の切削ユニットが配置される加工室に作業者が手を入れる必要がないため、高い安全性が担保できるとともに、加工室内の汚れが加工室外に出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】切削ユニットを備える切削装置について示す図である。
【
図3】切削ブレードを自動で交換するためのブレード交換ユニット等について示す図である。
【
図4】ハブブレードとして構成される切削ブレードの構成について示す図である。
【
図5】ワッシャーブレードとして構成される切削ブレードの構成について示す図である。
【
図6】(A)はブレード検出ユニットのカバーを開いた状態について示す図。(B)はブレード検出ユニットのカバーを閉じた状態について示す図。
【
図8】(A)は修正具を修正位置に位置づけた状態について示す図。(B)は修正具を退避位置に位置づけた状態について示す図。
【
図9】(A)はマウントフランジの環状端面の修正を行う状態について一方向から見た図である。(B)はマウントフランジの環状端面の修正を行う状態について他方向から見た図である。
【
図10】(A)はマウントフランジのボス外周面の修正を行う状態について一方向から見た図である。(B)はマウントフランジのボス外周面の修正を行う状態について他方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、切削ブレードを自動で交換するためのブレード交換ユニット3を備える切削装置1の構成例について示すものである。
【0021】
図1に示すように、切削装置1は、装置基台6を有し、装置基台6に設けられる各種機構がコントローラ4によって制御され、
図2に示す被加工物Wを切削加工する装置として構成される。
【0022】
図2に示すように、被加工物Wは、例えばシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物Wは、表面Waに格子状に設定された複数の分割予定ラインSによって格子状に区画された領域にデバイスDが形成されている。なお、被加工物Wは、上記の例に限定されるものではない。
【0023】
図2において、被加工物Wは粘着テープTに貼着され、また、被加工物Wを取り囲むように環状フレームFが粘着テープTに貼着され、被加工物Wと環状フレームFが一体化したウェーハユニットUが構成される。このウェーハユニットUがウェーハカセット42(
図1)に収容される。
【0024】
図1に示すように、切削装置1は、保持ユニット10をX軸方向に加工送りする図示せぬX軸移動ユニットと、切削ユニット20をY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニットUyと、切削ユニット20をZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニットUzと、を備える。また、保持ユニット10は、吸引保持面を構成する保持テーブルにて構成され、図示せぬ回転駆動源によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられる。
【0025】
図1に示すように、切削装置1は、被加工物W(
図2)を切削する切削ユニット20と、自動で切削ブレード21を交換するブレード交換ユニット3と、を備える。
図1の構成では、切削ユニット20を2つ備える構成として、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置として構成される。
【0026】
図1に示すように、被加工物を撮像するための撮像ユニット30が、各切削ユニット20と一体的に移動するように設けられる。
【0027】
図1に示すように、2つの切削ユニット20は、それぞれ、門型の支持フレーム5に設けられるY軸移動ユニットUy及びZ軸移動ユニットUzにより、保持ユニット10に対するY軸方向、及び、Z軸方向において、相対移動可能に構成されている。
【0028】
図1に示すように、切削装置1は、切削前後の被加工物を収容するウェーハカセット42を昇降可能に支持するカセットエレベータ41と、切削後の被加工物を洗浄する洗浄ユニット44と、ウェーハカセット42に被加工物を出し入れするとともに被加工物を搬送する搬送手段である搬送ユニット46とを備える。
【0029】
図1及び
図3に示すように、切削装置1は、切削ブレードを自動で交換するためのブレード交換ユニット3を備える。
図3に示すように、ブレード交換ユニット3は、切削ブレード21に対向する位置に移動し、ブレード固定ナット26を回転させて締結/取外しをするためのナットホルダ32と、切削ブレード21を着脱するためのブレードホルダ34と、を有して構成される。
【0030】
図4に示すように、切削ユニット20は、Z軸移動ユニットUzのZ軸移動プレート19(
図1)の下部に固定されるスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22から突出し図示せぬモータにより回転駆動されるスピンドル23と、スピンドル23の先端部に装着されるマウントフランジ24とを備える。
【0031】
切削ユニット20は、マウントフランジ24をスピンドル23の先端部に固定するマウント固定ボルト25と、マウントフランジ24に装着される切削ブレード21と、切削ブレード21をマウントフランジ24との間で挟んで固定するための固定具であるブレード固定ナット26とを備える。
【0032】
マウントフランジ24は、円筒状のボス部241と、ボス部241のスピンドルハウジング22側の一端部に設けられたフランジ部242とを備えている。フランジ部242には、ボス部241の外径より大径の円環状に形成され、切削ブレード21のハブ基台212の後面に当接するための環状端面244が形成される。マウントフランジ24のボス部241の他端部の外周には、雄ネジ243が形成される。
【0033】
図4に示す切削ブレード21は、いわゆるハブブレードとして構成されるものであり、アルミニウム合金等の金属で構成された円環状のハブ基台212と、ハブ基台212の外周を囲むように形成される円環状の切り刃213を備える。ハブ基台212には、マウントフランジ24のボス部241に装着するための嵌合孔214が中央に設けられる。嵌合孔214は、内側にマウントフランジ24のボス部241が貫挿される。切り刃213は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。
【0034】
切削ブレード21は、ハブ基台212の嵌合孔214をマウントフランジ24の円筒状のボス部241のボス外周面246に嵌合させた状態とし、ブレード固定ナット26をボス部241の雄ネジ243に締結することで、マウントフランジ24に固定される。この状態で、切削ブレード21は、ブレード固定ナット26とマウントフランジ24の間で挟持され、ハブ基台212の後面は、マウントフランジ24に形成される環状端面244に当接して支持される。
【0035】
切削ブレード21の固定具となるブレード固定ナット26の端面には、ブレード交換ユニット3のナットホルダ32(
図3)の図示せぬ係合部と係合するための4個のピン係合孔261がそれぞれ90度の間隔を開けて設けられる。また、ブレード固定ナット26は円環状に構成され、外周面には環状の係合溝262が形成される。
【0036】
切削ブレード21を装着した状態において、スピンドル23、マウントフランジ24、切削ブレード21の軸心は同軸上に配置され、Y軸方向と平行となる。
【0037】
また、以上の構成において、マウントフランジ24は、マウントフランジ24の回転軸に対し垂直な第一面であって、切削ブレード21のハブ基台212の後面に当接するための第一面となる環状端面244を有する構成となる。
【0038】
また、マウントフランジ24は、マウントフランジ24の回転軸に対し平行な第二面であって、切削ブレード21のハブ基台212の嵌合孔214の内周部と嵌合するための第二面となるボス外周面246を有する構成となる。
【0039】
図5は、リング状の砥石からなるワッシャーブレードとして構成される切削ブレード21Aを備える切削ユニット20Aの構成例である。切削ブレード21Aは、ブレード固定ナット26と前フランジ27の組み合わせからなる固定具と、マウントフランジ24との間で挟持される。その他の構成は、
図4の構成と同様である。
【0040】
図5に示すように、切削ブレード21Aがワッシャーブレードで構成される場合には、切削ブレード21Aの後面が、マウントフランジ24の環状端面244に当接し、前フランジ27の嵌合孔274がボス外周面246に嵌合する。
【0041】
図1に示すように、切削ユニット20の切削ブレード21を位置づけ可能な位置には、ブレード検出ユニット60が配置される。
図3に示すように、ブレード検出ユニット60は、切削ブレード21の状態を検出するものであり、具体的には、切り刃213のZ方向位置の位置や摩耗状態を検出するためのものである。
【0042】
図6(A)に示すように、ブレード検出ユニット60は、直方体状の検出台61を有しており、この検出台61の上面には、切削ブレード21が挿入される間隔を有して互いに対向して配設された発光部63と受光部64とを有する検出部62が設けられている。本実施例では、ブレード挿入溝66を形成し、ブレード挿入溝66の両側の壁部66a,66bの互いの対向面に、それぞれ発光部63と受光部64が設けられる。
【0043】
検出部62には、発光部63と受光部64に向けて洗浄水やエアーを供給するための洗浄ノズル65a,65bが設けられる。
【0044】
検出台61において、ブレード挿入溝66が形成される側の反対側には、開閉駆動ユニット68(カバー開閉ユニット)により開閉し、検出部62を選択的に覆うカバー67が設けられる。開閉駆動ユニット68は、ブレード検出時には、
図6(A)に示すように、検出部62を露出させる開位置にカバー67を位置づけ、ブレード検出を行わないときには、
図6(B)に示すように、検出部62を覆う閉位置にカバー67を位置付ける。
【0045】
以上の構成とするブレード検出ユニット60では、
図3に示すように、切削ブレード21をブレード挿入溝66に挿入するとともに、発光部63(
図6(A))にて発光される光を受光部64(
図6(A))で受光し、受光量に基づいて切削ブレード21の上下方向(Z軸方向)の位置の検出が行われる。
【0046】
図3に示すように、新品の切削ブレード21を装着した際には、ブレード挿入溝66に切削ブレード21を上側から進入させ、切削ブレード21の切り刃213の刃先が光を遮ることで受光量の低下が開始したときの切削ブレード21のZ方向位置が検出され、このZ方向位置が基準位置として記憶される。この作業は、非接触セットアップ作業と称される。
【0047】
その後、切削ブレード21が摩耗した後に再度非接触セットアップ作業を実施し、受光量の低下が開始したときの切削ブレード21のZ方向位置を検出することで、摩耗量が検出される。また、この際に検出した切削ブレード21のZ方向位置に基づき、切削ブレード21の切り込み高さ位置(Z方向位置)を検出したり、制御することができる。
【0048】
図6(A)(B)に示すように、ブレード検出ユニット60の検出部62を覆うカバー67には、切削ブレードが取り外されてスピンドル23(
図8(A))の先端に固定された状態のマウントフランジ24(
図8(A))の修正を行う修正具80が設けられる。
【0049】
本実施例の修正具80は、略L字型のアーム82の先端に研磨部材84を設けてなる構成としている。アーム82の後端は、カバー67の側面に付設されることで、カバー67の開閉とともに回動する。カバー67に付設する構成とすることで、修正具80を移動させるための他の装置を設けることが不要となり、装置構成の簡素化が図られる。
【0050】
研磨部材84は、例えば、5ミクロン以下の砥粒と金属を含んでなるブロック状の砥石にて構成され、導電性を有する構成とする。研磨部材84は、ブロック状の砥石とする他、表面を導電性を有した研磨シートで覆って構成することとしてもよい。
【0051】
研磨部材84は、導電性を有することで、
図9(A)(B)、及び、
図10(A)(B)に示すように、マウントフランジ24との接触を導通により検出することが可能となる。なお、研磨部材84は導電性を有しないものとしてもよく、その場合には、例えば、研磨部材84がマウントフランジ24に接触したときのスピンドルの回転数や負荷電流値が変化することを利用して、接触を検出する構成とすることができる。
【0052】
研磨部材84は、
図9(A)(B)、及び、
図10(A)(B)に示すように、マウントフランジ24の回転軸に対し垂直な第一面となる環状端面244を研磨するための第一研磨面84aと、マウントフランジ24の回転軸に対し平行な第二面となるボス外周面246を研磨するための第二研磨面84bと、を有し、マウントフランジ24の高さに応じ、マウントフランジ24の異なる二箇所を研磨して修正(平坦化)することができるように構成される。
【0053】
図6(A)及び
図8(A)に示すように、カバー67が開かれて開位置に位置づけられることで、修正具80はマウントフランジ24を修正するための修正位置に位置づけられ、研磨部材84が上側に配置される。
【0054】
図6(B)及び
図8(B)に示すように、カバー67が閉じられて閉位置に位置づけられることで、修正具80は退避位置に位置づけられ、研磨部材84が下側に配置されることになる。
【0055】
次に、以上の構成を用いた修正方法の例について、
図7に示すフローチャートの順に説明する。以下に説明する修正方法は、例えば、新品の切削ブレードに交換される際に実施することができる。
【0056】
<切削ブレード取外しステップ>
図8(A)に示すように、マウントフランジ24から切削ブレードが取り外された状態とするステップである。
【0057】
本実施例では、
図3に示すようにスピンドル23の先端に固定された切削ブレード21を交換するブレード交換ユニット3を備え、コントローラ4(
図1)により、所定のタイミングで切削ブレード21を取外し、マウントフランジ24の修正を行うこととする。切削ブレード21が取り外されることにより、マウントフランジ24が露出された状態となる。
【0058】
なお、ブレード交換ユニット3を備えない構成においては、作業者による手作業により、切削ブレード21の取外しが行われる。また、所定のタイニングとは、ブレード交換ユニットで交換した切削ブレードの数が所定数に達した場合や、ブレード交換時にブレード交換ユニットにかかる負荷(回転トルク)等をもとにボス部外周面246(
図4)の異物付着を自動検出し、マウントフランジ24の修正の要否を判断することとしてもよい。
【0059】
<位置づけステップ>
図8(A)に示すように、マウントフランジ24を修正する修正位置に修正具80を位置づけるステップである。本実施例では、コントローラ4の制御により、開閉駆動ユニット68(
図6(A))にてカバー67を開くことで修正具80の研磨部材84を修正位置に位置付けされる。
【0060】
<スピンドル回転ステップ>
図8(A)に示すように、マウントフランジ24が固定されたスピンドル23を回転させるステップである。
【0061】
コントローラ4は、予め設定された回転数によりスピンドル23を低速で回転させる。回転数は、研磨に適した回転数に設定される。
【0062】
<修正ステップ>
図9(A)に示すように、回転するマウントフランジ24に修正具80を当接させてマウントフランジ24を修正するステップである。
【0063】
図9(A)(B)に示すように、マウントフランジ24の環状端面244が、研磨部材84の第一研磨面84aに接触するまで、切削ユニット20をZ軸方向に下降、及び、Y軸方向に移動させる。例えば、環状端面244の外径サイズをもとに、環状端面244が研磨部材84の第一研磨面84aに対面する位置まで切削ユニット20をZ軸方向で下降させるとともに、環状端面224が研磨部材84の第一研磨面84aに当接するまで切削ユニット20をY軸方向に移動させる。この際、研磨部材84は、導電性を有することで、研磨部材84と環状端面244との接触が導通によりコントローラ4(
図1)により検出される。
【0064】
コントローラ4は、スピンドル23の回転を所定時間継続することで、環状端面244を研磨部材84の第一研磨面84aによって研磨し、平坦化する。この際、所定のタイミングでスピンドル23(マウントフランジ24)をY軸方向に微小距離移動させ、研磨部材84の第一研磨面84aに対する環状端面224の接触圧を変化させることとしてもよい。
【0065】
なお、環状端面224は、
図4のハブブレードの構成では、切削ブレード21のハブ基台212の後面に対向する面であり、
図5のワッシャーブレードの構成では、切削ブレード21Aに対向する面である。
【0066】
同様に、
図10(A)(B)に示すように、マウントフランジ24のボス外周面246が、研磨部材84の第二研磨面84bに接触するまで、切削ユニット20をZ軸方向に下降、及び、Y軸方向に移動させる。例えば、ボス外周面246の外径サイズをもとに、ボス部241が研磨部材84の第二研磨面84bに対面する位置まで切削ユニット20をZ軸方向で下降させるとともに、ボス外周面246が第二研磨面84bに当接する位置となるように切削ユニット20をY移動させる。この際、研磨部材84は、導電性を有することで、研磨部材84とボス外周面246との接触が導通によりコントローラ4(
図1)により検出される。
【0067】
なお、ボス外周面246は、
図4のハブブレードの構成では、切削ブレード21のハブ基台212の嵌合孔214の内周面に嵌合する面であり、
図5のワッシャーブレードの構成では、前フランジ27の嵌合孔274の内周面に嵌合する面である。
【0068】
コントローラ4(
図1)は、スピンドル23の回転を所定時間継続することで、ボス外周面246を研磨部材84の第二研磨面84bによって研磨し、平坦化する。この際、所定のタイミングでスピンドル23(マウントフランジ24)をZ軸方向に微小距離移動させ、研磨部材84の第二研磨面84bに対するボス外周面246の接触圧を変化させることとしてもよい。
【0069】
以上のようにして、マウントフランジ24の環状端面244とボス外周面246を研磨することができ、平坦化することが可能となる。なお、環状端面244とボス外周面246のいずれか一方の研磨を行ってもよい。
【0070】
以上のように、本発明によれば、
図6(A)(B)、及び、
図8(A)(B)に示すように、修正具80と、修正具80をマウントフランジ24を修正する修正位置と、退避位置とに移動させる開閉駆動ユニット68とを備えることで、必要に応じマウントフランジ24の必要箇所を平坦化することが可能となる。このため、従来のように、治具保持用のテーブルに交換する必要がなくなり、マウントフランジ24の必要箇所の平坦化を短時間で行うことができる。また、切削装置内の切削ユニットが配置される加工室に作業者が手を入れる必要がないため、高い安全性が担保できるとともに、加工室内の汚れが加工室外に出ることを防止できる。
【0071】
また、
図9(A)(B)、及び、
図10(A)(B)に示すように、修正具80について、第一研磨面84aと、第二研磨面84bの異なる研磨面を有することで、修正具80の交換をすることなく、マウントフランジ24の異なる二つの環状端面244とボス部241(ボス外周面246)を研磨して平坦化することができ、平坦に要する全体の時間を短縮することが可能となる。
【0072】
また、本願発明は、切削ブレードがハブブレードであるものについて、特に好適に実施され得る。
図4に示すように、ハブブレードでは、切削ブレード21を交換する際にハブ基台212の嵌合孔214の内周面とマウントフランジ24のボス部外周面246とが擦れ、ハブ基台212の金属がボス部外周面246に付着し、切削ブレード21を複数枚交換することで異物となって堆積することが考えられる。この異物の存在により、切削ブレード21の着脱が困難になることが考えられるため、この異物を除去することは有効なものとなる。
【0073】
さらに、ブレード交換ユニット3(
図3)を備える構成においては、上述した修正ステップを所定のタイミングで定期的に実行させることが好ましい。
作業者による交換では切削ブレードの挿入が難しくなったことが感知できて修正作業を行う判断ができるが、ブレード交換ユニットによる切削ブレードの装着では、切削ブレードの挿入が難しくなったことを感知できず、却って修正時間に長時間を要することや、修正ができない程度まで状況が悪化するおそれもあるためである。このことは、装置の全自動化と連続稼働の面から重要なものであり、ブレード交換ユニット3(
図3)による切削ブレード21の自動交換のメリットを最大限に活かすことに繋がるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 切削装置
3 ブレード交換ユニット
4 コントローラ
10 保持ユニット
19 Z軸移動プレート
20 切削ユニット
21 切削ブレード
22 スピンドルハウジング
23 スピンドル
24 マウントフランジ
25 マウント固定ボルト
26 ブレード固定ナット
27 前フランジ
32 ナットホルダ
34 ブレードホルダ
60 ブレード検出ユニット
62 検出部
66 ブレード挿入溝
67 カバー
68 開閉駆動ユニット
80 修正具
82 アーム
84 研磨部材
84a 第一研磨面
84b 第二研磨面
212 ハブ基台
213 切り刃
214 嵌合孔
241 ボス部
242 フランジ部
243 雄ネジ
244 環状端面
246 ボス外周面
261 ピン係合孔
262 係合溝
D デバイス
F 環状フレーム
S 分割予定ライン
T 粘着テープ
U ウェーハユニット
Uy Y軸移動ユニット
Uz Z軸移動ユニット
W 被加工物
Wa 表面