(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174634
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01G 20/00 20180101AFI20221116BHJP
【FI】
A01G20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080565
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺添 斉
(72)【発明者】
【氏名】橋田 慎之介
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AB02
(57)【要約】
【課題】所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)。
【解決手段】植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材、及び、抑草部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物を、抑制部材が所望状態で溶出されるように固めて固化体5、固体粒6(抑草資材固化物8)を作製する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材、及び、前記抑制部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物を、前記抑制部材が所望状態で溶出されるように固めて作製された
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項2】
請求項1に記載の抑草資材固化物において、
前記抑制部材の成分元素は、
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含む
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の抑草資材固化物において、
前記固化部材は、少なくとも固化剤である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記抑制部材は、石炭灰である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記固化部材は、貝殻粉末を含む
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記固化部材は、少なくとも、ペーパースラッジ灰、もしくは、高炉スラグ粉末の一方を含む
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記混合物の前記抑制部材の含有量が、容量比で30%から70%である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項8】
請求項7に記載の抑草資材固化物において、
前記混合物の前記固化部材の含有量が、容量比で70%から30%である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項9】
請求項8に記載の抑草資材固化物において、
前記混合物の前記固化部材は、固化剤、及び、固化促進剤であり、
前記混合物の前記固化剤の含有量が、容量比で50%から20%であり、
前記混合物の前記固化促進剤の含有量が、40%から20%である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項10】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材に対し、固化部材を所定の割合で混合して混合物を作製し、前記混合物に水を所定の割合で加えて攪拌混合し、前記混合物を型枠に充填すると共に、所定の期間の間養生して、前記抑制部材が所望状態で溶出されるように固められた固化物としたことを特徴とする抑草資材固化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を調節(抑制)する抑制成分を含んだ抑草資材固化物、及び、抑草資材固化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線の敷地、河川堤防、道路法面、中央分離帯、空港着陸帯等では、浸食防止、安全確保、景観確保、基盤浸食防止、飛び砂防止等のために、植物を植えて緑化が図られることがある。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞があるため、定期的に草刈等のメンテナンスが必要になっている。しかし、このような緑化の場所は、人が入りにくい場所であるため、メンテナンスには多大な労職と時間、費用がかかるのが現状であった。
【0003】
このため、従来から、定期的な草刈作業に代えて、除草剤等を用いて植物を枯らせることで植物が成長しないようにし、植物の必要以上の成長による悪影響を無くしている(例えば、特許文献1)。特許文献1に示された技術は、除草剤に成長を抑制する剤を混ぜて、除草の負担を軽減する技術となっている。
【0004】
緑化を行う地域は、植物の量が減少しても存在し続けることが、環境イメージの点等において重要であるが、特許文献1の技術を用いた場合、除草を行う技術であるため、除草を行った後は、緑化の地域に植物が生えていない状態になってしまう。緑化の地域で除草を行い、植物を無くした状態にすると、見栄えや安全性に対する印象を含めた景観を損なうことになり、緑化の地域では除草を実施することは得策ではないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することができる抑草資材固化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の抑草資材固化物は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素(主に、金属元素)を含む抑制部材、及び、前記抑草部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物を、前記抑制部材が所望状態で溶出されるように固めて作製されたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、抑制部材が固化部材(固化剤、固化促進剤)により、抑制部材が所望状態で溶出されるように固められて固化物とされ、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物となる。抑制部材と固化部材の混合割合を適宜調整することで、固さと抑制部材の溶出状態とを所望状態で溶出されるように(所定形状を維持して溶出させたり、所定期間にわたって溶出させたりするように)調整することができる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1に記載の抑草資材固化物において、前記抑制部材の成分元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調整することができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1もしくは請求項2に記載の抑草資材固化物において、前記固化部材は、少なくとも固化剤であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、抑制部材が固化剤により固められて抑草資材固化物が作製される。固化剤としては、カルシウムを含む剤、例えば、水酸化カルシウムの剤、高炉スラグ粉末、貝殻粉末(未焼成貝殻粉末)等を用いることができる。また、固化を促進する固化促進剤を混合することも可能である。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記抑制部材は、石炭灰であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、廃棄物となる石炭灰(フライアッシュ、クリンカアッシュ)を抑制部材として有効に利用することが可能になる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記固化部材は、貝殻粉末を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、廃棄物となり処理に多くの問題を残した貝殻粉末(未焼成貝殻粉末)を固化剤として有効に利用し、所望の強度を持つ抑草資材固化物とすることが可能になる。
【0018】
また、請求項6に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記固化部材は、少なくとも、ペーパースラッジ灰、もしくは、高炉スラグ粉末の一方を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る本発明では、固化部材(固化剤、固化促進剤)として、廃棄物となるペーパースラッジ灰、もしくは、高炉スラグ粉末を有効に利用することが可能になる。
【0020】
また、請求項7に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記混合物の前記抑制部材の含有量が、容量比で30%から70%であることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る本発明では、抑制部材の含有量を適切に特定することができる。
【0022】
また、請求項8に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項7に記載の抑草資材固化物において、前記混合物の前記固化部材の含有量が、容量比で70%から30%であることを特徴とする。
【0023】
請求項8に係る本発明では、抑制部材に対して固化部材(固化剤+固化促進剤)の含有量を適切に特定することができる。
【0024】
また、請求項9に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項8に記載の抑草資材固化物において、前記混合物の前記固化部材は、固化剤、及び、固化促進剤であり、前記混合物の前記固化剤の含有量が、容量比で50%から20%であり、前記混合物の前記固化促進剤の含有量が、40%から20%であることを特徴とする。
【0025】
請求項9に係る本発明では、抑制部材、固化剤、固化促進剤の混合割合を適切に特定することができる。例えば、抑制部材である石炭灰を40%から60%、固化促進剤であるペーパースラッジ灰を20%から40%、固化剤である高炉スラグ粉末、貝殻粉末(未焼成貝殻粉末)をそれぞれ10%から25%の範囲で特定することができる。
【0026】
上記目的を達成するための請求項10に係る本発明の抑草資材固化物の製造方法は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材に対し、固化部材を所定の割合で混合して混合物を作製し、前記混合物に水を所定の割合で加えて攪拌混合し、前記混合物を型枠に充填すると共に、所定の期間の間養生して、前記抑制部材が所望状態で溶出されるように固められた固化物としたことを特徴とする。
【0027】
請求項10に係る本発明では、抑制部材が固化部材(固化剤、固化促進剤)により、抑制部材が所望状態で溶出されるように固められて固化物とされ、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物となる。抑制部材と固化部材の混合割合を適宜調整することで、固さと抑制部材の溶出状態とを調整することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の抑草資材固化物は、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)ことが可能になる。
【0029】
また、本発明の抑草資材固化物の製造方法は、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施例に係る抑草資材固化物を製造する工程の概略図である。
【
図2】本発明の抑草資材固化物の成分の基本仕様を説明する表図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る抑草資材固化物の製造処理のフロー図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る抑草資材固化物の使用例の説明図である。
【
図5】固化部材の割合と強度との関係を表すグラフである。
【
図6】強度と抑制部材の溶出量との関係を表すグラフである。
【
図7】抑制部材の溶出量の経時変化を表すグラフである。
【
図8】抑制部材の溶出量の経時変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の抑草資材固化物は、植物を所定の状態で生育維持させるための固化物であり、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材が所望の状態で溶出するもので、所定の形状を維持した状態で、抑制部材の溶出を制御できるようにしたものである。
【0032】
図1には本発明の一実施例に係る抑草資材固化物を製造する工程を概略的に示した状況、
図2には抑草資材固化物の成分の基本仕様の説明、
図3には本発明の一実施例に係る抑草資材固化物の製造処理の流れを説明するフローチャートを示してある。
【0033】
図1に示すように、主材料として抑制部材の金属を含む石炭灰(フライアッシュ:FA、クリンカアッシュも可)1と、副材料として固化促進剤(固化部材)であるペーパースラッジ灰(PSA)2、副材料として固化剤(固化部材)である高炉スラグ粉末(SL)3、副材料として固化剤(固化部材)である未焼成貝殻粉末(SP)4(貝殻粉末)が容器10に投入される。
【0034】
必要に応じた量の水と、主材料と副材料の混合割合が適宜設定され、固化体5や粉石体である固体粒6の抑草資材固化物8が作製される。
【0035】
このため、主材料として、廃棄物となる石炭灰1を抑制部材として有効に利用することが可能になる。そして、固化部材(固化剤、固化促進剤)として、廃棄物となるペーパースラッジ灰2、及び(もしくは)、高炉スラグ粉末3を有効に利用することが可能になる。また、廃棄物となり処理に多くの問題を残した未焼成貝殻粉末4を固化剤として有効に利用し、所望の強度を持つ抑草資材固化物8(固化体5、固体粒6)とすることが可能になる。
【0036】
図2に示すように、石炭灰1の役割は、抑草成分として、主に、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、リチウム(Li)を供給する。抑草成分としては、前記の他に、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)が適用される。石炭灰1の混合割合は、30%から70%、好ましくは、40%から60%とされる。
【0037】
ペーパースラッジ灰2の役割は、固化促進を図ると共に(固化促進剤)、抑草成分として、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)を供給する。ペーパースラッジ灰2の混合割合は、20%から40%とされる。
【0038】
高炉スラグ粉末3の役割は、固化・強度増加を図ると共に(固化剤)、抑草成分の溶出を抑制する。高炉スラグ粉末3の混合割合は、容量比で10%から25%とされる。
【0039】
未焼成貝殻粉末4の役割は、固化・多孔質化を図ると共に(固化剤)、抑草成分の溶出を抑制する。未焼成貝殻粉末4の混合割合は、容量比で10%から25%とされる。
【0040】
水が粉体(抑草成分、固化促進剤、固化体)に対して40%から70%とされる。つまり、(水/粉体)比が40%から70%とされる。そして、固化促進剤の含有量が40%から20%であり、固化剤の含有量が50%から20%となる。
【0041】
具体的な作り方は、
図3に示すように、ステップS1で石炭灰1と副材料が所定の割合で混合される。ステップS2で水が加えられ、所定時間混合される。ステップS3で混合物が型枠(容器10)に充填され、ステップS4で気中養生される(乾燥が防止された状態で気中養生される)。最後に、ステップS5で室温により所定時間静置され、抑草資材固化物8とされる。
【0042】
抑草資材固化物8(固化体5、固体粒6)は、抑制部材が固化部材(固化剤、固化促進剤)により固化物とされ、抑草部材が所望状態で溶出されるように固められる。抑草部材が所望の状態で溶出することにより、植物の形態(大きさや色、開花時期等)が調節され、植物の形態を維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物8となる。抑制部材と固化部材(固化剤、固化促進剤)の混合割合を適宜調整することで、固さと抑制部材の溶出状態とを調整することができる。
【0043】
抑制部材の成分元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含むことが好ましい。このため、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調整することができる。
【0044】
図4に基づいて抑草資材固化物8(固化体5、固体粒6)の使用の一例を説明する。
図4には本発明の一実施例に係る抑草資材固化物8を送電線の敷地に適用した状況を示してある。
【0045】
送電線は人が入りにくい場所であることが多いので、送電線の敷地は景観の観点から緑化が図られる。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞がある。
【0046】
図に示すように、送電線11の敷地の鉄塔12の基礎部分の周囲には、複数の抑草資材固化物8が敷き詰められている(場所により、固化体5、固体粒6が適宜敷き詰められている)。鉄塔12の基礎ブロック12aの周囲の所望の範囲には、複数の抑草資材固化物8が敷き詰められている。また、鉄塔12へのアクセス路13には、複数の抑草資材固化物が経路に沿って敷き詰められている。
【0047】
抑草資材固化物8には植物14の成育を阻害して成長を調節する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材が存在し、成分元素が溶出する。このため、鉄塔12の基礎ブロック12aの周囲、及び、鉄塔12へのアクセス路13は、植物14の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が任意に調節されて成長の状態が所望の状態に制御され、所望の大きさや色等の状態がメンテナンスフリーで維持される。
【0048】
抑草資材固化物8を敷き詰めるだけの簡単な施工で、鉄塔12の基礎ブロック12aの周囲、及び、鉄塔12へのアクセス路13における植物14の形態が調節されて成長の状態が制御され、所望の大きさや色等の状態が維持される。これにより、植物14の形態(大きさや色、開花時期等)を所定の範囲で維持する(制御する)ことが可能になり、鉄塔12の基礎ブロック12aの周囲、及び、鉄塔12に対して、必要以上に植物が成長することを抑制することができる。
【0049】
つまり、立ち入りが困難な場所である鉄塔12の基礎ブロック12aの周囲(鉄塔12の足元)の植物を長期間低草で維持することができ、景観や設備保護に対して有利となる。また、山間部の鉄塔12へのアクセス路13に抑草資材固化物を施工し、植物14を長期間低草で維持するように制御する(調整する)ことで、特別なメンテナンスを要することなく、アクセス路13を長期間確保することができる。
【0050】
図5から
図8に基づいて抑草資材固化物8の性能を説明する。
【0051】
図5には、副材料に対する固化部材である高炉スラグ粉末(SL)、未焼成貝殻粉末(SP)の割合と強度との関係、
図6には強度と抑制部材の溶出量との関係の一例を示してある。また、
図7(a)にはアルミニウム(Al)の溶出量の経時変化、
図7(b)にはナトリウム(Na)の溶出量の経時変化、
図8(a)にはホウ素(B)の溶出量の経時変化、
図8(b)にはリチウム(Li)の溶出量の経時変化を示してある。
【0052】
図5に示すように、石炭灰1を一定とした場合、副材料のうちの固化剤である高炉スラグ粉末(SL)と未焼成貝殻粉末(SP)の量を多くするにしたがって、抑草資材固化物8の強度が高くなる。
【0053】
このため、高炉スラグ粉末(SL)と未焼成貝殻粉末(SP)の量を調整することで、所望の強度を有する抑草資材固化物8を作製することができる。そして、高炉スラグ粉末(SL)と未焼成貝殻粉末(SP)の量を調整することで多種の形状(構造物)の固化物を作製することができる。例えば、ガーデニング用の置物の形をした抑草資材固化物を作製することができる。
【0054】
図6に一例で示すように、石炭灰1を一定とした場合、抑草資材固化物8の強度が高くなるにしたがって、抑制部材(金属)の溶出量が減少する。このため、強度を高くなりすぎない状態に維持することで、抑制部材(金属)の溶出量を必要以上に維持することができる。
【0055】
図6に一例で示した場合、強度を低くすると、所望形状としての固化物の強度は低下するが、抑制部材(金属)の溶出量を十分に確保して粒状の固化物を作製することができる。
【0056】
従って、主材料である抑制部材、副材料である固化剤、固化促進剤の混合割合を種々選択することにより、所望の形態(構造物、粒状固化体)の抑草資材固化物8を作製することが可能になる。
【0057】
例えば、交叉点の歩道の角部等の縁石部の周縁に固体粒6を敷き詰めることで、縁石部の周囲に成長する植物の成長を抑制することができる。縁石部には、砂や土、落ち葉等が溜まりやすく、堆肥に植物(雑草)成長する虞がある。粒状になった抑制部材の固化物を敷き詰めることで、堆積物が堆積しても縁石部の周囲の植物(雑草)の成長が抑制される。
【0058】
図7、
図8に示すように、アルミニウム(Al)の溶出量、ナトリウム(Na)の溶出量、ホウ素(B)の溶出量、リチウム(Li)の溶出量は、溶出量の変動の傾向は異なるものの、時間(月)が経過しても(例えば、9か月程度経過しても)、抑草資材固化物8から金属成分が溶出していることが確認された。
【0059】
時間(月)が経過しても(例えば、9か月程度経過しても)、抑草資材固化物8からの金属成分の溶出は維持されている一方、成分元素の種類により、土壌の液中の濃度が高い時期が異なっている。このため、抑制部材を選択することで、使用目的に応じて、所望の時期に成長を抑制させる抑草資材固化物8とすることができる。
【0060】
本発明の抑草資材固化物は、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)ことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 石炭灰
2 ペーパースラッジ灰
3 高炉スラグ粉末
4 未焼成貝殻粉末
5 固化体
6 固体粒
8 抑草資材固化物
10 容器
11 送電線
12 鉄塔
13 アクセス路
14 植物