(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174772
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】衣服及び解析システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0536 20210101AFI20221117BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221117BHJP
A61B 5/0537 20210101ALI20221117BHJP
A61B 5/20 20060101ALI20221117BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20221117BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20221117BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20221117BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20221117BHJP
【FI】
A61B5/0536
A61B5/00 B
A61B5/0537 100
A61B5/20
A61B10/00 310
A61B5/352 100
A61B5/16 110
A61B5/256 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080725
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】517457137
【氏名又は名称】POSH WELLNESS LABORATORY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】延島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 伸子
(72)【発明者】
【氏名】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】古志 知也
(72)【発明者】
【氏名】堀井 美徳
(72)【発明者】
【氏名】根武谷 吾
(72)【発明者】
【氏名】來田 知也
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅史
(72)【発明者】
【氏名】中石 佳太
(72)【発明者】
【氏名】川島 哲史
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C038DD06
4C038PP03
4C038PS00
4C117XB02
4C117XB18
4C117XC11
4C117XD26
4C117XE13
4C117XE16
4C117XE17
4C117XE20
4C117XH16
4C117XJ05
4C117XJ13
4C117XJ17
4C117XJ21
4C117XL01
4C117XL11
4C127AA02
4C127AA06
4C127GG05
4C127GG18
4C127LL13
(57)【要約】
【課題】測定対象者が着用する衣服から、様々なバイタルサインを取得できるようにする。
【解決手段】測定対象者が着用する衣服であって、当該衣服を測定対象者の腹囲に固定するための帯部を備え、帯部は、測定対象者の腹部に接触する複数の電極と、複数の電極に接続されている複数の配線と、複数の配線を介して複数の電極から電気信号を授受して、電気インピーダンス・トモグラフィにより測定対象者の内臓の状態を測定するための第1測定信号と、電気インピーダンス法により測定対象者の内臓の状態を測定するための第2測定信号とを取得する測定部と、第1測定信号及び第2測定信号を外部に送信する通信部とを有する、衣服。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者が着用する衣服であって、
当該衣服を前記測定対象者の腹囲に固定するための帯部を備え、
前記帯部は、
前記測定対象者の腹部に接触する複数の電極と、
複数の前記電極に接続されている複数の配線と、
複数の前記配線を介して複数の前記電極から電気信号を授受して、電気インピーダンス・トモグラフィにより前記測定対象者の内臓の状態を測定するための第1測定信号と、電気インピーダンス法により前記測定対象者の内臓の状態を測定するための第2測定信号とを取得する測定部と、
前記第1測定信号及び前記第2測定信号を外部に送信する通信部と
を有する、
衣服。
【請求項2】
請求項1に記載の前記衣服と、
前記衣服の前記通信部から送信された前記第1測定信号又は前記第2測定信号の少なくともいずれかに基づき、前記測定対象者の内臓の状態を解析する解析装置と
を備え、
前記解析装置は、
前記通信部から送信された前記第1測定信号及び前記第2測定信号を取得する取得部と、
前記第1測定信号に基づき、電気インピーダンス・トモグラフィを用いて前記測定対象者の膀胱及び直腸の少なくとも一方の断層画像を生成する画像生成部と、
前記断層画像に基づき、前記測定対象者の膀胱及び直腸の少なくとも一方の貯留量を特定する特定部と
を有する、
解析システム。
【請求項3】
前記解析装置は、前記特定部が特定した前記貯留量に基づき、前記測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方を予測する予測部を更に有する、請求項2に記載の解析システム。
【請求項4】
前記解析装置は、前記第2測定信号に基づく前記測定対象者の腹部のインピーダンスと、予め定められた校正曲線とを用いて前記測定対象者の体内脂肪量を推定する体内脂肪量測定部を更に有する、請求項2又は3に記載の解析システム。
【請求項5】
前記解析装置は、前記第2測定信号に基づき、前記測定対象者の心電図波形を生成して前記測定対象者の心拍を測定する心拍測定部を更に有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項6】
前記解析装置は、前記第2測定信号に基づく前記測定対象者の腹部のインピーダンスの時間的な変化の速度と、前記心電図波形のR波の伝搬速度との差に基づき、前記測定対象者の血流の状態を測定する血流状態測定部を更に有する、請求項5に記載の解析システム。
【請求項7】
前記解析装置は、前記心拍測定部が測定した心拍の変動量と前記血流状態測定部が測定した血流の状態に基づき、前記測定対象者のストレス指標を算出するストレス指標算出部を更に有する、請求項6に記載の解析システム。
【請求項8】
前記解析装置は、前記特定部が特定した前記貯留量の経時的な変化と、前記ストレス指標算出部が算出した前記ストレス指標の経時的な変化とに基づき、前記測定対象者の排尿及び排便の少なくとも一方の頻度と前記ストレス指標との対応関係を推定する推定部を更に有する、請求項7に記載の解析システム。
【請求項9】
前記解析装置は、前記特定部が特定した前記貯留量に基づいて前記測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方を予測するために用いるパラメータを記憶する記憶部を更に有し、
前記推定部は、推定した前記対応関係の情報を前記記憶部に蓄積し、前記対応関係の情報の蓄積を開始してから予め定められた時間が経過した後に前記ストレス指標が閾値よりも低減できていない場合、前記測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方の予測結果をより早いタイミングに調節するように、前記パラメータを調節する、
請求項8に記載の解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服及び解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の生命活動の指標となるバイタルサイン等を日常的に取得して、日々の健康管理、健康増進に役立てる試みが知られている。例えば、測定対象者が着用している吸収性物品に尿検知回路等を設け、測定対象者の失禁を監視する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】齋藤仙一, 亀嶋英人, 佐藤幸男:腹部断面形状からの内臓脂肪面積の推定法, 電子情報通信学会論文誌, D, 情報・システム, J92-D(11), 2059-2066, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定対象者の健康管理、健康増進に役立てるためには、測定対象者が毎日のように装着する衣服等から様々なバイタルサインを取得することが望ましい。したがって、着心地、着け心地がよく、測定対象者がセンサ等の装着を意識することなく自然体で着用することができる衣服等から、様々なバイタルサインを取得できる技術が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、測定対象者が着用する衣服から、様々なバイタルサインを取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様においては、測定対象者が着用する衣服であって、当該衣服を前記測定対象者の腹囲に固定するための帯部を備え、前記帯部は、前記測定対象者の腹部に接触する複数の電極と、複数の前記電極に接続されている複数の配線と、複数の前記配線を介して複数の前記電極から電気信号を授受して、電気インピーダンス・トモグラフィにより前記測定対象者の内臓の状態を測定するための第1測定信号と、電気インピーダンス法により前記測定対象者の内臓の状態を測定するための第2測定信号とを取得する測定部と、前記第1測定信号及び前記第2測定信号を外部に送信する通信部とを有する、衣服を提供する。
【0008】
本発明の第2の態様においては、第1の態様の前記衣服と、前記衣服の前記通信部から送信された前記第1測定信号又は前記第2測定信号の少なくともいずれかに基づき、前記測定対象者の内臓の状態を解析する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記通信部から送信された前記第1測定信号及び前記第2測定信号を取得する取得部と、前記第1測定信号に基づき、電気インピーダンス・トモグラフィを用いて前記測定対象者の膀胱及び直腸の少なくとも一方の断層画像を生成する画像生成部と、前記断層画像に基づき、前記測定対象者の膀胱及び直腸の少なくとも一方の貯留量を特定する特定部とを有する、解析システムを提供する。
【0009】
前記解析装置は、前記特定部が特定した前記貯留量に基づき、前記測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方を予測する予測部を更に有してもよい。
【0010】
前記解析装置は、前記第2測定信号に基づく前記測定対象者の腹部のインピーダンスと、予め定められた校正曲線とを用いて前記測定対象者の体内脂肪量を推定する体内脂肪量測定部を更に有してもよい。
【0011】
前記解析装置は、前記第2測定信号に基づき、前記測定対象者の心電図波形を生成して前記測定対象者の心拍を測定する心拍測定部を更に有してもよい。
【0012】
前記解析装置は、前記第2測定信号に基づく前記測定対象者の腹部のインピーダンスの時間的な変化の速度と、前記心電図波形のR波の伝搬速度との差に基づき、前記測定対象者の血流の状態を測定する血流状態測定部を更に有してもよい。
【0013】
前記解析装置は、前記心拍測定部が測定した心拍の変動量と前記血流状態測定部が測定した血流の状態に基づき、前記測定対象者のストレス指標を算出するストレス指標算出部を更に有してもよい。
【0014】
前記解析装置は、前記特定部が特定した前記貯留量の経時的な変化と、前記ストレス指標算出部が算出した前記ストレス指標の経時的な変化とに基づき、前記測定対象者の排尿及び排便の少なくとも一方の頻度と前記ストレス指標との対応関係を推定する推定部を更に有してもよい。
【0015】
前記解析装置は、前記特定部が特定した前記貯留量に基づいて前記測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方を予測するために用いるパラメータを記憶する記憶部を更に有し、前記推定部は、推定した前記対応関係の情報を前記記憶部に蓄積し、前記対応関係の情報の蓄積を開始してから予め定められた時間が経過した後に前記ストレス指標が閾値よりも低減できていない場合、前記測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方の予測結果をより早いタイミングに調節するように、前記パラメータを調節してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定対象者が着用する衣服から、様々なバイタルサインを取得できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る解析システム10の構成例を示す。
【
図2】本実施形態に係る測定部140の構成例を示す。
【
図3】本実施形態に係る解析装置200の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<解析システム10の構成例>
図1は、本実施形態に係る解析システム10の構成例を示す。解析システム10は、測定対象者が着用している衣服100から測定信号を取得して、尿意、便意の予測、体内脂肪の測定、心拍の測定、血流状態の測定、ストレス状態の把握等を実行可能に構成されている。解析システム10は、衣服100と解析装置200とを備える。
【0019】
衣服100は、測定対象者が着用する。衣服100は、測定対象者が衣服100を着用すると、衣服100の少なくとも一部が測定対象者の腹部に接触するものであればよい。衣服100は、例えば、下着、シャツ、腹巻き等である。
図1は、衣服100がパンツである例を示す。衣服100は、帯部110を備える。
【0020】
帯部110は、衣服100を測定対象者の腹囲に固定するための部位である。帯部110は、伸縮可能な生地で形成されている。帯部110は、例えば、ゴム紐である。帯部110は、測定対象者の腹部に接触しつつ衣服100を測定対象者の腹囲に固定する。帯部110は、複数の電極120と、複数の配線130と、測定部140と、通信部150とを有する。
【0021】
複数の電極120は、帯部110の測定対象者を向く面に設けられている。言い換えると、測定対象者が衣服100を着用すると、複数の電極120は、測定対象者の腹部に接触し、接触した状態が維持されるように設けられている。複数の電極120は、測定対象者の腹部の周囲に配置されるように、帯部110の複数の位置に設けられている。複数の電極120は、等間隔で帯部110に設けられていてもよく、これに代えて、測定対象者の内臓の位置に対応して不等間隔に設けられていてもよい。
【0022】
複数の電極120は、例えば、帯部110の布等に導電性材料が印刷、付着又は編み込まれて形成されている導電性布電極である。また、複数の電極120は、起毛電極を有してもよい。起毛電極は、接着剤が塗布された布等に導電性材料を含む繊維を帯電させて吹き付けることにより、布表面に導電性の短繊維を起毛した状態で植え付けた電極である。
【0023】
複数の電極120は、シート状の導電エラストマが布等に張り付けられて形成されている導電性布電極でもよい。複数の電極120は、導電性材料がポリウレタン基材のような絶縁基材を介して布に張り付けられて形成されていてもよい。また、複数の電極120は、フレキシブル基板が布等に張り付けられて形成されていてもよい。この場合、フレキシブル基板は、柔軟性を有し、また、伸縮可能な基板であることが望ましい。このような電極120は、測定対象者が衣服100を着用して肌に当該電極120が接触しても、測定対象者の違和感を低減させて自然な着心地を感じさせることができる。
【0024】
複数の配線130は、複数の電極120に接続されている。複数の配線130は、例えば、帯部110の布等に導電性材料が印刷、付着又は編み込まれて形成されている。複数の配線130は、帯部110が伸縮しても電気的な接続が切断されないように、帯部110の伸縮と同様に伸縮するように形成されていることが望ましい。複数の配線130は、複数の電極120と測定部140とを電気的に接続する。
【0025】
測定部140は、複数の配線130を介して複数の電極120と電気信号を授受する。測定部140は、例えば、複数の電極120のうち2つの電極120を用いて測定対象者に電流を供給する。また、測定部140は、供給した電流により衣服100を着用した状態の測定対象者から発生する電位差を、複数の電極120のうち2つ以上の電極120を用いて測定信号として取得する。測定信号は、後述するように、測定対象者の脈拍、血圧、呼吸又は体温等のように測定対象者の身体の状態を示すバイタルサインを特定するために用いられる。測定部140の詳細については後述する。
【0026】
通信部150は、例えば、測定部140が取得した測定信号を外部に送信する。通信部150は、例えば、ネットワーク20を介して、外部のデータベース30に測定信号を無線で送信する。ネットワーク20は、インターネット、またはローカルエリアネットワークである。データベース30は、記憶装置、サーバ、クラウドストレージ等であり、受信した測定信号を記憶する。また、通信部150は、解析装置200に測定信号を送信してもよい。
【0027】
測定部140及び通信部150は、帯部110の測定対象者を向く面とは反対側の面に設けられている。測定部140及び通信部150は、一体に形成されていることが望ましい。測定部140及び通信部150は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、SiP(System in Package)、SoC(System on Package)等で構成されている。測定部140及び通信部150は、例えば、防水性の保護膜、又はカバー等で覆われている。
【0028】
以上の衣服100は、電源として電池等を更に備える。電池は充電式のバッテリーでよく、これに代えて、ボタン電池等でもよい。このような衣服100は、布を用いた電極120、伸縮可能な配線130、チップ化した小型の測定部140を用いているので、測定対象者が普段着用している衣服等と比較して、着心地、着け心地等がほとんど変わらない程度に形成することができる。また、衣服100は、高い防水性と耐衝撃性を有するので、洗濯して再利用することができる。
【0029】
なお、衣服100は、帯部110が着脱可能に設けられていてもよい。また、帯部110には、測定対象者の衣服等に取り付けられるように、ボタン、クリップ、紐等が更に設けられていてもよい。
【0030】
解析装置200は、このような衣服100の測定部140が取得した測定信号を解析してバイタルサインを算出する。以上の解析システム10は、測定対象者が日常的に着用することができ、再利用可能な衣服100を用いて、測定対象者の様々なバイタルサインを取得する。これにより、解析システム10は、測定対象者が睡眠している状態を含む様々な状態におけるバイタルサインを継続して長期間蓄積することができる。したがって、解析システム10は、測定対象者の長期間における健康管理及び健康増進に役立てられるデータを蓄積できる。このような解析システム10の測定部140、解析装置200のより詳細な動作について、次に後述する。
【0031】
<測定部140の構成例>
図2は、本実施形態に係る測定部140の構成例を示す。測定部140は、電流供給部141、電位測定部142、切換部143、制御部144、及び記憶部145を有する。
【0032】
電流供給部141は、第1電極対を介して測定対象者に電流を供給する。ここで、第1電極対は、複数の電極120のうち、測定部140が測定対象者に電流を供給するために用いる2つの電極120である。2つの電極120は、予め定められていてもよく、これに代えて、制御信号等によって選択されてもよい。また、第1電極対は、複数の電極対であってもよい。この場合、電流供給部141は、複数の第1電極対に対して予め定められた順番で電流を供給する。電流供給部141は、例えば、直流電流又は交流電流を供給可能な電流源として機能する。電流供給部141は、正弦波、矩形波等を供給可能であってもよい。
【0033】
電位測定部142は、複数の電極対のうち第1電極対とは異なる第2電極対を介して、測定対象者に印加した電流に対応する電位差を検出する。ここで、第2電極対は、複数の電極120のうち、電位測定部142が電位差を検出するために用いる2つの電極120である。2つの電極120は、予め定められていてもよく、これに代えて、制御信号等によって選択されてもよい。また、第2電極対は、複数の電極対であってもよい。この場合、電位測定部142は、複数の第2電極対の電位差を同時に検出してもよく、これに代えて、予め定められた順番で検出してもい。電位測定部142は、例えば、フィルタ、増幅回路、A/D変換器を有し、検出した電位差をデジタル信号に変換する。
【0034】
切換部143は、制御部144から受け取った制御信号に応じて、複数の電極120のうち制御信号に対応する第1電極対と電流供給部141とを接続する。切換部143は、例えば、切り換えスイッチを有し、制御信号が指定する第1電極対と電流供給部141とを接続する。また、切換部143は、複数の電極120のうち制御信号に対応する第2電極対と電位測定部142とを接続する。切換部143は、例えば、切り換えスイッチを有し、制御信号が指定する第2電極対と電位測定部142とを接続する。
【0035】
制御部144は、測定部140内の各部を制御する。制御部144は、例えば、切換部143に制御信号を供給して、複数の電極120のうち第1電極対として機能させる電極対を選択する。同様に、制御部144は、切換部143に制御信号を供給して、複数の電極120のうち第2電極対として機能させる電極対を選択する。また、制御部144は、電流供給部141を制御して、測定対象者に電流を印加する。制御部144は、電位測定部142を制御して、測定対象者から発生した電位差を検出する。更に、制御部144は、通信部150を制御して、測定部140が出力する測定信号を外部に送信してもよい。
【0036】
記憶部145は、測定部140が動作の過程で生成する(又は利用する)中間データ、算出結果、閾値、およびパラメータ等をそれぞれ記憶する。記憶部145は、例えば、測定する項目に対応する第1電極対及び第2電極対の情報を記憶する。これにより、制御部144は、測定対象者を測定する項目毎に第1電極対及び第2電極対の情報を読み出して切換部143を制御することにより、測定項目に対応して複数の電極120と測定部140とを正しく接続することができる。
【0037】
記憶部145は、コンピュータ等が制御部144として機能するOS(Operating System)、およびプログラム等の情報を格納してもよい。また、記憶部145は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。例えば、コンピュータは、記憶部に記憶されたプログラムを実行することによって、制御部144として機能する。
【0038】
以上の本実施形態に係る測定部140は、測定対象者に電流を印加し、印加した電流に対応して測定対象者から発生する電位差を検出する。測定部140は、例えば、電気インピーダンス・トモグラフィにより測定対象者の内臓の状態を測定するための第1測定信号を出力する。
【0039】
第1測定信号は、複数の第2電極対からそれぞれ検出される電位差の時系列データを含む信号である。複数の電極120は、測定対象者の腹部の周囲に配置されているので、複数の電極120から任意に第1電極対を選択しても、選択した第1電極対は測定対象者の内臓に電流を印加することができる。同様に、複数の電極120は、測定対象者の腹部の周囲に配置されているので、解析装置200は、複数の電極120から任意に選択された複数の第2電極対から出力される信号を解析することにより、印加した電流に応じて測定対象者の内臓から発生する電位を検出することができる。
【0040】
例えば、測定部140は、1つの第1電極対から電流を印加し、第1電極対とは異なる複数の第2電極対の電位差を継続して検出することで、膀胱の2次元画像又は3次元画像を生成するための第1測定信号を出力する。第1測定信号は、異なる位置に配置されている複数の第2電極対において検出された、内臓から発生される電位を検出した複数の測定信号を含む。したがって、解析装置200は、第1測定信号を解析することにより、異なる複数の角度から内臓のインピーダンスを特定して当該内臓の画像を生成することができる。
【0041】
また、測定部140は、電気インピーダンス法により測定対象者の内臓の状態を測定するための第2測定信号を検出してもよい。例えば、測定部140は、測定対象者の腹部に接する1つの第1電極対から電流を印加し、第1電極対とは異なる1つの第2電極対の電位差を継続して検出することで、腹部のインピーダンスを測定するための第2測定信号を出力する。第2測定信号は、内臓から発生する電位を1つの第2電極対から検出した測定信号なので、第2測定信号を解析することにより、内臓のインピーダンスを特定することができる。
【0042】
なお、第2測定信号を取得するために電流を供給する第1電極は、第1測定信号を取得するために電流を供給する第1電極と同一の電極120であってもよく、これに代えて、異なる電極120であってもよい。また、第2測定信号を取得するために電位差を検出する第2電極は、第1測定信号を取得するために電位差を検出する複数の第2電極対に含まれている電極であってもよく、これに代えて、異なる電極120であってもよい。このような第1測定信号及び第2測定信号を用いた解析装置200の動作について次に説明する。
【0043】
<解析装置200の構成例>
図3は、本実施形態に係る解析装置200の構成例を示す。解析装置200は、衣服100の通信部150から送信された第1測定信号又は第2測定信号の少なくともいずれかに基づき、測定対象者の内臓の状態を解析する。解析装置200は、例えば、サーバ等のコンピュータである。また、解析装置200は、パソコン、携帯端末等でもよい。解析装置200は、一例として、測定対象者が保有する携帯端末である。この場合、測定対象者は、日々の健康状態を自身で簡便に確認できる。解析装置200は、取得部210と、記憶部220と、算出部230と、出力部240とを備える。
【0044】
取得部210は、通信部150から送信された第1測定信号及び第2測定信号を取得する。取得部210は、ネットワーク20を介して、データベース30から第1測定信号及び第2測定信号を取得する。取得部210は、第1測定信号に含まれる複数の信号のうちの一部の信号を第2測定信号として取得してもよい。また、取得部210は、衣服100から直接第1測定信号及び第2測定信号を取得してもよい。この場合、解析装置200は、衣服100の通信部150と通信可能な送受信回路を更に備え、取得部210は、送受信回路を介して第1測定信号及び第2測定信号を取得する。
【0045】
記憶部220は、取得部210が取得した情報を記憶する。また、記憶部220は、解析装置200が動作の過程で生成する(又は利用する)中間データ、算出結果、閾値、基準値、及びパラメータ等をそれぞれ記憶してもよい。また、記憶部220は、解析装置200内の各部の要求に応じて、記憶したデータを要求元に供給してもよい。
【0046】
記憶部220は、例えば、サーバ等のコンピュータが解析装置200として機能する場合、コンピュータを機能させるOS(Operating System)、及びプログラム等の情報を格納してもよい。また、記憶部220は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。例えば、コンピュータは、記憶部220に記憶されたプログラムを実行することによって、解析装置200として機能する。
【0047】
記憶部220は、例えば、コンピュータ等のBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、及び作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部220は、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでもよい。また、コンピュータは、GPU(Graphics Processing Unit)等を更に備えてもよい。
【0048】
算出部230は、第1測定信号及び第2測定信号のうち少なくとも一方の信号に基づき、測定対象者の内臓の状態を示すデータを算出する。算出部230は、例えば、測定対象者の膀胱又は直腸の画像を生成する。また、算出部230は、生成した画像に基づき、測定対象者の尿意及び/又は便意を予測してもよい。この場合、算出部230は、画像生成部231と、特定部232と、予測部233とを有する。
【0049】
画像生成部231は、第1測定信号に基づき、電気インピーダンス・トモグラフィを用いて測定対象者の膀胱及び直腸の少なくとも一方の断層画像を生成する。画像生成部231が用いる電気インピーダンス・トモグラフィは、既知の技術なのでここでは詳細な説明を省略する。また、画像生成部231は、複数の異なる部位に対する断層画像を生成して、測定対象者の膀胱及び直腸の少なくとも一方の3次元画像を生成してもよい。
【0050】
画像生成部231は、断層画像を生成する対象として解析装置200のユーザにより設定された部位に対応する複数の第2電極対から出力された複数の信号を含む第1測定信号に基づいて断層画像を生成してもよい。画像生成部231は、例えば、取得部210が取得した第1測定信号に含まれる複数の信号から、断層画像を生成する対象として設定された部位に対応する複数の信号を、断層画像の生成に用いる信号として選択する。画像生成部231は、通信部150を介して、部位を特定する情報又は複数の第2電極対を指定する情報を衣服100に送信することにより、断層画像を生成する対象として設定された部位に対応する複数の信号を含む第1測定信号を衣服100に送信させ、当該第1測定信号に基づいて断層画像を生成してもよい。画像生成部231は、第2電極対に代えて、又は第2電極対とともに、断層画像を生成する対象として設定された部位に基づいて、電流を流す第1電極対も選択してもよい。
【0051】
特定部232は、例えば、膀胱又は直腸に比較的近い位置(例えば膀胱又は直腸に最も近い位置)の複数の第2電極対から出力された複数の信号に基づいて画像生成部231が生成した断層画像に基づき、測定対象者の膀胱及び直腸の少なくとも一方の貯留量を特定する。特定部232は、定期的に膀胱及び/又は直腸の貯留量を特定することが望ましい。これにより、特定部232は、測定対象者の膀胱及び/又は直腸の状態をモニタリングすることができ、測定対象者が排尿したこと、排尿した時刻、排便したこと、及び/又は排便した時刻等を特定することができる。
【0052】
予測部233は、特定部232が特定した貯留量に基づき、測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方を予測する。予測部233は、例えば、測定対象者の排尿時に特定した膀胱の貯留量の平均値を算出し、当該平均値と現在の特定部232によって特定された貯留量とを比較する。そして、予測部233は、現在の貯留量が貯留量の平均値の予め定められた割合を超えたタイミングを、測定対象者の排尿タイミングとする。予め定められた割合は、例えば、貯留量の平均値の70%から100%の間で定められてよく、貯留量の平均値の80%から95%の間で定められていることが望ましい。
【0053】
また、予測部233は、特定部232が特定した貯留量と第1閾値とを比較して、測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方を予測してもよい。例えば、予測部233は、特定部232が特定した膀胱の貯留量が第1閾値を超えたタイミングを、測定対象者の排尿タイミングであると予測する。
【0054】
また、予測部233は、膀胱の貯留量の時間的な増加量を算出して、膀胱の貯留量が排尿時の貯留量の平均値となる時刻を排尿タイミングとして予測してもよい。これに代えて、予測部233は、過去に特定された膀胱の貯留量、貯留量を特定した時刻、過去に排尿した時刻、及び/又は排尿時の貯留量等をパラメータとして、測定対象者の排尿タイミングを学習して学習モデルを生成してもよい。これにより、予測部233は、生成したモデルに現在時刻と現在の膀胱の貯留量とを適用して、排尿タイミングを予測できる。なお、予測部233は、排尿タイミングと同様に、排便タイミングを予測してもよい。また、記憶部220は、排尿タイミング及び/又は排便タイミングを予測するために用いるパラメータである、予め定められた割合、第1閾値、貯留量の時間的な増加量等を記憶してよい。
【0055】
出力部240は、算出部230の算出結果を出力する。出力部240は、例えば、画像生成部231が生成した断層画像を表示装置等に表示する。出力部240は、特定部232が特定した膀胱の貯留量、直腸の貯留量、排尿した時刻、及び/又は排便した時刻等を表示装置等に表示してもよい。出力部240は、予測部233が予測した排尿タイミング及び/又は排便タイミング等を表示装置等に表示してもよい。
【0056】
これにより、解析装置200の操作者は、測定対象者の排尿タイミング及び/又は排便タイミング等を把握することができる。また、測定対象者は、このような操作者からの通知を受けること、又は解析装置200を操作することで、自身の排尿タイミング、排便タイミング等を知ることができる。
【0057】
また、出力部240は、このような算出部230の算出結果を記憶部220及び/又はデータベース30に記憶させてもよい。この場合、出力部240は、ネットワーク20を介してデータベース30に算出結果を出力できることが望ましい。
【0058】
なお、解析装置200が測定対象者の携帯端末ではない場合、出力部240は、測定対象者が保有する携帯端末に算出部230の算出結果を送信してもよい。この場合、出力部240は、ネットワーク20を介して算出結果を携帯端末に送信してもよい。これに代えて、解析装置200は、携帯端末と通信可能な送受信回路を更に備えてもよい。これにより、解析装置200は、測定対象者に排尿タイミング、排便タイミング等を通知することができる。
【0059】
例えば、高齢の測定対象者は、加齢によって尿意、便意が薄らいでしまうこと、又は喪失してしまうことがある。このような測定対象者は、自身の排尿タイミング、及び/又は排便タイミングがわからないので、ストレスがたまり、また、日常の生活範囲を狭めてしまう傾向がある。そこで、このような測定対象者が本実施形態に係る解析システム10を利用することで、自身の排尿タイミング、及び/又は排便タイミング等を把握することができ、ストレスを解消して、日常の生活範囲を拡大させることができる。
【0060】
また、測定対象者は、膀胱及び直腸の状態、排尿、及び/又は排便の記録等も把握することができるので、健康状態を客観的に自覚することができる。また、測定対象者は、自身の直近の食生活、運動した内容と時間、睡眠時間等と健康状態とを照らし合わせることができ、健康管理、健康状態の増進のモチベーションを高めることができる。
【0061】
<メタボ度の測定例>
以上の本実施形態に係る解析装置200は、第1測定信号に基づき、測定対象者の膀胱及び直腸の状態を表示すること、排尿タイミング及び排便タイミングを予測すること等を説明したが、これに限定されることはない。これに代えて、又は、これに加えて、解析装置200は、測定対象者のメタボリックシンドローム(以後、メタボとする)の度合いを測定してもよい。この場合、解析装置200の算出部230は、体内脂肪量測定部234を有する。
【0062】
体内脂肪量測定部234は、第2測定信号に基づく測定対象者の腹部のインピーダンスと、予め定められた校正曲線とを用いて測定対象者の体内脂肪量を推定する。ここで、インピーダンス法を用いることで、体内脂肪量測定部234は、第2測定信号から測定対象者の腹部のインピーダンスを算出することができる。なお、第2測定信号からインピーダンス法により、電流を印加した部位のインピーダンスを測定する技術は、既知の技術なのでここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
体内脂肪量測定部234は、例えば体内脂肪量の測定感度に基づいて決定された第2電極対から出力された信号を含む第2測定信号に基づいて、腹部のインピーダンスを算出する。測定対象者によって体内脂肪量の測定に適した第2電極対の位置が異なるということが想定される。そこで、体内脂肪量測定部234は、例えば解析装置200のユーザにより設定された位置の第2電極対から出力された信号を含む第2測定信号に基づいて腹部のインピーダンスを算出してもよい。体内脂肪量測定部234は、通信部150を介して、腹部のインピーダンスの算出に使用する第2電極対を指定する情報を衣服100に送信することにより、ユーザにより設定された位置に対応する第2電極対が出力する第2測定信号を衣服100に送信させ、当該第2測定信号に基づいて腹部のインピーダンスを算出してもよい。体内脂肪量測定部234は、第2電極対に代えて、又は第2電極対とともに、電流を流す第1電極対も選択してもよい。
【0064】
測定対象者の腹部のインピーダンスは、測定対象者の腹囲、年齢、性別等をパラメータとして、体内脂肪量とある程度の相関があることが知られており、校正曲線を予め生成することができる。そこで、記憶部220は、このような校正曲線を記憶する。そして、体内脂肪量測定部234は、記憶部220から校正曲線を読み出して、算出した腹部のインピーダンスに対応する体内脂肪量を測定対象者の体内脂肪量として推定する。
【0065】
また、体内脂肪量測定部234は、体内脂肪量の推定結果に対応するメタボ度の評価値を特定してもよい。このようなメタボ度の評価値は、例えば、測定対象者の年齢、性別、体内脂肪量に対応して予め評価テーブルとして定めることができる。記憶部220は、このような評価テーブルを記憶する。そして、体内脂肪量測定部234は、記憶部220から評価テーブルを読み出して、推定した体内脂肪量に対応する評価値を測定対象者のメタボ度として特定する。
【0066】
出力部240は、体内脂肪量測定部234の推定結果、特定結果を出力する。出力部240は、例えば、体内脂肪量測定部234が推定した体内脂肪量等を表示装置等に表示してもよく、記憶部220及び/又はデータベース30に記憶させてもよい。また、出力部240は、測定対象者が保有する携帯端末に体内脂肪量測定部234の推定結果等を送信してもよい。これにより、測定対象者は、自身の体内脂肪量、メタボ度を客観的に把握することができ、健康管理、健康状態の増進のモチベーションを高めることができる。
【0067】
<心拍、血流、ストレス指標の測定例>
以上の本実施形態に係る解析装置200は、第2測定信号に基づき、測定対象者の体内脂肪量を測定すること等を説明したが、これに限定されることはない。これに代えて、又は、これに加えて、解析装置200は、測定対象者の心拍、血流、ストレス等を測定してもよい。この場合、解析装置200の算出部230は、心拍測定部235、血流状態測定部236、ストレス指標算出部237、及び推定部238を有する。
【0068】
心拍測定部235は、第2測定信号に基づき、測定対象者の心電図波形を生成して測定対象者の心拍を測定する。第2測定信号は、測定対象者の心臓の電気的な活動を示す信号を含むので、心拍測定部235は、第2測定信号から測定対象者の心電図波形を生成することができる。心電図波形は、心室の興奮時に生じるQRS波を含む。そして、心拍測定部235は、時間的に連続する2つのR波の時間間隔(R-R間隔)を心拍の周期とすることで、測定対象者の心拍を算出できる。
【0069】
血流状態測定部236は、第2測定信号に基づく測定対象者の腹部のインピーダンスの時間的な変化の速度と、心電図波形のR波の伝搬速度との差に基づき、測定対象者の血流の状態を測定する。上述のとおり、インピーダンス法を用いることで、第2測定信号から測定対象者の腹部のインピーダンスを算出することができる。血流状態測定部236は、測定対象者の腹部のインピーダンスを順次算出して、インピーダンスの時間的な変化の速度を特定する。
【0070】
ここで、心電図波形のR波は電気信号なので、R波の伝搬速度は光速の1/10程度となる。このような高速な伝搬速度に対して、心臓の拍動によるインピーダンスの変化は、時間遅れを生じさせる。このような時間遅れは、血管の経路長と血管の硬さに対応して変動する。したがって、血流状態測定部236は、特定した測定対象者の腹部のインピーダンスの変化速度に基づき、測定対象者の血管年齢を推定することができる。例えば、インピーダンスの変化速度が、月単位又は年単位のより長時間で変動する場合、測定対象者の血管年齢(血管の硬さ、狭窄状体)は大きくなる傾向がある。
【0071】
記憶部220は、例えば、このようなインピーダンスの変化速度と血管年齢との対応関係を対応テーブルとして記憶する。そして、血流状態測定部236は、記憶部220から対応テーブルを読み出して、特定した腹部のインピーダンスの変化速度に対応する血管年齢を測定対象者の血管年齢として推定する。
【0072】
ストレス指標算出部237は、心拍測定部235が測定した心拍の変動量と血流状態測定部236が測定した血流の状態に基づき、測定対象者のストレス指標を算出する。例えば、経時的な心拍の変動量は、測定対象者が感じているストレスと相関があると考えられている。また、血流状態測定部236が推定した血管年齢が、分単位又は時間単位のより短時間で変動する場合、測定対象者が感じているストレスが強い傾向がある。
【0073】
そこで、心拍の変動量及び血管年齢に対応するストレス指標を予め定めておくことで、ストレス指標算出部237は、測定対象者のストレス指標を特定できる。記憶部220は、例えば、心拍の変動量及び血管年齢とストレス指標との対応関係を示す対応テーブルを記憶する。そして、ストレス指標算出部237は、記憶部220から対応テーブルを読み出して、心拍の変動量及び血管年齢の測定結果に対応するストレス指標を測定対象者のストレス指標として特定する。これにより、ストレス指標算出部237は、測定対象者の循環器系の測定結果を考慮したより精度の高いストレス指標を特定することができる。
【0074】
出力部240は、以上の心拍測定部235の測定結果、血流状態測定部236の測定結果、及びストレス指標算出部237の算出結果を出力する。出力部240は、これらの結果を表示装置等に表示してもよく、記憶部220及び/又はデータベース30に記憶させてもよい。また、出力部240は、測定対象者が保有する携帯端末にこれらの結果を送信してもよい。これにより、測定対象者は、自身の心拍、血流の状態、ストレス指標を客観的に把握することができ、健康管理、健康状態の増進のモチベーションを高めることができる。
【0075】
以上説明したように、解析装置200は、第2測定信号を用いて、測定対象者の体内脂肪量、心拍、血流及びストレス等の各種の解析をすることができる。解析する対象によって、解析に用いる第2電極対が異なることが想定される。そこで、解析装置200の算出部230は、解析装置200のユーザにより設定された解析対象に予め関連付けて記憶部220に記憶された第2電極対から出力された信号を含む第2測定信号に基づいて、測定対象者の状態を解析してもよい。解析装置200は、通信部150を介して、解析に使用する第2電極対を指定する情報を衣服100に送信することにより、解析対象に対応する第2電極対が出力する第2測定信号を衣服100に送信させ、当該第2測定信号に基づいて測定対象者の状態を解析してもよい。解析装置200は、解析対象に基づいて、第2電極対に代えて、又は第2電極対とともに、電流を流す第1電極対を選択してもよい。
【0076】
以上のように、本字実施形態に係る解析システム10は、測定対象者が衣服100を着用しているだけで、測定対象者の安静、自然呼吸時のバイタルサイン等を測定することができる。そして、解析システム10は、尿意、便意等の測定対象者の個人差がある感覚を定量的に評価することができる。
【0077】
また、解析システム10は、洗濯により衣服100を再利用できる。更に、解析システム10は、測定対象者の排尿タイミング、排便タイミングを通知できるので、測定対象者は尿意、便意等の感覚が衰えても適切に排尿すること及び排便することができる。したがって、測定対象者は、失禁してしまうことを低減できるので、排泄するタイミングを意識することなく日常生活を送ることができ、ストレスを軽減することができる。そして、解析システム10は、測定対象者が継続して衣服100を着用でき、長期間にわたるバイタルサイン等の測定結果を容易かつ低コストで蓄積することができる。
【0078】
なお、解析システム10は、測定対象者のストレス指標も測定できるので、このような測定対象者の排尿及び排便とストレスとの対応関係を推定することもできる。この場合、推定部238は、特定部232が特定した貯留量の経時的な変化と、ストレス指標算出部237が算出したストレス指標の経時的な変化とに基づき、測定対象者の排尿及び排便の少なくとも一方の頻度とストレス指標との対応関係を推定する。推定部238は、このように推定した対応関係の情報を記憶部220に蓄積してもよい。
【0079】
これにより、測定対象者は、解析システム10を利用することによってストレスが低減できることを実感することができる。また、解析システム10は、例えば、排尿及び排便の頻度とストレス指標との対応関係の推定結果の情報を蓄積し、対応関係の情報の蓄積を開始してから予め定められた時間が経過した後にストレス指標が第2閾値よりも低減できているか否かを確認してもよい。そして、解析システム10は、ストレス指標が第2閾値よりも低減できていない場合、算出部230のパラメータを変更してもよい。ここで、算出部230のパラメータは、例えば、記憶部220が記憶している上述の予め定められた割合、第1閾値、及び貯留量の時間的な増加量のうちの少なくとも1つである。
【0080】
この場合、推定部238は、ストレス指標が第2閾値よりも低減できていない場合、測定対象者に通知する排尿タイミング及び/又は排便タイミングをより早いタイミングに調節する。例えば、予測部233が現在の貯留量と第1閾値とを比較して排尿タイミング及び/又は排便タイミングを予測する場合、記憶部220は第1閾値を記憶しているものとする。そして、推定部238は、測定対象者の排尿タイミング及び排便タイミングの少なくとも一方の予測結果をより早いタイミングに調節するように、記憶部220に記憶されている第1閾値をより小さい値に変更する。これに代えて、算出部230は、予測部233が予測した排尿タイミング及び/又は排便タイミングから予め定められた時間を差し引いてもよい。
【0081】
これにより、解析システム10は、測定対象者が尿意、便意等の感覚が衰えてストレスを感じている場合に、排尿タイミング、排便タイミングの予測結果をより早く通知することができ、測定対象者のストレスを軽減させることができる。
【0082】
また、算出部230は、ストレス指標が第2閾値を超えて低減できている場合、測定対象者に通知する排尿タイミング及び/又は排便タイミングをより遅いタイミングに調節してもよい。例えば、予測部233が、現在の貯留量と第1閾値とを比較して排尿タイミング及び/又は排便タイミングを予測する場合、第1閾値をより大きい値に変更する。このように、算出部230は、ストレス指標がより低くなるように第1閾値を調節して、排尿タイミング及び排便タイミングを適切に設定することができる。
【0083】
なお、解析システム10は、測定対象者の体内脂肪量、メタボ度も測定できるので、測定対象者の体内脂肪量又はメタボ度とストレスとの対応関係を推定してもよい。この場合、推定部238は、体内脂肪量測定部234が測定した体内脂肪量とストレスとの対応関係を推定してもよく、また、体内脂肪量測定部234が特定したメタボ度とストレスとの対応関係を推定してもよい。これにより、測定対象者が感じているストレスのうち、肥満に基づくストレスの度合いを客観的に把握することができる。
【0084】
以上の本実施形態に係る解析システム10は、測定対象者の衣服100から送信された第1測定信号と第2測定信号とを取得して、測定対象者のバイタルサインを把握する例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、測定対象者の衣服100には、GPS受信装置が更に設けられており、通信部150はGPS信号の受信結果を外部に送信する。これに代えて、通信部150は、高速通信規格の4G通信又は5G通信を用いて基地局と通信可能でよく、4G通信又は5G通信による測位情報を生成して外部に送信してもよい。
【0085】
これにより、解析装置200は、測定対象者の位置を特定することができる。解析装置200は、特定した測定対象者の位置を蓄積することにより、測定対象者の行動範囲をモニタリングすることができる。解析装置200は、モニタリングにより、例えば、測定対象者の行動範囲及び徘徊の状態を把握できる。更に、解析装置200は、測定対象者の行動範囲及び徘徊の状態と、測定対象者のストレス指標との対応関係を特定することができる。
【0086】
また、測定対象者の衣服100には、測定対象者の動きを検出するための複数軸の加速度センサ等が設けられていてもよい。例えば、衣服100には、9軸の加速度センサが設けられており、通信部150は、加速度センサによる検出結果を外部に送信する。これにより、解析装置200は、測定対象者の運動状態及び日常の活動量を特定することができる。更に、解析装置200は、測定対象者の運動状態及び日常の活動量と、測定対象者のストレス指標との対応関係を特定することができる。
【0087】
このような対応関係を特定することにより、測定対象者の不足している運動量とストレスとの関係を明らかにすることができ、解析装置200の操作者等は、ストレスの状況に対応する運動量を助言して効果的な運動療法指導等を実施することができる。また、解析装置200は、測定対象者の運動状態及び日常の活動量とメタボ度との対応関係を特定することもできる。この場合も、測定対象者の不足している運動量とメタボ度との関係を明らかにすることができる。
【0088】
また、測定対象者の衣服100には、腹囲を測定するための長さセンサ、腹部形状を測定するための腹部形状センサが設けられてもよい。長さセンサは、例えば、衣服100の帯部110に導電性インク等で設けられている抵抗素子、容量素子、及び/又はインダクタンス素子である。この場合、測定対象者が衣服100を着用している状態の長さセンサのインピーダンスに基づき、測定対象者の腹囲を測定できる。
【0089】
腹部形状センサは、衣服100の帯部110に導電性インク等で設けられており、帯部110の曲面の形状に応じてインピーダンスが変化するセンサである。この場合、測定対象者が衣服100を着用している状態の腹部形状センサのインピーダンスに基づき、測定対象者の腹囲形状を測定できる。通信部150は、このように測定した測定対象者の腹囲及び腹囲形状を外部に送信してもよい。これに代えて、通信部150は、測定したインピーダンスの情報を外部に送信し、解析装置200が測定対象者の腹囲及び腹囲形状を算出してもよい。
【0090】
解析装置200は、測定対象者の腹囲及び腹囲形状と、測定対象者の腹部のインピーダンスとを用いることにより、測定対象者の皮下脂肪量及び内臓脂肪量を推定できる。なお、皮下脂肪量及び内臓脂肪量の推定方法については、例えば、非特許文献1に記載されているように既知なので、ここでは説明を省略する。これにより、解析装置200は、測定対象者の皮下脂肪量及び内臓脂肪量を用いて、測定対象者のメタボの度合いをより正確に特定することができる。
【0091】
また、解析装置200は、測定対象者の腹囲及び腹囲形状の継続的な測定結果を取得することで、測定対象者の呼吸の状態を把握することもできる。測定対象者の呼吸の状態は、例えば、単位時間当たりの呼吸の回数、呼吸の深さである。
【0092】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0093】
10 解析システム
100 衣服
110 帯部
120 電極
130 配線
140 測定部
141 電流供給部
142 電位測定部
143 切換部
144 制御部
145 記憶部
150 通信部
200 解析装置
210 取得部
220 記憶部
230 算出部
231 画像生成部
232 特定部
233 予測部
234 体内脂肪量測定部
235 心拍測定部
236 血流状態測定部
237 ストレス指標算出部
238 推定部
240 出力部