(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174788
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】標準在庫品管理装置、標準在庫品管理システム及び標準在庫品管理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221117BHJP
G06Q 10/06 20120101ALI20221117BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080747
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝又 大介
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】永原 聡士
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA07
3C100AA08
3C100AA22
3C100AA36
3C100AA43
3C100AA45
3C100AA65
3C100BB05
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB36
3C100BB38
3C100BB39
3C100EE10
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】販売計画又は受注に応じて、調達すべき原料鋼材の寸法・数量を具体的に決定する。
【解決手段】本発明の標準在庫品管理装置は、計画段階の製品の寸法及び数量を記録した第1の情報と、前記計画段階の製品を切り出すもととなる原料鋼材の標準品の候補の寸法を記録した第2の情報と、前記標準品の切断費用を前記標準品の寸法ごとに記録した第3の情報と、前記標準品を切断した後に生じる端材の廃棄費用を前記端材の寸法ごとに記録した第4の情報と、を参照し、前記計画段階の製品に応じて、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計が所定の基準を満たす程度に小さくなるような前記標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに決定する切断模擬部を備えるとともに、前記決定した標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに表示し記憶する在庫品管理部を備えることを特徴とする。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画段階の製品の寸法及び数量を記録した第1の情報と、
前記計画段階の製品を切り出すもととなる原料鋼材の標準品の候補の寸法を記録した第2の情報と、
前記標準品の切断費用を前記標準品の寸法ごとに記録した第3の情報と、
前記標準品を切断した後に生じる端材の廃棄費用を前記端材の寸法ごとに記録した第4の情報と、
を参照し、前記計画段階の製品に応じて、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計が所定の基準を満たす程度に小さくなるような前記標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに決定する切断模擬部を備えるとともに、
前記決定した標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに表示し記憶する在庫品管理部を備えること、
を特徴とする標準在庫品管理装置。
【請求項2】
前記切断模擬部は、
前記標準品の候補に対し、前記計画段階の製品を割り当てるとともに、前記標準品の候補に対し、前記製品を切り出す順序を含む切断方法を割り当て、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の標準在庫品管理装置。
【請求項3】
前記切断模擬部は、
寸法が異なる前記標準品の候補の種類数を限定したうえで、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計を算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の標準在庫品管理装置。
【請求項4】
前記切断模擬部は、
寸法が異なる前記標準品の候補の在庫回転期間も考慮し、前記合計が所定の基準を満たす程度に小さくなるような前記標準品の数量を決定すること、
を特徴とする請求項3に記載の標準在庫品管理装置。
【請求項5】
前記切断模擬部は、
外部装置から前記切断方法を取得することができる場合、当該外部装置から、前記切断方法を取得すること、
を特徴とする請求項4に記載の標準在庫品管理装置。
【請求項6】
前記切断模擬部は、
前記第3の情報と、
前記第4の情報と、
受注段階の製品の寸法及び数量を記録した第5の情報と、
前記受注段階において存在する在庫品であって、前記標準品又は前記端材を含む在庫品の寸法を記録した第6の情報と、
を参照し、
前記在庫品から前記受注段階の製品を切り出すために、前記受注段階の製品に応じて、前記廃棄費用が所定の基準を満たす程度に小さくなるような前記在庫品の数量を前記在庫品の寸法ごとに決定し、
前記受注段階において存在する前記在庫品又は前記端材の廃棄費用を算出し、
当該算出した廃棄費用と前記決定した在庫品の数量に対応する廃棄費用との差分を算出すること、
を特徴とする請求項5に記載の標準在庫品管理装置。
【請求項7】
標準在庫品管理装置及び切断処理装置を備える標準在庫品管理システムであって、
前記標準在庫品管理装置は、
計画段階の製品の寸法及び数量を記録した第1の情報と、
前記計画段階の製品を切り出すもととなる原料鋼材の標準品の候補の寸法を記録した第2の情報と、
前記標準品の切断費用を前記標準品の寸法ごとに記録した第3の情報と、
前記標準品を切断した後に生じる端材の廃棄費用を前記端材の寸法ごとに記録した第4の情報と、
を参照し、前記計画段階の製品に応じて、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計が所定の基準を満たす程度に小さくなるような前記標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに決定する切断模擬部を備えるとともに、
前記決定した標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに表示し記憶する在庫品管理部を備え、
前記切断模擬部は、
前記標準品の候補に対し、前記計画段階の製品を割り当てるとともに、前記標準品の候補に対し、前記製品を切り出す順序を含む切断方法を割り当て、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計を算出し、
前記切断処理装置は、
前記標準在庫品管理装置からの要求に応じ、前記切断方法を前記標準在庫品管理装置に送信すること、
を特徴とする標準在庫品管理システム。
【請求項8】
標準在庫品管理装置の切断模擬部は、
計画段階の製品の寸法及び数量を記録した第1の情報と、
前記計画段階の製品を切り出すもととなる原料鋼材の標準品の候補の寸法を記録した第2の情報と、
前記標準品の切断費用を前記標準品の寸法ごとに記録した第3の情報と、
前記標準品を切断した後に生じる端材の廃棄費用を前記端材の寸法ごとに記録した第4の情報と、
を参照し、前記計画段階の製品に応じて、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計が所定の基準を満たす程度に小さくなるような前記標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに決定し、
標準在庫品管理装置の在庫品管理部は、
前記決定した標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに表示し記憶すること、
を特徴とする標準在庫品管理装置の標準在庫品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準在庫品管理装置、標準在庫品管理システム及び標準在庫品管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材メーカは、特定の材質、寸法及び数量の製品を受注する。鋼材メーカは、もととなる原料鋼材を原料メーカ等から仕入れ、その原料鋼材から製品を切り出す。切り出した後の残りの原料鋼材は、端材として廃棄される。原料鋼材の寸法・数量の選択及び端材の管理は、鋼材メーカにとって非常に重要であり、その収益に直接的に影響する。
【0003】
特許文献1の納入・在庫管理システムは、鋼材の在庫過剰及び納期遅れを回避する。当該システムは、在庫又は仕掛中の製品のうち出荷が決定していない製品に対して、内示又は発注がなされた製品を割当てる。当該システムは、製品に不足が生じる場合、不足分の製造を指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋼材生産の収益性を高めるには、必要な寸法・数量の原料鋼材を無駄なく調達する必要がある。原料鋼材の調達の巧拙が、原料鋼材そのものの調達費用だけでなく、切断費用及び端材廃棄費用を決定する。しかしながら、特許文献1の納入・在庫管理システムは、特定の材質、寸法等を有する製品の不足分を製造することを指示するに留まり、どのような寸法・数量の原料鋼材を調達するかに焦点を当てていない。
そこで、本発明は、販売計画又は受注に応じて、調達すべき原料鋼材の寸法・数量を具体的に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の標準在庫品管理装置は、計画段階の製品の寸法及び数量を記録した第1の情報と、前記計画段階の製品を切り出すもととなる原料鋼材の標準品の候補の寸法を記録した第2の情報と、前記標準品の切断費用を前記標準品の寸法ごとに記録した第3の情報と、前記標準品を切断した後に生じる端材の廃棄費用を前記端材の寸法ごとに記録した第4の情報と、を参照し、前記計画段階の製品に応じて、前記切断費用及び前記廃棄費用の合計が所定の基準を満たす程度に小さくなるような前記標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに決定する切断模擬部を備えるとともに、前記決定した標準品の数量を前記標準品の寸法ごとに表示し記憶する在庫品管理部を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、販売計画又は受注に応じて、調達すべき原料鋼材の寸法・数量を具体的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】第1の実施形態の標準在庫品管理装置の構成等を説明する図である。
【
図13】第1の実施形態の処理手順のフローチャートである。
【
図15】第2の実施形態の標準在庫品管理装置の構成等を説明する図である。
【
図17】第2の実施形態の処理手順のフローチャートである。
【
図19】第3の実施形態の標準在庫品管理装置の構成等を説明する図である。
【
図20】第3の実施形態の処理手順のフローチャートである。
【
図21】第4の実施形態の標準在庫品管理装置の構成等を説明する図である。
【
図24】第4の実施形態の処理手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、原料鋼材である標準在庫品から、製品を切り出す例である。本実施形態は、第1の実施形態~第4の実施形態を有する。
【0010】
〈第1の実施形態〉
(用語等)
製品とは、取引対象となる個体である。製品の例として、均一な材質(例えば鋼、ステンレススチール)からなる鋼材、金型、切削工具等が挙げられる。製品の寸法及び数量は、多くの場合、製品の需要家によって決定されるが、独自の需要見込み(販売計画)に基づき、鋼材メーカによって決定されることもある。製品の寸法は、“幅”、“厚”及び“長さ”で特定される。どの方向が“幅”、“厚”及び “長さ”であるかは、製品の使途、製造方法等により異なる。いずれにしても、製品の寸法は、3次元的に特定される。
【0011】
標準在庫品とは、そこから製品を切り出すもとになる原料鋼材である。標準在庫品の材質は、製品の材質と同じである。標準在庫品の寸法もまた、3次元的な“幅”、“厚”及び“長さ”で特定される。標準在庫品の寸法は、製品の寸法だけでなく、塑性加工用の機械の仕様、輸送・保管方法、材質(素材)の希少性等によって決定されるが、慣行、規定等によって標準化されていることが多い。鋼材メーカは、製品の販売計画又は受注実績に基づき、原料メーカから標準在庫品を仕入れる。鋼材メーカは、受注に係る製品の寸法・数量が具体的に決まらない段階で、標準在庫品の寸法・数量を決め、在庫として保有せざるを得ない場合も多い。
【0012】
端材とは、標準在庫品から製品を切り出した後の残りの部材である。例えば、標準在庫品が“幅1cm×厚1cm×長さ100cm”の細長い角材であるとする。受注に係る製品が“幅1cm×厚1cm×長さ30cm”の角材3本であるとする。このとき、標準在庫品からは、3本の製品及び1本の端材(幅1cm×厚1cm×長さ10cm)が生じる。端材の寸法が充分に大きい場合、他の機会に、その端材から他のより小さい製品を切り出せる場合もある。しかしながら多くの場合、端材は、一時保管費用、運搬費用、産業廃棄物処分費用等の廃棄費用をかけて廃棄される。
【0013】
(切断方法)
図1~
図5は、切断方法を説明する図である。
図1に注目する。切断機(図示せず)は、二点鎖線の標準在庫品4を破線の切断面に沿い幅方向(左右方向)に切断する。切断には順序が付されており、ここでの切断順序は“1”である。わかりやすさのために、標準在庫品4の切断面より右下側に、切り出されるべき2個の製品(実線)を表現した。当然この段階では、製品は見えない。標準在庫品4のうち切断面の左側は、端材となる。
【0014】
図2に注目する。切断機は、
図1の標準在庫品4の右側の部材5を破線の切断面に沿い厚方向(上下方向)に切断する。ここでの切断順序は“2”である。部材5のうち切断面の下側に、2個の製品(実線)が表現されている。部材5のうち切断面の上側は、端材となる。
図3に注目する。切断機は、
図2の部材5の下側の部材6を破線の切断面に沿い長さ方向(前後方向)に切断する。ここでの切断順序は“3”である。部材6の切断面の両側は、2個の製品(実線)そのものである。
図3においては、端材が発生しない。
【0015】
図1~
図3において、標準在庫品4から、2つの製品が切り出された。さらに、この2個の製品を切断することによって、端材を発生させることなく、より小さな製品を作ることも可能である。
【0016】
図4に注目する。切断機は、準備作業として、2個の製品7(
図3において部材6が2分割されたもの)を幅方向(左右方向)に重ねる。“重ねる”とは、接触させて並べること(端面同士を突き合わせること)を意味し溶接すること等を意味しない。この状態で切断機は、2個の製品7を1回の動作で例えば長さ方向(前後方向)に切断し、より小さな4個の製品を作ることができる。
【0017】
図5に注目する。切断機は、準備作業として、2個の製品7(
図3において部材6が2分割されたもの)を水平面で90度回転する。この状態で、切断機は、2個の製品7を1回の動作で例えば幅方向(左右方向)に切断し、より小さな4個の製品を作ることができる。
図5の切断結果は、
図4の切断結果と全く同じである。但し、現実には、切断機の構造制約、動力費用等に起因し、いずれかがより有利な場合がある。
【0018】
(標準在庫品管理装置の構成等)
図6は、第1の実施形態の標準在庫品管理装置1の構成等を説明する図である。標準在庫品管理装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、マウス、キーボード等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を備える。これらは、バスで相互に接続されている。補助記憶装置15は、販売計画情報31、標準在庫品候補情報32、切断条件情報33、切断費用情報34,廃棄費用期待値情報35及び評価指標情報(詳細後記)を格納している。
【0019】
主記憶装置14における切断模擬部21及び在庫品管理部22は、プログラムである。中央制御装置11は、これらのプログラムを補助記憶装置15から読み出して主記憶装置14にロードすることによって、それぞれのプログラムの機能(詳細後記)を実現する。補助記憶装置15は、標準在庫品管理装置1から独立した構成となっていてもよい。端末装置2は、ユーザが現場等において操作する携帯型のコンピュータであり、標準在庫品管理装置1の入力装置12及び出力装置13と同じ機能を果たす。端末装置2は、ネットワーク3を介して標準在庫品管理装置1と接続されている。
【0020】
(販売計画情報)
図7は、販売計画情報31の一例である。販売計画情報31においては、計画ID(欄101)、材質ID(欄102)、計画幅(欄103)、計画厚(欄104)、計画長さ(欄105)、計画数量(欄106)、計画金額(欄107)及び切断制約(欄108)が相互に関連付けられて記憶されている。
【0021】
計画ID(欄101)は、販売計画情報31のレコード(行)を一意に特定する識別子である。
材質ID(欄102)は、製品の材質を一意に特定する識別子である。
計画幅(欄103)は、計画に係る製品の幅である。
計画厚(欄104)は、計画に係る製品の厚である。
計画長さ(欄105)は、計画に係る製品の長さである。
計画数量(欄106)は、計画に係る製品の数量である。
計画金額(欄107)は、計画に係る製品の単価である。
【0022】
切断制約(欄108)は、製品を標準在庫品から切り出す際の制約であり、
図7では紙面の制約上“切断制約1”等と記されているが、具体例は、以下の通りである。
・“長さ方向の回転を禁止する”等の回転方向指定
・“厚方向の切断を禁止する”等の切断方向指定
販売計画情報31は、全体として、具体的な製品の受注がない計画段階において、どの材質のどの寸法の製品をいくらでどれだけ販売するかという事業計画になっている。
【0023】
(標準在庫品候補情報)
図8は、標準在庫品候補情報32の一例である。標準在庫品候補情報32においては、候補ID(欄111)、材質ID(欄112)、標準在庫品幅(欄113)、標準在庫品厚(欄114)、標準在庫品長さ(欄115)、1ロット数量(欄116)及び購入費用(欄117)が相互に関連付けられて記憶されている。
【0024】
候補ID(欄111)は、標準在庫品候補情報32のレコードを一意に特定する識別子である。
材質ID(欄112)は、標準在庫品の材質を一意に特定する識別子である。
標準在庫品幅(欄113)は、標準在庫品の幅である。
標準在庫品厚(欄114)は、標準在庫品の厚である。
標準在庫品長さ(欄115)は、標準在庫品の長さである。
1ロット数量(欄116)は、標準在庫品の1ロットの数量(調達単位)である。
購入費用(欄117)は、標準在庫品の単価である。
標準在庫品候補情報32は、全体として、鋼材メーカが調達し得る標準在庫品の仕様リストになっている。
【0025】
(切断条件情報)
図9は、切断条件情報33の一例である。切断条件情報33においては、条件ID(欄121)、材質ID(欄122)、標準在庫品幅下限(欄123)、標準在庫品幅上限(欄124)、標準在庫品厚下限(欄125)、標準在庫品厚上限(欄126)、標準在庫品長さ下限(欄127)、標準在庫品長さ上限(欄128)及び切断条件(欄129)が相互に関連付けられて記憶されている。
【0026】
条件ID(欄121)は、切断条件情報33のレコードを一意に特定する識別子である。
材質ID(欄122)は、切断される標準在庫品の材質を一意に特定する識別子である。
標準在庫品幅下限(欄123)及び標準在庫品幅上限(欄124)は、切断される標準在庫品の幅の下限値及び上限値である。
【0027】
標準在庫品厚下限(欄125)及び標準在庫品厚上限(欄126)は、切断される標準在庫品の厚の下限値及び上限値である。
標準在庫品長さ下限(欄127)及び標準在庫品長さ上限(欄128)は、切断される標準在庫品の長さの下限値及び上限値である。
【0028】
切断条件(欄129)は、切断機特有の寸法上の技術的制約であり、
図9では紙面の制約上“切断条件1”等と記されているが、具体例は以下の通りである。
・切断時に消失する寸法(切断代)
・切断機の制約上、切断後に最低限残っていなければならない寸法
切断条件情報33は、全体として、標準在庫品の切断条件を、材質及び寸法の組合せごとに定義した表になっている。
【0029】
(切断費用情報)
図10は、切断費用情報34の一例である。切断費用情報34においては、費用ID(欄131)、材質ID(欄132)、標準在庫品幅下限(欄133)、標準在庫品幅上限(欄134)、標準在庫品厚下限(欄135)、標準在庫品厚上限(欄136)、標準在庫品長さ下限(欄137)、標準在庫品長さ上限(欄138)及び切断費用(欄139)が相互に関連付けられて記憶されている。
【0030】
費用ID(欄131)は、切断費用情報34のレコードを一意に特定する識別子である。
材質ID(欄132)~標準在庫品長さ上限(欄138)は、
図9と同じである。
切断費用(欄139)は、標準在庫品の切断に要する諸費用(動力費、人件費、減価償却費等)であり、
図10では紙面の制約上“切断費用1”等と記されているが、具体例は以下の通りである。
・単位切断面積あたりに生じる諸費用
・切断回数1回あたりに生じる諸費用
・標準在庫品を回転するための工数に基づく諸費用
切断費用情報34は、全体として、標準在庫品の切断費用を、材質、寸法及び作業量(切断面積、切断回数、回転の工数等)の組合せごとに定義した表になっている。
【0031】
(廃棄費用期待値情報)
図11は、廃棄費用期待値情報35の一例である。廃棄費用期待値情報35においては、廃棄費用期待値ID(欄141)、材質ID(欄142)、端材幅下限(欄143)、端材幅上限(欄144)、端材厚下限(欄145)、端材厚上限(欄146)、端材長さ下限(欄147)、端材長さ上限(欄148)及び廃棄費用期待値(欄149)が相互に関連付けられて記憶されている。
廃棄費用期待値ID(欄141)は、廃棄費用期待値情報35のレコードを一意に特定する識別子である。
材質ID(欄142)は、廃棄される端材の材質を一意に特定する識別子である。
【0032】
端材幅下限(欄143)及び端材幅上限(欄144)は、廃棄される端材の幅の下限値及び上限値である。
端材厚下限(欄145)及び端材厚上限(欄146)は、廃棄される端材の厚の下限値及び上限値である。
端材長さ下限(欄147)及び端材長さ上限(欄148)は、廃棄される端材の長さの下限値及び上限値である。
【0033】
廃棄費用期待値(欄149)は、端材の廃棄に要する費用の期待値であり、
図11では紙面の制約上“廃棄費用期待値1”等と記されているが、具体例は以下の通りである。
・過去の実績から導出された標準在庫品の需要分布、及び、端材の形状ごとの廃棄確率に基づき算出された諸費用の期待値
・RFM(Recency, Frequency, Monetary)分析に基づいて、ユーザが算出した諸費用の期待値
廃棄費用期待値情報35は、全体として、端材の廃棄費用を、材質及び寸法の組合せごとに定義した表になっている。廃棄費用は、統計的な期待値以外の値(例えばユーザが任意に指定した値)であってもよい。
【0034】
(評価指標情報)
図12は、評価指標情報36の一例である。評価指標情報36おいては、材質ID(欄151)、評価指標(欄152)及び重み(欄153)が相互に関連付けられて記憶されている。
材質ID(欄151)は、標準在庫品の材質を一意に特定する識別子である。
評価指標(欄152)は、評価対象の指標である。このうち“在庫回転期間”は、公知の財務指標(在庫が1回転する日数)であり、
図5の“回転”とは無関係である。
重み(欄153)は、評価指標に対して乗算される係数である。重みは、同じ材質IDに対応する複数の評価指標間において相対的な重要度を示す。
【0035】
(標準在庫品に対する分割グループの割り当て)
標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、販売計画情報31(
図7)の任意のレコード(以降“対象レコード”とも呼ぶ)に記憶されている製品の計画数量を取得する。例えば
図7の計画ID“P02”のレコードが対象レコードである場合、切断模擬部21は、対象レコードの計画数量“3”を取得する。
【0036】
切断模擬部21は、計画数量の分割パタンを生成する。計画数量の分割パタンとは、計画数量を分割した部分の組合せであり、計画数量が“3である場合、“[3個]”、“[1個,2個]”及び“[1個,1個,1個]”のそれぞれが、分割パタンとなり得る。このうち、分割パタン“[3個]”は、1個の標準在庫品から3個の製品を切り出すことを意味する。同様に、分割パタン“[1個,2個]”は、1個の標準在庫品から1個の製品を切り出し、他の1個の標準在庫品から2個の製品を切り出すことを意味する。分割パタン“[1個,1個,1個]”は、3個の標準在庫品のそれぞれから、1個ずつ製品を切り出すことを意味する。
【0037】
いま、切断模擬部21が、計画数量“3”に基づき、分割パタン“[1個,2個]”を生成したとする。“[ ]”内に含まれる要素のそれぞれ(“1個”及び“2個”)は、“分割グループ”と呼ばれる。個々の分割グループが示す個数そのものは、“分割数”と呼ばれる。例えば、分割パタン“[1個,2個]”に含まれる2つの分割グループ“[1個]”及び“[2個]”のうち、分割グループ“[2個]”の分割数は、“2”である。分割グループの数は、切り出しのために使用される標準在庫品の数に等しい。分割数は、1個の標準在庫品から切り出される製品の数に等しい。このように、切断模擬部21は、1個の標準在庫品に対して1個の分割グループを割り当てる。
【0038】
(費用、在庫回転数、スコア及び総合スコア)
切断模擬部21が、対象レコードmの計画数量に基づき分割パタンpを生成し分割パタンpの分割グループtを標準在庫品候補sに割り当てたとすると、この割当に対するスコアを、SCORE
s,m,p,tと表すことができる。
スコアは、切断費用“CUTCOST
s,m,p,t”と廃棄費用期待値“DISPOSALCOST
s,m,p,t”との加重和である。数式1において、F
1及びF
2は、
図12の重みである。
【0039】
【0040】
xs,m,p,t、usePatternm,p及びassignStocksが以下のように定義される。すなわち、切断模擬部21が、対象レコードmの計画数量に基づき分割パタンpを生成し分割パタンpの分割グループtを標準在庫品候補sに割り当てたとき、xs,m,p,tは“1”となり、それ以外の場合、xs,m,p,tは“0”となる。切断模擬部21が、対象レコードmに対して分割パタンpを生成した場合、usePatternm,pは、“1”となり、それ以外の場合、usePatternm,pは、“0”となる。
【0041】
切断模擬部21が対象レコードmの計画数量に基づき分割パタンpを生成し分割パタンpの分割グループtを割り当てる標準在庫品候補sは、1個である必要があるので、数式2が成立する。さらに、切断模擬部21が対象レコードmのために使用できる分割パタンpは1個である必要があるので、数式3も成立する。
【0042】
【0043】
【0044】
数式2及び数式3において、“O”は、対象レコードmの集合であり、“S”は、標準在庫品候補sの集合であり、“Pm”は、対象レコードmの計画数量に基づく分割パタンpの集合であり、“Tp”は、分割パタンp内の分割グループtの集合である。標準在庫品候補sの在庫回転数Csは、数式4によって算出される。
【0045】
【0046】
数式4において、orderVolume
mは、対象レコードmの計画幅、計画厚及び計画長さの積で表される製品の体積であり、stockVolume
sは、標準在庫品候補sの標準在庫品幅、標準在庫品厚及び標準在庫品長さの積で表される標準在庫品の体積である。splitNum
p,tは、分割パタンpの分割グループtの個数であり、timeSpanは、該当対象レコードの計画期間である。在庫回転数C
sの値が大きいほど製品の生産効率は高い。
費用に対して標準在庫品の在庫回転数を加味した総合スコアは、数式5によって算出される。数式5において、F
3は、在庫回転数の逆数(在庫回転期間)に対して
図12の重みを乗算する関数である。
【0047】
【0048】
詳細は処理手順で後記するが、切断模擬部21の処理内容の概略は以下の通りである。
〈1〉切断模擬部21は、対象レコードの計画数量に基づき、分割グループ(1又は複数の製品に対応する)を生成する。
〈2〉切断模擬部21は、分割グループを1個の標準在庫品(候補)に割り当てる。この段階で、その標準在庫品から切り出すべき製品の寸法及び数量が決まる。
〈3〉切断模擬部21は、標準在庫品のそれぞれに対して、切断方法を割り当てる。切断方法とは、“切断順序”、“重ね”及び“回転”の組合せである。この段階で、購入費用、切断条件、切断費用、廃棄費用期待値及び在庫回転数が決まることになる。
【0049】
〈4〉切断模擬部21は、数式2及び数式3の制約を満たしつつ、数式5の総合スコアを算出する。切断模擬部21は、標準在庫品に対する分割グループの割り当て、及び、標準在庫品に対して割り当てる切断方法の組合せ内容を様々に変化させたうえで、多数のケースについて、総合スコアを繰り返し算出することになる。
〈5〉切断模擬部21は、総合スコアが最小となるケースを解とする。切断模擬部21は、入力された製品の計画数量に対する解を、標準在庫品の寸法及び数量、並びに、標準在庫品のそれぞれに対する切断方法として出力することになる。
【0050】
要するに、所定の寸法の所定の数量の製品を切り出すための標準在庫品の選択肢及び切断方法の選択肢が複数ある場合、切断模擬部21は、所定の基準を満たす程度に費用を小さくする“標準在庫品、製品及び切断方法の組合せ”を試行錯誤的に決定する。
【0051】
(処理手順)
図13は、第1の実施形態の処理手順のフローチャートである。
図13のフローチャートが開始される前提として、
図7~
図12の各情報が完成した状態で補助記憶装置15に格納されているとする
ステップS201において、標準在庫品管理装置1の在庫品管理部22は、販売計画情報31等を読み出す。具体的には、在庫品管理部22は、補助記憶装置15から、
図7~
図12の各情報を読み出す。
【0052】
ステップS202において、標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、分割グループを生成する。具体的には、第1に、切断模擬部21は、販売計画情報31(
図7)の任意のレコード(前記の対象レコード)の計画数量を取得する。
第2に、切断模擬部21は、計画数量の分割グループを無作為的に生成する。
第3に、切断模擬部21は、分割グループを標準在庫品の候補に割り当てる。
【0053】
ステップS203において、切断模擬部21は、切断方法を生成する。具体的には、第1に、切断模擬部21は、“重ね”、“回転”及び“切断順序”の組合せである切断方法を無作為的に生成する。
第2に、切断模擬部21は、切断方法を標準在庫品に割り当てる。
ステップS204において、切断模擬部21は、総合スコアを算出する。具体的には、切断模擬部21は、数式2及び数式3の制約を満たしつつ、数式5の総合スコアを算出する。
【0054】
切断模擬部21は、分割グループ及び切断方法を様々に生成し、それらを割り当てる標準在庫品を様々に変化させたうえで、対象レコードごとにステップS202~S204の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS205において、標準在庫品管理装置1の在庫品管理部22は、標準在庫品の品揃えを決定する。具体的には、在庫品管理部22は、総合スコアが最小になる解を決定する。
ステップS206において、在庫品管理部22は、標準在庫品の品揃えを表示する。具体的には、在庫品管理部22は、品揃え推奨画面51を出力装置13又は端末装置2に表示する。
図13の途中であるが、説明は一旦
図14に移る。
【0056】
図14は、品揃え推奨画面51の一例である。
図14を見ると以下のことがわかる。
・切断模擬部21は、材質“K03S”の製品を標準在庫品に割り当てた。
・その結果、切断模擬部21は、品揃え番号“1”の在庫標準品を“2”本、品揃え番号“2”の在庫標準品を“2”本、・・・、及び、品揃え番号“5”の在庫標準品を“2”本、それぞれ調達することが最適であると判断した(欄53a及び欄53f)。
・5種類の標準在庫品の寸法は、欄53b~欄53dに表示されている通りである。因みに、品揃え番号が大きいほど、標準在庫品の寸法(体積)は大きい。
【0057】
・前提となった、製品の寸法及び計画数量は、
図14からはわからない。しかしながら、例えば、寸法が異なる5種類の製品を複数個ずつ作成する場合、在庫品管理部22は、
図14のように表示する可能性が高い。
・いずれの標準在庫品からも、端材が発生する(欄53k)。
【0058】
・在庫品管理部22は、
図7~
図11の各情報及び図示しない他の情報(月間販売数、材質ごとの比重等)を使用して、ロット重量(欄53e)、ロット金額(欄53g)、製造原価(欄53h)、期待売上金額(欄53j)及び廃棄費用期待値(欄53k)を算出し表示している。
・切断模擬部21は、数式4を使用して在庫回転数(欄53i)を算出している。
説明は、
図13に戻る。
【0059】
ステップS207において、在庫品管理部22は、ユーザが表示結果を承諾するか否かを判断する。具体的には、在庫品管理部22は、“表示されている標準在庫品の品揃えを承諾しますか?”という質問を出力装置13又は端末装置2に表示する。ユーザは、質問に応じて“はい”又は“いいえ”を、入力装置12又は端末装置2を介して入力する。
第2に、在庫品管理部22は、“はい”を受け付けた場合(ステップS207“Yes”)、ステップS209に進み、“いいえ” を受け付けた場合(ステップS207“No”)、ステップS208に進む。
【0060】
ステップS208において、標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、重み等を見直す。具体的には、切断模擬部21は、ユーザが、入力装置12又は端末装置2を介して、
図12の重み、
図10の切断費用及び
図11の廃棄費用期待値の一部又は全部を変更するのを受け付ける。その後、ステップS202に戻る。
ステップS209において、標準在庫品管理装置1の在庫品管理部22は、標準在庫品の品揃えを登録する。具体的には、在庫品管理部22は、ステップS206において表示した品揃え推奨画面51の情報を補助記憶装置15に格納する。その後、処理手順を終了する。
【0061】
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態では、標準在庫品管理装置1は、標準在庫品の種類数を限定したうえで、標準在庫品の品揃えを決定する。種類数とは、寸法(幅、厚及び長さの組合せ)の種類の数を意味する。鋼材メーカは、標準在庫品の調達の手間、原料メーカとの取引関係、切断機の台数、標準在庫品の管理・保管の手間等に起因し、候補としての標準在庫品の種類数を限定する必要が生じ得る。仮に製品の寸法及び計画数量が同じであっても、標準在庫品の候補の種類数が異なると、結果として算出される総合スコアが異なる。
【0062】
図15は、第2の実施形態の標準在庫品管理装置1の構成等を説明する図である。第1の実施形態(
図6)に比して、
図15が異なる点は、補助記憶装置15が標準在庫品種類数情報37をさらに格納していることである。
【0063】
(標準在庫品種類数情報)
図16は、標準在庫品種類数情報37の一例である。標準在庫品種類数情報37においては、材質ID(欄161)、種類数下限(欄162)及び種類数上限(欄163)が相互に関連付けられて記憶されている。
材質ID(欄161)は、種類数が制限される標準在庫品の材質を一意に特定する識別子である。
種類数下限(欄162)は、標準在庫品の種類数の下限である。
種類数上限(欄163)は、標準在庫品の種類数の上限である。
【0064】
数式6において、標準在庫品の候補の種類数として、STCKNUMを定義する。
【0065】
【0066】
切断模擬部21が、標準在庫品sを使用した場合、assignStock
sは、“1”となり、それ以外の場合、assignStock
sは、“0”となる。x
s,m,p,tが決まると、assignStock
sは、一意に決まる。STCKNUMは、“種類数下限≦STCKNUM≦種類数上限”を満たす整数となる。例えば、
図16の1行目のレコードは、STCKNUMが“20、21、22、・・・、30”のそれぞれである場合について、切断模擬部21が繰り返し総合スコアを算出することを示している。
【0067】
(処理手順)
図17は、第2の実施形態の処理手順のフローチャートである。
ステップS301において、標準在庫品管理装置1の在庫品管理部22は、販売計画情報31等を読み出す。具体的には、在庫品管理部22は、補助記憶装置15から、
図7~
図12及び
図16の各情報を読み出す。
【0068】
ステップS302において、標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、分割グループを生成する。具体的には、第1に、切断模擬部21は、販売計画情報31(
図7)の任意のレコード(前記の対象レコード)の計画数量を取得する。
第2に、切断模擬部21は、計画数量の分割グループを無作為的に生成する。
第3に、切断模擬部21は、分割グループを、数式6の種類数(STCKNUM)の制約内で標準在庫品の候補に割り当てる。
【0069】
ステップS303は、ステップS203(
図13)と同じである。
ステップS304において、切断模擬部21は、総合スコアを算出する。具体的には、切断模擬部21は、数式2、数式3及び数式6の制約を満たしつつ、数式5の総合スコアを算出する。
【0070】
切断模擬部21は、種類数(STCKNUM)を“1”ずつ増加させ、かつ、分割グループ及び切断方法を様々に生成させ、それらを割り当てる標準在庫品を様々に変化させたうえで、対象レコードごとにステップS302~S304の処理を繰り返す。
【0071】
ステップS305は、ステップS205(
図13)と同じである。
ステップS306において、標準在庫品管理装置1の在庫品管理部22は、標準在庫品の品揃えを表示する。具体的には、在庫品管理部22は、品揃え推奨画面61を出力装置13又は端末装置2に表示する。
図17の途中であるが、説明は一旦
図18に移る。
【0072】
図18は、品揃え推奨画面61の一例である。
図18を見ると以下のことがわかる。
・切断模擬部21は、材質“K03S”の製品を標準在庫品の候補に割り当てた。
・標準在庫品の種類数の上限は“25”であり、下限は“27”であった(タグ63a~63c)。なお、ユーザがタグ63a~63cのいずれかを選択することに応じて、在庫品管理部22は、その種類数に制約された解を欄64に表示する。欄64の内容は、
図14において説明した通りである。紙面の制約上、欄64のレコードは2本となっているが、実際の本数は、これ以上であることが多い。
【0073】
・切断模擬部21は、種類数ごとの切断費用、廃棄費用期待値及び在庫回転数を算出し、在庫品管理部22は、それらをグラフ表示している(グラフ65a~65c)。これらのグラフを見る限り、切断費用及び廃棄費用期待値の観点からは、種類数“27”が有利であり、在庫回転数の観点からは、種類数“25”が有利である。
説明は、
図17に戻る。
【0074】
ステップS307は、ステップS207(
図13)と同じである。但し、在庫品管理部22は、“Yes”の場合、ステップS309に進み、“No”の場合、ステップS308に進む。
ステップS308において、標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、重み等を見直す。具体的には、切断模擬部21は、ユーザが入力装置12又は端末装置2を介して、
図12の重み、
図10の切断費用、
図11の廃棄費用期待値、並びに、
図16の種類数上限及び種類数下限の一部又は全部を変更するのを受け付ける。その後、ステップS302に戻る。
【0075】
ステップS309において、標準在庫品管理装置1の在庫品管理部22は、標準在庫品の品揃えを登録する。具体的には、在庫品管理部22は、ステップS306において表示した品揃え推奨画面61の情報を補助記憶装置15に格納する。その後、処理手順を終了する。
【0076】
〈第3の実施形態〉
協力関係にある同業者、又は、充分な実績を有する同社の他工場が、切断方法のノウハウを有している場合がある。第3の実施形態では、標準在庫品管理装置1は、外部の任意の装置から切断方法を受信する。
【0077】
図19は、第3の実施形態の標準在庫品管理装置1の構成等を説明する図である。第1の実施形態(
図6)に比して、
図19が異なる点は、以下の4点である。
・標準在庫品管理装置1の外部に、切断処理装置4が存在し、切断処理装置4は、ネットワーク3を介して標準在庫品管理装置1と接続されている。
・
図6における切断模擬部21の一部が、外部切断模擬部24として切断処理装置4に格納されている。
・補助記憶装置15は、標準在庫品種類数情報37をさらに格納していてもよい。
・標準在庫品管理装置1及び切断処理装置4は、標準在庫品管理システムを構成する。
【0078】
(処理手順)
図20は、第3の実施形態の処理手順のフローチャートである。
ステップS401は、ステップS201(
図13)と同じである。
ステップS402において、標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、分割グループを生成する。具体的には、第1に、切断模擬部21は、販売計画情報31(
図7)の任意のレコード(前記の対象レコード)の計画数量を取得する。
第2に、切断模擬部21は、計画数量の分割グループを無作為的に生成する。
第3に、切断模擬部21は、分割グループを標準在庫品の候補に割り当てる。
第4に、切断模擬部21は、分割グループ及びそれを割り当てた標準在庫品の候補を切断処理装置4に送信する。
【0079】
ステップS403において、切断処理装置4の外部切断模擬部23は、切断方法を生成する。具体的には、第1に、外部切断模擬部23は、分割グループ及びそれを割り当てた標準在庫品の候補を標準在庫品管理装置1から受信する。
第2に、外部切断模擬部23は、“重ね”、“回転”及び“切断順序”の組合せである切断方法を無作為的に生成する。
第3に、外部切断模擬部23は、切断方法を標準在庫品に割り当てる。
第4に、外部切断模擬部23は、切断方法を標準在庫品に割り当てた結果を標準在庫品管理装置1に送信する。
【0080】
ステップS404において、標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、総合スコアを算出する。具体的には、第1に、切断模擬部21は、切断方法を標準在庫品に割り当てた結果を切断処理装置4から受信する。
第2に、切断模擬部21は、数式2及び数式3の制約を満たしつつ、数式5の総合スコアを算出する。
【0081】
切断模擬部21及び外部切断模擬部23は、分割グループ及び切断方法を様々に生成し、それらを割り当てる標準在庫品を様々に変化させたうえで、対象レコードごとにステップS402~S404の処理を繰り返す。
ステップS405~S409は、ステップS205~S209(
図13)と同じである。但し、ステップS407において、在庫品管理部22は、“Yes”の場合、ステップS409に進み、“No”の場合、ステップS408に進む。ステップS409の後、処理手順を終了する。
【0082】
〈第4の実施形態〉
第1~第3の実施形態は、製品の計画数量に基づき標準在庫品の調達を行う。第4の実施形態では、その段階が既に終了し、標準在庫品が現実の在庫として存在し、端材も発生し、かつ、製品に対する現実の受注が発生している。したがって、標準在庫品の品揃えを将来的にどうするかは、もはや問題にならない。また、現実の標準在庫品が、現実の受注に係る製品に相応しいものであるとは限らない。そこで、鋼材メーカは、現実の標準在庫品又は現実に発生している端材をそのまま廃棄する(第1のケース)こともできるし、それらから現実の受注に係る製品を切り出す(第2のケース)こともできる。切断模擬部21は、第1のケースの廃棄費用期待値及び第2のケースの廃棄費用期待値を比較する。
【0083】
図21は、第4の実施形態の標準在庫品管理装置1の構成等を説明する図である。第1の実施形態(
図6)に比して、
図21が異なる点は、以下の2点である。
・標準在庫品管理装置1は、在庫品管理部22を有さない。
・補助記憶装置15は、販売計画情報31及び標準在庫品候補情報32に代替して、受注情報38及び在庫情報39を格納している。
【0084】
(受注情報)
図22は、受注情報38の一例である。受注情報38においては、受注ID(欄171)、材質ID(欄172)、受注幅(欄173)、受注厚(欄174)、受注長さ(欄175)、受注数量(欄176)、受注金額(欄177)及び切断制約(欄178)が相互に関連付けられて記憶されている。
【0085】
受注ID(欄171)は、受注情報38のレコードを一意に特定する識別子である。
材質ID(欄172)は、受注に係る製品の材質を一意に特定する識別子である。
受注幅(欄173)は、受注に係る製品の幅である。
受注厚(欄174)は、受注に係る製品の厚である。
受注長さ(欄175)は、受注に係る製品の長さである。
受注数量(欄176)は、受注に係る製品の数量である。
受注金額(欄177)は、受注に係る製品の単価である。
【0086】
切断制約(欄108)は、製品を標準在庫品又は端材から切り出す際の制約であり、
図7では紙面の制約上“切断制約1”等と記されているが、具体例は、
図10において説明した通りである。
受注情報38は、全体として、具体的な製品の受注の記録になっている。
【0087】
(在庫情報)
図23は、在庫情報39の一例である。在庫情報39においては、在庫ID(欄181)、材質ID(欄182)、在庫幅(欄183)、在庫厚(欄184)、在庫長さ(欄185)及び種類(欄186)が相互に関連付けられて記憶されている。
【0088】
在庫ID(欄181)は、在庫情報39のレコードを一意に特定する識別子である。在庫情報39の1本のレコードは、1個の現実の在庫品に対応している。在庫品とは、標準在庫品の他に、標準在庫品から生じた端材をも含む概念である。
材質ID(欄182)は、現実の在庫品の材質を一意に特定する識別子である。
在庫幅(欄183)は、現実の在庫品の幅である。
在庫厚(欄184)は、現実の在庫品の厚である。
在庫長さ(欄185)は、現実の在庫品の長さである。
種類(欄186)は、“標準在庫品”又は、標準在庫品から発生した“端材”のいずれかである。端材からも受注に係る製品を切り出せる場合がある。
在庫情報39は、全体として、受注に係る製品を切り出すことができる現存の(新たに調達する必要がない)原料鋼材を示している。
【0089】
(処理手順)
図24は、第4の実施形態の処理手順のフローチャートである。
ステップS501において、標準在庫品管理装置1の切断模擬部21は、受注情報38等を取得する。具体的には、切断模擬部21は、補助記憶装置15から、
図9~
図12、
図22及び
図23の各情報を読み出す。
【0090】
ステップS502において、切断模擬部21は、第1の廃棄費用期待値を取得する。具体的には、切断模擬部21は、在庫情報39(
図23)に記憶されている在庫品(標準在庫品又は端材)の材質及び寸法を検索キーとして廃棄費用期待値情報35(
図11)を検索する。在庫情報39のレコードの数に等しい廃棄費用期待値情報35のレコードが該当する。切断模擬部21は、該当した各レコードの廃棄費用期待値の合計値(“第1の廃棄費用期待値”と呼ばれる)を取得する。
【0091】
ステップS503において、切断模擬部21は、分割グループを生成する。具体的には、第1に、切断模擬部21は、受注情報38(
図22)の任意のレコードの受注数量を取得する。ここで取得されたレコードもまた、“対象レコード”と呼ばれる。
第2に、切断模擬部21は、受注数量の分割グループを無作為的に生成する。
第3に、切断模擬部21は、分割グループを現実の在庫品に割り当てる。
【0092】
ステップS504において、切断模擬部21は、切断方法を生成する。具体的には、第1に、切断模擬部21は、“重ね”、“回転”及び“切断順序”の組合せである切断方法を無作為的に生成する。
第2に、切断模擬部21は、切断方法を現実の在庫品に割り当てる。
【0093】
ステップS505において、切断模擬部21は、第2の廃棄費用期待値を算出する。具体的には、切断模擬部21は、第1の実施形態に準じて、数式2及び数式3の制約を満たしつつ、数式5の総合スコアを算出する。切断模擬部21は、総合スコアに含まれる廃棄費用期待値(“第2の廃棄費用期待値”と呼ばれる)を取得する。
切断模擬部21は、分割グループ及び切断方法を様々に生成し、それらを割り当てる現実の在庫品を様々に変化させたうえで、対象レコードごとにステップS503~S505の処理を繰り返す。
【0094】
ステップS506において、切断模擬部21は、最適な切断方法を決定する。具体的には、切断模擬部21は、総合スコア又は第2の廃棄費用期待値が最小になる解を決定する。
ステップS507において、切断模擬部21は、切断方法を表示する。具体的には、切断模擬部21は、切断方法推奨画面71を出力装置13又は端末装置2に表示する。
図24の途中であるが、説明は一旦
図25に移る。
【0095】
図25は、切断方法推奨画面71の一例である。
図25を見ると以下のことがわかる。
・切断模擬部21は、受注ID“Y01”に係る製品3個を、分割グループ“[2個]”及び分割グループ“[1個]”に分割している(欄72~74)。
・切断模擬部21は、分割グループ“[2個]”を標準在庫品Z01に割り当て、分割グループ“[1個]”を標準在庫品Z02に割り当てている(欄73及び74)。
・切断模擬部21は、標準在庫品Z01に、ある切断方法を割り当てている。当該方法は、「第1に、標準在庫品Z01を長さ方向に切断し端材を取り除き、第2に、端材を取り除いた残りを長さ方向から幅方向に90度回転し、第3に、その残りを厚方向に2つに切断したうえで厚方向に2つに重ねる」である(欄74)。この場合、製品は、重ねた状態で出荷されるのであって、重ねた状態でさらに切断されるのではない。
【0096】
・切断模擬部21は、標準在庫品Z02に、他の切断方法を割り当てている。当該方法は、「標準在庫品Z02を幅方向に切断し端材を取り除く」というものである(欄74)。
・切断模擬部21は、当該2つの切断方法を、わかりやすく図示している(欄75)。
・切断模擬部21は、当該2つの切断方法に係る、総切断回数、総切断面積、総在庫回転数、切断費用、第1の廃棄費用期待値、第2の廃棄費用期待値及び廃棄費用期待値差分を表示している(欄76)。廃棄費用期待値差分は、第2の廃棄費用期待値から第1の廃棄費用期待値を減算した値である。第1の廃棄費用期待値、第2の廃棄費用期待値及び廃棄費用差分期待値を見ることによって、ユーザは、在庫品を再利用することの必要性又は優先度を知ることができる。例えば、廃棄費用期待値差分が所定の閾値より大きい場合、ユーザは、前記した第1のケースを選択する。
説明は、
図17に戻る。
【0097】
ステップS508において、切断模擬部21は、ユーザが表示結果を承諾するか否かを判断する。具体的には、在庫品管理部22は、“表示されている切断方法を承諾しますか?”という質問を出力装置13又は端末装置2に表示する。ユーザは、質問に応じて“はい”又は“いいえ”のいずれかを、入力装置12又は端末装置2を介して入力する。
第2に、在庫品管理部22は、“はい”を受け付けた場合(ステップS508“Yes”)、ステップS510に進み、“いいえ” を受け付けた場合(ステップS508“No”)、ステップS509に進む。
【0098】
ステップS509において、切断模擬部21は、重み等を見直す。具体的には、切断模擬部21は、ユーザが、入力装置12又は端末装置2を介して、
図12の重み、
図10の切断費用及び
図11の廃棄費用期待値の一部又は全部を変更するのを受け付ける。その後、ステップS502に戻る。
ステップS510において、切断模擬部21は、切断方法を登録する。具体的には、切断模擬部21は、ステップS507において表示した切断方法推奨画面71の情報を補助記憶装置15に格納する。その後、処理手順を終了する。
【0099】
(本実施形態の効果)
本実施形態の標準在庫品管理装置の効果は以下の通りである。
(1)標準在庫品管理装置は、計画段階の製品に応じて、最適な標準在庫品の寸法及び数量を決定することができる。
(2)標準在庫品管理装置は、標準在庫品に対し、製品を割り当てるとともに、切断方法を割り当てることができる。
(3)標準在庫品管理装置は、標準在庫品の候補の種類数を限定することができる。
(4)標準在庫品管理装置は、標準在庫品の候補の在庫回転期間も考慮することができる。
(5)標準在庫品管理装置は、外部装置から切断方法を取得することができる。
(6)標準在庫品管理装置は、受注段階において、現実の在庫品をそのまま廃棄する場合の廃棄費用と、製品の切り出しに再活用した場合の廃棄費用とを比較することができる。
【0100】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0101】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 標準在庫品管理装置
2 端末装置
3 ネットワーク
4 切断処理装置
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
16 通信装置
21 切断模擬部
22 在庫品管理部
23 外部切断模擬部
31 販売計画情報(第1の情報)
32 標準在庫品候補情報(第2の情報)
33 切断条件情報
34 切断費用情報(第3の情報)
35 廃棄費用期待値情報(第4の情報)
36 評価指標情報
37 標準在庫品種類数情報
38 受注情報(第5の情報)
39 在庫情報(第6の情報)