IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製粉株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174889
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】シュードーナツ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/60 20170101AFI20221117BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20221117BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A21D13/60
A21D2/18
A21D10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080915
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】野村 早紀
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK10
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK29
4B032DK35
4B032DK44
4B032DK47
4B032DP08
4B032DP25
4B032DP47
(57)【要約】
【課題】歯切れが良く口溶けの良いシュードーナツ及びシュードーナツの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】澱粉類を主体とするシュードーナツ用ミックス粉であって、澱粉類の全量に対して化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を13~42質量%含む、前記シュードーナツ用ミックス粉を使用することにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉類を主体とするシュードーナツ用ミックス粉であって、澱粉類の全量に対して化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を13~42質量%含む、前記シュードーナツ用ミックス粉。
【請求項2】
化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉がα化されている、請求項1に記載のシュードーナツ用ミックス粉。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のシュードーナツ用ミックス粉を含む、シュードーナツ用生地。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載のシュードーナツ用ミックス粉を使用して生地を得る工程を含む、シュードーナツの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のシュードーナツ用生地を油ちょうする工程を含む、シュードーナツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシュードーナツ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ふんわりした食感のドーナツとして、フレンチクルーラーなどのシュー生地と呼ばれる、穀粉及び油脂、水分を主体とする生地を用いて製造されるドーナツが知られている。
手造りのシュー皮は、水と油脂を加えて沸騰させておき、これに小麦粉を加えて糊化させ、卵を徐々に加えて適度な硬さに調整したシュー生地をオーブン等で加熱することにより作られる。
シュー生地は、生地中の水分が加熱工程中に水蒸気となり体積を増すことで、生地が膨らみふっくらとしたボディを作る。そのために、生地への加水が多く、また生地中の澱粉をアルファー化させて製造するため、内相はしっとりと水っぽく口溶けの悪い食感になっていた。また卵類の配合量が多いため、加熱後のシュー皮は、卵蛋白質の熱変性によりゴム様の食感が出やすく、歯切れの悪い食感になりやすいものであった。これはシュー生地を油ちょうしてシュードーナツとする場合も同様であった。
従来のシュードーナツは小麦粉を主体として生地とするところ、食感やボリュームの改良の観点から澱粉を主体とするシュー生地用ミックス粉が開発されている。
近年シュー皮の製造方法として澱粉を主体とするミックス粉(α化澱粉、未α化澱粉、全卵粉、カゼイン)により従来の方法による熟練を要することなくボリュームのあるシュー皮が得られる方法が見出されている(特許文献1)。また澱粉を主体とするシュー生地用ミックス粉においてタピオカ澱粉と小麦澱粉及び/又は馬鈴薯澱粉を所定量とすることにより形状の良いシュー皮が得られることが見出されている(特許文献2)。
澱粉類を主体とするシュー生地用ミックス粉を用いて製造したシュー皮においても従来のシュードーナツと同様に歯切れと口溶けの問題があった。
シュー生地を改良する方法として、例えば特許文献3には乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品を含有するシュー用改良剤を使用することで、ソフトで口溶けが良好で、かつ容積が大きく保型性が良好なシュー生地が安定して得ることができることが開示されている。しかしながらこの方法では、歯切れの向上の観点では不十分であった。
また特許文献4には、卵殻粉からなるシュー皮用品質改良剤を使用することで、サクサクとした歯切れの良い食感を得ることが出来ること、特許文献5には、遊離アミノ酸を有効成分とする改良剤を使用することで歯切れが改善することが開示されている。しかしながらこれらの方法ではサクサクとした歯切れ改良効果はあるものの、口溶けの改善効果は両立されていない。
また、ワキシー馬鈴薯でんぷんを使用して食品の食感を改良する方法として、例えば特許文献6には小麦粉を主原料とする原料穀粉100質量部に対して、α化した加工ワキシー馬鈴薯澱粉0.2~10質量部を含有する材料を用いてベーカリー食品を製造することにより、食味形状に悪影響を与えることなく、経時的品質劣化が抑制され、保存安定性に優れ、且つ、ソフトな食感、しっとりした食感など改善されたテクスチャー(食感)を有するベーカリー食品が得られること、特許文献7にはもち種馬鈴薯澱粉、加工もち種馬鈴薯澱粉、アセチル化馬鈴薯澱粉、アセチル化酸架橋馬鈴薯澱粉、ヒドロキシプロピル化馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化酸架橋馬鈴薯澱粉からなる群より選択される1種以上の澱粉類を40質量%以上含有し、且つ穀粉を実質的に含まないことを特徴とする、加熱した型を用いて焼成して得られる焼き菓子用ミックスにより焼き色がつかず透明な外観を有する焼き菓子を製造することができることが開示されている。しかしながらシュー皮やシュードーナツについての歯切れや口溶けなどの食感の改良については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-38666号公報
【特許文献2】特開2019-17307号公報
【特許文献3】特開2017-212898号公報
【特許文献4】特開2005-269993号公報
【特許文献5】特開2011-36174号公報
【特許文献6】特開2007-325526号公報
【特許文献7】特開2013-212104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯切れが良く口溶けの良いシュードーナツ及びシュードーナツの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果澱粉類を主体とするシュードーナツ用ミックス粉であって、澱粉類の全量に対して所定量の化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を含む前記シュードーナツ用ミックス粉を使用することにより、歯切れが良く口溶けの良いシュードーナツを得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]澱粉類を主体とするシュードーナツ用ミックス粉であって、澱粉類の全量に対して化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を13~42質量%含む、前記シュードーナツ用ミックス粉。
[2]化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉がα化されている、[1]記載のシュードーナツ用ミックス粉。
[3][1]または[2]記載のシュードーナツ用ミックス粉を含む、シュードーナツ用生地。
[4][1]または[2]記載のシュードーナツ用ミックス粉を使用して生地を得る工程を含む、シュードーナツの製造方法。
[5][3]記載のシュードーナツ用生地を油ちょうする工程を含む、シュードーナツの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、歯切れが良く口溶けの良いシュードーナツを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のシュードーナツ用ミックス粉は、澱粉類を主体とし、澱粉類の全量に対して化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を13~42質量%含む。
【0008】
本発明のシュードーナツ用ミックス粉は、澱粉類を主体とする。「澱粉類を主体とする」とは、シュードーナツ用ミックス粉の全量に対して澱粉類の合計量が50質量%以上であることをいう。本発明のシュードーナツ用ミックス粉において、澱粉類の含有率は、シュードーナツ用ミックス粉の全量に対して好ましくは60~90質量%であり、より好ましくは65~80質量%である。
「澱粉類」とは、穀物、地下茎、樹幹等から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、ワキシーコーンスターチ、ワキシー馬鈴薯澱粉等)、及び、前記澱粉類をα化、エーテル化、アセチル化、架橋処理等を行った変性澱粉類などをいう。本願発明における化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉は澱粉類に含まれる。
【0009】
本発明において、「化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉」とは、公知の方法で化学的に変性されたワキシー馬鈴薯澱粉のことである。ここでワキシー馬鈴薯澱粉とは、アミロースをほとんど含まず、アミロペクチンがほぼ100%であるもち種馬鈴薯由来の澱粉である。化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を得るための化学的変性としては、酢酸、オクテニルコハク酸等のカルボキシル基やリン酸基によるエステル化;ヒドロキシプロピル基によるエーテル化;リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋;及びそれらの組み合わせを挙げることができる。本発明の「化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉」は、化学的変性したワキシー馬鈴薯澱粉をさらにα化したものも含む。好ましくはエーテル化したワキシー馬鈴薯澱粉であり、より好ましくはエーテル化とリン酸架橋との組み合わせにより変性したワキシー馬鈴薯澱粉であり、更に好ましくはα化されたエーテル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉である。このような化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉としては、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉、α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉、ヒドロキシプロピル化ワキシー馬鈴薯澱粉(エーテル化ワキシー馬鈴薯澱粉)、α化ヒドロキシプロピル化ワキシー馬鈴薯澱粉等を挙げることができる。化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉は、市販されているものを使用することができ、例えば、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉(松谷化学工業社製エリアンVE540)、α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉(松谷化学工業社製エリアンVC120)等が挙げられる。
【0010】
本発明のシュードーナツ用ミックス粉において、化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の含有率は、シュードーナツ用ミックス粉に含まれる澱粉類の全量に対して13~42質量%であり、好ましくは16~41質量%であり、更に好ましくは25~35質量%である。化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の含有率が、澱粉類の全量に対して13~42質量%であると、歯切れが良く口溶けの良いシュードーナツを提供することができる。13質量%未満では、効果が十分に得られず、42質量%を超えるとボリュームがでにくくなり、水分の抜けが悪く、歯切れの良さや口溶けの良さが損なわれる傾向にある。
【0011】
本発明のシュードーナツ用ミックス粉を、加熱工程を経ずに生地を作製することが可能なミックス粉とする場合は、澱粉類の全量に対して50質量%以上のα化澱粉を使用することができる。その場合、α化澱粉はシュードーナツ用ミックス粉に含まれる澱粉類の全量に対して70質量%以下であることが好ましい。70質量%を超えると、水分の抜けが悪くなり、歯切れの良さや口溶けの良さが損なわれる傾向にある。また、ミックス粉に配合する化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉は、全量をα化したものにすることが好ましい。
本発明のシュードーナツ用ミックス粉に含まれる澱粉類がα化澱粉を含む場合、α化澱粉の全量に対して好ましくは27~83質量%、更に好ましくは35~82質量%、より好ましくは40~70質量%のα化化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を含む。α化化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉以外のα化澱粉の種類は特に限定されないが、α化コーンスターチ、α化小麦澱粉またはその組み合わせであることが好ましく、更に好ましくはα化コーンスターチである。
α化澱粉以外の澱粉類の原料は特に限定されないが、小麦澱粉、タピオカ澱粉またはその組み合わせが好ましい。またα化澱粉以外の澱粉類は、酢酸澱粉であることが好ましい。小麦澱粉とタピオカ澱粉の組み合わせである場合、小麦澱粉とタピオカ澱粉の質量比は20:80~80:20であることが好ましく、50:50~70:30であることが更に好ましい。
【0012】
本発明のシュードーナツ用ミックス粉は、所定量の澱粉類と所定量の化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉以外に、穀粉(小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、コーンフラワー等)、植物性蛋白(小麦蛋白、大豆蛋白等)、動物性蛋白(卵白粉、全卵粉、卵蛋白、カゼインなどの乳蛋白)、粉乳(全脂粉乳、脱脂粉乳)、植物性油脂(サラダ油、パーム油、菜種油、綿実油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油、胡麻油、コーン油、米油、シソ油、オリーブ油、アマニ油、エゴマ油等)、動物性油脂(牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等)、加工油脂(硬化油、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等)などの油脂類、増粘剤(キサンタンガム、グァガム、カラギーナン、メチルセルロース、ペクチン等)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等);グラニュー糖、砂糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖等の糖類、甘味料、調味料(例えば、食塩、グルタミン酸ナトリウム、カツオパウダーなどの粉末調味料)、食物繊維、デキストリン、ベーキングパウダーなどの膨張剤、ビタミン類、ミネラル類、香辛料、香料、色素等の通常シュードーナツ用ミックス粉の製造に使用される副原料を適宜配合することができる。
好ましくは副原料として、シュードーナツ用ミックス粉の全量に対し0.5~1.5質量%のカゼインを加えることで形状の保持を補助することができる。
好ましくは副原料として、シュードーナツ用ミックス粉の全量に対し1.0~2.0質量%のグリセリン脂肪酸エステルを加えることで老化(硬化)を抑制することができる。
【0013】
本発明のシュードーナツ用生地は、前記シュードーナツ用ミックス粉を含む。
また本発明のシュードーナツは本発明のシュードーナツ用生地を油ちょうして成る。
本発明のシュードーナツは、澱粉類を主体とし所定量の化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を含む前記シュードーナツ用ミックス粉を使用する以外は常法に従って製造することが出来る。例えば加熱が必要なシュードーナツ用ミックス粉である場合は、火にかけた沸騰水にミックス粉を加え混合した後、火からおろし混捏しながら卵を加え生地を得、生地を分割して油ちょうすることにより製造することができ、加熱が不要なシュードーナツ用ミックス粉である場合は、ミックス粉に45~50℃の湯、卵を添加してミキサーなどにより混練することにより生地を得、生地を分割して油ちょうすることにより製造することができる。
【実施例0014】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0015】
製造例1 澱粉類を使用したシュードーナツの製造
(1)表1に示すシュードーナツ用ミックス粉の配合285質量部に対し全卵265質量部及び約50℃の湯240質量部をミキサー(KitchenAid社製:製品名「KSM5」)に投入し低速で2分間、高速で3分間混捏しドーナツ生地を得た。捏上温度は30℃であった。
(2)得られたドーナツ生地をドーナツカッター(ベルショー社製:「Fカッター及びフレンチプランジャー」使用)で37gに分割し、190℃のフライ油で潜行4分30秒間フライしてドーナツを得た(比較例1)。
表1 シュードーナツ用ミックス粉の配合(質量部)

化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉:パインアクア(α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉、松谷化学工業社製)
α化コーンスターチ:コーンアルファーY(三和澱粉工業社製)
小麦澱粉(酢酸):M80A(マニルドラ社製)
タピオカ澱粉(酢酸):松谷さくら(松谷化学工業社製)
【0016】
評価例1 官能評価
得られたドーナツを、熟練のパネラー10名により下記評価基準表に従って官能評価した。
化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を含まない比較例1の歯切れと口溶けを2点とし、歯切れおよび口溶けの両方が3点以上の場合を好ましい状態とした。
【0017】
表2 評価基準表
【0018】
参考例 従来のシュードーナツの製造
参考例として、表3の材料を使用し、下記に示す方法で澱粉類を使用しない従来のシュードーナツを作製した。
(1)水、ショートニング、食塩、バニラ、グラニュー糖を一緒にして強火で沸騰するまで煮たてた。
(2)ショートニングが完全に溶けて煮立ち始めたら、直ちに振るった小麦粉と膨張剤を加えて火力を弱め手早く混合した。
(3)火からおろし、ミキサー(KitchenAid社製:製品名「KSM5」)に投入し低速で混捏しながら全卵を少しずつ加え、ドーナツ生地を得た。
(4)得られたドーナツ生地をドーナツカッター(ベルショー社製:「Fカッター及びフレンチプランジャー」使用)で37gに分割し、190℃のフライ油で潜行4分30秒間フライしてドーナツを得た。
【0019】
得られたドーナツを評価例1に従って評価した。結果を表3に示す。
参考例は、歯切れについては澱粉類を使用し、化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を含まない比較例1よりも評価が高いものの、内相がややゴム様で口溶けが悪い食感であった。
【0020】
表3
【0021】
試験例1 澱粉類を使用したシュードーナツにおける化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の配合量の検討
化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉(α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉)の配合量を表4に記載の通りにした以外は製造例1に従ってシュードーナツを製造し、評価例1に従って評価した。化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の割合を増減する際はα化コーンスターチと置換した。また生地の硬さを調整し、生地の硬さの違いによる作業性の低下を防ぐため、240~335質量部の範囲で湯の量を調整した。
結果を表4に示す。
【0022】
表4
【0023】
澱粉類の全量に対する化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の割合が本願所定の範囲である実施例1~3は、歯切れの良さ及びくちどけの良さのいずれも満足できる結果であった。化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉を使用しない比較例1は、歯切れ、口溶けいずれも悪く満足できる結果ではなかった。澱粉類の全量に対する化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の割合が13質量%未満である比較例2では歯切れは比較的良好であったが、口溶けの改善が十分でなく満足できる結果ではなかった。澱粉類の全量に対する化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の割合が42質量%を超える比較例3及び4では歯切れも口溶けも悪く満足できる結果ではなかった。化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の割合が50質量%である比較例4では、特に口溶けの評価が悪かった。
【0024】
試験例2 澱粉類を使用したシュードーナツにおける澱粉の種類の検討
澱粉類の配合量を表5に記載の通りにした以外は製造例1に従ってシュードーナツを製造し、評価例1に従って評価した。また生地の硬さを調整し、生地の硬さの違いによる作業性の低下を防ぐため235~290質量部の範囲で湯の量を調整した。
結果を表5に示す。
【0025】
表5

*α化小麦澱粉:NPアルファーRM(長田産業社製)
【0026】
実施例2のα化コーンスターチをα化小麦澱粉に変えた実施例6、実施例2のタピオカ澱粉(酢酸)を小麦澱粉(酢酸)に代えた実施例5、実施例2のα化コーンスターチをα化小麦澱粉とし、かつタピオカ澱粉(酢酸)を小麦澱粉(酢酸)に代えた実施例4はいずれも歯切れ、口溶けとも実施例2と大差なく良好であり、化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉の添加による効果が使用する他の澱粉類の種類に影響されないことが確認された。
【0027】
試験例3 澱粉類を使用したシュードーナツにおけるα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の種類の検討
澱粉類の配合量を表6に記載の通りにした以外は製造例1に従ってシュードーナツを製造し、評価例1に従って評価した。また生地の硬さを調整し、生地の硬さの違いによる作業性の低下を防ぐため220~290質量部の範囲で湯の量を調整した。
結果を表6に示す。
【0028】
表6

A:α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシー馬鈴薯澱粉(化学変性ワキシー馬鈴薯澱粉) パインアクア(松谷化学工業社製)
B:α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉 ビナゾール15(Tate&Lyle社製)
C:α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉 パインソフトS(松谷化学工業社製)
【0029】
α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉がワキシー馬鈴薯澱粉由来である実施例2は歯切れ口溶けともに良好な結果であったが、タピオカ澱粉由来の比較例5は、歯切れはやや良いものの、内相にヒキがあり口溶けがやや悪く満足できる結果ではなかった。また馬鈴薯澱粉由来の比較例6は、全体的に湿気感があり、歯切れも口溶けもやや悪く、満足できる結果ではなかった。