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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174985
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】摩耗試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
G01N3/56 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081073
(22)【出願日】2021-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物による公開/2020年度(第69回)農業農村工学会 大会講演会概要集 p.120/公開日:令和2年8月25日 刊行物による公開/2020年度(第69回)農業農村工学会 大会講演会講演要旨集 R-48(pp.535-536)/公開日:令和2年8月(発行日 令和2年 8月25日) 電子通信回線を通じての公開/掲載アドレス:http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/cgi-bin/anual.cgi?search=%B2%F3%C5%BE%BC%B0%BF%E5%C3%E6&search2=-&search3=-/農業農村工学会全国大会講演要旨集 pp.535-536,2020 発表番号[R-48]/公開日:令和2年8月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】有田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】金森 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇
(72)【発明者】
【氏名】川邉 翔平
(72)【発明者】
【氏名】河端 俊典
(72)【発明者】
【氏名】澤田 豊
(57)【要約】
【課題】所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現できる摩耗試験装置を提供する。
【解決手段】摩耗試験装置1は、底面に供試体Sを固定するとともに水Wを貯留する貯留槽2と、貯留槽2の内部に投入されて供試体Sの上部に位置する摩耗材5と、貯留槽2の内部に配置されて摩耗材5の上方に位置する回転板34とを備え、回転板34を貯留槽2の周方向に回転させることで水Wとともに摩耗材5を攪拌する。このような摩耗試験装置1において、貯留槽2を構成する外筒体22の中心に外筒体22の中心軸Cに対して同軸となる内芯体23を設け、回転板34が外筒体22と内芯体23で構成された円形通路Pに沿って回転する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に供試体を固定するとともに液体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の内部に投入されて前記供試体の上部に位置する摩耗材と、
前記貯留槽の内部に配置されて前記摩耗材の上方に位置する回転板とを備え、
前記回転板を前記貯留槽の周方向に回転させることで前記液体とともに前記摩耗材を攪拌する摩耗試験装置において、
前記貯留槽を構成する外筒体の中心に当該外筒体の中心軸に対して同軸となる内芯体を設け、
前記回転板が前記外筒体と前記内芯体で構成された円形通路に沿って回転する
摩耗試験装置。
【請求項2】
前記回転板を支持する支持軸と、
前記支持軸を保持した状態で前記中心軸を中心に回転する回転腕とを備え、
前記回転腕は、前記液体の液面よりも高い位置で回転する
請求項1に記載の摩耗試験装置。
【請求項3】
前記支持軸は、前記回転板の内周側端部に固定されて前記内芯体に対して近接した位置を回転する
請求項2に記載の摩耗試験装置。
【請求項4】
前記内芯体は、少なくとも前記回転板が回転している状態において前記液体の液面から上方に突出する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項5】
前記内芯体の外周面から前記回転板の内周側端縁までの距離は、前記外筒体の内周面から前記回転板の外周側端縁までの距離よりも短い
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項6】
前記供試体の上面から前記回転板の下方側端縁までの距離は、前記液体の液面から前記回転板の上方側端縁までの距離よりも短い
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項7】
摩耗材は、前記供試体よりも靭性が高い材質で形成された多面体形成物である
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項8】
前記摩耗材は、形状及び重量の少なくとも一方が異なる二種類以上が含まれる
請求項7に記載の摩耗試験装置。
【請求項9】
前記外筒体の内径を0.7~1.3mとし、前記摩耗材の重量を50.0~130.0gとし、前記回転板の速度を50.0~90.0rpmとして回転させる
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項10】
前記外筒体の内径と前記内芯体の外径との比を1.67~4.06とした
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項11】
前記円形通路における前記液体の断面積と前記回転板の面積との比を2.81~9.82とした
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項12】
前記貯留槽の底面に平板形状の前記供試体を周方向に並べた状態で固定する供試体固定部を設けた
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項13】
前記貯留槽の底面に円柱形状の前記供試体を挿入した状態で固定する供試体固定部を設けた
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【請求項14】
前記供試体がモルタルに粗骨材を含むコンクリート成形物である
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の摩耗試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、摩耗試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムや頭首工、開水路等の水利施設では、躯体の流水接触面に摩耗が生じる。流水接触面における摩耗は、所定の摩耗態様によって進行することが知られている。すなわち、モルタル部分が削り取られて粗骨材が露出し、この粗骨材が抜け落ちるとさらにモルタル部分が削り取られるという摩耗態様(選択的摩耗)によって進行することが知られている。
【0003】
ところで、供試体としてコンクリート成形物を摩耗させる摩耗試験装置が存在している。非特許文献1に開示された試験装置は、貯留槽の底面に供試体を固定し、回転翼を回転させることで貯留された水とともに摩耗材を攪拌するものである。しかし、かかる試験装置によれば、供試体上を球状の摩耗材が高速で転がるためにモルタル部分と粗骨材が同時に摩耗してしまい、前述の摩耗態様が再現できないという問題があった。さらには長時間の試験が必要になるという問題もあった。
【0004】
また、非特許文献2に開示された試験装置は、回転胴体の内周面に供試体を固定し、この回転胴体を回転させることで摩耗材を持ち上げては落下させるものである。しかし、かかる試験装置によれば、供試体に対して円柱状の摩耗材を衝突させて大きな衝撃力を繰り返し加えるためにモルタル部分から粗骨材の抜け落ちを促進させてしまい、前述の摩耗態様が再現できないという問題があった。さらには非特許文献1に開示された試験装置よりは短いものの、長時間の試験が必要になるという問題もあった。
【0005】
さらに、非特許文献3に開示された試験装置は、回転胴体の外周面に供試体を固定し、この回転胴体を回転させながら珪砂を水とともに吹き付けるものである。しかし、かかる試験装置によれば、供試体に対して珪砂を水とともに吹き付けるだけで大きな衝撃力が一切加わらないためにモルタル部分の摩耗が進行しても粗骨材が抜け落ちず、前述の摩耗態様が再現できないという問題があった。さらには非特許文献1に開示された試験装置よりは短いものの、長時間の試験が必要になるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G.B.Ramesh Kumar 他1名、Standard Test Methords for Determination of Abrasion Resistance of Concrete、J.Civil Engineering Reserch、Vol.5、No.2、155-162
【非特許文献2】増田隆 他2名、超高強度コンクリートによる橋脚の補強、コンクリート工学、Vol.31、No.9、53-61
【非特許文献3】長束勇 他3名、水砂噴流摩耗試験機の試作とその性能評価、農業農村工学会論文集、266,89-95
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現できる摩耗試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、底面に供試体を固定するとともに液体を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の内部に投入されて前記供試体の上部に位置する摩耗材と、前記貯留槽の内部に配置されて前記摩耗材の上方に位置する回転板とを備え、前記回転板を前記貯留槽の周方向に回転させることで前記液体とともに前記摩耗材を攪拌する摩耗試験装置において、前記貯留槽を構成する外筒体の中心に当該外筒体の中心軸に対して同軸となる内芯体を設け、前記回転板が前記外筒体と前記内芯体で構成された円形通路に沿って回転することを特徴としている。
【0009】
この発明により、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
詳述すると、貯留槽にて回転する液体は、径外側位置よりも径内側位置のほうが流速が低くなるところ、外筒体の中心に外筒体の中心軸に対して同軸となる内芯体を設けたため、摩耗材が中心部分に滞留することを防止できる。また、回転板が外筒体と内芯体で構成された円形通路に沿って回転するため、液体の流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0010】
この発明の態様として、前記回転板を支持する支持軸と、前記支持軸を保持した状態で前記中心軸を中心に回転する回転腕とを備え、前記回転腕は、前記液体の液面よりも高い位置で回転してもよい。
【0011】
この発明により、回転腕が液体の液面よりも高い位置で回転するため、液体の流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記支持軸は、前記回転板の内周側端部に固定されて前記内芯体に対して近接した位置を回転してもよい。なお、内芯体に対して近接した位置とは、少なくとも円形通路における幅方向中間位置よりも内側を意味する。
【0013】
この発明により、支持軸が回転板の内周側端部に固定されて内芯体に対して近接した位置を回転するため、支持軸が液位が低くかつ流速の低い中心側領域を回転することとなり、液体の流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記内芯体は、少なくとも前記回転板が回転している状態において前記液体の液面から上方に突出してもよい。なお、回転板が回転している状態とは、液体とともに摩耗材を攪拌して試験を行っている状態を意味する。
【0015】
この発明により、内芯体が少なくとも回転板が回転しているときに液体の液面から上方に突出するため、閉通路である円形通路が液体の液面まで構成されることとなり、液体の流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記内芯体の外周面から前記回転板の内周側端縁までの距離は、前記外筒体の内周面から前記回転板の外周側端縁までの距離よりも短くてもよい。なお、内芯体の外周面から回転板の内周側端縁までの距離については、摩耗材の形状に基づいてその最小値が定められる。
【0017】
この発明により、内芯体の外周面から回転板の内周側端縁までの距離が、外筒体の内周面から回転板の外周側端縁までの距離よりも短いため、内芯体の近傍における流速の低下に起因した摩耗材の滞留を防ぐことができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記供試体の上面から前記回転板の下方側端縁までの距離は、前記液体の液面から前記回転板の上方側端縁までの距離よりも短くてもよい。なお、供試体の上面から回転板の下方側端縁までの距離については、摩耗材の形状に基づいてその最小値が定められる。
【0019】
この発明により、供試体の上面から回転板の下方側端縁までの距離が、液体の液面から回転板の上方側端縁までの距離よりも短いため、供試体の近傍における流速の低下に起因した摩耗材の滞留を防ぐことができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記摩耗材は、前記供試体よりも靭性が高い材質で形成された多面体形成物であってもよい。なお、多面体形成物とは、複数の面によって形成された立体形成物を意味する。角錐体や角柱体だけでなく、円錐体や円柱体も含むものとする。
【0021】
この発明により、摩耗材が供試体よりも靭性が高い材質で形成された多面体形成物であるため、供試体の表面に衝撃力を繰り返し与えることができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記摩耗材は、形状及び重量の少なくとも一方が異なる二種類以上が含まれてもよい。なお、形状及び重量の少なくとも一方が異なるとは、形状が異なるもののほか、形状が同じであったとしても材質の差異によって重量が異なるものが該当する。もちろん形状と重量の両方が異なるものも該当する。
【0023】
この発明により、摩耗材が形状及び重量の少なくとも一方が異なる二種類以上が含まれるため、供試体の表面に異なる大きさの衝撃力を繰り返し与えることができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記外筒体の内径を0.7~1.3mとし、前記摩耗材の重量を50.0~130.0gとし、前記回転板の速度を50.0~90.0rpmとして回転させてもよい。なお、摩耗材として二種類以上が含まれていたとしても、各摩耗材の重量は50.0~130.0gの範囲に収まる。
【0025】
この発明により、外筒体の内径を0.7~1.3mとし、摩耗材の重量を50.0~130.0gとし、回転板の速度を50.0~90.0rpmとして回転させるため、摩耗材が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材に作用する遠心力とを確実に釣り合わせることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記外筒体の内径と前記内芯体の外径との比を1.67~4.06としてもよい。なお、外筒体の内径は0.7~1.3mの範囲に収まり、内芯体の外径は0.32m~0.42mの範囲に収まるものとして算出した。
【0027】
この発明により、外筒体の内径と内芯体の外径との比を1.67~4.06としたため、貯留槽の径方向の流速分布に適当な勾配をつけることができ、ひいては摩耗材が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材に作用する遠心力とを確実に釣り合わせることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記円形通路における前記液体の断面積と前記回転板の面積との比を2.81~9.82としてもよい。なお、外筒体の内径は0.7~1.3mの範囲に収まり、内芯体の外径は0.32m~0.42mの範囲に収まるものとし、液面の高さ及び回転板の面積を所定の値として計算した。
【0029】
この発明により、円形通路における液体の断面積と回転板の面積との比を2.81~9.82としたため、回転板から離間した位置における流速の低下に起因した摩耗材の滞留を防ぐことができ、ひいては供試体の表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記貯留槽の底面に平板形状の前記供試体を周方向に並べた状態で固定する供試体固定部(周方向固定部)を設けてもよい。なお、かかる周方向固定部は、供試体ごとに設けられてもよいし、複数の供試体ごとに設けられてもよい。
【0031】
この発明により、貯留槽の底面に平板形状の供試体を周方向に並べた状態で固定する周方向固定部が設けられるため、様々な種類の供試体に対して同じ条件で同時に試験を行うことができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができるという効果に加え、供試体ごとの比較を容易に行うことが可能となる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記貯留槽の底面に円柱形状の前記供試体を挿入した状態で固定する供試体固定部(挿入固定部)を設けてもよい。なお、かかる挿入固定部も、供試体ごとに設けられてもよいし、複数の供試体ごとに設けられてもよい。
【0033】
この発明により、貯留槽の底面に円筒形状の供試体を挿入した状態で固定する挿入固定部が設けられるため、例えばコアボーリング工法にて採取された供試体に対して同じ条件で同時に試験を行うことができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができるという効果に加え、供試体ごとの比較を容易に行うことが可能となる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記供試体が粗骨材を含むコンクリート成形物であってもよい。なお、粗骨材は、モルタル部分を構成する細骨材よりも大きな砂利や砕石であり、その種類や密度等について限定するものではない。また、粗骨材を含まないモルタル形成物等についても試験可能である。
【0035】
この発明により、供試体が粗骨材を含むコンクリート成形物であるため、モルタル部分が削り取られて粗骨材が露出し、この粗骨材が抜け落ちるとさらにモルタル部分が削り取られるという摩耗態様を再現できる。すなわち、モルタル部分が選択的に削り取られる選択的摩耗を再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】摩耗試験装置の構成を示す断面図。
図2】内芯体を脱着している状況を示す説明図。
図3】回転板駆動部の構成を示す側面図。
図4】回転板の径方向位置を調節している状況を示す説明図。
図5】回転板の上下方向位置を調節している状況を示す説明図。
図6】回転板の速度方向に対する傾き角度を調節している状況を示す説明図。
図7】回転板の遠心方向に対する傾き角度を調節している状況を示す説明図。
図8】供試体固定部の構成を示す断面図。
図9】供試体を固定している状況を示す説明図。
図10】供試体の配置例を示す平面図。
図11】第一摩耗材及び第二摩耗材を示す斜視図。
図12】摩耗材の種類と樹脂板の傷痕との関係を示す説明図。
図13】摩耗材の組み合せと樹脂板の傷痕との関係を示す説明図。
図14】供試体における粗骨材の有無と摩耗態様との関係を示す説明図。
図15】試験前の供試体と試験後の供試体を示す説明図。
図16】コアボーリング工法にて採取された供試体を固定している状況を示す説明図。
【0037】
この発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
図1は摩耗試験装置1の構成を示す断面図であり、図2は内芯体23を脱着している状況を示す説明図である。図3は回転板駆動部3の構成を示す側面図であり、図4は回転板34の径方向位置を調節している状況を示す説明図であり、図5は回転板34の上下方向位置を調節している状況を示す説明図であり、図6は回転板34の速度方向Vに対する傾き角度αを調節している状況を示す説明図である。そして、図7は回転板34の遠心方向Rに対する傾き角度βを調節している状況を示す説明図である。
【0038】
また、図8は供試体固定部(周方向固定部4)の構成を示す断面図であり、図9は供試体Sを固定している状況を示す説明図であり、図10は供試体Sの配置例を示す平面図であり、図11は第一摩耗材51及び第二摩耗材52を示す斜視図である。図12は摩耗材5の種類と樹脂板の傷痕との関係を示す説明図であり、図13は摩耗材5の組み合せと樹脂板の傷痕との関係を示す説明図であり、図14は供試体Sにおける粗骨材の有無と摩耗態様との関係を示す説明図であり、図15は試験前の供試体Sと試験後の供試体Sを示す説明図である。そして、図16は摩耗試験装置1の他の実施例に関し、コアボーリング工法にて採取された供試体Sを固定している状況を示す説明図である。
【0039】
図1に示すように、摩耗試験装置1は、貯留槽2と回転板駆動部3と供試体固定部(周方向固定部4)を備えている。また、摩耗試験装置1は摩耗材5を用いる。摩耗材5は、摩耗試験装置1に直接的に取り付けられる構成部品ではないが、供試体Sを摩耗させるために不可欠なものである。そのため、本願に係る発明の構成要素として摩耗材5を含める。
【0040】
<貯留槽2について>
図1に示すように、貯留槽2は、その内側に液体(例えば水)Wを貯留する。貯留槽2は、円形状の底板21と、底板21によって下側開口端が塞がれた円筒形状の外筒体22とを有している。また、貯留槽2は、外筒体22の中心に外筒体22の中心軸Cに対して同軸となる内芯体23を有している。本願においては、外筒体22と内芯体23で構成された閉通路を円形通路Pと定義している。
【0041】
底板21は、円形状に切り出された金属板である。底板21の上面には、内芯体23を支持するための支持台211が設けられている。支持台211は、中心軸Cを中心に環状に形成されており、この支持台211を取り囲むように供試体Sが配置される。また、底板21の下面には、格子状に組み合わされたH形鋼212が固定されている。このH形鋼212には、移動の際に利用されるキャスター213が取り付けられている。
【0042】
外筒体22は、矩形状に切り出された金属板を湾曲させて円筒形状としたものである。外筒体22の下側外周面には、外筒体22の周方向に沿って円弧状に曲げられたL形鋼221が溶接されている。L形鋼221は、底板21の上面に接した状態で底板21に溶接される。また、外筒体22の上側外周面にも、外筒体22の周方向に沿って円弧状に曲げられたL形鋼222が溶接されている。このL形鋼222には、後述する電動機31を支持するためのL形鋼223が架け渡されている。
【0043】
内芯体23は、円筒形状に形成された樹脂管を所定の長さに切断したものである。内芯体23の下側開口端は、円形状に切り出された底板231によって塞がれており、この底板231の外周縁が径外側方向に突出してフランジ部23fを構成している(図2参照)。フランジ部23fは、前述の支持台211の内側に嵌められた状態で、支持台211に取り付けられたリテーナ233と底板21との間に挟み込まれる。また、内芯体23の上側開口端は、塞がれることなく開放されている。但し、板材等によって塞がれていてもよい。
【0044】
なお、摩耗試験装置1は、内芯体23を脱着することが可能である。つまり、図2(a)に示すように、内芯体23を有している場合は、ボルト232を緩めてリテーナ233を取り外すことにより、内芯体23を撤去することができる。また、図2(b)に示すように、内芯体23を有していない場合は、内芯体23を載置するとともにリテーナ233を嵌め合わせてボルト232を締め付けることにより、内芯体23を固定することができる。
【0045】
このような構成により、摩耗試験装置1は、内芯体23の形状を変更することも可能である。具体的には、内芯体23を他の内芯体23と交換することで、内芯体23の大きさ(高さ及び外径)を変更したり、テーパ形状あるいはコーン形状にしたりすることが可能である。この点を考慮し、本願に係る発明においては、内芯体23の形状について限定しないものとする。但し、内芯体23は、上方から視て円形状(上方から視てほぼ円形状となる多角形を含む)になっていなければならない。
【0046】
<回転板駆動部3について>
図3に示すように、回転板駆動部3は、回転板34を貯留槽2の周方向に回転させる。回転板駆動部3は、動力源である電動機31と、電動機31によって回転される回転腕32と、回転腕32とともに回転される支持軸33とを有している。そして、支持軸33に回転板34が取り付けられている。回転板34の回転中心は、外筒体22の中心軸Cに対して同軸となる。
【0047】
電動機31は、いわゆる交流モーターである。電動機31に供給される電力は、コントローラ30によって適宜に制御される。そのため、電動機31の駆動状態(回転軸31Sの回転速度)を自在に調節あるいは一定に維持することが可能である。電動機31の回転軸31Sは、鉛直下向きに延びており、その下端部分には腕保持部311が取り付けられている。
【0048】
回転腕32は、円柱状に形成された金属棒である。回転腕32は、腕保持部311の側面に挿入された状態で保持される。回転腕32は、内芯体23の上方に位置する腕保持部311から外筒体22の近傍まで延びており、腕保持部311と一体となって回転する。摩耗試験装置1においては、中心軸Cを中心として二つの回転腕32が180度ごとに保持されているが、四つの回転腕32を90度ごとに保持することも可能である。また、八つの回転腕32を45度ごとに保持することも可能である。それぞれの回転腕32の先端部分には、軸保持部321が取り付けられている。
【0049】
支持軸33も、円柱状に形成された金属棒である。支持軸33は、軸保持部321に対して下方側から上方側に向かって挿通された状態で保持される。支持軸33は、水平方向に延びる回転腕32と垂直に交差して底板21の近傍まで延びており、軸保持部321と一体となって回転する。摩耗試験装置1においては、回転腕32ごとに一つの支持軸33が保持されるため、二つの支持軸33が180度ごとに配置されているが、回転腕32の本数ならびに配置に応じて支持軸33の本数ならびに配置が変わることとなる。それぞれの支持軸33の下端部分には、回転板34が取り付けられている。
【0050】
このような構成により、電動機31が駆動すると、回転腕32と支持軸33を介して回転板34が円形通路Pに沿って回転することとなる。すると、貯留槽2に貯留された液体Wも回転し、液体Wに作用する遠心力によって液面Wsが湾曲する。この状態においても、回転腕32が液面Wsよりも高い位置で回転するため、回転腕32が液体Wの流れを邪魔することがない。したがって、液体Wの流れを乱すことなく攪拌することができる。
【0051】
また、摩耗試験装置1の回転板34は、貯留槽2の径方向(円形通路Pの幅方向)に長い矩形状の金属板である。回転板34は、その内周側端部が支持軸33に固定されている。換言すると、支持軸33は、回転板34の内周側端部に固定されている。そのため、支持軸33は、内芯体23に対して近接した位置を回転することとなる。すると、支持軸33は、液体Wの液位が低くかつ流速が低い中心側領域に位置するため、支持軸33と周囲の液体Wに速度差があったとしても、その影響が小さくなる。したがって、液体Wの流れを乱すことなく攪拌することができる。
【0052】
さらに、摩耗試験装置1の内芯体23は、回転板34が回転していない状態においても、液体Wの液面Wsから上方に突出している。しかし、回転板34が回転していない状態においては液体Wに沈んでおり、回転板34が回転することによって貯留槽2の中心側領域における液位が低くなると、内芯体23が液面Wsから上方に突出するように構成してもよい。このような構成であったとしても、回転板34が回転している状態、すなわち試験を行っている状態において、液体Wの流れを円形通路Pによって規制することができる。したがって、液体Wの流れを乱すことなく攪拌することができる。
【0053】
ところで、摩耗試験装置1は、回転板34の径方向位置を調節することが可能である。図4に示すように、軸保持部321は、本体部分の上側片32aと下側片32bによって回転腕32を把持するように構成されているところ、これらを締め付けるボルト322を緩めることにより、回転腕32の軸方向に軸保持部321を移動させることができる。
【0054】
このような構成により、軸保持部321を径外側方向に移動させると、軸保持部321に保持された支持軸33も径外側方向に移動し、支持軸33に取り付けられた回転板34も径外側方向に移動することとなる。反対に、軸保持部321を径内側方向に移動させると、軸保持部321に保持された支持軸33も径内側方向に移動し、支持軸33に取り付けられた回転板34も径内側方向に移動することとなる。このように、摩耗試験装置1においては、回転板34の径方向位置を調節することが可能である。
【0055】
また、摩耗試験装置1は、回転板34の上下方向位置を調節することも可能である。図5に示すように、軸保持部321は、本体部分とその前面に固定された前側片32cによって支持軸33を把持するように構成されているところ、これらを締め付けるボルト323を緩めることにより、回転腕32の軸方向に対して垂直に支持軸33を移動させることができる。
【0056】
このような構成により、支持軸33を上方向に移動させると、支持軸33に取り付けられた回転板34も上方向に移動することとなる。反対に、支持軸33を下方向に移動させると、支持軸33に取り付けられた回転板34も下方向に移動することとなる。このように、摩耗試験装置1においては、回転板34の上下方向位置を調節することが可能である。
【0057】
さらに、摩耗試験装置1は、回転板34の速度方向Vに対する傾き角度αも調節することが可能である。図6に示すように、軸保持部321は、本体部分の上側片32aと下側片32bによって回転腕32を把持するように構成されているところ、これらを締め付けるボルト322を緩めることにより、回転腕32の周方向に軸保持部321を回動させることができる。
【0058】
このような構成により、軸保持部321を側方から視て時計方向に回動させると、軸保持部321に保持された支持軸33も時計方向に回動し、支持軸33に取り付けられた回転板34も時計方向に回動することとなる。反対に、軸保持部321を側方から視て反時計方向に回動させると、軸保持部321に保持された支持軸33も反時計方向に回動し、支持軸33に取り付けられた回転板34も反時計方向に回動することとなる。このように、摩耗試験装置1においては、回転板34の速度方向Vに対する傾き角度αを調節することが可能である。
【0059】
加えて、摩耗試験装置1は、回転板34の遠心方向(貯留槽2の径外側方向)Rに対する傾き角度βも調節することが可能である。図7に示すように、回転板34に設けられた上下二つのボルト孔34hのうち、上側のボルト孔34hが円弧状の長円形状であるところ、このボルト孔34hを通って支持軸33に螺合されたボルト341を緩めることにより、支持軸33の軸方向に対して回転板34を回動させることができる。
【0060】
このような構成により、径内側端部よりも径外側端部のほうが高くなるように回転板34を傾けることができる。反対に、径内側端部よりも径外側端部のほうが低くなるように回転板34を傾けることもできる。このように、摩耗試験装置1においては、回転板34の遠心方向Rに対する傾き角度βを調節することが可能である。
【0061】
<周方向固定部4について>
図8に示すように、周方向固定部4は、貯留槽2の底面(円形通路Pの底面)に載置された平板形状の供試体Sを固定する。周方向固定部4は、供試体Sの外周側端部を固定する外周側固定具41と、供試体Sの内周側端部を固定する内周側固定具42とを備えている。また、周方向固定部4は、摩耗材5の衝突による衝撃力を和らげるために弾性チューブ43を備えている。
【0062】
外周側固定具41は、外筒体22の内周面に沿うように円弧状に曲げられたL形鋼である。外周側固定具41は、貯留槽2の底側に向かって延びる垂直板411と径内側方向に延びる水平板412とを有しており、この水平板412の上面に弾性チューブ43が配置されている。そのため、供試体Sと外筒体22との隙間に垂直板411を挿入すると、供試体Sの外周側端部上面に水平板412が当接し、この水平板412の上面に弾性チューブ43が位置することとなる。
【0063】
内周側固定具42は、内芯体23の外周面に沿うように円弧状に曲げられたL形鋼である。内周側固定具42は、貯留槽2の底側に向かって延びる垂直板421と径外側方向に延びる水平板422とを有しており、この水平板422の上面に弾性チューブ43が配置されている。そのため、供試体Sと内芯体23との隙間に垂直板421を挿入すると、供試体Sの内周側端部上面に水平板422が当接し、この水平板422の上面に弾性チューブ43が位置することとなる。
【0064】
なお、周方向固定部4は、外周側固定具41と内周側固定具42で供試体Sを挟み込むことができる。つまり、図9(a)に示すように、供試体Sの両端部を押さえるように外周側固定具41と内周側固定具42を上方から挿入した後に、図9(b)に示すように、外筒体22の外周面側から内周面側に向かって挿通されたボルト44を締め付けることで、外周側固定具41を内周側固定具42側に移動させて供試体Sを挟み込むことができる。このように、液体Wが流れることによる抵抗や摩耗材5が衝突したことによる衝撃力によって供試体Sがズレないようにしている。
【0065】
加えて、外周側固定具41と内周側固定具42は、円形通路Pの底面に周方向に並べて載置された三枚の供試体Sを挟み込むことができる。つまり、図10に示すように、上方から視て扇形状に形成された三枚一組の供試体Sを同時に挟み込むことができる。摩耗試験装置1においては、十五枚の供試体Sを円形通路Pの底面に周方向に並べて載置することができるため、三枚一組の供試体Sを五つほど用意する必要がある。したがって、例えば三枚一組の供試体Sごとに材料特性を変えた場合は、五種類の供試体Sに対して同じ条件で同時に試験を行うことが可能となる。
【0066】
<摩耗材5について>
図11に示すように、摩耗試験装置1は、一種類又は二種類の摩耗材5を用いる。本願においては、選定された二種類の摩耗材5について、小さいほうの摩耗材5を第一摩耗材51、大きいほうの摩耗材5を第二摩耗材52と定義する。摩耗材5(第一摩耗材51及び/又は第二摩耗材52)は、貯留槽2の内側に投入されて底面に固定された供試体Sの上部に載置される(図1参照)。
【0067】
第一摩耗材51は、四角柱形状に形成された金属形成物である。本実施形態における第一摩耗材51の縦寸法xと横寸法yは互いに19mmであり、長さ寸法zは20mmである。そして、一つ当たりの重量は56.7gである。但し、第一摩耗材51の形状や重量については、円形通路Pの供試体S上を不規則な挙動で転がりながら、全体として第一摩耗材51が流速の低い中心部分に移動しようとする力と第一摩耗材51に作用する遠心力とを釣り合わせることができればよいので、厳密な値として限定するものではない。
【0068】
したがって、第一摩耗材51の形状については、単に角柱形状であることを限定し、その重量については、50.0~90.0gの範囲に収まるものであることを限定する。第一摩耗材51を後述する第二摩耗材52よりも小さくした(軽くした)のは、供試体Sに対して比較的に小さな衝撃力を加えることと、円形通路Pの幅方向に広がって転がることを考慮したものである。
【0069】
第二摩耗材52も、四角柱形状に形成された金属形成物である。本実施形態における第二摩耗材52の縦寸法xと横寸法yは互いに19mmであり、長さ寸法zは40mmである。そして、一つ当たりの重量は113.4gである。但し、第二摩耗材52の形状や重量についても、円形通路Pの供試体S上を不規則な挙動で転がりながら、全体として第二摩耗材52が流速の低い中心部分に移動しようとする力と第二摩耗材52に作用する遠心力とを釣り合わせることができればよいので、厳密な値として限定するものではない。
【0070】
したがって、第二摩耗材52の形状については、単に角柱形状であることを限定し、その重量については、90.0~130.0gの範囲に収まるものであることを限定する。第二摩耗材52を前述した第一摩耗材51よりも大きくした(重くした)のは、供試体Sに対して比較的に大きな衝撃力を加えることと、円形通路Pの幅方向に広がらずに転がることを考慮したものである。
【0071】
なお、第一摩耗材51と第二摩耗材52は、一般構造用圧延鋼材にて形成されている。そのため、コンクリート形成物である供試体Sよりも靭性(破壊に対する抵抗あるいは材質の粘り強さ)が高いとされる。また、二種類の摩耗材5を用いて試験を行うにあたり、第一摩耗材51と第二摩耗材52は、それぞれ複数個ずつ投入される。但し、第一摩耗材51と第二摩耗材52の投入数についても、供試体Sにおける摩耗箇所の広さ及び深さ、試験に要する時間等を考慮して最適化されるべきであるため、厳密な値として限定するものではない。
【0072】
<摩耗試験装置1の試験方法及びその結果について>
以下に、摩耗試験装置1の主な諸元について説明し、回転板34の回転速度を定めた経緯ならびに摩耗材5の形状を定めた経緯ならびに摩耗材5として短角柱体(第一摩耗材51)及び角柱体(第二摩耗材52)を選定した経緯について説明する。その後、コンクリート形成物等の供試体Sに対して試験を行った結果について説明する。
【0073】
まず、摩耗試験装置1の主な諸元について説明する。
本実施形態において、摩耗試験装置1の外筒体22は、内径1055mmである。また、摩耗試験装置1の内芯体23は、外径370mmである。そのため、外筒体22と内芯体23で構成された円形通路Pは、幅342.5mmであり、外筒体22の内径と内芯体23の外径との比は、2.85である。さらに、このような貯留槽2(円形通路P)に対して液位が400mmとなるように液体Wを貯留する。このとき、円形通路Pにおける液体Wの断面積と回転板34の面積との比は、回転板34の面積を19950mmとして計算すると、6.87となる。
【0074】
なお、外筒体22の内径については、結果的に0.7~1.3mの範囲に収まればよいものとする。これは、回転板34の径方向位置を±100mm程度で調節できることから1055±100mmとし、そこから若干の余裕をとったものである。外筒体22の内径を少なくとも0.7~1.3mの範囲に収めれば、回転板34の回転速度が同じであったとしても、試験結果に大きな差異は表れないことが確認されている。さらに、内芯体23の外径については、0.32~0.42mの範囲に収めれば、外筒体22の内径に関わらず各摩耗材5が中心部分に滞留しないことが確認されている。このため、外筒体22の内径と内芯体23の外径との比は1.67~4.06と表すことができる。
【0075】
加えて、回転板34の速度方向Vに対する傾き角度αは90度であり、回転板34の遠心方向Rに対する傾き角度βは0度とする。また、内芯体23の外周面から回転板34の内周側端縁までの距離D1は、外筒体22の内周面から回転板34の外周側端縁までの距離D2よりも短いものとする(図1参照)。さらに、供試体Sの上面から回転板34の下方側端縁までの距離D3は、液体Wの液面Wsから回転板34の上方側端縁までの距離D4よりも短いものとする(図1参照)。そして、距離D1,D3については、第二摩耗材52の長さ寸法zである40mmよりも大きい値とする。このようにしたのは、回転板34に第一摩耗材51及び第二摩耗材52が衝突することを防ぐためである。
【0076】
さらに加えて、摩耗試験装置1の回転板34は、最大回転半径(回転板34が回転したときの最外端部分が通過する半径:外周側端縁と同義)が453.5mmとなっているところ、かかる回転板34の最大回転半径については、結果的に0.35~0.55mの範囲に収まればよいものとする。これは、回転板34の径方向位置を±100mm程度で調節できることから453.5±100mmとし、そこから若干の余裕をとったものである。回転板34の最大回転半径を少なくとも0.35~0.55mの範囲に収まれば、外筒体22の内径が異なっていたとしても、試験結果に大きな差異は表れないことが確認されている。但し、かかる値については、回転板34の面積に大きく依存することとなる。
【0077】
次に、回転板34の回転速度を定めた経緯について説明する。
摩耗材5として第一摩耗材51及び第二摩耗材52が選定される前においては、下の表1に示す六種類(No.1~6)が候補として挙げられていた。これらの候補は、全て一般構造用圧延鋼材にて形成されており、それぞれの形状及び重量は表1のとおりである。第一摩耗材51はNo.4に相当し、第二摩耗材52はNo.3に相当している。
【0078】
【表1】
【0079】
回転板34の回転速度を定めるにあたっては、候補に挙げられた摩耗材を一種類ずつ6個ほど投入し、回転板34の回転速度をパラメータとして円形通路Pに沈んだ摩耗材の挙動を観察した。この結果については下の表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
このような実験により、No.1~5の摩耗材にあっては、回転板34の回転速度が70rpm前後において縦回転及び横回転をしながら転がることが確認された。No.6の摩耗材にあっては、球状であるために全ての回転速度で転がるものの、円形通路Pの最も外側を通過するのみであり、供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることは不可能であると考えられる。そこで、No.6の摩耗材を除外した上で、回転板34の回転速度を50~90rpmと定めた。
【0082】
次に、摩耗材5の形状を定めた経緯について説明する。
摩耗材の形状を定めるにあたっては、候補に挙げられた摩耗材を一種類ずつ20個ほど投入し、回転板34の回転速度を70rpmとした状態で、供試体Sの代わりに固定された樹脂板への傷痕を観察した。この結果については下の表3ならびに図12に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
このような実験により、摩耗材が円柱形状よりも角柱形状であるほうが傷痕の分布帯幅と集中帯幅が大きく、さらには分布帯幅に対する集中帯幅の割合も大きくなることが確認された。このことから、円柱形状よりも角柱形状のほうが摩耗促進効果が高いものと考えられる。また、No.5の摩耗材にあっては、傷痕の数は多いものの概して浅く、摩耗促進効果が小さいものと考えられる。そこで、No.5の摩耗材を除外した上で、摩耗材5の形状を角柱形状と定めた。
【0085】
次に、摩耗材5として短角柱体(第一摩耗材51)及び角柱体(第二摩耗材52)を選定した経緯について説明する。
前述したように、貯留槽2にて回転する液体Wは、径外側位置よりも径内側位置のほうが流速が低くなる。そのため、摩耗材5が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材5に作用する遠心力とを釣り合わせることが重要である。そのため、比較的に摩耗促進効果が高いNo.4の摩耗材を基調としつつ、他の摩耗材を組み合わせて一種類につき20個ほど投入し、回転板34の回転速度を70rpmとした状態で、供試体Sの代わりに固定された樹脂板への傷痕を観察した。この結果については下の表4ならびに図13に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
このような実験により、No.4の摩耗材とNo.3の摩耗材を組み合せた場合に傷痕の分布帯幅と集中帯幅が大きく、さらには分布帯幅に対する集中帯幅の割合が大きくなることが確認された。特に、この組み合わせで30分間の試験を行った場合は、参考としてNo.5の摩耗材を60個ほど投入した場合よりも分布帯幅及び集中帯幅が大きく、さらには分布帯幅に対する集中帯幅の割合も大きくなることが確認された。また、参考として砕石を1.0kgほど投入した場合よりも分布帯幅及び集中帯幅が大きく、さらには分布帯幅に対する集中帯幅の割合も大きくなることが確認された。そこで、摩耗材5としてNo.4の摩耗材である短角柱体(第一摩耗材51)とNo.3の摩耗材である角柱体(第二摩耗材52)を選定した。
【0088】
次に、コンクリート形成物等の供試体Sに対して試験を行った結果について説明する。この試験においては、第一摩耗材51を80個ほど投入し、回転板34の回転速度を70rpmとしている。各供試体Sの摩耗量については、径方向に設定した7つの測線に沿ってレーザー距離計を用いて0.1mmピッチで計測した。
【0089】
ここで、まずは供試体Sについて説明する。前述したように、摩耗試験装置1においては、十五枚の供試体Sを円形通路Pの底面に周方向に並べて載置することができるため、三枚一組の供試体Sを五つほど用意する必要がある。したがって、例えば三枚一組の供試体Sごとに材料特性を変えた場合は、五種類の供試体Sに対して同じ条件で同時に試験を行うことが可能となる。
【0090】
五種類の供試体Sは、下の表5に示すように、No.1~3がコンクリート形成物である。No.1とNo.2のコンクリート形成物を比べると、目標強度は等しいものの、粗骨材の大きさが異なっている。また、No.2とNo.3のコンクリート形成物を比べると、粗骨材の大きさは等しいものの、目標強度が異なっている。そして、No.4がモルタル形成物であり、No.5がいわゆるUFC(Ultra high strength Fiber reinforced Concrete:超高強度繊維補強コンクリート)形成物である。
【0091】
【表5】
【0092】
このような試験により、以下の結果が得られた。すなわち、No.2の供試体Sに関しては、図14(a)に示すように、摩耗領域が供試体Sの外周側端部から150mm程度にまで及ぶことがわかる。また、粗骨材の分布によってばらつきがあるものの、外周側端部から30~40mmの範囲で摩耗量が大きくなっていることがわかる。他方、No.4の供試体Sに関しては、図14(b)に示すように、摩耗領域が滑らかな曲面となっており、No.2の供試体Sとは摩耗態様が異なることがわかる。これは、モルタルの摩耗速度が速いことに加えて粗骨材を含まないために、ひとたび溝が形成されると摩耗材5が優先的に通過するためであると考えられる。
【0093】
最後に、図15(a)に試験前の供試体Sを示し、図15(b)に試験後の供試体Sを示す。かかる供試体Sは、No.2である粗骨材を含むコンクリート形成物である。図15(b)より、かかる供試体Sについて、モルタル部分が削り取られて粗骨材が露出し、この粗骨材が抜け落ちるとさらにモルタル部分が削り取られるという摩耗態様を再現できていることがわかる。すなわち、モルタル部分が選択的に削り取られる選択的摩耗を再現できていることがわかる。
【0094】
以上のように、摩耗試験装置1は、底面に供試体Sを固定するとともに液体Wを貯留する貯留槽2と、貯留槽2の内部に投入されて供試体Sの上部に位置する摩耗材5と、貯留槽2の内部に配置されて摩耗材5の上方に位置する回転板34とを備え、回転板34を貯留槽2の周方向に回転させることで液体Wとともに摩耗材5を攪拌する。このような摩耗試験装置1において、貯留槽2を構成する外筒体22の中心に外筒体22の中心軸Cに対して同軸となる内芯体23を設け、回転板34が外筒体22と内芯体23で構成された円形通路Pに沿って回転する。
【0095】
このような摩耗試験装置1によれば、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
詳述すると、貯留槽2にて回転する液体Wは、径外側位置よりも径内側位置のほうが流速が低くなるところ、外筒体22の中心に外筒体22の中心軸Cに対して同軸となる内芯体23を設けたため、摩耗材5が中心部分に滞留することを防止できる。また、回転板34が外筒体22と内芯体23で構成された円形通路Pに沿って回転するため、液体Wの流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材5が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材5に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0096】
また、摩耗試験装置1においては、回転板34を支持する支持軸33と、支持軸33を保持した状態で中心軸Cを中心に回転する回転腕32とを備えている。そして、回転腕32は、液体Wの液面Wsよりも高い位置で回転する。
【0097】
このような摩耗試験装置1によれば、回転腕32が液体Wの液面Wsよりも高い位置で回転するため、液体Wの流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材5が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材5に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0098】
また、摩耗試験装置1においては、支持軸33が回転板34の内周側端部に固定されて内芯体23に対して近接した位置を回転する。なお、内芯体23に対して近接した位置とは、少なくとも円形通路Pにおける幅方向中間位置よりも内側を意味する。
【0099】
このような摩耗試験装置1によれば、支持軸33が回転板34の内周側端部に固定されて内芯体23に対して近接した位置を回転するため、支持軸が液位が低くかつ流速の低い中心側領域を回転することとなり、液体Wの流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材5が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材5に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0100】
また、摩耗試験装置1においては、内芯体23が少なくとも回転板34が回転している状態において液体Wの液面Wsから上方に突出する。なお、回転板34が回転している状態とは、液体Wとともに摩耗材5を攪拌して試験を行っている状態を意味する。
【0101】
このような摩耗試験装置1によれば、内芯体23が少なくとも回転板34が回転しているときに液体Wの液面Wsから上方に突出するため、閉通路である円形通路Pが液体Wの液面まで構成されることとなり、液体Wの流れを乱すことなく攪拌することができる。そのため、摩耗材5が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材5に作用する遠心力とを釣り合わせることができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0102】
また、摩耗試験装置1においては、内芯体23の外周面から回転板34の内周側端縁までの距離D1が、外筒体22の内周面から回転板34の外周側端縁までの距離D2よりも短い。なお、内芯体23の外周面から回転板34の内周側端縁までの距離D1については、摩耗材5の形状に基づいてその最小値が定められる。
【0103】
このような摩耗試験装置1によれば、内芯体23の外周面から回転板34の内周側端縁までの距離D1が、外筒体22の内周面から回転板34の外周側端縁までの距離D2よりも短いため、内芯体23の近傍における流速の低下に起因した摩耗材5の滞留を防ぐことができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0104】
また、摩耗試験装置1においては、供試体Sの上面から回転板34の下方側端縁までの距離D3が、液体Wの液面Wsから回転板34の上方側端縁までの距離D4よりも短い。なお、供試体Sの上面から回転板34の下方側端縁までの距離D3については、摩耗材5の形状に基づいてその最小値が定められる。
【0105】
このような摩耗試験装置1によれば、供試体Sの上面から回転板34の下方側端縁までの距離D3が、液体Wの液面Wsから回転板34の上方側端縁までの距離D4よりも短いため、供試体Sの近傍における流速の低下に起因した摩耗材5の滞留を防ぐことができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0106】
また、摩耗試験装置1においては、摩耗材5が供試体Sよりも靭性が高い材質で形成された多面体形成物である。なお、多面体形成物とは、複数の面によって形成された立体形成物を意味する。角錐体や角柱体だけでなく、円錐体や円柱体も含むものとする。
【0107】
このような摩耗試験装置1によれば、摩耗材5が供試体Sよりも靭性が高い材質で形成された多面体形成物であるため、供試体Sの表面に衝撃力を繰り返し与えることができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0108】
また、摩耗試験装置1においては、摩耗材5が形状及び重量の少なくとも一方が異なる二種類以上(第一摩耗材51及び第二摩耗材52)が含まれる。なお、形状及び重量の少なくとも一方が異なるとは、形状が異なるもののほか、形状が同じであったとしても材質の差異によって重量が異なるものが該当する。もちろん形状と重量の両方が異なるものも該当する。
【0109】
このような摩耗試験装置1によれば、摩耗材5が形状及び重量の少なくとも一方が異なる二種類以上(第一摩耗材51及び第二摩耗材52)が含まれるため、供試体Sの表面に異なる大きさの衝撃力を繰り返し与えることができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0110】
また、摩耗試験装置1においては、外筒体22の内径を0.7~1.3mとし、摩耗材5の重量を50.0~130.0gとし、回転板34の速度を50.0~90.0rpmとして回転させる。なお、摩耗材5として二種類以上(第一摩耗材51及び第二摩耗材52)が含まれていたとしても、各摩耗材5(51,52)の重量は50.0~130.0gの範囲に収まる。
【0111】
このような摩耗試験装置1によれば、外筒体22の内径を0.7~1.3mとし、摩耗材5の重量を50.0~130.0gとし、回転板34の速度を50.0~90.0rpmとして回転させるため、摩耗材5が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材5に作用する遠心力とを確実に釣り合わせることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0112】
また、摩耗試験装置1においては、外筒体22の内径と内芯体23の外径との比を1.67~4.06とした。なお、外筒体22の内径は0.7~1.3mの範囲に収まり、内芯体23の外径は0.32m~0.42mの範囲に収まるものとして算出した。
【0113】
このような摩耗試験装置1によれば、外筒体22の内径と内芯体23の外径との比を1.67~4.06としたため、貯留槽2の径方向の流速分布に適当な勾配をつけることができ、ひいては摩耗材5が流速の低い中心部分に移動しようとする力と摩耗材5に作用する遠心力とを確実に釣り合わせることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0114】
また、摩耗試験装置1においては、円形通路Pにおける液体Wの断面積と回転板34の面積との比を2.81~9.82とした。なお、外筒体22の内径は0.7~1.3mの範囲に収まり、内芯体23の外径は0.32m~0.42mの範囲に収まるものとし、液面Wsの高さ及び回転板34の面積を所定の値として計算した。
【0115】
このような摩耗試験装置1によれば、円形通路Pにおける液体Wの断面積と回転板34の面積との比を2.81~9.82としたため、回転板34から離間した位置における流速の低下に起因した摩耗材5の滞留を防ぐことができ、ひいては供試体Sの表面を適宜に広くかつ深く摩耗させることができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができる。
【0116】
また、摩耗試験装置1においては、貯留槽2の底面に平板形状の供試体Sを周方向に並べた状態で固定する供試体固定部(周方向固定部4)を設けた。なお、周方向固定部4は、供試体Sごとに設けられてもよいし、複数の供試体Sごとに設けられてもよい。
【0117】
このような摩耗試験装置1によれば、貯留槽2の底面に平板形状の供試体Sを周方向に並べた状態で固定する周方向固定部4が設けられるため、様々な種類の供試体Sに対して同じ条件で同時に試験を行うことができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができるという効果に加え、供試体ごとの比較を容易に行うことが可能となる。
【0118】
また、摩耗試験装置1においては、供試体Sが粗骨材を含むコンクリート成形物である。なお、粗骨材は、モルタル部分を構成する細骨材よりも大きな砂利や砕石であり、その種類や密度等について限定するものではない。また、粗骨材を含まないモルタル形成物等についても試験可能である。
【0119】
このような摩耗試験装置1によれば、供試体Sが粗骨材を含むコンクリート成形物であるため、モルタル部分が削り取られて粗骨材が露出し、この粗骨材が抜け落ちるとさらにモルタル部分が削り取られるという摩耗態様を再現できる。すなわち、モルタル部分が選択的に削り取られる選択的摩耗を再現できる。
【0120】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明の摩耗試験装置は摩耗試験装置1に対応し、
以下同様に、
貯留槽は貯留槽2に対応し、
回転板駆動部は回転板駆動部3に対応し、
周方向固定部は周方向固定部4に対応し、
摩耗材は摩耗材5(第一摩耗材51及び第二摩耗材52)に対応し、
挿入固定部は挿入固定部6に対応し、
外筒体22に対応し、
内芯体23に対応し、
回転腕32に対応し、
支持軸33に対応し、
回転板34に対応し、
中心軸Cに対応し、
円形通路は円形通路Pに対応し、
供試体は供試体Sに対応し、
液体は液体Wに対応し、
液面は液面Wsに対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0121】
例えば摩耗試験装置1においては、貯留槽2の底面に円柱形状の供試体Sを挿入した状態で固定する供試体固定部(挿入固定部6)を設けてもよい。すなわち、図16に示すように、貯留槽2の底板21に円筒形状の挿入孔6hを設け、この挿入孔6hに円柱形状の供試体Sを挿入した状態で固定する挿入固定部6を設けてもよい。
【0122】
この場合、供試体Sの上面とその周囲の高さを合わせるために調節台61を備えるとしてもよい。調節台61は、供試体Sが挿通される挿通孔61hが設けられており、外周側固定具41と内周側固定具42によって挟まれた状態で固定される。また、調節台61は、少なくとも供試体Sよりも高い耐摩耗性を有することが好ましい。調節台61の摩耗の進行が早く、供試体Sの上面が突出した状態となれば、供試体Sの角部や側面に摩耗材5が集中して衝突することとなり、良好な試験が行えないからである。
【0123】
このように、摩耗試験装置1においては、貯留槽2の底面に円柱形状の供試体Sを挿入した状態で固定する供試体固定部(挿入固定部6)を設けてもよい。なお、挿入固定部6は、供試体Sごとに設けられてもよいし、複数の供試体Sごとに設けられてもよい。
【0124】
このような摩耗試験装置1によれば、貯留槽2の底面に円筒形状の供試体Sを挿入した状態で固定する挿入固定部6が設けられるため、例えばコアボーリング工法にて採取された供試体Sに対して同じ条件で同時に試験を行うことができる。したがって、所定の摩耗態様を短時間の試験によって再現することができるという効果に加え、供試体ごとの比較を容易に行うことが可能となる。
【0125】
最後に、摩耗試験装置1においては、貯留槽2に液体Wを貯留する構成としているが、例えば粘度調整された油材等を用いてもよい。また、摩耗材5が一般構造用圧延鋼材(SS材)にて形成されているが、例えばねずみ鋳鉄材(FC材)や球状黒鉛鋳鉄材(FCM材)、ステンレス鋼材(SUS材)等を用いてもよい。さらには石材等を用いてもよい。これらを摩耗材5とする場合においても、角柱体であることが好ましい。
【符号の説明】
【0126】
1…摩耗試験装置
2…貯留槽
3…回転板駆動部
4…周方向固定部
5…摩耗材
6…挿入固定部
6h…挿入孔
22…外筒体
23…内芯体
32…回転腕
33…支持軸
34…回転板
C…中心軸
P…円形通路
S…供試体
W…液体
Ws…液面
図1
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