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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175077
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】システム及び磁気マーカの検出方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221117BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081216
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF04
5H301GG07
5H301GG09
5H301GG10
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】移動する態様に関わらず、確実性高く磁気マーカを検出できる巡回ロボットを提供すること。
【解決手段】走路に配設された磁気マーカ50を検出するために複数の磁気センサを備えている巡回ロボット1であって、複数の磁気センサには、いずれかの方向に沿って直線的に延びるセンサ配列ライン上に配列された少なくとも2つ以上の磁気センサが含まれており、巡回ロボット1では、センサ配列ラインが2本形成されており、少なくともいずれか1本のセンサ配列ラインが、巡回ロボット1の移動に伴う磁気マーカ50の相対的な移動方向に対して交差し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走路に配設された磁気マーカを検出するために複数の磁気センサを備えている車両を含むシステムであって、
前記複数の磁気センサには、いずれかの方向に沿って直線的に延びるセンサ配列ライン上に配列された少なくとも2つ以上の磁気センサが含まれており、
前記車両では、前記センサ配列ラインが少なくとも1本形成されており、少なくともいずれか1本のセンサ配列ラインが、車両の移動に伴う前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して交差し得るように構成されているシステム。
【請求項2】
請求項1において、車幅方向に沿う前記磁気マーカの相対的な移動を伴う運動が可能であるシステム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記少なくともいずれか1本のセンサ配列ラインは、前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して45度以上の角度で交差し得るように構成されているシステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、前記センサ配列ラインとして、互いに交差する2本のセンサ配列ラインが形成されているシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、前記センサ配列ラインに沿って配列された磁気センサを保持する保持部と
該保持部を回転あるいは回動させる駆動部と、を備え、
該駆動部は、前記車両の運動に伴う前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して前記センサ配列ラインが交差するよう、前記保持部を回転あるいは回動させるように構成されているシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、前記磁気センサは、2次元的に配列されており、当該2次元的に配列された磁気センサによって、互いに交差する前記センサ配列ラインが形成されているシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、前記複数の磁気センサのうちの少なくともいずれか2つ以上の磁気センサを選択する選択部と、
当該選択部により選択された磁気センサによる磁気計測値を処理することで前記磁気マーカを検出する処理部と、を有し、
前記選択部は、前記車両の運動に伴う前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して交差する前記センサ配列ライン上に配列されている磁気センサを選択するように構成されているシステム。
【請求項8】
走路に配設された磁気マーカを検出するために複数の磁気センサを備えていると共に、車幅方向に沿う前記磁気マーカの相対的な移動を伴う運動が可能な車両において、運動中に前記磁気マーカを検出するための方法であって、
前記車両は、請求項1~7のいずれか1項に記載された車両であり、
いずれかの方向に沿って直線的に延びるセンサ配列ライン上に配列された磁気センサを含む複数の磁気センサのうち、少なくともいずれか2つ以上の磁気センサを選択する選択処理と、
当該選択処理により選択された磁気センサによる磁気計測値を処理して前記磁気マーカを検出する検出処理と、を含み、
前記選択処理では、前記車両の運動に伴う前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して交差する前記センサ配列ライン上に配列されている磁気センサが選択される磁気マーカの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に配設された磁気マーカを車両が検出するためのシステム及び磁気マーカの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、路面に配設された磁気マーカを検出する車両を含むシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムにおける車両は、車幅方向に沿って配列された複数の磁気センサを有している。このシステムでは、車両の進行方向に対して略直交する方向に配列された複数の磁気センサを用いて磁気マーカを検出しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-135619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のシステムは、例えば横移動が可能な車両を想定したとき、車幅方向に沿って配列された磁気センサによっては、磁気マーカを確実性高く検出できないおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、車両が移動する態様に関わらず、確実性高く磁気マーカを検出できるシステム及び磁気マーカの検出方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、走路に配設された磁気マーカを検出するために複数の磁気センサを備えている車両を含むシステムであって、
前記複数の磁気センサには、いずれかの方向に沿って直線的に延びるセンサ配列ライン上に配列された少なくとも2つ以上の磁気センサが含まれており、
前記車両では、前記センサ配列ラインが少なくとも1本形成されており、少なくともいずれか1本のセンサ配列ラインが、車両の移動に伴う前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して交差し得るように構成されているシステムにある。
【0007】
本発明の一態様は、走路に配設された磁気マーカを検出するために複数の磁気センサを備えていると共に、車幅方向に沿う前記磁気マーカの相対的な移動を伴う運動が可能な車両において、運動中に前記磁気マーカを検出するための方法であって、
前記車両は、上記の一態様をなす車両であり、
いずれかの方向に沿って直線的に延びるセンサ配列ライン上に配列された磁気センサを含む複数の磁気センサのうち、少なくともいずれか2つ以上の磁気センサを選択する選択処理と、
当該選択処理により選択された磁気センサによる磁気計測値を処理して前記磁気マーカを検出する検出処理と、を含み、
前記選択処理では、前記車両の運動に伴う前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して交差する前記センサ配列ライン上に配列されている磁気センサが選択される磁気マーカの検出方法にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、少なくとも2つ以上の磁気センサが配列されたセンサ配列ラインが、車両の移動に伴う前記磁気マーカの相対的な移動方向に対して交差し得る。車両の移動に伴う磁気マーカの相対的な移動方向に対して交差するセンサ配列ライン上に配列された磁気センサを利用すれば、磁気マーカを確実性高く検出できる。
【0009】
本発明によれば、車両が移動する態様に関わらず、走路に配設された磁気マーカを確実性高く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、巡回システムの説明図。
図2】実施例1における、磁気マーカの説明図。
図3】実施例1における、RFIDタグの正面図。
図4】実施例1における、巡回ロボットの斜視図。
図5】実施例1における、巡回ロボットの底面図。
図6】実施例1における、駆動輪ユニットの斜視図。
図7】実施例1における、巡回ロボットの電気的構成を示すブロック図。
図8】実施例1における、磁気マーカの真上を通過する際の磁気センサの磁気計測値の変化を例示する説明図。
図9】実施例1における、磁気マーカの真上を通過する際の移動方向の磁気勾配の変化を例示する説明図。
図10】実施例1における、センサアレイが磁気マーカの真上に位置したとき、長手方向の磁気勾配の分布カーブを示す説明図。
図11】実施例1における、巡回ロボットの移動制御の流れを示すフロー図。
図12】実施例1における、他の巡回ロボットその1の底面図。
図13】実施例1における、他の巡回ロボットその2の底面図。
図14】実施例1における、他の巡回ロボットその3の底面図。
図15】実施例2における、巡回ロボットの底面図。
図16】実施例2における、巡回ロボットに対するセンサ回転ユニットの組付構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、ホテルや病院などの施設5内を見回る巡回ロボット1を含む巡回システム5Sに関する例である。この巡回ロボット1は、走路の表面をなす床面53S(路面)に配設された磁気マーカ50を検出しながら自律的な移動が可能である。この内容について、図1図14を参照して説明する。
【0012】
巡回ロボット1は、図1のごとく、施設5内を自律的に移動可能な車両の一例であり、システムの一例である。巡回ロボット1は、例えば、日中は施設5内の図示しない駐車場所に待機し、夜間の巡回時刻になると、所定のルートに沿って施設5内を巡回する。ルートは、例えば制御用PC500が表示する地図(図示略)上で、任意に設定可能である。制御用PC500で設定されたルートや巡回時刻などの設定情報は、例えば、WiFi(登録商標)などの無線通信によって巡回ロボット1に送信される。
【0013】
なお、制御用PC500は、施設5内の管理スペースに設置される。これに代えて、インターネット等の公衆通信回線に接続可能な環境にある外部に、制御用PC500を設置することも良い。制御用PC500は、巡回ロボット1との間で情報を送受信できる環境にあれば、どこに設置されていても良い。
【0014】
巡回ロボット1は、制御用PC500から受信した巡回時刻になると、設定されたルートに沿って移動し、これにより、施設5内の見回りを実行する。なお、巡回ロボット1は、エレベータ59を利用して階を移動でき、これにより施設5の各階の見回りが可能である。巡回ロボット1は、見回り中に不審物や不審者を検知すると、制御用PC500に異常を通報する。以下、巡回システム5Sを構成する(1)制御用PC、(2)磁気マーカ、(3)巡回ロボット、をこの順番で説明する。
【0015】
(1)制御用PC
制御用PC500は、ディスプレイなどの表示装置、CPUが実装された電子基板やCPUがアクセス可能な記憶装置を内蔵するメインユニット、キーボードやマウスなどのユーザインターフェース、等を備える装置である。記憶装置には、施設5内の構造を表す地図のデータベースである地図DBが設けられている。
【0016】
図DBに格納された地図では、各磁気マーカ50の配設位置が特定されており、各配設位置には磁気マーカ50の識別情報であるマーカIDがひも付けられている。マーカIDを利用して地図DBを参照すれば、対応する磁気マーカ50の地図上の位置を特定可能である。また、地図上では、椅子や机やキャビネットなどの家具類や、扉や通路などの施設内の構造が記述されている。制御用PC500から巡回ロボット1に送信される設定情報には、ルートの情報に加えて、ルート上の各位置の周囲構造を表す情報が含まれている。周囲構造としては、家具類の配置や、扉や通路などの構造等が含まれる。
【0017】
(2)磁気マーカ
磁気マーカ50は、図1のごとく、周辺に磁気を作用する磁気発生源としてのマーカである。本例の巡回システム5Sでは、施設5内の巡回ロボット1が移動可能なエリアの床面53Sに、格子状をなすように磁気マーカ50が配置されている。磁気マーカ50の配置間隔は、縦横1mである。なお、磁気マーカ50の配置間隔については、適宜変更可能である。本例の構成では、施設5内の巡回ロボット1が移動可能なエリア全体が走路となっている。
【0018】
磁気マーカ50は、図2のごとく、直径100mm、厚さ2mmのシート状をなしている。磁気マーカ50は、床面53Sに貼付可能である。磁気マーカ50は、厚さ1mmの磁石シート50Sを2枚貼り合わせたシート体である。磁石シート50Sは、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトラバーマグネット(磁石)である。なお、磁気マーカ50の直径は、10mm~200mmとすると良い。
【0019】
本例の磁気マーカ50では、2枚の磁石シート50Sの間に、シート状のRFIDタグ(Radio Frequency Identification Tag、無線タグ)55(図3)が挟み込まれている。RFIDタグ55は、例えばPET(PolyEthylene Terephthalate)フィルムから切り出したタグシート550の表面にICチップ557が実装されたシート状の電子部品である。RFIDタグ55(図3)は、無線による外部給電により動作し、タグ情報を無線通信により出力する電子部品である。本例のRFIDタグ55は、磁気マーカ50の識別情報であるマーカIDを、タグ情報として送信する。
【0020】
タグシート550の表面には、ループコイル551及びアンテナ553の印刷パターンが設けられている。ループコイル551は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する受電コイルである。アンテナ553は、前述したタグ情報等を無線送信するための送信アンテナである。
【0021】
なお、上記のごとく、磁石シート50Sは、酸化鉄の磁粉を高分子材料中に分散させたシート状の磁石である。この磁石シート50Sは、導電性が低く無線給電時に渦電流等が生じ難いという電気的特性を有する。それ故、RFIDタグ55が受送信する電波に起因して磁石シート50Sにて渦電流が発生するおそれが少ない。2枚の磁石シート50Sに挟まれた状態のRFIDタグ55は、無線伝送された電力を効率良く受電でき、タグ情報を確実性高く送信できる。
【0022】
(3)巡回ロボット
巡回ロボット1は、自律移動が可能なロボット型の車両であり、システムの一例である。巡回ロボット1の形状は、前後55cm、幅48cm、高さ100cmのスタンド型の車両である。巡回ロボット1の前面の上部は、傾斜状に形成されている。巡回ロボット1の前面の傾斜面には、タッチ操作を入力可能なタッチパネル151が埋め込まれている。また、巡回ロボット1の上面には、回転灯155が立設されている。異常が検知されたときには、タッチパネル151に警告画面が表示されると共に、回転灯155が点灯する。
【0023】
巡回ロボット1は、エリアセンサである深度カメラ131を備えている。いわゆるステレオカメラである深度カメラ131は、巡回ロボット1の前面、後ろ面、左右の側面に設けられている。深度カメラ131は、障害物や人の検知や、対象物までの距離計測に利用可能である。
【0024】
深度カメラ131は、動体検出にも活用される。カメラによる撮像画像の時間的な差分である差分画像に基づけば、動体を効率良く検出できる。また、巡回ロボット1の前後、左右の角部には、エリアセンサである超音波センサ133が取り付けられている。なお、エリアセンサとしては、光を利用するLidar(Laser Imaging Detection and Ranging)や電波を利用するミリ波レーダなどの測距センサを利用することも良く、エリアセンサの配置や組合せ等は適宜、変更可能である。
【0025】
巡回ロボット1は、図5の底面図のごとく、転動方向を変更可能な駆動輪16を、前後の2か所に有していると共に、略矩形状の底面の四隅に自在車輪17を備えている。また、底面の略中央には、RFIDタグ55と通信するためのタグリーダ121が配設されている。
【0026】
タグリーダ121は、RFIDタグ55が無線出力する情報を読み取る情報読取部として機能する。タグリーダ121は、RFIDタグ55の動作に必要な電力を無線で送信(電力送信)し、RFIDタグ55が送信するタグ情報を受信する。上記のようにタグ情報には、磁気マーカ50の識別情報であるマーカIDが含まれている。
【0027】
前後の駆動輪16(図6)は、駆動輪ユニット16Uによって回転可能に支持されている。駆動輪ユニット16Uは、円柱状をなし、その中心軸に沿って回転軸16Sが延設されている。駆動輪ユニット16Uは、巡回ロボット1の本体側(図5)に、回転軸16Sを介して回転可能に支持されている。
【0028】
前後の駆動輪16は、それぞれ、駆動モータ160及び回転モータ162(図7)によって、個別に制御される。なお、図6では、駆動モータ160及び回転モータ162の図示を省略している。駆動モータ160は、床面53S上で駆動輪16を転動させるためのモータである。回転モータ162は、回転軸16Sを中心として駆動輪ユニット16Uを回転させるためのモータである。駆動輪ユニット16Uは、回転モータ162により360度に亘って回転可能である。駆動輪ユニット16Uの回転に応じて、駆動輪16の転動方向が変化する。
【0029】
巡回ロボット1の底面(図5)には、センサアレイ11A・Bが設けられている。センサアレイ11A・Bは、それぞれ、直線的に延びるセンサ配列ライン11L上に沿って複数の磁気センサが配列された棒状のユニットである。センサアレイ11Aは、車幅方向に沿うように取り付けられ、センサアレイ11Bは、前後方向に沿うように取り付けられている。センサアレイ11Aとセンサアレイ11Bとは、略L字状をなすように取り付けられている。センサアレイ11A・Bは、同じ仕様であり、15個の磁気センサが3cm間隔で配列されている。なお、センサアレイ11Aとセンサアレイ11Bとで、略L字状の角部に位置する磁気センサを共用することも良い。
【0030】
巡回ロボット1は、図7に示す電気的な構成を備えている。巡回ロボット1は、前出の構成のほか、IMU12や、制御回路10や、図示しないバッテリ等を内蔵している。IMU12は、巡回ロボット1の角速度や加速度を精度高く計測できるよう、車体の中心の低い位置に配置されている。
【0031】
IMU12は、慣性航法により巡回ロボット1の位置及び方位(向き)を推定するための慣性航法ユニットである。IMU12は、巡回ロボット1の移動に伴う変動量を推定する変動量推定部としての機能、推定された変動量を利用して巡回ロボット1の位置および方位を推定する測位部としての機能、等を備えている。IMU12は、前後方向及び幅方向の加速度を計測する2軸加速度センサ、角速度(ヨーレート)を計測するジャイロセンサ、等を備えて構成されている。
【0032】
IMU12は、移動を開始した後のヨーレートを積分することで、巡回ロボット1の方位の(累積)変動量を推定する。そして、IMU12は、推定した方位の変動量を、巡回ロボット1の移動開始時点の方位(初期方位)に足し合わせることで、巡回ロボット1の時々刻々の絶対的な方位を推定する。この巡回ロボット1の方位は、巡回ロボット1の向き、すなわち前後方向の絶対方位である。
【0033】
IMU12は、移動中の時間を十分に短い時間的な区間に分割し、区間毎の2次元的な変位量(位置的な変動量)を推定する。この区間は、例えば、後で参照する図11の移動制御による繰り返し制御の1回のループの処理時間に相当する十分に短い時間的な区間である。IMU12は、各区間について、前後方向及び幅方向の加速度をそれぞれ二重積分することで2次元的な変位量を求める。この2次元的な変位量は、巡回ロボット1の前後方向を基準とした変位量である。
【0034】
IMU12は、移動開始後の各区間について、巡回ロボット1の絶対方位(例えば、平均値や中央値など。)と、巡回ロボット1の前後方向を基準とした2次元的な変位量と、を特定する。IMU12は、移動開始後の各区間の変位量を、時点の古いものから順番に累積することで、水平方向の2次元平面における巡回ロボット1の移動後の位置、すなわち移動後の相対位置を推定する。そして、IMU12は、移動開始時点の巡回ロボット1の位置(初期位置)を基準として、巡回ロボット1の移動後の相対位置の分だけずらした位置を、移動後の巡回ロボット1の現在位置として推定する。
【0035】
さらに、IMU12は、前後方向及び幅方向の加速度を積分することで、前後方向の速度成分、幅方向の速度成分を求める。前後方向の速度成分及び幅方向の速度成分によれば、巡回ロボット1の移動方向を特定できる。なお、この移動方向は、IMU12が上記のように推定する巡回ロボット1の向き(前後方向)を基準とした相対的な移動方向である。
【0036】
制御回路10は、巡回ロボット1の動作を制御する回路である。制御回路10は、各種の演算を実行するCPU、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を含めて構成されている。制御回路10は、ROM等に記憶されたプログラムをCPUに実行させることにより、各種の機能を実現する。制御回路10には、タッチパネル151、センサアレイ11A・B、IMU12、タグリーダ121、深度カメラ131、超音波センサ133、駆動モータ160、回転モータ162など、前出の電気的な各構成が接続されている。なお、駆動モータ160及び回転モータ162は、前後の駆動輪16に対して、それぞれ、設けられている。
【0037】
制御回路10のRAMの記憶領域には、ワークエリアが設けられる。このワークエリアには、制御用PC500から巡回ロボット1に送信される設定情報が格納される。上記の通り、この設定情報には、ルートの情報に加えて、ルート上の各位置の周囲構造(家具類の配置や、扉や通路などの構造。)を表す情報が含まれている。
【0038】
なお、巡回ロボット1の移動に応じて随時、ルート上の各位置の周囲構造を制御用PC500から取得(受信)することも良い。あるいは、巡回ロボット1が周囲の構造に関して取得した情報を随時、制御用PC500に送信することも良い。この場合には、制御用PC500側で異常を検知し、検知結果を巡回ロボット1に送信するように構成すると良い。
【0039】
制御回路10が実現する機能としては、異常を検知する異常検知部、磁気マーカ50の検出に利用する磁気センサを選択する選択部、巡回ロボット1を移動させる移動制御部、制御用PC500との間で通信を実行する通信回路部、等としての機能がある。
【0040】
異常検知部は、周囲の異常を検知するための動体検知処理、周囲の構造の異変を検知するための構造比較処理などを実行する。異常検知部により異常が検知された場合、異常通報部としての機能を備える通信回路部により、制御用PC500に通報される。
【0041】
動体検知処理は、例えば、深度カメラ131による時系列の画像のうち、時間的に隣り合う画像の差分画像に基づいて動体を検知する処理である。周囲に動きがない場合、この差分画像の各画素のデータはほぼゼロとなる。本例の動体検知処理は、動きを生じた場合、この差分画像中の動き領域を構成する各画素のデータが正側あるいは負側に変化することを利用する処理である。構造比較処理は、いわゆるステレオ視による距離計測が可能な深度カメラ131が取得する周囲構造と、上記のごとくワークエリアに記憶している設定情報に係る周囲構造と、を比較する処理である。構造比較処理によって構造的な違いが生じた場合、異常が検知される。
【0042】
選択部は、センサアレイ11A・Bのうち、磁気マーカ50の検出に利用するセンサアレイ(磁気センサ)を選択する。選択部は、車幅方向に沿うセンサアレイ11Aを利用するか、前後方向に沿うセンサアレイ11Bを利用するか、を択一的に選択する(選択処理)。
【0043】
移動制御部は、設定されたルート(適宜、設定ルートという。)に沿って巡回ロボット1を移動させるための制御を実行する。移動制御部は、前後の駆動輪16の転動方向及び回転を個別に制御することで、巡回ロボット1を自律的に移動させる。移動制御部は、設定ルートに対する巡回ロボット1の位置的な偏差等を抑制するように前後の駆動輪16を制御し、これにより、設定ルートに沿うように巡回ロボット1を自走させる。また、移動制御部は、巡回ロボット1が移動する際、壁にぶつかったり障害物に衝突したりしないよう、深度カメラ131や超音波センサ133等のエリアセンサによる検知結果等を随時、参照する。
【0044】
移動制御部としての制御回路10は、上記のごとく、前後の駆動輪16を個別に制御して巡回ロボット1を移動させる。巡回ロボット1は、前後の駆動輪16の転動方向や回転方向の設定に応じて、横移動、その場回転などを含む多彩な動きが可能である。例えば、前後の駆動輪16の転動方向が前後方向に一致している場合、前後の駆動輪16が同様に回転することで巡回ロボット1が前後方向に進退可能である。例えば、前後の駆動輪16の転動方向が車幅方向に一致するとき、前後の駆動輪16が同様に回転することで巡回ロボット1が車幅方向に当たる横方向に移動できる。一方、前後の駆動輪16の転動方向が車幅方向に一致するとき、前後の駆動輪が逆回転すれば、巡回ロボット1はその場で回転できる。また例えば、前後の駆動輪16が前後方向に対して45度の方向の場合、巡回ロボット1は、斜め方向に移動できる。さらに例えば、前後の駆動輪16の転動方向の違いを45度未満あるいは90度未満に設定すれば、円弧に沿うような移動を実現できる。例えば、前後の駆動輪16の転動方向の違いを90度に設定し、一方の駆動輪16のみを回転させれば、他方の駆動輪16を中心として巡回ロボット1が回動するような動きを実現できる。
【0045】
次に、センサアレイ11A・Bの構成、及び機能について説明する。センサアレイ11A・B(図5及び図7)は、上記のごとく、直線的に延びるセンサ配列ライン11L(図5)に沿って配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数。)を含むセンシングユニットである。
【0046】
磁気センサCnとしては、例えば、公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出する高感度のMIセンサなどが好適である。MI効果は、例えばアモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという電磁気的な効果である。磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±50ミリテスラであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.2マイクロテスラという高感度のセンサである。
【0047】
センサアレイ11A・Bでは、磁気の検出方向が一致するように各磁気センサが組み込まれている。さらに、センサアレイ11A・Bの各磁気センサCnが鉛直方向の磁気成分を検出できるよう、巡回ロボット1に対してセンサアレイ11A・Bが取り付けられている。なお、床面53Sを基準としたセンサアレイ11A・B(磁気センサ)の取付高さは50mmである。
【0048】
センサアレイ11A・B(図7)は、15個の磁気センサCn(nは1~15の整数。)の磁気計測値を処理する検出処理回路112を備えている。検出処理回路112は、磁気センサCnによる磁気計測値を処理することで磁気マーカ50を検出する処理部の一例をなす回路である。
【0049】
検出処理回路112は、磁気計測値の時間的な差分を各磁気センサCn毎に演算すると共に、センサ敷設ライン11Lに沿って配列された磁気センサCnのうちの隣り合う磁気センサCnの磁気計測値の位置的な差分を演算する。各磁気センサCn毎の磁気計測値の時間的な差分は、各磁気センサの移動方向の磁気勾配を示す指標である。隣り合う磁気センサCnの磁気計測値の位置的な差分は、センサアレイ11の長手方向の磁気勾配を示す指標である。センサアレイ11Aの長手方向は巡回ロボット1の車幅方向であり、センサアレイ11Bの長手方向は前後方向である。なお、センサアレイ11の長手方向は、センサ配列ライン11Lに沿う方向である。
【0050】
巡回ロボット1の移動に応じていずれかの磁気センサが磁気マーカ50を通過する際、その磁気センサによる鉛直方向の磁気計測値の変化を表す分布は、図8のごとく、磁気マーカ50の直上でピークとなる正規分布のようになる。同図中の横軸の移動方向は、磁気マーカ50の径方向に相当している。同図中の縦軸は、磁気センサに作用する鉛直方向の磁気成分の大きさ(磁気センサによる磁気計測値の大きさ)を示している。
【0051】
また、図8に例示する分布の場合、磁気センサの磁気計測値の時間的な差分である移動方向の磁気勾配は、図9のごとく、磁気マーカ50の手前側に磁気センサが位置するか、磁気マーカ50を通り過ぎた位置に磁気センサが位置するか、に応じて正負が反転する正弦波形のようになる。磁気センサが磁気マーカ50の直上を通過するときの移動方向の磁気勾配は、磁気マーカ50の直上の位置でゼロを交差するように変化する。
【0052】
検出処理回路112(図7)は、移動方向の磁気勾配(図9)の正負の反転を検出することで磁気マーカ50を検出する(検出処理)。磁気センサの移動方向において、この移動方向の磁気勾配の正負が反転する位置が、磁気マーカ50の直上に当たる位置である。
【0053】
磁気マーカ50の直上にいずれかの磁気センサが位置するとき、その磁気センサが属するセンサアレイ11の長手方向の磁気勾配は、図10のごとく、磁気マーカ50に対してどちら側かに応じて正負が反転する。検出処理回路112は、例えば、センサアレイ11の長手方向の磁気勾配の正負が反転するゼロクロスZcを検出することで、この長手方向における磁気マーカ50の位置を特定する。検出処理回路112は、センサアレイ11の長手方向における磁気マーカ50の位置を特定することで、この長手方向における磁気マーカ50の位置を計測する。検出処理回路112は、センサアレイ11において中央に位置する磁気センサC8の位置につき、磁気マーカ50に対する偏差をずれ量として計測する。
【0054】
ここで、巡回ロボット1の底面(図5参照。)に略L字状をなすようにセンサアレイ11A・Bを配設する理由を説明する。例えば、巡回ロボット1が前後方向に移動する場合、移動方向に直交する車幅方向にセンサ配列ライン11L(図5参照。)が沿っているセンサアレイ11Aの方が、移動方向に直交して幅広の検出範囲を有し、磁気マーカ50を検出するのに適している。また、センサアレイ11Aの各磁気センサCnによって計測される上記のずれ量が、磁気マーカ50に対する巡回ロボット1の横ずれ量(移動方向に直交する方向のずれ量。)となる。一方、センサ配列ライン11Lが前後方向に沿うセンサアレイ11Bの各磁気センサCnの軌跡は、前後方向に沿う1本の軌跡となってしまうため、磁気マーカ50の検出には不適である。
【0055】
一方、巡回ロボット1が車幅方向に移動する場合(横移動の場合)、移動方向に直交する前後方向にセンサ配列ライン11Lが沿っているセンサアレイ11Bの方が、移動方向に直交して幅広の検出範囲を有し、磁気マーカ50を検出するのに適している。また、センサアレイ11Bの各磁気センサCnによって計測される上記のずれ量が、磁気マーカ50に対する巡回ロボット1の横ずれ量となる。
【0056】
次に、以上のような構成の巡回ロボット1の移動制御の内容について、図11のフロー図を参照して説明する。ここでは、制御回路10の動作を中心として移動制御の流れを説明する。
【0057】
制御回路10は、まず、IMU12が求める巡回ロボット1の移動方向を取得する(S101)。なお、上記のごとく、この移動方向は、巡回ロボット1の向き(前後方向における前側の方位)を基準とした相対的な方位である。この移動方向を、適宜、相対的な移動方向という。
【0058】
制御回路10は、上記の巡回ロボット1の相対的な移動方向に応じて、磁気マーカ50の検出に利用する磁気センサ(センサアレイ11)を選択する(S102、選択処理)。巡回ロボット1の相対的な移動方向が、巡回ロボット1の前後方向に略一致するとき、制御回路10は、車幅方向のセンサアレイ11Aを構成する各磁気センサを選択する。一方、巡回ロボット1の相対的な移動方向が車幅方向に略一致する横移動のとき、制御回路10は、前後方向のセンサアレイ11Bを構成する各磁気センサを選択する。また、相対的な移動方向が前後方向に対して0度以上45度以下の角度をなすとき、制御回路10は、センサアレイ11Aを構成する各磁気センサを選択する。一方、この角度が45度より大きく90度以下であるとき、制御回路10は、センサアレイ11Bを構成する各磁気センサを選択する。
【0059】
ステップS102で選択したセンサアレイ11(各磁気センサ)によって磁気マーカ50が検出されると(S103:YES)、制御回路10は、その磁気マーカ50に対して計測された横ずれ量(ずれ量)を検出処理回路112から取り込む(S104)。また、制御回路10は、磁気マーカ50に付設されたRFIDタグ55からタグ情報を受信するようタグリーダ121を制御し、タグ情報に含まれるマーカIDを取得する(S105)。
【0060】
制御回路10は、マーカIDに対応する磁気マーカ50の配設位置を、制御用PC500に照会する。照会を受けた制御用PC500は、巡回ロボット1から受信したマーカIDを利用して地図DBを参照し、対応する磁気マーカ50の配設位置を読み出し、巡回ロボット1に返信する。このようにして、制御回路10は、検出された磁気マーカ50の配設位置を特定する(S106)。
【0061】
制御回路10は、検出された磁気マーカ50の配設位置を基準として、上記のステップS104で取得した横ずれ量の分だけ、上記のステップS102で選択されたセンサアレイ11の長手方向(センサ配列ライン11Lの方向)にずらした位置を、そのセンサアレイ11の中央(磁気センサC8)の位置として特定する。制御回路10は、このように特定されたセンサアレイ11の中央の位置を基準として、巡回ロボット1の位置である現在位置を特定する(S107)。そして、制御回路10は、設定ルートに対する現在位置の偏差を抑制するよう、前後の駆動モータ16を制御する(S108)。
【0062】
なお、ステップS107にて巡回ロボット1の現在位置を特定するに当たっては、磁気マーカ50の検出に利用したセンサアレイ11の磁気センサC8と、巡回ロボット1の中心位置と、の位置的な偏差を利用すると良い。磁気センサC8の位置に基づき、この偏差の分だけずらした位置を巡回ロボット1の現在位置とすると良い。
【0063】
一方、磁気マーカ50が検出されない場合(S103:NO)、制御回路10は、IMU12が推定する2次元的な変位量を取得する(S114)。この2次元的な変位量は、磁気マーカ50の検出に応じて特定された直近の巡回ロボット1の位置を通過した後の移動後の変位量である。制御回路10は、この直近の巡回ロボット1の位置を基準として、ステップS114で取得した2次元的な変位量の分だけずらした位置を、新たな現在位置として特定する(S115)。そして、制御回路10は、磁気マーカ50が検出された場合と同様、設定ルートに対する現在位置の偏差を抑制するよう、前後の駆動モータ16を制御する(S108)。
【0064】
以上のように構成された本例の巡回ロボット1は、前後の駆動輪16の制御により、横移動やその場での回転などの多彩な動きが可能である。この巡回ロボット1は、前後方向を基準とした相対的な移動方向に応じて、磁気マーカ50の検出に適用するセンサアレイ11を選択して切り替える。具体的には、巡回ロボット1は、移動方向に対して直交する方向に幅広のセンサアレイ11(各磁気センサ)を選択し、磁気マーカ50の検出に利用する。このように巡回ロボット1の移動の態様に応じてセンサアレイ11を選択すれば、巡回ロボット1が移動する態様に関わらず、確実性高く磁気マーカ50を検出できる。
【0065】
なお、本例の構成に代えて、例えば、図12に例示するように、略T字状をなすように2つのセンサアレイ11を配設することも良い。あるいは、図13に例示するように、略X字状に交差するよう、2つのセンサアレイ11を配設することも良い。さらには、図14のように15×15の2次元アレイ11Rをなすように磁気センサ(同図中の○印)を配列することも良い。この場合には、2次元アレイ状に配列された磁気センサのうち、巡回ロボット1の移動方向に対して直交する方向(センサ配列ラインの方向)に配列された磁気センサを選択し、磁気マーカ50の検出に利用できる。また、四角形の各辺をなすように4本のセンサ配列ラインを設けることも良い。この場合には、矩形環状をなすように磁気センサが配列される。
【0066】
なお、本例の構成では、異常を検知する異常検知部、磁気マーカ50の検出に利用する磁気センサを選択する選択部、巡回ロボット1を移動させる移動制御部、などのシステムの構成機能を、巡回ロボット1が全て備えている。これらの機能を制御用PC500に具備させると共に、この機能を実現するために必要となる情報を巡回ロボット1が制御用PC500にアップロードするシステムであっても良い。
【0067】
なお、本例では、施設内を見まわる巡回ロボット1を車両の一例として示したが、車両としては、工場などで用いられる無人搬送車であっても良く、施設内を巡回するバスなどの自律走行車両であっても良く、一般の車両であっても良い。
【0068】
(実施例2)
本例は、実施例1の巡回ロボットに基づいて、回転可能なセンサアレイ11を採用した例である。この内容について、図15及び図16を参照して説明する。
図15は、本例の巡回ロボット1の底面を示している。本例の巡回ロボット1の底面の中央には、センサアレイ11を回転可能に支持するセンサ回転ユニット18が取り付けられている。センサアレイ11は、センサ回転ユニット18により支持された状態で、車幅方向に沿う角度から前後方向に沿う角度までの90度の範囲で回転可能である。
【0069】
センサ回転ユニット18は、図16のごとく、巡回ロボット1側に固定される円盤状の基台180と、センサアレイ11を径方向に保持する回転台181と、を含んで構成されている。センサアレイ11は、センサ配列ライン11Lに沿って配列された複数の磁気センサを保持する保持部の一例をなしている。センサ回転ユニット18は、保持部の一例をなすセンサアレイ11を回転させる駆動部の一例をなしている。
【0070】
基台180には、中心軸に対して回転軸180Sが一致するよう、図示しない回転モータが収容されている。回転台181は、基台180よりも僅かに小径の円盤状をなし、回転軸181Sを打ち込むための軸孔180Hが中心軸に沿って穿設されている。回転台181は、軸孔180Hに打ち込まれた回転軸181Sを介して基台180により回転可能に支持されている。なお、センサアレイ11は、実施例1と同様、3cm間隔で15個の磁気センサが、直線的に延びる配設ライン11Lに沿って配列された棒状のユニットである。
【0071】
巡回ロボット1の底面には、図16のごとく、センサ回転ユニット18を収容するための収容孔19が穿設されている。この収容孔19は、奥側の小径部190と手前側の大径部191との組合せによる断面円形状の二段直径の孔である。小径部190は、センサ回転ユニット18の基台180及び回転台181を収容するための孔である。大径部191は、巡回ロボット1の底面に対して面一あるいは若干奥まった状態で、センサアレイ11を回転可能に収容するための孔である。センサ回転ユニット18は、小径部190に基台180が固定された状態で、巡回ロボット1側に吊り下げられるように取り付けられている。
【0072】
本例の巡回ロボット1による移動制御では、実施例1で参照した図11中のステップS102に代えて、センサアレイ11を回転させる処理が実行される。この処理では、巡回ロボット1の相対的な移動方向(前後方向に対する移動方向)に対して、センサ配列ライン11Lが直交するようにセンサアレイ11が回転される。
【0073】
なお、センサアレイ11の回転範囲を180度の範囲としても良い。この場合には、巡回ロボット1が前進する場合と、逆向きに前進する場合とで、センサアレイ1の向きを反転できる。センサアレイ11を反転すれば、例えば、移動方向を向いたときの左側に磁気センサC1が位置し、右側に磁気センサC15が位置するようになる。それ故、この場合には、例えば磁気マーカに対するずれ量を求める際、巡回ロボット1の前進時と後退時とで左右の入れ替わりを考慮する必要がなくなり、演算処理を簡素化できる。なお、センサアレイ11の端部に軸を設け、車のワイパーのように軸の周りを回動するように構成しても良い。中心と端部との間に軸を設け、軸の周りにセンサアレイ11を回転あるいは回動させることも良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0074】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0075】
1 巡回ロボット(車両、システム)
10 制御回路(選択部)
11、11A、11B センサアレイ(保持部)
Cn 磁気センサ
11L センサ配列ライン
112 検出処理回路(処理部)
12 IMU
121 タグリーダ
131 深度カメラ
133 超音波センサ
16 駆動輪
16U 駆動輪ユニット
18 センサ回転ユニット(駆動部)
5 施設
5S 巡回システム
50 磁気マーカ
500 制御用PC
53S 床面
55 RFIDタグ(無線タグ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16