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特開2022-175286付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物及び電子写真式画像形成部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175286
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物及び電子写真式画像形成部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20221117BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20221117BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221117BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20221117BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20221117BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20221117BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20221117BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20221117BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/04
C08K5/541
C08L83/06
C08K3/08
H01B1/24 Z
G03G15/08 235
G03G15/00 551
G03G15/00 552
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081552
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】南川 知哉
(72)【発明者】
【氏名】飯野 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】平林 佐太央
【テーマコード(参考)】
2H077
2H171
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
2H077AD02
2H077AD06
2H077AD07
2H077FA22
2H171FA13
2H171FA24
2H171FA26
2H171FA30
2H171TA05
2H171TA12
2H171TA15
2H171UA02
2H171UA03
2H171UA04
2H171UA05
2H171UA06
2H171UA07
2H171UA12
2H171UA20
2H171UA22
2H171XA02
2H171XA03
2H171XA15
4J002CP042
4J002CP053
4J002CP141
4J002DA037
4J002DA116
4J002DA118
4J002DJ010
4J002EC030
4J002EX039
4J002FD116
4J002FD117
4J002FD142
4J002FD148
4J002FD200
4J002GQ02
5G301DA18
5G301DA48
5G301DD10
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】熱伝導性粉末と導電性付与のためのカーボン材を配合した導電性高熱伝導シリコーンゴム組成物において、保存安定性を向上させた、特に経時の硬度低下を抑えたシリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上含有する液状のオルガノポリシロキサン、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)白金族金属系触媒、(D)カーボン材、(E)平均一次粒子径が30μm以下であり、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性粉末、及び(F)1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサンを含むものである付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上含有する液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(B)成分に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の数が、前記(A)成分に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対して0.5~10個となる量、
(C)付加反応触媒としての白金族金属系触媒:前記(A)成分の合計質量に対し白金族金属換算で0.5~1,000ppmとなる量、
(D)カーボン材:1~50質量部、
(E)平均一次粒子径が30μm以下であり、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性粉末:10~400質量部、及び
(F)1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサン:0.05~30質量部となる量、
を含むものであることを特徴とする付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記(E)成分が、金属珪素粉末であることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記(F)成分が、下記一般式(1)
SiX4-d (1)
(式中、Rは炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基、dは1~3の整数、Xは炭素数1~4のアルコキシ基である。)
で示され、1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノシランであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)中、前記Xがメトキシ基又はエトキシ基であり、前記dが1又は2であることを特徴とする請求項3に記載の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
前記(F)成分が、下記平均組成式(2)
SiO{4-(e+f)}/2 (2)
(式中、Rは炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基、Xは炭素数1~4のアルコキシ基であり、e、fは、e=1.0~2.8、f=0.01~0.5、かつe+f=1.5~3を満足する正数である。)
で示され、1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
前記平均組成式(2)中、前記Xがメトキシ基又はエトキシ基であり、前記fが0.02~0.3であることを特徴とする請求項5に記載の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
前記平均組成式(2)中、前記Rがメチル基又はフェニル基であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の硬化物からなる弾性層を有するものであることを特徴とする電子写真式画像形成部材。
【請求項9】
前記電子写真式画像形成部材が、現像ロール及び現像ベルトから選ばれる部材であることを特徴とする請求項8に記載の電子写真式画像形成部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物及び電子写真式画像形成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気絶縁性を示すゴム状物質に導電性材料を配合した導電性ゴムが種々知られており、例えば、導電性材料としてカーボンブラック等を配合した導電性ゴムが広い分野で応用されている。中でも、シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、耐候性に優れ、電気絶縁性ゴムとして多く利用されている。一方、他のゴム状物質と同様に導電性材料を添加することで、導電性ゴムとしても実用化されている。
【0003】
この場合、導電性シリコーンゴムに添加する導電性材料としては、カーボンブラックやグラファイト、銀,ニッケル,銅等の各種金属粉、各種非導電性粉体や短繊維表面を銀等の金属で処理したもの、炭素繊維、金属繊維などを混合したもの等が挙げられる。これらは、ゴムが持つ特異な特性を損なうことなく、その導電性材料の種類や充填量によりシリコーンゴムの体積抵抗率を低下させ得ることから、頻繁に使用されている。特に、付加硬化タイプの液状シリコーンゴムは、カーボンブラックなどの導電性付与材を配合しても低粘度で成形性に優れ、短時間での硬化が可能であることから電子写真式画像形成部材として広く使用されている。
【0004】
また、シリコーンゴムはその耐熱性を生かしてコンピューターの放熱部品、複写機やレーザービームプリンターの定着装置、詳しくはヒーターロール、加圧ロールなどの定着ロールの被覆材として用いられてきた。特に、ヒーターロール用のゴムには、印刷時間の高速化、省エネルギー化が進み、それに伴って消費電力低減や、機械立ち上げ時の待ち時間を短くするため、高熱伝導性が要求される。しかしながら、シリコーンゴム自体の熱伝導性は高くないため、高い熱伝導性を有するフィラーを添加する方法が一般的に行われている。上記熱伝導性フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0005】
また、加熱部材の表層と用紙は接触し、その後に剥離するため、剥離速度が速いほど加熱部材の表層に大きな静電気が発生してしまう。このような静電気によって、用紙や用紙上に静電付着しているトナーが外力を受け、画像乱れを発生するという問題がある。
【0006】
一方で画像形成装置は、近年の画像形成の精密化・高速化に伴ってより精細な印字特性が求められている。複写機や電子写真式プリンターには、トナーと呼ばれる着色粒子が使用されている。これらのトナーは、印刷を高速化するために素早く溶ける必要があり、また装置自体の省エネルギーの観点からも、トナー設計融点が低温化する傾向にある。
【0007】
現像部材に求められる印刷の高速化対応として、従来はゴムの低硬度化、表面平滑性の向上が必要であった。しかし、近年トナーの低融点化に伴い、現像部材に発生する摩擦熱がトナーに及ぼす影響が大きくなっており、現像ロール表面の低温管理が重要となってきている。
【0008】
従って、画像形成装置に使用されるシリコーンゴムには高放熱性、高熱伝導性及び導電性が要求される。なお、本明細書において高熱伝導性とはシリコーンオイルの0.16W/m・Kより熱伝導率が高いことを指す。
【0009】
このような問題に対して、金属珪素粉末を用いて良好な熱伝導性を示し、なおかつ圧縮永久歪を飛躍的に向上させる方法がある(特許文献1)。
【0010】
また、金属珪素粉末を配合した熱伝導性シリコーンゴム材料に、カーボンブラックと酸化鉄(ベンガラ)を添加する方法も知られている(特許文献2)。金属珪素配合材料の外観不良(色むら)を、カーボンブラックとベンガラを混合することで解消できるとしている。しかしながら、これらの方法では、熱伝導性などの問題は解決するものの、組成物の経時変化によって生ずる硬化物の硬さ低下という問題が残されていた。
【0011】
また、現像ゴム部材用熱伝導性シリコーンゴム材料として、粒子径の小さな熱伝導粉末と、導電性付与のためのカーボンブラックを添加する方法もある(特許文献3)。そこには、熱安定性や配合性の向上を目的としてシラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等で熱伝導粉末を表面処理することが開示されている。
【0012】
また、高熱伝導性シリコーンゴム組成物においては、熱伝導性充填剤を安定して多量に添加するために、表面処理剤としてケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンを使用することが良く知られている(特許文献4~8)。表面処理剤を用いることで、粘度上昇や可塑度上昇が抑えられるなどの取り扱い性及び成型性に影響する流動性についての記述がある。
【0013】
金属珪素粉末に対して熱処理、湿式処理によって欠陥の少ない自然酸化膜を形成した後に、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等で更に表面処理するという記述もある(特許文献9)。
【0014】
これらの方法であっても、組成物の経時変化の問題は解決しておらず、組成物の保存安定性に優れ、導電性・高熱伝導性を有するシリコーンゴム組成物の開発が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007-171946号公報
【特許文献2】特開2009-263405号公報
【特許文献3】国際公開第2014/203669号
【特許文献4】特開2000-256558号公報
【特許文献5】特開2001-139815号公報
【特許文献6】特開2003-213133号公報
【特許文献7】国際公開第2005/030874号
【特許文献8】特開2006-052254号公報
【特許文献9】特開2013-216576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、熱伝導性粉末と導電性付与のためのカーボン材を配合した導電性高熱伝導シリコーンゴム組成物において、保存安定性を向上させた、特に経時の硬度低下を抑えたシリコーンゴム組成物及び該組成物の硬化物を弾性層として有する電子写真式画像形成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上含有する液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(B)成分に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の数が、前記(A)成分に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対して0.5~10個となる量、
(C)付加反応触媒としての白金族金属系触媒:前記(A)成分の合計質量に対し白金族金属換算で0.5~1,000ppmとなる量、
(D)カーボン材:1~50質量部、
(E)平均一次粒子径が30μm以下であり、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性粉末:10~400質量部、及び
(F)1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサン:0.05~30質量部となる量、
を含むものである付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を提供する。
【0018】
このようなものであると、保存安定性が良好で、経時での硬度低下を抑えた硬化物を得ることができる。
【0019】
また、前記(E)成分が、金属珪素粉末であることが好ましい。
【0020】
熱伝導粉末が金属珪素粉末であると保存安定性が特に良好なものとなる。
【0021】
また、前記(F)成分が、下記一般式(1)
SiX4-d (1)
(式中、Rは炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基、dは1~3の整数、Xは炭素数1~4のアルコキシ基である。)
で示され、1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノシランであることが好ましい。
【0022】
前記一般式(1)中、前記Xがメトキシ基又はエトキシ基であり、前記dが1又は2であることが好ましい。
【0023】
本発明では、(F)成分としてこのようなオルガノシランを用いることができる。
【0024】
また、前記(F)成分が、下記平均組成式(2)
SiO{4-(e+f)}/2 (2)
(式中、Rは炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基、Xは炭素数1~4のアルコキシ基であり、e、fは、e=1.0~2.8、f=0.01~0.5、かつe+f=1.5~3を満足する正数である。)
で示され、1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0025】
前記平均組成式(2)中、前記Xがメトキシ基又はエトキシ基であり、前記fが0.02~0.3であることが好ましい。
【0026】
前記平均組成式(2)中、前記Rがメチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0027】
本発明では、(F)成分としてこのようなオルガノポリシロキサンを用いることができる。
【0028】
また本発明では、上記の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の硬化物からなる弾性層を有するものである電子写真式画像形成部材を提供する。
【0029】
本発明の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、電子写真式画像形成部材に好適に用いることができる。
【0030】
また、前記電子写真式画像形成部材が、現像ロール及び現像ベルトから選ばれる部材であることが好ましい。
【0031】
本発明の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、このような用途に特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、良好な保存安定性、特に経時の硬度安定性を有する硬化物を与える付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を提供することができ、特に電子写真式画像形成部材用の付加硬化型液状導電性高熱伝導シリコーンゴム組成物及び該組成物の硬化物を弾性層として有する電子写真式画像形成部材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上述のように、良好な保存安定性を有する硬化物を与える導電性高熱伝導組成物、及びその組成物の硬化物を弾性層として有する電子写真式画像形成部材の開発が求められていた。
【0034】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、後述する(A)~(F)成分を含む付加硬化型液状高熱伝導導電性シリコーンゴム組成物において、特に(D)成分のカーボンブラックに加え、(E)成分の熱伝導性粉末と、(F)成分のアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンを配合して導電化された熱伝導性シリコーンゴム組成物が経時で硬度が低下するのを抑えることができ、良好な保存安定性を有することを見出し、該組成物を硬化してなるシリコーンゴム層を有する熱伝導性シリコーンゴム部材(ロール、ベルト等)が、好適な導電性と優れた熱伝導性とを有し、高速複写機やプリンターのゴム部材として有効に用いられることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0035】
即ち、本発明は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上含有する液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(B)成分に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の数が、前記(A)成分に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対して0.5~10個となる量、
(C)付加反応触媒としての白金族金属系触媒:前記(A)成分の合計質量に対し白金族金属換算で0.5~1,000ppmとなる量、
(D)カーボン材:1~50質量部、
(E)平均一次粒子径が30μm以下であり、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性粉末:10~400質量部、及び
(F)1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有するオルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサン:0.05~30質量部となる量、
を含むものである付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である。
【0036】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物>
本発明の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物(付加硬化型液状導電性高熱伝導シリコーンゴム組成物)は、下記(A)~(F)成分を含むものである。
【0038】
[(A)成分]
(A)成分は、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有する液状(特には、25℃で液状)のオルガノポリシロキサンであり、本発明にかかる組成物のベースポリマー(主剤)である。
【0039】
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状(樹脂状)等が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造が直鎖状又は分岐鎖状である場合、該オルガノポリシロキサンの分子中においてアルケニル基が結合するケイ素原子の位置は、分子鎖末端(即ち、トリオルガノシロキシ基)及び分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端に位置する2官能性のジオルガノシロキサン単位又は3官能性のモノオルガノシルセスキオキサン単位)のどちらか一方でも両方でもよい。(A)成分として、特に好ましくは、分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0040】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、通常、炭素数2~8、好ましくは炭素数2~4のものが挙げられる。その具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。
【0041】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した1価炭化水素基全体に対して0.001~10mol/100gであることが好ましく、特に0.01~5mol/100gであることが好ましい。
【0042】
(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する1価炭化水素基としては、例えば、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~10の1価炭化水素基が挙げられる。1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、特に、メチル基であることが好ましい。
【0043】
(A)成分の25℃における粘度は、好ましくは50~500,000mPa・s、より好ましくは500~200,000mPa・sである。粘度がこの範囲内にあると、得られるシリコーンゴム組成物の取り扱い作業性が良好であり、また、得られるシリコーンゴム組成物の硬化物の機械的特性が良好である。なお、本明細書において粘度とは、25℃においてJIS K 7117-1:1999に記載の方法で回転粘度計により測定した値を指す。
【0044】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0045】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも2種以上を併用することが、本発明の組成物を好ましい粘度範囲に調整することが容易になるので好ましい。
【0046】
[(B)成分]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤(硬化剤)として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状(樹脂状)構造等各種のものが使用可能であるが、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiHで表されるヒドロシリル基)を有する必要がある。
【0047】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(3)で示されるものを用いることができる。
SiO(4-a-b)/2 (3)
(式中、Rは独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基である。また、aは0.7~2.1、bは0.001~1.0で、かつa+bが0.8~3.0を満足する正数である。)
【0049】
上記式(3)中、Rは独立して、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を除く、好ましくは炭素数1~10の、ケイ素原子に結合した1価炭化水素基であり、このRにおける1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。Rの1価炭化水素基として、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基である。また、aは0.7~2.1、bは0.001~1.0で、かつa+bが0.8~3.0を満足する正数であり、好ましくは、aは1.0~2.0、bは0.01~1.0、a+bが1.5~2.5を満足する正数である。
【0050】
1分子中に2個以上含有するSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常2~300個、好ましくは3~150個、より好ましくは4~100個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常0.1~1,000mPa・s、好ましくは0.5~500mPa・s程度の、25℃で液状のものが使用される。なお本明細書において、重合度は、例えば、トルエンを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(数平均分子量)又は重量平均重合度(重量平均分子量)等として求めることができる。
【0051】
このような(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサンや、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたもの、式:R SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。なお、上記Rは炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基から選ばれる基であり、特にメチル基であることが好ましい。
【0052】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個(又はモル)に対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5~10個(又はモル)であり、好ましくは0.6~5個(又はモル)、さらに好ましくは0.7~2.0個(又はモル)となる量である。
【0053】
(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5個未満であると、シリコーンゴム組成物は十分に硬化せず、目的の強度が得られないことがある。またこれが10個を超えると、シリコーンゴム組成物の硬化物の耐熱性が極端に悪化することがある。
【0054】
[(C)成分]
(C)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属系触媒が挙げられる。
【0055】
(C)成分の配合量は、触媒量、即ち(A)成分の合計質量に対し白金族金属換算で0.5~1,000ppmとなる量とすることができ、特に1~500ppmとすればよい。添加量が少なすぎると硬化性の低下を起こし、添加量が多すぎるとコストが高くなり、不経済となる。
【0056】
[(D)成分]
(D)成分のカーボン材は、特定領域の導電性(あるいは体積抵抗率)を得るために必要なもので、公知の製法、種類のカーボン材を使用することができる。ここで、「特定領域の導電性」とは、具体的には、得られたシリコーンゴム組成物の硬化物の体積抵抗率が、通常0.1~10,000,000Ω・m、好ましくは1~10,000,000Ω・m、より好ましくは10~1,000,000Ω・mであるように設計される。カーボン材は、その製造方法により導電性が異なるが、本発明においては、配合、混練した際に所望の導電性を得るものであればいずれのものでも使用し得る。
【0057】
カーボン材としては、特に限定されるものでないが、例えば、アセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1,500~3,000℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックやチャンネルブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノ粒子、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、繊維状グラファイト等を挙げることができ、これらのうち、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なお、上記例示のうち、グラファイト及び繊維状グラファイトは、後述する(E)熱伝導性粉末としての効果も有している。本発明において、グラファイトまたは繊維状グラファイトを用いる場合は、(D)カーボン材として配合するものとして、配合量の調整を行うものとする。
【0058】
具体的に、アセチレンブラックとしては、デンカブラック(デンカ社製)、シャウニガンアセチレンブラック(シャウニガンケミカル社製)等が、コンダクティブファーネスブラックとしては、コンチネックスCF(コンチネンタルカーボン社製)、バルカンC(キャボット社製)等が、スーパーコンダクティブファーネスブラックとしては、コンチネックスSCF(コンチネンタルカーボン社製)、バルカンSC(キャボット社製)等が、エクストラコンダクティブファーネスブラックとしては、旭HS-500(旭カーボン社製)、バルカンXC-72(キャボット社製)等が、コンダクティブチャンネルブラックとしては、コウラックスL(デグッサ社製)等が例示され、また、ファーネスブラックの一種であるケッチェンブラックEC-350及びケッチェンブラックEC-600JD(ケッチェンブラックインターナショナル社製)や、オイル燃焼反応停止工程に水による急冷工程を含まないオイル燃焼法で製造されるENSACO260G、ENSACO250Gや電池用グレードのSUPER P Li(IMERYS社製)を用いることもできる。
【0059】
ファーネス法で製造されるカーボンブラックは、不純物、特に硫黄や硫黄化合物の量が硫黄元素の濃度で6,000ppm以下、より好ましくは3,000ppm以下が望ましい。なお、アセチレンブラックや、カーボン結晶化度が高いオイルファーネス法カーボンは、不純物含有率が少ないため、本発明において特に好適に用いられる。
【0060】
(D)カーボン材の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して1~50質量部であり、好ましくは1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0061】
カーボン材の配合量が多すぎるとシリコーンゴム組成物の硬化物の機械的特性が悪化することがあり、またシリコーンゴム組成物の粘度が高くなり、ロールを作製する際の成形性、コーティング性などの作業性が悪化することがある。カーボン材の配合量が少なすぎると目的物の導電性が得られない場合がある。
【0062】
このカーボン材の添加・混合方法は、(A)~(C)成分、及び後述の(E)、(F)成分と同時に添加・混合することも可能であるが、好ましくは、より粘度の高い状態で予め分散させた状態のものに、液状オイル((A)成分の液状オルガノポリシロキサン)を添加して成形し易いように粘度を調整する方法が好ましい。
【0063】
具体的には、まず(D)成分のカーボン材の全量に、(A)成分の液状オルガノポリシロキサンの一部を添加、混合し、カーボン材を十分に分散させる。なお、この時、表面処理剤を加えたり、100~180℃くらいに加熱したりしながら混合してもよい。混合後、残りの(A)成分、及び(B)、(C)、(E)、(F)成分を加え、再度十分に攪拌することにより、所望の粘度を有する液状のシリコーンゴム組成物を得ることができる。
【0064】
シリコーンゴム組成物の硬化物(弾性層)に更に導電性を付与するために、必要に応じて他の導電剤を(D)のカーボン材と併せて使用することもできる。このような他の導電剤として、例えば、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼のような各種導電性金属又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫-酸化アンチモン固溶体などを各種導電化処理した金属酸化物が挙げられる。
【0065】
[(E)成分]
(E)成分は、本発明のシリコーンゴム組成物に熱伝導性を付与するための熱伝導性粉末であり、平均一次粒子径が30μm以下であり、熱伝導率が10W/m・K以上のものである。本発明のシリコーンゴム組成物は、上記(A)オルガノポリシロキサンに特定の(E)熱伝導性粉末を配合したものである。
【0066】
本発明に使用する熱伝導性粉末は、熱伝導率が10W/m・K以上であり、好ましくは20W/m・K以上であり、より好ましくは40W/m・K以上である。熱伝導性粉末の熱伝導率が10W/m・K未満であると、シリコーンゴム組成物中に多くの熱伝導性粉末を入れる必要があり、硬化後のシリコーンゴムにおいて、弾性率の低下、硬度の上昇を起こすため、不適当である。
【0067】
本発明に使用する熱伝導性粉末の平均一次粒子径は30μm以下であり、通常、15μm以下、好ましくは0.1~12μm、より好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは2~8μmであるものを使用する。平均一次粒子径が0.1μm以上の粒子であれば、製造が容易であると共に、シリコーンポリマー(例えば、ベースポリマーである(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン)への分散性がよく、一次粒子分散が容易で、また多量に配合するのも容易である。30μmを超えるとゴム硬化物の機械的強度が損なわれるだけでなく、特に現像ロールや現像ベルト等の現像ゴム部材とした場合の表面が凹凸となり、画像特性やトナー転写性等の性能に問題が生じる可能性がある。
【0068】
なお、本発明において、平均一次粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0069】
熱伝導性粉末として、具体的には、金属珪素粉末、アルミナ、アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム等の熱伝導性無機粉体が挙げられる。
【0070】
なかでも、金属珪素粉末は、本発明において最も好適に用いることができる。金属珪素は、良好な熱伝導性をもち、またモース硬度が低く、金属珪素の特性として、たたくと砕けやすく、展性が低いため、高剪断を与えても金属粉自体が凝集しにくい特性をもつ。そのため、粉砕による微粒子化が容易で、オルガノポリシロキサンヘの分散性に優れる特性をもつ。そのため、金属珪素粉末が配合された電子写真式画像形成部材を研磨する場合には研磨性が良好で、表面平滑性に優れたゴム部材を得ることが可能である。
【0071】
また、(E)成分の熱伝導性粉末は、シリコーンゴム組成物の熱安定性や熱伝導性粉末の配合性の向上を目的として、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。これら処理は、熱伝導性粉末自体を予め処理しても、あるいは(A)成分と(E)成分との混合時に加熱下で表面処理を行ってもよい。なお、後述するが(A)成分と(E)成分と後述の補強性シリカ微粉末の混合時に加熱下で表面処理を行ってもよい。
【0072】
(E)成分の熱伝導性粉末の配合量は、(A)成分100質量部に対し10~400質量部、好ましくは40~400質量部、より好ましくは50~300質量部である。10質量部未満では、所望の高熱伝導性が得られず、400質量部を超えると、ゴム弾性の低下を招き、ゴム強度等の物性も著しく低下してしまう。
【0073】
なお、本発明のシリコーンゴム組成物から得られる導電性高熱伝導シリコーンゴム部材は、電子写真方式を利用した画像形成装置に使用され、良好なゴム弾性、良好な圧縮永久歪が特に必要とされるため、熱伝導性粉末の添加量は、上記特性を最適化するように調整することが望ましい。
【0074】
[(F)成分]
(F)成分は1分子中に1個以上の珪素原子に結合するアルコキシ基(アルコキシシリル基)を有するオルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサンであり、オルガノシランとしては、例えば、下記一般式(1)で表されるものを用いることができる。
SiX4-d (1)
(式中、Rは炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基、dは1~3の整数、Xは炭素数1~4のアルコキシ基である。)
【0075】
ここで、上記式中のdは1~3の整数、好ましくは1または2である。Rは炭素数1~20、特に1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、β-アミノエチル置換アミノ基、メルカプト基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基、γ-(メタ)アクリロキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ-グリシドキシプロピル基、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル基、γ-アミノプロピル基、γ-メルカプトプロピル基などが挙げられる。dが2以上の時、Rは同一であっても異なってもよい。Xは、炭素数1~4のアルコキシ基で、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基などが挙げられる。dが2以下の時、Xは同一であっても異なってもよい。
【0076】
また、1分子中に1個以上の珪素原子に結合するアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、上記したオルガノアルコキシシランの部分加水分解縮合物(即ち、分子中に1個以上、好ましくは2個以上の残存アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン)や、下記平均組成式(2)で表されるものを用いることができる。
SiO{4-(e+f)}/2 (2)
(式中、Rは炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基、Xは炭素数1~4のアルコキシ基であり、e、fは、e=1.0~2.8、f=0.01~0.5、かつe+f=1.5~3を満足する正数である。)
【0077】
上記式中、R、Xは上記R、Xで例示したものと同様のものが例示され、Rとしては特にメチル基、フェニル基が好ましい。e、fは、e=1.0~2.8、好ましくは1.4~2.5、f=0.01~0.5、好ましくは0.02~0.3、かつe+f=1.5~3、好ましくは1.8~2.5を満足する正数である。
【0078】
上記オルガノポリシロキサンは、1分子中に1個以上、好ましくは1~8個、より好ましくは2~6個の珪素原子に結合するアルコキシ基を有することが好ましく、また、このオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状等いずれの構造であってもよく、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は例えば2~100個、特に5~50個のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合するアルコキシ基は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0079】
(F)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.05~30質量部、好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは1~20質量部、きわめて好ましくは1~15質量部、とりわけ好ましくは1~10質量部、なおいっそう好ましくは1~5質量部である。配合量が30質量部を超えると硬化物のゴム物性が低下してしまう場合がある。一方、配合量が0.05質量部よりも少ないと組成物の保存安定性向上の効果を得ることができない。
【0080】
[補強性シリカ微粉末]
本発明にかかるシリコーンゴム組成物への上述した(A)~(F)成分以外の無機質充填剤の添加は任意であり、補強性シリカ微粉末を添加することが可能である。
【0081】
補強性シリカ微粉末は、機械的強度の優れたシリコーンゴム組成物を得るために、BET吸着法により測定した比表面積が10m/g以上、特に50~400m/gであることが好ましい。補強性シリカ微粉末としては、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)が例示され、中でも煙霧質シリカ(乾式シリカ)が好ましい。
【0082】
これらの使用可能な補強性シリカ微粉末を市販品で例示すると、アエロジル130,200,300(日本アエロジル社製商品名)、Cab-O-sil MS-5,MS-7,HS-5,HS-7(キャボット社製商品名)、SantocelFRC,CS(モンサント社製商品名)、ニップシルVN-3(日本シリカ工業社製商品名)などが挙げられる。また、これらの表面をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してもよい。これらのシリカは単独でも2種以上併用してもよい。
【0083】
上記補強性シリカ微粉末は、圧縮永久歪をより良好にし、体積抵抗率の経時上昇変化をさらに抑制する観点から、シリコーンゴム組成物への添加量は少ない方が望ましい。
【0084】
より良好な体積抵抗率や圧縮永久歪を得つつ、上記補強性シリカ微粉末を配合するには、シリコーンゴム組成物中の(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0~5質量部、特に0~3質量部の配合量とすることが好ましい。なお、配合量の下限値は、0.1質量部以上とすることができる。
【0085】
[その他の無機質充填材など]
また、補強性シリカ微粉末以外の無機質充填材としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、中空フィラーなどが挙げられる。
【0086】
これら無機質充填材は、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により表面処理されたものであってもよい。これらの処理は、無機質充填材自体を予め処理しても、あるいはオイルとの混合時に処理を行ってもよい。
【0087】
配合量は、シリコーンゴム組成物中の(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0~30質量部程度とすることが好ましい。
【0088】
また、必要に応じて、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、各種添加剤、難燃剤、耐熱剤等を配合することも任意である。
【0089】
[付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の調製及びその成形]
本発明の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、ニーダー、プラネタリーミキサー等の通常の混合攪拌器、混練器等を用いて、上記(A)~(F)成分の他、必要に応じてその他の成分(補強性シリカ微粉末及びその他の無機質充填材)を均一に混合することにより調製することができる。
【0090】
本発明のシリコーンゴム組成物の成形方法は、注型成形、射出成形、コーティングなどの方法があり、硬化条件としては100~300℃の温度で10秒~1時間の範囲のプレスキュアーが好適に採用される。また、圧縮永久歪を低下させる原因となる低分子シロキサン成分を低減させる等の目的で、成形後、更に120~250℃のオーブン内で30分~70時間程度のポストキュアー(2次キュアー)を行ってもよい。
【0091】
硬化物の体積抵抗率は、いかなる範囲の導電性でもよい。通常0.1~10,000,000,000,000Ω・m、好ましくは1~10,000,000Ω・m、より好ましくは10~1,000,000Ω・mに設計される。ここで、体積抵抗率は、JIS K 6249:2003に準じて測定することができる。
【0092】
<電子写真式画像形成部材>
また本発明では、上述の付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の硬化物からなる弾性層を有するものである電子写真式画像形成部材を提供する。このような電子写真式画像形成部材は、現像ロール及び現像ベルトから選ばれる部材であることが好ましい。
【0093】
例えば、芯金の外周面に本発明のシリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴム層を被覆した単層のロールや、耐熱性樹脂又は金属からなる基材の表裏面上に本発明のシリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴム層を被覆した単層のベルトとして使用してもよいし、あるいはポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂を更にシリコーンゴム層の上に被覆したロールやベルトとして使用してもよい。その場合のシリコーンゴム層は表面(外周面)に1層のみの被覆でもよいし、2層以上の複層コーティングであってもよい。中でもロールやベルトの最表面にウレタン樹脂やフッ素系樹脂などを被覆したものが、耐摩耗性などの耐久性の点から好ましい。
【0094】
ここで、芯金又は基材の材質としては、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、ポリアミド/ポリイミド樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から選ばれるものであることが好ましい。
【0095】
また、フッ素系樹脂としては、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどを用いることができ、フッ素系樹脂コーティング材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製、フッ素系ラテックス)等が挙げられ、またフッ素系樹脂チューブとしては、市販品を使用し得、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン-ポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらのうちで特にPFA、PTFEラテックスが好ましい。
【実施例0096】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下に記載の粘度とはJIS K 7117-1:1999に記載の回転粘度計によって測定された25℃における数値である。
【0097】
〔実施例1〕
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基量が0.015mol/100g、粘度が500mPa・sのジメチルポリシロキサン(A)35質量部、アセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)(D)6.7質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、3本ロールに2回通した。これをプラネタリーミキサーに戻した後、更に上記ジメチルポリシロキサン(A)65質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.0032mol/g)2.7質量部、下記一般式(I)
【化1】
で示されるアルコキシ基含有シロキサン化合物(F)2.0質量部、1-エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、塩化白金酸/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液(C)0.21質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部、を室温にてプラネタリーミキサーで30分間混合して、組成物Aを調製した。次に、調製した組成物Aを120℃で10分プレスキュアーによってシリコーンゴムシートにした後、200℃で4時間のポストキュアーを行い、JIS K 6249:2003に従って硬さ、体積抵抗率を測定した。圧縮永久歪は、上記と同様の方法により得られた直径29mm、厚さ12.5mmの円柱状シリコーンゴムを用いてJIS K 6249:2003に準じて180℃、25%圧縮、22時間後の圧縮永久歪を測定した。熱伝導率は、上記と同様の方法により得られた厚さ12mmのシートについて熱伝導計(QTM-500、京都電子社製)で測定した。結果を表1に示す。
【0098】
次に、保存安定性を確認するため以下の様に組成物Aを質量比1対1で混合すると組成物Aとなるように触媒と架橋剤が別々になるよう下記の配合量で材料1と材料2の2液に分けた。
【0099】
[材料1の調製]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基量が0.015mol/100g、粘度が500mPa・sのジメチルポリシロキサン(A)35質量部、アセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)(D)6.7質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、3本ロールに2回通した。これをプラネタリーミキサーに戻した後、更に上記ジメチルポリシロキサン(A)67.59質量部、塩化白金酸/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液(C)0.42質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部、上記アルコキシ基含有シロキサン化合物(F)2.0質量部、を室温にてプラネタリーミキサーで30分間混合して、材料1として組成物A1を調製した。
【0100】
[材料2の調製]
次に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基量が0.015mol/100g、粘度が500mPa・sのジメチルポリシロキサン(A)35質量部、アセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)(D)6.7質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、3本ロールに2回通した。これをプラネタリーミキサーに戻した後、更に上記ジメチルポリシロキサン(A)62.41質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.0032mol/g)5.4質量部、1-エチニルシクロヘキサノール0.2質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部、上記アルコキシ基含有シロキサン化合物(F)2.0質量部、を室温にてプラネタリーミキサーで30分間混合して、材料2として組成物A2を調製した。
【0101】
[保存安定性の評価]
次に、組成部A1と組成物A2をそれぞれ密閉し、25℃で4ヵ月、25℃で12ヵ月、70℃で7日、80℃で3日、80℃で5日保管した。保管後に組成物A1と組成物A2を1:1で混合し、120℃で10分プレスキュアーしてシリコーンゴムシートにした後、200℃で4時間ポストキュアーを行い、JIS K 6249:2003に従って硬さを測定し、初期との硬度差を求めた。結果を表1、表3に示す。
【0102】
〔実施例2〕
実施例1において、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)2.7質量部を2.54質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部を80質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Bを調製し、実施例1と同様の評価を行った。保存安定性については80℃3日の条件のみを確認した結果を表1に示す。
【0103】
〔実施例3〕
実施例1において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部を0.05質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Cを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0104】
〔実施例4〕
実施例1において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部を0.7質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Dを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0105】
〔実施例5〕
実施例1において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部を14質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Eを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0106】
〔実施例6〕
実施例1において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部を3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.67質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Fを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0107】
〔実施例7〕
実施例1において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部をメチルトリメトキシシラン0.45質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Gを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例8〕
実施例1において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部をヘキシルトリメトキシシラン0.71質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Hを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0109】
〔実施例9〕
実施例1において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部を1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン0.79質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Iを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0110】
〔比較例1〕
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基量が0.015mol/100g、粘度が500mPa・sのジメチルポリシロキサン(A)35質量部、アセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)(D)6.7質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、3本ロールに2回通した。これをプラネタリーミキサーに戻した後、更に上記ジメチルポリシロキサン(A)65質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.0032mol/g)2.7質量部、1-エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、塩化白金酸/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液(C)0.21質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部、を室温にてプラネタリーミキサーで30分間混合して、組成物Jを調製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
次に、保存安定性を確認するため以下の様に組成物Jを質量比1対1で混合すると組成物Jとなるように触媒と架橋剤が別々になるような下記の配合量で材料1と材料2の2液に分けた。
【0112】
[材料1の調製]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基量が0.015mol/100g、粘度が500mPa・sのジメチルポリシロキサン(A)35質量部、アセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)(D)6.7質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、3本ロールに2回通した。これをプラネタリーミキサーに戻した後、更に上記ジメチルポリシロキサン(A)67.59質量部、塩化白金酸/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液(C)0.42質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部、を室温にてプラネタリーミキサーで30分間混合して、材料1として組成物J1を調製した。
【0113】
[材料2の調製]
次に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基量が0.015mol/100g、粘度が500mPa・sのジメチルポリシロキサン(A)35質量部、アセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)(D)6.7質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、3本ロールに2回通した。これをプラネタリーミキサーに戻した後、更に上記ジメチルポリシロキサン(A)62.41質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.0032mol/g)5.4質量部、1-エチニルシクロヘキサノール0.2質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部、を室温にてプラネタリーミキサーで30分間混合して、材料2として組成物J2を調製した。
【0114】
[保存安定性の評価]
次に、組成部J1と組成物J2をそれぞれ密閉し、25℃で4ヵ月、25℃で12ヵ月、70℃で7日、80℃で3日、80℃で5日保管した。保管後に組成物J1と組成物J2を1:1で混合し、120℃で10分プレスキュアーしてシリコーンゴムシートにした後、200℃で4時間ポストキュアーを行い、JIS K 6249:2003に従って硬さを測定し、初期との硬度差を求めた。結果を表2、表3に示す。
【0115】
〔比較例2〕
実施例2において、上記シロキサン化合物(F)2.0質量部を添加しないこと以外は全て同一の処方で組成物Kを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0116】
〔比較例3〕
比較例2において、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)を追加で容器の上部が解放されているステンレス製容器にて温度80℃/湿度30%の恒温恒湿槽にて24時間熱処理したこと以外は全て同一の処方で組成物Lを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0117】
〔比較例4〕
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、アルケニル基量が0.015mol/100g、粘度が500mPa・sのジメチルポリシロキサン(A)65質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)80質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、常圧にて150℃2時間の熱処理を実施し、その後室温に冷却し、組成物F1を調製した。一方で上記ジメチルポリシロキサン(A)35質量部、アセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)(D)6.7質量部をプラネタリーミキサーで30分混合した後、3本ロールに2回通した。これをプラネタリーミキサーに戻した後、組成物F1、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.0032mol/g)2.54質量部、1-エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、塩化白金酸/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液(C)0.21質量部を室温にてプラネタリーミキサーで30分間混合して、組成物Mを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0118】
〔比較例5〕
実施例1において、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)2.7質量部を2.4質量部、粉砕金属珪素粉末(E)(平均一次粒子径5μm)110質量部を190質量部に置き換え、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R-972)0.67質量部と上記シロキサン化合物(F)2.0質量部とアセチレンブラック(D)6.7質量部を添加しないこと以外は全て同一の処方で組成物Nを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0119】
〔比較例6〕
比較例1において、アセチレンブラック(D)6.7質量部を4.3質量部に置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Oを調製し、実施例2と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
(表1、表2中、(B)成分のかっこ内の値は、(A)成分中のアルケニル基1個に対する(B)成分中のSiH基の個数を示す。(C)成分のかっこ内の値は、(A)成分の合計質量に対する白金族金属換算の濃度(ppm)を示す。)
【0122】
【表3】
【0123】
実施例1~9では、いずれも十分な(F)成分が含まれているため保存安定性が良く、良好な熱伝導率、体積抵抗率、圧縮永久歪を有しながらも、保存後に硬度が低下しなかった。それと比べて(F)成分を含まない比較例1、2、3、4、及び6は保存後に硬度低下が顕著に発生した。(E)熱伝導性粉末のみを配合し(D)カーボン材を配合しなかった比較例5では硬度低下は発生しない。
【0124】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。