(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175315
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】被加工物の切削方法及び切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20221117BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221117BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B24B55/02 Z
H01L21/78 F
B24B27/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081618
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古場 光彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 翔
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C047FF06
3C047FF17
3C047GG02
3C047GG03
3C158AA03
3C158AC02
3C158AC04
3C158BB06
3C158BB08
3C158BC01
3C158BC02
3C158CA01
3C158CA04
3C158CB01
5F063AA15
5F063AA21
5F063BA17
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063DD01
5F063DD03
5F063FF22
(57)【要約】
【課題】被加工物に付着する加工屑を抑制することができること。
【解決手段】被加工物の切削方法は、被加工物を切削ブレードで切削する方法であって、被加工物をチャックテーブルで保持する保持ステップ101と、チャックテーブルで保持した被加工物に切削水を供給しながら被加工物を切削ブレードで切削する切削ステップ102と、を備え、切削水は、切削ブレードの外周面に対面する噴出口を有する切削ノズルと、切削ブレードを挟んで切削ブレードの表面側と裏面側から切削水を供給する一対のノズルユニットと、から供給され、ノズルユニットは、水平方向に延在するパイプ状の本体部の、該切削ブレード側の周面に、スリット状の噴出口が形成されており、噴出口は、水平方向より上向きに形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を切削ブレードで切削する被加工物の切削方法であって、
被加工物をチャックテーブルで保持する保持ステップと、
該チャックテーブルで保持した被加工物に切削水を供給しながら該被加工物を切削ブレードで切削する切削ステップと、を備え、
該切削水は、
該切削ブレードの外周面に対面する噴出口を有する切削ノズルと、該切削ブレードを挟んで該切削ブレードの表面側と裏面側から該切削水を供給する一対のノズルユニットと、から供給され、
該ノズルユニットは、
水平方向に延在するパイプ状の本体部の、該切削ブレード側の周面に、スリット状の噴出口が形成されており、
該噴出口は、水平方向より上向きに形成されていることを特徴とする被加工物の切削方法。
【請求項2】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物をスピンドルに装着された切削ブレードで切削する切削ユニットと、を備える切削装置であって、
該切削ユニットは、
該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングと、
該スピンドルハウジングに固定され、該切削ブレードの外周を覆い、該切削ブレードに切削水を供給するノズルを備えるブレードカバーと、を有し、
該ノズルは、
該切削ブレードの外周面に対面する噴出口を有する切削ノズルと、
該切削ブレードを挟んで該切削ブレードの表面側と裏面側に配置される一対のノズルユニットと、を備え、
該ノズルユニットは、水平方向に延在するパイプ状の本体部の、該切削ブレード側の周面に、スリット状の噴出口が形成されており、
該噴出口は、水平方向より上向きに形成されていることを特徴とする切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の切削方法及び切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスウェーハや樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、ガラス基板など各種板状の被加工物をストリートに沿って切削して分割する際、スピンドルに切削ブレードを装着して加工する切削装置が使われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
切削装置は、切削加工中、発生する加工屑の除去と加工熱の冷却のため、切削ブレード及び被加工物には純水等の切削水が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切削装置は、切削水が足りないと、被加工物の加工屑や、被加工物が貼着されたダイシングテープの加工屑が被加工物に付着してしまい、デバイスの動作を不安定にする恐れがある。そこで、切削ブレードの外周面に向かって切削水を噴出する切削ノズルや、切削ブレードを表裏面から挟んで配置されるパイプ状のノズルユニットが設定され、加工点に充分な切削水を供給している。
【0006】
しかしながら、ノズルユニットからの切削水の供給によって切削ブレードのばたつきを促進したり、切削ノズルから供給される水の流れを遮断し、加工屑の残りを発生させて、被加工物に加工屑を付着させる恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、被加工物に付着する加工屑を抑制することができる被加工物の切削方法及び切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の切削方法は、被加工物を切削ブレードで切削する被加工物の切削方法であって、被加工物をチャックテーブルで保持する保持ステップと、該チャックテーブルで保持した被加工物に切削水を供給しながら該被加工物を切削ブレードで切削する切削ステップと、を備え、該切削水は、該切削ブレードの外周面に対面する噴出口を有する切削ノズルと、該切削ブレードを挟んで該切削ブレードの表面側と裏面側から該切削水を供給する一対のノズルユニットと、から供給され、該ノズルユニットは、水平方向に延在するパイプ状の本体部の、該切削ブレード側の周面に、スリット状の噴出口が形成されており、該噴出口は、水平方向より上向きに形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物をスピンドルに装着された切削ブレードで切削する切削ユニットと、を備える切削装置であって、該切削ユニットは、該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングに固定され、該切削ブレードの外周を覆い、該切削ブレードに切削水を供給するノズルを備えるブレードカバーと、を有し、該ノズルは、該切削ブレードの外周面に対面する噴出口を有する切削ノズルと、該切削ブレードを挟んで該切削ブレードの表面側と裏面側に配置される一対のノズルユニットと、を備え、該ノズルユニットは、水平方向に延在するパイプ状の本体部の、該切削ブレード側の周面に、スリット状の噴出口が形成されており、該噴出口は、水平方向より上向きに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、被加工物に付着する加工屑を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る切削装置の切削ユニットのノズルユニットから切削水を噴出する状態を模式的に示す正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る切削装置の切削ユニットの変形例のノズルユニットから切削水を噴出する状態を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7に示された被加工物の加工方法の保持ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示された被加工物の加工方法の切削ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図7に示された被加工物の加工方法の切削ステップ中の切削水と切削ブレードを示す正面図である。
【
図11】
図11は、
図7に示された被加工物の加工方法の切削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図12】
図12は、従来の加工方法の切削中の切削水と切削ブレードを示す正面図である。
【
図13】
図13は、従来の加工方法の切削後の被加工物の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの斜視図である。
図3は、
図2に示された切削ユニットの正面図である。
図4は、
図2に示された切削ユニットの側面図である。
図5は、実施形態1に係る切削装置の切削ユニットのノズルユニットから切削水を噴出する状態を模式的に示す正面図である。
図6は、実施形態1に係る切削装置の切削ユニットの変形例のノズルユニットから切削水を噴出する状態を模式的に示す正面図である。
【0014】
(被加工物)
実施形態1に係る切削装置1は、被加工物200を切削する加工装置である。実施形態1では、切削装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン(Si)、サファイア(Al2O3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハである。
【0015】
被加工物200は、
図1に示すように、交差する複数の分割予定ライン201で区画された表面202の各領域それぞれにデバイス203が形成されている。デバイス203は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。また、本発明では、被加工物200は、ウエーハに限らず、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状の樹脂パッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0016】
実施形態1において、被加工物200は、被加工物200の外径よりも大径のテープ205が表面202の裏側の裏面204に貼着され、テープ205の外縁部が、内径が被加工物200の外径よりも大径な環状フレーム206に貼着されて、環状フレーム206の内側の開口内にテープ205により支持される。被加工物200は、分割予定ライン201に沿って、切削装置1により切削溝207が形成されて、個々のデバイス203毎に分割される。
【0017】
(切削装置)
図1に示された切削装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン201に沿って切削ブレード21で切削して、被加工物200に切削溝207を形成して、被加工物200を個々のデバイス203に分割する切削装置である。切削装置1は、被加工物200を保持するチャックテーブル10と、切削ユニット20と、撮像ユニット30と、制御ユニット100とを備える。
【0018】
また、切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる移動ユニット40を備える。移動ユニット40は、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする加工送りユニットであるX軸移動ユニット41と、水平方向と平行でかつX軸方向と直交する割り出し送り方向であるY軸方向に切削ユニット20を移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット42と、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ直交する鉛直方向に平行な切り込み送り方向であるZ軸方向に切削ユニット20を移動させるZ軸移動ユニット43と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット44とを備える。即ち、移動ユニット40は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にチャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させるものである。
【0019】
X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を回転移動ユニット44とともに加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10を切削ユニット20に対してX軸方向に移動させるものである。X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削ユニット20が切削加工する加工領域と、チャックテーブル10に被加工物200を搬入出する搬入出領域との間で、チャックテーブル10をX軸方向に沿って移動する。
【0020】
Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20をチャックテーブル10に対して割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10を切削ユニット20に対してY軸方向に相対的に移動させるものである。Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10を切削ユニット20に対してZ軸方向に相対的に移動させるものである。回転移動ユニット44は、X軸移動ユニット41によりX軸方向に移動され、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転させるものである。
【0021】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。回転移動ユニット44は、チャックテーブル10を軸心回りに回転させるモータ等を備える。
【0022】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等の多孔質材から構成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット41により搬入出領域と加工領域とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転移動ユニット44によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、保持面11が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源より吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、テープ205を介して被加工物200を吸引、保持する。チャックテーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム206をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0023】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200をスピンドル23に装着された切削ブレード21で切削する加工ユニットである。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42によりチャックテーブル10に対してY軸方向に相対的に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に相対的に移動自在に設けられている。
【0024】
切削ユニット20は、
図1に示すように、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0025】
切削ユニット20は、
図2に示すように、チャックテーブル10で保持された被加工物200を切削する切削ブレード21と、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられかつ図示しないモータにより回転されるとともに先端部に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、スピンドルハウジング22の先端面に固定されたブレードカバー24と、を有する。
【0026】
実施形態1では、切削ブレード21は、
図3に示すように、スピンドル23の先端部にマウント231とナット232と抑えマウント211に挟持されて固定される。切削ブレード21は、
図2、
図3及び
図4に示すように、円環状の切り刃212で構成されている。切り刃212は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等の砥粒を固定するボンド材(結合材)とからなり厚み一定のリング状に形成されている。また、本発明では、切削ブレード21は、環状基台の外周縁に円環状の切り刃212が固定された所謂ハブブレードでも良い。
【0027】
スピンドルハウジング22は、スピンドル23を軸心回りに回転可能に支持する。ブレードカバー24は、切削ブレード21の下方を除く外周を覆うものである。ブレードカバー24は、スピンドルハウジング22の先端面に固定され、切削ブレード21の下方を除く外周を覆うカバー本体25と、カバー本体25に取り付けられたノズル26とを備える。
【0028】
ノズル26は、切削ブレード21に切削水29(
図3に示す)を供給するものであり、切削水ノズル27と、一対のノズルユニット28とを備える。切削水ノズル27及び一対のノズルユニット28は、切削ブレード21に切削水29を供給することで、被加工物200に向けて切削水29を供給するものである。切削水ノズル27は、切削ブレード21の切り刃212の外周面213(
図3に示す)に対面する噴出口271(
図3に示す)を有する。切削水ノズル27の噴出口271は、X軸方向に沿って切削ブレード21の切り刃212の外周面213と対面する。切削水ノズル27は、図示しない切削水供給源から供給された切削水29をX軸方向に沿って切削ブレード21の切り刃212の外周面213に向かって噴出する。なお、切削ブレード21の切り刃212は、スピンドル23によって
図4において時計回りに回転される。
【0029】
一対のノズルユニット28は、切削ブレード21の切り刃212の下端部を互いの間に挟んでブレードカバー24の下端部のY軸方向の両側に配置される。一対のノズルユニット28は、切削ブレード21の切り刃212の下端部の表面214側と表面214の裏側の裏面215側とに配置され、切削ブレード21の切り刃212の下端部の表面214側と裏面215側から切削水29を供給するものである。
【0030】
一対のノズルユニット28は、それぞれ、X軸方向と平行に水平方向に延在するパイプ状の本体部281を備える。本体部281は、長手方向がX軸方向と平行な外観が円柱状に形成されている。ノズルユニット28は、
図2に示すように、本体部281の切削ブレード21側の周面にスリット状の噴出口282が形成されており、噴出口282は、
図5に示すように、水平方向より上向きに形成されている。実施形態1では、噴出口282は、各本体部281に本体部281の長手方向に間隔をあけて複数(3つ)設けられている。実施形態1では、噴出口282は、長手方向が本体部281の周方向と平行でかつ幅方向が本体部281の長手方向と平行な矩形状に形成されている。一対のノズルユニット28は、図示しない切削水供給源から供給された切削水29をY軸方向に沿って切削ブレード21の切り刃212の表面214又は裏面215に向かって噴出する。
【0031】
また、一対のノズルユニット28は、本体部281の切削ブレード21の切り刃212と対面する周面のうち本体部281のX軸方向と平行な中心軸283(
図5に示す)と噴出口282の上端とを結ぶ第1線分284と、中心軸283と噴出口282の下端とを結ぶ第2線分285と、のなす角度を2等分する中心線分286が、中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に上向きになる位置に噴出口282を形成している。このために、一対のノズルユニット28は、切削水29を中心線分286に沿って切削ブレード21の切り刃212の表面214又は裏面215に向かって噴出する。この中心線分286と平行でかつノズルユニット28から切削ブレード21の切り刃212の表面214又は裏面215に向かう方向は、一対のノズルユニット28からの切削水29の噴出方向をなしている。
【0032】
このように、一対のノズルユニット28が、中心線分286が中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に上方に向かう位置に噴出口282を形成することは、噴出口282が、水平方向より上向きに形成されていることを示している。なお、実施形態1では、中心線分286と水平面291とのなす角度287は、25度であるが、本発明では、角度287は、
図5及び
図6に示すように、25度に限定されない。本発明では、中心線分286が中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に上方に向かいかつ角度287が、0度を超え、70度以下であれば良い。
【0033】
角度287が0度以下即ち中心線分286が中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって水平方向又は下向きになると一対のノズルユニット28の噴出口282から噴出する切削水29が、切削水ノズル27の噴出口271から噴出される切削水29が被加工物200に形成される切削溝207の溝底208(
図11に示す)に到達することを規制するからである。また、角度287が45度を超えると、一対のノズルユニット28の噴出口282から噴出する切削水29が、切削ブレード21の切り刃212の表面214または裏面215に十分に供給されないからである。
【0034】
なお、実施形態1では、
図5に示すように、第1線分284と中心線分286が中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に上向きとなり、第2線分285が中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に水平方向に沿って近付く例を示している。
図6は、第1線分284と中心線分286が中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に上向きとなり、第2線分285が中心軸283から切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に下向きとなる例を示している。
【0035】
前述した構成の切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行である。
【0036】
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0037】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、切削装置1のチャックテーブル10及び切削ユニット20のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない原点位置を基準とした位置で定められる。
【0038】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を複数枚収容するカセット50を設置しかつカセット50をZ軸方向に移動させるカセットステージ51と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット52と、被加工物200を搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0039】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した各ユニットをそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
【0040】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工条件などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0041】
(被加工物の加工方法)
次に、実施形態1に係る被加工物の加工方法を図面に基いて説明する。
図7は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。被加工物の加工方法は、被加工物200を切削ブレード21で切削する方法であって、前述した切削装置1の加工動作でもある。被加工物の切削方法は、
図7に示すように、保持ステップ101と、切削ステップ102と、搬出ステップ103とを備える。
【0042】
(保持ステップ)
図8は、
図7に示された被加工物の加工方法の保持ステップを一部断面で示す側面図である。保持ステップ101は、被加工物200をチャックテーブル10で保持するステップである。
【0043】
前述した構成の切削装置1は、被加工物200を収容したカセット50がカセットステージ51に設置され、制御ユニット100に加工条件が設定される。切削装置1は、オペレータ等からの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作、即ち、保持ステップ101を開始する。加工動作、即ち、保持ステップ101を開始すると、切削装置1は、制御ユニット100が切削ユニット20等を制御して、スピンドル23を軸心回りに回転し、切削水29を切削ブレード21に供給する。
【0044】
保持ステップ101では、切削装置1は、制御ユニット100が搬送ユニットを制御してカセット50から被加工物200を1枚取り出し、テープ205を介して搬入出領域のチャックテーブル10の保持面11に載置する。加工動作では、切削装置1は、
図8にテープ205を介して被加工物200を保持面11に吸引保持し、クランプ部12で環状フレーム206をクランプする。
【0045】
(切削ステップ)
図9は、
図7に示された被加工物の加工方法の切削ステップを一部断面で示す側面図である。
図10は、
図7に示された被加工物の加工方法の切削ステップ中の切削水と切削ブレードを示す正面図である。
図11は、
図7に示された被加工物の加工方法の切削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
図12は、従来の加工方法の切削中の切削水と切削ブレードを示す正面図である。
図13は、従来の加工方法の切削後の被加工物の要部の断面図である。
【0046】
切削ステップ102は、チャックテーブル10で保持した被加工物200に切削水29を供給しながら被加工物200を切削ブレード21で切削するステップである。切削ステップ102では、切削装置1は、制御ユニット100が移動ユニット40を制御して搬入出領域から加工領域に向けてチャックテーブル10を撮像ユニット30の下方まで移動し、撮像ユニット30によりチャックテーブル10に吸引保持した被加工物200を撮像して、アライメントを遂行する。
【0047】
切削ステップ102では、切削装置1は、
図9に示すように、制御ユニット100が加工条件に基づいて移動ユニット40等を制御して、切削水29を供給し切削ブレード21と被加工物200とを分割予定ライン201に沿って相対的に移動させながら被加工物200の分割予定ライン201に切削ブレード21をテープ205に到達するまで切り込ませて切削する。切削装置1は、加工条件に沿って、被加工物200の分割予定ライン201を切削して、全ての分割予定ライン201に切削溝207を形成して、被加工物200を個々のデバイス203に分割する。
【0048】
なお、切削ステップ102において、切削水29は、切削ユニット20の切削水ノズル27の噴出口271から切削ブレード21の切り刃212の外周面213に供給され、切削ユニット20の一対のノズルユニット28のスリット状の噴出口282から
図10に示すように切削ブレード21の切り刃212の表面214と裏面215との双方に供給される。切削ステップ102では、一対のノズルユニット28の噴出口282から噴出される切削水29は、中心線分286に沿って、切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に上方に向かって噴出される。このために、一対のノズルユニット28の噴出口282から噴出される切削水29は、ノズルユニット28より下方で露出する切削ブレード21の切り刃212に直接かかる量が抑制される。また、切り刃212に向かって斜め上方に噴出される切削水29は、水平以下の向きで噴出される時に比べ、切り刃212をばたつかせる事も抑制される。さらに、ノズルユニット28から噴出した切削水29は抑えマウント211に当たり、高速回転する抑えマウント211によって加速され分割予定ライン201周辺の被加工物200の表面202に供給される。これにより、分割予定ライン201周辺の被加工物200に加工屑210が付着するのを抑制したり洗浄したりする効果も得られる。
【0049】
また、切削ステップ102では、切削ブレード21の切り刃212は、
図9の矢印方向に回転しており、切削水ノズル27の噴出口271から噴出された切削水29は、切削ブレード21の切り刃212の外周面213等に連れ回り切削溝207の溝底208まで導かれる。この際、一対のノズルユニット28からの切削水29は上方に向かって噴出されノズルユニット28より下方で露出する切削ブレード21の切り刃212に直接かかる量が少ないので、切り刃212に連れ回って切削溝207に導かれる噴出口271からの切削水29の流れを遮る事が抑制される。このために、切削ステップ102では、切削装置1は、切削水ノズル27の噴出口271から噴出する切削水29により切削溝207の溝底208から加工屑210(
図13に示し、切削により生じる屑)を排出し、
図11に示すように、切削溝207の溝底208に加工屑210が残ることを抑制することができる。なお、実施形態1では、切削溝207の溝底208は、テープ205に形成されている。
【0050】
このような実施形態1に係る加工方法及び切削装置1に対して、
図12に示す中心線分が水平方向と平行になるように、噴出口282-1が形成されたノズルユニット28-1を備える従来の切削装置1-1は、
図12に示すように、一対のノズルユニット28-1の噴出口282-1から噴出される切削水29が切削ブレード21-1の切り刃212-1を覆い、切削水ノズル27-1の噴出口271-1から噴出された切削水29が切削溝207の溝底208に導かれることを抑制する。このために、従来の切削装置1は、切削溝207の溝底208から加工屑210を排出できずに、
図13に示すように、切削溝207の溝底208に加工屑210が残ってしまう。なお、
図12に示された切削装置1-1において、実施形態1に係る切削装置1の各構成要素と対応するものに実施形態1に係る切削装置1の各構成要素の符号に「-1」を加えた符号を付して説明を省略する。
【0051】
(搬出ステップ)
搬出ステップ103は、切削後の被加工物200をチャックテーブル10から搬出して、実施形態1では、カセット50に搬入するステップである。搬出ステップ103では、切削装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン201を切削し、切削溝207を形成すると、チャックテーブル10を加工領域から搬入出領域に向けて移動し、チャックテーブル10の被加工物200の吸引保持を停止するとともに、クランプ部12の環状フレーム206のクランプを解除する。搬出ステップ103では、切削装置1は、搬送ユニットで被加工物200を洗浄ユニットに搬送し、洗浄ユニットで切削後の被加工物200を洗浄した後、搬送ユニットで被加工物200をカセット50に搬入する。切削装置1は、カセット50内の全ての被加工物200を切削加工すると、加工動作を終了する。
【0052】
ノズルユニット28のスリット状の噴出口282-1は、従来、切削ブレード21に向かって水平方向又は下向き(被加工物200向き)に開口していた。しかしながら、以上説明した実施形態1に係る切削装置1及び切削方法は、一対のノズルユニット28のスリット状の噴出口282が水平方向より上向きに形成されているので、ノズルユニット28の噴出口282から切削ブレード21の切り刃212に向けて水平方向より上向きに切削水29を噴出させることとなる。このために、実施形態1に係る切削装置1及び切削方法は、切削水ノズル27から切削ブレード21の切り刃212の外周面213の噴出された切削水29の流れを阻害することが無く、効率的に切削水ノズル27の切削水29を切削溝207の溝底208に供給することができるようになった。
【0053】
その結果、実施形態1に係る切削装置1及び切削方法は、被加工物200の切削溝207の溝底208から加工屑210を除去でき、被加工物200に付着する加工屑210を抑制することができるという効果を奏する。
【0054】
また、実施形態1に係る切削装置1及び切削方法は、一対のノズルユニット28のスリット状の噴出口282が水平方向より上向きに形成されているので、一対のノズルユニット28の噴出口282から噴出された切削水29の切り刃212に衝突する量を抑制することができる。その結果、実施形態1に係る切削装置1及び切削方法は、切削ブレード21の切り刃212の刃先が軸心方向に変位すること、即ち、所謂ばたつくことを抑制することができる。
【0055】
次に、本発明の発明者らは、前述した実施形態1に係る切削方法及び切削装置1の効果を確認した。結果を、以下の表1に示す。
【0056】
【0057】
確認では、ノズルユニット28のスリット状の噴出口282の位置及び向きの異なる本発明品1、本発明品2、本発明品3、比較例1、比較例2及び比較例3の切削溝207の溝底208の加工屑210の除去状況を確認した。なお、表1では、複数回被加工物200を切削し、全ての回において切削溝207の溝底208から加工屑210を除去できたものを丸で示し、切削溝207の溝底208から加工屑210を除去できた回数が除去できなかった回数よりも多いものを三角で示し、切削溝207の溝底208から加工屑210を除去できた回数が除去できなかった回数よりも少ないものをバツで示している。
【0058】
本発明品1、本発明品2、本発明品3、比較例1、比較例2及び比較例3では、噴出口282を各ノズルユニット28の本体部281の長手方向に沿って間隔をあけて3つ設け、各噴出口282の本体部281の長手方向の幅を0.4mmとし、各噴出口282の本体部281の周方向の長さを0.8mmとした。
【0059】
比較例1は、各噴出口282の角度287を-45度(即ち、中心線分286が切削ブレード21の切り刃212に近付くのにしたがって徐々に下方に向かう角度)とした。比較例2は、各噴出口282の角度287を0度とし、比較例3は、各噴出口282の角度287を80度とした。
【0060】
本発明品1は、各噴出口282の角度287を20度とし、本発明品2は、各噴出口282の角度287を45度とし、本発明品3は、各噴出口282の角度287を70度とした。
【0061】
比較例1、比較例2及び比較例3は、切削溝207の溝底208に加工屑210が残ることが多かった。しかしながら、本発明品1、本発明品2及び本発明品3は、切削溝207の溝底208に加工屑210が残ることが少なく、特に、本発明品2は、切削溝207の溝底208から加工屑210を除去できた。
【0062】
したがって、表1によれば、一対のノズルユニット28のスリット状の噴出口282を水平方向より上向きに形成し、角度287を0度を超えかつ70度以下とすることで、切削方法及び切削装置1は、切削溝207の溝底208から加工屑210を除去でき、被加工物200に加工屑210が付着することを抑制できることが明らかとなった。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 切削装置
10 チャックテーブル
20 切削ユニット
21 切削ブレード
22 スピンドルハウジング
23 スピンドル
24 ブレードカバー
26 ノズル
27 切削水ノズル
28 ノズルユニット
29 切削水
101 保持ステップ
102 切削ステップ
200 被加工物
213 外周面
214 表面
215 裏面
271 噴出口
281 本体部
282 噴出口