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特開2022-175444夜間頻尿、中途覚醒又は頻尿の予防又は改善剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175444
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】夜間頻尿、中途覚醒又は頻尿の予防又は改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20221117BHJP
   A61K 36/38 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20221117BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K36/38
A61P13/02
A61P13/10
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081823
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】宮島 崇広
(72)【発明者】
【氏名】中田 孝広
(72)【発明者】
【氏名】石橋 理夏子
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MD52
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA81
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA10
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA08
4C088MA37
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA05
4C088ZA81
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、夜間頻尿の予防又は改善剤、中途覚醒の予防又は改善剤、或は頻尿の予防又は改善剤を提供することを目的とする。
【解決手段】α-マンゴスチンは、睡眠障害の改善作用、膀胱容量の改善作用、及び夜間多尿の改善作用を複合的に発揮でき、夜間頻尿の予防又は改善剤、中途覚醒の予防又は改善剤、並びに頻尿の予防又は改善剤の有効成分として使用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-マンゴスチンを含有する、夜間頻尿の予防又は改善剤。
【請求項2】
α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、請求項1に記載の予防又は改善剤。
【請求項3】
睡眠障害、膀胱容量の低下、及び夜間多尿よりなる群から選択される少なくとも1種が要因となって生じている夜間頻尿の予防又は改善に使用される、請求項1又は2に記載の予防又は改善剤。
【請求項4】
前立腺肥大が要因になっていない夜間頻尿、又は女性の夜間頻尿の予防又は改善に使用される、請求項1~3のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項5】
α-マンゴスチンを含有する、中途覚醒の予防又は改善剤。
【請求項6】
α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、請求項5に記載の予防又は改善剤。
【請求項7】
夜間頻尿の症状を有する者の中途覚醒の予防又は改善に使用される、請求項5又は6に記載の予防又は改善剤。
【請求項8】
前立腺肥大が要因になっていない夜間頻尿の症状を有する者、又は女性の中途覚醒の予防又は改善に使用される、請求項5~7のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項9】
α-マンゴスチンを含有する、頻尿の予防又は改善剤。
【請求項10】
α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、請求項9に記載の予防又は改善剤。
【請求項11】
膀胱容量の低下が要因となって生じている頻尿の予防又は改善に使用される、請求項9又は10に記載の予防又は改善剤。
【請求項12】
頻尿及び夜間頻尿の双方の症状を有する者に対して使用される、請求項9~11のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項13】
前立腺肥大が要因になっていない頻尿、又は女性の頻尿の予防又は改善に使用される、請求項9~12のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間頻尿の予防又は改善剤、予防又は改善剤の予防又は改善剤、並びに頻尿の予防又は改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
排尿機能障害として、排尿回数が増加した症状を呈する頻尿及び夜間頻尿がある。頻尿は、昼間頻尿とも呼ばれており、朝起きてから就寝までの間に排尿回数が多い症状であり、一般に朝起きてから就寝までの間に頻尿回数が平均8回以上である症状を指す。一方、夜間頻尿は、一般に就寝後から起床までに排尿回数が平均1回以上である症状を指す。頻尿と夜間頻尿は、発症原因が異なっており、両者は必ずしも合併しておらず、夜間頻尿の患者の中には、昼間は正常である人も多い。
【0003】
頻尿の原因は多様であり、前立腺肥大、過活動膀胱、残尿、多尿、尿路感染、膀胱炎、前立腺腫瘍、膀胱癌、心因性等がある。頻尿には、頻繁な排尿による煩わしさやストレスを伴い、QOL(Quality of life)を低下させるため、従来、頻尿の改善を目的とした医薬品や食品が種々開発されている。例えば、特許文献1には、β3-アドレナリン受容体刺激作用薬を頻尿及び尿失禁の予防・治療剤として使用できることが記載されている。また、特許文献2には、Na+/H+交換輸送体阻害活性を有する置換グアニジン化合物又はその塩を頻尿及び尿失禁の予防・治療剤として使用できることが記載されている。
【0004】
また、夜間頻尿は、夜間多尿、膀胱容量の低下、睡眠障害等の複合的な原因によって生じることが知られている。夜間頻尿は、睡眠中の尿意により夜間覚醒を引き起こし、睡眠障害と密接に関連してQOLを著しく低下させる。従来、夜間頻尿の改善を目的とした医薬品や食品が種々開発されている。例えば、特許文献3には、特定のピリジル 非芳香族含窒素へテロ環-1-カルボキシラート化合物又はその塩を夜間頻尿の予防又は治療剤として使用できることが記載されている。また、特許文献4には、ロズマリン酸又はその塩を夜間頻尿の予防又は改善剤として使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-1189685号公報
【特許文献2】国際公開第2004/4701号
【特許文献3】特開2013-147430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、頻尿又は夜間頻尿を改善できる成分について開発されているが、効果が不十分であったり、食品に適用できず日常的な摂取ができなかったりすることがあり、頻尿又は夜間頻尿を予防又は改善できる新たな成分の開発が切望されている。また、夜間頻尿の原因の一つになっている中途覚醒を予防又は改善できる新たな成分の開発も切望されている。
【0007】
そこで、本発明の課題の一つは、夜間頻尿の予防又は改善剤を提供することである。また、本発明の別の課題は、中途覚醒の予防又は改善剤を提供することである。また、本発明の更に別の課題は、頻尿の予防又は改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、α-マンゴスチンは、睡眠障害の改善作用、膀胱容量の改善作用、及び夜間多尿の改善作用を複合的に発揮でき、夜間頻尿の予防又は改善剤、中途覚醒の予防又は改善剤、並びに頻尿の予防又は改善剤の有効成分として使用できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、夜間頻尿の予防又は改善用途に関し、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1-1. α-マンゴスチンを含有する、夜間頻尿の予防又は改善剤。
項1-2. α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、項1-1に記載の予防又は改善剤。
項1-3. 睡眠障害、膀胱容量の低下、及び夜間多尿よりなる群から選択される少なくとも1種が要因となって生じている夜間頻尿の予防又は改善に使用される、項1-1又は1-2に記載の予防又は改善剤。
項1-4. 前立腺肥大が要因になっていない夜間頻尿、又は女性の夜間頻尿の予防又は改善に使用される、項1-1~1-3のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項1-5. 夜間頻尿の予防又は改善剤の製造のためのα-マンゴスチンの使用。
項1-6. 夜間頻尿の予防又は改善が求められる者に、α-マンゴスチンを投与又は摂取させる、夜間頻尿の予防又は改善方法。
項1-7. 夜間頻尿の予防又は改善のための処理に使用される、α-マンゴスチン。
【0010】
また、本発明は、中途覚醒の予防又は改善用途に関し、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項2-1. α-マンゴスチンを含有する、中途覚醒の予防又は改善剤。
項2-2. α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、項2-1に記載の予防又は改善剤。
項2-3. 夜間頻尿の症状を有する者の中途覚醒の予防又は改善に使用される、項2-1又は2-2に記載の予防又は改善剤。
項2-4. 前立腺肥大が要因になっていない夜間頻尿の症状を有する者、又は女性の中途覚醒の予防又は改善に使用される、項2-1~2-3のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項2-5. 中途覚醒の予防又は改善剤の製造のためのα-マンゴスチンの使用。
項2-6. 中途覚醒の予防又は改善が求められる者に、α-マンゴスチンを投与又は摂取させる、中途覚醒の予防又は改善方法。
項2-7. 中途覚醒の予防又は改善のための処理に使用される、α-マンゴスチン。
【0011】
更に、本発明は、頻尿の予防又は改善用途に関し、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項3-1. α-マンゴスチンを含有する、頻尿の予防又は改善剤。
項3-2. α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、項3-1に記載の予防又は改善剤。
項3-3. 膀胱容量の低下が要因となって生じている頻尿の予防又は改善に使用される、項3-1又は3-2に記載の予防又は改善剤。
項3-4. 頻尿及び夜間頻尿の双方の症状を有する者に対して使用される、項3-1~3-3のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項3-5. 前立腺肥大が要因になっていない頻尿、又は女性の頻尿の予防又は改善に使用される、項3-1~3-4のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項3-6. 頻尿の予防又は改善剤の製造のためのα-マンゴスチンの使用。
項3-7. 頻尿の予防又は改善が求められる者に、α-マンゴスチンを投与又は摂取させる、頻尿の予防又は改善方法。
項3-8. 頻尿の予防又は改善のための処理に使用される、α-マンゴスチン。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、α-マンゴスチンを使用することにより、睡眠障害の改善作用、膀胱容量の改善作用、及び夜間多尿の改善作用を複合的に発揮させることができるので、夜間頻尿、中途覚醒、又は頻尿を効果的に予防又は改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】過活動膀胱モデルを用いてα-マンゴスチンによる膀胱容量の改善効果を検証した結果を示す図である。
図2】酢酸誘発膀胱炎モデルを用いてα-マンゴスチンによる夜間頻尿の改善効果を検証した結果を示す図である。
図3】夜間頻尿を訴える被験者にα-マンゴスチンを摂取させ、摂取前後で、中途覚醒の回数、夜間排尿の回数、ピッツバーグ睡眠質問票の総合得点(PSQIG)、N-QOLの総合スコア、及びN-QOLのスコア(睡眠/活力に関する質問に対する合計スコア、悩み/心配に関する質問に対する合計スコア、及び排尿の煩わしさに関する質問に対するスコア)の平均値を求めた結果を示す図である。
図4】夜間頻尿を訴える被験者を「睡眠障害なし群」と「睡眠障害あり群」に群分けし、α-マンゴスチンを摂取させ、摂取前後で、就寝中の排尿回数、及びN-QOLのスコア(悩み/心配に関する質問に対する合計スコア、及び排尿の煩わしさに関する質問に対するスコア)の平均値を求めた結果を示す図である。
図5】夜間頻尿を訴える被験者を男女に群分けし、α-マンゴスチンを摂取させ、摂取前後で、就寝中の排尿回数、及びN-QOLのスコア(悩み/心配に関する質問に対する合計スコア、及び排尿の煩わしさに関する質問に対するスコア)の平均値を求めた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.定義
本明細書において、「夜間頻尿」とは、就寝後から起床までに排尿回数が平均1回以上であり、就寝中に排尿のために起きなければならない症状を指す。
【0015】
本明細書において、「尿意ストレス」とは、尿意による心配(不安)、煩わしさ、緊張、苦痛、疲労感、倦怠感、苛立ち(イライラ)、憂鬱(気分の落ち込み)等といったストレスのことを指す。
【0016】
本明細書において、「夜間頻尿の予防又は改善剤」とは、夜間頻尿の発症を予防、又は夜間頻尿の症状を軽減、緩和若しくは進行抑制するために使用される剤を指す。
【0017】
本明細書において、「中途覚醒」とは、就寝中に目が覚め、その後眠れなくなる状態を指し、「夜間覚醒」とも呼ばれる。
【0018】
本明細書において、「中途覚醒の予防又は改善剤」とは、中途覚醒を予防、又は中途覚醒の回数を低減するために使用される剤を指す。
【0019】
本明細書において、「頻尿」とは、朝起きてから就寝までの間に頻尿回数が多い(一般的には平均8回以上)である症状を指す。
【0020】
本明細書において、「頻尿の予防又は改善剤」とは、頻尿の発症を予防、又は頻尿の症状を軽減、緩和若しくは進行抑制するために使用される剤を指す。
【0021】
2.夜間頻尿の予防又は改善剤
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、α-マンゴスチンを有効成分として含むことを特徴とする。以下、本発明の夜間頻尿の予防又は改善について詳述する。
【0022】
[α-マンゴスチン]
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、有効成分としてα-マンゴスチンを使用する。α-マンゴスチンは、睡眠障害の改善作用(メラトニン受容体やオレキシン受容体に対する作用等)、膀胱容量の改善作用、及び夜間多尿の改善作用があり、夜間頻尿の原因を複合的に改善することができる。
【0023】
α-マンゴスチンとは、マンゴスチン(Garcinia mangostana)に存在するキサントン誘導体である。本発明で使用されるα-マンゴスチンは、マンゴスチン由来のものであってもよく、また微生物工学的手法又は化学合成により製造されたものであってもよい。本発明で使用されるα-マンゴスチンは、精製品、粗精製品、又は未精製品のいずれであってもよい。
【0024】
また、本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤における有効成分として、α-マンゴスチンを含むマンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を使用してもよい。
【0025】
マンゴスチン抽出物は、マンゴスチンを抽出処理することにより得られるエキスである。
【0026】
マンゴスチン抽出物の製造において、抽出原料としてマンゴスチンの果皮を好適に使用できるが、果皮以外に、果実、果汁、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根皮、根、種子等が含まれていてもよい。前記抽出原料は、生の状態であってもよいが、必要に応じて、粉砕、切断、蒸熱、揉捻、乾燥、焙煎等の前処理に供されていてもよい。
【0027】
また、マンゴスチン抽出物を得るための抽出処理については、植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法であればよく、例えば、溶媒抽出処理、超臨界抽出処理、水蒸気蒸留処理等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは溶媒抽出処理が挙げられる。溶媒抽出処理に使用される抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の炭素数1~4の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;これらの混合液等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは、水、低級アルコール、及びこれらの混合液、より好ましくは水、エタノール、及び含水エタノール、更に好ましくは含水エタノールが挙げられる。含水エタノールにおけるエタノール含有量としては、例えば、10~95容量%、好ましくは50~95容量%、より好ましくは70~90容量%が挙げられる。
【0028】
溶媒抽出処理は、抽出溶媒中にマンゴスチンの抽出対象部位を浸漬又は還流させて行えばよい。抽出処理後に固液分離により固形物を除去することにより、α-マンゴスチンを含むマンゴスチン抽出液が得られる。得られた抽出液は、そのまま液状エキスとして使用してもよいが、必要に応じて、一部又は全ての溶媒を除去して濃縮エキス又は乾燥エキスとして使用してもよい。
【0029】
また、マンゴスチンの加工物は、α-マンゴスチンを含むマンゴスチン部位の加工物であればよく、マンゴスチンの果皮の加工物であることが好適であるが、果皮以外に、果実、果汁、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根皮、根、種子等が含まれている加工物であってもよい。また、マンゴスチンの加工物は、α-マンゴスチンを含むマンゴスチン部位の乾燥物、破砕物等が挙げられる。
【0030】
[剤型・形態]
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよい。
【0031】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、経口摂取又は経口投与される形態であることが好ましいが、経腸投与又は注射投与される形態のものであってもよい。
【0032】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の形態として、具体的には、飲食品及び内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)が挙げられる。
【0033】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤を食品の形態にする場合(即ち、夜間頻尿の予防又は改善剤用の食品として提供する場合)、前記有効成分を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような食品としては、一般の飲食品の他、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、サプリメント等を含む)、病者用食品等の食品等が挙げられる。これらの食品の形態として、特に限定されないが、具体的には、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等のサプリメント;グミ、キャンディー、ゼリー等の嗜好品;茶飲料、栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料;等が挙げられる。これらの食品の中でも、好ましくはサプリメントが挙げられる。
【0034】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤を食品の形態にする場合、食品におけるα-マンゴスチンの含有量は、食品の種類、対象者の体格、年齢、症状等を勘案して、1日当たりの摂取・投与量を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、1~80重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~25重量%が挙げられる。ここで、α-マンゴスチンの含有量は、マンゴスチンの抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のα-マンゴスチン量に換算した値である。
【0035】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤を内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)の製剤形態にする場合、前記有効成分を、そのまま又は他の添加剤等と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような内服用医薬品としては、具体的には、ドリンク剤、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤(ハードカプセル及びソフトカプセルを含む)、トローチ剤、チュアブル剤、エキス剤(軟エキス剤、乾燥エキス剤等を含む)、ゼリー剤、シロップ剤、酒精剤、エリキシル剤、リポソーム製剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤を内服用医薬品の形態にする場合、内服用医薬品におけるα-マンゴスチンの含有量は、内服用医薬品の種類、対象者の体格、年齢、症状等を勘案して、1日当たりの摂取・投与量を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、1~80重量%、好ましくは5~70重量%、より好ましくは10~65重量が挙げられる。ここで、α-マンゴスチンの含有量は、マンゴスチンの抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のα-マンゴスチン量に換算した値である。
【0037】
[用途・用量]
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、夜間頻尿の予防が求められる者又は夜間頻尿の症状を有する者に対して使用される。本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、就寝中の頻尿回数を低減することにより、中途覚醒を低減して睡眠の質を高めることも可能になる。また、本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、就寝中の頻尿回数を低減することにより、就寝中に排尿のために起きることに対する心理的負担(悩み、心配、煩わしさ等)を軽減したり、活力を向上させたりすることもできる。
【0038】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、睡眠障害の改善作用、膀胱容量の改善作用、及び夜間多尿の改善作用があるので、睡眠障害、膀胱容量の低下、及び夜間多尿の中の1つ以上(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ)が要因になって生じている夜間頻尿に対して優れた改善効果を奏することができ、例えば、前立腺肥大が原因ではない夜間頻尿や女性の夜間頻尿に対しても優れた改善効果を奏することができる。
【0039】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の一態様では、例えば、加齢(例えば、40歳以上)に起因する睡眠障害;、尿意に起因する睡眠障害;体内時計の変調に起因する睡眠・覚醒リズム障害;高血圧や心臓病(胸苦しさ)等の身体の病気、うつ病などの心の病気等の病気に起因する睡眠障害;降圧剤・甲状腺製剤・抗がん剤等の治療薬の投与、カフェイン等の刺激物の摂取等、薬物や刺激物の投与や摂取に起因する睡眠障害;交替制勤務や時差等による体内リズムの乱れに起因する睡眠障害;騒音や光等の環境が原因の睡眠障害等の睡眠障害が原因となっている夜間頻尿を改善することができる。より夜間頻尿を効果的に改善するという観点から、本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の一態様では、好ましくは加齢、尿意、身体の病気又は心の病気に起因する睡眠障害が原因となっている夜間頻尿の改善、より好ましくは加齢又は尿意に起因する睡眠障害が原因となっている夜間頻尿の改善、更に好ましくは尿意に起因する睡眠障害が原因となっている夜間頻尿の改善に使用される。
【0040】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、夜間の尿意による心配(不安)、煩わしさ、緊張、苦痛、疲労感、倦怠感、苛立ち(イライラ)、憂鬱(気分の落ち込み)等を改善できるので、尿意ストレスの軽減又は改善が可能になる。
【0041】
特に、本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、睡眠障害を有している者の夜間頻尿に対して、短期間の摂取・投与で優れた改善効果を奏することもできので、本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、睡眠障害を有している者の夜間頻尿の予防又は改善用途として好適に使用できる。ここで、「睡眠障害を有している者」とは、ピッツバーグ睡眠質問票の総合得点(PSQIG)が6.5未満である者を指す。
【0042】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の一態様では、例えば、夜間頻尿の予防又は改善が求められる者の中でも、頻尿や尿意切迫感等の尿トラブルが気になる者、尿トラブルが気になって外出に不安を抱えている者、老化による尿トラブルが気になる者、加齢(例えば40歳以上)に伴う尿トラブルが気になる者等に好ましく適用することができる。また、本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、夜間頻尿の予防又は改善が求められる者の中でも、病院等での治療を要するほどではないものの尿意による心配(不安)、煩わしさ等に対してストレスを感じている健常者等にも好ましく適用することができる。
【0043】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の適用対象者は、ヒトを含む哺乳動物であればよいが、好ましくはヒトが挙げられる。
【0044】
本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の摂取・投与量としては、例えば、1日当たり、α-マンゴスチンが1~2000mg程度、好ましくは1~500mg程度が挙げられる。ここで、α-マンゴスチンの1日当たりの摂取・投与量は、マンゴスチンの抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のα-マンゴスチン量に換算した値である。本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤は、1日当たり1回、又は1日当たり複数回に分けて摂取又は投与すればよいが、好ましくは、1日当たり1~5回である。
【0045】
3.中途覚醒の予防又は改善剤
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、α-マンゴスチンを有効成分として含むことを特徴とする。以下、本発明の中途覚醒の予防又は改善について詳述する。
【0046】
[α-マンゴスチン]
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、有効成分としてα-マンゴスチンを使用する。前述の通り、α-マンゴスチンは、睡眠障害の改善作用(メラトニン受容体やオレキシン受容体に対する作用等)、膀胱容量の改善作用、及び夜間多尿の改善作用がある。即ち、α-マンゴスチンは、睡眠の質の改善と就寝中の排尿回数の低減を図ることにより、中途覚醒を効果的に予防又は改善することができる。
【0047】
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤で使用されるα-マンゴスチンについては、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。
【0048】
[剤型・形態]
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよい。本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、経口摂取又は経口投与される形態であることが好ましいが、経腸投与又は注射投与される形態のものであってもよい。
【0049】
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤の形態として、具体的には、飲食品及び内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)が挙げられる。本発明の中途覚醒の予防又は改善剤を食品の形態にする場合、食品の種類、食品におけるα-マンゴスチン含有量等については、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。また、本発明の中途覚醒の予防又は改善剤を内服用医薬品の形態にする場合、内服用医薬品の種類、内服用医薬品におけるα-マンゴスチン含有量等については、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。
【0050】
[用途・用量]
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、中途覚醒の予防又は改善が求められる者に対して使用される。本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、中途覚醒を改善することにより、睡眠の質を高めることが可能になる。
【0051】
また、本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、就寝中の排尿回数を低減する作用もあるので、夜間頻尿の症状を有する者の中途覚醒の予防又は改善用途に使用することもできる。また、本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、前立腺肥大が原因ではない夜間頻尿の者の中途覚醒の予防又は改善用途、或は女性の中途覚醒の予防又は改善用途に使用することもできる。
【0052】
更に、本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、睡眠障害を有している者の中途覚醒の予防又は改善用途に使用することもできる。ここで、「睡眠障害を有している者」とは、ピッツバーグ睡眠質問票の総合得点(PSQIG)が6.5未満である者を指す。
【0053】
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤の一態様では、例えば、加齢(例えば、40歳以上)に起因する睡眠障害;、尿意に起因する睡眠障害;体内時計の変調に起因する睡眠・覚醒リズム障害;高血圧や心臓病(胸苦しさ)等の身体の病気、うつ病などの心の病気等の病気に起因する睡眠障害;降圧剤・甲状腺製剤・抗がん剤等の治療薬の投与、カフェイン等の刺激物の摂取等、薬物や刺激物の投与や摂取に起因する睡眠障害;交替制勤務や時差等による体内リズムの乱れに起因する睡眠障害;騒音や光等の環境が原因の睡眠障害等の睡眠障害が原因となっている中途覚醒を改善することができる。より夜間頻尿を効果的に改善するという観点から、本発明の夜間頻尿の予防又は改善剤の一態様では、好ましくは加齢、尿意、身体の病気又は心の病気に起因する睡眠障害が原因となっている中途覚醒の改善、より好ましくは加齢又は尿意に起因する睡眠障害が原因となっている中途覚醒の改善、更に好ましくは尿意に起因する睡眠障害が原因となっている中途覚醒の改善に使用される。
【0054】
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤の一態様では、中途覚醒の予防又は改善が求められる者の中でも、頻尿や尿意切迫感等の尿トラブルが気になる者、尿トラブルが気になって外出に不安を抱えている者、老化による尿トラブルが気になる者、加齢(例えば40歳以上)に伴う尿トラブルが気になる者等に好ましく適用することができる。また、本発明の中途覚醒の予防又は改善剤は、中途覚醒の予防又は改善が求められる者の中でも、病院等での治療を要するほどではないものの尿意による心配(不安)、煩わしさ等に対してストレスを感じている常者等にも好ましく適用することができる。
【0055】
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤の適用対象者は、ヒトを含む哺乳動物であればよいが、好ましくはヒトが挙げられる。
【0056】
本発明の中途覚醒の予防又は改善剤の摂取・投与量については、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。
【0057】
4.頻尿の予防又は改善剤
本発明の頻尿の予防又は改善剤は、α-マンゴスチンを有効成分として含むことを特徴とする。以下、本発明の頻尿の予防又は改善について詳述する。
【0058】
[α-マンゴスチン]
本発明の頻尿の予防又は改善剤は、有効成分としてα-マンゴスチンを使用する。前述の通り、α-マンゴスチンは、膀胱容量の改善作用があり、頻尿を予防又は改善することができる。
【0059】
本発明の頻尿の予防又は改善剤で使用されるα-マンゴスチンについては、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。
【0060】
[剤型・形態]
本発明の頻尿の予防又は改善剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよい。本発明の頻尿の予防又は改善剤は、経口摂取又は経口投与される形態であることが好ましいが、経腸投与又は注射投与される形態のものであってもよい。
【0061】
本発明の頻尿の予防又は改善剤の形態として、具体的には、飲食品及び内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)が挙げられる。本発明の頻尿の予防又は改善剤を食品の形態にする場合、食品の種類、食品におけるα-マンゴスチン含有量等については、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。また、本発明の頻尿の予防又は改善剤を内服用医薬品の形態にする場合、内服用医薬品の種類、内服用医薬品におけるα-マンゴスチン含有量等については、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。
【0062】
[用途・用量]
本発明の頻尿の予防又は改善剤は、頻尿の予防又は改善が求められる者に対して使用される。
【0063】
本発明の頻尿の予防又は改善剤は、膀胱容量の改善作用があるので、膀胱容量の減少が原因で生じる頻尿に対して優れた予防又は治療効果を奏することができる。
【0064】
また、本発明の頻尿の予防又は改善剤は、就寝中の排尿回数を低減する作用もあるので、頻尿及び夜間頻尿の双方の症状を有する者に対して使用することもできる。
【0065】
また、本発明の頻尿の予防又は改善剤は、前立腺肥大が原因ではない頻尿、女性の頻尿、睡眠障害を有している者の頻尿等に対しても、優れた改善効果を奏することができる。ここで、「睡眠障害を有している者」とは、ピッツバーグ睡眠質問票の総合得点(PSQIG)が6.5未満である者を指す。
【0066】
本発明の尿の予防又は改善剤の適用対象者は、ヒトを含む哺乳動物であればよいが、好ましくはヒトが挙げられる。
【0067】
本発明の頻尿の予防又は改善剤の摂取・投与量については、前記「1.夜間頻尿の予防又は改善剤」の場合と同様である。
【実施例0068】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
なお、以下の試験例において使用したマンゴスチン抽出物は、マンゴスチンの果皮を含水エタノールで抽出処理して得られた抽出物(粉末状)であり、乾燥重量換算でα-マンゴスチンが10重量%含まれている。
【0070】
試験例1:メラトニン受容体への結合能の検証
メラトニン受容体は、メラトニンによる刺激により、睡眠を誘導し、夜間頻尿の原因となる睡眠障害を改善することが知られている。そこで、本試験では、α-マンゴスチンによるメラトニン2受容体への結合能を評価した。
【0071】
先ず、96ウェルプレートの各ウェルに、DMEM培地(10% FBS(ウシ胎児血清)含有)を用いて、ヒトメラトニン2受容体を発現させたHEK293細胞(ヒト胎児の腎由来細胞)(ATCCより譲渡)を8×103cells/mlとなるように播種して、5% CO2、37℃で1日間培養した。次いで、ウェル中の培養上清を除去して、表1に示す検体及び0.05nMの放射線標識メラトニン受容体アゴニスト([125I]2-iodomelatonin)を含むDMEM培地(10% FBS含有)を添加し、5% CO2、37℃で120時間培養した。その後、マイクロプレートシンチレーションカウンターにより、放射線量(ヒトメラトニン2受容体発現細胞に結合した放射線標識メラトニン受容体アゴニスト量)を求めた。また、コントロールとして、検体を添加しないこと以外は、前記と同様の条件で、放射線量を求めた。下記式に従って、α-マンゴスチンのメラトニン2受容体への結合活性を算出した。
【数1】
【0072】
結果を表1に示す。この結果、マンゴスチン抽出物には、メラトニン受容体に対する結合能があることが明らかとなった。後記するように、α-マンゴスチンには中途覚醒を改善する効果が認められていることから、本試験結果から、マンゴスチン抽出物に含まれるα-マンゴスチンが、メラトニン2受容体のアゴニストとして作用し、睡眠を誘導し、夜間頻尿の原因となる睡眠障害を抑制する作用があることが強く示唆される。
【0073】
【表1】
【0074】
試験例2:オレキシン受容体阻害活性の検証
オレキシンは覚醒を維持する脳内物質であり、オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒に関わるシステムを抑制することにより、睡眠を促進し、夜間頻尿の原因となる睡眠障害を改善することが知られている。そこで、本試験では、α-マンゴスチンによるオレキシン受容体阻害活性を評価した。
【0075】
先ず、96ウェルプレートの各ウェルに、DMEM培地(10% FBS含有)を用いて、ヒトオレキシン1受容体を発現させたHEK293細胞又はヒトオレキシン2受容体を発現するHEK293細胞を3×104cells/mlとなるように播種して、5% CO2、37℃で1日間培養した。次いで、ウェル中の培養上清を除去して、表2に示す検体及びヒトオレキシン受容体アゴニスト(ヒトオレキシン1受容体を発現するHEK293細胞の場合は3nMのオレキシン-A、ヒトオレキシン2受容体を発現するHEK293細胞の場合は10nMのオレキシン-B)を含むDMEM培地(10% FBS含有)を添加し、5% CO2、37℃で1時間培養した。その後、細胞内カルシウム測定キットを使用して、細胞内カルシウム濃度を求めた。また、コントロールとして、検体を添加しないこと以外は、前記と同様の条件で、細胞内カルシウム濃度を求めた。下記式に従って、オレキシン受容体阻害活性を算出した。なお、オレキシン受容体は、アゴニストの刺激を受けて活性化すると、フォスフォリパーゼCの活性化及びフォスファチジルイノシトールの加水分解を引き起こし、細胞内のカルシウム濃度が増加することが知られているので、本試験で測定された細胞内カルシウム濃度が低い程、オレキシン受容体阻害活性が高いといえる。
【数2】
【0076】
結果を表2に示す。この結果、α-マンゴスチン及びマンゴスチン抽出物は、オレキシン受容体阻害活性があり、睡眠を促進し、夜間頻尿の原因である睡眠障害を改善する作用を有していることが確認された。
【0077】
【表2】
【0078】
試験例3:過活動膀胱モデルにおける膀胱容量の改善効果の検証
過活動膀胱モデルを用いてα-マンゴスチンによる膀胱容量の改善効果を評価した。
【0079】
先ず、ラット(7週齢、雌、SD)に、麻酔下で開腹し、両側総腸骨静脈および両側子宮静脈を結紮し、膀胱を虚血状態にする処理を行った。この状態で14日間飼育することにより、膀胱が過活動の状態になった過活動膀胱モデルラットを作製した。膀胱虚血処置から14日後から、α-マンゴスチンを160mg/ml含む検体2mlを1日1回の頻度で経口投与し、通常の条件で14日間飼育した。次いで、ラットに尿道から膀胱にカテーテルを挿入し、膀胱内に生理食塩水を3ml/hで持続的に注入しながら、連続膀胱内圧測定を行い、膀胱収縮間隔(排尿間隔)を求めた。その後、排尿後の残尿量を測定し、残尿量と膀胱収縮間隔から膀胱容量を求めた。また、コントロール群として、検体の代わりに生理食塩水を経口投与して、前記と同条件で膀胱容量を求めた。更に、無処置群として、膀胱虚血処理及び検体の投与を行うことなく、通常の条件で前記と同日数飼育したラットについても、膀胱容量を求めた。なお、本試験はn=8で実施した。
【0080】
結果を図1に示す。この結果から、α-マンゴスチンには、膀胱容量を改善する作用があり、夜間頻尿や頻尿を改善できることが確認された。
【0081】
試験例4:酢酸誘発膀胱炎モデルにおける夜間多尿の改善効果の検証
酢酸誘発膀胱炎モデルを用いてα-マンゴスチンによる夜間多尿の改善効果を評価した。
【0082】
先ず、ラット(7週齢、雄、SD)の排尿間隔を測定した。次いで、ラット(7週齢、雄、SD)の膀胱内に0.3重量%酢酸1.6mlを注入して、1日間飼育することにより、膀胱炎を誘発させた。酢酸の注入から1日後に、α-マンゴスチンを160mg/ml含む検体2mlを経口投与した。検体を投与してから30分経過後で最初に排尿した時点から次に排尿した時点までの排尿間隔を測定した。また、コントロール群として、検体の代わりに生理食塩水を経口投与して、前記と同条件で尿間隔を測定した。なお、本試験はn=6で実施した。また、本試験では、蛍光灯照射条件での12時間の明期と、蛍光灯非照射条件での12時間の暗期とを繰り返す環境下で馴化させたラットを使用し、検体の投与及び排尿間隔の測定は明期(即ち、ラットの睡眠期)に行った。
【0083】
結果を図2に示す。この結果から、α-マンゴスチンには、膀胱炎モデルラットにおける明期(即ち、睡眠期)の排尿間隔を長くする作用があり、夜間多尿を改善できることが確認された。
【0084】
試験例5:ヒトにおける夜間頻尿及び中途覚醒の改善効果の検証
夜間頻尿を訴える被験者10名(男性4名、女性6名)に、表3に示す組成の内容物を含むカプセル剤3粒(α-マンゴスチン量として400mg)を1日1回の頻度で4週間継続して摂取させた。カプセル剤の摂取開始日の前日、摂取から2週間後、及び摂取から4週間後の時点で、過去1週間の就寝中の中途覚醒の合計回数及び就寝中の排尿の合計回数をカウントした。また、カプセル剤の摂取開始日の前日、及び摂取から4週間後に、ピッツバーグ睡眠質問票、及び夜間頻尿QOL質問票(N-QOL)に回答させた。なお、本試験の被験者には、体内リズムの乱れが原因となっている睡眠障害を有する人は含まれていない。
【0085】
【表3】
【0086】
中途覚醒の合計回数、就寝中の排尿の合計回数、ピッツバーグ睡眠質問票の総合得点(PSQIG)、N-QOLの総合スコア、及びN-QOLのスコア(睡眠/活力に関する質問に対する合計スコア、悩み/心配に関する質問に対する合計スコア、及び排尿の煩わしさに関する質問に対するスコア)について、被験者の平均値を算出した結果を図3に示す。この結果から、α-マンゴスチンを摂取させることにより、就寝中の排尿及び中途覚醒の回数を減少させることができ、α-マンゴスチンは、ヒトにおいて、夜間頻尿及び中途覚醒を改善できることが確認された。
【0087】
試験例6:ヒトにおける夜間頻尿及び頻尿の改善効果の検証
夜間頻尿を訴える被験者13名(男性6名、女性7名)に対して、ピッツバーグ睡眠質問票に回答させ、ピッツバーグ睡眠質問票の総合得点(PSQIG)が6.5以上である被験者を「睡眠障害なし群」(男性1名、女性6名)、同総合得点が6.5未満である被験者を「睡眠障害あり群」(男性5名、女性1名)に群分けした。なお、本試験の被験者には、体内リズムの乱れが原因となっている睡眠障害を有する人は含まれておらず、睡眠障害あり群は、体内リズムの乱れ以外の原因で睡眠障害がある人の群である。被験者に、表3に示す組成の内容物を含むカプセル剤3粒(α-マンゴスチン量として400mg)を1日1回の頻度で4週間継続して摂取させた。カプセル剤の摂取開始日の前日、摂取から2週間後、及び摂取から4週間後の時点で、過去1週間の就寝中の排尿の合計回数をカウントした。また、カプセル剤の摂取開始日の前日、及び摂取から4週間後に、夜間頻尿QOL質問票(N-QOL)に回答させた。
【0088】
各群において、就寝中の排尿の合計回数、及びN-QOLのスコア(悩み/心配に関する質問に対する合計スコア、及び排尿の煩わしさに関する質問に対するスコア)の平均値を求めた。結果を図4に示す。図4に示されているように、睡眠障害あり群の方が、睡眠障害なし群よりも、就寝中の頻尿回数が低下しており、α-マンゴスチンによる夜間頻尿の改善は、睡眠障害がある者に対して効果的に認められることが分かった。
【0089】
試験例7:ヒトにおける夜間頻尿及び頻尿の改善効果の検証
夜間頻尿を訴える被験者13名(男性6名、女性7名)に、表3に示す組成の内容物を含むカプセル剤3粒(α-マンゴスチン量として400mg)を1日1回の頻度で4週間継続して摂取させた。なお、被験者には、前立腺肥大が認められる者は含まれていない。カプセル剤の摂取開始日の前日、摂取から2週間後、及び摂取から4週間後の時点で、過去1週間の就寝中の排尿の合計回数をカウントした。また、カプセル剤の摂取開始日の前日、及び摂取から4週間後に、夜間頻尿QOL質問票(N-QOL)に回答させた。
【0090】
被験者を男性と女性に群分けし、各群について、就寝中の排尿の合計回数、及びN-QOLのスコア(悩み/心配に関する質問に対する合計スコア、及び排尿の煩わしさに関する質問に対するスコア)の平均値を求めた。結果を図5に示す。図5に示されているように、α-マンゴスチンの摂取によって就寝中の排尿回数の低下が認められた。また、男性に比べて女性の方が、α-マンゴスチンの摂取開始から短期間で就寝中の排尿回数の低下効果が顕著に認められていた。即ち、この結果は、α-マンゴスチンは女性に対する夜間頻尿改善効果が高いこと、α-マンゴスチンは前立腺肥大が原因となっていない夜間頻尿に対する改善効果を奏すること等を示している。
図1
図2
図3
図4
図5