(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175486
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】食品組成物及び食品組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20221117BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081887
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】野平 友美
(72)【発明者】
【氏名】平石 久実子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢治
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LC03
4B016LE04
4B016LG08
4B016LK09
4B016LK20
4B016LP02
4B016LP05
4B016LP10
4B016LP13
(57)【要約】
【課題】大根おろしを含む食品組成物において、変色をさらに抑制することのできる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】大根をおろす工程と、おろされた大根を脱水する工程と、脱水された大根を、前記大根に由来しない水である非大根由来水と混合し、食品組成物を得る工程と、を備える、食品組成物の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大根をおろす工程と、
前記おろされた大根を脱水する工程と、
前記脱水された大根を、大根に由来しない水である非大根由来水と混合し、食品組成物を得る工程と、
を備える、食品組成物の製造方法。
【請求項2】
前記食品組成物を得る工程は、前記食品組成物をペースト化する工程を備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ペースト化する工程は、前記食品組成物の粘度を5000~50000mpa・sに調整する工程を備える、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記脱水する工程は、脱水前の前記大根の質量に対する脱水後の前記大根の質量の比である質量維持率が60%以下となるように脱水する工程を備える、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記脱水する工程は、圧搾又は遠心分離の方法により、脱水を行う工程を備える、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
更に、増粘多糖類、澱粉及び水不溶性食物繊維からなる群から選択される少なくとも一種を添加する工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
おろされ、大根由来の水が脱水された大根を、大根に由来しない水である非大根由来水と混合し、食品組成物を得る工程、
を備える、食品組成物の製造方法。
【請求項8】
おろされ、大根由来の水が脱水された大根と、
大根に由来しない水である非大根由来水と、
を含み、
粘度が5000~50000mpa・sであり、
可撓性を有する容器に充填されている、
食品組成物。
【請求項9】
おろされた大根を含む食品組成物であって、
50℃で3週間保存前後のハンター白色度の変化量ΔWが、5.0以下である、食品組成物。
【請求項10】
おろされた大根を含む食品組成物であって、
50℃で3週間保存前後のハンターLabの色差ΔLabEが、6.0以下である、食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大根おろしは、大根をおろした食品である。大根おろしを単に長期保存すると、異臭の発生、変色等の問題が生じる。例えば、大根おろしを長期保存すると、「たくあん臭」と呼ばれる異臭が発生し、これによって、大根おろしの、おろしたての風味が損なわれやすい。そのため、大根おろしを製品化するためには、保存性の問題を解決しなければならない。
【0003】
大根おろしの変色防止に関する技術が、特許文献1(特開平7-231749号公報)に記載されている。特許文献1には、大根おろしを固形分と水分とに分離する一方、所定量の水分を排除し、残余の水分に食品用乳化剤を添加し前記固形分と混合した後、所定条件で殺菌を行い、常温で所定時間放置した後、再び所定条件で殺菌を行うことが記載されている。
別の技術として、特許文献2(特開2002-142705号公報)には、おろしに加工可能な可食性植物を、必要により細断処理して、加熱処理した後、磨砕処理することを特徴とするおろしの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-231749号公報
【特許文献2】特開2002-142705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いた場合であっても、水分を一定以上保持させた大根おろしの製造方法に係るもので、異臭の発生、変色(黄変)を完全に抑えることは難しい。また、特許文献2に記載の技術は、加熱処理によって、風味や色調の劣化の原因となる酵素の失活をねらったものであるが、当該加熱処理のみでは、変色(黄変)を完全に抑えることは難しい。すなわち、異臭又は変色の抑制に関して、更なる改善の余地があった。
そこで、本発明は、大根おろしを含む食品組成物において、異臭の発生又は変色を抑制することのできる新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、おろした大根を脱水し、大根由来の水以外の水と混合することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下の技術を提供する。
[1]大根をおろす工程と、前記おろされた大根を脱水する工程と、前記脱水された大根を、大根に由来しない水である非大根由来水と混合し、食品組成物を得る工程と、を備える、食品組成物の製造方法。
[2]前記食品組成物を得る工程は、前記食品組成物をペースト化する工程を備える、[1]に記載の製造方法。
[3]前記ペースト化する工程は、前記食品組成物の粘度を5000~50000mpa・sに調整する工程を備える、[2]に記載の製造方法。
[4]前記脱水する工程は、脱水前の前記大根の質量に対する脱水後の前記大根の質量の比である質量維持率が60%以下となるように脱水する工程を備える、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記脱水する工程は、圧搾又は遠心分離の方法により、脱水を行う工程を備える、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]更に、増粘多糖類、澱粉及び水不溶性食物繊維からなる群から選択される少なくとも一種を添加する工程を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]おろされ、大根由来の水が脱水された大根を、大根に由来しない水である非大根由来水と混合し、食品組成物を得る工程、を備える、食品組成物の製造方法。
[8]おろされ、大根由来の水が脱水された大根と、大根に由来しない水である非大根由来水と、を含み、粘度が5000~50000mpa・sであり、可撓性を有する容器に充填されている、食品組成物。
[9]おろされた大根を含む食品組成物であって、50℃で3週間保存前後のハンター白色度の変化量ΔWが、5.0以下である、食品組成物。
[10]おろされた大根を含む食品組成物であって、50℃で3週間保存前後のハンターLabの色差ΔLabEが、6.0以下である、食品組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大根おろしを含む食品組成物において、異臭又は変色を抑制することのできる新たな技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例及び比較例に係る基材A~Dの調製方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(食品組成物)
本実施形態に係る食品組成物は、おろされ、大根由来の水が脱水された大根と、大根に由来しない水(以下、非大根由来水)とを含んでいる。すなわち、食品組成物は、大根をおろした後、脱水し、脱水後に非大根由来水によって大根を再水和することによって得られたものである。なお、「おろす」とは、大根を粗砕又は磨砕することを言う。粗砕には、カッターミル等で粒状に「荒おろし」する場合が含まれ、磨砕には、通常のおろし器で大根おろしにおろす場合が含まれる。
【0011】
上記のような構成を採用することにより、食品組成物の異臭の発生、変色が抑制される。その理由は、脱水時に、大根そのものに含まれている異臭、変色の原因となる物質が、水と共に除去されるからであると考えられる。脱水後の大根には、再度水が加えられるが、非大根由来水が用いられるので、非大根由来水から変色の原因となる物質が戻されることはない。従って、長期保存時における異臭の発生又は変色が抑制されるものと考えられる。尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、食品組成物に、脱水を経ても大根に残っていた水や、一旦除去した大根由来の水が、一部含まれていてもよい。すなわち、再水和の際に使用される水の少なくとも一部が非大根由来水であればよい。少なくとも一部が非大根由来水であれば、最終的に食品組成物に含まれる異臭、変色の原因となる物質を減らすことができる。
【0012】
食品組成物に使用される非大根由来水としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、水道水、イオン交換水、蒸留水等を由来とする水が用いられる。
【0013】
食品組成物中における大根の量は、生の大根換算で、例えば30~100質量%、より好ましくは40~90質量%、更に好ましくは50~85質量%、最も好ましくは60~80質量%である。前記の大根の固形物換算量は、後述の方法によって、算出することができる。
【0014】
食品組成物には、上述の成分以外にも、必要に応じて飲食可能な他の成分が含まれていてもよい。
【0015】
例えば、他の成分として、異臭発生抑制物質、変色抑制物質、保存性付与物質、粘度付与物質、及び離水抑制物質からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0016】
異臭発生抑制物質としては、例えば、柑橘類果汁、及びβ-サイクロデキストリンなどのサイクロデキストリン等を挙げることができる。
柑橘類果汁を加えると、たくわん臭をマスキングすることができる。柑橘類果汁としては、例えば、スダチ果汁が好ましく用いられる。柑橘類果汁の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、ストレート換算で、0.1~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%である。
サイクロデキストリンには、異臭発生抑制効果がある。サイクロデキストリンの含有量は、例えば、0.05~3質量%、好ましくは0.1~5質量%である。尚、サイクロデキストリンは、変色抑制物質としても機能する。
【0017】
保存性付与物質としては、例えば、静菌剤及びpH調整剤を使用することができる。
静菌剤としては、静菌作用を有するものであれば特に限定されない。例えば、カラシ抽出物を含む組成物等を挙げることができる。例えば、静菌剤として、菜種油、カラシ抽出物、酸化防止剤、及びエタノールを混合したものを用いることができる。静菌剤の含有量は、例えば0.5~7質量%、好ましくは1~5質量%である。
pH調整剤としては、例えば、食用酸又はその塩等を挙げることができる。食用酸又はその塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸及び酢酸ナトリウム等を挙げることができる。pH調整剤を用いて食品組成物のpHを制御することにより、保存性を向上させることができる。食品組成物のpHは、例えば3.0~4.5、好ましくは3.4~4.2である。
【0018】
粘性付与物質、又は離水抑制物質としては、例えば、増粘多糖類、澱粉、及び水不溶性食物繊維などを挙げることができる。
増粘多糖類は、特に限定されるものではないが、キサンタンガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及びジェランガム等を挙げることができ、好ましくはキサンタンガムである。増粘多糖類の含有量は、例えば0.01~3質量%、好ましくは0.05~1.0質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
澱粉としては、特に限定されるものではなく、未加工澱粉及び加工澱粉のいずれも使用することができる。
未加工澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、及び澱粉を含む穀粉などが挙げられる。未加工澱粉として、α化澱粉が用いられてもよい。
加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、及び澱粉グルコース酸ナトリウムなどが挙げられる。加工澱粉の原料となる澱粉としては、例えば、上述の未加工澱粉と同様のものを用いることができる。
離水抑制物質として機能する澱粉は、特に限定されるものではないが、例えば、α化とうもろこしでん粉等の粉末α化澱粉や、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉などが好適に用いられる。澱粉(加工澱粉も含む)の含有量は、例えば1~15質量%、好ましくは3~10質量%である。
水不溶性食物繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、粉末セルロースを挙げることができる。水不溶性食物繊維の含有量は、例えば0.1~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%である。
【0019】
食品組成物中の水分含量は、特に限定されるものではないが、例えば、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70~95質量%、更に好ましくは85~95質量%である。
【0020】
本実施形態に係る食品組成物は、好ましくは、ペースト状である。好ましくは、食品組成物は、可撓性を有するチューブ状等の容器に充填されて提供される。使用時(喫食時)には、チューブ状の容器を絞ることによって、ペースト状の食品組成物が所望の量だけ取り出される。
【0021】
食品組成物の粘度は、例えば5000~50000mpa・s、好ましくは7000~40000mpa・s、より好ましくは9000~30000mpa・sである。
このような大きさの粘度を有していることにより、可撓性を有するチューブ状容器等により提供される際に、扱いやすい物性が得られる。
本発明における食品組成物の粘度は、25℃、B型粘度計、ローターNo.6を用いて、20rpm、10秒間の条件で測定した場合の値である。
食品組成物の粘度は、例えば、増粘多糖類等の増粘剤の添加等により調整することができる。
【0022】
本実施形態によれば、上記の通り、異臭の発生及び変色が抑制されるので、常温保存も可能である。尚、本発明において、常温保存可能であるとは、容器を開封するまで常温で保存が可能であることを意味する。開封後は冷蔵又は冷凍保存されるものであっても、開封前までは常温で保存可能なものについては、常温保存が可能であるといえる。但し、開封前に冷蔵又は冷凍保存されるものであってもよい。
【0023】
好ましい一態様において、食品組成物は、白色である。具体的には、食品組成物は、白色及び/又は透明の材料だけを含んでいる。言い換えれば、白色又は透明ではない材料を含まない。白色の食品組成物は、変色が目立ちやすい。本実施形態によれば、変色が防止されるので、白色の食品組成物である場合に特に大きな効果が得られる。
好ましい一態様において、食品組成物を50℃で3週間保存した場合、保存前後のハンター白色度の変化量ΔWが、5.0以下である。ハンター白色度の変化量は、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.5以下である。
好ましい一態様において、食品組成物を50℃で3週間保存した場合、保存前後のΔLabEが、6.0以下である。当該ΔLabEは、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
【0024】
(食品組成物の製造方法)
続いて、本実施形態に係る食品組成物の製造方法について説明する。本実施形態に係る食品組成物は、大根をおろす工程(ステップS1)と、おろされた大根を脱水する工程(ステップS2)と、脱水された大根を、非大根由来水と混合し、食品組成物を得る工程(ステップS3)とを含んでいる。
以下に、各工程について、詳細に説明する。
【0025】
ステップS1:大根のおろし及び加熱処理
まず、生の大根をおろす。好ましくは、生の大根を用意し、皮を剥ぎ、水洗する。必要に応じて、生の大根を細断する。そして、水洗した生の大根を、すりおろす(磨砕する)。これにより、おろした大根が得られる。粗砕する場合には、必要に応じて、前処理した生の大根を、カッターミル等で粒状に「荒おろし」すればよい。
【0026】
なお、大根をおろす前に、加熱処理が行われてもよい。加熱処理によって、風味や色調の劣化の原因となる酵素を失活させることができる。これにより、保存性をより向上させることができる。
加熱処理としては、例えば、細断した生の大根を、熱水中に投入し、加熱する。熱水の温度は、例えば70~100℃、好ましくは80~95℃である。加熱時間は、15秒~5分、好ましくは30秒~3分である。好ましくは、大根の中心品温が75℃に到達するように、加熱処理を行う。
【0027】
ステップS2:脱水
続いて、おろした大根を、脱水する。脱水により除去された水分は、そのまま廃棄され、大根に戻されないことが好ましい。
好ましくは、脱水後の大根の質量の、脱水前の大根の質量(すなわち、生の大根)に対する比(以下、質量維持率という)が60%以下となるように、大根由来の水を除去する。質量維持率は、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下、最も好ましくは35%以下である。なお、ステップS1において加熱処理を行う場合も、加熱処理の前後で、大根の質量、すなわち、水分量は、ほぼ変わらない。したがって、ステップS1における加熱処理の有無にかかわらず、脱水前後の質量により、前記の質量維持率が達成されればよい。
【0028】
脱水の具体的方法は、おろされた大根から水分を除去することができる方法であればよく、特に限定されない。例えば、圧搾又は遠心分離の方法により、脱水を行うことができる。
好ましくは、おろされた大根に物理的(機械的に)圧力を加えることにより、脱水を行う。
好ましくは、おろされた大根を圧搾することにより、脱水が行われる。圧搾には、例えば、ローラープレスやゲージプレス等を用いることができる。
【0029】
ステップS3:非大根由来水との混合
続いて、脱水した大根を、食品組成物が所望の水分量になるように非大根由来水と混合する。また、必要に応じてその他の成分と混合する。これにより、本実施形態に係る食品組成物が得られる。
好ましい一態様では、本ステップにおいて、その他の成分として、増粘多糖類等の増粘性物質が添加され、食品組成物が所定の粘度になるように調整される。より好ましくは、ペースト状になるように調整される。
得られた食品組成物は、容器に密封される。その後、必要に応じて加熱殺菌処理が行われ、消費者に提供される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、おろした大根を脱水した後に、非大根由来水を加えることにより、水分量が戻される。これにより、臭気及び変色が抑制され、保存性に優れた食品組成物が得られる。
【実施例0031】
以下に、本発明をより具体的に説明するため、実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されて解釈されるべきものではない。
【0032】
大根おろし(基材)の調製
図1は、実施例及び比較例において使用した大根おろし(基材)の調製方法を示すフローチャートである。
【0033】
(基材Aの調製)
まず、生の大根を水洗し、剥皮した。次いで、大根を、フードカッターで10mm角の大きさに細断した。
続いて、加熱処理を行った。具体的には、細断した大根片を、90℃の熱水中に投入し、1~2分間保持した。この際、中心品温は75℃を達成した。
続いて、磨砕処理を実施した。具体的には、大根片を20℃の水に浸漬して水冷した。水冷後、大根片をコミトロールに投入し、磨砕した。すなわち、大根片をすりおろした。
続いて、すりおろした大根を、ローラ式の絞り機を用いて圧搾により脱水した。この際、脱水処理の条件を変更して、質量維持率が異なる基材A-1(質量維持率が約30%)、A-2(質量維持率が約50%)、及びA-3(質量維持率が約60%)を得た。
【0034】
(基材Bの調製)
基材Aの調製と同様に、磨砕処理までを実施した。磨砕処理後、脱水を行う前の大根おろしを、基材Bとした。すなわち、基材Bは、質量維持率が100%の、未脱水の大根おろしである。
(基材Cの調製)
加熱処理を行わなかった以外は、基材A-1の調製と同様にして、脱水して調製した大根おろしを、基材Cとした。
(基材Dの調製)
加熱処理及び脱水処理を行わなかった以外は、基材A-1の調製と同様にして調製した大根おろしを、基材Dとした。
【0035】
食品組成物(大根おろしペースト)の調製
表1-1及び表1-2に示される組成で、基材A~基材Dを、水(水道水であり、非大根由来水である)及び他の食品原料と混合し、ペースト状の食品組成物を得た。得られた食品組成物を、透明樹脂性であり、可撓性を有するチューブに充填し、密封した。そして、加熱殺菌処理を行い、実施例1~7、比較例1~2に係る食品組成物を得た。
【0036】
なお、表1-1及び表1-2に記載の数値の単位は、全量を100質量部とした場合の質量部である。
表1において、「β-CD」とは、β-サイクロデキストリンを指す。
「生の大根換算の配合量」は次のように計算した。すなわち、実施例1では、質量維持率30%の基材A-1が21質量%含まれていることから、生の大根換算では、大根が70質量%(=21%/0.3)で含まれていることになる。同様に、生の大根換算の配合量は、実施例5では、30質量%(=9%/0.3)、実施例6では、100質量%(=30%/0.3)となる。
【0037】
評価
得られた食品組成物の水分量、粘度及びpHを測定したところ、表1-1及び1-2に記載した通りであった。
【0038】
また、食品組成物を、50℃で3週間(常温一年相当の加速試験である)保存した。保存後の臭気、色調、及び離水を評価した。各項目の評価基準は以下のとおりとした。
(臭気)
〇:大根おろし本来のにおいで、特有の異臭なし(実施例1相当)
〇△:わずかな臭気の変化を認める
×:大根特有の「たくあん臭・ムレ臭」の異臭あり
××:強く大根特有の「たくあん臭・ムレ臭」の異臭あり(比較例1相当)
(色調)
〇:製造直後と同様の鮮やかな白色で、褐変・黄変なし
〇△:わずかな色調変化を認める
×:褐変・黄変あり
××:大きく褐変・黄変あり
(離水)
〇:離水なし
〇△:わずかに離水の発生を認める
×:離水あり
××:大量に離水あり
【0039】
(考察)
表1-1及び1-2に評価結果を示す。
実施例1~7は、いずれも、比較例1及び2に比べて、常温保存後の品質(臭気及び色調)において優れていた。このことから、脱水された大根おろしを使用することで、常温での保存性が向上することが判った。
実施例1~3の中では、臭気及び色調において実施例1が最も良好であった。この結果から、質量維持率が40%以下になるまで脱水することで、特に良好な品質が得られることが判った。
実施例4に比べると実施例1の方がより良好であった。このことから、加熱処理を実施することによって、臭気及び色調が改善されることが判った。
実施例7は、実施例1と同様に臭気及び色調においては優れていたが、離水性については実施例1の方が優れていた。従って、キサンタンガムを併用することで、離水性を改善できることが判った。
【0040】
【0041】
(色調データ)
更に、実施例1~7、比較例1~2、及び市販品について、色彩色差計(日本電色製SE6000)を使用し、色調データを求めた。具体的には、恒温庫内で、50℃で3週間保管後に、外観数か所のハンターLab(L値、a値、b値)を測定し、それぞれ平均値を求めた。更に、保存前後でのΔLabE値を求めた。
【0042】
また、得られた結果から、ハンター白色度(W)を、下記式1を用いて計算した。
(式1)W=100-[(100-L)2+a2+b2]1/2・・・(1)
更に、保管前後のハンター白色度の変化量ΔWを、下記式を用いて計算した。
(式2)ΔW=製造直後(保管前)のW値-各保管後のW値・・・(2)
【0043】
結果を表2-1~2-2に示す。尚、L値は明度に対応し、L=100のときは白、L=0のときは黒である。L値が大きくなるほど明るくなる傾向にある。a値が正側で増加すると赤味、負側で増加すると緑味が増し、またb値が正側で増加すると黄味、負側で増大すると青味が増していることを意味する。
また、ハンター白色度は、100に近いほど、白色であることを意味する。
【0044】
表2-1及び2-2に示されるように、比較例1よりも実施例1の方が、ΔLabE及びΔWが小さかった。例えば、50℃3週間保管後のΔLabEは、比較例1が6.50であったのに対し、実施例1では4.81であり、変色が大きく改善されていた。同様に、50℃3週間保管後のΔWは、比較例1が5.52であったのに対し、実施例1では3.42であった。
【0045】