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特開2022-175690加工装置、加工装置の電源遮断方法および加工装置の使用準備方法
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  • 特開-加工装置、加工装置の電源遮断方法および加工装置の使用準備方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175690
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】加工装置、加工装置の電源遮断方法および加工装置の使用準備方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20221117BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20221117BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20221117BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20221117BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
B24B41/06 L
B23Q11/00 K
B23Q3/08 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082319
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 修
(72)【発明者】
【氏名】浦山 孝世
(72)【発明者】
【氏名】稲尾 聡孝
(72)【発明者】
【氏名】瀬野尾 崇征
(72)【発明者】
【氏名】田村 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】羽田 舞
【テーマコード(参考)】
3C011
3C016
3C034
5F057
【Fターム(参考)】
3C011DD00
3C016DA01
3C034AA08
3C034BB73
3C034DD20
5F057AA37
5F057BA11
5F057BB02
5F057BB05
5F057CA14
5F057DA08
5F057DA11
5F057FA13
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルのポーラス部材が詰まることを抑制する。
【解決手段】研削装置1の電源を遮断する際、チャックテーブル5の保持面50が保持面カバー110によって覆われて、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部が、水で満たされた状態に維持される。したがって、研削装置1の電源が遮断された後、作業者の長期休暇などのために研削装置1が長期間にわたって使用されない場合でも、チャックテーブル5の保持面50およびポーラス部材51の内部が乾燥することを抑制することが可能となる。これにより、保持面50あるいはポーラス部材51の内部に加工屑(研削屑)が残存していた場合でも、この加工屑が保持面50およびポーラス部材51の内部に固着して、ポーラス部材51が詰まることを抑制することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラス部材の上面の保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構と、を備える加工装置であって、
該ポーラス部材を吸引源に連通させる吸引機構と、
該ポーラス部材に水を供給する水供給機構と、
該保持面の全面を覆うことの可能な面積を有するカバーを該保持面に搬送する搬送機構と、
該加工装置の電源を遮断するための電源遮断部と、
制御部とを備え、
該吸引機構は、該ポーラス部材と該吸引源とを連通する吸引路と、該吸引路に配設された吸引バルブと、を備え、
該吸引バルブは、所定の電圧が付与されることで開き、所定の電圧が付与されていないと閉じる構造を有し、
該制御部は、
該水供給機構によって該ポーラス部材に水を供給することと、該搬送機構によって該カバーを該保持面に搬送して該保持面を該カバーで覆うことと、該カバーが該保持面を覆った後、該電源遮断部によって電源を遮断することと、を実施する、加工装置。
【請求項2】
該制御部は、
該水供給機構によって該ポーラス部材に水を供給して、
該吸引バルブを開くことにより、該ポーラス部材に供給される水よりも少ない量の水を該保持面および該ポーラス部材に吸わせて、該保持面の全面および該ポーラス部材内を水で満たす、
請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該水供給機構は、該ポーラス部材と水供給源とを連通する水連通路と、該水連通路に配設された水バルブと、を備え、
該水バルブは、所定の電圧が付与されることで開き、所定の電圧が付与されていないと閉じる構造を有し、
該制御部は、
該水バルブを開くことにより、該保持面の全面および該ポーラス部材内を水で満たす、
請求項1記載の加工装置。
【請求項4】
該吸引路に配置され、該保持面の吸引力を検知する負圧測定器をさらに備え、
該制御部は、
該負圧測定器によって該吸引路の圧力の測定を開始するとともに、該保持面を覆っている該水を該吸引機構によって吸って、該負圧測定器によって測定される測定値が予め設定されている閾値に達したら、該保持面の全面が該カバーによって覆われていると判断する判断部を備える、
請求項1記載の加工装置。
【請求項5】
被加工物を収容しているカセットが載置されるカセットステージをさらに備え、
該カセットは、該カバーを収容しており、
該制御部は、該カセットに収納されている該カバーを該搬送機構によって該保持面に搬送して、該保持面を覆う、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の加工装置。
【請求項6】
ポーラス部材の上面の保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構と、を備える加工装置の電源遮断方法であって、
該ポーラス部材に水を供給してポーラス部材内と該保持面の全面とを水で満たす工程と、
該保持面の全面を覆うことの可能な面積を有するカバーを該保持面に配置する工程と、
該カバーが該保持面を覆った後、電源を遮断する工程と、
を含む、加工装置の電源遮断方法。
【請求項7】
ポーラス部材の上面の保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構と、を備え、請求項6記載の電源遮断方法によって電源が遮断された加工装置の使用準備方法であって、
該保持面の全面を覆うように該カバーが配置されている状態で、各軸の原点位置の確認を行うイニシャル工程と、
該保持面の全面を覆うように配置されている該カバーの上面を洗浄するカバー洗浄工程と、
該カバーを該保持面から離間するカバー離間工程と、
を含む、加工装置の使用準備方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置、加工装置の電源遮断方法および加工装置の使用準備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハを研削する研削装置では、ポーラス部材から形成されたチャックテーブルの保持面によって保持したウェーハを、研削砥石によって研削している。この研削装置では、年末年始のような長期休暇の際に、水およびエアの供給を遮断するとともに、研削装置の電源を遮断し、研削装置を停止させている。
【0003】
しかし、長期休暇後に研削装置を動かしたときに、チャックテーブルのポーラス部材が目詰まりして、ウェーハを良好に吸引保持することが困難な場合がある。
【0004】
つまり、チャックテーブルの保持面と吸引源とを連通する吸引路には、負圧検知器が配置されており、この負圧検知器によって検知された負圧値が所定の値に達したら、保持面がウェーハを保持したと判断される。そのため、保持面またはポーラス部材内が目詰まりしていると、負圧値が所定の値に達しているのに、保持面がウェーハを吸引保持していない、という状態になる。
【0005】
この状態は、長期休暇前の研削加工中にポーラス部材内に研削屑を含む研削廃液が進入し、長期休暇中に研削屑が沈殿し、研削廃液が乾燥し、ポーラス内に研削屑が固着することによって、ポーラス部材内の隙間が詰まるために生じる、と考えられる。
【0006】
この詰まりを知るために、特許文献1の技術では、ポーラス部材の目詰まりの有無を検査している。
また、特許文献2の技術では、加工屑がポーラス部材内に固着する前に、ポーラス部材を洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-024465号公報
【特許文献2】特開2012-004204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、洗浄することでポーラス部材内の研削屑(加工屑)を完全に除去することは困難である。すなわち、洗浄によって、詰まりが生じるまでの時間を延期することはできるが、詰まりを防止することは難しい。
【0009】
したがって、本発明の目的は、研削装置のように加工屑を発生する加工装置を長期的に停止したことによるポーラス部材の詰まりを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加工装置(本加工装置)は、ポーラス部材の上面の保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構と、を備える加工装置であって、該ポーラス部材を吸引源に連通させる吸引機構と、該ポーラス部材に水を供給する水供給機構と、該保持面の全面を覆うことの可能な面積を有するカバーを該保持面に搬送する搬送機構と、該加工装置の電源を遮断するための電源遮断部と、制御部とを備え、該吸引機構は、該ポーラス部材と該吸引源とを連通する吸引路と、該吸引路に配設された吸引バルブと、を備え、該吸引バルブは、所定の電圧が付与されることで開き、所定の電圧が付与されていないと閉じる構造を有し、該制御部は、該水供給機構によって該ポーラス部材に水を供給することと、該搬送機構によって該カバーを該保持面に搬送して該保持面を該カバーで覆うことと、該カバーが該保持面を覆った後、該電源遮断部によって電源を遮断することと、を実施する。
本加工装置では、該制御部は、該水供給機構によって該ポーラス部材に水を供給して、該吸引バルブを開くことにより、該ポーラス部材に供給される水よりも少ない量の水を該保持面および該ポーラス部材に吸わせて、該保持面の全面および該ポーラス部材内を水で満たしてもよい。
また、本加工装置では、該水供給機構は、該ポーラス部材と水供給源とを連通する水連通路と、該水連通路に配設された水バルブと、を備えてもよく、該水バルブは、所定の電圧が付与されることで開き、所定の電圧が付与されていないと閉じる構造を有していてもよく、該制御部は、該水バルブを開くことにより、該保持面の全面および該ポーラス部材内を水で満たしてもよい。
本加工装置は、該吸引路に配置され、該保持面の吸引力を検知する負圧測定器をさらに備えてもよく、該制御部は、該負圧測定器によって該吸引路の圧力の測定を開始するとともに、該保持面を覆っている該水を該吸引機構によって吸って、該負圧測定器によって測定される測定値が予め設定されている閾値に達したら、該保持面の全面が該カバーによって覆われていると判断する判断部を備えてもよい。
また、本加工装置は、被加工物を収容しているカセットが載置されるカセットステージをさらに備えてもよく、該カセットは、該カバーを収容していてもよく、該制御部は、該カセットに収納されている該カバーを該搬送機構によって該保持面に搬送して、該保持面を覆ってもよい。
本発明の電源遮断方法(本電源遮断方法)は、ポーラス部材の上面の保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構と、を備える加工装置の電源遮断方法であって、該ポーラス部材に水を供給してポーラス部材内と該保持面の全面とを水で満たす工程と、該保持面の全面を覆うことの可能な面積を有するカバーを該保持面に配置する工程と、該カバーが該保持面を覆った後、電源を遮断する工程と、を含む。
本発明の使用準備方法は、ポーラス部材の上面の保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構と、を備え、本電源遮断方法によって電源が遮断された加工装置の使用準備方法であって、該保持面の全面を覆うように該カバーが配置されている状態で、各軸の原点位置の確認を行うイニシャル工程と、該保持面の全面を覆うように配置されている該カバーの上面を洗浄するカバー洗浄工程と、該カバーを該保持面から離間するカバー離間工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、加工装置の電源を遮断する際、チャックテーブルの保持面がカバーによって覆われて、保持面の全面およびポーラス部材の内部が、水で満たされる。したがって、加工装置の電源が遮断された後、作業者の長期休暇などのために加工装置が長期間にわたって使用されない場合でも、チャックテーブルの保持面およびポーラス部材の内部が乾燥することを抑制することが可能となる。
【0012】
これにより、保持面あるいはポーラス部材の内部に加工屑が残存していた場合でも、この加工屑が乾燥によって保持面およびポーラス部材の内部に固着することを、抑制することができる。したがって、長期休暇後に加工装置の使用を開始する際、たとえば洗浄水を用いて、保持面およびポーラス部材の内部から加工屑を容易に除去することができる。このため、ポーラス部材が加工屑によって詰まること、および、ポーラス部材の詰まりによって生じる被加工物の吸引保持エラーを、良好に抑制することができる。
【0013】
また、本発明では、加工装置の電源が遮断されている際、保持面がカバーによって覆われている。このため、加工装置が長期間にわたって使用されない場合に生じる保持面の汚れを、良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかる加工装置の構成を示す斜視図である。
図2】電源遮断方法における水供給工程を示す説明図である。
図3】電源遮断方法におけるカバー載置工程を示す説明図である。
図4】電源遮断方法におけるカバー載置工程を示す説明図である。
図5】使用準備方法におけるカバー洗浄工程を示す説明図である。
図6】電源遮断方法における他の水供給工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す研削装置1は、加工装置の一例である。研削装置1は、粗研削機構30および仕上げ研削機構31を備え、チャックテーブル5上に保持されたウェーハ100を、粗研削機構30および仕上げ研削機構31により研削する。
【0016】
図1に示すウェーハ100は、被加工物の一例であり、たとえば、円形の半導体ウェーハである。ウェーハ100の表面101には、図示しないデバイスが形成されている。ウェーハ100の表面101は、図1においては下方を向いており、保護テープ105が貼着されることによって保護されている。ウェーハ100の裏面104は、研削処理が施される被加工面となる。
【0017】
研削装置1は、第1の装置ベース10と、第1の装置ベース10の後方(+Y方向側)に配置された第2の装置ベース11とを有している。第1の装置ベース10上は、ウェーハ100の搬出入等が行われる領域である搬出入領域17となっている。第2の装置ベース11上は、加工領域18となっている。この加工領域18では、粗研削機構30および仕上げ研削機構31によって、チャックテーブル5に保持されたウェーハ100が加工される。
【0018】
第1の装置ベース10の正面側(-Y方向側)には、第1のカセットステージ160および第2のカセットステージ162が設けられている。第1のカセットステージ160には、加工前のウェーハ100が収容される第1のカセット161が載置されている。第2のカセットステージ162には、加工後のウェーハ100が収容される第2のカセット163が載置されている。
【0019】
第1のカセット161および第2のカセット163は、内部に複数の棚を備えており、各棚に一枚ずつウェーハ100が収容されている。すなわち、第1のカセット161および第2のカセット163は、複数のウェーハ100を棚状に収容する。
【0020】
第1のカセット161および第2のカセット163の開口(図示せず)は、+Y方向側を向いている。これらの開口の+Y方向側には、ロボット155が配設されている。ロボット155は、ウェーハ100を保持する保持面を備えている。ロボット155は、加工後のウェーハ100を第2のカセット163に搬入(収納)する。また、ロボット155は、第1のカセット161から加工前のウェーハ100を取り出して、仮置き機構152の仮置きテーブル154に載置する。
【0021】
仮置き機構152は、第1のカセット161から取り出されたウェーハ100を仮置きするために用いられ、ロボット155に隣接する位置に設けられている。仮置き機構152は、仮置きテーブル154、および、位置合わせ部材153を有している。位置合わせ部材153は、仮置きテーブル154を囲むように外側に配置される複数の位置合わせピンと、位置合わせピンを仮置きテーブル154の径方向に移動させるスライダとを備えている。位置合わせ部材153では、位置合わせピンが仮置きテーブル154の径方向に中央に向かって移動されることにより、複数の位置合わせピンを結ぶ円が縮径される。これにより、仮置きテーブル154に裏面104を上にして載置されたウェーハ100が、所定の位置に位置合わせ(センタリング)される。
【0022】
仮置き機構152に隣接する位置には、搬入機構170が設けられている。搬入機構170は、仮置き機構152に仮置きされたウェーハ100を、チャックテーブル5に搬入する。搬入機構170は、ウェーハ100の裏面104を吸引保持する吸引面を有する吸引パッド(搬送パッド)171を備えている。搬入機構170は、仮置きテーブル154に仮置きされたウェーハ100を吸引パッド171によって吸引保持して、加工領域18内における仮置き機構152の近傍に位置しているチャックテーブル5へ搬送し、その保持面50に載置する。
【0023】
チャックテーブル5は、ウェーハ100を保持する保持部材の一例であり、ウェーハ100を吸引保持する保持面50を備えている。保持面50は、吸引源47(図2参照)に連通されて、保護テープ105を介して、ウェーハ100を吸引保持することが可能である。チャックテーブル5は、保持面50によってウェーハ100を吸引保持した状態で、保持面50の中心を通りZ軸方向に延在する中心軸を中心として、回転可能である。
【0024】
本実施形態では、第2の装置ベース11上に配設されたターンテーブル6の上面に、3つのチャックテーブル5が、ターンテーブル6の中心を中心とする円上に、等間隔に配設されている。ターンテーブル6の中心には、ターンテーブル6を自転させるための図示しない回転軸が配設されている。ターンテーブル6は、この回転軸によって、Z軸方向に延びる軸心を中心に自転することができる。ターンテーブル6が自転することで、3つのチャックテーブル5が公転する。これにより、チャックテーブル5を、仮置き機構152の近傍、粗研削機構30の下方、および、仕上げ研削機構31の下方に、順次、位置付けることができる。
【0025】
第2の装置ベース11上の後方(+Y方向側)には、第1のコラム12が立設されている。第1のコラム12の前面には、ウェーハ100を粗研削する粗研削機構30、および、粗研削機構30を研削送りする粗研削送り機構20が配設されている。粗研削機構30は、保持面50によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構の一例である。
【0026】
粗研削送り機構20は、Z軸方向に平行な一対のガイドレール201、このガイドレール201上をスライドする昇降テーブル203、ガイドレール201と平行なボールネジ200、ボールネジ200を回転駆動するモータ202、および、昇降テーブル203の前面(表面)に取り付けられたホルダ204を備えている。ホルダ204は、粗研削機構30を保持している。
【0027】
昇降テーブル203は、ガイドレール201にスライド可能に設置されている。図示しないナット部が、昇降テーブル203の後面側(裏面側)に固定されている。このナット部には、ボールネジ200が螺合されている。モータ202は、ボールネジ200の一端部に連結されている。
【0028】
粗研削送り機構20では、モータ202がボールネジ200を回転させることにより、昇降テーブル203が、ガイドレール201に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、昇降テーブル203に取り付けられたホルダ204、および、ホルダ204に保持された粗研削機構30も、昇降テーブル203とともにZ軸方向に移動する。このようにして、粗研削送り機構20は、粗研削機構30をZ軸方向に沿って研削送りする。
【0029】
粗研削機構30は、ホルダ204に固定されたスピンドルハウジング301、スピンドルハウジング301に回転可能に保持されたスピンドル300、スピンドル300を回転駆動するモータ302、スピンドル300の下端に取り付けられたホイールマウント303、および、ホイールマウント303の下面に着脱可能に接続された研削ホイール304を備えている。
【0030】
スピンドルハウジング301は、Z軸方向に延びるようにホルダ204に保持されている。スピンドル300は、チャックテーブル5の保持面50と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング301に回転可能に支持されている。
【0031】
モータ302は、スピンドル300の上端側に連結されている。このモータ302により、スピンドル300は、Z軸方向に延びる回転軸を中心として回転する。
【0032】
ホイールマウント303は、円板状に形成されており、スピンドル300の下端(先端)に固定されて、スピンドル300の回転に応じて回転する。ホイールマウント303は、研削ホイール304を支持している。
【0033】
研削ホイール304は、外径がホイールマウント303の外径と略同径を有するように形成されている。研削ホイール304は、アルミニウム合金等の金属材料から形成された円環状のホイール基台(環状基台)305を含む。ホイール基台305の下面には、全周にわたって、略直方体形状の複数の粗研削砥石306が、環状に配置および固定されている。粗研削砥石306は、スピンドル300の回転により回転され、チャックテーブル5に保持されたウェーハ100の裏面104を研削する。粗研削砥石306は、加工具の一例であり、比較的大きな砥粒を含む砥石である。
【0034】
スピンドル300の内部には、Z軸方向に延びる研削水流路が形成されており、この研削水流路に、図示しない研削水供給機構が連通している(ともに図示せず)。研削水供給機構からスピンドル300に対して供給される研削水は、研削水流路の下端の開口から粗研削砥石306に向かって下方に噴出し、粗研削砥石306とウェーハ100との接触部位に到達する。
【0035】
粗研削機構30の下方に配置されたチャックテーブル5に隣接する位置には、第1ハイトゲージ81が配設されている。第1ハイトゲージ81は、たとえば粗研削中に、ウェーハ100の厚みを接触式または非接触式にて測定する。
【0036】
また、第2の装置ベース11上の後方には、第2のコラム13が、X軸方向に沿って第1のコラム12に隣接するように、立設されている。第2のコラム13の前面には、ウェーハ100を仕上げ研削する仕上げ研削機構31、および、仕上げ研削機構31を研削送りする仕上げ研削送り機構21が配設されている。仕上げ研削機構31は、保持面50によって吸引保持された被加工物を加工する加工機構の一例である。
【0037】
仕上げ研削送り機構21は、粗研削送り機構20と同様の構成を有しており、仕上げ研削機構31をZ軸方向に沿って研削送りすることができる。仕上げ研削機構31は、粗研削砥石306に代えて、仕上げ研削砥石307を備えていることを除いて、粗研削機構30と同様の構成を有している。仕上げ研削砥石307は、加工具の一例であり、比較的小さな砥粒を含む砥石である。
【0038】
仕上げ研削機構31の下方に配置されたチャックテーブル5に隣接する位置には、第2ハイトゲージ82が配設されている。第2ハイトゲージ82は、たとえば仕上げ研削中に、ウェーハ100の厚みを接触式または非接触式にて測定する。
【0039】
仕上げ研削後のウェーハ100は、搬出機構172によって搬出される。搬出機構172は、チャックテーブル5に保持されたウェーハ100をスピンナ洗浄機構156に搬送する。
【0040】
搬出機構172は、ウェーハ100の裏面104を吸引保持する吸引面を有する吸引パッド(搬送パッド)173を備えている。搬出機構172は、チャックテーブル5に載置されている仕上げ研削後のウェーハ100の裏面104を、吸引パッド173によって吸引保持する。その後、搬出機構172は、ウェーハ100をチャックテーブル5から搬出して、枚葉式のスピンナ洗浄機構156のスピンナテーブル157に搬送する。
【0041】
スピンナ洗浄機構156は、ウェーハ100を洗浄するスピンナ洗浄ユニットである。スピンナ洗浄機構156は、ウェーハ100を保持するスピンナテーブル157、および、スピンナテーブル157に向けて洗浄水および乾燥エアを噴射するノズル158を備えている。
【0042】
スピンナ洗浄機構156では、ウェーハ100を保持したスピンナテーブル157が回転するとともに、ウェーハ100の裏面104に向けて洗浄水が噴射されて、裏面104がスピンナ洗浄される。その後、ウェーハ100に乾燥エアが吹き付けられて、ウェーハ100が乾燥される。
【0043】
スピンナ洗浄機構156によって洗浄されたウェーハ100は、ロボット155により、第2のカセットステージ162上の第2のカセット163に搬入される。
【0044】
ここで、チャックテーブル5の構成について説明する。
図2に示すように、チャックテーブル5は、ウェーハ100を保持するための円板形状のテーブルである。チャックテーブル5は、円形板状のポーラス部材51、および、ポーラス部材51を支持する枠体52を備えている。チャックテーブル5のポーラス部材51は、吸引源47に連通されることが可能である。吸引源47からの吸引力が、ポーラス部材51の上面である保持面50に伝達されることで、チャックテーブル5は、保持面50によってウェーハ100を吸引保持することができる。
【0045】
また、チャックテーブル5は、回転機構53によって回転可能となっている。回転機構53は、たとえばプーリ機構であり、駆動源となるモータ521、モータ521のシャフトに取り付けられた主動プーリ522、主動プーリ522に対して無端ベルト523を介して接続されている従動プーリ524、および、従動プーリ524を支持する回転軸520を備えている。
【0046】
回転軸520は、チャックテーブル5の下面における保持面50の中心の直下に接続されており、チャックテーブル5の保持面50に対して垂直に延在している。モータ521が主動プーリ522を回転駆動することで、主動プーリ522の回転に伴って無端ベルト523が回動する。無端ベルト523が回動することで、従動プーリ524および回転軸520が回転する。これにより、チャックテーブル5が、保持面50の中心を軸に回転される。
【0047】
また、研削装置1は、流体流通機構40を備えている。流体流通機構40は、チャックテーブル5の保持面50に対して、流体であるエアあるいは水を供給する、あるいは、保持面50を吸引するための機構である。
【0048】
流体流通機構40は、吸引溝403、吸引溝403に連通されている吸引流路470、回転軸520を覆うロータリージョイント460、および、吸引流路470に連通されている吸引配管471を備えている。
【0049】
吸引溝403は、ポーラス部材51の下面に接するように、チャックテーブル5における枠体52の凹部の底面に設けられている。吸引溝403は、チャックテーブル5の中心を中心として、同心円状に形成されている。
【0050】
吸引流路470は、吸引溝403の底面から、枠体52、回転軸520およびロータリージョイント460を通過するように延びている。
【0051】
吸引流路470は、ロータリージョイント460の外部で、吸引配管471に接続されている。吸引配管471の一端側は、吸引流路470に連通されている。吸引配管471の他端側には、第1三方管472を介して、吸引源47が接続されている。この吸引源47は、たとえば、エジェクター機構あるいは真空発生装置等を備え、チャックテーブル5のポーラス部材51に連通されて、その上面である保持面50に吸引力を与えるために用いられる。
【0052】
また、吸引配管471には、吸引源47から吸引流路470側に向かって順に、吸引開閉弁475および吸引流量調整部473が配設されている。吸引開閉弁475は、吸引配管471と吸引源47との連通状態を切り換える。吸引流量調整部473は、たとえば比例制御電磁弁であり、吸引開閉弁475が開いているときに、吸引源47からポーラス部材51の保持面50に伝達される吸引力を調整するために用いられる。
【0053】
このように、本実施形態では、吸引溝403、吸引流路470、吸引配管471、第1三方管472、吸引流量調整部473、および吸引開閉弁475が、ポーラス部材51を吸引源47に連通させる吸引機構を構成している。そして、吸引溝403、吸引流路470、吸引配管471および第1三方管472が、ポーラス部材51と吸引源47とを連通する吸引路として機能するとともに、吸引開閉弁475が、この吸引路に配設された吸引バルブとして機能する。
なお、吸引開閉弁475は、所定の電圧が付与されることで開き、所定の電圧が付与されていないと閉じる構造を有している。
【0054】
また、吸引配管471には、負圧測定器としての圧力センサ477が設けられている。圧力センサ477は、ポーラス部材51と吸引源47とを連通する吸引路の一部である吸引配管471に配置され、この吸引配管471の圧力値(負圧値)を検出することにより、保持面50の吸引力を検知する。
【0055】
さらに、吸引配管471には、第1三方管472を介して、エア配管481が連通されている。エア配管481は、チャックテーブル5の保持面50とエア供給源48とを連通するための配管である。
【0056】
エア配管481の一端側は、第1三方管472および吸引配管471を介して、吸引流路470に連通されている。エア配管481の他端側には、第2三方管482を介して、エア供給源48が接続されている。エア供給源48は、コンプレッサー等を備え、チャックテーブル5の保持面50にエアを供給するために用いられる。
【0057】
また、エア配管481には、エア供給源48から吸引流路470側に向かって順に、エア供給開閉弁485およびエア調整部483が配設されている。エア供給開閉弁485は、エア配管481とエア供給源48との連通状態を切り換える。エア調整部483は、たとえば比例制御電磁弁であり、エア供給開閉弁485が開いているときに、エア供給源48から保持面50に送られるエア流量を調整するために用いられる。
【0058】
このように、本実施形態では、吸引溝403、吸引流路470、吸引配管471、第1三方管472、エア配管481、第2三方管482、エア調整部483およびエア供給開閉弁485が、ポーラス部材51をエア供給源48に連通させるエア供給機構を構成している。そして、吸引溝403、吸引流路470、吸引配管471および第2三方管482が、ポーラス部材51とエア供給源48とを連通するエア供給路として機能するとともに、エア供給開閉弁485が、このエア供給路に配設されたエア供給バルブとして機能する。
なお、エア供給開閉弁485は、所定の電圧が付与されることで開き、所定の電圧が付与されていないと閉じる構造を有している。
【0059】
また、エア配管481には、第2三方管482を介して、水配管491が連通されている。水配管491は、チャックテーブル5の保持面50と水供給源49とを連通するための配管である。
【0060】
水配管491の一端側は、第2三方管482、エア配管481、第1三方管472、および吸引配管471を介して、吸引流路470に連通されている。水配管491の他端側には、水供給源49が接続されている。水供給源49は、ポンプ等を備え、チャックテーブル5の保持面50に水(洗浄水)を供給するために用いられる。
【0061】
また、水配管491には、水供給源49から吸引流路470側に向かって順に、水供給開閉弁495および水調整部493が配設されている。水供給開閉弁495は、水配管491と水供給源49との連通状態を切り換える。水調整部493は、たとえば比例制御電磁弁であり、水供給開閉弁495が開いているときに、水供給源49から保持面50に送られる水流量を調整するために用いられる。
【0062】
このように、本実施形態では、吸引溝403、吸引流路470、吸引配管471、第1三方管472、エア配管481、第2三方管482、水配管491、水調整部493、水供給開閉弁495、および水供給源49が、ポーラス部材51に水を供給する水供給機構を構成している。そして、吸引溝403、吸引流路470、吸引配管471、第1三方管472、エア配管481、第2三方管482、および水配管491が、ポーラス部材51と水供給源49とを連通する水連通路として機能するとともに、水供給開閉弁495が、この水連通路に配設された水バルブとして機能する。
なお、水供給開閉弁495は、所定の電圧が付与されることで開き、所定の電圧が付与されていないと閉じる構造を有している。
【0063】
また、図1に示すように、研削装置1は、第1の装置ベース10および第2の装置ベース11を覆う筐体15を備えている。筐体15の側面には、タッチパネル60が設置されている。
【0064】
タッチパネル60には、研削装置1に関するデバイスデータ(加工条件)等の各種情報が表示される。また、タッチパネル60は、デバイスデータ等の各種情報を入力するためにも用いられる。このように、タッチパネル60は、情報を表示するための表示部材として機能するとともに、情報を入力するための入力部材としても機能する。
【0065】
タッチパネル60の下方には、研削装置1の電源を投入あるいは遮断するための電源スイッチ61が備えられている。
また、研削装置1の内部には、電源部75が備えられている。電源部75は、電源遮断部76および電源接続部77を備えている。電源遮断部76は、図示しない外部電源と研削装置1との接続を解除して、研削装置1への電力供給を遮断する。すなわち、電源遮断部76は、研削装置1の電源を遮断する。電源接続部77は、外部電源と研削装置1との接続を確立して、研削装置1に電力を供給する。
【0066】
また、研削装置1は、その内部に、研削装置1の制御のための制御部7を有している。制御部7は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部7は、各種の処理を実行し、研削装置1の各構成要素を統括制御する。
たとえば、制御部7は、研削装置1の上述した各部材を制御して、ウェーハ100に対する研削処理を実行する。
【0067】
また、制御部7は、研削処理において保持面50によってウェーハ100を保持する際、流体流通機構40の吸引機構を制御して、保持面50に伝達される吸引力を調整する。
また、制御部7は、搬出機構172によって保持面50からウェーハ100を搬出する際、流体流通機構40のエア供給機構を制御して、ポーラス部材51および保持面50に、適量のエアを供給するとともに、流体流通機構40の水供給機構を制御して、ポーラス部材51および保持面50に、適量の洗浄水を供給する。
さらに、制御部7は、保持面50からウェーハ100が搬出された後、ポーラス部材51および保持面50を洗浄するために、搬出機構172によって保持面50からウェーハ100を搬出する際のエア量および洗浄水量より多いエア量と洗浄水量を供給するように流体流通機構40のエア供給機構と水供給機構とを制御する。
【0068】
また、制御部7は、研削装置1の使用準備動作(使用準備方法)および電源遮断動作(電源遮断方法)を制御するように構成されており、電源遮断動作に用いられる判断部70を有している。
【0069】
この電源遮断動作の際、本実施形態では、図1に示す円板状の保持面カバー110が用いられる。保持面カバー110は、例えば、円形の上面111および下面112を有しており、下面112の面積は、チャックテーブル5の保持面50の全面よりも大きい。すなわち、保持面カバー110は、保持面50の全面を覆うことの可能な面積を有している。
【0070】
保持面カバー110は、加工前のウェーハ100と同様に、第1のカセット161に収納されている。そして、保持面カバー110は、ウェーハ100と同様に、ロボット155によって第1のカセット161から取り出され、仮置き機構152において位置合わせされた後、搬入機構170によってチャックテーブル5の保持面50に載置される。したがって、本実施形態では、ロボット155、仮置き機構152および搬入機構170が、保持面カバー110を保持面50に搬送する搬送機構として機能する。
なお、仮置き機構152を備えないで、ロボット155が保持する保持面カバー110を搬入機構170が直接受け取って保持面50に搬送してもよい。
【0071】
以下に、研削装置1において実施される電源遮断方法について説明する。
【0072】
研削装置1の電源を遮断(切断)する際には、まず、作業者が、3つのチャックテーブル5の保持面50上にウェーハ100が載置されていないことを確認した後、図1に示した電源スイッチ61を操作(押圧)する。これを受けて、制御部7は、以下の電源遮断方法を実施する。この電源遮断方法は、水供給工程、カバー載置工程および電源遮断工程を含む。
なお、吸引開閉弁475を開き保持面50を吸引源47に連通させ、圧力センサ477の値によって保持面50上にウェーハ100が載置されていないことを認識してもよい。
【0073】
(水供給工程)
この工程では、制御部7は、水供給機構によって、仮置き機構152の近傍に配置されている1つのチャックテーブル5のポーラス部材51に、水を供給する。
すなわち、制御部7は、図2に示した吸引開閉弁475およびエア供給開閉弁485を閉じる一方、水供給開閉弁495を開けるとともに、水調整部493に所定量の電流を流して、ポーラス部材51を水供給源49に連通させる。これにより、制御部7は、図2において矢印501に示すように、ポーラス部材51および保持面50に、所定量の水を供給する。このようにして、制御部7は、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部を水で満たす。その後、制御部7は、水供給開閉弁495を閉じて、ポーラス部材51への水の供給を停止する。これにより、図2に示すように、保持面50上には、水膜120が形成される。
【0074】
(カバー載置工程)
次に、制御部7は、このチャックテーブル5の保持面50に対し、搬送機構によって保持面カバー110を搬送して、図3に示すように、この保持面50を保持面カバー110で覆う。すなわち、制御部7は、第1のカセット161に収容されている保持面カバー110をロボット155によって取り出して、仮置き機構152によって位置合わせする。その後、吸引パッド171を備えた搬入機構170を用いて、保持面カバー110を、下面112が下になるようにチャックテーブル5の保持面50に搬送して配置する。このようにして、制御部7は、水膜120が形成されている保持面50を、保持面カバー110によって覆う。これにより、図3に示すように、保持面50は、水膜120および保持面カバー110によって覆われた状態となる。
【0075】
その後、制御部7が吸引開閉弁475を開けるとともに、吸引流量調整部473に所定量の電流を流して、ポーラス部材51を吸引源47に連通させ保持面50を覆っている水(水膜120)を吸う。そして、制御部7の判断部70が、圧力センサ477によって、吸引配管471の圧力測定を開始する。これにより、図4において矢印503に示すように、ポーラス部材51の内部および保持面50を覆う水の一部が吸引される。
【0076】
そして、判断部70は、圧力センサ477によって測定される測定値が予め設定されている閾値に達したら、保持面50の全面が保持面カバー110によって覆われていると判断し、吸引開閉弁475を閉じて、保持面50およびポーラス部材51の内部の水の吸引を停止する。その結果、図4に示すように、保持面50上の水膜120が実質的に消失して、保持面50が、保持面カバー110によって覆われる。そして、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部が、水で満たされた状態に維持される。
【0077】
なお、保持面50上に保持面カバー110がずれて配置された場合、保持面50の一部が、保持面カバー110によって覆われずに、露出する場合がある。この場合、圧力センサ477による測定値は閾値に達することなく、低い値に維持される。
【0078】
これに関し、判断部70は、たとえば所定時間にわたって圧力センサ477の測定値が閾値に達しない場合には、保持面50の一部が保持面カバー110によって覆われていないと判断する。そして、判断部70は、吸引開閉弁475を閉じて水の吸引を停止するとともに、タッチパネル60を用いて、作業者に対し、保持面50の一部が露出していることを報知する。さらに、制御部7は、たとえば作業者の指示に基づいて、水供給工程およびカバー載置工程を再実施する。
【0079】
たとえば、制御部7は、搬入機構170を用いて、保持面50上にずれて配置されている保持面カバー110を、保持面50から取り外して保持する。そして、制御部7は、水供給工程を再実施することによって、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部を水で満たし、保持面50上に水膜120を形成する。さらに、制御部7は、保持面カバー110を保持している搬入機構170を用いて、水膜120が形成されている保持面50を保持面カバー110によって覆い、圧力センサ477および吸引機構を用いて、カバー載置工程を再実施する。
【0080】
カバー載置工程の後、制御部7は、ターンテーブル6を回転させることにより、仮置き機構152の近傍に、他の2つチャックテーブル5を順に配置し、各チャックテーブル5に対して、上述した水供給工程およびカバー載置工程を実施する。これにより、他の2つのチャックテーブル5の保持面50も保持面カバー110によって覆われて、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部が、水で満たされた状態に維持される。
【0081】
(電源遮断工程)
このようにして、全てのチャックテーブル5の保持面50が保持面カバー110によって覆われて、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部が水で満たされた状態に維持された後、制御部7は、電源遮断部76を制御して、研削装置1の電源を遮断して、電源遮断方法を終了する。
なお、電源の遮断により、吸引開閉弁475、エア供給開閉弁485および水供給開閉弁495への電圧供給が停止されて、これらの全てが閉じた状態となる。すなわち、制御部7は、電源遮断部76によって研削装置1の電源を遮断することにより、吸引開閉弁475、エア供給開閉弁485および水供給開閉弁495を閉じる。
【0082】
次に、研削装置1において実施される使用準備方法について説明する。この使用準備方法は、上述した電源遮断方法によって電源が遮断された研削装置1の使用準備方法である。
【0083】
研削装置1の使用を開始する際には、まず、作業者が、図1に示した電源スイッチ61を操作(押圧)することにより、研削装置1に電源を投入する。これを受けて、制御部7は、以下の使用準備方法を実施する。この使用準備方法は、イニシャル工程、カバー洗浄工程およびカバー離間工程を含む。
【0084】
(イニシャル工程)
この工程では、制御部7は、3つのチャックテーブル5の保持面50の全面を覆うように保持面カバー110が配置されている状態で、各軸の原点位置の確認を行う。この工程において原点位置が確認される軸としては、たとえば、各チャックテーブル5の回転軸、ターンテーブル6の回転軸、粗研削送り機構20および仕上げ研削送り機構21におけるモータ202の回転軸などが挙げられる。
【0085】
(カバー洗浄工程)
次に、制御部7は、仮置き機構152の近傍に配置されている1つのチャックテーブル5の保持面50の全面を覆うように配置されている保持面カバー110の上面111を洗浄する。この洗浄には、たとえば、図5に示すような水供給ノズル90から供給される水が用いられる。この水供給ノズル90は、図1に示した仮置き機構152の近傍に設けられており、仮置き機構152の近傍に配置されているチャックテーブル5に向けて、上方から水を供給することが可能である。
【0086】
(カバー離間工程)
保持面カバー110の洗浄後、制御部7は、保持面カバー110を保持面50から離間する。すなわち、制御部7は、吸引開閉弁475および水供給開閉弁495を閉じた状態に維持する一方、エア供給開閉弁485を開けるとともに、エア調整部483に所定量の電流を流して、ポーラス部材51をエア供給源48に連通させる。これにより、ポーラス部材51および保持面50に所定量のエアが供給されて、保持面50による保持面カバー110の吸引状態が解除される。さらに、制御部7は、吸引パッド173を備えた搬出機構172を用いて、保持面カバー110の上面111を吸引保持し、保持面50から保持面カバー110を搬出する。搬出された保持面カバー110は、たとえば、スピンナ洗浄機構156を経て、ロボット155によって、第2のカセットステージ162上の第2のカセット163に搬入される。
【0087】
次に、制御部7は、ターンテーブル6を回転させることにより、仮置き機構152の近傍に、他の2つチャックテーブル5を順に配置し、各チャックテーブル5に対して、上述したカバー洗浄工程およびカバー離間工程を実施する。これにより、他の2つのチャックテーブル5の保持面50を覆っていた保持面カバー110も、洗浄されて、保持面50から搬出される。
【0088】
以上のように、本実施形態では、研削装置1の電源を遮断する際、全てのチャックテーブル5の保持面50が保持面カバー110によって覆われて、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部が、水で満たされた状態に維持される。したがって、研削装置1の電源が遮断された後、作業者の長期休暇などのために研削装置1が長期間にわたって使用されない場合でも、チャックテーブル5の保持面50およびポーラス部材51の内部が乾燥することを抑制することが可能となる。
【0089】
これにより、本実施形態では、保持面50あるいはポーラス部材51の内部に加工屑(研削屑)が残存していた場合でも、この加工屑が乾燥によって保持面50およびポーラス部材51の内部に固着することを抑制することができる。したがって、本実施形態では、長期休暇後に研削装置1の使用を開始する際、たとえば、水供給源49をポーラス部材51に連通させてポーラス部材51を洗浄することによって、保持面50およびポーラス部材51の内部から加工屑を容易に除去することができる。このため、ポーラス部材51が加工屑によって詰まること、および、ポーラス部材51の詰まりによって生じるウェーハ100の吸引保持エラーを、良好に抑制することができる。
なお、保持面50から保持面カバー110を離間した後、制御部7は、流体流通機構40のエア供給機構と水供給機構とを制御して、ポーラス部材51および保持面50にエアと洗浄水との混合流体を供給してポーラス部材51および保持面50を洗浄してもよい。
【0090】
なお、本実施形態では、研削装置1の電源の遮断により、吸引開閉弁475への電圧供給が停止されて、吸引開閉弁475が閉じた状態となる。したがって、研削装置1の電源が遮断されている間に、ポーラス部材51が吸引源47に連通されて、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部の水が吸引されることが抑制され、保持面50に保持面カバー110の下面112が密接し保持面50からの乾燥を防止しポーラス部材51内を水で満たした状態を維持する。
【0091】
また、本実施形態では、研削装置1の電源が遮断されている間、保持面50が保持面カバー110によって覆われている。このため、研削装置1が長期間にわたって使用されない場合に生じる保持面50の汚れを、良好に抑制することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、吸引溝403、吸引流路470、吸引配管471、第1三方管472、エア配管481、第2三方管482、水配管491、水調整部493、水供給開閉弁495、および水供給源49が、ポーラス部材51に水を供給する水供給機構を構成している。そして、研削装置1が、この水供給機構を用いて、電源遮断方法における水供給工程を実施している。これに関し、研削装置1は、図6に示すように、水供給機構として上述した水供給ノズル90を用いて、水供給工程を実施もよい。
【0093】
この場合、制御部7は、水供給工程において、水供給ノズル90を用いて、仮置き機構152の近傍に配置されたチャックテーブル5のポーラス部材51に、保持面50側である上方から水を供給する。さらに、制御部7は、吸引機構を用いて、水供給ノズル90からポーラス部材51に供給する水の量よりも少ない量の水を、保持面50およびポーラス部材51に吸わせる。
【0094】
すなわち、制御部7は、吸引開閉弁475を開けるとともに、吸引流量調整部473に所定量の電流を流して、ポーラス部材51を吸引源47に連通させる。これにより、図6において矢印503に示すように、水供給ノズル90からポーラス部材51に供給された水の一部が、ポーラス部材51の内部に吸引される。その結果、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部が、水で満たされる。その後、制御部7は、水供給ノズル90による水の供給を停止するとともに、吸引開閉弁475を閉じて水の吸引を停止する。これにより、図6に示すように、保持面50上には、図2に示したものと同様の水膜120が形成される。
【0095】
また、本実施形態では、カバー載置工程において、保持面50を覆うカバーとして、保持面カバー110を用いている。これに関し、保持面カバー110は、できるだけ大きい面積(たとえば、ウェーハ100よりも大きい面積)を有することが好ましい。保持面カバー110の面積が大きい場合、カバー載置工程において保持面カバー110が保持面50に載置される際、保持面カバー110と保持面50との中心が少しずれていても、保持面カバー110によって保持面50の全面を覆うことができる。
【0096】
また、カバー載置工程において、保持面50を覆うカバーとして、保持面カバー110に代えてウェーハ100を用いてもよい。この場合、制御部7は、カバー載置工程において、第1のカセット161から加工前のウェーハ100を取り出して、水膜120が形成されている保持面50を、ウェーハ100によって覆う。この構成では、保持面カバー110を不要とすることができる。
【0097】
また、本実施形態では、研削装置1の電源遮断方法および使用準備方法が、制御部7による制御によって実施されている。これに関し、これらの方法の少なくとも一部は、作業者によって実施されてもよい。
【0098】
たとえば、電源遮断方法における水供給工程において、水供給ノズル90から水を供給することに代えて、作業者が、水の入った容器を用いて、ポーラス部材51に対して、保持面50側から水を供給してもよい。そして、作業者による水の供給後、制御部7が、吸引機構を用いて、ポーラス部材51に供給される水よりも少ない量の水を吸うことにより、保持面50の全面およびポーラス部材51の内部を水で満たしてもよい。
【0099】
また、カバー載置工程では、作業者が、保持面カバー110を保持して、水膜120が形成されている保持面50に載置してもよい。そして、作業者による保持面カバー110の載置の後、制御部7が、吸引機構を用いて、ポーラス部材51の内部および保持面50を覆う水の一部を吸ってもよい。
なお、作業者が保持面カバー110を保持面50に載置する際は、水供給機構によって、3つのチャックテーブル5のポーラス部材51に、同時に水を供給してもよい。
【0100】
さらに、使用準備方法におけるカバー洗浄工程では、保持面50を覆っている保持面カバー110の上面111を、作業者が洗浄してもよい。そして、カバー離間工程では、保持面50による保持面カバー110の吸引状態が解除された後、作業者が、保持面カバー110を保持して、保持面50から搬出してもよい。
【0101】
また、本実施形態では、加工装置として研削装置を示している。これに関し、本実施形態にかかる電源遮断方法は、加工屑あるいは水垢などの不要物質がチャックテーブルのポーラス部材に溜まる可能性のある装置であれば、どのような装置にも適用されることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1:研削装置、10:第1の装置ベース、11:第2の装置ベース、15:筐体、
17:搬出入領域、18:加工領域、60:タッチパネル、61:電源スイッチ、
6:ターンテーブル、
5:チャックテーブル、50:保持面、51:ポーラス部材、52:枠体、
53:回転機構、
12:第1のコラム、13:第2のコラム、
20:粗研削送り機構、21:仕上げ研削送り機構、
30:粗研削機構、31:仕上げ研削機構、
152:仮置き機構、153:位置合わせ部材、154:仮置きテーブル、
155:ロボット、
156:スピンナ洗浄機構、157:スピンナテーブル、158:ノズル、
160:第1のカセットステージ、161:第1のカセット、
162:第2のカセットステージ、163:第2のカセット、
170:搬入機構、171:吸引パッド、
172:搬出機構、173:吸引パッド、
7:制御部、70:判断部、
75:電源部、76:電源遮断部、77:電源接続部、
81:第1ハイトゲージ、82:第2ハイトゲージ、
40:流体流通機構、
47:吸引源、403:吸引溝、470:吸引流路、471:吸引配管、
472:第1三方管、473:吸引流量調整部、475:吸引開閉弁、
477:圧力センサ、
48:エア供給源、481:エア配管、482:第2三方管、
483:エア調整部、485:エア供給開閉弁、
49:水供給源、491:水配管、493:水調整部、495:水供給開閉弁、
90:水供給ノズル、
100:ウェーハ、101:表面、104:裏面、105:保護テープ、
110:保持面カバー、111:上面、112:下面、
120:水膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6