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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175736
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20221117BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082393
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
【テーマコード(参考)】
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
5F057AA01
5F057AA05
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB11
5F057BB16
5F057CA15
5F057DA08
5F057DA11
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA28
(57)【要約】
【課題】被加工物の裏面側にリング状補強部を形成する研削において、研削不良の発生を抑制する。
【解決手段】デバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面側に有する被加工物の裏面側のうち、デバイス領域に対応する所定領域を研削して、円板状の凹部と、凹部を囲繞するリング状補強部と、を形成する被加工物の研削方法であって、被加工物を保持したチャックテーブルを回転させない状態で、スピンドルを回転させながら研削ユニットを研削送りして所定領域を研削することにより、被加工物の裏面側に溝を形成することと、スピンドルを回転させたままチャックテーブルの回転を開始することにより溝の側壁を研削し、溝を除去することと、スピンドルとチャックテーブルとを回転させながら研削ユニットを研削送りすることにより、所定領域を研削して凹部とリング状補強部とを形成することと、備える被加工物の研削方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルを含み、環状に配置された複数の研削砥石を有する研削ホイールを該スピンドルに装着し、該スピンドルを中心として該研削ホイールを回転させた状態で、該チャックテーブルで保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、
を有する研削装置を用いて、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面側に有する該被加工物の裏面側のうち、該デバイス領域に対応する所定領域を該研削ホイールで研削して、円板状の凹部と、該凹部を囲繞するリング状補強部と、を形成する被加工物の研削方法であって、
該被加工物を保持した該チャックテーブルを回転させない状態で、該スピンドルを回転させながら該研削ユニットを研削送りして該所定領域を研削することにより、該被加工物の裏面側に仕上げ厚に至らない深さを有する円弧状又は円環状の溝を形成する溝形成ステップと、
該溝形成ステップの後、該スピンドルを回転させたまま該チャックテーブルの回転を開始することにより該溝の側壁を研削し、該被加工物から溝を除去する溝除去ステップと、
該溝除去ステップの後、該スピンドルと該チャックテーブルとを回転させながら該研削ユニットを研削送りすることにより、該デバイス領域に対応する該所定領域を研削して該凹部を形成すると共に該凹部を囲繞する該リング状補強部を形成する凹部形成ステップと、備えることを特徴とする被加工物の研削方法。
【請求項2】
該溝除去ステップでは、該研削ユニットを研削送りしながら該チャックテーブルを回転させることを特徴とする請求項1記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面側に有する被加工物の裏面側のうち、デバイス領域に対応する所定領域を研削して、円板状の凹部と、凹部を囲繞するリング状補強部と、を形成する被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるデバイスチップを軽量化、薄型化するために、表面側に複数のデバイスが形成されたウェーハ(被加工物)を研削装置で研削して、例えば、100μm以下まで被加工物を薄化することがある。
【0003】
しかし、被加工物をあまりに薄化すると、薄化後の被加工物の搬送等が容易ではなくなる。そこで、複数のデバイスが形成されている表面側のデバイス領域に対応する被加工物の裏面側の所定領域を研削して、円板状の凹部と、凹部を囲繞するリング状補強部と、を形成する研削方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この研削方法は、TAIKO(登録商標)と称されている。被加工物の外周部にリング状補強部を形成することで、裏面側全体を一様に薄化した被加工物に比べて、被加工物の反りを低減でき、更に、被加工物の強度が向上する。加えて、被加工物の外周部を起点とする被加工物の割れを抑制できる。
【0005】
リング状補強部を形成するためには、被加工物の外径よりも小さい外径を有する研削ホイールが使用される。当該研削ホイールは、円環状のホイール基台を有し、当該ホイール基台の一面側には、ホイール基台の周方向に沿って各々セグメント状の複数の研削砥石が固定されている。
【0006】
当該研削ホイールは、裏面側全体を一様に研削する際に使用される通常の研削ホイールに比べて小径であり、研削砥石の数が少ない。更に、研削時の周速は、通常の研削ホイールの研削時の周速に比べて遅いので、1つの研削砥石当たりの仕事量は、通常の研削ホイールにおける1つの研削砥石当たりの仕事量に比べて増加する。
【0007】
それゆえ、通常の研削ホイールにおける研削砥石に比べて、研削砥石の研削能力が低下しやすいので、目潰れ、目こぼれ、目詰まり等の研削砥石の状態不良が発生しやすい。例えば、被加工物の裏面側に比較的硬い酸化膜が形成されている場合、研削能力の低下に伴う研削不良が生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-19461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、被加工物の裏面側にリング状補強部を形成する研削において、研削不良の発生を抑制することが可能な研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルを含み、環状に配置された複数の研削砥石を有する研削ホイールを該スピンドルに装着し、該スピンドルを中心として該研削ホイールを回転させた状態で、該チャックテーブルで保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、を有する研削装置を用いて、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を表面側に有する該被加工物の裏面側のうち、該デバイス領域に対応する所定領域を該研削ホイールで研削して、円板状の凹部と、該凹部を囲繞するリング状補強部と、を形成する被加工物の研削方法であって、該被加工物を保持した該チャックテーブルを回転させない状態で、該スピンドルを回転させながら該研削ユニットを研削送りして該所定領域を研削することにより、該被加工物の裏面側に仕上げ厚に至らない深さを有する円弧状又は円環状の溝を形成する溝形成ステップと、該溝形成ステップの後、該スピンドルを回転させたまま該チャックテーブルの回転を開始することにより該溝の側壁を研削し、該被加工物から溝を除去する溝除去ステップと、該溝除去ステップの後、該スピンドルと該チャックテーブルとを回転させながら該研削ユニットを研削送りすることにより、該デバイス領域に対応する該所定領域を研削して該凹部を形成すると共に該凹部を囲繞する該リング状補強部を形成する凹部形成ステップと、備える被加工物の研削方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該溝除去ステップでは、該研削ユニットを研削送りしながら該チャックテーブルを回転させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る被加工物の研削方法では、被加工物を保持したチャックテーブルを回転させない状態で、スピンドルを回転させながら研削ユニットを研削送りして被加工物を研削することにより、被加工物の裏面に仕上げ厚に至らない深さを有する円弧状又は円環状の溝を形成する(溝形成ステップ)。
【0013】
溝形成ステップの後、スピンドルを回転させたままチャックテーブルの回転を開始することにより溝の側壁を研削し、被加工物から溝を除去する(溝除去ステップ)。更に、溝除去ステップの後、スピンドルとチャックテーブルとを回転させながら研削ユニットを研削送りすることにより、デバイス領域に対応する所定領域を研削して凹部を形成すると共に凹部を囲繞するリング状補強部を形成する(凹部形成ステップ)。
【0014】
溝形成ステップでは、主として研削砥石の底面で研削を行うが、溝除去ステップでは、主として研削砥石の側面で研削を行うことができる。それゆえ、溝除去ステップでは、主として研削砥石の底面で被加工物の裏面側の全体を研削する場合に比べて、研削砥石の底面のコンディションの悪化(即ち、研削能力の低下)を低減できる。
【0015】
そして、溝除去ステップ後の凹部形成ステップでは、溝が除去された被加工物の裏面側の所定領域全体を研削する。凹部形成ステップでは、主として研削砥石の底面で研削を行うが、特に、研削砥石の底面のコンディションの悪化の程度が低減された状態で研削を行うことができる。それゆえ、被加工物の裏面側に比較的硬い酸化膜が形成されている場合であっても、被加工物の研削不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】被加工物等の斜視図である。
図2】研削方法のフロー図である。
図3】溝形成ステップを示す一部断面側面図である。
図4図4(A)は溝形成ステップにおける被加工物等の上面図であり、図4(B)は溝形成ステップで形成された溝を示す被加工物の上面図である。
図5】溝除去ステップを示す一部断面側面図である。
図6】溝除去ステップにおける被加工物等の上面図である。
図7】凹部形成ステップを示す一部断面側面図である。
図8】研削後の被加工物の断面図である。
図9】第2の実施形態の溝形成ステップで形成された溝を示す被加工物の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、図1を参照して、第1の実施形態において研削対象となる被加工物11について説明する。図1は、被加工物11等の斜視図である。
【0018】
本実施形態の被加工物11は、所定の直径(例えば、直径約200mm)を有する円板状のシリコンウェーハである。被加工物11は、表面11a及び裏面11bを有し、表面11aから裏面11bまでの長さ(即ち、被加工物11の厚さ)が、200μm以上800μm以下の所定値(例えば、725μm)である。
【0019】
裏面11bの全体には、2000Åから3000Å程度の厚さを有する熱酸化膜(不図示)が形成されている。表面11aには、複数の分割予定ライン13が格子状に設定されている。複数の分割予定ライン13で区画された矩形状の領域の表面11a側には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。
【0020】
なお、被加工物11の種類、材質、大きさ、形状、構造等に制限はない。被加工物11は、シリコン以外の化合物半導体(GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等で形成されたウェーハや基板であってもよい。また、被加工物11に形成されるデバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等に制限はない。
【0021】
複数のデバイス15が形成されているデバイス領域17aを平面視において囲繞する様に、デバイス領域17aの周りには、デバイス15が形成されておらず略平坦な環状の外周余剰領域17bが存在する。
【0022】
被加工物11の研削を行う前には、研削時におけるデバイス15へのダメージを低減するために、樹脂製で円形の保護テープ19を表面11a側に貼り付ける。これにより、被加工物11及び保護テープ19が積層された被加工物ユニット21を形成する。
【0023】
被加工物11の研削時には、裏面11b側のうちデバイス領域17aに対応する所定領域17d(図8参照)を所定深さだけ研削する。これにより、図8に示す様に、円板状の凹部11cと、凹部11cの側部を囲繞するリング状補強部11dとを、形成する。
【0024】
次に、図3を参照して、被加工物11の研削に用いられる研削装置2について説明する。図3に示す+Z方向及び-Z方向は、Z軸方向と平行な互いに逆向きの方向である。例えば、+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0025】
また、図3に示す+X方向及び-X方向は、Z軸方向と直交するX軸方向と平行な互いに逆向きの方向であり、+Y方向及び-Y方向は、Z軸方向及びX軸方向と直交するY軸方向と平行な互いに逆向きの方向である。例えば、X-Y平面は水平面と平行である。
【0026】
図3に示す様に、研削装置2は、被加工物11の表面11a側を吸引保持する円板状のチャックテーブル4を備える。チャックテーブル4は、セラミックスで形成された円板状の枠体を有する。
【0027】
枠体の中央部には、円板状の凹部(不図示)が形成されている。枠体の内部には、所定の流路(不図示)が形成されている。所定の流路の一端部は、凹部に露出しており、所定の流路の他端部には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0028】
枠体の凹部には、多孔質セラミックスで形成された多孔質板(不図示)が固定されている。吸引源からの負圧は、多孔質板の上面に伝達される。多孔質板の上面と、枠体の上面とは、面一となっており、被加工物11を吸引保持する保持面4aとして機能する。
【0029】
なお、保持面4aの外周端及び中心の間の環状領域は、保持面4aの外周端及び中心よりも凹んでおり、当該環状領域は、保持面4aの径方向でのチャックテーブル4の断面視において、所謂、双凹形状を有する。
【0030】
但し、凹みの深さは、例えば、1μmから20μm程度であるので、図3では、便宜上、保持面4aを略平坦に示している。以降の図面においても、保持面4aは、便宜的に略平坦に示している。
【0031】
チャックテーブル4は、その下部に設けられたモーター等の回転駆動源(不図示)により、所定の回転軸4b(図5参照)の周りに回転可能である。回転軸4bは、保持面4aの+X方向側の外周端部が保持面4aの-X方向側の外周端部に比べて僅かに高くなる様に、X-Z平面内でZ軸方向に対して所定角度だけ傾いている。
【0032】
図3に戻って、研削装置2の他の構成要素について説明する。チャックテーブル4の上方には、研削ユニット6が配置されている。研削ユニット6は、円筒状のスピンドルハウジング(不図示)を有する。
【0033】
スピンドルハウジングには、Z軸方向に沿って研削ユニット6を移動させる、ボールねじ式の研削送り機構(不図示)が連結されている。スピンドルハウジング内には、円柱状のスピンドル8の一部が回転可能に保持されている。
【0034】
本実施形態のスピンドル8は、Z軸方向に略平行に配置されている。スピンドル8の上端部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が設けられており、スピンドル8の下端部には、円板状のマウント10が固定されている。
【0035】
マウント10の下面側には、円環状の研削ホイール12が装着されている。研削ホイール12は、アルミニウム合金等の金属で形成された環状のホイール基台14を有する。ホイール基台14の上面側は、マウント10の下面側に固定されている。
【0036】
この様にスピンドル8に装着された研削ホイール12は、スピンドル8を中心として回転可能である。ホイール基台14の下面側には、各々セグメント状の複数の研削砥石16が、ホイール基台14の周方向に沿って環状に配置されている。
【0037】
なお、複数の研削砥石16の軌跡により形成される領域の外径は、裏面11bの直径の略半分である。次に、研削装置2を用いた被加工物11の研削方法について説明する。図2は、研削方法のフロー図である。
【0038】
まず、図3に示す様に、被加工物11の表面11a側を、保護テープ19を介して保持面4aで吸引保持する。このとき、被加工物11は、保持面4aの形状に応じて変形する(保持ステップS10)。保持ステップS10の後、溝形成ステップS20を行う。
【0039】
溝形成ステップS20では、被加工物11が吸引保持されたチャックテーブル4を回転させない(即ち、静止させた)状態で、スピンドル8を所定の回転数で回転させながら、研削ユニット6をZ軸方向に沿って研削送りする。
【0040】
本実施形態では、スピンドル8の所定の回転数を4000rpmとし、研削送り速度を3.0μm/sとする。図3は、溝形成ステップS20を示す一部断面側面図である。なお、図3では、便宜的に保護テープ19を省略している。
【0041】
図4(A)は、溝形成ステップS20における被加工物11等の上面図である。図4(A)では、デバイス領域17aと外周余剰領域17bとの境界に対応する裏面11b側の境界領域17cを破線で示す。この境界領域17cよりも内側が、上述の所定領域17dとなる。
【0042】
本実施形態の溝形成ステップS20では、裏面11b側の所定領域17dのうち研削砥石16の移動軌跡に対応する領域を研削して、裏面11bの中心11bを通る円環状の溝11eを形成する。図4(B)は、溝形成ステップS20で形成された溝11eを示す被加工物11の上面図である。
【0043】
溝形成ステップS20で形成される溝11eは、裏面11b側に形成されている酸化膜の厚さよりも深く、且つ、デバイス領域17aの仕上げ厚さ11f(図8参照)に至らない所定の深さを有する。
【0044】
例えば、酸化膜は、0.2μmから0.3μmである。研削送り速度が3.0μm/sの場合、研削砥石16の下面が裏面11bに接してから1s間研削を行うと、研削砥石16が酸化膜を突破し、最も深い底部までの深さが3.0μmの溝11eが形成される。
【0045】
なお、仕上げ厚さ11fは例えば100μmであるので、溝11eの深さは仕上げ厚さ11fに至らない。溝形成ステップS20の後、スピンドル8を所定の回転数で回転させたままチャックテーブル4の回転を開始する(溝除去ステップS30)。
【0046】
溝除去ステップS30では、図5及び図6に示す様に、溝11eの内周側壁11e及び外周側壁11eを研削することで、被加工物11から溝11eを除去する。
【0047】
溝除去ステップS30では、例えば、チャックテーブル4の回転を開始して、最終的に300rpmとする。本実施形態の溝除去ステップS30では、研削ユニット6を下方に3.0μm/sの速度で研削送りしながらチャックテーブル4を回転させるが、研削送りをせずにチャックテーブル4を回転させてもよい。
【0048】
図5は、溝除去ステップS30を示す一部断面側面図であり、図6は、溝除去ステップS30における被加工物11等の上面図である。図6では、溝11eの内周側壁11e及び外周側壁11eが研削される様子を矢印で模式的に示す。
【0049】
溝形成ステップS20では、主として研削砥石16の底面で研削を行うのに対して、溝除去ステップS30では、主として研削砥石16の側面(内周側面及び外周側面)で研削を行うことができる。
【0050】
それゆえ、溝除去ステップS30では、主として研削砥石16の底面で裏面11b側の全体を研削する場合に比べて、研削砥石16の底面のコンディションの悪化(即ち、研削能力の低下)を低減できる。
【0051】
また、本実施形態では、溝除去ステップS30を行うことで、研削砥石16の内周側面及び外周側面の両方を用いて所定領域17dを研削できる。それゆえ、溝除去ステップS30において研削砥石16の内周側面及び外周側面のいずれか一方のみを用いて研削する場合に比べて、研削砥石16の側面への負荷を低減できる。
【0052】
溝除去ステップS30の後、引き続き、スピンドル8とチャックテーブル4とを回転させながら研削ユニット6を研削送りする。例えば、スピンドル8を4000rpm、チャックテーブル4を300rpm、でそれぞれ回転させたまま、研削ユニット6を3.0μm/sで研削送りする。
【0053】
被研削部分の厚さが所定の仕上げ厚さ11fとなるまで所定領域17dを研削した後、研削送りを停止する。この様にして、図7に示す凹部11cを形成すると共に、凹部11cを囲繞するリング状補強部11dを形成する(凹部形成ステップS40)。図7は、凹部形成ステップS40を示す一部断面側面図であり、図8は、研削後の被加工物11の断面図である。
【0054】
凹部形成ステップS40では、主として研削砥石16の底面で研削を行うが、特に、研削砥石16の底面のコンディションの悪化の程度が低減された状態で研削を行うことができる。それゆえ、裏面11b側に比較的硬い酸化膜が形成されている場合であっても、被加工物11の研削不良の発生を抑制できる。
【0055】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態でも保持ステップS10から凹部形成ステップS40をこの順で行う。但し、第2の実施形態におけるチャックテーブル4の回転軸4bの傾きは、第1の実施形態の回転軸4bの傾きに比べて大きいので、保持面4aの+X方向側の外周端部の位置は、第1の実施形態に比べて高くなる。
【0056】
それゆえ、第2の実施形態における溝形成ステップS20では、裏面11bの+X方向側に、円環状ではなく、中心11bを通る半円弧状の溝11eが形成される。図9は、第2の実施形態の溝形成ステップS20で形成された半円弧状の溝11eを示す被加工物11の上面図である。
【0057】
第2の実施形態では、溝形成ステップS20において半円弧状の溝11eが形成される点が第1の実施形態と異なるが、第2の実施形態でも、溝除去ステップS30及び凹部形成ステップS40を第1の実施形態と同様に行うことができる。
【0058】
なお、第2の実施形態の溝形成ステップS20で形成される溝11eの形状は、所定の中心角を有する円弧状であってもよい。第2の実施形態の溝形成ステップS20において、円弧状又は半円弧状の溝11eを形成することで、円環状の溝11eを形成する場合に比べて、研削砥石16の底面への負荷を低減できる。
【0059】
第2の実施形態の溝除去ステップS30においても、主として研削砥石16の底面で裏面11b側の全体を研削する場合に比べて、研削砥石16の底面のコンディションの悪化(即ち、研削能力の低下)を低減できる。
【0060】
また、第2の実施形態の凹部形成ステップS40においても、研削砥石16の底面のコンディションの悪化の程度が低減された状態で研削を行うことができる。それゆえ、裏面11b側に比較的硬い酸化膜が形成されている場合であっても、被加工物11の研削不良の発生を抑制できる。
【0061】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0062】
2:研削装置、4:チャックテーブル、4a:保持面、4b:回転軸
6:研削ユニット、8:スピンドル、10:マウント
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、11b:中心
11c:凹部、11d:リング状補強部
11e:溝、11e:内周側壁、11e:外周側壁、11f:仕上げ厚さ
12:研削ホイール、14:ホイール基台、16:研削砥石
13:分割予定ライン、15:デバイス
17a:デバイス領域、17b:外周余剰領域、17c:境界領域、17d:所定領域
19:保護テープ、21:被加工物ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9