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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175737
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20221117BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20221117BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20221117BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B24B45/00 B
B24B49/10
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082394
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA24
3C034CB11
3C034DD20
3C043BA03
3C043BC08
3C043CC04
3C043CC11
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA02
5F057AA05
5F057AA37
5F057AA53
5F057BA15
5F057CA14
5F057DA11
5F057GA13
5F057GB03
5F057GB22
(57)【要約】
【課題】スピンドルの回転軸に直交する方向における研削ユニットの振動を低減する。
【解決手段】スピンドルと、スピンドルの下端部に上面側が固定されたフランジと、を含む研削ユニットと、スピンドルの回転軸に直交する方向における研削ユニットの振動量を測定するための振動測定ユニットと、制御ユニットと、を備え、フランジの内部又はフランジ上には、回転軸の周りに配置された3つ以上の錘と、フランジの半径方向において各錘の外側に1つ配置されている複数の圧電アクチュエータと、を有するバランス調整機構が設けられており、制御ユニットは、振動測定ユニットを用いて測定された研削ユニットの振動データに基づいて半径方向において少なくとも1つの圧電アクチュエータの変位量を調整することにより、少なくとも1つの圧電アクチュエータに接する錘の位置を調整して、研削ユニットの回転バランスを調整する研削装置を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削装置であって、
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルと、該スピンドルの下端部に上面側が固定され、且つ、該チャックテーブルで保持された該被加工物を研削する研削ホイールが下面側に装着されるフランジと、を含む研削ユニットと、
振動測定用のセンサーを有し、該スピンドルの回転によって発生する該スピンドルの回転軸に直交する方向における該研削ユニットの振動量を測定するための振動測定ユニットと、
を備え、
該フランジの内部又は該フランジ上には、該回転軸の周りに配置された3つ以上の錘と、該フランジの半径方向において各錘の外側に1つ配置されており、それぞれ圧電素子を含む複数の圧電アクチュエータと、を有するバランス調整機構が設けられており、
該研削装置は、該複数の圧電アクチュエータを制御する制御ユニットを更に備え、
該制御ユニットは、該振動測定ユニットを用いて測定された該研削ユニットの振動データに基づいて該半径方向において少なくとも1つの圧電アクチュエータの変位量を調整することにより、該少なくとも1つの圧電アクチュエータに接する錘の位置を調整して、該研削ユニットの該スピンドルの周りの回転バランスを調整することを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該振動測定ユニットは、フィールドバランサーであり、該スピンドルの回転角度に対応する該研削ユニットの該振動量を測定することを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を研削するための研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップは、例えば、表面に複数の分割予定ラインが格子状に設定され、当該複数の分割予定ラインで区画された各領域にIC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成された半導体ウェーハ(被加工物)の裏面側を研削装置で研削して薄化した後、各分割予定ラインに沿って被加工物を切断することで製造される。
【0003】
研削装置は、円板状のチャックテーブルを備えており、当該チャックテーブルの上方には、円柱状のスピンドルを有する研削ユニットが配置されている。スピンドルは、その高さ方向が鉛直方向に略平行に配置されている。
【0004】
スピンドルの下端部には、円板状のフランジ(ホイールマウントとも称される)を介して円環状の研削ホイールが装着されている。研削ホイールは、円環状の基台を有し、当該基台の一面側には、それぞれブロック状の複数の研削砥石が、基台の周方向に沿って略等間隔で配置されている。
【0005】
被加工物の研削時には、まず、チャックテーブルの保持面で被加工物の表面側を吸引保持する。次いで、チャックテーブルと、スピンドルと、をそれぞれ回転させると共に、ウェーハの裏面側に研削水を供給しながら、研削ユニットを下方へ研削送りする(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
被加工物の研削中、スピンドルは高速で回転するので、スピンドル、フランジ及び研削ホイールの各々を構成する部品の寸法公差、幾何公差等に起因してスピンドル周りの回転バランスが崩れることにより、スピンドルの回転軸に直交する方向で、研削ユニットが振動することがある。また、研削中において研削ホイール等に付着した研削屑も、研削ユニットの振動の要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-124690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この様に、研削ユニットがスピンドルの回転軸に直交する方向に振動すると、被研削面の面粗さ(例えば、算術平均粗さRa)が大きくなったり、被加工物の割れや欠け(チッピング)の数が増加したり、研削砥石の異常磨耗が生じたりするという不具合が発生する。
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、スピンドルの回転軸に直交する方向における研削ユニットの振動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、研削装置であって、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルと、該スピンドルの下端部に上面側が固定され、且つ、該チャックテーブルで保持された該被加工物を研削する研削ホイールが下面側に装着されるフランジと、を含む研削ユニットと、振動測定用のセンサーを有し、該スピンドルの回転によって発生する該スピンドルの回転軸に直交する方向における該研削ユニットの振動量を測定するための振動測定ユニットと、を備え、該フランジの内部又は該フランジ上には、該回転軸の周りに配置された3つ以上の錘と、該フランジの半径方向において各錘の外側に1つ配置されており、それぞれ圧電素子を含む複数の圧電アクチュエータと、を有するバランス調整機構が設けられており、該研削装置は、該複数の圧電アクチュエータを制御する制御ユニットを更に備え、該制御ユニットは、該振動測定ユニットを用いて測定された該研削ユニットの振動データに基づいて該半径方向において少なくとも1つの圧電アクチュエータの変位量を調整することにより、該少なくとも1つの圧電アクチュエータに接する錘の位置を調整して、該研削ユニットの該スピンドルの周りの回転バランスを調整する研削装置が提供される。
【0011】
好ましくは、該振動測定ユニットは、フィールドバランサーであり、該スピンドルの回転角度に対応する該研削ユニットの該振動量を測定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る研削装置では、振動測定ユニットを用いて測定された研削ユニットの振動データに基づいて、フランジの半径方向において少なくとも1つの圧電アクチュエータの変位量を調整することにより、少なくとも1つの圧電アクチュエータに接する錘の位置を調整して、研削ユニットのスピンドルの周りの回転バランスを調整する。それゆえ、スピンドルの回転軸に直交する方向における研削ユニットの振動を低減できる。
【0013】
また、この様に、圧電アクチュエータを用いて電気的に錘の位置を調整することにより、スピンドルを回転させた状態で、研削ユニットの回転バランスの調整を行うことができる。従って、研削中であっても研削ユニットの回転バランスの調整が可能である。加えて、スピンドルを一旦停止させた上で、手作業で研削ユニットの回転バランスの調整を行う場合に比べて、回転バランスの調整に要する作業者の手間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研削装置の斜視図である。
図2】粗研削ユニットの一部断面側面図である。
図3】第1の実施形態に係るフランジを平面視した場合の部分断面図である。
図4】第2の実施形態に係るフランジを平面視した場合の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、研削装置2の斜視図である。なお、図1では、構成要素の一部を機能ブロックで示す。図1において、X軸方向、Y軸方向(前後方向)、及び、Z軸方向(上下方向、研削送り方向)は互いに直交する。
【0016】
研削装置2は、構成要素を支持する直方体状の基台4を有する。基台4の前方(Y軸方向の一方)には凹部4aが形成されており、この凹部4aには、被加工物11を搬送する搬送ロボット6が設けられている。
【0017】
凹部4aのX軸方向の両側には、カセット載置領域8a,8bが存在する。例えば、カセット載置領域8a上には、研削前の1以上の被加工物11を収容しているカセット10aが載置される。被加工物11は、例えば、円板状の半導体ウェーハである。
【0018】
被加工物11の表面11a側には、複数の分割予定ライン(不図示)が格子状に設定されている。各分割予定ラインで区画された領域の各々には、IC、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されている。表面11a側にはデバイスを保護するために、被加工物11と略同径の樹脂製の保護部材13が貼り付けられている。
【0019】
カセット載置領域8aの後方(Y軸方向の他方)には、搬送ロボット6により搬出された被加工物11の位置を所定の位置に決める位置決めテーブル12が設けられている。位置決めテーブル12に対してX軸方向の一方に隣接する領域には、ローディングアーム14の基端部が設けられている。
【0020】
ローディングアーム14の基端部よりも後方には円板状のターンテーブル16が設けられている。ターンテーブル16の下面側には、ターンテーブル16を回転させるモーター等の第1の回転駆動源(不図示)が配置されている。
【0021】
ターンテーブル16の上面側は、当該上面に放射状に設けられた各々直線状の複数の仕切板により、3つの扇状領域に区切られている。ローディングアーム14に最も近い扇状領域は、被加工物11をターンテーブル16へ搬入又は搬出する搬入搬出領域Aとなる。
【0022】
搬入搬出領域Aから上面視で時計回りに略120度進んだ扇状領域は、被加工物11の粗研削が行われる粗研削領域Bとなり、搬入搬出領域Aから上面視で反時計回りに略120度進んだ扇状領域は、被加工物11の仕上げ研削が行われる仕上げ研削領域Cとなる。
【0023】
各扇状領域には、1つのチャックテーブル18が設けられている。搬入搬出領域Aに配置されたチャックテーブル18には、ローディングアーム14により、位置決めテーブル12から被加工物11が搬送される。
【0024】
チャックテーブル18の上面は、被加工物11を吸引保持する保持面として機能する。チャックテーブル18の下部には、チャックテーブル18を所定の回転軸の周りに回転させるためのモーター等の第2の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0025】
ターンテーブル16の後方には、基台4の上面から突出する態様で、四角柱状の支持構造22aが設けられている。支持構造22aの前面側には研削送りユニット24が設けられている。
【0026】
研削送りユニット24は、支持構造22aの前面に固定されたZ軸方向に略平行な一対のZ軸ガイドレール26を有する。一対のZ軸ガイドレール26には、Z軸移動プレート28がスライド可能に取り付けられている。
【0027】
Z軸移動プレート28の後方(裏面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。ナット部には、一対のZ軸ガイドレール26の間においてZ軸方向に沿って設けられたZ軸ボールネジ30が、回転可能な態様で連結している。
【0028】
Z軸ボールネジ30の上端部には、パルスモーター32が連結されており、パルスモーター32でZ軸ボールネジ30を回転させれば、Z軸移動プレート28は、Z軸ガイドレール26に沿ってZ軸方向に移動する。
【0029】
Z軸移動プレート28の前面には、粗研削ユニット(研削ユニット)34aが設けられている。粗研削ユニット34aは、Z軸移動プレート28に固定されている円筒状のスピンドルハウジング36を有する。
【0030】
スピンドルハウジング36は、円筒の高さ方向がZ軸方向と略平行に配置されている。各スピンドルハウジング36の側面には、圧電型の加速度センサー(振動測定用のセンサー)38aが設けられている。
【0031】
図2に示す様に、加速度センサー38aは、粗研削ユニット34aのスピンドルハウジング36にも設けられている。加速度センサー38aは、スピンドル40の回転軸(例えば、Z軸方向)に直交する方向(例えば、X軸方向)における粗研削ユニット34aの加速度を測定する。
【0032】
測定された加速度に対して、フィールドバランサー(振動測定ユニット)38のコンピューター38cが所定の演算を施すことにより、粗研削ユニット34aの振動が算出される。この様にして、粗研削ユニット34aの振動が測定される。
【0033】
また、仕上げ研削ユニット(研削ユニット)34b(図1参照)のスピンドルハウジング36に設けられた別の加速度センサー38aを利用して、仕上げ研削ユニット34bの振動が同様に測定される。
【0034】
なお、スピンドルハウジング36に設けられる振動測定用のセンサーは、加速度センサー38aに限定されない。振動周波数に応じて、加速度センサー38a以外のセンサーが適宜選択されてもよい。
【0035】
図2は、粗研削ユニット34aの一部断面側面図である。図2では、構成要素の一部を機能ブロックで示す。スピンドルハウジング36の内部には、高さ方向がZ軸方向と略平行に配置された円柱状のスピンドル40の一部が、回転可能に収容されている。
【0036】
スピンドル40の上端部には、モーター等の第3の回転駆動源(不図示)が設けられている。スピンドル40の下端部には、円板状のフランジ(ホイールマウント)42の上面42a側が固定されている。フランジ42は、円板の中心をその厚さ方向に貫通する貫通孔42cを有する。
【0037】
貫通孔42cは、スピンドル40の高さ方向に沿って形成された円筒状の貫通孔と略同心状に配置されている。図3に示す様に、貫通孔42cの周りには、高さ方向がフランジ42の半径方向42dに略平行に配置された各々円筒状の3つの第1空洞部42eが、フランジ42の周方向42fにおいて略等間隔に形成されている。
【0038】
図3は、第1の実施形態に係るフランジ42を平面視した場合の部分断面図である。半径方向42dにおいて、第1空洞部42eの内側端部は貫通孔42cに接続しており、第1空洞部42eの外側端部には、第1空洞部42eよりも大径の円筒状の第2空洞部42gが形成されている。
【0039】
第2空洞部42gは、第1空洞部42eと略同心状に配置されている。第2空洞部42gには、金属等で形成された円柱状の錘44が配置されている。錘44は、第1空洞部42eの径よりも大きく、第2空洞部42gの径よりも小さい、所定の径を有する。錘44は、第2空洞部42g内を半径方向42dに沿ってスライド可能である。
【0040】
半径方向42dにおいて錘44よりも外側には、圧電アクチュエータ46が固定されている。圧電アクチュエータ46は、円板状の圧電素子46aを有する。圧電素子46aは、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスを有する。
【0041】
圧電素子46aに電圧が供給されると、圧電素子46aは、所定の方向に伸縮する。本実施形態において圧電素子46aの伸縮方向は、半径方向42dと略平行である。スピンドル40の回転に伴い発生する遠心力により、各錘44が半径方向42dの外側に移動すると、錘44の外側側面は、圧電素子46aの一面46bに接触する。
【0042】
このとき、圧電素子46aを半径方向42dに沿って伸縮させると、錘44の位置を調整できる。各錘44の位置を調整することにより、スピンドル40の回転軸に直交する平面内の任意の方向で、粗研削ユニット34aの回転バランスを調整できる。
【0043】
この様に、3つの錘44と、3つの圧電アクチュエータ46とは、バランス調整機構48を構成する。圧電素子46aには、給電用の配線46cが接続されている。配線46cは、正極用の第1配線と、負極用の第2配線と、を含む。
【0044】
配線46cは、錘44に形成された貫通孔44aと、第1空洞部42eと、を通り、貫通孔42cに達している。配線46cは、貫通孔42cに達すると、略90°折れ曲がり、スピンドル40の貫通孔40a内を上方に延伸し、スピンドルハウジング36の上端中央部に配置された回転コネクタ部50に接続している。
【0045】
回転コネクタ部50は、スリップリングを有する。スリップリングは、第1配線に電気的に接続され第1配線と共に回転可能な第1リングと、第2配線に電気的に接続され第2配線と共に回転可能な第2リングと、を有する。
【0046】
第1リングには、導電性の第1ブラシが接触しており、第2リングには、導電性の第2ブラシが接触している。第1ブラシは、直流電源(不図示)の正極に電気的に接続されており、第2ブラシは、直流電源(不図示)の負極に電気的に接続されている。
【0047】
スピンドル40と共に回転する圧電素子46aには、スリップリングを介して電力が供給される。図2に戻って、スピンドル40の側面の一箇所には、所定の波長の測定光を反射する反射シート40bが貼り付けられている。反射シート40bには、回転センサー38bから測定光が照射される。
【0048】
回転センサー38bは、反射シート40bへ光を照射するための発光ダイオード等の発光素子(不図示)を含む。回転センサー38bは、更に、反射シート40bで反射されて光を受光するためのフォトダイオード等の受光素子(不図示)を含む。
【0049】
反射シート40bは、スピンドル40の回転角度を算出するための基準位置として機能する。スピンドル40が所定の回転速度で回転しているとき、受光素子は、所定の時間間隔で反射光を受光する。
【0050】
例えば、スピンドル40が3000rpmで回転しているとき、スピンドル40は、0.02s(=60s/3000)で1回(即ち、360°)回転しているので、受光素子は、0.02s間隔で反射光を受光する。
【0051】
それゆえ、反射シート40bからの反射光を受光したタイミングからの経過時間に基づいて、反射シート40bの位置を基準とするスピンドル40の回転角度を算出できる。なお、回転角度の算出は、コンピューター38cにより行われる。
【0052】
コンピューター38cは、回転センサー38b及び加速度センサー38aと共に、フィールドバランサー38を構成する。コンピューター38cは、プロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含む。
【0053】
当該コンピューター38cにより、加速度センサー38aで測定された加速度から粗研削ユニット34aの振動量(即ち、振動の変位量)が算出され、反射シート40bからの反射光に基づいてスピンドル40の回転角度が算出される。
【0054】
フィールドバランサー38は、スピンドル40の回転角度に対応する粗研削ユニット34aの振動量を所定の分解能(例えば、スピンドル40の回転数が1200rpmの場合、振動量0.001μm)で測定可能である。フィールドバランサー38としては、例えば、シグマ電子工業株式会社製のSB-8002Rを用いることができる。
【0055】
フランジ42の下面42b側には、円環状の粗研削ホイール52aが装着されている。粗研削ホイール52aは、アルミニウム合金等の金属材料で形成された円環状のホイール基台54を有する。
【0056】
ホイール基台54の上面側は、ボルト(不図示)等を利用して、フランジ42の下面42b側に装着されている。ホイール基台54の下面側には、各々ブロック状の複数の粗研削砥石54aが固定されている。
【0057】
複数の粗研削砥石54aは、ホイール基台54の周方向に沿って略等間隔で環状に配列されている。粗研削砥石54aは、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒と、砥粒を固定するためのセラミックス、樹脂等の結合材と、を有する。
【0058】
粗研削ホイール52aの直下は、上述の粗研削領域Bに対応する。研削時には、スピンドル40を所定の回転速度(例えば、3000rpm)で回転させる。このとき、粗研削ユニット34aが振動することがある。
【0059】
例えば、スピンドル40、フランジ42及び粗研削ホイール52aの各々を構成する部品の寸法公差、幾何公差等に起因して、粗研削ユニット34aは、スピンドル40の回転軸に直交する方向に振動することがある。また、研削中に粗研削ホイール52aに付着した研削屑も、粗研削ユニット34aが振動する要因となる。
【0060】
そこで、フィールドバランサー38で測定された粗研削ユニット34aの振動データに基づいて、少なくとも1つの圧電アクチュエータ46の変位量を調整することにより、粗研削ユニット34aの回転バランスを調整する。振動データは、例えば、回転角度(°)と、回転角度に対応する振動量(nm)と、を含む。
【0061】
ここで、図1に戻り、研削装置2の他の構成について説明する。粗研削領域Bには、研削時に被加工物11と粗研削砥石54aとの接触領域へ純水等の研削水を供給する研削水供給ユニット(不図示)が設けられている。
【0062】
支持構造22aに対してX軸方向の他方に隣接する位置には、四角柱状の支持構造22bが設けられている。支持構造22bの前方には、支持構造22aと同様に、研削送りユニット24が設けられている。
【0063】
支持構造22bには研削送りユニット24が設けられており、そのZ軸移動プレート28には、仕上げ研削ユニット34bが連結されている。仕上げ研削ユニット34bも、粗研削ユニット34aと同様に、スピンドルハウジング36、フィールドバランサー38、スピンドル40、第3の回転駆動源、フランジ42等を有する。
【0064】
但し、仕上げ研削ユニット34bのスピンドル40には、フランジ42を介して円環状の仕上げ研削ホイール52bが装着されている。仕上げ研削ホイール52bも、ホイール基台54を有する。
【0065】
ホイール基台54の下面側には、複数の仕上げ研削砥石が、ホイール基台54の周方向に沿って略等間隔で環状に設けられている。仕上げ研削砥石は、粗研削砥石54aの砥粒よりも平均粒径が小さい砥粒と、結合材と、を有する。
【0066】
仕上げ研削ホイール52bの直下は、上述の仕上げ研削領域Cに対応する。搬入搬出領域Aに搬入された被加工物11は、その裏面11b側が粗研削され、更にその後、仕上げ研削された後、再び、搬入搬出領域Aへ戻される。
【0067】
そして、研削後の被加工物11は、アンローディングアーム56によりスピンナ洗浄ユニット58へ搬送される。スピンナ洗浄ユニット58で洗浄された被加工物11は、搬送ロボット6により、カセット載置領域8b上に載置されたカセット10bへ搬送される。
【0068】
ローディングアーム14、ターンテーブル16、チャックテーブル18、研削送りユニット24、粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34b、バランス調整機構48、アンローディングアーム56、スピンナ洗浄ユニット58等は、制御ユニット60により制御される。
【0069】
制御ユニット60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピューターによって構成されている。
【0070】
補助記憶装置には、ソフトウェアが記憶されており、このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット60の機能が実現される。また、補助記憶装置には、フィールドバランサー38から供給される振動データに基づいて、圧電アクチュエータ46を制御する所定のプログラムも記憶されている。
【0071】
制御ユニット60は、フィールドバランサー38で測定された粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの振動データに基づいて、各フランジ42の半径方向42dにおいて少なくとも1つの圧電アクチュエータ46の変位量を調整する。
【0072】
これにより、少なくとも1つの圧電アクチュエータ46に対応する錘44の位置を調整して、粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの各スピンドル40の周りの回転バランスを調整する。それゆえ、スピンドル40の回転軸に直交する方向における粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの振動を低減できる。
【0073】
また、この様に、圧電アクチュエータ46を用いて電気的に錘44の位置を調整することにより、スピンドル40を回転させた状態で、粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの回転バランスの調整を行うことができる。
【0074】
従って、研削中であっても、粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの回転バランスの調整が可能である。加えて、スピンドル40を一旦停止させた上で、手作業で粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの回転バランスの調整を行う場合に比べて、回転バランスの調整に要する作業者の手間を低減できる。
【0075】
なお、第1空洞部42e、第2空洞部42g、錘44、及び、圧電アクチュエータ46の1セットを、フランジ42に4セット以上設けてもよい。但し、少なくとも3セットあれば、スピンドル40の回転軸に直交する平面内で回転バランスを調整できる。
【0076】
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係るフランジ42を平面視した場合の部分断面図である。第2の実施形態のフランジ42では、第2空洞部42gにコイルばね(弾性部材)62が設けられている。
【0077】
半径方向42dにおけるコイルばね62の内側端部は、第2空洞部42gの内側側面に固定されており、半径方向42dにおけるコイルばね62の外側端部は、錘44に連結されている。
【0078】
コイルばね62を設けることにより、第2空洞部42gにおける錘44の位置を略固定できる。コイルばね62は、半径方向42dの外側に錘44を押し出す様に付勢されていてもよく、半径方向42dの内側に錘44を引っ張る様に付勢されていてもよい。
【0079】
第2の実施形態でも、フィールドバランサー38で測定された粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの振動データに基づいて、各フランジ42の半径方向42dにおいて少なくとも1つの圧電アクチュエータ46の変位量を調整する。
【0080】
これにより、粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの各スピンドル40の周りの回転バランスを調整する。それゆえ、スピンドル40の回転軸に直交する方向における粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの振動を低減できる。
【0081】
また、この様に、圧電アクチュエータ46を用いて電気的に錘44の位置を調整することにより、スピンドル40を回転させた状態で、粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの回転バランスの調整を行うことができる。
【0082】
従って、研削中であっても、粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの回転バランスの調整が可能である。加えて、スピンドル40を一旦停止させた上で、手作業で粗研削ユニット34a、仕上げ研削ユニット34bの回転バランスの調整を行う場合に比べて、回転バランスの調整に要する作業者の手間を低減できる。
【0083】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。第1及び第2の実施形態では、バランス調整機構48がフランジ42の内部に設けられたが、バランス調整機構48は、フランジ42の上面42aに設けられてもよい。
【0084】
この場合、上面42aには、第1及び第2の実施形態と同様に、3つの圧電アクチュエータ46が固定される。また、各圧電素子46aと、上面42aの中心と、の間には、半径方向42dに沿って移動可能な態様で、錘44が設けられる。
【0085】
なお、上面42aにバランス調整機構48が設けられる場合、上面42aを覆うカバー(不図示)によりバランス調整機構48の上方及び側方の全体を覆うことが望ましい。カバーで覆うことにより、研削時に、研削屑を含むミストがバランス調整機構48に付着することを防止できる。
【符号の説明】
【0086】
2:研削装置、4:基台、4a:凹部、6:搬送ロボット
8a,8b:カセット載置領域、10a,10b:カセット
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、13:保護部材
12:位置決めテーブル、14:ローディングアーム、16:ターンテーブル
18:チャックテーブル、22a,22b:支持構造
24:研削送りユニット、26:Z軸ガイドレール、28:Z軸移動プレート
30:Z軸ボールネジ、32:パルスモーター
34a:粗研削ユニット(研削ユニット)
34b:仕上げ研削ユニット(研削ユニット)
36:スピンドルハウジング、38:フィールドバランサー(振動測定ユニット)
38a:加速度センサー、38b:回転センサー、38c:コンピューター
40:スピンドル、40a:貫通孔、40b:反射シート
42:フランジ、42a:上面、42b:下面、42c:貫通孔、42d:半径方向
42e:第1空洞部、42f:周方向、42g:第2空洞部
44:錘、44a:貫通孔
46:圧電アクチュエータ、46a:圧電素子、46b:一面、46c:配線
48:バランス調整機構、50:回転コネクタ部
52a:粗研削ホイール、52b:仕上げ研削ホイール
54:ホイール基台、54a:粗研削砥石
56:アンローディングアーム、58:スピンナ洗浄ユニット、60:制御ユニット
62:コイルばね(弾性部材)
A:搬入搬出領域、B:粗研削領域、C:仕上げ研削領域
図1
図2
図3
図4