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特開2022-175898シェアリング管理方法、サーバ、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175898
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】シェアリング管理方法、サーバ、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20221117BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082669
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 恭彰
(72)【発明者】
【氏名】朝日 洋充
(72)【発明者】
【氏名】青柳 鎮
(72)【発明者】
【氏名】市川 武宏
(72)【発明者】
【氏名】福地 竹虎
(72)【発明者】
【氏名】中村 暢之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】車両をシェアするシェアリングサービスにおいて、車両の利用率を高めつつサービス提供者側の利益を向上させる技術を提供する。
【解決手段】シェアリング管理方法は、車両のシェアリングサービスにおいて、当該車両の乗り捨て予約を受け付けるステップと、予約に応じて車両の回送の要否を判断するステップと、車両の回送が必要であると判断された場合、(A)シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)当該シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したときの各々についてコストを計算するステップと、所定の期間における(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定するステップと、決定された依頼先に対し車両の回送を依頼するステップとを有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシェアリングサービスにおいて、当該車両の乗り捨て予約を受け付けるステップと、
前記予約に応じて前記車両の回送の要否を判断するステップと、
前記車両の回送が必要であると判断された場合、(A)前記シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)当該シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したときの各々についてコストを計算するステップと、
所定の期間における前記(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定するステップと、
前記決定された依頼先に対し前記車両の回送を依頼するステップと
を有するシェアリング管理方法。
【請求項2】
前記シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したときのコストは、当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示した後の所定の期間における当該シェアリングサービスの売上の減少の予測値を含む
請求項1に記載のシェアリング管理方法。
【請求項3】
設定された割引率に対し当該回送の経路で車両を使用する予約が入る確率である予約率を計算するステップを含み、
前記(A)の割引料金は、前記予約率が所定の基準を満たす割引率が適用された料金である
請求項1又は2に記載のシェアリング管理方法。
【請求項4】
前記シェアリングサービスのユーザが複数のカテゴリに区分され、
前記予約率が、前記複数のカテゴリの各々に対して計算され、
前記(A)の割引料金は、前記複数のカテゴリのうち予約率が所定の基準を満たすカテゴリの割引率が適用された料金である
請求項3に記載のシェアリング管理方法。
【請求項5】
前記所定の基準を満たすカテゴリに属するユーザに対し前記割引料金を通知するステップ
を有する請求項4に記載のシェアリング管理方法。
【請求項6】
前記(A)、(B)、及び(C)の回送を行った後の所定の期間における売上の予測値を計算するステップと、
前記売上の予測値及びコストに基づいて前記所定の期間における利益を予測するステップと
を有し、
前記回送の依頼先を決定するステップにおいて、前記利益の予測値に基づいて当該回送の依頼先が決定される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシェアリング管理方法。
【請求項7】
前記(A)に基づく割引料金を適用した予約の受け付けを所定期間行った後で、前記回送の依頼先を決定するステップが行われる
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシェアリング管理方法。
【請求項8】
車両のシェアリングサービスにおいて、当該車両の乗り捨て予約を受け付ける受け付け手段と、
前記予約に応じて前記車両の回送の要否を判断する判断手段と、
前記車両の回送が必要であると判断された場合、(A)前記シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)当該シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したときの各々についてコストを計算する計算手段と、
所定の期間における前記(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定する決定手段と、
前記決定された依頼先に対し前記車両の回送を依頼する依頼手段と
を有するサーバ。
【請求項9】
コンピュータに、
車両のシェアリングサービスにおいて、当該車両の乗り捨て予約を受け付けるステップと、
前記予約に応じて前記車両の回送の要否を判断するステップと、
前記車両の回送が必要であると判断された場合、(A)前記シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)当該シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したときの各々についてコストを計算するステップと、
所定の期間における前記(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定するステップと、
前記決定された依頼先に対し前記車両の回送を依頼するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシェアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシェアリングシステムが知られている。例えば特許文献1は、自動走行の車両が乗り捨てられた場合に、その車両を移動する待機場所を決定する技術を開示している。特許文献2は、車両を駐車する駐車場エリアの混雑状況から、空きスペースを確保駐車場エリアが存在するか判定する技術を開示している。特許文献3は、ワンウェイ・カーシェアリングシステムにおいて、特定のステーションにユーザの利用が集中することによる共用車両の偏在を緩和し、共用車両の稼働率を向上させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-124974号公報
【特許文献2】国際公開2015/050242
【特許文献3】特開2016-095750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、自動走行の車両に対する車両制御のため、自動走行車ではない車両を適切な位置に配置するためのドライバーの確保について課題がある。また、特許文献2及び3に記載の技術では、カーシェアリング用の対象車の管理にとどまり、管理者のコストがかかってしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、車両をシェアするシェアリングサービスにおいて、車両の利用率を高めつつサービス提供者側の利益を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両のシェアリングサービスにおいて、当該車両の乗り捨て予約を受け付けるステップと、前記予約に応じて前記車両の回送の要否を判断するステップと、前記車両の回送が必要であると判断された場合、(A)前記シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)当該シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したときの各々についてコストを計算するステップと、所定の期間における前記(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定するステップと、前記決定された依頼先に対し前記車両の回送を依頼するステップとを有するシェアリング管理方法を提供する。
【0007】
本開示の別の一態様は、車両のシェアリングサービスにおいて、当該車両の乗り捨て予約を受け付ける受け付け手段と、前記予約に応じて前記車両の回送の要否を判断する判断手段と、前記車両の回送が必要であると判断された場合、(A)前記シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)当該シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したときの各々についてコストを計算する計算手段と、所定の期間における前記(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定する決定手段と、前記決定された依頼先に対し前記車両の回送を依頼する依頼手段とを有するサーバを提供する。
【0008】
本開示のさらに別の一態様は、コンピュータに、車両のシェアリングサービスにおいて、当該車両の乗り捨て予約を受け付けるステップと、前記予約に応じて前記車両の回送の要否を判断するステップと、前記車両の回送が必要であると判断された場合、(A)前記シェアリングサービスのユーザに対し当該車両を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)当該シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したときの各々についてコストを計算するステップと、所定の期間における前記(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定するステップと、前記決定された依頼先に対し前記車両の回送を依頼するステップとを実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両をシェアするシェアリングサービスにおいて、車両の利用率を高めつつサービス提供者側の利益を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るシェアリングシステムの概要を例示する図。
図2】シェアリングシステムの機能構成を例示する図。
図3】車両のハードウェア構成を例示する図。
図4】サーバのハードウェア構成を例示する図。
図5】予約受け付けに係るサーバの動作を示すフローチャート。
図6】予約データベースを例示する図。
図7】検索履歴データベースに記録されているデータを例示する図。
図8】予約データベースに記録されるデータを例示する図。
図9】回送依頼に係るサーバの動作を示すフローチャート。
図10】回送条件データを例示する図。
図11】コスト計算処理の詳細を例示する図。
図12】抽出された予約履歴を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.構成
図1は、一実施形態に係るシェアリングシステム1の概要を例示する図である。シェアリングシステム1は、車両20を複数のユーザでシェアするシェアリングサービスを提供するためのシステムである。シェアリングシステム1は、複数の車両20(図1では3台示している)を有する。
【0012】
シェアリングシステム1は、サーバ10、車両20、及びユーザ端末30を有する。サーバ10は、シェアリングサービスの利用料に関する処理を行う。サーバ10は、その他、車両20の予約を管理する。サーバ10は、シェアリングサービスの提供事業者により管理及び運営される。車両20は、シェアリングサービスにおけるシェアの対象物である。車両20は、例えば、普通自動車、小型自動車、軽自動車等の4輪車だけでなく、2輪自動車も含む。小型自動車としては、例えば、超小型EV(Electric Vehicle)が含まれる。本開示における超小型EVとは、乗車定員が4名以下、最高速度60km/h、定格出力0.6kw以上、排気量50cc以上660cc以下、長さ2.5m以下、幅1.3m以下、高さ2.0m以下、最大積載量350kg以下の特徴を一例とする、軽自動車より小型の電気自動車をいう。ユーザ端末30は、ユーザが利用する端末装置である。ユーザ端末30は、シェアリングシステム1へのユーザ登録、車両20の検索又は予約に用いられる。
【0013】
シェアリングサービスにおいて、車両20の出発地及び返却地は、シェアリングサービスの提供事業者によりあらかじめ決められる。一例において、シェアリングサービスの提供事業者はサービスステーション又は小売店舗を営業しており、その敷地を出発地及び返却地として提供する。シェアリングサービスにおいて出発地及び返却地として提供される場所を場所P1、P2、P3、・・・という。
【0014】
図2は、シェアリングシステム1の機能構成を例示する図である。シェアリングシステム1は、記憶手段11、予約受け付け手段12、判断手段13、計算手段14、決定手段15、依頼手段16、及び制御手段19を有する。記憶手段11は、各種のデータ及びプログラムを記憶する。予約受け付け手段12は、ユーザ端末30からシェアリングサービスにおける車両20の使用予約を受け付ける。この使用予約は、出発地と返却地とが異なっている、いわゆる乗り捨て(又は片道)の予約を含む。判断手段13は、車両20の回送の要否を判断する。計算手段14は、車両20の回送が必要であると判断された場合、(A)シェアリングサービスのユーザに対し車両20を回送する経路の予約に割引料金を提示したとき、(B)ユーザに割引料金以外のインセンティブを付与して回送を依頼したとき、及び(C)シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に回送を依頼したとき、のそれぞれについてコストを計算する。なお(A)のユーザとは、車両20を利用することを目的としてシェアリングシステム1に登録しているユーザをいい、以下では「一般ユーザ」ということもある。(B)のユーザは、シェアリングサービスを提供する事業者から車両20の回送の依頼を受けるためにシェアリングシステム1に関わっているユーザをいい、以下では「他の事業者」という。決定手段15は、所定の期間における(A)、(B)、及び(C)のコストの総和が所定の基準を満たす回送の依頼先を決定する。依頼手段16は、決定された依頼先に対し前記車両の回送を依頼する。制御手段19は、各種の制御を行う。制御手段19が行う制御には、例えば車両20を使用するユーザの認証が含まれる。この例において、記憶手段11、予約受け付け手段12、判断手段13、計算手段14、決定手段15、依頼手段16、及び制御手段19はいずれもサーバ10に実装される。
【0015】
この例において記憶手段11が記憶するデータには、予約データベース(DB)911、検索履歴データベース912、料金データベース913、外注料金データベース914、勤務表915、及びPOS(Point of Sale)履歴916が含まれる。予約データベース911は、車両20の使用予約を記録したデータベースである。予約データベース911には過去及び将来の予約が記録されており、過去の分はすなわち予約実績を示す。検索履歴データベース912は、ユーザがシェアリングシステム1において車両20の空き状況を検索した履歴を示す。料金データベース913は、一般ユーザが車両20を使用する際の料金を示す。外注料金データベース914は、シェアリングサービスを提供する事業者のために他の事業者が車両20の回送を行う際の料金を示す。勤務表915は、シェアリングサービスを提供する事業者の従業員の勤務予定を示す。POS履歴916は、シェアリングサービスを提供する事業者の顧客対応の履歴を示す。
【0016】
図3は、車両20のハードウェア構成を例示する図である。詳細な説明は省略するが、車両20は、電気自動車としての基本的な構成、例えば、ボディ、モーター、タイヤ、ドア、シート、ステアリングホイール、及び計器等を有する。車両20は、さらにロック制御装置200(ロック制御手段21の一例)を有する。ロック制御装置200は、カードリーダー210、電気錠220、制御装置230、通信装置240、及びキーボックス250を有する。カードリーダー210は、ICカードからユーザ識別情報を読み取る。ここで用いられるICカードは、例えば、運転免許証(すなわちICカード免許証)及びこのシェアリングサービスの専用ICカードである。ロック制御装置200は、車両20において、例えばドアガラスの内側に設置される。ユーザは、ガラス越しにICカードをカードリーダー210にかざす。カードリーダー210は、かざされたICカードからユーザ識別情報を読み取る。ユーザ識別情報は、運転免許証の場合は免許証番号であり、専用ICカードの場合はシェアリングシステム1により付与された識別番号である。制御装置230は、ロック制御装置200の各要素を制御する装置であり、プロセッサ及びメモリを含む。制御装置230は、カードリーダー210が読み取ったユーザ識別情報を含む利用情報をサーバ10に送信する。サーバ10へのデータ送信には、通信装置240が用いられる。通信装置240は、所定の無線通信規格(例えばLTE(Long Term Evolution))に従ってサーバ10と通信する。利用情報が認証されたことを示す情報をサーバ10から通信装置240を介して受信すると、制御装置230は、電気錠220を制御してドアのロックを解錠させる。電気錠220は、車両20のドアを施錠及び解錠する。キーボックス250は、キーシリンダを有する。車両20を利用しないときは、車両20のモーターを起動するためのキーはキーシリンダに挿入されている。キーシリンダは、貸し出し位置と返却位置とを有する。貸し出し位置において、キーシリンダからキーに抜き差しが可能である。キーシリンダに挿入した状態でキーを回すと返却位置となる。貸し出し位置において、キーシリンダからキーを抜くことはできない。車両20のドアを解錠すると、ユーザはキーシリンダに刺さっているキーを貸し出し位置まで回転させる。ユーザはキーボックス250からキーを抜き、運転席にあるキーシリンダにキーを差し込んでモーターを起動する。
【0017】
図4は、サーバ10のハードウェア構成を例示する図である。サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)110、メモリ120、ストレージ130、通信IF(Interface)140を有するコンピュータ装置である。CPU110は、プログラムに従って各種の演算を行う処理装置である。メモリ120は、CPU110がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置であり、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。ストレージ130は、各種のデータ及びプログラムを記憶する補助記憶装置であり、例えばSSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)を含む。通信IF140は、所定の通信規格に従って他の装置と通信するための装置であり、例えばNIC(Network Interface Card)を含む。
【0018】
この例において、ストレージ130が記憶するプログラムには、コンピュータ装置をシェアリングシステム1におけるサーバ10として機能させるためのプログラム(以下「サーバプログラム」という)が含まれる。CPU110がサーバプログラムを実行することにより、コンピュータ装置に図2の機能が実装される。CPU110がサーバプログラムを実行している状態において、メモリ120及びストレージ130の少なくとも一方が記憶手段11の一例である。CPU110が、予約受け付け手段12、判断手段13、計算手段14、決定手段15、依頼手段16、及び制御手段19の一例である。
【0019】
ユーザ端末30のハードウェア構成の詳細な説明は省略する。ユーザ端末30は、スマートフォン又はパーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置である。ユーザ端末30にはコンピュータ装置をシェアリングシステム1におけるユーザ端末30として機能させるためのプログラム(以下「クライアントプログラム」という)がインストールされている。クライアントプログラムは、例えば、シェアリングシステム1専用のアプリケーションプログラム又は汎用のウェブブラウザである。
【0020】
2.動作
シェアリングシステム1の動作を説明する。以下では、シェアリングシステム1の動作を予約受け付け処理及び回送依頼処理の2つに分けて説明する。予約受け付け処理は、車両の使用予約を受け付ける処理である。回送依頼処理は、車両の回送を依頼する処理である。
【0021】
2-1.予約受け付け処理
図5は、予約受け付けに係るサーバ10の動作を示すフローチャートである。図5のフローは、例えば、ユーザ端末30がシェアリングサービスのサイトにアクセスしてきたことをトリガとして開始される。
【0022】
ステップS101において、サーバ10は、シェアリングサービスのサイトにアクセスしてきたユーザ端末30に対し、空き検索の条件を入力するUI画面を表示させるためのデータを送信する。ユーザ端末30は、このデータに従って空き検索の条件を入力するUI画面を表示する。このUI画面は、検索条件の項目として、予約日、出発時刻、返却時刻、出発地、返却地、及び車両IDを含む。予約者IDは、シェアリングサービスの予約をしたユーザを特定する識別情報(又はユーザID)である。予約日は、車両が使用される日を示す。出発時刻及び返却時刻はそれぞれ、車両の使用が開始される時刻及び終了される時刻を示す。出発地及び返却地は、出発する(すなわち車両の使用を開始する)場所及び返却する(すなわち車両の使用を終了する)場所の識別情報である。このUI画面は検索開始を指示するUIオブジェクト(例えば検索ボタン)を有している。このUIオブジェクトを介してユーザから検索開始の指示を受けると、ユーザ端末30は、サーバ10に対し検索要求を送信する。この検索要求は、検索条件の項目を含む。
【0023】
ユーザ端末30から検索要求を受信すると、サーバ10は、その検索要求に含まれる検索条件を満たす空き車両があるか判断する(ステップS102)。この判断において、サーバ10は、予約データベース911を参照する。
【0024】
図6は、予約データベース911を例示する図である。予約データベース911は、車両20の各々について、その予約状況(又は使用予定)を示す。図6においては、各行が時間帯を、各列が車両を示すタイムテーブルでデータが示されている。例えば、車両CA1が、2021年3月24日の10:00から12:00まで予約済であり、その出発地及び返却地がP1及びP3であることが示される。なお予約データベース911において、出発予定時刻及び返却予定時刻の前後には所定(例えば15分)のマージン(すなわち予約不可の時間帯)が設定されてもよい。
【0025】
検索条件を満たす空き車両があるか否かの判断は、例えば以下のように行われる。
(ア)サーバ10は、予約日の出発時刻から返却時刻までの時間帯において、連続して使用予定が空である車両を検索する。出発時刻及び返却時刻が2021年3月24日の10:00及び12:00である場合、図6の例において車両CA1はこの時間帯の予定が空であり、ヒットする。
(イ)サーバ10は、(ア)でヒットした車両のうち、その時間帯以前の最後の予定の返却地(すなわち検索条件における出発時刻における車両の所在地)が検索条件における出発地と同じ車両を検索する。図6の例において車両CA1の所在地は場所P1である。検索条件における出発地がP1である場合、車両CA1がヒットする。
(ウ)サーバ10は、(イ)でヒットした車両のうち、その時間帯以後の最初の予定の出発地が検索条件における返却地と同じ車両を検索する。図6の例において車両CA1には、2021年3月24日の18:00から出発地をP3とする予約が入っている。検索条件における到着地がP3である場合、車両CA1がヒットする。
(エ)サーバ10は、(イ)でヒットした車両のうち、その時間帯以後の最初の予定の出発時刻までの空き時間がしきい値時間(例えば2時間)以上空いている車両を検索する。図6の例では検索条件における到着時刻から次の出発時刻まで2時間空いている車両CA1がヒットする。
(オ)(ウ)又は(エ)でヒットした車両があれば、サーバ10は、その検索条件を満たす空き車両があると判断する。(ア)、(イ)、(ウ)、及び(エ)でヒットする車両が1台も無ければ、サーバ10は、その検索条件を満たす空き車両が無いと判断する。
【0026】
再び図5を参照する。ステップS103において、サーバ10は、この検索要求及び判断の結果を検索履歴データベース912に書き込む。検索履歴データベース912は、ユーザ端末30から受信した検索要求及びその検索条件を満たす空き車両の有無を記録したデータベースである。
【0027】
図7は、検索履歴データベース912に記録されているデータを例示する図である。検索履歴データベース912は、複数のレコードを有する。各レコードは、1件の検索に対応する。この例において、各レコードは、検索日時、利用日、出発時刻、返却時刻、出発地、返却地、及び空き車両の有無を含む。検索日時は、空き車両の検索が行われた日時を示す。利用日は、車両が使用される日を示す。出発時刻及び返却時刻はそれぞれ、車両の使用が開始される時刻及び終了される時刻を示す。出発地及び返却地は、車両の使用を開始する場所及び終了する場所の識別情報である。空き車両の有無は、ステップS102における判断結果を示す。図7の最上行のレコードは、2021年3月21日の15:00に、2021年3月24日の10:00から12:00において場所P1から場所P3までの利用条件が検索され、この条件に対して空き車両があったことを示す。
【0028】
再び図5を参照する。ステップS104において、サーバ10は、検索要求に対する応答をユーザ端末30に送信する。この応答は、検索条件を満たす空き車両の有無、及び検索条件を満たす空き車両がある場合にはその車両の属性情報(例えば、車種及び料金)を含む。ユーザ端末30は、この応答を示すUI画面を表示する。ユーザは、この応答を見て、予約を行う場合には予約を指示するUIオブジェクト(例えば予約ボタン)を介して予約を指示する。
【0029】
サーバ10は、ユーザ端末30から予約の指示を受信する(ステップS105)。ユーザ端末30から予約の指示を受信すると、サーバ10は、その予約を示すレコードを予約データベース911に記録する(ステップS106)。
【0030】
図8は、予約データベース911に記録されるデータを例示する図である。図8は、図6と同じデータを示しているがその表現が異なっている。すなわち図6は車両毎のタイムテーブル形式で予約を示していたが、図8では予約毎の表形式で予約が示される。予約データベース911は、複数のレコードを有する。各レコードは、1件の予約に対応する。この例において、各レコードは、予約者ID、予約日、出発時刻、返却時刻、出発地、返却地、及び車両IDを含む。予約者IDは、シェアリングサービスの予約をしたユーザを特定する識別情報(又はユーザID)である。シェアリングシステム1は予約に際しユーザにログインを要求し、サーバ10はログイン処理により予約者IDを特定する。車両IDは、その予約に対し割り当てられる車両の識別情報である。図8においては、ステップS108において記録された新たな予約が最上行に示される。図8の最上行レコードは、予約者ID「A10001」のユーザが、2021年3月24日の13:00から16:00において、場所「P1」から場所「P3」まで車両ID「CA1」の車両の使用を予約していることを示す。
【0031】
再び図5を参照する。予約データベース911に新たな予約を書き込むと、サーバ10は、検索履歴データベース912に検索の最終結果を書き込む(ステップS107)。この例において、検索の最終結果は「予約成立」及び「予約不成立」のいずれかである。「予約成立」という結果は、その検索条件でヒットした車両が予約されたことを示す。「予約不成立」という結果は、その検索条件でヒットした車両が予約されなかったことを示す。ステップS104の応答を受けてユーザ端末30が表示するUI画面には予約しないことを指示するUIオブジェクト(例えばキャンセルボタン)が含まれてもよく、キャンセルボタンが押されると、サーバ10は検索履歴データベース912に「予約不成立」という最終結果を書き込む。あるいは、ステップS104の応答を送信してからユーザの指示を受信しないまま所定のタイムアウト時間が経過した場合、サーバ10は、検索履歴データベース912に「予約不成立」という最終結果を書き込んでもよい。サーバ10は、さらに、検索履歴データベースにユーザIDを書き込む。サーバ10は空き車両の検索を受け付ける際にユーザにログインを要求する。サーバ10はログイン処理によりユーザIDを特定する。
【0032】
2-2.回送依頼処理
図9は、回送依頼に係るサーバ10の動作を示すフローチャートである。図9のフローは、所定のイベント(例えば毎日16時になったというイベント)をトリガとして開始される。
【0033】
ステップS201において、サーバ10は、回送要否判断に用いられるデータを取得する。この例において、回送要否の判断には、予約情報及び検索履歴が用いられる。サーバ10は、予約データベース911から第1対象期間における予約情報を取得する。第1対象期間はその時点より後の時刻を開始時刻とする所定の時間長を有する期間であり、例えば当日18時から翌日18時までの期間である。ステップS201において抽出される予約情報は、出発時刻から返却時刻までの時間帯の少なくとも一部が第1対象期間に含まれている予約情報である。
【0034】
さらにサーバ10は、検索履歴データベース912から第2対象期間における検索履歴を取得する。第2対象期間はその時点よりも前の時刻を終了時刻とする所定の時間長さを有する期間であり、例えば当日16時以前の2週間の期間である。ステップS201において抽出される検索履歴は、出発時刻から返却時刻までの時間帯の少なくとも一部が第2対象期間に含まれている検索履歴である。
【0035】
ステップS202において、サーバ10は、回送の要否を判断する。この例において、回送の要否は、予約情報及び検索履歴に基づいて判断される。具体的には、サーバ10は、ステップS201において取得された検索履歴のうち最終結果が「予約不成立」であるレコードに対応する時間帯において、その時間帯に別の出発地に空き車両があることが予約履歴において示されるかどうか判断する。これはすなわち、シェアリングサービス全体として見れば空き車両はあったのに、希望の使用開始日時に開始場所に車両が無かったために予約を受け付けることができなかったケースがあったことを意味する。その時間帯に別の出発地に空き車両があったと判断された場合、サーバ10は、この検索履歴に対応する経路の回送が必要であると判断する。回送要と判断された場合、サーバ10は、処理をステップS203に移行する。その時間帯に別の出発地にも空き車両が無かったと判断された場合、サーバ10は、回送不要であると判断する。回送不要と判断された場合、サーバ10は、図9の処理を終了する。
【0036】
ステップS203において、サーバ10は、要求される回送条件を示すデータを生成する。例えば、3/24の12:00から出発地P1とする最終結果「予約不成立」の検索履歴があった場合、サーバ10は、返却地がP1であり、返却時刻が3/24の12:00である回送条件データを生成する。
【0037】
図10(A)は、回送条件データを例示する図である。回送条件データは、複数のレコードを含む。各レコードは、出発日時、返却日時、出発地、返却地、及び車両IDを含む。なお回送に関しては車両20をサービスとして使用しているわけでない(貸し出しを受けているわけではない)ので「返却」という語は適切ではないが、ここでは予約情報との整合性を保つため「返却」という語を使用する。返却日時及び返却地は、その日時及びその場所への返却(又は到着)が求められることを示す。車両IDは回送される車両を示すが、車両が特定されていない段階では回送が必要な台数が記録される。すなわち図10(A)において車両IDは、その日時及びその場所への返却が求められる車両の数(すなわち検索履歴の数)を示す。図10の最上行のレコードは、2021年3月24日の14:00までに場所P1に返却される車両が2台必要であることを示す。
【0038】
ステップS204以降で回送のコストを計算するが、コストを計算するためには回送の返却地及び返却時刻だけでなく、他の項目も具体的に設定される必要がある。すなわち、サーバ10は、回送条件データに対し、出発地、出発時刻、及び車両を特定する。詳細には例えば以下のとおりである。
・サーバ10は、複数の回送条件の各々に対して優先順位を与える。例えばサーバ10は、検索履歴の数が多い回送条件に対して高い優先順位を与える。
・サーバ10は、優先順位の高いものから順に対象となる回送条件を1件ずつ特定する。
・サーバ10は、対象回送条件に対し車両を割り当てる。サーバ10は、対象回送条件の到着時刻以降の予約が入っていない車両を対象回送条件に割り当てる。該当する車両が複数ある場合、サーバ10は、これら複数の車両に優先度を与える。一例においては対象回送条件における返却時刻までの空き時間が最も短い車両に対し最も高い優先度が与えられる。あるいは、対象回送条件における返却地に最も近い位置にある車両に対し最も高い優先度が与えられてもよい。
・サーバ10は、最も高い優先度が与えられた車両を対象回送条件に割り当てる。対象回送時刻条件における出発時刻は、出発地(すなわち割り当てられた車両の所在地)から返却値までの移動時間を考慮して決められる。
・サーバ10は、次に高い優先順位を有する回送条件を対象回送条件として処理を繰り返す。
以上の処理によって回送条件が詳細に決定される。図10(B)は、出発日時、出発地、及び車両が特定された回送を示す
【0039】
再び図9を参照する。ステップS204において、サーバ10は、各回送について、その回送にかかるコストを計算する。この例において、回送処理の主体は(A)一般ユーザ、(B)他の事業者、及び(C)自社従業員の3つが想定される。一般ユーザは、シェアリングサービスを使用して車両の貸し出しを受けるユーザである。他の事業者とは、例えば、あらかじめ提携している事業者又はマッチングプラットフォームで募集するいわゆるギグワーカーである。自社従業員とは、シェアリングサービスを実施する事業体の従業員である。ここでは、これら3つの主体の各々についてコストが計算される。
【0040】
図11は、ステップS204におけるコスト計算処理の詳細を例示する図である。ステップS2041において、サーバ10は、一般ユーザによる回送、すなわち料金割引におけるコスト計算に用いられるデータを取得する。この例において、料金割引におけるコスト計算には、料金情報及び予約履歴が用いられる。サーバ10は、料金データベース913から、第1対象期間に対応する料金情報を取得する。この例において、料金情報は、基本料金、割引適用条件、割引率、及び割引しきい値を含む。基本料金は単位時間当たりの利用料金(例えば500円/15分)として定義される。この例において基本料金は全ての車両について共通なので表には記載されていない。割引適用条件は、割引が適用される条件を示す。例えば図11の最上行は、土日祝日の9:00までに場所P1に返却する予約に対しては20%の割引が適用されることを示す。割引しきい値は、割引率の許容される最大値を示す。
【0041】
さらにサーバ10は、予約データベース911から予約履歴を取得する。ステップS2401において取得される予約履歴は、第1対象期間と類似する属性を有する過去の期間(以下「第3対象期間」という)における予約履歴である。予約履歴の属性とは、例えば、季節、曜日、祝祭日かどうか、年度、天気(予報)などの外部要因に関する事項をいう。例えばこれら複数の属性項目に対し重みが与えられ、第1対象期間との類似度が数値化される。予約データベース911又は他のデータベースにこれらの事項が記録されており、サーバ10は、これらの情報を参照して、第3対象期間を特定する。サーバ10は、予約データベース911から、第3対象期間の予約履歴を抽出する。ここでは説明を簡単にするため、過去5年分の同時期(例えば第1対象期間の前後1月)の同じ曜日の予約履歴が取得される例を用いる。例えば第1対象期間が2021年3月24日水曜日の18:00から3月25日木曜日の18:00であった場合、第3対象期間は、2016年から2021年の各年において、2月24日の18:00から4月25日の18:00までのうち平日の期間である。
【0042】
図12は、抽出された予約履歴を例示する図である。抽出される予約履歴は複数のレコードを有する。各レコードは1件の予約を示す。各レコードは、予約者ID、予約日時、利用日、出発時刻、返却時刻、出発地、返却地、車両ID、割引率、及び検索の有無を含む。割引率は、その貸し出し(予約)に対して実際に適用された料金の割引率を示す。事前検索の有無は、予約前に同じユーザが同じ時間帯、出発地、及び返却地の空き検索をしていたかどうかを示す。それ以外の項目は既に説明したとおりである。
【0043】
再び図11を参照する。ステップS2042において、サーバ10は、回送条件を満たす経路に料金の追加割引を適用したと仮定した場合のコストを計算する。まず、サーバ10は、予約される確率がしきい値を超える割引率(以下「候補割引率」)を計算する。詳細には例えば以下のとおりである。
【0044】
(ア)サーバ10は、追加割引率の初期値(例えば5ポイント)を設定する。例えば料金データベース913により割引率が20%と定義されている時間帯であれば、追加割引率5ポイントを加算して割引率は25%となる。
【0045】
(イ)サーバ10は、追加割引率を含めて設定した割引率を適用したと仮定した場合、その条件で予約が入る確率を計算する。サーバ10は、ステップS2401において取得された予約履歴のうち、設定した割引率以下の条件((ア)の例では割引率が0~25%)に相当する予約履歴を抽出する。サーバ10は、ここで抽出された予約履歴の合計予約時間を、ステップS2401において取得された予約履歴の総稼働可能時間で除することにより稼働率を計算する。サーバ10はこうして計算された稼働率を予約率として扱う。例えば抽出された予約履歴に対応する総稼働可能時間が1,000時間であった場合において、割引率が0~25%の条件で予約が入っていた時間が合計で750時間あった場合、予約率は75%である。
【0046】
(ウ)予約率がしきい値(例えば75%)を超えた場合、サーバ10は、その追加割引率を含めた割引率を候補割引率として決定する。
【0047】
(エ)予約率がしきい値(例えば75%)以下であった場合、サーバ10は、追加割引率を更新(例えば5ポイント追加)して再び(イ)の処理を実行する。追加割引率を更新すると料金データベース913に定義されている割引しきい値を超えてしまう場合、サーバ10は追加割引率を設定せず処理をステップS2043に移行する。この場合、サーバ10は、この車両20を割引料金による回送の対象から除外する。
【0048】
この例においては、割引料金の適用によるその予約の(割引無しの場合と比較した)売上の低下だけではなく、将来の一定期間における売上の低下も考慮する。すなわち、繰り返し割引料金を提示すると、ユーザの間に例えば「土曜日の12時頃P3からP1への予約は割引になる可能性が高いらしい」という情報が広まると、従来は正規料金で予約していたユーザが割引を期待して正規料金での予約を控える可能性がある。そうすると本来得られたであろう売上が得られなくなってしまう可能性が出てくる。このように、1回の割引が単に1回の予約分の売上の減少だけでなく、その後の長期間に渡る売上の減少を招く可能性がある。そこで、サーバ10は、この1回の割引の提示が将来の売上に与える影響(すなわち予測される損失)を計算する。具体的には、サーバ10は、過去の所定期間における回送処理の履歴及び売上の履歴を取得する。一例において、サーバ10は、機械学習を用いて割引料金の提供が将来の売上に与える影響を予測する。サーバ10は、機械学習モデルにアクセス可能である。この機械学習モデルは、ある所定期間T1(例えば第1対象期間に相当する24時間)における、回送目的の割引料金の提示の回数及び延べ割引率を入力層に、その期間に後続するより長い所定期間T2(例えばその後の半年間)における売上の、対象期間T3(例えば期間T2の前年同期)における売上との差を出力層に教師データとして与えて機械学習をさせたモデルである。サーバ10は、この機械学習モデルの入力層にその1回の候補割引率を入力する。サーバ10は、この機械学習モデルの出力層から、所定期間T2(例えばその後の半年間)における売上と対象期間T3との売上の差(すなわち売上変化の予測値)を、料金割引によるコストとして取得する。
【0049】
再び図11を参照する。ステップS2043において、サーバ10は、回送条件を満たす回送を他の事業者に依頼した場合(すなわち回送を外注した場合)のコスト計算に用いられるデータを取得する。回送を外注した場合のコストの計算には、外注料金データベース914が用いられる。外注料金データベースにおいて、回送作業を請け負う事業者毎にその料金体系が定義されている。サーバ10は、外注料金データベース914から、第1対象期間に対応する料金情報を取得する。
【0050】
ステップS2044において、サーバ10は、回送条件を満たす回送を外注した場合のコストを計算する。ある事業者は回送にかかった時間に対して料金を請求し、別の事業者は回送にかかった距離に対して料金を請求するというように、料金体系は事業者により異なる。サーバ10は、これら複数の事業者の各々について回送を外注した場合の費用を計算し、その代表値(例えば最小値又は平均値)を、回送を他の事業者に依頼した場合のコストとして計算する。
【0051】
ステップS2045において、サーバ10は、回送条件を満たす回送を、シェアリングサービスを実施する事業体の従業員に行わせた場合(すなわち自社で回送した場合)のコスト計算に用いられるデータを取得する。自社で回送した場合のコストの計算には、勤務表915及びPOS履歴916が用いられる。
【0052】
ステップS2046において、サーバ10は、自社で回送した場合のコストを計算する。サーバ10は、勤務表915を参照し、回送条件を満たす時間帯において回送作業を行うことができる従業員及びその時間帯を特定する。サーバ10は、特定された時間帯における従業員の余裕度を計算する。余裕度とは、従業員が与えられた業務(例えば顧客対応)以外の業務をする余裕を示す指標であり、数値が高いほど余裕があることを示す。サーバ10は、POS履歴916から第3対象期間の記録を抽出する。抽出された記録から、第3対象期間における店舗の混雑状況が分かる。サーバ10は、POS履歴から店舗の混雑状況を数値化(すなわち余裕度を計算)するためのアルゴリズムを有する。サーバ10は、このアルゴリズムに従って余裕度を計算する。余裕度が基準より高い場合、サーバ10は、特定された社員に車両の回送を行わせた場合の交通費を自社で回送した場合のコストとして計算する。交通費は、例えば距離×単価で計算される。余裕度が基準より高い場合、サーバ10は、交通費に加え、顧客対応ができないことによる機会損失を金額として数値化し、これをコストとして計算する。
【0053】
再び図9を参照する。ステップS205において、サーバ10は、複数の回送に対し、(A)一般ユーザ、(B)他の事業者、及び(C)自社従業員を回送主体として組み合わせ、各組み合わせに対し総コストを計算する。例えば、ステップS203において特定される回送が3件あった場合、これら3件の回送に対する回送主体の組み合わせは理論的には27通りである。サーバ10は、複数の回送の各々について、(A)、(B)、及び(C)のうちどの主体に依頼する場合がその回送のコストが最小になるか判断する。(A)一般ユーザを主体とする回送のコストは、ステップS2402において計算される。(B)他の事業者を主体とする回送のコストは、ステップS2404において計算される。(C)自社従業員を主体とする回送のコストは、ステップS2406において計算される。個々の回送のコストを最小にする主体の組み合わせが、複数の回送のコストを全体として最小にする組み合わせである。あるいは、サーバ10は、これら複数の組み合わせの各々に対し、総コストを計算してもよい。サーバ10は、3件の回送を全て(A)のコストで計算した場合、2件の回送を(A)のコストで1件の回送を(B)のコストで計算した場合、・・・と27通りの全てについて総コストを計算する。
【0054】
ステップS206において、サーバ10は、総コストを計算した組み合わせの中から一の組み合わせを選択する(すなわち回送の依頼先を決定する)。一例において、サーバ10は、これら複数の組み合わせのうち総コストが最低となる組み合わせを選択する。ステップS207において、サーバ10は、選択された組み合わせに従って回送計画を作成する。ステップS208において、サーバ10は、作成された回送計画を実行する(すなわち回送を依頼する)。実行主体が一般ユーザであると決定された回送については、サーバ10はユーザに割引料金を通知する。具体的には、サーバ10は、その回送条件に適合する予約をステップS2042において決定された割引率で受け付けるUI画面を生成し、サーバ10は、アクセスしてきたユーザ端末30に対してこのUI画面を送信する。実行主体が他の事業者であると決定された回送については、サーバ10は、他の事業者に対しメール、ファクシミリ、又は電話により車両の回送を依頼する。実行主体が自社従業員であると決定された回送については、サーバ10は、その従業員に対しメール、ファクシミリ、又は電話により車両の回送を依頼する。
【0055】
本実施形態によれば、複数の回送依頼先候補の中からコストを考慮して回送依頼先を選択することができ、車両20の利用率を高めつつ、シェアリングサービスの事業者の利益を向上させることができる。
【0056】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載した事項のうち2つ以上のものが組み合わせて適用されてもよい。
【0057】
3-1.予約受け付け
車両20の使用予約に関し、空き車両の検索に対して車両を割り当てるアルゴリズムは実施形態において例示したものに限定されない。ユーザにより入力された条件に適合する車両を割り当てるものであれば、どのようなアルゴリズムが採用されてもよい。
【0058】
3-2.回送依頼フローのトリガ
図9のフローを開始するトリガとなるイベントは実施形態において例示したものに限定されない。例えば、近隣の公共交通機関において事故が発生したという情報、又は所定の道路において渋滞が発生したという情報をサーバ10が受信したというイベントをトリガとして図9のフローが開始されてもよい。あるいは、図9のフローは、車両20の乗り捨て予約が発生したことをトリガとして開始されてもよい。
【0059】
3-3.回送要否判断
回送要否判断において参照されるデータ及び判断の手法は実施形態において例示されたものに限定されない。例えば、回送要否の判断には検索履歴が用いられず、予約情報のみが用いられてもよい。この場合においては、例えば、車両20の偏在率を用いて回送要否が判断される。車両の偏在率とは、ある基準時点において各場所に存在する車両20の数の、基準台数に帯する割合をいう。基準台数は場所毎に定められる。サーバ10は、偏在率が上限しきい値を超えている場所、及び下限しきい値を下回っている場所の少なくとも一方が存在した場合、回送が必要であると判断する。なお偏在率のしきい値は全ての場所に共通でもよいし場所毎に定められてもよい。
【0060】
別の例において、場所毎に車両20の数の基準値(上限値及び下限値)が設定され、サーバ10は、車両20の数が上限値を超えている場所、及び下限値を下回っている場所の少なくとも一方が存在した場合、回送が必要であると判断する。
【0061】
上記の例における偏在率のしきい値及び車両20の数の基準値は、近隣のイベントの開催予定、季節、曜日、平日か祝祭日かの別、及び天気予報の少なくとも一種に応じて変更されてもよい。例えば、サーバ10は、イベントの開催予定がある場合には開催前の時間帯には駅の近くの場所の下限しきい値又は下限値を上げ、開催後の時間帯にはイベント会場近くの場所の下限しきい値又は下限値を上げる。
【0062】
サーバ10は、上記の例における偏在率のしきい値及び車両20の数の基準値は、図9のフローをトリガしたイベントに応じて変更してもよい。例えば、公共交通機関において事故が発生したことを示す情報をサーバ10が受信したというイベントをトリガとして図9のフローが開始された場合、サーバ10は、駅又はバス停の近くにある場所に車両20が集まりやすくなるように、偏在率のしきい値及び車両20の数の基準値を変更する。
【0063】
あるいは、サーバ10は、予約情報に加えて、路線バスの混雑状況又はタクシーの配車情報を取得し、混雑している地点の近くの場所に車両20が集まりやすくなるように、偏在率のしきい値及び車両20の数の基準値を変更してもよい。
【0064】
3-4.個々のコスト計算
個々のコスト計算の具体的手法は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、ステップS2402の(イ)において予約率を計算する際、サーバ10は、属性(年齢層、性別、居住地、又は過去の予約履歴等)に応じてユーザをカテゴリに区分けし、カテゴリ毎に予約率を計算してもよい。この場合において、特定のカテゴリ(例えば、予約率が最大のカテゴリ)の予約率を以降の計算に用いてもよい。あるいはこのカテゴリを細分化し、個々のユーザ一人一人について予約率を計算してもよい。カテゴリを細分化していくことにより、正規料金でも乗るが割引領域だと乗る率が高い、正規料金では乗らないが割引料金だと乗る、この時間帯であれば正規料金でも乗る、この位置からだと正規料金でも乗る等、カテゴリの特性がより確立する可能性が高まる。
【0065】
実施形態ではステップS2042の(エ)において割引率がしきい値を超えてしまう場合には回送の対象とならない例を説明したが、サーバ10は予約条件等による割引率のしきい値を考慮しなくてもよい。この場合、割引率のしきい値はすべての条件で共通の値(例えば90%)である。また、ステップS2042の(エ)におい予約率がしきい値に達しない場合は回送の対象とならない例を説明したが、サーバ10は予約率のしきい値によらずその回送条件をコスト計算の対象としてもよい。
【0066】
共通の回送条件の車両が複数ある場合(例えば、翌朝9:00までの場所P1に3台の車両20を回送する必要がある場合)、サーバ10は、これら複数の車両20を一括して扱ってコスト計算を行ってもよい。すなわち、サーバ10は、これら複数の車両20に対して同じ主体に対して回送を依頼してもよい。あるいは、サーバ10は、これら複数の車両20をそれぞれ別個の回送条件として扱い、1つずつ個別に回送主体を決定してもよい。
【0067】
また、割引料金の適用による将来の一定期間における売上の低下を予測する具体的手法は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、サーバ10は、あらかじめ定義されたモデル式に割引に関するパラメーター(例えば、割引する時間帯及び割引率)を代入することにより売上の低下を予測してもよい。
【0068】
また、ステップS203において回送条件に優先順位を与える具体的手法は実施形態において例示したものに限定されない。車両20が異なる複数の車種を含み、車種毎に料金及び利益率が異なる場合において、サーバ10は、利益率が高い車種の車両20の回送により高い優先度を与えてもよい。
【0069】
3-5.総コスト計算
総コスト計算の具体的手法は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、サーバ10は、(A)一般ユーザを主体とする回送のコスト、(B)他の事業者を主体とする回送のコスト、及び(C)自社従業員を主体とする回送のコストの各々に重みを与えて総コストを計算してもよい。この場合において、(A)~(C)の各々に与えられる重みは、図9のフローをトリガしたイベントに応じて決定されてもよい。具体的には、近隣の公共交通機関において事故が発生したという情報をサーバ10が受信したというイベントをトリガとして図9のフローが実行された場合、サーバ10は、(B)が高コストになるような重みを与えてもよい。公共交通機関の事故がトリガに関連しているため、他の事業者に回送を依頼すると間に合わない可能性があり、他の事業者への依頼を回避する可能性を高めるためである。
【0070】
3-6.利益予測
サーバ10は、コストの計算(又は予測)に加え、売上の予測をしてもよい。車両20を回送することにより、回送後の場所を出発地とする予約が入る確率が高まるため売上が上がることが期待される。また、(A)~(C)の各手段はそれぞれ回送にかかる時間の期待値が異なるので、その後の予約率に影響を与える可能性がある。例えば(A)の一般ユーザを主体とする回送によれば回送完了までの時間の期待値が90分であり、(B)の他の事業者を主体とする回送によれば回送終了までの時間の期待値が20分である例を考える。(B)の例の方が回送後の空き時間が70分長いので、そのぶん売上が上がる可能性も高まる。一例として、売上の予測値は、車両20の空き時間×単価期待値で計算される。単価期待値は、例えば、過去の所定期間の売上実績から計算される。サーバ10は、こうして(A)~(B)の各々について売上予測値を計算する((A)の場合は回送自体からの売上も発生する)。サーバ10は、売上予測値からコストを減算することにより利益を予測する。サーバ10は、ステップS205及びS206においてコストを最小化する代わりに利益を最大化する組み合わせを選択する。この例によれば、利益を最大化する回送主体の組み合わせを選択することができる。
【0071】
3-7.割引料金の通知
ユーザに割引料金を通知する具体的手法は実施形態において例示したものに限定されない。割引料金は、シェアリングサービスのサイトのトップページ、ログイン後の画面、出発地を選択した後の画面など、どのようなタイミング又は画面においてユーザに割引料金が通知されてもよい。サーバ10は、そのユーザの過去の予約履歴から、どのようなタイミング又はどの画面で割引料金を通知すればユーザが予約する確率が高まるか分析し(例えば、割引料金を通知したタイミングを入力層に、過去の予約履歴を出力層に教師データとして与えて機械学習をさせた機械学習モデルを用いて)、予約の可能性がより高いと予測されるタイミング又は画面においてユーザに割引料金を通知してもよい。この機械学習はユーザ毎に行われてもよいし、複数のユーザのデータをまとめて教師データとして行われてもよい。
【0072】
また、個々のコスト計算の項で説明したように、細分化されたユーザカテゴリに対し予約率を計算する場合(ユーザ個人に対し予約率を計算する場合も含む)、サーバ10は、特定のカテゴリに属するユーザに対してのみ割引料金の通知を行ってもよい。特定のカテゴリは、例えば、予約率が基準値以上又は最高のカテゴリである。この通知は、シェアリングサービスのサイトにアクセスしてきたユーザに対してではなく、サービスサイトにアクセスしていないユーザに対してプッシュで送信されてもよい。
【0073】
3-8.配送計画の実行
サーバ10は、コスト計算によらず、定義された優先順位に従って回送主体(A)~(C)を割り当ててもよい。例えば、サーバ10は、(A)一般ユーザによる回送に最大の優先順位を与え、まずは所定時間(例えば3時間)、割引料金の提示による予約受け付けを試みる。この時間内に予約が入らなかった場合、サーバ10は、コスト計算に基づく回送計画を設定する。コスト計算に基づいて回送計画を設定する際には、優先度最大の回送主体(先の例では(A))を含めてもよいし、優先度最大の回送主体については既に所定時間試みているので回送計画から除外してもよい。
【0074】
3-9.回送対象
回送対象の車両20は、他の事業者の車両であってもよい。1つの地域において複数の事業者がシェアリングサービスを実施している状況を考える。これら複数の事業者は、いずれもシェアリングシステム1の傘下にある。事業者Aは、サーバ10からの依頼に応じて事業者Bの車両20を回送してもよい。事業者Bから見ると事業者Aは「他の事業者」である。サーバ10からの依頼により事業者Bの車両20を回送すると、事業者Aは手数料収入を得ることができる。サーバ10は、この手数料収入を売上予測に含めてもよい。
【0075】
3-10.他の変形例
シェアリングシステム1を構成する装置のハードウェア構成は実施形態において例示したものに限定されない。車両20についてはユーザ認証によりロックを解除できるようなものであればどのような形態を有していてもよい。
【0076】
サーバ10は物理サーバであってもよいし、いわゆるクラウド上の仮想サーバであってもよい。物理的に複数の装置が協働してサーバ10の機能を有してもよい。
【0077】
サーバプログラム等のソフトウェアは、インターネット等のコンピュータネットワークを介してダウンロード可能な状態で提供されてもよいし、CD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…シェアリングシステム、10…サーバ、11…記憶手段、12…予約受け付け手段、13…判断手段、14…計算手段、15…決定手段、16…依頼手段、19…制御手段、20…車両、21…ロック制御手段、30…ユーザ端末、110…CPU、120…メモリ、130…ストレージ、140…通信IF、200…ロック制御装置、210…カードリーダー、220…電気錠、230…制御装置、240…通信装置、250…キーボックス、911…予約データベース、912…検索履歴データベース、913…料金データベース、914…外注料金データベース、915…勤務表、916…POS履歴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12