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特開2022-175947基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175947
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221117BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20221117BHJP
   H05B 3/68 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05B3/20 316
H05B3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082742
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 彩
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
5F131
【Fターム(参考)】
3K034AA04
3K034BB06
3K034JA10
3K092PP20
3K092QA05
3K092QB03
3K092VV03
5F131AA02
5F131CA03
5F131CA06
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB12
5F131EB13
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造効率を向上することができる基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法を提供する。
【解決手段】基板固定装置100は、ベースプレート110と、ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着する静電チャック120と、を有する。静電チャックは、セラミックを用いて形成され、基板に接触して基板を吸着するセラミック層130と、セラミック層に積層され、発熱する電極である第1ヒーターパターン141と、第1ヒーターパターンに積層され、第1ヒーターパターンを被覆する第1絶縁樹脂層140と、第2絶縁樹脂層150に積層され、発熱する電極である第2ヒーターパターン151と、両端がそれぞれ第1ヒーターパターン及び第2ヒーターパターンの対向する表面に接触し、第2絶縁樹脂層を貫通する導電部材170と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着する静電チャックとを有し、
前記静電チャックは、
セラミックを用いて形成され、前記基板に接触して前記基板を吸着するセラミック層と、
前記セラミック層に積層され、発熱する電極を備える第1ヒーターパターンと、
前記第1ヒーターパターンに積層され、前記第1ヒーターパターンを被覆する絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層に積層され、発熱する電極を備える第2ヒーターパターンと
両端がそれぞれ前記第1ヒーターパターン及び前記第2ヒーターパターンの対向する表面に接触し、前記絶縁樹脂層を貫通する導電部材と
を有することを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
前記導電部材は、
樹脂に導電性フィラーを含有させた材料から形成される
ことを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記導電部材は、
前記第1ヒーターパターン及び前記第2ヒーターパターンに接触する面の径が0.1~3mmの範囲に含まれる
ことを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記導電部材は、
前記第1ヒーターパターン及び前記第2ヒーターパターンと平面視で重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記セラミック層は、
電圧を印加可能な電極と、
前記電極を囲むセラミックと
を有することを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項6】
セラミックを用いて形成され、対象物を吸着するセラミック層と、
前記セラミック層に積層され、発熱する電極を備える第1ヒーターパターンと、
前記第1ヒーターパターンに積層され、前記第1ヒーターパターンを被覆する絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層に積層され、発熱する電極を備える第2ヒーターパターンと
両端がそれぞれ前記第1ヒーターパターン及び前記第2ヒーターパターンの対向する表面に接触し、前記絶縁樹脂層を貫通する導電部材と
を有することを特徴とする静電チャック。
【請求項7】
電極と当該電極を囲むセラミックからなるセラミック層を形成し、
前記セラミック層に積層された発熱する電極を備える第1ヒーターパターンを形成し、
前記第1ヒーターパターンの表面に導電部材を配置し、
前記導電部材が配置された前記第1ヒーターパターンの表面を被覆するように、一面に金属層を備える絶縁樹脂層を積層し、
前記金属層に第2ヒーターパターンを形成する工程を有し、
前記絶縁樹脂層を積層する工程は、
前記導電部材に前記絶縁樹脂層を貫通させて前記金属層に接触させる
ことを特徴とする静電チャックの製造方法。
【請求項8】
前記導電部材を配置する工程は、
前記絶縁樹脂層を構成する絶縁樹脂よりも硬度が高い材料から形成される導電部材を前記第1ヒーターパターンの表面に配置する
ことを特徴とする請求項7記載の静電チャックの製造方法。
【請求項9】
前記導電部材を配置する工程は、
樹脂に導電性フィラーを含有させた材料から形成される半硬化状態の導電部材を前記第1ヒーターパターンの表面に接着する
ことを特徴とする請求項7記載の静電チャックの製造方法。
【請求項10】
前記導電部材を配置する工程は、
前記第1ヒーターパターンの表面に接着された導電部材を加熱して所定程度硬化させる
ことを特徴とする請求項9記載の静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体部品を製造する場合などにウエハを吸着して保持する基板固定装置には、電極を内蔵するセラミック板を用いて構成される静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)が備えられている。基板固定装置は、静電チャックがベースプレートに固定された構造を有し、セラミック板に内蔵された電極に電圧を印加することにより、静電力を利用して静電チャックにウエハを吸着する。静電チャックにウエハを吸着して保持することにより、ウエハに対する例えば微細加工やエッチングなどのプロセスが効率的に行われる。
【0003】
このような静電チャックには、ウエハの温度を調節する温度調節機能が付与されることがある。具体的には、例えばタングステンなどの金属ペーストのスクリーン印刷によってヒーター電極が形成され、このヒーター電極がセラミック板の形成時に同時に焼成されることがある。また、ウエハ載置面において高い均熱性を得るために、絶縁樹脂上の金属圧延箔にフォトリソグラフィを用いたエッチングを施し、外付けのヒーター電極を形成する技術も考案されている。
【0004】
外付けヒーター電極を用いる静電チャックとしては、セラミック板にヒーター電極を2層に分けて積層し、2層のヒーター電極をビアによって接続するものが検討されている。ヒーター電極が2層に分けられることにより、ヒーター配線のデザインの自由度が向上し、各層で補完的な位置にヒーター電極を配置してさらに均熱性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-100474号公報
【特許文献2】特開2018-026427号公報
【特許文献3】特開2001-028036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、静電チャックに2層の外付けヒーター電極を設ける場合には、各層のヒーター電極を接続するビアを形成する工程が必要となるため、静電チャックの製造効率が低下するという問題がある。具体的には、ビアを形成するためには、2層のヒーター電極間の絶縁樹脂に例えばレーザーなどでビアホールが形成され、ビアホールに金属ペーストが充填される。1つのビアを形成するために上記の工程が実施されるため、ビアの数が増えると、ビアホールの形成及び金属ペーストの充填を繰り返す必要が生じ、静電チャックの製造効率が低下する。
【0007】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、製造効率を向上することができる基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が開示する基板固定装置は、1つの態様において、ベースプレートと、前記ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着する静電チャックとを有し、前記静電チャックは、セラミックを用いて形成され、前記基板に接触して前記基板を吸着するセラミック層と、前記セラミック層に積層され、発熱する電極を備える第1ヒーターパターンと、前記第1ヒーターパターンに積層され、前記第1ヒーターパターンを被覆する絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に積層され、発熱する電極を備える第2ヒーターパターンと両端がそれぞれ前記第1ヒーターパターン及び前記第2ヒーターパターンの対向する表面に接触し、前記絶縁樹脂層を貫通する導電部材とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本願が開示する基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法の1つの態様によれば、製造効率を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施の形態に係る基板固定装置の構成を示す斜視図である。
図2図2は、一実施の形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
図3図3は、一実施の形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフロー図である。
図4図4は、セラミック層形成工程の具体例を示す図である。
図5図5は、第1絶縁樹脂層積層工程の具体例を示す図である。
図6図6は、第1ヒーターパターン形成工程の具体例を示す図である。
図7図7は、導電部材配置工程の具体例を示す図である。
図8図8は、第2絶縁樹脂層積層工程の具体例を示す図である。
図9図9は、第2ヒーターパターン形成工程の具体例を示す図である。
図10図10は、第1ヒーターパターンの具体例を示す図である。
図11図11は、第2ヒーターパターンの具体例を示す図である。
図12図12は、第3絶縁樹脂層積層工程の具体例を示す図である。
図13図13は、開口形成工程の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願が開示する基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施の形態に係る基板固定装置100の構成を示す斜視図である。図1に示す基板固定装置100は、ベースプレート110に静電チャック120が接着された構造を有する。
【0013】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属製の円形部材である。ベースプレート110は、静電チャック120を固定する基材である。ベースプレート110は、例えば半導体製造装置などに取り付けられ、基板固定装置100を、ウエハを保持する半導体保持装置として機能させる。
【0014】
静電チャック120は、静電力を利用して例えばウエハなどの対象物を吸着しつつ、対象物の温度を調節する。すなわち、静電チャック120は、対象物を吸着するセラミック層と、対象物を加熱するヒーター層とを積層して形成されている。静電チャック120の径は、ベースプレート110の径よりも小さく、ベースプレート110の中央に固定される。このとき、静電チャック120のヒーター層がベースプレート110に接着されることにより、静電チャック120がベースプレート110に固定される。ヒーター層の上面にはセラミック層が積層されており、対象物を吸着するセラミック層の吸着面が露出する。
【0015】
図2は、図1のI-I線断面を示す模式図である。図2に示すように、基板固定装置100は、ベースプレート110に静電チャック120が接着されて構成される。
【0016】
ベースプレート110は、内部に冷却水の流路となる冷却水路111を有する、例えば厚さ20~50mm程度の金属製の部材である。ベースプレート110は、基板固定装置100の外部から冷却水路111へ流入する冷却水によって、静電チャック120を冷却する。静電チャック120が冷却される結果、静電チャック120に吸着される例えばウエハなどの対象物が冷却される。
【0017】
なお、ベースプレート110は、冷却水路111の代わりに、冷却ガスの流路となる冷却ガス路を有していても良い。要するに、ベースプレート110は、例えば冷却水及び冷却ガスなどの冷媒を通過させる冷媒通路を有している。
【0018】
静電チャック120は、セラミック層130と、第1絶縁樹脂層140と、第2絶縁樹脂層150と、第3絶縁樹脂層160とを有し、第3絶縁樹脂層160がベースプレート110に接着される。
【0019】
セラミック層130は、内部に導電性の電極131を有し、セラミックからなる例えば厚さ4.5mm程度の層である。セラミックは、例えば酸化アルミニウムを用いて作製されたグリーンシートを焼成することにより得られる。セラミック層130の電極131に電圧が印加されることによって発生する静電力によって、セラミック層130は、例えば基板などの対象物に接触して吸着する。すなわち、図2においては、セラミック層130の上面が対象物に接触する吸着面となり、電極131への電圧印加時には、対象物が吸着面に吸着される。
【0020】
第1絶縁樹脂層140は、セラミック層130に積層され、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂からなる層である。第1絶縁樹脂層140の厚さは、例えば40~100μm程度である。第1絶縁樹脂層140のセラミック層130とは反対側の一面(図2においては下面)には、第1ヒーターパターン141が形成されている。
【0021】
第1ヒーターパターン141は、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等の合金からなる電極である。第1ヒーターパターン141は、電圧が印加されると発熱する。第1ヒーターパターン141の厚さは、例えば25~50μm程度であり、15~200μmの範囲に含まれる。
【0022】
第2絶縁樹脂層150は、第1絶縁樹脂層140に積層され、第1ヒーターパターン141を被覆する。第2絶縁樹脂層150は、第1絶縁樹脂層140と同様に、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂からなる層である。第2絶縁樹脂層150の厚さは、例えば40~300μm程度であり、第1絶縁樹脂層140よりも厚い。第2絶縁樹脂層150の第1絶縁樹脂層140とは反対側の一面(図2においては下面)には、第2ヒーターパターン151が形成されている。
【0023】
第2ヒーターパターン151は、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等の合金からなる電極である。第2ヒーターパターン151は、電圧が印加されると発熱する。第2ヒーターパターン151の厚さは、例えば25~50μm程度であり、15~200μmの範囲に含まれる。第2ヒーターパターン151は、後述する導電部材170によって第1ヒーターパターン141と電気的に接続される。
【0024】
第3絶縁樹脂層160は、第2絶縁樹脂層150に積層され、第2ヒーターパターン151を被覆する。第3絶縁樹脂層160は、第1絶縁樹脂層140及び第2絶縁樹脂層150と同様に、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂からなる層である。第3絶縁樹脂層160の厚さは、例えば40~300μm程度である。第3絶縁樹脂層160内には、ベースプレート110から第2ヒーターパターン151へ給電する給電部161が形成される。
【0025】
給電部161は、ベースプレート110と第2ヒーターパターン151を電気的に接続する導電性の部材である。給電部161は、ベースプレート110から供給される電圧を第2ヒーターパターン151に印加する。
【0026】
導電部材170は、第2絶縁樹脂層150に埋設され、一端が第1ヒーターパターン141の表面に当接し、他端が第2ヒーターパターン151の表面に当接する導電性の部材である。導電部材170は、例えばアクリル又はウレタン等の樹脂に導電性フィラーを含有させて形成される導電性接着シートを例えば円柱形状又は角柱形状に切り抜いて形成されたものである。第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151に当接する導電部材170の底面の直径は、例えば0.1~3mm程度である。また、導電部材170の高さは、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151の対向する表面の間の距離に等しく、例えば60~70μm程度である。
【0027】
導電部材170は、半硬化状態で第1ヒーターパターン141に接着可能であり、第2絶縁樹脂層150を構成する絶縁樹脂よりも半硬化状態における硬度が高い材料から形成されている。したがって、導電部材170の一端が第1ヒーターパターン141に接着された状態で第2絶縁樹脂層150が積層されて加圧されると、導電部材170の他端が第2絶縁樹脂層150を貫通する。この結果、導電部材170の他端が第2ヒーターパターン151の表面に到達し、導電部材170の両端が、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151の対向する表面に接触する。
【0028】
このような構成の基板固定装置100において、ベースプレート110から給電部161を介して第2ヒーターパターン151に給電されると、導電部材170を介して第1ヒーターパターン141にも給電される。そして、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151に電圧が印加されると、これらの第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151が発熱してセラミック層130が加熱されるとともに、セラミック層130に吸着される対象物が加熱される。
【0029】
基板固定装置100は、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151による加熱と、ベースプレート110による冷却とによってセラミック層130の温度を調整し、セラミック層130に吸着される対象物の温度を所望の温度に調節する。なお、第2ヒーターパターン151は、発熱するヒーター電極として機能させる代わりに、第1ヒーターパターン141の電極間を電気的に接続したり、第1ヒーターパターン141と給電部161とを電気的に接続したりするバイパス電極として機能させても良い。
【0030】
なお、第2ヒーターパターン151をパイパス電極として機能させる場合には、第2ヒーターパターン151は、例えば銅又は銅合金などの低抵抗の導電体を用いて形成されても良い。また、上記の基板固定装置100において、第1絶縁樹脂層140、第2絶縁樹脂層150及び第3絶縁樹脂層160にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、これらの絶縁樹脂層の熱伝導率を向上させても良い。
【0031】
次いで、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、図3に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0032】
まず、対象物を吸着するセラミック層130が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば酸化アルミニウムを主材料とする複数のグリーンシートが作製され、適宜、グリーンシートの一面に電極131が形成される。電極131は、例えばグリーンシートの表面に金属ペーストをスクリーン印刷することにより、形成することができる。そして、複数のグリーンシートが積層され焼成されることにより、セラミック層130が形成される。セラミック層130は、例えば図4に示すように、内部に電極131の層を有する。
【0033】
セラミック層130が形成されると、セラミック層130の表面に第1絶縁樹脂層140が積層される(ステップS102)。第1絶縁樹脂層140のセラミック層130と反対側の面には、金属箔層が形成されている。すなわち、例えば図5に示すように、一面に厚さが例えば25~50μm程度の金属箔層141aを有し、厚さが例えば40~100μm程度の第1絶縁樹脂層140がセラミック層130の表面に積層される。第1絶縁樹脂層140及び金属箔層141aは、真空ラミネート及びプレスによる真空加熱加圧接合により、セラミック層130に密着する。
【0034】
第1絶縁樹脂層140は、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂を用いて形成されている。また、第1絶縁樹脂層140に例えばアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、熱伝導率を向上しても良い。一方、金属箔層141aの材料としては、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151の材料として例示した圧延合金を用いることができる。すなわち、金属箔層141aは、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等の合金からなる。
【0035】
第1絶縁樹脂層140が積層されると、金属箔層141aに例えばフォトリソグラフィを用いたエッチングが施されることにより、所望のパターンを有する第1ヒーターパターン141が形成される(ステップS103)。すなわち、金属箔層141aの上面にレジストが形成され、レジストが露光及び現像されることにより、第1ヒーターパターン141として残す部分を被覆するレジストパターンが形成される。そして、レジストパターンに被覆されずに露出する金属箔層141aがエッチングにより除去されることにより、例えば図6に示すように、所望の形状の第1ヒーターパターン141が形成される。図6においては、例えば二重の同心円状の第1ヒーターパターン141の断面が示されている。
【0036】
第1ヒーターパターン141が形成されると、第1ヒーターパターン141の表面に導電部材170が配置される(ステップS104)。具体的には、例えばアクリル又はウレタン等の樹脂に導電性フィラーを含有させて形成される厚さ40~100μmの導電性接着シートから、底面の直径が0.1~3mm程度の円柱形状を切り抜いて形成された導電部材170が、第1ヒーターパターン141の上面に接着される。なお、導電部材170は、複数の導電性接着シートを重ねて貼り合わせたものを円柱形状又は角柱形状に切り抜いて形成されても良い。
【0037】
導電部材170は、例えば図7に示すように、第1ヒーターパターン141の第2ヒーターパターン151と電気的に接続される位置に配置される。導電部材170が導電性接着シートを切り抜いて形成されているため、第1ヒーターパターン141の上面に導電部材170を接着して容易に位置を固定することができる。また、第1ヒーターパターン141に接着される時点では、導電部材170を構成する樹脂が半硬化状態であり、半硬化状態の導電部材170は、第2絶縁樹脂層150として積層される半硬化状態の絶縁樹脂よりも硬い。なお、半硬化状態の導電部材170の硬度を上げるために、導電部材170が第1ヒーターパターン141に接着された後、導電部材170を加熱して一定程度硬化しても良い。
【0038】
導電部材170が配置されると、第1ヒーターパターン141を被覆する第2絶縁樹脂層150が積層される(ステップS105)。第2絶縁樹脂層150の第1ヒーターパターン141と反対側の面には、金属箔層が形成されている。すなわち、例えば図8に示すように、一面に厚さが例えば25~50μm程度の金属箔層151aを有し、厚さが例えば40~100μm程度の第2絶縁樹脂層150が第1絶縁樹脂層140及び第1ヒーターパターン141の上面に積層される。第2絶縁樹脂層150及び金属箔層151aは、真空ラミネート及びプレスによる真空加熱加圧接合により、第1絶縁樹脂層140に密着する。
【0039】
第2絶縁樹脂層150は、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂を用いて形成されている。また、第2絶縁樹脂層150に例えばアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、熱伝導率を向上しても良い。一方、金属箔層151aの材料としては、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151の材料として例示した圧延合金を用いることができる。すなわち、金属箔層151aは、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等の合金からなる。
【0040】
なお、第2ヒーターパターン151は、発熱するヒーター電極として機能させる代わりに、第1ヒーターパターン141の電極間を電気的に接続したり、第1ヒーターパターン141と給電部161とを電気的に接続したりするバイパス電極として機能させても良い。第2ヒーターパターン151をバイパス電極として機能させる場合には、金属箔層151aの材料として、例えば銅又は銅合金などの電気抵抗が小さい金属を用いても良い。
【0041】
第2絶縁樹脂層150が積層される際、第2絶縁樹脂層150を構成する絶縁樹脂は半硬化状態であり、導電部材170よりも硬度が低いため、導電部材170によって第2絶縁樹脂層150を構成する絶縁樹脂が押し退けられる。結果として、導電部材170が第2絶縁樹脂層150を貫通し、導電部材170の上端が第2絶縁樹脂層150の表面に形成された金属箔層151aの下面に当接する。したがって、導電部材170の一端が第1ヒーターパターン141の上面に当接し、導電部材170の他端が金属箔層151aの下面に当接する。また、第2絶縁樹脂層150が真空加熱加圧接合される際には、加熱及び加圧によって第2絶縁樹脂層150が硬化するとともに、導電部材170も硬化する。積層時に第2絶縁樹脂層150が加圧されるとともに、導電部材170が硬化するため、導電部材170が金属箔層151aの下面に確実に接触し、2層のヒーターパターンの層間接続信頼性を向上することができる。
【0042】
第2絶縁樹脂層150が積層されると、金属箔層151aに例えばフォトリソグラフィを用いたエッチングが施されることにより、所望のパターンを有する第2ヒーターパターン151が形成される(ステップS106)。すなわち、金属箔層151aの上面にレジストが形成され、レジストが露光及び現像されることにより、第2ヒーターパターン151として残す部分を被覆するレジストパターンが形成される。そして、レジストパターンに被覆されずに露出する金属箔層151aがエッチングにより除去されることにより、例えば図9に示すように、所望の形状の第2ヒーターパターン151が形成される。図9に示すように、第2ヒーターパターン151は、少なくとも一部が第1ヒーターパターン141と重ならない位置に配置される。すなわち、第2ヒーターパターン151は、第1ヒーターパターン141が形成されていない領域と平面視で重なる位置に形成される。また、第2ヒーターパターン151は、導電部材170の位置を含む領域では、平面視で第1ヒーターパターン141と重なる位置に形成される。
【0043】
図10は、第1ヒーターパターン141の具体例を示す図である。また、図11は、第2ヒーターパターン151の具体例を示す図である。図10に示すように、第1ヒーターパターン141が二重の同心円状に形成される場合、導電部材170は、同心円を形成する電極それぞれに接触する位置に形成される。そして、図11に示すように、第2ヒーターパターン151が第1ヒーターパターン141と平面視で一部が重なり他の一部が重ならない位置に形成される場合、導電部材170は、第1ヒーターパターン141と平面視で重なる一部に形成される。
【0044】
このように、導電部材170の位置を含む領域では第1ヒーターパターン141と第2ヒーターパターン151が平面視で重なるとともに、導電部材170の一端が第1ヒーターパターン141の上面に当接し、導電部材170の他端が第2ヒーターパターン151の下面に当接する。このため、ビアを形成する工程を経ることなく、第1ヒーターパターン141と第2ヒーターパターン151が導電部材170によって電気的に接続される。つまり、簡便な工程で2層のヒーターパターンの層間接続をすることができ、静電チャック120及び基板固定装置100の製造効率を向上することができる。
【0045】
導電部材170によって第1ヒーターパターン141に接続された第2ヒーターパターン151が形成されると、第2ヒーターパターン151を被覆する第3絶縁樹脂層160が積層される(ステップS107)。具体的には、半硬化状態の第3絶縁樹脂層160が第2絶縁樹脂層150及び第2ヒーターパターン151を被覆するように積層され、加熱及び加圧されることにより、第3絶縁樹脂層160が硬化する。この結果、例えば図12に示すように、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151が導電部材170によって接続された2層のヒーターが形成される。
【0046】
そして、第2ヒーターパターン151のうち電極パッドに相当する位置において、第3絶縁樹脂層160に開口が形成される(ステップS108)。すなわち、給電部161に接触する電極パッドとなる位置において第2ヒーターパターン151を露出させるため、例えば図13に示すように、第3絶縁樹脂層160に開口161aが形成される。これにより、導電部材170によって接続される2層のヒーター電極を有する静電チャック120が得られる。
【0047】
静電チャック120は、接着剤によってベースプレート110に接着される(ステップS109)。具体的には、開口161aが形成された第3絶縁樹脂層160の面が、例えばシランカップリング剤及び接着剤によってベースプレート110に接着される。このとき、開口161aの位置を給電部161の位置に合わせて接着することにより、給電部161と第2ヒーターパターン151とが接触し、第2ヒーターパターン151への給電が可能となる。さらに、第2ヒーターパターン151が導電部材170を介して第1ヒーターパターン141と接続されているため、第1ヒーターパターン141への給電も可能となる。ベースプレート110に静電チャック120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。
【0048】
以上のように、本実施の形態によれば、第1ヒーターパターンの表面に導電部材を配置した状態で第1ヒーターパターンを被覆する絶縁樹脂層を積層し、導電部材に絶縁樹脂層を貫通させる。そして、絶縁樹脂層を貫通した導電部材の先端を第2ヒーターパターンに当接させる。このため、第1ヒーターパターンと第2ヒーターパターンを接続するビアを形成することなく、導電部材により第1ヒーターパターンと第2ヒーターパターンを電気的に接続することができる。したがって、絶縁樹脂層にビアホールを形成したり、ビアホールに金属ペーストを充填したりする工程を省略することができ、製造効率を向上することができる。
【0049】
なお、上記一実施の形態においては、第1ヒーターパターン141及び第2ヒーターパターン151の2層のヒーター電極を静電チャック120に設けるものとしたが、3層以上のヒーターパターンを静電チャック120に設けることも可能である。3層以上のヒーターパターンを設ける場合でも、各層のヒーターパターンの表面に導電部材を配置し、上方から絶縁樹脂層を積層することにより、導電部材が絶縁樹脂層を貫通して上層のヒーターパターンに接触する。これにより、上下の層のヒーターパターンを容易に電気的に接続させることができ、製造効率を向上することができる。
【0050】
また、上記一実施の形態においては、第1ヒーターパターン141のうち導電部材170に接触する部分や、第2ヒーターパターン151のうち給電部161に接触する部分には、電極パッドが形成される。電極パッドは、導電部材170や給電部161に確実に接続するために一定程度以上の径を有する領域であり、電極パッドの周辺は、ヒーターパターンの空白領域となりやすい。このため、電極パッド周辺の温度が低下しやすく、均熱性の低下を招くことがある。
【0051】
そこで、上記一実施の形態においては、一方のヒーターパターンの電極パッドには、他方のヒーターパターンが重なるようにすることで、電極パッド周辺の温度低下を防止し、均熱性を向上するようにしても良い。
【0052】
さらに、上記一実施の形態においては、導電部材170が樹脂に導電性フィラーを含有させた材料から形成されるものとしたが、導電部材170は他の導電体から形成されても良い。ただし、導電部材170は、第2絶縁樹脂層150を構成する絶縁樹脂よりも硬度が高い材料から形成されている。このため、導電部材170が配置された第1ヒーターパターン141を被覆するように第2絶縁樹脂層150が積層される際には、導電部材170の端部が第2絶縁樹脂層150を貫通して金属箔層151aに接触する。
【符号の説明】
【0053】
110 ベースプレート
120 静電チャック
130 セラミック層
131 電極
140 第1絶縁樹脂層
141a、151a 金属箔層
141 第1ヒーターパターン
150 第2絶縁樹脂層
151 第2ヒーターパターン
160 第3絶縁樹脂層
161 給電部
161a 開口
170 導電部材
図1
図2
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図6
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