(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176070
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】壁面埋設用可撓電線管継手部品、マンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造、可撓電線管の管路のネットワーク、マンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造、沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法、沈下型のマンホール又はハンドホールへの可撓電線管の接続方法、壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 9/10 20060101AFI20221117BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20221117BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20221117BHJP
F16L 47/08 20060101ALI20221117BHJP
F16L 11/11 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H02G9/10
H02G9/06
H02G1/06
F16L47/08
F16L11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025317
(22)【出願日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2021081576
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 恵人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】白山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】國本 俊平
【テーマコード(参考)】
3H019
3H111
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
3H019DA12
3H019FA03
3H019FA04
3H019FA14
3H019JA01
3H111AA02
3H111CA42
3H111CA47
3H111CB14
3H111DB23
5G352CG01
5G352CG02
5G369BA04
5G369BA06
5G369DC04
5G369DC09
5G369DD02
(57)【要約】
【課題】 マンホールやハンドホールの壁に予め埋め込んで使用され、マンホールやハンドホールの接続部と可撓電線管をワンタッチで接続可能な壁面埋設用可撓電線管継手部品等を提供する。
【解決手段】 継手部品1は、硬質樹脂材料からなる筒状部材である。継手部品1には、一方の端部から他方の端部に向けて、ベルマウス部3、本体部5、斜面部7、拡径部9が順に形成される。拡径部9は、外形が略円筒状である。拡径部9の内面には、雌型継手構造部11が形成される。雌型継手構造部11は、第1収納空間13と、仕切り部15と、第2収納空間17とが、継手部品1の内部から他方の端部の開口部に向かって順に形成される。雌型継手構造部11は、切削加工によって形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール又はハンドホールの壁面に埋め込まれ、壁面から突出させずに使用することが可能な、雌型継手構造部を有する継手部品であって、
前記継手部品は、硬質樹脂材料からなる筒状部材であり、
前記継手部品には、一方の端部から他方の端部に向けて、ベルマウス部、電線又はケーブルを挿通するための外形が略円筒状の本体部、前記本体部から拡径部に移行する斜面部、及び前記斜面部に隣接して前記本体部より管内径が拡径した外形が略円筒状の拡径部、が順に形成され、
前記ベルマウス部の開口端は、前記本体部より拡径し、
前記ベルマウス部から前記拡径部に至る外形が、2段の異なる外径に形成された円筒状断面を有し、
前記斜面部は、前記本体部から管内外径が前記拡径部に向かって管軸方向に徐々に拡径する斜面構造を有し、
前記拡径部の円筒状空間の内面に前記雌型継手構造部が形成され、
前記雌型継手構造部には、雄型継手構造部を係止する係止用の係止部材と、前記雌型継手構造部と雄型継手構造部を止水するパッキンが、断面略円筒形の空間の内周面の奥側から開口部に向かって相互に所定距離離間して収容可能であることを特徴とする壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項2】
前記雌型継手構造部は、前記断面略円筒形の空間の所定位置に切削加工によって形成される断面略円筒形の溝と、前記溝の間に切削加工が行なわれていない仕切り部を形成することで、
前記断面略円筒形の溝が作る空間を前記仕切り部により、第1の収納空間と第2の収納空間の2つの空間に区分し、
前記第1の収納空間と、前記仕切り部と、前記第2の収納空間が、前記継手部品の内方から前記他方の端部の開口部に向かってそれぞれ順に形成され、
前記第1の収納空間と前記第2の収納空間は、管内方に突出する前記仕切り部で区画された2つの所定幅、所定深さの断面略円筒形の収納空間であり、
前記雌型継手構造部の、前記第1の収納空間には、前記雄型継手構造部を係止する係止用の係止部材が収納可能であり、前記第2の収納空間には、前記雄型継手構造部を止水するパッキンが、相互に所定距離離間して収容可能であることを特徴とする請求項1に記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項3】
前記拡径部の開口部側には、前記拡径部よりさらに拡開する第2の拡径部が形成され、前記第2の拡径部の外周面は、同一直径の略円筒状に形成されるか、あるいは円筒形の筒状部が外方に向かって所定角度でなだらかに拡開する円筒形状に形成され、前記拡径部の管外周面には、少なくとも管軸方向に垂直な壁又は鋭角な断面が形成されていないことを特徴とする請求項2に記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項4】
前記第2の拡径部の内周が、前記第2の拡径部の外周と略平行に先端に向かってなだらかに所定角度で拡開するか、前記拡径部の内周と同様な大きさに形成されるかのいずれかであり、前記拡径部と前記第2の拡径部が連続して形成されているか、仕切り部により仕切られていて、前記拡径部と前記第2の拡径部が仕切り部により仕切られている場合には、仕切り部を挟んで第1の収納空間と第2の収納空間が形成されることを特徴とする請求項3に記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項5】
前記仕切り部は、切削による溝加工の結果非切削部として作られたものであるか、あるいはシート状部材を貼り付けて形成されたものであるかのいずれかであり、前記仕切り部による縮径部の高さは、2mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項6】
前記硬質樹脂材料は、硬質塩化ビニル、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項7】
前記継手部品の可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部の先端の開口部の端面と、前記ベルマウス部の先端の開口部の端面の少なくとも一方が、平面状に形成されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項8】
前記継手部品の可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部の先端の開口部の端面と、前記ベルマウス部の先端の開口部の端面の少なくとも一方の端面において、弾性体が取り付けられていることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項9】
前記継手部品の外周面の少なくとも一部の所定位置に、前記継手部品の外周面に環状に止水部材が張り付けられることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項10】
前記継手部品の外周面の少なくとも一部の所定位置に、前記継手部品の外周面を周方向に囲うように環状に砂が接着されることを特徴とする請求項2から請求項9のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項11】
前記継手部品の可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部の内面と、前記ベルマウス部の内面の少なくともいずれか一方に、接続される可撓電線管の呼び径が印字されていることを特徴とする請求項2から請求項10のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品。
【請求項12】
請求項2から請求項11のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いた、壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であって、
前記壁面埋設用可撓電線管継手部品が、マンホール又はハンドホールの壁面に埋め込まれ、前記雄型継手構造部を有する可撓電線管の前記雄型継手構造部が前記継手部品の前記雌型継手構造部に挿入されることで、前記雌型継手構造部と、前記可撓電線管とが接続されることを特徴とするマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項13】
前記雄型継手構造部が、係止部材としてのリング部材を配置するリング部材配置部と、前記リング部材配置部よりも開口部側に形成された止水部材配置部と、前記リング部材配置部に配置されたリング部材と、前記止水部材配置部に配置されたゴムパッキンと、により形成されたものであり、
前記リング部材は、円周方向の先端が開口した略C字状または環状の部材であり、前記リング部材の先端に向かって管軸方向の奥側に対して外方に拡開する係止爪と、管軸方向に平行なスライドガイド機能を有する係止爪とは別の爪を有し、前記2つの爪が円周方向に交互に配置されているもので、
前記継手部品の前記第1の収納空間に前記リング部材が収納され、
前記第2の収納空間には、前記ゴムパッキンが収納されることを特徴とする請求項12に記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項14】
前記雌型継手構造部の前記第1の収納空間の円周面には、係止部材としてのリング部材のリング部が配置され、前記リング部材は、円周方向の先端が開口した略C字状また環状の部材であり、前記リング部材の係止爪は、リング部から爪部が先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設されたものであり、前記雄型継手構造部が前記雌型継手構造部と接続される際には、前記係止爪が前記雄型継手構造部の係止爪係止部に固定され、前記雄型継手構造部の後方に形成された止水部材配置部に配置されたゴムパッキンが前記雌型継手構造部の前記第2の収納空間に収納されることを特徴とする請求項12に記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項15】
前記係止部材としての前記略C字状また環状のリング部材の係止爪は、リング部から爪部が先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設されたものであり、前記リング部材のリング部は、前記第1の収納空間の円周面に接触するように、弾性接触または接着により固定されたものであることを特徴とする請求項14に記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項16】
前記雌型継手構造部の前記第1の収納空間の円周面には、前記係止部材としての前記リング部材を円周方向の所定位置で所定長さに切断した複数の短尺の円弧状のリング部材の分割体を、円周方向に所定間隔をあけて、所定個数、前記円周面に貼り付け、前記雄型継手構造部が前記雌型継手構造部と接続される際には、複数の前記分割体の係止爪が前記雄型継手構造部の係止爪係止部に固定され、さらに前記雄型継手構造部の後方に形成された止水部材配置部に配置されたゴムパッキンが前記雌型継手構造部の前記第2の収納空間に収納されることを特徴とする請求項14に記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項17】
請求項1に記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いた、壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であって、
前記壁面埋設用可撓電線管継手部品が、マンホール又はハンドホールの壁面に埋め込まれ、前記雄型継手構造部を有する可撓電線管の前記雄型継手構造部が前記継手部品の前記雌型継手構造部に挿入されることで、前記雌型継手構造部と、前記可撓電線管とが接続されるもので、
前記雌型継手構造部には、2段の円筒形断面を有する筒状部材の前記拡径部の断面略円筒形の空間の内周面の内方の所定位置に前記雄型継手構造部を係止する係止爪を有する係止部材が直接接着固定されることで、前記雌型継手構造部内部に前記雄型継手構造部を係止し、さらに前記係止部材を接着固定した位置から開口部に向かって所定距離離間した前記雄型継手構造部の所定位置に止水部材を配置して、前記雌型継手構造部と前記雄型継手構造部を止水することを特徴とする壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項18】
前記係止部材のリング部が雌型継手構造部の円筒面に固定され、前記係止部材の係止爪はリング部から爪部の先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設されたものであり、前記雄型継手構造部が前記雌型継手構造部と接続される際には、前記係止爪が前記雄型継手構造部の係止爪係止部に固定され、前記雄型継手構造部の後方に形成された止水部材配置部に配置されたゴムパッキンが、前記雌型継手構造部の内面に切削加工によって形成される断面略円筒状の溝に収納されていることを特徴とする請求項17に記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項19】
請求項2から請求項11のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品と、継手部材を用いた、マンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であって、
前記継手部材は、一方の端部に可撓電線管の前記雄型継手構造部を有し、他方の端部に可撓電線管の切断面と接続される構造を有し、
前記壁面埋設用可撓電線管継手部品の前記雌型継手構造部と、前記継手部材の前記雄型継手構造部とが相互に接続され、
前記継手部材の他方の端部と接続される前記可撓電線管は本体部が断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成されている可撓電線管であり、
前記継手部材の前記他方の端部の、前記可撓電線管の小径部の切断部と接続される構造に、可撓電線管の小径部の切断部が接続されることを特徴とするマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項20】
前記継手部材に接続される前記可撓電線管の他方の小径部の切断部と、他の可撓電線管の小径部の切断部同士が、継手部材の筒状部が両側に形成された切断部同士を接続する管継手で接続されることを特徴とする請求項19記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項21】
前記可撓電線管の本体部が、らせん状の波形、独立波構造の波形、あるいは断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成されている角形電線管、または、この角形電線管の小径部に内管が融着された二重壁電線管のいずれかであることを特徴とする請求項12から請求項18のいずれかに記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項22】
前記可撓電線管の本体部が、断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成されている角形電線管であることを特徴とする請求項12から請求項20のいずれかに記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項23】
前記可撓電線管の本体部が、断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成され、前記小径部の内側に内管が融着されている二重壁角形電線管であることを特徴とする請求項12から請求項20のいずれかに記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造。
【請求項24】
請求項19から請求項23のいずれかに記載のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造を用いた可撓電線管の管路のネットワークであって、
複数のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造が組み合わせられていることを特徴とする可撓電線管の管路のネットワーク。
【請求項25】
請求項2から請求項11のいずれかに記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いた、マンホール又はハンドホールの壁における接続部の接続構造であって、
前記壁面埋設用可撓電線管継手部品を、複数個配列可能な管枕材を用いて、整列させた状態でマンホール又はハンドホールの壁の接続部に埋め込まれていることを特徴としたマンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造。
【請求項26】
請求項25に記載のマンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造を用いた沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法であって、前記接続構造を形成したマンホール又はハンドホールに対して、前記接続部の開口部に土砂の侵入防止用のキャップを被冠した後、前記マンホール又はハンドホールを、土砂を掘削して地中に埋設沈下後に、前記マンホール又はハンドホールの開口底部にコンクリートを打設することを特徴とする沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法。
【請求項27】
請求項26に記載の沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法により、構築した沈下型マンホール又はハンドホールの前記接続部に、可撓電線管の前記雄型継手構造部を挿入して接続することを特徴とする沈下型のマンホール又はハンドホールへの可撓電線管の接続方法。
【請求項28】
請求項1に記載の壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法であって、
硬質塩化ビニル押出管を素管とし、素管を所定温度で加熱して熱成形によって前記ベルマウス部、前記斜面部及び前記拡径部を拡径して成形後、前記拡径部の内面に切削加工により、断面円筒形の前記仕切り部を挟んだ所定位置に前記第1の収納空間と前記第2の収納空間を形成することで、可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部を形成することを特徴とする雌型継手構造部の寸法精度と耐荷重に優れる壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドホールやマンホールに対して可撓電線管を容易に接続することが可能な壁面埋設用可撓電線管継手部品、マンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造、可撓電線管の管路のネットワーク、マンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造、沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法、沈下型のマンホール又はハンドホールへの可撓電線管の接続方法、及び壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電線共同溝工事などは、公道で行われる工事であることから、施工時は道路を封鎖しなくてはならず、素早く施工することが望まれる。この背景から、マンホール等の接続部には、事前に電線管接続用の継手部品が取り付けられ、施工時は電線管を接続するだけとするのが望ましい。
【0003】
また、特に特開平1-304228にて公開される沈設式プレキャストコンクリートマンホールの場合、施工時にマンホールを地面に沈めて設置することから、継手部品がマンホールの壁から出ていると、破損してしまう。これに対し、継手部品全体をマンホール等の壁の中に埋め込むことで、施工時の破損を抑制することができるとともに、輸送時の積載効率の向上、輸送や施工の際の継手部品の破損の防止が望める。
【0004】
また、マンホールやハンドホールを小型化することで、材料費や掘削量の削減による、低コスト化が望める。また小型化は軽量化にもつながり、施工時のハンドリング性向上が望める。さらに道路には既設埋設物が数多く埋まっておりそれらを回避して施工することが望まれるため、マンホールやハンドホールの大きさ自体の大きさに加えて接続部の大きさも小さく、小型である方が有利である。また、道路が狭い場合には、接続に要する面積を減らし、全体を小型化する必要がある。特に、ハンドホールやマンホールに複数の電線管を接続する場合、接続に要する面積を減らし、全体を小型化するには、継手部を密に配置することが好ましい。また、電線共同溝においては、従来、電線管には断面形状が単純な断面円形の剛性の高い塩ビ管が多く使用されてきた。しかし塩ビ管は重く、可撓性を有さないため施工性が悪く、改善が望まれていた。
【0005】
一方、近年、電線管として角形可撓電線管の使用が推進されている。角形可撓電線管は、管同士を直接段積み可能なため、敷設時にコンパクトに整列させることが可能で掘削量を減らし、工事時間短縮と工事費用削減が期待できる。また塩ビ管に比べ軽量で運搬し易く、可撓性を有することから曲がり管が不要で、施工性が良く、管路材の費用を抑えることができる。さらにコンパクトに整列させることで既設埋設物と干渉するリスクが低減され、干渉する場合も、可撓性を有するため容易に回避することができる。このため、接続部の壁に予め埋め込んで使用することが可能であり、接続部と角形可撓電線管をワンタッチで直接接続するための外周部が単純な構造を有する継手部品が必要とされていた。
【0006】
また、これまでの角形電線管の少なくとも一方の端部に形成される継手部材は、係止部材の収納部と止水部材の収納部とが所定距離離間して独立して区画される。また、従来の波形可撓電線管の接続に用いられていた継手部材は、射出成形あるいはブロー成形により製造され、継手部材の剛性を向上させるため、継手部材の外周部には、複雑な凹凸構造が形成される。一方上記のように、沈下マンホールには、多くの場合には継手部材の外形が単純で密接配管が可能な断面円形の筒状の継手が使用されていたが、断面円形の筒状の継手の場合には、電線管の接続部にリング部材等の係止部材を収納する接続構造を有していなかった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、マンホールやハンドホールの壁に予め埋め込んで使用され、マンホールやハンドホールの接続部と可撓電線管をワンタッチで接続可能であるとともに、その際に部品の断面積を小型化して、接続部に密に配置することが可能であり、さらにコンクリートの打設性も改善できる壁面埋設用可撓電線管継手部品を、外周部が単純な2段の円径断面の連続した筒状部材からなり、筒状部材の拡径部の内周面をそのまま使用するか、あるいは切削により筒状部材の円筒状部に溝を形成することで、係止部材収納部や止水部材収納部として使用することができ、係止部材を係止する収納部(収納空間)を円筒状部材の拡径部の内部に形成して、2段の直径を変換する斜面部を電線管の雄部の抜け止め構造や位置決め構造として利用することにより、ワンタッチで接続可能な継手構造を実現したものである。
【0008】
このような電線管とマンホールやハンドホールの接続部をつなぐための埋込式の継手部品としては、例えば、ベルマウス部と管継手装着部として直管円筒状の管挿入部を雌継手構造として有する管継手取付け用短管が提案されている(特許文献1)。
【0009】
また、波付き管とマンホールやハンドホールの接続部とをつなぐための、継手部の外周部が複雑形状を有するらせん状にねじ込んで接続する埋込式の継手部品が提案されている(特許文献2)。
【0010】
また、保護管の挿口をマンホール受口短管の長さ方向中程まで挿し込み、保護管の挿口端と受口内面奥の段部の間に弾性材を介在し、保護管の挿口外面とマンホール受口短管の受口内面の間に止水パッキンを介在した直管挿入用の地中埋設ケーブル用保護管のマンホール部が提案されている(特許文献3)。
【0011】
また、ハンドホール又はマンホールの側壁に取り付けて、ケーブル保護管を接続するためのブロック体が提案されている(特許文献4)。特許文献4は、ケーブル保護管の端部を挿着する挿着孔部を形成したレジンコンクリート製のブロック本体と、このブロック本体に取り付けた合成樹脂製又は金属製の複数の抜け止め部材とを備える。挿着孔部へ差し込んだケーブル保護管の端部における係合凸部に径内方向へ弾性復帰した係止片を係止させることで、挿着孔部からのケーブル保護管の端部の抜けを阻止することができる。
【0012】
また、継手本体と、係止爪と、工具挿入部とを備え、継手本体には、波付管が挿入される挿入部を有する、ハンドホールの側壁に埋設される管継手が提案されている(特許文献5)。特許文献5は、挿入部に挿入された波付管の被係止部と係合して波付管を抜け止めする。そして、継手本体に挿入部の前面に臨んで形成されて、被係止部と係止爪との係合を解除するための工具が、挿入部の前面側から挿入可能となっている。
【0013】
また、角形電線管の先端に設けられた雌継手構造の内部に、内方に向かって突出する係止爪を有する係止リングを内装されるベルマウスが提案されている(特許文献6)。
【0014】
【特許文献1】特開平11-215677号公報
【特許文献2】特開2009-159742号公報
【特許文献3】特開2000-240082号公報
【特許文献4】特開2011-234520号公報
【特許文献5】特開2003-90473号公報
【特許文献6】特開2006-322491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1の電線管は、塩ビ管や鋼管のような伸縮性のない直管を想定しており、継手内部において雄継手構造と雌継手構造の接続を行うものではない。さらに、埋込式の継手部品と電線管の間に、地震等による電線管の伸縮に対応するための別の継手部品を取り付ける必要があり、施工が面倒である。すなわち、直管状の筒状部を雌継手部として利用しているが、挿入された管を継手内部に係止する構造がなく、単に剛性管を雌継手部に挿入するだけの構造であり、塩ビ管のような剛性管接続構造で、雌継手構造と雄継手構造との接続により可撓電線管を接続する構造ではない。また、電線管本体を継手部品内に差し込むため、継手部品の外寸が大きくなり、接続部に密に取り付けることが難しくなる。また特許文献1では、管継手取付用短管をハンドホールの外周面から若干奥に設置しなければならず、コンクリートを打設してハンドホールの壁に埋め込む際、固定が難しく、短管の端部から内部へコンクリートが侵入し易い問題がある。
【0016】
また、特許文献2の方式は、らせん挿入型の継手部品で、直線挿入型のワンタッチ接続が可能な継手部品ではない。そのため、継手部の構造がらせん接続する部材の構造に対応して、継手部もらせん状に形成されているため、継手部材の外周部、内周部の形状がともに複雑である。
【0017】
通常、らせん状電線管は数十mの長尺体として製造されるため、電線管自体をらせん回転させて接続部に直接接続することができない。このため、接続部に埋め込まれた継手部材と電線管を接続する抜け止め機能や止水機能を有するらせん状電線管本体と接続可能な別の継手部品が、接続部に埋め込まれる継手部品の他に必要である。そのため、施工が面倒でコストも高くなる。すなわち、らせん挿入型の継手部品で、直線挿入型のワンタッチ接続が可能な継手部品ではない。また、抜け止めと止水性を付与する別の継手部材が必要である。また電線管本体を継手部品内に差し込むため、継手部品の外寸が大きくなり、マンホールやハンドホールに密に取り付けることが難しい。さらに特許文献2は、端部の形状がハンドホールの壁に管路口部材を埋め込むときの作業性を考慮しておらず、コンクリートを打設してハンドホールの壁に埋め込む際、固定が難しく、部材の端部から内部へコンクリートが侵入し易い問題がある。
【0018】
また、特許文献3の電線管は、塩ビ管や鋼管のような伸縮性のない直管を想定しており、この発明の継手構造は、直管状の円筒状の筒状部が継手構造の内面に形成された雌継手構造に直管状部材または直線状剛性管を挿入するものであり、継手内部において係止部などの抜け止め構造を有する雄継手構造と雌継手構造の接続を行うものではなく、特許文献1と類似の構造を有している。そのため、略円筒状の空間に、円筒状のスポンジゴム、ストッパゴム、止水パッキンなどが雌継手構造の内部に順に配置された構造を有しており、挿入された内管の係止構造が存在せずに円筒状筒状部の余長により抜け止めを行う構造のため、埋込式の継手部品の長手方向の長さが長くなり、埋め込むことができる接続部の壁厚が大きく制約される。また電線管本体を継手部品内に差し込むため、継手部品の外寸が大きくなり、マンホールやハンドホールに密に取り付けることが難しい。また特許文献3は、マンホール受け口短管をマンホールの壁に埋め込む方法について言及が無く、作業性を考慮していない。
【0019】
また、特許文献4の方式は、継手部品がレジンコンクリート製であり、重量が重いため作業者の負荷が高く、落とした際等に割れる可能性もある。また継手部品の横断面が四角形状の直角な断面を有していて、マンホールやハンドホールの接続部の壁に埋め込んで使用する時にコンクリートを流し込んだ際、継手部品の周囲にコンクリートが回り込みづらく、埋込不良が生じやすい。さらに、継手部品を少数配置する場合に、ブロックが所定寸法に形成されているため、ブロック間の配置間隔の調整ができない問題がある。また、複数のブロックを組み合わせて使用する際、ブロック間の接着や止水処理方法が不明であり、接合強度や水密性能を担保できない可能性がある。
【0020】
また、特許文献5の継手部品は、電線管本体を継手部品内に差し込むため、外寸が大きくなる。特に、係止爪の解除機構により、係止爪を解除する場合に、係止爪を退避収納する空間が必要なため、係止爪取り付け部の外寸が特に大きくなり、マンホールやハンドホールに密に取り付けることが難しい。
【0021】
また、特許文献5は、雌継手構造部の外周面に凹凸構造を有する継手構造を有しており、継手部材の構造が本願のように円形断面の筒状部の側壁の内部に係止部材収納空間や止水部材収納空間等の接続構造を設けた継手部材とは構造が異なる。特許文献5は、独立波電線管に接続用部材を装着するものであり、角形電線管を接続するものではない。また、特許文献5では、係止リングに押圧操作部とリングの退避用空間が存在するため、電線管の密な配置ができない。さらに雌継手構造部の外側に凹凸構造を有するため、コンクリートの回り込み性が悪く、雌継手部材を密に配置することができない。また可とう電線管の先端に取り付けたパッキンがメス継手内に挿入される際、係止爪を通過することになるため、パッキンに傷が付き、止水性が損なわれる恐れがある。さらに、継手部材の着脱する際の工具の使用によって、継手部材の内壁が傷ついて止水性を得ることが困難である。
【0022】
また、特許文献6の雌継手構造は、コンクリート壁内部に形成することを目的として継手外周部の形状が単純な円筒形であり、円筒状の内部に係止部や止水部等の接続構造を設けるように構成されたものではなく、継手部材と電線管の接続構造がコンクリート壁外部に形成されているため、沈下型マンホールには適用できない。特許文献6の雌継手構造は、全体として、2段の円筒状に形成されたものでもなく斜面部が存在しないことから、後述する抜け止め効果や応力分散効果もない。また、継手構造の外側に垂直な仕切り壁や鋭角の溝が形成されており、継手部材の外周部が円筒形に形成されたものでもなく、コンクリート壁の内部に接続構造を形成することを想定したものでないため、コンクリート壁の内部にこの構造を形成するとしたら、その際のコンクリートの打設性が悪い。
【0023】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、マンホールやハンドホールの壁に予め埋め込んで使用され、簡易な構造でマンホールやハンドホールの接続部と可撓電線管を直線的に挿入するだけで、ワンタッチで接続可能であるとともに、この際に可撓電線管の抜け止めを確保すると同時に、止水性も確保することが可能であり、その際に部品の断面積を小型化して、接続部に密に配置することが可能であり、さらにコンクリートの打設性も改善できる壁面埋設用可撓電線管継手部品、マンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造、可撓電線管の管路のネットワーク、マンホール又はハンドホールの壁の接続部の形成方法、沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法、沈下型のマンホール又はハンドホールへの可撓電線管の接続方法、壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法を提供することを目的とする。さらに壁面埋設を行わない可撓電線管用継手部品を提供することを目的とする。本発明により、継手部品に可撓電線管を挿入するだけで、両者の接合面に接着剤を使用せずに固定することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前述した目的を達するために第1の発明は、マンホール又はハンドホールの壁面に埋め込まれ、壁面から突出させずに使用することが可能な、雌型継手構造部を有する継手部品であって、前記継手部品は、硬質樹脂材料からなる筒状部材であり、前記継手部品には、一方の端部から他方の端部に向けて、ベルマウス部、電線又はケーブルを挿通するための外形が略円筒状の本体部、前記本体部から拡径部に移行する斜面部、及び前記斜面部に隣接して前記本体部より管内径が拡径した外形が略円筒状の拡径部、が順に形成され、前記ベルマウス部の開口端は、前記本体部より拡径し、前記ベルマウス部から前記拡径部に至る外形が、2段の異なる外径に形成された円筒状断面を有し、前記斜面部は、前記本体部から管内外径が前記拡径部に向かって管軸方向に徐々に拡径する斜面構造を有し、前記拡径部の円筒状空間の内面に前記雌型継手構造部が形成され、前記雌型継手構造部には、雄型継手構造部を係止する係止用の係止部材と、前記雌型継手構造部と雄型継手構造部を止水するパッキンが、断面略円筒形の空間の内周面の奥側から開口部に向かって相互に所定距離離間して収容可能であることを特徴とする壁面埋設用可撓電線管継手部品である。
【0025】
前記雌型継手構造部は、前記断面略円筒形の空間の所定位置に切削加工によって形成される断面略円筒形の溝と、前記溝の間に切削加工が行なわれていない仕切り部を形成することで、前記断面略円筒形の溝が作る空間を前記仕切り部により、第1の収納空間と第2の収納空間の2つの空間に区分し、前記第1の収納空間と、前記仕切り部と、前記第2の収納空間が、前記継手部品の内方から前記他方の端部の開口部に向かってそれぞれ順に形成され、前記第1の収納空間と前記第2の収納空間は、管内方に突出する前記仕切り部で区画された2つの所定幅、所定深さの断面略円筒形の収納空間であり、前記雌型継手構造部の、前記第1の収納空間には、前記雄型継手構造部を係止する係止用の係止部材が収納可能であり、前記第2の収納空間には、前記雄型継手構造部を止水するパッキンが、相互に所定距離離間して収容可能であることを特徴とする壁面埋設用可撓電線管継手部品である。
ここで、第1の収納空間に収納される前記係止部材は、前記雄型継手構造部に固定され前記雌型継手構造部を係止するものでも良いし、あるいは前記雌型継手構造部に固定され前記雄型継手構造部を係止するもののいずれでもよい。このように、本発明の継手部品は、2段円筒形形の簡易な構造に、第1の収納空間と第2の収納空間を形成することで、第1の収納空間に係止部材を収納または係止し、第2の収納空間にパッキンを収納することで、継手部品に可撓電線管を係止すると同時に、可撓電線管と継手部品の間の止水性を確保できる雌型継手構造を有する壁面埋設用可撓電線管継手部品とすることができる。
【0026】
前記雌型継手構造部に可撓電線管の雄型継手構造部を接続する場合には、前記雄型継手構造部の先端が、前記斜面部の内壁に当接することで、前記斜面部が、前記雄型継手構造部の抜け止め機能を発揮し、前記第1の収納空間は、前記雄型継手構造部の係止用のリング部材を収納可能であり、前記第2の収納空間は、前記雄型継手構造部のパッキンが収納可能であってもよい。
【0027】
たとえば、前記本体部と拡径部と斜面部を有する2段の異なる外径に形成された円筒状断面の部材を継手部品に用いることで、拡径部が形成する前記雌型継手構造部の空間に雄型継手構造部とこれを係止する係止部材を収納し、前記係止部材により、雌型継手構造部と雄型継手構造部を嵌合固定することが可能になる。例えば、リング状の係止部材を略円筒状の空間の円筒面に貼り付けて係止部材を固定し、止水部材を係止部材から所定距離離間して配置すればよい。
【0028】
このような配置とすることで、2段の円筒状部材の内部に、雌型継手構造部の内部に係止構造と止水構造を設けて、さらに雄型継手構造部のベルマウス側への抜け止めと、雄型継手構造部を係止部材への位置決めをより確実なものとすることができる。この際、雄型継手構造部は、雄型継手構造部の先端が継手部材の本体部の内径より大きく、継手部材の管軸方向に垂直な断面が円形の凹凸構造を有する筒状部材で、複数の凹部を有する形状に形成されていることが望ましい。前記雄型継手構造部の前方の凹部には、係止部材が配置されるか、係合され、後方の凹部には止水部材としてゴムパッキンが配置されてもよい。
【0029】
第1の収納空間と前記第2の収納空間を有する拡径部に溝を切削により形成された継手部材の場合にも、あるいは溝を切削により形成する代わりにシート状部材を貼り付けて仕切り部を凸部として形成した場合、これに用いる雄型継手構造部の形状は、切削により溝を形成する場合とシート状部材を貼り付けて仕切り部を凸部として形成した場合ともに、同様の構造であってもよい。シート状部材の材料としては、樹脂シートやアルミニウムなどの金属シートを使用することができる。樹脂シートに使用する樹脂材料としては、硬質塩ビ、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂などの硬質樹脂材料を使用することができる。
【0030】
前記拡径部の開口部側には、前記拡径部よりさらに拡開する第2の拡径部が形成され、前記第2の拡径部の外周面は、同一直径の略円筒状に形成されるか、あるいは円筒形の筒状部が外方に向かって所定角度でなだらかに拡開する円筒形状に形成され、前記拡径部の管外周面には、少なくとも管軸方向に垂直な壁又は鋭角な断面が形成されていないことが望ましい。
【0031】
さらに前記第2の拡径部の内周が、前記第2の拡径部の外周と同様に先端に向かってなだらかに所定角度で拡開するか、あるいは拡開せずに前記拡径部の内周と同様な大きさに形成されるかのいずれかであり、前記拡径部と前記第2の拡径部が連続して形成されているか、仕切り部により仕切られていて、前記拡径部と前記第2の拡径部が仕切り部により仕切られている場合には、仕切り部を挟んで第1の収納空間と第2の収納空間が形成されていても良い。
【0032】
また、前記第2の拡径部の外周の拡径角度は、管軸方向に対して10°以下であることが望ましい。ここで、第2の拡径部の内周面は、外周面と内周面が平行に拡開してもよいし、外周面より小さい角度で拡開しても良いし、内周面は拡開せずに平行に形成しても良い。また、第2の拡径部の内周面を、外周面より小さい角度で拡開させるか、内周面は拡開させずに平行に形成するには、内周面を切削により仕上げる必要がある。管を密に配置する観点からは、継手部品の外径を小さくした方が有利だが、第2の拡径部をあえて形成させることで、地震やケーブル通線時に継手部品がハンドホール内側に押し込まれる際、斜面部にかかる荷重を分散させ、破損しづらくすることができる。
【0033】
また特に、雌型継手構造部を切削で形成する場合、肉厚が薄くなるため、特に継手先端部で強度が低下する方向であり、端部の断面積が狭くなるため、マンホール製造時に型枠に固定しづらくなる。そこであえて第2の拡径部の内周面を略平行に切削により形成した場合には、第2の拡径部の断面は、先端部の肉厚が厚いくさび型に形成されるため、荷重を分散させる効果に加えて、継手部材の端部の肉厚を厚くすることが可能になり、拡径部先端部の強度を高くして、さらに継手部材の型枠への固定が容易になると同時にコンクリート打設時における止水性を高めることができる。第2の拡径部の内周面を外周面と略平行または外周面と異なる角度で少し拡開する形状に形成した場合には、前記のような効果は得られないが雄型継手構造部を挿入しやすくするガイド効果がある。
【0034】
前記仕切り部による縮径部の高さは、2mm以上5mm以下であることが望ましい。この場合に、前記仕切り部の高さは、切削により形成した場合であっても、シート状部材を貼り付けて仕切り部を凸部として縮径部を形成した場合であっても、縮径部の高さは同様である。
【0035】
前記硬質樹脂材料は、硬質塩化ビニル、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂の少なくともいずれかであることが望ましい。
【0036】
前記継手部品の可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部の先端の開口部の端面と、前記ベルマウス部の先端の開口部の端面の少なくとも一方が、平面状に形成されていることが望ましい。
【0037】
前記継手部品の可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部の先端の開口部の端面と、前記ベルマウス部の先端の開口部の端面の少なくとも一方の端面において、平坦面が形成された面に、弾性体が取り付けられていてもよい。
【0038】
前記継手部品の外周面の少なくとも一部の所定位置に、前記継手部品の外周面に環状に止水部材が張り付けられてもよい。
【0039】
前記継手部品の外周面の少なくとも一部の所定位置に、前記継手部品の外周面を周方向に囲うように環状に砂が接着されてもよい。
【0040】
前記継手部品の可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部の内面と、前記ベルマウス部の内面の少なくともいずれか一方に、接続される可撓電線管の呼び径が印字されていてもよい。
【0041】
第1の発明によれば、可撓電線管と接続可能な雌型継手構造部を有し、マンホールやハンドホールの接続部の壁に埋め込んで使用する継手部品によって、可撓電線管の雄型継手構造部とワンタッチで接続することができる。また、可撓電線管の切断部に雄型継手構造部を有する別の部材を接続し、それを本発明の硬質樹脂材料製の加工品からなる部品にワンタッチで接続することができる。特に可撓電線管を角形可撓電線管とすることで、工事時間短縮と工事費用削減が期待できる。また、マンホールやハンドホールなどの輸送効率向上と輸送や施工の際の継手部品の破損抑制が望める。さらに、継手部品の断面寸法を電線管の最大断面と略同等または最大断面より小さくすることで、マンホールやハンドホールなどに継手部品を密に配置できるため、これらの部位の小型軽量化が望める。
【0042】
より詳細には、本発明によれば、継手部品が硬質樹脂材料製の継手部品の外周部の断面形状が2段円筒の筒状部材ため、マンホールやハンドホールの壁面に埋め込み使用する場合に、コンクリートを流し込んで継手の周囲を固める時に、コンクリートの重量とコンクリートの凝固時の反応熱により、継手部品が変形するのを防止することができる。また、雌型継手構造部の寸法精度が高く、雄型継手構造部の挿入性や円筒形の側面の内周面に切削により形成した係止リングの収納空間を確保できる。また、継手部品の外周部の断面形状が2段円筒の筒状部材であり、部材の外周部に垂直な壁部などがないため、コンクリートを打設する時に空気溜まり等が生じにくい。
【0043】
また、第1の収納空間には、抜け止め構造として、雄型継手構造部の係止用のリング部材が収納されるため、リング部材を収納する収納空間の寸法精度と剛性が高いことからリング部材が第1の収納空間に安定して支持される。また、この場合に、第1の収納空間に係止爪が収納され、係止爪の先端は、断面円筒形の仕切り部の断面縮小部の側面に当接することで、外部から引き抜き力がかかっても抜けることがない。
【0044】
また、雌型継手構造部が、管軸方向に垂直な断面がない2段の略円筒状の筒状部材で形成され、パッキンと係止リングの収納空間の区画が拡径部の円筒状空間内の仕切り部により区画された空間となる。このため、小型化を実現するとともに、2段円筒を繋ぐ斜面部により、前方への抜け止め防止構造、地震発生時の荷重の均等分散を実現することができる。また、斜面部は、抜け止め防止効果の他、第1の収納空間にリング部材を収納する場合に、雄型継手構造部の先端部位置を挿入口側に所定距離戻すように調整する必要があり、その際の位置決めの目安にすることもできる。
【0045】
また、第2の収納空間において、ゴムパッキンの径方向の先端部が断面円錐台形の側面に当接するため、第1の収納空間に収納される部材の係止機能に加えて、止水機能が安定して維持される。また、継手部品が全体として、斜面部を挟んで、2段の円筒形断面を形成することにより、斜面部が雄型継手構造部のベルマウス部側への抜け止め機能と第1の収納空間に係止用のリング部材を配置する際の位置決め機能とを有し、さらに地震発生時に雌型継手構造部に係る荷重を分散させることができる。この際、斜面部の構造は、管軸方向に略直線状、凸曲面形状、凹曲面形状のいずれでもよく、雄型継手構造部の先端が当接した場合に、斜面部が応力を均等に分散する効果を有する。
【0046】
また、雌型継手構造部の各部が2段の円筒形断面を有する硬質材料からなる筒状部材から成形または切削により形成されたもので、管軸方向に垂直な方向の仕切り壁が形成されていないこれまでには無い構造的特徴を有する、精度の良い雌型継手構造部を得ることができる。また、仕切り部は内方に突出するリブ形状で、拡開部の空間の区画機能と強度向上機能を有する。また、拡径部の管外周には、少なくとも管軸方向に垂直な壁又は鋭角な断面が形成されてないようにすることで、コンクリートを打設する際に、コンクリートの回り込みが良好であり、空気溜り等が生じにくい。
【0047】
また、第2の収納空間の内面が、端部側に行くにつれて徐々に拡開する断面円錐台形が形成され、ゴムパッキンの径方向の先端部が断面円錐台形の内面に当接するため、止水機能が安定して維持される。また、第2の収納空間の内面が外方に向かって拡開する断面円錐台形状であると、雄型継手構造部を継手部品に挿入しやすい。また、第2の収納空間の外周も内周部と略平行な拡開する断面円錐台形状とした場合でも、第2の拡径部として、第2の収納空間の外周部の肉厚を所定厚さ維持できるため、第2の収納空間の部分の部材強度を維持できる。また第2の拡開部の断面をくさび型とした場合には、開口部の肉厚を担保することで、端部で平面が得やすくなり、マンホール製造時に型枠への固定が容易となる。さらに地震発生時に、メス継手側からベルマウス側に押し込む荷重がかかった際、第2の拡径部でも荷重を負担することで、斜面部に係る荷重を軽減することができる。また、第2の拡径部が形成されることで、第2の拡径部の外周が略円錐台状となるため継手部材の抜け止め効果がある。
【0048】
また、継手部品を、例えば、硬質塩ビ、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂などの硬質樹脂材料で形成し、仕切り部に対して円筒状の溝を切削で加工するため、円筒状空間内に2mm以上5mm以下で精度よく製造することができる。このため、継手部品を小型化することができる。特に、硬質塩ビ樹脂が好ましい。
【0049】
また、継手部品の可撓電線管と接続するための雌型継手構造部の先端の開口部の端面と、ベルマウス構造の先端の開口部の端面の少なくとも一方を、平面状に形成することで、コンクリートを打設する際に、端部と型枠との密着性が向上し、コンクリートの漏れを抑制することができる。
【0050】
さらに、継手部品の端部に弾性体を配置することで、コンクリート打設時の型枠との間のパッキンとして機能させることができる。このため、より確実に、型枠と継手部品との間のコンクリートの漏れを抑制することができる。継手部品の端部が平坦面であると、特に弾性体を配置し易く、より確実に、コンクリートの漏れを防止できる。
【0051】
また、継手部品の外周面の少なくとも一部の所定位置に、継手部品の外周面に環状に止水部材を張り付けることで、コンクリートと継手部品の外面との隙間の止水性を高めることができる。
【0052】
また、継手部品の外周面の少なくとも一部の所定位置に、外周面の周方向に囲うように環状に砂を接着することで、コンクリートと継手部品の外面との密着性を高めることができる。ここで、砂は外周面の全長の一部につけてもよいし、全長につけてよい。
【0053】
また、可撓電線管と接続するための雌型継手構造部の内面と、ベルマウス構造の内面の少なくともどちらか一方に、接続される可撓電線管の呼び径を印字することで、部品の種類を容易に把握することができる。通常の継手部品は、品名等を継手部品の外周面に印字して見分けることが多いが、本発明品は使用の際、マンホール等の壁の中に埋め込まれるため、外周面に印字すると見分けがつかなくなる。このため、継手部品の内面に印字することで、電線管接続時やケーブル通線時の取違え等を防止することができる。
【0054】
第1の発明は、マンホール等の壁の中に埋め込んで使用することで、前述のような効果を得られるが、継手部品の一部をマンホール等の壁から出して埋め込んで使用しても良い。
【0055】
第2の発明は、第1の実施形態は、第1の発明にかかる壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いた、壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であって、前記壁面埋設用可撓電線管継手部品が、マンホール又はハンドホールの壁面に埋め込まれ、前記雄型継手構造部を有する可撓電線管の前記雄型継手構造部が前記継手部品の前記雌型継手構造部に挿入されることで、前記雌型継手構造部と、前記可撓電線管とが接続されることを特徴とするマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造である。
【0056】
前記雄型継手構造部が、係止部材としてのリング部材を配置するリング部材配置部と、前記リング部材配置部よりも開口部側に形成された止水部材配置部と、前記リング部材配置部に配置されたリング部材と、前記止水部材配置部に配置されたゴムパッキンと、により形成されたものであり、前記リング部材は、円周方向の先端が開口した略C字状または環状の部材であり、前記リング部材の先端に向かって管軸方向の奥側に対して外方に拡開する係止爪と、管軸方向に平行なスライドガイド機能を有する係止爪とは別の爪を有し、前記2つの爪が円周方向に交互に配置されているもので、前記継手部品の前記第1の収納空間に前記リング部材が収納され、前記第2の収納空間には、前記ゴムパッキンが収納されてもよい。リング部材は、通常樹脂製または金属製である。
【0057】
例えば、前記リング部材配置部に配置される環状のリング部材は、C字状のリング部材の両端部に接続部を設けて相互に接続することで得ることができる。接続部は、多数の鋸刃状の溝を設けたものをしてよい。
【0058】
前記雌型継手構造部の前記第1の収納空間の円周面には、係止部材としてのリング部材のリング部が配置され、前記リング部材は、円周方向の先端が開口した略C字状また環状の部材であり、前記リング部材の係止爪は、リング部から爪部の先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設されたものであり、前記雄型継手構造部が前記雌型継手構造部と接続される際には、前記係止爪が前記雄型継手構造部の係止爪係止部に固定され、前記雄型継手構造部の後方に形成された止水部材配置部に配置されたゴムパッキンが前記雌型継手構造部の前記第2の収納空間に収納されていてもよい。
【0059】
前記係止部材としての前記略C字状また環状のリング部材の係止爪は、リング部材のリング部から爪部の先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設されたものであり、前記リング部材のリング部は、前記第1の収納空間の円周面に接触するように、弾性接触または接着により固定されていてもよい。
【0060】
例えば、リング部材がC字状の場合には、前記リング部材は、縮径することで前記第1の収納空間に収納され、前記第1の収納空間の円周面に前記リング部材の弾性回復力で接触するように、弾性接触させてもよいし、リング材が環状の場合には、前記第1の収納空間に収納可能な所定寸法のリング部材を前記第1の収納空間の内表面に接着により固定してもよい。ここで、接着に用いる接着剤は、例えば、ニトリルゴム系、ウレタンゴム系、シアノアクリレート系、反応性アクリル系樹脂を含むアクリル系、塩化ビニル系溶剤型接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤及びその他の接着剤から適宜選定することができる。
【0061】
前記雌型継手構造部の前記第1の収納空間の円周面には、係止部材としての前記リング部材を円周方向の所定位置で所定長さに切断した複数の短尺の円弧状のリング部材の分割体を、円周方向に所定間隔をあけて、所定個数、前記円周面に貼り付け、前記雄型継手構造部が前記雌型継手構造部と接続される際には、複数の前記分割体の係止爪が前記雄型継手構造部の係止爪係止部に固定され、さらに前記雄型継手構造部の後方に形成された止水部材配置部に配置されたゴムパッキンが前記雌型継手構造部の前記第2の収納空間に収納されてもよい。
【0062】
また、前記雌型継手構造部の前記第1の収納空間の円周面には、前記リング部材を円周方向の所定位置で所定長さに切断した複数の短尺の円弧状のリング部材の分割体を、円周方向に所定間隔を開けて、所定個数、前記円周面に貼り付けることで、一体のリング部材と同様の効果を得ることができる。
【0063】
前記雄型継手構造部が前記雌型継手構造部と接続される際には、前記複数の分割体の係止爪が前記雄型継手構造部の係止爪係止部に固定され、さらに前記雄型継手構造部の後方に形成された止水部材配置部に配置されたゴムパッキンが前記雌型継手構造部の前記第2の収納空間に収納されることで同様の効果を得ることができる。
【0064】
複数の短尺の円弧状のリング部材の分割体としては、円弧状部と円弧状部に、円弧状部から爪部の先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設された爪部を有するものであっても良いし、円弧状部と爪部が一体化されたものであってもよく、円弧状部と爪部が一体化された分割体は、分割体を中心方向に切断した場合の切断面が略三角形状のものであってもよい。前記延設された爪部を有する分割体は、例えば、金属または樹脂製ものを使用でき、円弧状部と爪部が一体化された分割体はゴム製ものが使用できる。
【0065】
また、第2の発明の第2の実施形態は、第1の発明にかかる壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いた、壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であって、前記壁面埋設用可撓電線管継手部品が、マンホール又はハンドホールの壁面に埋め込まれ、前記雄型継手構造部を有する可撓電線管の前記雄型継手構造部が前記継手部品の前記雌型継手構造部に挿入されることで、前記雌型継手構造部と、前記可撓電線管とが接続されるもので、前記雌型継手構造部には、2段の円筒形断面を有する筒状部材の前記拡径部の断面略円筒形の空間の内周面の内方の所定位置に雄型継手構造部を係止する係止爪を有する係止部材が直接接着固定されることで、前記雌型継手構造部内部に前記雄型継手構造部を係止し、さらに前記係止部材を接着固定した位置から開口部に向かって所定距離離間した雄型継手構造部の所定位置に止水部材を配置して、前記雌型継手構造部と前記雄型継手構造部を止水することを特徴とする壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であってもよい。ここで、この発明においては、第1の実施形態と異なり、2段の円筒形断面を有する筒状部材の前記拡径部の断面略円筒形の空間の内部に切削により、第1の収納空間や第2の収納空間が形成されておらず
前記拡径部の断面略円筒形の空間の内部に直接径部材が接着されていることに特徴がある。例えば、係止部材が拡径部の奥側に直接接着固定され、係止部材より開口部側に止水部材が配置される継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であってもよい。
【0066】
前記係止部材のリング部が雌型継手構造部の円筒面に固定され、前記係止部材の係止爪はリング部から爪部の先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設されたものであり、前記雄型継手構造部が前記雌型継手構造部と接続される際には、前記係止爪が前記雄型継手構造部の係止爪係止部に固定され、前記雄型継手構造部の後方に形成された止水部材配置部に配置されたゴムパッキンが、前記雌型継手構造部の内面に直接収納されるのでなく、切削加工によって形成される断面略円筒状の溝に収納されていてもよい。
【0067】
ここで、継手部材を2段の略円筒形状に形成した斜面部を有することで、斜面部に雄型継手構造部の先端を当接させることで、雄型継手構造部のベルマウス側の開口部への抜け止め効果と、雄型継手構造部の係止爪係止部を係止部材の係止爪に係止する場合に斜面部から所定距離開口部側に戻すことで、係止爪を係止爪固定部に固定することが可能になり、位置決め効果を付与することができる。
【0068】
なお、上記の2段の略円筒形状を有する筒状部材の拡径部に係止部材を接着した継手部品は、拡径部の側に継手構造を有していれば、他方の側の本体部は、単なる円筒状の形状であっても良い。
【0069】
ここで、第2の発明に係る可撓電線管の本体部が、らせん状の波形、独立波構造の波形、あるいは断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成されている角形電線管、または、この角形電線管の小径部に内管が融着された二重壁電線管のいずれかであってもよい。すなわち、本体部の形状には特に制約はない
【0070】
また、第3の発明は、第1の発明にかかる壁面埋設用可撓電線管継手部品と、継手部材を用いた、マンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造であって、
前記継手部材は、一方の端部に可撓電線管の前記雄型継手構造部を有し、他方の端部に可撓電線管の切断面と接続される構造を有し、
前記壁面埋設用可撓電線管継手部品の前記雌型継手構造部と、前記継手部材の前記雄型継手構造部とが相互に接続され、
前記継手部材の他方の端部と接続される前記可撓電線管は本体部が断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成されている可撓電線管であり、
前記継手部材の前記他方の端部の、前記可撓電線管の小径部の切断部と接続される構造に、前記可撓電線管の小径部の切断部が接続されることを特徴とするマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造である。
【0071】
前記継手部材に接続される前記可撓電線管の他方の小径部の切断部と、他の可撓電線管の小径部の切断部同士が、継手部材の筒状部が両側に形成された切断部同士を接続する管継手で接続されてもよい。
【0072】
前記可撓電線管の本体部が、断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成されている角形電線管であってもよい。
【0073】
前記可撓電線管の本体部が、断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成され、前記小径部の内側に内管が融着されている二重壁角形電線管であってもよい。
【0074】
第3の発明によれば、雌型継手構造部に雄型継手構造部を挿入するだけでマンホール又はハンドホールと可撓電線管とを接続することができる。
【0075】
ここで、雄型継手構造部のリング部材が、円周方向の先端が開口した略C字状の部材であり、リング部材の先端に向かって管軸方向の奥側に対して外方に拡開する係止爪を設けることで、雌型継手構造部の仕切り部と容易に係合して接続することができる。この際、管軸方向に平行なスライドガイドとして機能する爪を形成し、円周方向に係止爪と当該スライドガイドとを交互に配置することで、スライドガイドにより雄型継手構造部を雌型継手構造部に安定した状態で挿入することができる。
【0076】
また、リング部材の周方向の端部に接続部を設けて、接続部同士を接続すれば、リング部材を環状に形成することができる。このようにリング部材を環状に形成することで、リング部材配置部からの脱落を抑制することができるとともに、リング部材を円滑にリング部材配置部上でスライド移動させることができる。
【0077】
また、リング部材が雄型継手構造部に装着される場合には、第1の収納空間に係止爪が収納され、係止爪の先端は、断面円筒形の仕切り部の断面縮小部の側面に当接することで、外部から引き抜き力がかかっても抜けることがない。
【0078】
また、一方の端部に可撓電線管の雄型継手構造部を有し、他方の端部に可撓電線管の切断面と接続される構造を有する継手部材を用いることで、マンホール又はハンドホールと、切断された可撓電線管との接続構造を得ることができる。
【0079】
さらに、継手部材に接続される可撓電線管の他方の切断面と、他の可撓電線管の切断面同士を管継手で接続することで、切断された可撓電線管同士が接続された管路を形成することができる。
【0080】
このような可撓電線管としては、断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成されている角形電線管であってもよい。さらに、小径部の内側に内管が融着されている二重壁角形電線管であってもよい。このように、いずれの形態の可撓電線管も接続することができる。
【0081】
第4の発明は、第2の発明にかかるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造を用いた可撓電線管の管路のネットワークであって、複数のマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造が組み合わせられていることを特徴とする可撓電線管の管路のネットワークである。
【0082】
第4の発明によれば、雌型継手構造部と雄型継手構造部の接続が容易であり、短時間で施工が容易な可撓電線管の管路のネットワークを得ることができる。
【0083】
第5の発明は、第1の発明にかかる壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いた、マンホール又はハンドホールの壁における接続部の接続構造であって、前記壁面埋設用可撓電線管継手部品を、複数個配列可能な管枕材を用いて、整列させた状態でマンホール又はハンドホールの壁の接続部に埋め込まれていることを特徴としたマンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造である。
【0084】
第5の発明によれば、容易に、マンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造を形成することができる。
【0085】
第6の発明は、第5の発明にかかるマンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造を用いた沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法であって、前記接続構造を形成したマンホール又はハンドホールに対して、前記接続部の開口部に土砂の侵入防止用のキャップを被冠した後、前記マンホール又はハンドホールを、土砂を掘削して地中に埋設沈下後に、前記マンホール又はハンドホールの開口底部にコンクリートを打設することを特徴とする沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法である。
【0086】
第6の発明によれば、マンホール又はハンドホールを容易に沈設することができる。この際、継手部品が壁部から突出していないため、沈設時に継手部品が破損することがない。
【0087】
第7の発明は、第6の発明にかかる沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法により、構築した沈下型マンホール又はハンドホールの前記接続部に、前記可撓電線管の前記雄型継手構造部を挿入して接続することを特徴とする沈下型のマンホール又はハンドホールへの可撓電線管の接続方法である。
【0088】
第7の発明によれば、マンホール又はハンドホールの接続部に、可撓電線管の雄型継手構造部を挿入するだけで両者を容易に接続することができる。
【0089】
第8の発明は、第1の発明にかかる壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法であって、硬質塩化ビニル押出管を素管とし、素管を所定温度で加熱して熱成形によって前記ベルマウス部、前記斜面部及び前記拡径部を拡径して成形後、前記拡径部の内面に切削加工により、断面円筒形の前記仕切り部を挟んだ所定位置に前記第1の収納空間と前記第2の収納空間を形成することで、可撓電線管と接続するための前記雌型継手構造部を形成することを特徴とする雌型継手構造部の寸法精度と耐荷重に優れる壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法である。
【0090】
第8の発明によれば、精度よく雌型継手構造部を形成することができる。また、外面をなだらかな曲面とすることができ、径方向に突出する段差等が形成されていないため、コンクリートの打設時のコンクリートの回り込みが良好である。
【発明の効果】
【0091】
本発明によれば、マンホールやハンドホールの壁に予め埋め込んで使用され、マンホールやハンドホールの接続部と可撓電線管をワンタッチで接続可能であるとともに、その際に部品の断面積を小型化して、接続部に密に配置することが可能であり、さらにコンクリートの打設性も改善できる壁面埋設用可撓電線管継手部品、マンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造、可撓電線管の管路のネットワーク、マンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造、沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法、沈下型のマンホール又はハンドホールへの可撓電線管の接続方法、壁面埋設用可撓電線管継手部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】(a)は、継手部品1の断面図、(b)は、(a)のA部拡大図。
【
図2】(a)は、継手部品1aの断面図、(b)は、(a)のC部拡大図、(c)は、第2拡径部の断面形状がくさび型の継手部品1bのC部と同様の部位の拡大図。
【
図3】(a)~(c)は、継手部品1aの製造工程を示す図。
【
図4】(a)、(b)は、マンホール又はハンドホールの構造体の製造工程を示す図。
【
図5】(a)、(b)は、マンホール又はハンドホールの構造体の製造工程を示す図。
【
図6】(a)、(b)は、マンホール又はハンドホールの構造体の製造工程を示す図。
【
図7】(a)は、継手部品1aに弾性体33を設けた状態を示す図、(b)は、継手部品1aに止水部材35を設けた状態を示す図。
【
図8】継手部品1aの外周面の一部に、砂102を付けた状態を示す図。
【
図9】(a)~(c)は、マンホール40の沈設工程を示す図。
【
図10】(a)は可撓電線管50を示す側面図、(b)は、(a)のE-E線断面図。
【
図11】(a)は、雄型継手構造部51を示す断面図、(b)は、他の可撓電線管の雄型継手構造部51を示す断面図。
【
図12】(a)は、リング部材53を示す斜視図、(b)は、リング部材53aを示す斜視図。
【
図13】(a)、(b)は、雄型継手構造部51と雌型継手構造部11とを接続する工程を示す図。
【
図14】(a)は可撓電線管50aを示す側面図、(b)は、可撓電線管50bを示す側面図。
【
図16】(a)、(b)は、継手部材80と可撓電線管50とを接続する工程を示す図。
【
図19】(a)、(b)は、雄型継手構造部51aと継手部品1cの雌型継手構造部11aとを接続する工程を示す図。
【
図20】(a)、(b)は、雄型継手構造部51aと継手部品1dの雌型継手構造部11bとを接続する工程を示す図。
【
図21】(a)、(b)は、雄型継手構造部51aと継手部品1eの雌型継手構造部11cとを接続する工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0093】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は、継手部品1の管軸方向の断面図、
図1(b)は、
図1(a)のA部拡大図である。継手部品1は、マンホール又はハンドホールの壁面に埋め込まれ、壁面から突出させずに使用することが可能であり、雌型継手構造部11を有する部材である。すなわち、継手部品1は、壁面埋設用可撓電線管継手部品である。
【0094】
継手部品1は、硬質樹脂材料からなる筒状部材である。硬質樹脂材料としては、例えば、硬質塩化ビニル、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂の少なくともいずれかから選択されるが、特に、硬質塩化ビニルが望ましい。
【0095】
ここで、硬質塩化ビニルの比重は、1.35~1.45と非常に軽い素材であって、取り扱いが容易である。また、硬質塩化ビニルの強さは、軟質のアルミニウムと同程度であり、そのため内外圧・曲げ・衝撃などに対して十分な機械的強度を有する。また、硬質塩化ビニルは、耐薬品性にも優れており、ほとんどの酸・アルカリ・塩類等に浸されることはない。このように、材料としては、硬質塩化ビニルが最適である。
【0096】
なお、硬質塩化ビニルの機械的性質は、引張破断強度が415~527kg/cm2であり、引張降伏強さが415~457kg/cm2であり、引張弾性係数が2.46~4.22GPaである。また、硬質塩化ビニル管の力学的性質は、可塑剤の含有量が少ないので、塩化ビニルホモポリマーの力学的性質(引張弾性率:2.8GPa、引張降伏強さ:55MPa)に近い性質を示す。なお、硬質塩化ビニルの用途として、塩ビ管の他、波板、平板、フィルム・シート、異形押出品、電線、その他がある。
【0097】
継手部品1の材質として、硬質塩化ビニルを用いる場合には、例えば、JISK 6741(2016)に記載のVP管、VU管、HIVP管、JIS C 8430(2019)に記載のVE管、C.C.BOX管路システム研究会規格CCB E001-2(2011)に記載の電線共同溝電力用管路材CCVP、C.C.BOX管路システム研究会規格CCB E003-1(2018)に記載の電線共同溝電力用管路材ECVP、C.C.BOX管路システム研究会規格CCB C001(2011)に記載の電線共同溝一管一条通信用管路材P-V管等、適宜用いれば良い。また、詳細は後述するが、雌型継手構造部11を切削加工で形成する場合は、肉厚の厚いVP管、HIVP管、CCVP、ECVP、P-V管がより好ましい。例えば、JISK6741:2016では、VP管、VU管の強度(引張降伏強度)は、45MPa以上である。また、衝撃用のHIVP管の場合には、引張降伏強度は、40MPa以上と規定されている。
【0098】
このように、継手部品1として硬質樹脂材料を適用することで、後述する継手部品の製造時や、マンホールやハンドホールの接続部を施工する際におけるコンクリートの反応熱や重さに耐えられる。このように、強度、耐熱性、コストの観点から、硬質樹脂材料であることが望ましい。
【0099】
継手部品1には、一方の端部から他方の端部に向けて(図中左側から右側に対し)、ベルマウス部3、本体部5、斜面部7、拡径部9が順に形成される。本体部5は、電線又はケーブルを挿通するための外形が略円筒状である。斜面部7は、本体部5から拡径部9に移行する部位に形成される。拡径部9は、斜面部7に隣接して配置され、本体部5より管内径が拡径した部位である。なお、ベルマウス部3、本体部5、拡径部9は、いずれも外形が略円筒状である。斜面部7は、外形が略円錐形状に拡径する部位である。
【0100】
ベルマウス部3の開口端は、本体部5より拡径する。ベルマウス部3の内面は、通線時におけるケーブルの破損を防ぐため、管軸方向の断面形状を曲面とすることが望ましい。なお、ベルマウス部3の内面の曲面の曲率半径が小さいと、接続した可撓電線管が地震等で接続部から接続部の外方向に引っ張られる際に、継手部品に局所的に応力がかかり破損し易くなる。このため、ベルマウス部3の内面の曲面の曲率半径は、その際の応力分散効果を考慮すると所定値より大きいことが望ましく例えば、15mm以上とすることが望ましい。
【0101】
また、ベルマウス部3の開口部の直径は、特に限定されないが、拡げすぎると可撓電線管を密に配置できなくなる。また、ベルマウス部3の開口部の直径が狭すぎると、通線時のケーブル保護の効果が得づらく、接続した可撓電線管が地震等でマンホールやハンドホールと可撓電線管との接続部が外方向に引っ張られる際に、可撓電線管が接続部から抜ける可能性がある。このため、ベルマウス部3の開口部の外径は、雌型継手構造部11(拡径部9)の外寸の0.9~1.1倍の外寸とすることが望ましい。
【0102】
ベルマウス部3から拡径部9に至る円筒状部材の外形は、2段の異なる外径に形成された円筒状断面を有する。また、斜面部7は、本体部5から管内径及び管外径が、拡径部9に向かって管軸方向に徐々に拡径する斜面構造を有する。
【0103】
このように、本体部5と拡径部9とを2段階とすることで、接続した可撓電線管が地震等で接続部内方向に押し込まれる際に、継手部品1にかかる応力を、外形寸法の斜面部7において継手部材の管軸方向及び管軸方向に垂直な方向に円周面全周に渡って分散させることができる。また、継手部品1を切削加工で製造する場合、肉厚を担保し易い。
【0104】
なお、拡径部9の管外周面には、少なくとも管軸方向に垂直な壁又は鋭角な断面は形成されていない。例えば、継手部品1の外周面が、管軸方向に対して平行な面となだらかな斜面とで構成される。このように、本体部5と拡径部9との2段階とする場合には、斜面部7の管軸方向に対する傾斜角度は、5~45°とすることが望ましい。斜面部7の管軸方向に対する傾斜角度が5°以下だと、2段階とする効果が得づらい。また、斜面部7の管軸方向に対する傾斜角度の内角が45°を超え、さらに外寸が大きくなると、継手部品1がマンホールやハンドホールに密に配置できなくなる。ここで、斜面部の内角が45°より大きくなると、斜面部による継手部品の加工性と応力分散効果が低下し、内角が45°を超えることにより、斜面部の外角が135°より小さくなるとコンクリートの打設性が低下する。傾斜部の内角は、望ましくは30°以下10°以上であることが望ましい。
【0105】
拡径部9の円筒状空間の内面には、雌型継手構造部11が形成される。雌型継手構造部11は、第1収納空間13と、仕切り部15と、第2収納空間17とが、継手部品1の内方から他方の端部の開口部に向かって順に形成される。第1収納空間13と第2収納空間17は、管内方に縮径するように突出する仕切り部15で区画された2つの所定幅の断面略円筒形の空間である。仕切り部15は、第1収納空間13と第2収納空間17に対して突出させて形成するのではなく、切削により円筒形状の内面に溝を形成することで、結果的に未切削部または切削量の少ない部分として管内方に突出する仕切り部15が形成されるものである。この際、溝の側壁がリング部材の係止部あるいは溝面がリング部材の取付け部になる。なお、特に図示いないが仕切り部15は切削により溝を形成することで非切削部を仕切り部として形成するのではなく、拡径部9の円筒状空間の内面の仕切り部15の形成位置にシート状部材を貼り付けることでも形成することができる。
【0106】
なお、詳細は後述するが、雌型継手構造部11には、可撓電線管の雄型継手構造部が接続される。この場合には、雄型継手構造部の先端が、斜面部7の内壁に当接することで、斜面部7が、雄型継手構造部の抜け止め機能を発揮する。また、第1収納空間13は、雄型継手構造部の係止用のリング部材を収納することが可能である部位であり、第2収納空間17は、雄型継手構造部のパッキンを収納することが可能な部位となる。ここで、第1収納空間13には、雄型継手構造部の構造により異なるが、係止部材の係止爪あるいはリング部のいずれかが収納される。すなわち、雌型継手構造部11には、雄型継手構造部を係止する係止用の係止部材と、雌型継手構造部11と雄型継手構造部を止水するパッキンが、断面略円筒形の空間の内周面の奥側から開口部に向かって相互に所定距離離間して収容可能である。
【0107】
なお、仕切り部15による縮径部の高さ(
図1(b)のB)は、2mm以上5mm以下であり、好ましくは2mm以上4mm以下、さらに好ましくは2mm以上3mm以下であることが望ましい。すなわち、第1収納空間13及び第2収納空間17の内径に対して、上下方向の高さの差異を考慮する必要があることから、仕切り部15の内径は収納空間の最大内径に対して10mm以下であり、望ましくは8mm以下と小さくすることができるが、6mm以下の内径差であることがより望ましい。なお、仕切り部15の高さは、仕切り部15の内径の半分になるため、上記のように2~5mmであるが、仕切り部15の高さは2~3mmであることがより望ましく、これと対応する収納空間の内径差は4~6mm以下であることがより望ましい。仕切り部15の高さが大きくなると、第1収納空間13や第2収納空間17の肉厚が薄くなり、継手部品1が破損し易くなる。またこの時、継手部品1の外寸も大きくなり、マンホールやハンドホールの接続部に密に配置できなくなる。逆に仕切り部15の高さが小さくなると、マンホールやハンドホールの接続部に密に配置し易くなるが、一方で第1収納空間13に係止部材の係止爪が掛かりづらくなる。ブロー成型や真空押出成形で成形する場合、継手部品内面の段差は必ず曲率を持つが、本発明では切削加工により第1収納空間13や第2収納空間17と仕切り部15の段差を形成するため、段差が綺麗な矩形となり、係止部材の係止爪が掛かり易くなる。これにより、仕切り部15の高さが2mmと小さくても、係止部材の係止爪が十分に係止される。なお、仕切り部を、シート状部材を貼り付けることで形成する場合でも、仕切り部の望ましい高さは、切削で形成する場合でも同様である。
【0108】
また、継手部品1の可撓電線管と接続するための雌型継手構造部11の内面と、ベルマウス部3の内面の少なくともいずれか一方には、接続される可撓電線管の呼び径が印字されていてもよい。このようにすることで、接続対象の可撓電線管のサイズを容易に把握することができる。なお、印字は、凹凸が有ると雌型継手構造部11の機能や、ケーブルを通線する際の不具合が懸念されるため、例えば油性インク等で押印する等、凹凸が生じない方法が望ましい。
【0109】
図2には、継手部品1aが第2の拡径部を有する場合について示す。また、拡径部9の先端に、さらに拡開する第2の拡径部を形成してもよい。
図2(a)は、継手部品1aの断面図、
図2(b)は、
図2(a)のC部拡大図である。継手部品1aは、継手部品1と略同様の構成であるが、拡径部9の開口部側に、拡径部9よりもさらに拡径する第2拡径部9aが形成される点で異なる。
【0110】
前述した継手部品1は、第2収納空間17が、略円筒状の断面に形成されるが、継手部品1aでは、拡径部の開口部側に第2拡径部9aが形成されるが、第2拡径部9aの外周面は、円筒形の筒状部が外方に向かって所定角度θでなだらかに拡開する円筒形状の断面に形成される。すなわち、
図2(b)に示す継手部品1aでは、拡径部の外周に加えて第2収納空間17を形成する内周面も外周面に略平行に先端に向かって円筒形断面が外方に向かって所定角度θでなだらかに拡開する円筒状の断面に形成される。
【0111】
また、
図2(c)は、継手部品1bのC部と同様の部位の部分拡大図を示す。継手部品1bの全体の構造を示す断面部は、
図2(c)に示す部位を除き
図2(a)と同様の構造であるため記載を省く。
図2(c)に示すように、継手部品1bの第2拡径部の外周は、継手部品1aと同様に円筒形の筒状部が外方に向かって所定角度θでなだらかに拡開する円筒形状の断面に形成されるが、継手部品1bの第2拡径部の内周部が拡径部と略平行または拡径部の内周部の延長線上に拡径部の内径と同一内径に形成され、第2の拡径部の外周が所定角度で拡開することで、第2拡径部9bが断面くさび型に形成される。
【0112】
このように、継手部品1aは、第2拡径部9aを有するため、第2収納空間17の内面は、断面円錐台形となる。また、第2収納空間17の外周も内周部と略平行な拡開する断面円錐台形状である。継手部品1bは、断面くさび型の第2拡径部9bを有するため、第2収納空間17の内面は、断面円筒形になる。このようにすることで、継手部品1bでは、第2収納空間17の外周部の肉厚を維持して、第2収納空間17の部分の部材強度を維持できる。継手部品1bでは、継手部品の端部の肉厚を厚くできるため、継手部品1bの部材強度を向上させることができる。さらに、継手部材の型枠への固定が容易になると同時にコンクリート打設時における止水性を高めることができる。また、いずれの場合にも、外周部が緩やかに所定角度で拡開するため、ベルマウス方向への抜け止め効果や地震などの際の斜面部にかかる荷重を低減する効果を有する。
【0113】
なお、この場合でも、仕切り部15による縮径部の高さ(
図2(b)のD:段差)は、2mm以上5mm以下であり、さらには2mm以上4mm以下であることが望ましい。この場合には、第1収納空間13の内径と、第2収納空間17の最も小さな内径部(すなわち仕切り部15に近接する部位)の内径よりも、仕切り部15の内径が10mm以下、さらに8mm以下とすることができる。
【0114】
また、管軸方向に対する第2拡径部9aの拡径角度(
図2(b)の角度θであって、管軸方向に対する拡径斜面角度)は、1°以上10°以下であることが望ましい。第2拡径部9aの拡径角度は、1°未満では効果が不十分であり、10°を超えると、外寸が大きくなり、継手部品1がマンホールやハンドホールの接続部に密に配置できなくなる。
【0115】
なお、ここで、第2拡径部9aの外周面は円筒形の筒状部が外方に向かって所定角度でなだらかに拡径するが、内周面は、外周面と略平行になだらかに拡径させても良いし、あるいは第2拡径部9aの外周面は、同一直径の略円筒状に形成されてもよい。また、第2拡径部9aの内周が、第2拡径部9aの外周と略平行に先端に向かってなだらかに所定角度で拡開するか、拡径部9の内周と同様な大きさに形成されるかのいずれかであってもよい。すなわち、第2拡径部9aの内周面は、仕切り部15を挟んで、拡径部9側の内周面と同一の直径円筒状に形成することも可能である。
【0116】
このように、第2拡径部9aを形成することで、第2拡径部9aの内周面側は、
図1の内周面と同様の構造を有し、外周面側は円錐状に1°から10°以内の所定の角度で拡径する形状とすることもできる。このような構造とすることで、外力が働いた場合のマンホールやハンドホールからの抜け止め効果や応力分散効果を得ることができ、斜面に働く応力を分散することが可能になる。この際、第2拡径部9a内周面の加工はなだらかに拡開された管の内周面を仕切り部から継手部材の第2拡径部側の端部に向かって略直角三角形状に切削することにより行われる。
【0117】
次に、壁面埋設用可撓電線管の継手部品の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、継手部品1aについて説明するが、継手部品1も1cも同様である。
図3は、継手部品1aの製造工程を示す図である。
【0118】
まず、
図3(a)に示すように、硬質塩化ビニル等の硬質樹脂材料からなる押出管を所定の長さに切断し、素管19を形成する。次に、
図3(b)に示すように、素管19を所定温度で加熱して、熱成形によってベルマウス部3、斜面部7及び拡径部9(第2拡径部9a)を拡径して成形する。拡径部9とベルマウス部3の拡径は、素管19を局所的に加熱し、素管19内に金型を挿入することで行うことができる。
【0119】
その後、
図3(c)に示すように、拡径部9の内面に切削加工により、断面円筒形の仕切り部15を挟んだ所定位置に第1収納空間13と第2収納空間17とを形成する。すなわち、外周面が2段の異なる外形に形成された円筒状部材の拡径部9の円筒状の内面に形成される雌型継手構造部11の、円筒状の内壁に形成される第1収納空間13及び第2収納空間17は、それぞれの凹部が切削により形成されたものであり、仕切り部15は、未切削部を縮径部として形成したものである。このように、切削加工によって、雌型継手構造部11が形成される。
【0120】
このように、雌型継手構造部11は、断面略円筒形の空間の所定位置に切削加工によって形成される断面略円筒状の溝と、切削加工が行なわれていない仕切り部15とが形成されることで、当該溝が、断面略円筒形の空間を仕切り部15により、第1収納空間13と第2収納空間17に区分される。
【0121】
ここで、継手部品1aの両端面を切削してもよい。このようにすることで、継手部品1aの可撓電線管と接続するための雌型継手構造部11の先端の開口部の端面と、ベルマウス部3の先端の開口部の端面に、それぞれ、平坦面21a、21bが形成される。なお、継手部品1aの可撓電線管と接続するための雌型継手構造部11の先端の開口部の端面と、ベルマウス部3の先端の開口部の端面は、両端面が平坦面状に形成されていることが望ましいが、両端面の少なくとも一方が平面状に形成されていれば、両面が平坦面でなくてもよい。両端面を平坦面とすることで、マンホール製造時に型枠に固定し易くなる。また端面を切削することで、全長を精度良く作り込むことが可能となり、型枠に挟んだ際に、過剰な圧縮やコンクリートの継手内への侵入が起こりづらくなる。また端部に弾性体を配置し易くなる。
【0122】
以上により、継手部品1aを製造することができる。この際、硬質樹脂材料を素材とし、切削加工によって円筒状の部材の側面を形成する筒状部の内周面に第1収納空間13と第2収納空間17とを形成することから、仕切り部15の高さの加工精度が高く、その結果高さが低い収納空間高精度の収納空間を得ることができる。継手部品を射出成形やブロー成形等により成形する場合などのように、継手部品の外周に、管軸方向に垂直な方向に突出した突部や窪み部を有しないこれまでにない構造の雌型継手構造を有する継手部品を得ることができる。このため、可撓電線管と接続するための雌型継手構造部11の寸法精度と耐荷重性が優れる。さらに、コンクリート部材に埋め込む場合の打設性と小型化が可能になる。このように、寸法精度と耐荷重性が優れる小型化により密接配置が可能でしかもコンクリートの打設性にも優れる雌型継手構造部11を有する壁面埋設用可撓電線管継手部品を製造することができる。
【0123】
なお、まず、拡径部9を熱成形で形成し、内面を切削加工して雌型継手構造部11を形成後、ベルマウス部3を拡径してもよい。また、さらに、拡径部9の拡径を二段階で行ってもよい。雌型継手構造部11を切削加工で担保する場合は、肉厚の確保のため、拡径部9の拡径を二段階とすることが好ましい。なお、雌型継手構造部11は、切削加工の他、接着等による貼り付けでも行うことができるが、接着面の強度低下や加工の手間を考慮すると、切削加工が望ましい。
【0124】
また、本発明の継手部材は、拡径部9と、必要に応じて第2拡径部9aを設けるが、拡径部9または拡径部9と第2拡径部9aに雌継手構造を設け、これにより可撓電線管との接続を可能にするものである。このため、本体部5は、拡径部9及び斜面部7と、ベルマウス部3を接続して可撓電線管を挿通保持する役割を果たしているだけであることから、
図1、
図2などに示すような長さが必ずしも必要ではなく、本体部5を短尺化することで継手部材のさらなる小型化が可能になる。
【0125】
次に、壁面埋設用可撓電線管の継手部品1aを用いたマンホール又はハンドホールの壁の接続部の形成方法について説明する。まず、
図4(a)に示すように、型枠23aを起立させて、内面側に中芯25をボルト27によって固定する。なお、
図4(a)においては、一つの中芯25のみを図示するが、中芯25は所定の間隔で複数配置される。すなわち、中芯25は、継手部品1aを複数個配列可能である。
【0126】
次に、
図4(b)に示すように、中芯25の周囲に、所定の間隔で鉄筋29を配置する。次に、
図5(a)に示すように、中芯25に継手部品1aを装着する。なお、中芯25の外径を、継手部品1aの内径と略等しくすることで、継手部品1aを精度よく位置決めすることができる。
【0127】
次に、
図5(b)に示すように、継手部品1aの逆側に型枠23bを起立させ、型枠23a、23bによって継手部品1aを挟み込む。この際、継手部品1aの両端面には、平坦面21a、21b(
図3(c))が形成されることで、型枠23a、23bと隙間なく密着させることができる。なお、中芯25が継手部品1aよりも長いと、継手部品1aと型枠23a、23bとの間に隙間が形成されるため、中芯25の長さは、継手部品1aの長さ以下とする。
【0128】
次に、
図6(a)に示すように、型枠23a、23bの間にコンクリート31を打設する。なお、コンクリート31の材質は、セメントコンクリートやレジンコンクリート等を用いれば良い。この際、継手部品1aの外周面に、管軸方向に垂直な段部や仕切り部が形成されていないため、コンクリート31が継手部品1aの外周に容易に回り込み、空気溜り等が形成されることを抑制することができる。
【0129】
以上により、継手部品1aを複数個配列可能な中芯25を用いて、継手部品1aを整列させた状態でマンホール又はハンドホールの壁の接続部に埋め込まれている、壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いたマンホール又はハンドホールの壁における接続部の接続構造を得ることができる。
【0130】
コンクリート31が硬化後、
図6(b)に示すように、型枠23a、23bと中芯25とを撤去する。以上により、壁面埋設用可撓電線管の継手部品1aがマンホール又はハンドホール(コンクリート製の構造体30)の壁面に埋め込まれた構造を構築することができる。この際、コンクリートの壁厚と継手部品1aの長さとが略一致するため、継手部品1aがコンクリート31から突出することがない。また、第2拡径部9aが形成されることで、コンクリート31からの抜け止め効果がある。
【0131】
ここで、前述したように、継手部品1aの可撓電線管と接続するための雌型継手構造部11の先端の開口部の端面と、ベルマウス部3の先端の開口部の端面の少なくとも一方の端面において、平坦面21a、21bが形成される。この際、
図7(a)に示すように、中芯25にセットする前に、継手部品1aの平坦面21a、21bに弾性体33が取り付けられてもよい。
【0132】
このように、継手部品1aの端面に弾性体33を取り付けることで、型枠23a、23bとより確実に密着し、コンクリート31を打設する際に、コンクリート31が継手部品1aの内部に侵入しにくくなる。なお、弾性体33は、ゴム材、発泡材等を適宜用いれば良く、粘着テープや接着剤等で適宜取り付ければ良い。また、雌型継手構造部11とベルマウス部3の端面上のみに弾性体33を取り付けてもよいし、両端の開口部全体を覆うように弾性体33を取り付けても良い。
【0133】
また、
図7(b)に示すように、継手部品1aの外周面の少なくとも一部に、止水部材35を張り付けておいてもよい。継手部品1aの外周に止水部材35を取り付けることで、マンホール等への地下水の侵入を抑えることができる。なお、止水部材35は、例えば、ブチルゴム、水膨張ゴム、水膨張不織布等を適宜用いれば良い。なお、止水部材35は、継手部品1aの外周全面に取り付けても良いし、一部に取り付けても良いが、止水部材35が、外周全周でつながるように取り付けられることが望ましい。また、継手部品1aに止水部材35を取り付けない場合は、マンホール等の内側または外側の少なくとも一方の壁と継手部品1aの界面を、エポキシパテ等で埋めて止水処理を行ってもよい。
【0134】
また、
図8に示すように、継手部品1aの外周面の少なくとも一部に、周方向に囲うように環状に砂102を付けても良い。砂102を付けることで、マンホールの壁と継手部品1aの外周面の密着性を向上させることができる。なお、砂102としては、例えば珪砂等を適宜用いれば良く、砂102を付けるとは砂102を継手部品1aの外周面に接着により固定することを意味し、砂102の接着は、粘着テープや接着剤等で適宜取り付ければ良い。なお、砂102は、継手部品1aの外周面の一部のみにつけても良いし、外周面の全周につけてもよい。工事現場の状況や設計などに応じてより、適宜選択すればよい。
【0135】
ここで、砂102は、継手部品1aの軸方向の全長に対してつけてもよいし、継手部品1aの軸方向の全長の一部のみにつけてよい。例えば、
図8に示す例では、ベルマウス部3側の端部から、斜面部7までの間の直管部の途中まで、継手部品1aの外周に砂102がつけられる。
【0136】
図6に示すように、継手部品1aが完全にコンクリート31に埋められる場合には、直管部分よりも径の大きなベルマウス部3と拡径部9等によって、コンクリート31に対して、継手部品1aの軸方向の移動が規制される。しかし、例えば、継手部品1aの一部(例えば、ベルマウス部3から直管部分の途中まで)のみがコンクリート31に埋められると、継手部品1aが軸方向(ベルマウス部3側)に動いてしまうおそれがある。これに対し、継手部品1aのコンクリート31に埋められる部位の外周面に砂102をつけておくことで、コンクリート31と継手部品1aの外周面の密着性が向上し、このような継手部品1aのずれを抑制することができる。
【0137】
なお、上述した例では、継手部品1aを、中芯25を用いて、継手部品1aを整列させた状態でマンホール又はハンドホールの壁の接続部に埋めこむマンホール又はハンドホールの壁の接続部の形成方法について説明したが、この方法には限られない。例えば、中芯25に代えて、複数の管枕材を用いて継手部品1aを所定の位置に配列してもよく、鉄筋29に対して複数の継手部品1aを所定の位置に固定してもよい。
【0138】
次に、前述したマンホール又はハンドホールの壁の接続部の接続構造を用いた沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法について説明する。なお、以下の説明では、地下構造体としてマンホールを構築する例について説明するが、ハンドホールも同様である。また、マンホール又はハンドホールの他、分岐ます等、管路式で地中にケーブルを敷設する際に、ケーブルの分岐や引き込みのために設置されるコンクリートの箱全般に適用可能である。なお、コンクリートの箱の壁の形状は平面や曲面等、特に限定されないが、継手部品の取り付けの観点からは、平面であることが好ましい。このように、コンクリートの箱としては、特に限定されないが、例えばマンホール又はハンドホールのいずれかに対して特に有効である。
【0139】
まず、
図9(a)に示すように、複数の継手部品1aが所定の間隔で埋設されたコンクリート製の構造体30を地面39に設置する。なお、構造体30は、前述した方法で接続構造を形成したマンホール又はハンドホール(後述する底部を除く)であって、上下面が開口する矩形筒形状である。この際、接続部(継手部品1a)の開口部には、土砂の侵入防止用のキャップ37が被冠される。
【0140】
次に、
図9(b)に示すように、構造体30の内部において地面39の土砂を掘削して、構造体30を地中に埋設沈下させる。構造体30が完全に地中に埋設沈下された後、
図9(c)に示すように、構造体30の内部の開口底部にコンクリートを打設して、底部41を形成する。以上によりマンホール40を構築することができる。
【0141】
次に、沈下型のマンホール40の接続部へ、可撓電線管を接続する方法について説明する。
図10(a)は、接続される可撓電線管50を示す側面図であり、
図10(b)は、
図10(a)のE-E線断面図である。また、
図11(a)は、可撓電線管50の端部近傍の軸方向断面図である。
【0142】
可撓電線管50は、少なくとも管体の一方の端部に雄型継手構造部51が設けられる。雄型継手構造部51は、継手部品1aの雌型継手構造部11と接続可能である。すなわち、継手部品1aの雌型継手構造部11は、可撓電線管50との接続部となる。
【0143】
可撓電線管50の管体(本体部)は、可撓性を有する樹脂管である。可撓電線管50の外周面には、管軸方向に複数の大径部59と小径部61が交互に形成される。
図10(b)に示すように、大径部59は、断面形状が略正方形状であり、小径部61は、断面形状が円形状に形成される。すなわち、可撓電線管50は、本体部が、断面略矩形状の大径部59と断面円形の小径部61が交互に形成された角形電線管である。
【0144】
なお、大径部59の径(正方形の一辺の長さ)は、小径部61における外径よりも大きい。このように、略正方形状の大径部59を設けることで、可撓電線管50を積み上げた際に、可撓電線管50を安定して配列することができる。なお、雄型継手構造部51の最大外径は大径部59の径(一辺の長さ)よりも小さい。したがって、雄型継手構造部51側の端部から見た際に、雄型継手構造部51は、大径部59の外周にはみ出すことがない。したがって、大径部59同士を接触させて可撓電線管50を積み上げた際に、雄型継手構造部51が、隣り合う可撓電線管50と干渉することがない。
【0145】
なお、可撓電線管50としては、
図11(b)に示すように、
図10(b)に示すような通常の角形電線管に変えて、外管67の内部に、直管状の内管69が一体化した二重壁角形電線管を用いてもよい。この場合には、可撓電線管50は、本体部が、断面略矩形状の大径部59と断面円形の小径部61が交互に形成された外管67と、外管67の小径部61の内側に融着される内管69とからなる。この際、内管69は、
図11(b)に示すように開口部の端面と同一平面を形成する位置と面一になるように先端部分が延出しても良いし、開口部近傍の融着部の先端で切断されていてもよい。
【0146】
次に、可撓電線管50の雄型継手構造部51について詳細に説明する。なお、以下の説明は、内管を有しない
図11(a)を用いて説明するが、雄型継手構造部51の構造及び機能は、可撓電線管50が、単管からなる角形電線管であっても、外管67の内部に内管69が融着した二重壁角形電線管であっても同様である。
【0147】
雄型継手構造部51には、リング部材配置部63と、リング部材配置部63よりも開口部と反対側の電線管の奥側に止水部材配置部65とが形成される。リング部材配置部63には、係止爪75とスライドガイド77を有するリング部材53が配置される。また、止水部材配置部65には、ゴムパッキン57が配置される。
【0148】
図12(a)は、リング部材53を示す斜視図である。リング部材53は、円周方向の先端に開口部71を有する略C字状の部材である。リング部材53の管軸方向の一方の端部側は、外径が他の部位よりも小さい縮径部73となる。リング部材53の他方の端部側に向けて、複数の係止爪75と複数のスライドガイド77が設けられる。複数の係止爪75とスライドガイド77は、縮径部73に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される。
【0149】
係止爪75は、縮径部73から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される。このように、リング部材53には、先端に向かって外方に拡開する複数の係止爪75が設けられ、
図11(a)に示すように、係止爪75は、管軸方向の奥側(開口部とは反対側)に向かって拡開するように、リング部材配置部63に配置される。
【0150】
また、スライドガイド77は、管軸方向に平行に形成される。すなわち、係止爪75とスライドガイド77は、円周方向に交互に配置される。スライドガイド77は、管軸方向に平行なスライドガイド機能を有する爪である。スライドガイド77によって、雌型継手構造部11との接合時に、リング部材53の倒れ込みを抑制し、リング部材のスライドを補助することができる。すなわち、リング部材53は、リング部材53の先端に向かって管軸方向の奥側に対して外方に拡開する係止爪75と、管軸方向に平行なスライドガイド機能を有する係止爪とは別の爪を有し、2つの爪が円周方向に交互に配置されている。
【0151】
なお、
図12(b)に示すようなリング部材53aを用いてもよい。リング部材53aはリング部材53と略同様の構成であるが、開口部71側の端部に接続部79が形成される点で異なる。すなわち、リング部材53aは、円周方向の先端に接続部79を有する。接続部79は、相互に噛み合って接続することができる。すなわち、接続部79を接続しない状態では、リング部材53aは、リング部材53と同様に略C字状の部材である。一方、接続部79同士を接続することで、リング部材53aは、環状に形成可能である。
【0152】
このように、接続部79を有するリング部材53aを用いれば、接続部79同士を接続しない状態でリング部材53aをリング部材配置部63に配置することができる。また、リング部材53aをリング部材配置部63に配置した後、接続部79を接続することで、リング部材53aがリング部材配置部63から外れてしまうことを抑制することができる。
【0153】
次に、沈下型のマンホール40の継手部品1aと可撓電線管(雄型継手構造部51)との接続方法について説明する。なお、以下の説明では、リング部材53を用いた雄型継手構造部51について説明するが、リング部材53aを用いた場合も同様である。
【0154】
図13(a)は、継手部品1aの雌型継手構造部11側の端部に、可撓電線管50の雄型継手構造部51を挿入する前の状態を示す図である。前述したように、壁面埋設用可撓電線管の継手部品1aが、マンホール40(又はハンドホール。以下同様。)の壁面に埋め込まれる。また、マンホール40は、前述した沈下型のマンホール又はハンドホールの構築方法によって沈設される。
【0155】
この状態から、
図13(b)に示すように、雄型継手構造部51を有する可撓電線管50の雄型継手構造部51を継手部品1aの雌型継手構造部11に挿入する。このように、構築された沈下型のマンホール40の接続部(雌型継手構造部11)に、可撓電線管50の雄型継手構造部51を挿入して接続することで、接続構造70を得ることができる。
【0156】
このように雄型継手構造部51を雌型継手構造部11へ挿入すると、継手部品1aの第1収納空間13にリング部材53が収納され、第2収納空間17には、ゴムパッキン57が収納される。
【0157】
この際、第2収納空間17においてゴムパッキン57の径方向の先端部が断面円錐台形の内面に当接するため、止水機能が安定して維持される。以上により、雌型継手構造部11と可撓電線管50とを接続することができる。すなわち、壁面埋設用可撓電線管継手部品を用いた、壁面埋設用可撓電線管継手部品によるマンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造70を得ることができる。
【0158】
また、上述した例では、可撓電線管50が角形電線管(又は二重壁角形電線管)である場合を示すが、可撓電線管の形態は特に限定されない。例えば、
図14(a)に示す可撓電線管50aのように、本体部の外周部に螺旋状の凸部が形成されてもよい。また、
図14(b)に示す可撓電線管50bのように、本体部の外周部に、軸方向に垂直な方向の凸部が形成されてもよい。すなわち、可撓電線管の本体部は、らせん状の波形、あるいは独立波構造の波形のいずれの形状の可撓電線管であってもよい。
【0159】
次に、壁面埋設用可撓電線管継手部品と他の継手部材を用いた、マンホール又はハンドホールと可撓電線管との接続構造について説明する。
図15は、継手部材80を示す斜視図である。なお、斜視図においては、リング部材及びゴムパッキン等の図示を省略する。継手部材80は、主に、継手本体82とΠ型固定部材81からなる。
【0160】
Π型固定部材81は、天面部85と、一対の両足部83からなる。両足部83は、天面部85の両端部近傍に、天面部85に対して略直交するように接続され、下方に向けて突出する。Π型固定部材81の両側部には、段部87が設けられる。段部87は、上方が両側方向に張り出すように下方に向けて形成される。すなわち、天面部85の下面(下方)には、それぞれの両足部83と天面部85の接続部から、外方に向けて突出する段部87がそれぞれ形成される。
【0161】
Π型固定部材81の段部87より下方の所定位置に、両足部83の外側に向けて係合部89が形成される。係合部89は、下方が両側方向に張り出すように形成される。なお、係合部89と段部87は、相互に対抗するように互いに略平行に形成される。
【0162】
Π型固定部材81の天面部85の内周面は、略円弧形状またはアーチ形状である。天面部85の内周面の形状は、前述した可撓電線管50の小径部61の外形に対応した形状である。
【0163】
継手本体82の一方の側には、筒状部91が形成される。筒状部91は、後述する可撓電線管50を固定する部位である。継手本体82の他方の側には雄型継手構造部51が形成される。雄型継手構造部51は、
図11に示したものと同様の構造である。すなわち、雄型継手構造部51は、前述した継手部品1aの雌型継手構造部11と接続可能である。
【0164】
次に、切断された可撓電線管50と継手部材80の接続方法について説明する。
図16(a)は、所定の長さに可撓電線管50が切断され、切断部97を継手部材80の筒状部91に対向させて配置した状態を示す図である。可撓電線管50は、小径部61の略中央で切断される。
【0165】
筒状部91は、切断された可撓電線管50が挿入される部位である。筒状部91の一部には、略矩形状部の側面の上方及び天面93が開口する切欠き部95が形成される。また、筒状部91の略矩形状の底部の両側には、開口部96が設けられる。開口部96は、継手本体82の管軸方向に対して、切欠き部95に対応する位置に形成される。
【0166】
また、切欠き部95に対応する位置の筒状部91の側面の内側には、係合段部98が形成される。係合段部98は、継手本体82の管軸方向に略平行に、内側に向かって突出する突部によって形成される。また、切欠き部95より奥側(雄型継手構造部51側)には、筒状部91の内周面全周を取り囲むように止水部材99が配置される。
【0167】
次に、
図16(b)に示すように、可撓電線管50を、継手部材80の筒状部91へ挿入し、さらに。筒状部91の上方から、切欠き部95へΠ型固定部材81を挿入する。この際、筒状部91の開口径は、可撓電線管50の大径部59が収納可能な大きさに形成される。さらに、筒状部91の長さは、可撓電線管50の小径部61を挟んだ一対の大径部59が挿入可能な長さとする。
【0168】
上方から切欠き部95へΠ型固定部材81が挿入されると、筒状部91の側面上部に、Π型固定部材81の段部87が載置される。また、Π型固定部材81の両足部83の先端が、筒状部91の底部の両側に設けられた開口部96に挿入される。また、Π型固定部材81を、段部87が切欠き部95の縁部と接触するまで押し込むと、Π型固定部材81の係合部89が係合段部98と係合する。このため、Π型固定部材81が筒状部91へ固定されて、Π型固定部材81が筒状部91から抜け落ちることがない。
【0169】
また、切欠き部95の側面の上部にΠ型固定部材81を載置したときに、Π型固定部材81の天面部85の内周面が、内部の可撓電線管50の大径部59より小さく、可撓電線管50の小径部61と等しいかわずかに大きい。このため、Π型固定部材81は、可撓電線管50の小径部61に干渉しない。
【0170】
また、このようにΠ型固定部材81が筒状部91に固定された状態で、可撓電線管50を継手部材80から引き抜こうとすると、Π型固定部材81の天面部85の内面の上部の一部および両足部83が、可撓電線管50の略正方形状の大径部59の側面に当接して係合する。このように、可撓電線管50と継手部材80とが管軸方向に係合されるため、可撓電線管50が継手部材80から抜けることがない。
【0171】
また、前述したように、切欠き部95より奥側の筒状部91の内面には、筒状部91の内周面全周を取り囲むように止水部材99が配置される。したがって、筒状部91の内面と可撓電線管50の大径部59の外面が止水部材99を介して密着して、止水性が確保される。
【0172】
図17は、マンホール40と可撓電線管50との接続構造70aを示す図である。接続構造70aは、マンホール40に埋め込まれた継手部品1aと、継手部材80と、可撓電線管50とが接続されたものである。このように、継手部材80は、一方の端部に、可撓電線管50の雄型継手構造部51と同様の構造を有し、他方の端部に、可撓電線管50の切断面と接続される構造を有する。このため、継手部品1aの雌型継手構造部11と、継手部材80の雄型継手構造部51とを相互に接続することができ、継手部材80の他方の端部の筒状部91(可撓電線管50の切断面と接続される構造)に、可撓電線管50の切断面(切断部97)を接続することができる。
【0173】
図18は、マンホール40と可撓電線管50との接続構造を用いた可撓電線管50の管路ネットワーク100を示す図である。管路ネットワーク100は、複数のマンホール40(又はハンドホール)と可撓電線管50との接続構造が組み合わせられたものである。例えば、図示した例では、一方のマンホール40(図中左側)は、接続構造70を有する。すなわち、当該接続構造70では、雄型継手構造部51を有する可撓電線管50と継手部品1aの雌型継手構造部11とが接続される。
【0174】
また、他方のマンホール40(図中右側)は、接続構造70aを有する。すなわち、当該接続構造70aでは、雄型継手構造部51を有する継手部材80を介して、切断された可撓電線管50と継手部品1aの雌型継手構造部11とが接続される。なお、継手部材80に接続される可撓電線管50の他方の切断部の切断面と、他の可撓電線管50の切断部の切断面同士は管継手101で接続される。管継手101は、例えば、継手部材80の筒状部91が両側に形成された継手である。すなわち、管継手101によれば、切断された可撓電線管50の切断部の切断面同士を接続することができる。
【0175】
以上の他、可撓電線管50の管路ネットワーク100には、特に図示しないが、電線管の一方の端部に雄型継手構造部51と同一構造を有する雄型接続部と、他方の端部にこれと嵌合可能な雌型接続構造としての雌型接続部を有する複数の電線管の雄型接続部と雌型接続部を相互に接続する構造を管路ネットワーク100に加えることも可能である。
【0176】
以上説明したように、本実施形態によれば、継手部品1aが硬質樹脂材料製のため、マンホールやハンドホールの壁面に埋め込み使用する場合において、コンクリート31を流し込んで継手部品1aの周囲を固める際に、コンクリート31の重量とコンクリート31の凝固時の反応熱により、継手部品1aが変形するのを防止することができる。特に、継手部品1aの外周部の断面形状が2段円筒の筒状部材であるため、部材の外周部に垂直な壁部などがないため、コンクリート31を打設する時に空気溜まり等が生じにくい。
【0177】
ここで、通常、硬質塩化ビニル等の硬質樹脂は成形性が悪いため、ブロー成形や射出成形が困難である。このため、複雑な三次元形状に成形することが困難なため、押出管が使用されることが多い。
【0178】
このように、硬質塩化ビニル等の硬質押出管の使用を前提とした場合には、射出成形やブロー成形が困難なため、継手部品の管軸方向に垂直な壁の成形ができず、係止リングなどの抜け止め構造を内包する雄型継手構造部と嵌合可能な雌型継手構造部を実現することができない。すなわち、係止爪をロックして固定するような係止構造を有する部材は、管軸方向に垂直な縦壁を成形により形成できない硬質樹脂で形成することは困難と考えられていた。このため、このような継手部品としては、成形が容易であるポリエチレン等が採用されてきた。
【0179】
これに対し、本実施形態では、従来の管路材に使用されるポリエチレン製の継手部品と異なり、継手部品1aとして、耐荷重性の観点から硬質塩化ビニルなどの硬質樹脂材料を使用したものである。また、硬質塩化ビニル等の硬質樹脂を用いて、切削加工によって雌型継手構造部11を形成することで、直線挿入型のワンタッチ接続が可能な硬質樹脂材料製の雌型継手構造部11を有するマンホール等に使用する継手部品1aを得ることができる。
【0180】
また、継手部品1aが硬質樹脂材料製のため、切削加工によって精度よく加工を行うことができる。このため、雌型継手構造部11の寸法精度が良好であり、雄型継手構造部51の挿入性が良好である。また、ベルマウス部3と拡径部9によって、継手部品1aのコンクリート31からの抜けを抑制することができる。第2拡径部9aにより、メス継手側からベルマウス側に押し込む荷重が働いた際に、傾斜部にかかる荷重を分散させることができる。
【0181】
また、継手部品1aは、全体として、斜面部7を挟んで、2段の円筒形断面を形成することにより、雄型継手構造部51がベルマウス部3側への抜けることを防止することができる。また、例えば、地震発生時に雌型継手構造部11に係る荷重を分散させることができる。なお、斜面部7の構造は、管軸方向に対して所定の傾きを有した斜面状に形成されていれば、略直線状、凸形状の曲線状、凹形状の曲線状いずれでもよく、雄型継手構造部51の先端が斜面部7の内面に当接した場合に、斜面部7が応力を均等に分散する効果を有する。
【0182】
また、継手部品1aの端面を切削加工によって平坦面21a、21bとすることができるため、型枠23a、23bと密着し、コンクリート31が内部へ侵入することを抑制することができる。さらに、切削加工により、全長を精度良く作り込むことができる。さらに、平坦面21a、21bに弾性体33を配置することで、より確実に内部へのコンクリート31の侵入を抑制することができる。
【0183】
また、継手部品1aの外周部に止水部材35を配置することで、コンクリート31と継手部品1aの外面との間の止水性を確保することができる。
【0184】
また、第1収納空間13には、抜け止め構造として、雄型継手構造部51のリング部材53の係止爪75が収容されるため、リング部材53の係止爪75を安定して支持することができる。また、第2収納空間17においてゴムパッキン57の径方向の先端部が接触することで、止水機能が安定して維持することができる。
【0185】
このように、雄型継手構造部51のリング部材53の先端が、断面円筒形の仕切り部15の内側面に当接することで、仕切り部15が、雄型継手構造部51の抜け止め機能を発揮し、外部から引き抜き力がかかっても雄型継手構造部51が抜けることがない。なお、雄型継手構造部51を雌型継手構造部11に挿入する際、雄型継手構造部51の先端が、斜面部7の内壁に当接させることで、斜面部7が、雄型継手構造部51の軸方向への位置決め機能を発揮する。
【0186】
なお、リング部材53を雄型継手構造部51に配置し、雌型継手構造部11の第1収納空間13に、雄型継手構造部51のリング部材53の係止爪75が収容される例について説明したが、これには限定されない。
図19(a)、
図19(b)は、雌型継手構造部11aを有する継手部品1cと雄型継手構造部51aとの接続工程を示す図である。
【0187】
(雌型継手構造部に収納空間が形成され第1の収納空間にリング部材が配置される場合)
雌型継手構造部11aは、雌型継手構造部11と略同様の構造であるが、雌型継手構造部11aの第1収納空間13の円周面には、リング部材53bのリング部が配置される。リング部材53bは、円周方向の先端が開口した略C字状の部材であり、リング部材53bの係止爪75aは、リング部から爪部が先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設される。なお、リング部材53bのリング部は、第1収納空間13の円周面に接触するように、例えば、弾性接触または接着等によって第1収納空間13に固定される。また、特に図示しないが、リング部材は略C字状に限らずに、環状のリング部材であっても良い。リング部材に環状のリング部材を使用する場合には、リング部の形状は一定になるため、接着により固定する。
【0188】
また、雄型継手構造部51aは、雄型継手構造部51と略同様であるが、リング部材及びリング部材配置部が形成されない。雄型継手構造部51aの端部には、係止爪係止部58が形成される。係止爪係止部58の管軸方向の奥側は、係止爪係止部58よりも縮径された段差形状となる。また、係止爪係止部58から先端に行くにつれて外径が徐々に小さくなるテーパ形状となる。ゴムパッキン57は、係止爪係止部58よりも管軸方向の奥側(開口端とは反対側)に配置される。
【0189】
図19(b)に示すように、雄型継手構造部51aが雌型継手構造部11aと接続される際には、雌型継手構造部11aに配置されたリング部材53bの係止爪75aが、雄型継手構造部51aの係止爪係止部58に固定される。この際、雄型継手構造部51aの後方に形成された止水部材配置部65に配置されたゴムパッキン57が雌型継手構造部11aの第2収納空間17に収納される。ここで、第2収納空間17は、拡径部9に形成されたものでも、図示のように第2拡径部9aに形成されたものでもよい。以上のように、リング部材53bを雌型継手構造部11aに配置してもよい。
【0190】
(雌型継手構造部に収納空間が形成され第1の収納空間にリング部材の分割体が配置される場合)
図20(a)、
図20(b)は、雌型継手構造部11bを有する継手部品1dと雄型継手構造部51aとの接続工程を示す図である。図示したように、雌型継手構造部に形成された第1収納空間13にC型や環状のリング部材53bを配置するのに変えて、リング部材53bの分割体54が配置されても良い。分割体54は、周方向に相互に所定距離離間させて第1収納空間13の内周面に略等間隔で配置することが望ましい。すなわち、雌型継手構造部11bの第1収納空間13の円周面に、リング部材53bを円周方向の所定位置で所定長さに切断した複数の短尺の円弧状のリング部材の分割体54が、円周方向に所定間隔をあけて、所定個数、円周面に貼り付けられる。
【0191】
なお、分割体54の形状は、外周側は、第1収納空間13の円筒状の溝の円筒状部と略同様な形状を有していて、第1収納空間13に収納可能な形状に形成されていればよい。分割体54の係止爪75aは、拡径部(係止爪75aと逆側端部)から係止爪75aの先端に向かってな斜め内方に縮径するように管軸方向の奥方に向かって延設されるように形成されていることが望ましく、分割体54の拡径部と係止爪75aが一体に形成されたものでも良い。分割体54は別の表現をすれば、環状のリング部材53bを円周方向の所定長さに切断した形状を有している。
【0192】
このように、リング部材53bに変えてリング部材の分割体54を用い、第1収納空間13に分割体54が接着固定された雌型継手構造部11bに対しても、雄型継手構造部51aを接続することができる。
図20(b)に示すように、雄型継手構造部51aが雌型継手構造部11bと接続される際には、雌型継手構造部11bに配置されたリング部材の複数の分割体54の係止爪75aが、雄型継手構造部51aの係止爪係止部58に固定される。また、雄型継手構造部51aの後方に形成された止水部材配置部65に配置されたゴムパッキン57が雌型継手構造部11bの第2収納空間17に収納される。ここで、第2収納空間17は、拡径部9に形成されたものでも、図示のように第2拡径部9aに形成されたものでもよい。以上のように、本実施形態でも、前述したC型や環状のリング部材53bを配置した雌型継手構造部11aと同様の効果を得ることができる。
【0193】
(拡径部に切削により雌型継手構造部として収納空間が形成されずに直接リング部材が配置される場合)
図21(a)、
図21(b)は、雌型継手構造部11cを有する継手部品1eと雄型継手構造部51aとの接続工程を示す図である。雌型継手構造部11cは、
図19とは切削により第1及び第2の収納空間が作成されない点が異なる。例えば、
図3(b)に示すように、素管19を所定温度で加熱して、熱成形によってベルマウス部3、斜面部7及び拡径部9(第2拡径部9a)を拡径して成形して、継手部材の素管を成形し、素管の内周面を切削せずに、雌型継手構造部11cが作成される。
【0194】
このようにして成形した雌型継手構造部11cの拡径部9の内周面に、直接前述したリング部材53bと同様のC型または環状のリング部材を接着する。このように、第1収納空間13(溝)を設けずに、リング部材53bを拡径部9の内面に直接接着固定された雌型継手構造部11cに対しても、雄型継手構造部51aを接続することができる。
【0195】
この際には、雌型継手構造部11cに配置されたリング部材53bの係止爪75aが、雄型継手構造部51aの係止爪係止部58に固定される。また、雄型継手構造部51aの後方に形成された止水部材配置部65に配置されたゴムパッキン57が雌型継手構造部11bの第2収納空間17の第2拡径部9a(または拡径部9)の内面と接触する。以上のように、本実施形態でも、前述したC型や環状のリング部材53bを配置した雌型継手構造部11aと同様の効果を得ることができる。
【0196】
すなわち、雌型継手構造部11cの2段の円筒形断面を有する筒状部材の拡径部9の断面略円筒形の空間の内周面の内方の所定位置に、雄型継手構造部51aを係止する係止爪を有する係止部材(リング部材53b)が直接接着固定されることで、雌型継手構造部11cの内部に雄型継手構造部51aを係止することができる。さらに係止部材を接着固定した位置から開口部に向かって所定距離離間した雄型継手構造部51aの所定位置に止水部材が配置され、雌型継手構造部11cと雄型継手構造部51aを止水することができる。
【0197】
また、この場合には、雌型継手構造部11cの内面に切削加工によって断面略円筒状の溝を形成してもよい。この場合、係止部材のリング部が雌型継手構造部11cの円筒面に固定される。係止部材の係止爪はリング部から爪部の先端に向かって管軸方向の奥側に対して斜め内方に縮径するように延設される。雄型継手構造部51aが雌型継手構造部11cと接続される際には、係止爪が雄型継手構造部51aの係止爪係止部58に固定される。また、雄型継手構造部51aの後方に形成された止水部材配置部65に配置されたゴムパッキン57が雌型継手構造部11bの断面略円筒状の溝に収納される。
【0198】
このように、拡径部9と第2拡径部9aは連続して形成されていてもよく、仕切り部15により仕切られていて、仕切り部15を挟んで第1収納空間13と第2収納空間17が形成されていてもよい。
【0199】
ここで、
図19~
図21に記載の継手部品と可撓電線管の接続構造における可撓電線管の本体部は、図示した例に限らず、らせん状の波形、あるいは独立波構造の波形のいずれの形状の可撓電線管であってもよいし、あるいは本体部が、断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成された角形電線管であっても良く、また、外管の内部に、直管状の内管69が一体化した二重壁角形電線管を用いてもよい。この場合には、可撓電線管は、本体部が、断面略矩形状の大径部と断面円形の小径部が交互に形成された外管と、外管の小径部の内側に融着される内管とからなる。
【0200】
以上のように、本実施形態において説明した継手部品に硬質樹脂材料製の本体部、斜面部、拡径部を有する2段の円筒状断面を有する筒状部材を用いた雌継手構造を発明の構造の特徴と効果について整理すると、以下の通りである。
(1)壁面に内装される継手部品は、外観が直径の異なる円断面で形成された筒状部材であり、雄型継手構造部と接続可能な雌型継手構造部を有し、雄型継手構造部に対する直線挿入型ワンタッチ接続継手である。
(2)継手部品は硬質塩化ビニルなどの硬質樹脂材料製のため、コンクリート打設時のコンクリートの重量や反応熱による継手部品の変形を防止し、雌型継手構造部の寸法精度の維持と雄型継手構造部を挿入する場合の挿入性及び継手強度を確保できる。
(3)斜面部が雄型継手構造部のベルマウス側への抜け止め効果と係止部材の位置決め効果の両方の効果を有し、これにより安定した接続構造を得ることが可能になる。打設したコンクリート構造からのベルマウス側への抜け止め効果を有する。
(4)継手部品の外形寸法は、最大でも、接続対象の可撓電線管の大径部を超えないか、略同一に設定されるために、可撓電線管をコンパクトに整列させて配置させることができる。
(5)継手部品の外形が凹凸の少ない略円断面形状の連続する筒状部材なので、空気溜まりなどが形成されずにコンクリートの打設性が良い。
(6)継手部品が壁面内に内装されて、壁面から突出した部分が存在しないため、沈下型マンホールと通常のマンホールのいずれにも設置可能である。なお、継手部品の外周面の所定位置に砂を付ける場合には、壁面から突出して使用する構造とすることもできる。
【0201】
さらに、拡径部に切削により溝加工を行なうことにより、仕切り部で区画された所定の空間に、抜け止め用の係止部材や止水用パッキンを収納することが可能な継手部品を得ることができ、より詳細には、下記の効果を有する。
(7)この継手部品の雌型継手構造部には、抜け止め部品を収納する第1収納空間と止水用パッキンを収納する第2収納空間とこれを区画する仕切り部を有する。そのため、従来の継手部品が有するような両空間を仕切るための継手部材の軸方向に垂直な縦壁を必要としない。
(8)第1収納空間に収納される係止部材としては、雌型継手構造部に内装されてもよい。この場合、係止部材である弾性リングを縮径して第1収納空間に収納して、係止部材であるリング部材を弾性接触させるか接着するなどして第1収納空間に固定してもよい。または、雄型継手構造部に被冠される部品として、弾性リングを拡径して第1収納空間に収納して係止部材の係止爪を収納してもよい。
(9)仕切り部の突出量は、2-3mmであればよく、抜け止め部品の係止機能の他、内周方向へのリブ効果で管の剛性を高める効果の両者がある。
(10)第1の収納空間と第の収納空間を切削により形成する代わりに、シート状部材を貼り付ける仕切り部を形成することで、切削により収納空間を形成することお同様の効果を得ることができる。
(11)以上により、継手部品の小型化、施工時間の短縮、継手部品を接続するマンホールやハンドホールの小型化が可能である。
【0202】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0203】
1、1a、1b、1c、1d、1e, 1 f………継手部品
5………本体部
6………面取り部
7………斜面部
9………拡径部
9a、9b………第2拡径部
11、11a、11b、11c………雌型継手構造部
10………雄継手構造
13………第1収納空間
15………仕切り部
17………第2収納空間
19………素管
21a、21b………平坦面
23a、23b………型枠
25………中芯
27………ボルト
29………鉄筋
30………構造体
31………コンクリート
33………弾性体
35………止水部材
37………キャップ
39………地面
40………マンホール
41………底部
50、50a、50b………可撓電線管
51、51a………雄型継手構造部
53、53a、53b………リング部材
54………分割体
57………ゴムパッキン
58………係止爪係止部
59………大径部
61………小径部
63………リング部材配置部
65………止水部材配置部
67………外管
69………内管
70、70a………接続構造
71………開口部
73………縮径部
75、75a………係止爪
77………スライドガイド
79………接続部
80………継手部材
81………Π型固定部材
82………継手本体
83………両足部
85………天面部
87………段部
89………係合部
91………筒状部
93………天面
95………切欠き部
96………開口部
97………切断部
98………係合段部
99………止水部材
100………管路ネットワーク
101………管継手
102………砂