(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176201
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20221117BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20221117BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20221117BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20221117BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H01B7/18 G
H01B7/02 G
H01B7/00 301
B60R16/02 623T
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138977
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2019562149の分割
【原出願日】2018-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2017254624
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017254625
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 好一
(72)【発明者】
【氏名】押野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】池田 英行
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
(72)【発明者】
【氏名】前野 耕一
(57)【要約】
【課題】分岐部及び/または曲げ部においても機械的強度に優れ、電線に対して優れた保護機能を有し、外装体付きワイヤーハーネスを車体パネル等へ取り付ける際の作業性に優れた電線用外装体を提供する。
【解決手段】樹脂シートが折り曲げられて形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、前記電線の延び方向に沿って延在し、前記電線を収容する収容部を形成する複数の壁部を備え、前記複数の壁部が、前記電線の延び方向に分岐部及び/または曲げ部を有し、前記複数の壁部のうち、前記収容部を介して相互に対向する2つの壁部が、前記分岐部及び/または曲げ部を電線の延び方向に沿って跨ぐ状態に設けられている電線用外装体。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートが折り曲げられて形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、
前記電線の延び方向に沿って延在し、前記電線を収容する収容部を形成する複数の壁部を備え、
前記複数の壁部が、前記電線の延び方向に分岐部及び/または曲げ部を有し、前記複数の壁部のうち、前記収容部を介して相互に対向する2つの壁部が、前記分岐部及び/または曲げ部を電線の延び方向に沿って跨ぐ状態に設けられている電線用外装体。
【請求項2】
前記相互に対向する2つの壁部の短手方向に向かって、前記分岐部の分岐及び/または曲げ部の曲げが形成されている請求項1に記載の電線用外装体。
【請求項3】
前記相互に対向する2つの壁部を構成する一方の壁部が、前記分岐部及び/または曲げ部よりも延出方向にて、前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと接合されている請求項1または2に記載の電線用外装体。
【請求項4】
前記相互に対向する2つの壁部を構成する一方の壁部のうち、少なくとも一部の領域が、前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと重なり合う壁面重ね合わせ部を備え、該壁面重ね合わせ部にて、前記一方の壁部が前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと接合されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線用外装体。
【請求項5】
前記一方の壁部が、前記壁面重ね合わせ部にて分割されて境界部が形成されており、該境界部にて前記一方の壁部が前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと接合されている請求項4に記載の電線用外装体。
【請求項6】
前記樹脂シートが、熱可塑性樹脂発泡シートである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電線用外装体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂発泡シートの折曲部以外の密度が、200Kg/m3以上700Kg/m3以下である請求項6に記載の電線用外装体。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂発泡シートの折曲部以外の厚さが、0.50mm以上4.0mm以下である請求項6または7に記載の電線用外装体。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂発泡シートの折曲部の密度が、400Kg/m3以上1200Kg/m3以下である請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電線用外装体。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂発泡シートが、裁断面にR0.1mm以上1.0mm以下の曲部を有する請求項6乃至9のいずれか1項に記載の電線用外装体。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂発泡シートの両面に非発泡層を有する請求項6乃至10のいずれか1項に記載の電線用外装体。
【請求項12】
前記非発泡層の厚さが、10μm以上100μm以下である請求項11に記載の電線用外装体。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂発泡シートのショア硬さ(HSC)が、60以上100以下である請求項6乃至12のいずれか1項に記載の電線用外装体。
【請求項14】
外装体付きワイヤーハーネスであって、
ワイヤーハーネスと、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電線用外装体と、を備え、
前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されている外装体付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス等の電線の外周に装着される電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスに関する。また、本発明は、電線の外周に装着される電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスに関し、特に、前記電線の延び方向に分岐部及び/または曲げ部を有する電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に配索される電線の外周に装着される電線用外装体として、電線束の周囲を2重に囲う態様で板材を折り曲げて、電線束を収容する長方形筒状の収容空間を形成することにより、電線束を外力から保護するプロテクタが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このプロテクタには、車体に取り付けるための係止部品が挿入される貫通孔が形成されている。そして、貫通孔に挿入された係止部品の一対の固定片で板材が重なる部分を挟み込むことにより、板材の重なり状態を保持するとともに車体の取付孔に係止部品を挿入可能にしている。
【0004】
従来から、ワイヤーハーネスを車体等に取り付け、固定するために、ワイヤーハーネス用の外装体が用いられている。また、ワイヤーハーネスが外装体の収容部に収容されることで、外装体はワイヤーハーネスの経路を規制する機能とワイヤーハーネスを保護する機能を発揮する。外装体には、ワイヤーハーネスの経路を規制するにあたり、電線の延び方向に分岐部及び/または曲げ部が設けられることがある。
【0005】
また、軽量化等の観点から、樹脂シートが折り曲げられて形成された外装体も検討されている。樹脂シートが折り曲げられて形成された外装体では、分岐部及び/または曲げ部は機械的強度、特に、ワイヤーハーネスの延び方向に対して直交方向からの応力に対する機械的強度に改善の余地がある。分岐部及び/または曲げ部の機械的強度が十分ではない場合、分岐部及び/または曲げ部においてワイヤーハーネスに対する保護機能が低下し、外装体付きワイヤーハーネスを車体パネル等へ取り付ける際の作業性が低下してしまう可能性がある。
【0006】
一方、曲げ部が設けられた外装体として、その周方向に沿って、角度をなすようにして連結されている複数の側板部と、複数の側板部において、複数の山折りの頂部と複数の谷折りの底部とが、外装体の軸心方向に沿って交互に形成されている蛇腹部を形成することによって、曲げ可能とされている曲げ許容部と、を備えたものが提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、特許文献2でも、蛇腹部は、依然として機械的強度に改善の余地があった。さらに、蛇腹構造を作製するには、その分、さらなる加工コストがかかるだけではなく、材料も余計に必要となってしまうという問題がある。また、特許文献2では、そもそも、曲げ許容部の固定がなされていないため、曲げて配索されるワイヤーハーネスを車両へ取り付ける際の作業性を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-055510号公報
【特許文献2】特開2015-126668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来のプロテクタでは、車両の走行時等の振動により、係止部品と板材が接合した部分に応力が発生し、プロテクタを破損するおそれがあった。このため、車体に取り付けるための取付部材による破損を防止する電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスの構造が求められてきた。
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付部材による破損を防止する電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを提供することにある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、分岐部及び/または曲げ部においても機械的強度に優れ、電線に対して優れた保護機能を有し、外装体付きワイヤーハーネスを車体パネル等へ取り付ける際の作業性に優れた電線用外装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記目的を達成するために、本発明の電線用外装体は、樹脂シートが折り曲げられて形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、前記電線の延び方向に沿って延在し、前記電線を収容する収容部を形成する複数の壁部と、を備え、前記複数の壁部のうち、少なくとも1の壁部には、前記樹脂シートの厚み方向に貫通して車体に取付可能な取付部材が挿入される貫通孔が形成されており、当該厚み方向に面する上面及び下面のうち少なくとも一面における当該貫通孔の周囲の一部には、当該樹脂シートの厚さが減少した溝が形成されている。
【0013】
[2]本発明の電線用外装体は、前記溝は、前記貫通孔を挟んで互いに対向する位置に形成されている。
【0014】
[3]本発明の電線用外装体は、前記溝は、前記貫通孔を囲む環状の溝である。
【0015】
[4]本発明の電線用外装体は、前記溝の幅が、0.7mm以上0.9mm以下である。
【0016】
[5]本発明の電線用外装体は、前記溝の深さが、前記樹脂シートの厚さの60%以上80%以下である。
【0017】
[6]本発明の電線用外装体は、前記溝における前記樹脂シートの密度が、前記厚み方向に面する上面及び下面において当該溝以外の前記樹脂シートよりも高く、かつ400Kg/m3以上1200Kg/m3以下である。
【0018】
[7]上記目的を達成するために、本発明の外装体付きワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネスと、前記電線用外装体と、を備え、前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されていることを特徴とする。
【0019】
[8]本発明の態様は、樹脂シートが折り曲げられて形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、前記電線の延び方向に沿って延在し、前記電線を収容する収容部を形成する複数の壁部を備え、前記複数の壁部が、前記電線の延び方向に分岐部及び/または曲げ部を有し、前記複数の壁部のうち、前記収容部を介して相互に対向する2つの壁部が、前記分岐部及び/または曲げ部を電線の延び方向に沿って跨ぐ状態に設けられている電線用外装体である。
【0020】
[9]前記相互に対向する2つの壁部の短手方向に向かって、前記分岐部の分岐及び/または曲げ部の曲げが形成されている[8]に記載の電線用外装体。
【0021】
[10]本発明の態様は、前記相互に対向する2つの壁部を構成する一方の壁部が、前記分岐部及び/または曲げ部よりも延出方向にて、前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと接合されている[8]または[9]に記載の電線用外装体である。
【0022】
[11]本発明の態様は、前記相互に対向する2つの壁部を構成する一方の壁部のうち、少なくとも一部の領域が、前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと重なり合う壁面重ね合わせ部を備え、該壁面重ね合わせ部にて、前記一方の壁部が前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと接合されている[8]乃至[10]のいずれか1つに記載の電線用外装体である。
【0023】
[12]本発明の態様は、前記一方の壁部が、前記壁面重ね合わせ部にて分割されて境界部が形成されており、該境界部にて前記一方の壁部が前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと接合されている[11]に記載の電線用外装体である。
【0024】
[13]本発明の態様は、前記樹脂シートが、熱可塑性樹脂発泡シートである[8]乃至[12]のいずれか1つに記載の電線用外装体である。
【0025】
[14]本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの折曲部以外の密度が、200Kg/m3以上700Kg/m3以下である[13]に記載の電線用外装体である。
【0026】
[15]本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの折曲部以外の厚さが、0.50mm以上4.0mm以下である[13]または[14]に記載の電線用外装体である。
【0027】
[16]本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの折曲部の密度が、400Kg/m3以上1200Kg/m3以下である[13]乃至[15]のいずれか1つに記載の電線用外装体である。
【0028】
[17]本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートが、裁断面にR0.1mm以上1.0mm以下の曲部を有する[13]乃至[16]のいずれか1つに記載の電線用外装体である。
【0029】
[18]本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの両面に非発泡層を有する[13]乃至[17]のいずれか1つに記載の電線用外装体である。
【0030】
[19]本発明の態様は、前記非発泡層の厚さが、10μm以上100μm以下である[18]に記載の電線用外装体である。
【0031】
[20]本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートのショア硬さ(HSC)が、60以上100以下である[13]乃至[19]のいずれか1つに記載の電線用外装体である。
【0032】
[21]本発明の態様は、外装体付きワイヤーハーネスであって、ワイヤーハーネスと、[8]乃至[20]のいずれか1つに記載の電線用外装体と、を備え、前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されている外装体付きワイヤーハーネスである。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスによれば、取付部材による破損を防止することができる。
【0034】
本発明の電線用外装体の態様によれば、前記複数の壁部のうち、収容部を介して相互に対向する2つの壁部が、分岐部及び/または曲げ部を電線の延び方向に沿って跨ぐ状態に設けられていることにより、分岐部及び/または曲げ部においても機械的強度に優れ、電線に対して優れた保護機能を有し、また、外装体付きワイヤーハーネスを車体パネル等へ取り付ける際の作業性に優れた電線用外装体を得ることができる。
【0035】
さらに、分岐部及び/または曲げ部においても機械的強度に優れているので、自動車等、振動が発生しやすい車両に外装体付きワイヤーハーネスを取り付けても、外装体付きワイヤーハーネスから振動音が発生するのを防止できる。また、電線用外装体が、分岐部及び/または曲げ部を跨ぐ状態に設けられた相互に対向する2つの壁部を有することにより、分岐部及び/または曲げ部の耐久性が向上する。
【0036】
本発明の電線用外装体の態様によれば、相互に対向する2つの壁部のうち、一方の壁部が、前記分岐部及び/または曲げ部よりも延出方向にて、前記複数の壁部のうちの少なくとも1つと固定されていることにより、分岐部及び/または曲げ部における機械的強度がさらに向上する。
【0037】
本発明の電線用外装体の態様によれば、前記一方の壁部が壁面重ね合わせ部にて分割されて境界部が形成されており、該境界部にて前記一方の壁部が複数の壁部のうちの少なくとも1つと固定されていることにより、固定作業が効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る外装体を展開した状態で示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る外装体に係合されて外装体を車体へ取り付けるための取付部材の一例を示すための図であり、
図3(a)は、取付部材の斜視図であり、
図3(b)は、取付部材の平面図である。
【
図4】
図1に示すA-A線に沿う断面における外装体の断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る外装体を展開した状態で示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る外装体を車体へ取り付けるための取付部材の一例を示すための図であり、
図7(a)は、取付部材の斜視図であり、
図7(b)は、取付部材の平面図である。
【
図8】
図5に示すB-B線に沿う断面における外装体の断面図である。
【
図9】本発明の実施形態例に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図10】
図9に示す電線用外装体を展開した状態で示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態例に係る電線用外装体の組み立て方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0040】
はじめに、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネスの構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1を示す斜視図である。
【0041】
なお、説明の便宜上、外装体3の長手方向(長さ方向)を「X」とし、外装体3の短手方向(幅方向)を「Y」とする。
【0042】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス1は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス2と、当該ワイヤーハーネス2の外周に装着される電線用外装体(以下、「外装体」ともいう。)3と、を備える。ワイヤーハーネス2は、外装体3によって外部環境から保護されている。なお、
図1においては、ワイヤーハーネス2を1本の円柱形状で示しているが、ワイヤーハーネス2は、1本以上の電線を備えたものである。本発明の第1の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス1には、短手方向Yの中央付近に、車両(図示省略)に取り付けるための取付部材61が複数(本発明の第1の実施の形態では2個。)係合されている。
【0043】
次に、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3の構成について説明する。
図2は、外装体3を展開した状態で示す斜視図である。
【0044】
図1に示すように、外装体3は、ワイヤーハーネス(電線)2の延び方向(長手方向X)に沿って延在する複数の壁部4を備えており、この複数の壁部4に囲まれて形成され、ワイヤーハーネス2を収容する収容部5を有している。外装体3は、短手方向Yの断面形状が四角形状または略四角形状となっている。
【0045】
図1及び
図2に示すように、複数の壁部4は、1枚の熱可塑性樹脂発泡シートを折り曲げることにより一体的に形成されている。熱可塑性樹脂発泡シート樹脂種については、熱可塑性樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂発泡シートの厚さは、折り曲げ容易性と引張強さ等の機械的強度とのバランスをより向上させる点から、0.50mm以上4.0mm以下が好ましく、0.8mm以上2.5mm以下が特に好ましい。
【0046】
図2に示すように、複数の壁部4は、熱可塑性樹脂発泡シートを折曲部20a~20dで折り曲げることにより形成されている。折曲部20a~20dは、平坦な熱可塑性樹脂発泡シートを押し成形による押し成形部、ハーフカット部、破線状のカット部等を形成することにより、折り曲げ形成し易い形状となっている。
【0047】
複数の壁部4は、底壁部41と、底壁部41の端縁から折曲部20aを介して連設された側壁部42と、底壁部41の端縁から折曲部20bを介して連設された側壁部43と、側壁部42の端縁から折曲部20cを介して連設された下蓋壁部(内側壁部)44と、側壁部43の端縁から折曲部20dを介して連設された上蓋壁部(外側壁部)45とを有している。
【0048】
図1に示すように、底壁部41は、側壁部42と側壁部43との間に配置され、底壁部41の端縁から折曲部20aを介して側壁部42が立設され、底壁部41の端縁から折曲部20bを介して側壁部43が立設されている。
【0049】
下蓋壁部44と上蓋壁部45とは、互いに重なり合い、当該重なり合った部分が壁面重ね合わせ部となっている。具体的には、壁面重ね合わせ部は、下蓋壁部44の上から上蓋壁部45を覆い重ね合わせた部分であり、下蓋壁部44の上面44cと上蓋壁部45の下面45dとが接合されている(後述する
図4参照)。なお、下蓋壁部44の上面44cと上蓋壁部45の下面45dとの接合手段としては、例えば、接着剤や粘着テープ等の接着手段、超音波溶着、熱溶着等の溶着手段、係止部材、リベット等を用いた嵌合手段、ホッチキス等を用いた貫通固定手段等を挙げることができる。壁面重ね合わせ部には、外装体3を車体に取り付けるための取付部材61が係合されている。
【0050】
下蓋壁部44は、側壁部42の端縁から折曲部20cを介して底壁部41と平行または略平行に配置されており、重ね合わせ部において内側(収容部5側)に配置されている。下蓋壁部44の端縁44aは、対向する折曲部20dから離れた位置に配置されている。具体的には、下蓋壁部44の端縁44aは、短手方向Yの中央付近に係合された取付部材61と接触しない位置、すなわち、短手方向Yの中央より折曲部20c側に配置されている。
【0051】
上蓋壁部45は、側壁部43の端縁から折曲部20dを介して底壁部41と平行または略平行に配置され、重ね合わせ部において外側に配置されている。上蓋壁部45は、下蓋壁部44の上側に配置された状態で端縁45aが側壁部42と略面一に配置されている。後述するように、上蓋壁部45には、熱可塑性樹脂発泡シートの厚み方向に貫通して取付部材61が挿入される貫通孔47と、熱可塑性樹脂発泡シートの厚み方向に面する上面45c及び下面45dに形成された下面溝48及び上面溝49とが形成されている(
図2参照)。後述するように、本発明の第1の実施の形態では、下面溝48及び上面溝49は、貫通孔47を囲む環状の溝である場合について説明する。
【0052】
収容部5は、底壁部41、側壁部42,43、下蓋壁部44及び上蓋壁部45で囲まれた部分である。収容部5は、底壁部41、側壁部42,43、下蓋壁部44及び上蓋壁部45により長手方向Xにおける一側と他側が貫通した筒状に形成されており、ワイヤーハーネス2を収容することができる。
【0053】
次に、
図3を参照して、外装体3に係合される取付部材の一例について説明する。
図3は、外装体3を車体へ取り付けるための取付部材の一例を示すための図であり、
図3(a)は、取付部材61の斜視図であり、
図3(b)は、取付部材を長手方向X側から見た側面図である。なお、
図3に示す取付部材61は、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3に係合される取付部材の一例であり、外装体3に係合される取付部材は同様の他の取付部材であってもよい。
【0054】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、取付部材61は、外装体3に取り付けられる外装体側係合部62と、車体に取り付けられる車体側係合部63とを有している。
【0055】
外装体側係合部62は、上蓋壁部45の下面45dに配置される底部64と、上蓋壁部45の貫通孔47の内部に配置され、短手方向Y(
図1参照)における底部64の幅より幅狭に形成されて底部64から上方へ立設する立設部65と、後述する挿入部70が挿入可能に立設部65の上方から下方へ凹む挿入穴66が形成されている。
【0056】
車体側係合部63は、底部64と同一または略同一の幅に形成されて上蓋壁部45の上面45cに配置される基部67と、短手方向Y(
図1参照)における底部64、立設部65及び基部67の幅より幅狭に形成されて、基部67から上方に延びる柱部68と、柱部68の上部先端から両側方に突出するように形成された羽部69と、基部67から下方に延出する挿入部70とを有している。羽部69は、車体の取付孔(図示省略)に挿入可能に、かつ挿入後に係止可能に弾性変形可能に形成されている。挿入部70は、挿入穴66に挿入されると先端部が内側に弾性変形し、挿入穴66の係止部66aを乗り越えると弾性復帰して係止部66aの周縁に当接して係止する。挿入部70が係止部66aに係止すると、立設部65の上端が基部67の下面に当接し、外装体側係合部62と車体側係合部63とが係止される。
【0057】
次に、
図2及び
図4を参照して、上蓋壁部45に形成された貫通孔47、下面溝48及び上面溝49の形状について説明する。
図4は、
図1に示すA-A線に沿う断面における外装体3の断面図である。
【0058】
図2及び
図4に示すように、貫通孔47は、上蓋壁部45において、上面45cから収容部5側である下面45dへ貫通した孔である。貫通孔47は、取付部材61の立設部65が挿入可能で、かつ内部に位置することが可能に、短手方向Y(
図1参照)における幅が立設部65の短手方向Yにおける幅より僅かに大きく形成されている。
図4に示すように、貫通孔47の深さD1は、立設部65が上蓋壁部45の下面45dから突出することを防止する点から、立設部65の高さH1(
図3(b)参照)と同一または略同一であることが好ましい(D1=H1)。すなわち、複数の壁部4を構成する熱可塑性樹脂発泡シートは、貫通孔47に挿入される立設部65の高さH1と同一の厚さまたは略同一の厚さであり、この熱可塑性樹脂発泡シートを用いて貫通孔47を形成することが好ましい。
【0059】
図2及び
図4に示すように、下面溝48と上面溝49とは、上面溝49は、熱可塑性樹脂発泡シートの厚さ方向において互いに異なる位置に配置されている。下面溝48と上面溝49とは、熱可塑性樹脂発泡シートを押し成形により溝形状にして熱可塑性樹脂発泡シートの厚さが減少した押し成形部である。
【0060】
下面溝48及び上面溝49について具体的に説明する。本発明者は、溝が形成されていない熱可塑性樹脂発泡シート(比較例)と、溝が形成された熱可塑性樹脂発泡シート(実施例1、実施例2、実施例3、実施例4)とをそれぞれ複数個製造し、これらの熱可塑性樹脂発泡シートに対して衝撃を与える破壊試験を行い、破壊の有無を視認で行って破壊状態を評価した。
【0061】
溝が形成された熱可塑性樹脂発泡シートのうち、実施例1及び実施例2は、溝を形成する刃の厚さを0.7mmとすることにより幅0.7mmの溝を形成し、実施例3及び実施例4は、溝を形成する刃の厚さを0.9mmとすることにより幅0.9mmの溝を形成した。また、実施例1及び実施例3の溝の深さは、熱可塑性樹脂発泡シートの厚さの60%の深さとし、実施例2及び実施例4の溝の深さは、熱可塑性樹脂発泡シートの厚さの75%の深さとした。そして、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4に対して、溝が形成された溝形成面及び溝が形成されていない裏面にそれぞれ衝撃を与える破壊試験を行った。破壊の有無の視認結果について表1に示す。
【0062】
【0063】
表1に示すように、比較例の熱可塑性樹脂発泡シートにおいては、複数個製造した全ての熱可塑性樹脂発泡シートに破壊が認められた。一方、実施例1の熱可塑性樹脂発泡シートにおいては、複数個製造したうちの一部の熱可塑性樹脂発泡シートに破壊が認められたが、実施例2の熱可塑性樹脂発泡シートにおいては、複数個製造したうちの殆どの熱可塑性樹脂発泡シートに破壊が認められなかった。また、実施例3の熱可塑性樹脂発泡シートにおいては、溝が形成された面に衝撃を与えた場合は、複数個製造したうちの殆どの熱可塑性樹脂発泡シートに破壊が認められなかったが、裏面に衝撃を与えた場合は、複数個製造したうちの一部の熱可塑性樹脂発泡シートに破壊が認められた。実施例4の熱可塑性樹脂発泡シートにおいては、溝が形成された面に衝撃を与えた場合は、複数個製造したうちの全ての熱可塑性樹脂発泡シートに破壊が認められなかったが、裏面に衝撃を与えた場合は、複数個製造したうちの殆どの熱可塑性樹脂発泡シートに破壊が認められなかった。
【0064】
以上のことから、実施例1~実施例4の熱可塑性樹脂発泡シートは、比較例の熱可塑性樹脂発泡シートと比較して、破壊した熱可塑性樹脂発泡シートが少ないことが認められた。すなわち、溝が形成された実施例1~実施例4の熱可塑性樹脂発泡シートは、衝撃が加えられた場合に変位することで応力を緩和するため、外装体3として優れていると評価できる。このため、本発明の第1の実施の形態においては、外装体3に下面溝48及び上面溝49を形成した。また、下面溝48及び上面溝49の溝は、熱可塑性樹脂発泡シートの破壊を防止する点から、溝の幅が0.7mm以上0.9mm以下、溝の深さが熱可塑性樹脂発泡シートの厚さの60%以上80%以下であることが好ましい。
【0065】
下面溝48及び上面溝49は、折曲部20a~20dを除く複数の壁部4よりも熱可塑性樹脂発泡シートの密度が高い、高密度部となっている。下面溝48及び上面溝49における熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、折曲部20a~20dの密度と同じまたは略同一であってもよい。また、下面溝48及び上面溝49は、折曲部20a~20dを除く複数の壁部4よりも高い値であれば、特に限定されないが、熱可塑性樹脂発泡シートの破損を防止する点から、400Kg/m3以上1200Kg/m3以下が好ましく、500Kg/m3以上1200Kg/m3以下が特に好ましい。
【0066】
下面溝48は、上蓋壁部45の下面45dから上面45cへ凹んだ形状を有し、貫通孔47を囲む楕円形状かつ環状の溝である。
図4に示すように、下面溝48は、下蓋壁部44と上蓋壁部45とが互いに重なり合った壁面重ね合わせ部以外の上蓋壁部45に形成されている。具体的には、上蓋壁部45の下面45dに配置された取付部材61の底部64の周囲に配置され、かつ上面溝49の内側に配置されている。
【0067】
上面溝49は、上蓋壁部45の上面45cから下面45dへ凹んだ形状を有し、下面溝48の外側に配置された楕円形状かつ環状の溝である。
図4に示すように、上面溝49は、下蓋壁部44と上蓋壁部45とが互いに重なり合った壁面重ね合わせ部以外の下蓋壁部44に形成されている。具体的には、上蓋壁部45の上面45cに配置された取付部材61の基部67の周囲に配置され、かつ下面溝48の外側に配置されている。すなわち、外装体3の短手方向Yの断面視では、上面溝49は下面溝48より側壁部42,43側に配置されている。
【0068】
なお、本発明の第1の実施の形態では、下面溝48及び上面溝49は、貫通孔47を囲む環状の溝である場合について説明したが、他の形状であってもよい。例えば、下面溝48及び上面溝49は、貫通孔47を挟んで互いに対向する位置に線状の溝であってもよい。また線状の溝は、長手方向Xに延びていてもよく、短手方向Yに延びていてもよい。さらに線状の溝は、直線状でも曲線状でもよい。
【0069】
次に、上述した外装体3の形成方法、及び外装体3へワイヤーハーネス2を装着して外装体付きワイヤーハーネス1を形成する方法についてそれぞれ説明する。
【0070】
外装体3の形成方法では、先ず、外装体3を形成するための母材となる熱可塑性樹脂発泡シートから、外装体3に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工としては、例えば、低コスト化と加工簡易性の点から、トムソン刃金型での打ち抜き等が挙げられる。
【0071】
外装体3に相当する部分を打ち抜いた後、上蓋壁部45の取付部材61が取り付けられる位置に貫通孔47に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。
【0072】
また、打ち抜かれた外装体3に相当する部分のうち、折曲部20a~20dに対応する部分に押し成形を施す。押し成形を施すことにより、折曲部20a~20dを形成し、折曲部20a~20dに良好な折り曲げ性を付与する。
【0073】
さらに、打ち抜かれた外装体3に相当する部分のうち、上面溝49及び下面溝48に対応する部分に押し成形を施す。押し成形を施すことにより、上面溝49及び下面溝48を形成する。
【0074】
上記のように形成された外装体3をワイヤーハーネス2へ装着する方法では、先ず、底壁部41に対して側壁部42,43が略垂直となるように、折曲部20a,20bで折り曲げる。折曲部20a,20bで折り曲げると、側壁部42,43の端部側の間が長手方向Xに沿って上方に開口した形状となる。
【0075】
折曲部20a,20bを折り曲げた後、底壁部41にワイヤーハーネス2を載置し、底壁部41に対して下蓋壁部44が略平行となるように、折曲部20cで折り曲げる。次に、底壁部41に対して上蓋壁部45が略平行となるように、折曲部20dで折り曲げる。折曲部20dで上蓋壁部45を折り曲げると、下蓋壁部44と上蓋壁部45とが重なって壁面重ね合わせ部となる。折曲部20dで上蓋壁部45を折り曲げると、側壁部42と側壁部43間の開口が塞がれて収容部5が形成されるとともに、収容部5内にワイヤーハーネス2が挿通された状態で収容される。また、壁面重ね合わせ部において、下蓋壁部44と上蓋壁部45とを接合することにより、側壁部42と側壁部43間の開口が塞がれた状態が固定され、外装体3がワイヤーハーネス2の外周に装着される。
【0076】
外装体3をワイヤーハーネス2の外周に装着した後、上蓋壁部45の下面45d側から上方に向かって上蓋壁部45の貫通孔47に取付部材61の立設部65を挿入し、上蓋壁部45の上面45c側から下方に向かって貫通孔47に取付部材61の挿入部70を挿入する。そして、取付部材61の挿入部70を取付部材61の挿入穴66に挿入して係止すると、立設部65の上端が基部67の下面に当接し、底部64と基部67との間で上蓋壁部45を挟み込む。また、立設部65が貫通孔47に挿入されることにより、外装体3に取付部材61が係合し、外装体3が車体に取り付け可能になる。
【0077】
なお、外装体3は、ワイヤーハーネス2を構成する複数の電線を分散しないように固定するための固定用テープの外周に装着されていてもよく、固定用テープを使用していない複数の電線の外周に装着されていてもよい。また、外装体3は、1本の電線の外周に装着されていてもよい。
【0078】
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1によれば、上蓋壁部45には、取付部材61が挿入される貫通孔47が形成されており、貫通孔47の周囲には、熱可塑性樹脂発泡シートの厚さが減少した上面溝49及び下面溝48が形成されている。この上面溝49及び下面溝48が形成されていることにより、上蓋壁部45に取付部材61が係合した貫通孔47の周囲に応力が発生した場合に貫通孔47の周囲の上蓋壁部45が変位して応力を緩和するため、振動の発生する車両等に取り付けられても外装体3の破損を防止することができる。下面溝48あるいは上面溝49のどちらか一方でも応力緩和は可能だが、2つの溝を形成することにより、一つの溝しか形成しない場合に比べ、より応力を緩和することができる。また、樹脂発泡シートの面方向において下面溝48と上面溝49の位置をずらすことにより、樹脂発泡シートの厚さが極端に減少することを避けられる。
【0079】
また、上面溝49及び下面溝48は、折曲部20a~20dを除く複数の壁部4よりも熱可塑性樹脂発泡シートの密度が高い。このため、溝を形成することによる上蓋壁部45の強度の低下を防止することができ、振動の発生する車両等に取り付けられても優れた耐久性が得られる。
【0080】
次に、
図5乃至
図8を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。まず、
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネスの構成について説明する。
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス101を示す斜視図である。
【0081】
なお、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス101は、上述の本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1の上蓋壁部45の貫通孔47、下面溝48及び上面溝49に改良を加えたものであり、その他の部分の構成は同様である。そこで、以下では、上述の本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1と同一のまたは類似する構成等については上述の外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0082】
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス101は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス2と、当該ワイヤーハーネス2の外周に装着される電線用外装体(以下、「外装体」ともいう。)103と、を備える。本発明の第2の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス101には、短手方向Yの中央付近に、車両(図示省略)に取り付けるための取付部材61が複数(本発明の第2の実施の形態では2個。)係合されている。
【0083】
次に、
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103の構成について説明する。
図6は、外装体103を展開した状態で示す斜視図である。
【0084】
図6に示すように、外装体103は、ワイヤーハーネス2の延び方向(長手方向X)に沿って延在する複数の壁部4を備えており、底壁部41と、側壁部42,43と、下蓋壁部(内側壁部)44及び上蓋壁部(外側壁部)45とを有している。
【0085】
上蓋壁部45には、取付部材61が係止される貫通孔147と、熱可塑性樹脂発泡シートの厚み方向に面する上面45c及び下面45dに形成された下面溝148及び上面溝149とが形成されている。後述するように、本発明の第2の実施の形態では、下面溝148及び上面溝149は、貫通孔47を囲む環状の溝である場合について説明する。
【0086】
次に、
図7を参照して、外装体103に係合される取付部材の一例について説明する。
図7は、外装体103を車体へ取り付けるための取付部材の一例を示すための図であり、
図7(a)は、取付部材161の斜視図であり、
図7(b)は、取付部材161を長手方向X側から見た側面図である。なお、
図7に示す取付部材161は、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103に係止される取付部材の一例であり、外装体103に係止される取付部材は同様の他の取付部材であってもよい。
【0087】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、取付部材161は、外装体3に取り付けられる外装体側係止部162と、車体に取り付けられる車体側係合部163とを有している。
【0088】
外装体側係止部162は、上蓋壁部45の下面45dに配置される内側固定部164と、短手方向Y(
図5参照)における内側固定部164の幅より幅広に形成されて、上蓋壁部45の上面45cに配置される外側固定部165と、短手方向Y(
図5参照)における内側固定部164及び外側固定部165の幅より幅狭に形成されて、内側固定部164と外側固定部165の略中央部分を連結する連結部166とを有している。
【0089】
車体側係合部163は、外側固定部165から上方に延びる柱部168と、柱部168の上部先端から両側方に突出するように形成された羽部169とを有している。羽部169は、車体の取付孔(図示省略)に挿入可能に、かつ挿入後に係止可能に弾性変形可能に形成されている。
【0090】
次に、
図6及び
図8を参照して、上蓋壁部45に形成された貫通孔147、下面溝148及び上面溝149の形状について説明する。
図8は、
図5に示すB-B線に沿う断面における外装体103の断面図である。
【0091】
図6及び
図8に示すように、貫通孔147は、上蓋壁部145において、上面45cから収容部5側である下面45dへ貫通した孔であり、上面視するとT字形状を有している。貫通孔147は、取付部材161の連結部166が挿入される幅狭部147aと、幅狭
部147aより幅広な幅広部147cとを有している。
【0092】
図8に示すように、幅狭部147aは、取付部材161の連結部166が挿入可能で、かつ内部に位置することが可能に、短手方向Y(
図5参照)における幅が連結部166の短手方向Yにおける幅より僅かに大きく形成されている。幅狭部147aの深さD2は、連結部166が上蓋壁部45の下面44dから突出することを防止する点から、連結部166の高さH2(
図7(b)、
図8参照)と同一または略同一であることが好ましい(D2=H2)。
【0093】
幅広部147cは、取付部材161の内側固定部164及び連結部166を挿入可能で、かつ挿入された連結部166を幅狭部147aへ移動することが可能に形成されている。すなわち、幅広部147cは、短手方向Y(
図5参照)における幅が内側固定部164及び連結部166の短手方向Yにおける幅より大きく形成されている。
【0094】
図6及び
図8に示すように、下面溝148と上面溝149とは、上面溝149は、熱可塑性樹脂発泡シートの厚さ方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0095】
下面溝148は、上蓋壁部45の下面45dから上面45cへ凹んだ形状を有し、貫通孔47を囲む四角形状かつ環状の溝である。
図8に示すように、下面溝48は、下蓋壁部44と上蓋壁部45とが互いに重なり合った壁面重ね合わせ部以外の上蓋壁部45に形成されている。具体的には、上蓋壁部45の下面45dに配置された取付部材61の底部64の周囲に配置され、かつ上面溝149の内側に配置されている。
【0096】
上面溝149は、上蓋壁部45の上面45cから下面45dへ凹んだ形状を有し、上面溝149の外側に配置された四角形状かつ環状の溝である。
図8に示すように、上面溝149は、下蓋壁部44と上蓋壁部45とが互いに重なり合った壁面重ね合わせ部以外の下蓋壁部44に形成されている、具体的には、上蓋壁部45の上面45cに配置された取付部材61の基部67の周囲に配置され、かつ下面溝148の外側に配置されている。すなわち、外装体3の短手方向Yの断面視では、下面溝148より側壁部42,43側に配置されている。
【0097】
なお、本発明の第2の実施の形態では、下面溝148及び上面溝419は、貫通孔147を囲む環状の溝である場合について説明したが、他の形状であってもよい。例えば、下面溝148及び上面溝149は、貫通孔147を挟んで互いに対向する位置に線状の溝であってもよい。また線状の溝は、長手方向Xに延びていてもよく、短手方向Yに延びていてもよい。さらに線状の溝は、直線状でも曲線状でもよい。また、下面溝148及び上面溝419は、T字形状を有する貫通孔147の形状に沿ってT字形状の溝であってもよい。
【0098】
次に、外装体103へワイヤーハーネス2を装着して外装体付きワイヤーハーネス1を形成する方法について説明する。
【0099】
上記のように形成された外装体103をワイヤーハーネス2へ装着する方法では、先ず、底壁部41に対して側壁部42,43が略垂直となるように、折曲部20a,20bで折り曲げ、底壁部41にワイヤーハーネス2を載置し、底壁部41に対して下蓋壁部44が略平行となるように、折曲部20cで折り曲げる。
【0100】
次に、底壁部41に対して上蓋壁部45が略平行となるように、折曲部20dで折り曲げ、下蓋壁部44と上蓋壁部45とが重なった壁面重ね合わせ部において、下蓋壁部44と上蓋壁部45とを接合することにより、外装体103がワイヤーハーネス2の外周に装着される。
【0101】
外装体103をワイヤーハーネス2の外周に装着した後、取付部材161の内側固定部164を貫通孔147の幅広部147cに挿入する。そして、内側固定部164と外側固定部165との間に上蓋壁部45が位置する状態で、幅広部147cから幅狭部147aへ取付部材161の連結部166をスライドする。連結部166を幅狭部147aへスライドすると、内側固定部164と外側固定部165との間で上蓋壁部45を挟み込む。また、連結部166が貫通孔147の幅狭部147aに挿入されることにより、外装体103に取付部材161が係止し、外装体103が車体に取り付け可能になる。
【0102】
本発明の第2の実施の形態に係る外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス1は、上述の本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1と同様の効果を奏することができる。
【0103】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に係る外装体3,103及び外装体付きワイヤーハーネス1に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0104】
上述した本発明の実施の形態における下面溝48,148は、貫通孔47,147を囲む環状の溝である場合について説明したが、貫通孔47,147の周囲の一部に形成されていてもよい。また、上述した本発明の実施の形態における上面溝49,149は、下面溝48,148を囲む環状の溝である場合について説明したが、下面溝48,148の周囲の一部に形成されていてもよい。
【0105】
また、上面溝49,149は、下面溝48,148の外側に配置されている場合について説明したが、下面溝48,148が上面溝49,149の外側に配置されていてもよい。
【0106】
上述した本発明の実施の形態における上蓋壁部45には、下面溝48,148及び上面溝49,149が形成されている場合について説明したが、下面溝48,148及び上面溝49,149のうちいずれか一方のみが形成されていてもよい。
【0107】
次に、
図9、10を用いて、本発明の実施形態例に係る外装体付きワイヤーハーネスについて説明する。本発明の実施形態例に係る外装体付きワイヤーハーネス300は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス310と、ワイヤーハーネス310の外周に装着される外装体(電線用外装体)201と、を有する。電線用外装体201は、ワイヤーハーネス310の延び方向(
図9の長手方向x)に沿って延在する複数の壁部210を備えており、複数の壁部210に囲まれて形成され、ワイヤーハーネス310を収容する収容部213を有している。外装体付きワイヤーハーネス300では、ワイヤーハーネス310が延び方向(
図9の長手方向x)に沿って曲げられて配索されていることに対応して、電線用外装体201に、ワイヤーハーネス310の延び方向に沿って曲げ部230が形成されている。なお、
図9においては、ワイヤーハーネス310を1本の円柱形状で示しているが、ワイヤーハーネス310は、複数の電線を束ねたものである。また、本明細書中において、長手方向xは、ワイヤーハーネス310の延びに沿った方向、すなわち、電線用外装体2011の延びに沿った方向であり、曲げ部230が形成されている電線用外装体201では、曲げ部230の曲げに沿った方向である。
【0108】
次に、本発明の実施形態例に係る電線用外装体201について説明する。
図9に示すように、電線用外装体201は、ワイヤーハーネス310の延び方向(
図9の長手方向x)に沿って延在する複数の壁部210を備えている。複数の壁部210には、長手方向xに曲げ部230を有している。複数の壁部210に囲まれて形成された空間が、ワイヤーハーネス310が収容される収容部213となっている。ワイヤーハーネス310は、電線用外装体201によって外部環境から保護されている。
【0109】
電線用外装体201の複数の壁部210は、1枚の樹脂シート(例えば、熱可塑性樹脂発泡シート)を折り曲げることにより一体的に形成されている。樹脂シートは、折曲部220a~220dを折り曲げることにより、複数の壁部210が形成されている。複数の壁部210は、底壁部221と、底壁部221の端縁から折曲部220aを介して連設された側壁部222と、底壁部221の端縁から折曲部220bを介して連設された側壁部223と、側壁部222の先端から折曲部220cを介して連設された内側蓋壁部224と、側壁部223の先端から折曲部220dを介して連設された外側蓋壁部225とを有している。外側蓋壁部225は、内側蓋壁部224上に重ね合わされるように設けられている。底壁部221は、電線用外装体201の長手方向xにおける一方の端部232から他方の端部233まで一体の状態で延びている。すなわち、底壁部221は、曲げ部230を電線用外装体201の長手方向xに沿って跨ぐ状態に設けられている。
【0110】
図9に示すように、ワイヤーハーネス210が延び方向に曲げられて配索されていることに対応して、収容部213は所定の曲げ角度からなる曲げ部230を有している。収容部213は、底壁部221、側壁部222、223、内側蓋壁部224及び外側蓋壁部225で囲まれた部分である。また、収容部213は、底壁部221、側壁部222、223、内側蓋壁部224及び外側蓋壁部225により長手方向xにおける一側と一側に対向した他側が貫通した筒状に形成されている。収容部213の短手方向yの断面形状は、略四角形となっている。また、収容部213の短手方向yの断面積は、長手方向xのいずれにおいても略同一となっている。電線用外装体201では、長手方向xにおいて、曲げ部230を介して2つの直線部を有している。
【0111】
底壁部221と対向した外側蓋壁部225は、電線用外装体201の長手方向xにおける一方の端部232と曲げ部230との間にて分割されて境界部231が形成されている。すなわち、外側蓋壁部225は、境界部231を境に、第1の部位225-1と第2の部位225-2に分離されている。また、境界部231を境に、第1の部位225-1と第2の部位225-2は隣接している。第1の部位225-1は、曲げ部230を電線用外装体201の長手方向xに沿って跨ぐ状態に設けられている壁部材である。第1の部位225-1は、電線用外装体201の長手方向xにおける一方の端部232と曲げ部230との間に、長手方向xの一方の先端部が位置している。従って、第1の部位225-1の先端部は境界部231に位置している。第1の部位225-1は、電線用外装体201の長手方向xにおける一方の端部232と対向した他方の端部233から境界部231まで延在している。
【0112】
これに対し、外側蓋壁部225の第2の部位225-2は、一方の端部232から境界部231まで延在している。
【0113】
電線用外装体201では、外側蓋壁部225の直線部における長手方向xに対して直交方向且つ外側蓋壁部225の幅方向(すなわち、
図9の短手方向y)に向かって、曲げ部230の曲げが所定角度で形成されている。上記から、外側蓋壁部225と対向配置されている底壁部221も、短手方向yに向かって、曲げ部230の曲げが所定角度で形成されている。すなわち、電線用外装体201の直線部に対する曲げ部230の曲げ方向は、複数の壁部210の短手方向yに向かっている。
【0114】
図9、10に示すように、内側蓋壁部224は、電線用外装体201に曲げ部230を形成するために、曲げ部230を境に、第1の部位224-1と第2の部位224-2に分割されている。曲げ部230を境に、第1の部位224-1と第2の部位224-2は隣接している。第1の部位224-1と第2の部位224-2は、いずれも、曲げ部230に長手方向xの一方の先端部が位置している。第1の部位224-1は他方の端部233から曲げ部230まで延在し、第2の部位224-2は、一方の端部232から曲げ部230まで延在している。また、内側蓋壁部224は、側壁部222から側壁部223または側壁部223近傍まで、底壁部221に対して略平行に延びている。
【0115】
図9に示すように、外側蓋壁部225の第1の部位225-1のうち、曲げ部230から先端部(境界部231)までの領域は、内側蓋壁部224の第2の部位224-2の一部領域と平面視重なり合って、壁面重ね合わせ部235が形成されている。また、電線用外装体201では、壁面重ね合わせ部235にて、外側蓋壁部225の第1の部位225-1が内側蓋壁部224の第2の部位224-2と接合されている。
【0116】
電線用外装体201では、境界部231にて、外側蓋壁部225の第1の部位225-1が内側蓋壁部224の第2の部位224-2と接合されている。外側蓋壁部225の第1の部位225-1が内側蓋壁部224の第2の部位224-2と境界部231にて接合されることにより、外側蓋壁部225の第1の部位225-1と第2の部位225-2及び内側蓋壁部224の第2の部位224-2を一工程で接合することができるので、接合作業が効率化される。
【0117】
外側蓋壁部225の第1の部位225-1と内側蓋壁部224の第2の部位224-2との接合手段は、特に限定されず、例えば、超音波溶着、熱溶着等の溶着手段、接着剤や粘着テープ等の接着手段、係止部材、リベット等を用いた嵌合手段、ホッチキス等を用いた貫通固定手段等を挙げることができる。電線用外装体201では、接合手段として超音波溶着を用いて接合部240を形成することにより、外側蓋壁部225の第1の部位225-1が内側蓋壁部224の第2の部位224-2に接合、固定されている。
【0118】
外側蓋壁部225の第1の部位225-1が内側蓋壁部224の第2の部位224-2に固定されていることにより、壁面重ね合わせ部235を介して、外側蓋壁部225の第1の部位225-1が内側蓋壁部224の第2の部位224-2と一体化されている。壁面重ね合わせ部235の平面視における面積は、特に限定されず、外側蓋壁部225の第1の部位225-1と内側蓋壁部224の第2の部位224-2とを固定できる範囲で、適宜選択可能である。
【0119】
電線用外装体201では、他方の端部233から延在した、外側蓋壁部225の第1の部位225-1が、一方の端部232から延在した、内側蓋壁部224の第2の部位224-2と一体化されているので、曲げ部230においても優れた機械的強度を付与できる。従って、電線用外装体201では、ワイヤーハーネス310に対して優れた保護機能を有している。また、外装体付きワイヤーハーネス300を車体パネル等へ取り付ける際の作業性に優れた電線用外装体201が得られる。また、曲げ部230においても機械的強度に優れているので、自動車等、振動が発生しやすい車両に外装体付きワイヤーハーネス300を取り付けても、外装体付きワイヤーハーネス300から振動音が発生するのを防止できる。また、曲げ部230の機械的強度が向上するので、曲げ部230の耐久性が向上する。
【0120】
電線用外装体201に用いられる樹脂シートは折り曲げが可能であれば、特に限定されず、樹脂種としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれも使用することができる。このうち、軽量性、形状設計の自由度、コスト等の点で、熱可塑性樹脂発泡シートが好ましい。熱可塑性樹脂発泡シートの具体的な樹脂種については、特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0121】
電線用外装体201に用いられる熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、特に限定されず、例えば、軽量性と機械的強度とのバランスを向上させる点から200Kg/m3以上700Kg/m3以下が好ましく、300Kg/m3以上600Kg/m3以下がより好ましく、350Kg/m3以上550Kg/m3以下が特に好ましい。なお、熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、JIS K 7222に基づいて測定する。
【0122】
熱可塑性樹脂発泡シートの厚さは、特に限定されず、例えば、折り曲げ容易性と機械的強度の点から、0.50mm以上4.0mm以下が好ましく、0.8mm以上3.0mm以下が特に好ましい。
【0123】
折曲部220a~220dは、必要に応じて、平坦な熱可塑性樹脂発泡シートを押し成形等により折り曲げ形成しやすい形状とした押し成形部としてもよい。折曲部220a~220dが押し成形部となっていることにより、折り曲げ加工を円滑化でき、折り曲げ位置の精度を向上させることができる。
【0124】
熱可塑性樹脂発泡シートのうち、折曲部220a~220dは、押し成形部とした場合に、折曲部220a~220d以外の部位である複数の壁部210よりも、熱可塑性樹脂発泡シートの密度が高い状態となっている。折曲部220a~220dにおける熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、特に限定されず、電線用外装体201の形状を安定的に維持しつつ折曲部220a~220dの折り曲げ性を得る点から、400Kg/m3以上1200Kg/m3以下が好ましく、500Kg/m3以上1200Kg/m3以下が特に好ましい。なお、熱可塑性樹脂発泡シートの折曲部220a~220dの密度は、折り曲げた熱可塑性樹脂発泡シートを平坦に戻し、折曲部220a~220dの部分から両側1mmの幅を切り出して、JIS K 7222に基づいて測定する。
【0125】
なお、折曲部220a~220dは、押し成形部に代えて、ハーフカット部、破線状のカット部等を形成することにより、折り曲げ形成し易い形状としてもよい。
【0126】
また、熱可塑性樹脂発泡シートには、両面または片面に、非発泡層が形成されていてもよい。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートは、発泡層と該発泡層上に形成された非発泡層とを有する構成としてもよい。熱可塑性樹脂発泡シートの表面に非発泡層が形成されていることにより、電線用外装体201の機械的強度が向上して、収容されるワイヤーハーネス310の保護性能がより向上する。電線用外装体201の機械的強度を確実に向上させる点から、両面に非発泡層が形成されることが好ましい。非発泡層の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上100μm以下が挙げられる。
【0127】
熱可塑性樹脂発泡シートのショア硬さ(HSC)は、特に限定されないが、機械的強度の点から、例えば、60以上100以下が好ましい。
【0128】
次に、上記した電線用外装体201の形成方法、及び電線用外装体201へワイヤーハーネス310を装着して外装体付きワイヤーハーネス300を形成する方法について、それぞれ説明する。電線用外装体201の形成方法では、先ず、電線用外装体201を形成するための母材となる熱可塑性樹脂発泡シートから、電線用外装体201に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工を行うことで、
図10に示す形状を有する熱可塑性樹脂発泡シートを得ることができる。打ち抜き加工としては、例えば、低コスト化と加工簡易性の点から、トムソン刃金型での打ち抜き等が挙げられる。なお、トムソン刃金型での打ち抜きをする際、刃の形状を適宜設定することで熱可塑性樹脂発泡シートの裁断面にR0.1mm以上1.0mm以下の曲部を形成することができる。上記曲部を形成すると、熱可塑性樹脂発泡シートの端部にワイヤーハーネス310が接触することで、ワイヤーハーネス310が傷つけられるのを防止できる。
【0129】
上記のように形成された電線用外装体201をワイヤーハーネス310へ装着する方法では、先ず、
図11(a)に示す母材から切り出した樹脂シートを、底壁部221に対して側壁部222、223が略垂直となるように、折曲部220a、220bで折り曲げる。折曲部220a、220bで折り曲げると、側壁部222、223の先端部側の間が長手方向xに沿って上方に開口した形状となる。
【0130】
折曲部220a、220bを折り曲げた後、底壁部221にワイヤーハーネス(
図11では、図示せず)を載置後、
図11(b)に示すように、底壁部221に対して、内側蓋壁部224の第1の部位224-1と第2の部位224-2が略平行となるように、内側蓋壁部224の第1の部位224-1と第2の部位224-2を折曲部220cで折り曲げる。次に、底壁部221に対して外側蓋壁部225の第1の部位225-1が略平行となるように、外側蓋壁部225の第1の部位225-1を折曲部220dで折り曲げる。外側蓋壁部225の第1の部位225-1を折曲部220dで折り曲げると、外側蓋壁部225の第1の部位225-1のうち、曲げ部230から境界部231までの領域は、内側蓋壁部224の第2の部位224-2の一部領域と重なり合って、壁面重ね合わせ部235が形成される。
【0131】
次に、
図11(c)に示すように、底壁部221に対して外側蓋壁部225の第2の部位225-2が略平行となるように、外側蓋壁部225の第2の部位225-2を折曲部220dで折り曲げる。外側蓋壁部225の第2の部位225-2を折曲部220dで折り曲げると、電線用外装体201の長手方向xにおける一方の端部232と曲げ部230との間にて分割されて境界部231が形成されている外側蓋壁部225が形成される。すなわち、折曲部220dで外側蓋壁部225を折り曲げると、側壁部222、223の先端部の間の開口が塞がれて収容部が形成されるとともに、収容部内にワイヤーハーネスが挿通された状態で収容される。
【0132】
次に、境界部231に超音波溶着等を実施することで、外側蓋壁部225の第1の部位225-1と第2の部位225-2及び内側蓋壁部224の第2の部位224-2を接合して接合部240を形成し、さらに、境界部231以外の適宜の位置で、外側蓋壁部225と内側蓋壁部224を接合して接合部240を形成することで、側壁部222、223の先端部の間の開口が塞がれた状態が固定され、電線用外装体201がワイヤーハーネスの外周に装着される。
【0133】
次に、本発明の他の実施形態例について説明する。上記実施形態例では、複数の壁部が、ワイヤーハーネスの延び方向に曲げ部を有していたが、これに代えて、ワイヤーハーネスの延び方向に分岐部を有していてもよく、曲げ部と分岐部の両方を有していてもよい。すなわち、分岐部に外側蓋壁部の第1の部位が位置することにより、分岐部における機械的強度が向上する。また、収容部は、ワイヤーハーネスの形状に沿うように、拡径、縮径されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明では、分岐部及び/または曲げ部においても機械的強度に優れ、電線に対して優れた保護機能を有するので、例えば、多種の形状が要求される自動車に配索されるワイヤーハーネスの外装体の分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0135】
1,101 外装体付きワイヤーハーネス
2 ワイヤーハーネス
3,103,201 外装体
4,210 壁部
5,213 収容部
20a,20b,20c,20d 折曲部
41 底壁部
42,43 側壁部
44 下蓋壁部
44a 端縁
45 上蓋壁部
45a 端縁
47,147 貫通孔
48,148 下面溝
49,149 上面溝
61,161 取付部材
62 外装体側係合部
63,163 車体側係合部
64 底部
65 立設部
66 挿入穴
67 基部
68,168 柱部
69,169 羽部
70 挿入部
147a 幅狭部
147c 幅広部
162 外装体側係止部
164 内側固定部
165 外側固定部
166 連結部
224 内側蓋壁部
224-1 第1の部位
224-2 第2の部位
225 外側蓋壁部
225-1 第1の部位
225-2 第2の部位
230 曲げ部
235 壁面重ね合わせ部
X 長手方向
Y 短手方向