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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176501
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】産業用カメラ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H04N5/232 300
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082970
(22)【出願日】2021-05-17
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】390005164
【氏名又は名称】株式会社フォトロン
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 健司
(72)【発明者】
【氏名】石井 抱
(72)【発明者】
【氏名】島崎 航平
(72)【発明者】
【氏名】瀧水 隆
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122EA68
5C122FH04
5C122FH07
5C122FH20
5C122GC52
5C122HB02
(57)【要約】
【課題】汎用インタフェースを使いつつも、1000fps、若しくはそれ以上の高時間分解能で、かつ、リアルタイムで画像を転送し、処理できる産業用カメラを提供する。
【解決手段】実施形態に係る産業用カメラは、外部の情報処理装置に接続可能に構成された産業用カメラであって、少なくとも1000fpsのフレームレートで高速撮影が可能なイメージセンサと、前記イメージセンサで撮影した時間的に連続したフレーム画像を一時的に記録するバッファメモリと、前記バッファメモリに時間的に連続して記録されるフレーム画像の中から、各フレーム画像の時間的な連続性を維持しつつ、一部分のフレーム画像を間欠的に抽出する画像抽出部と、抽出された前記一部分のフレーム画像を、汎用の通信規格に基づくインタフェースを用いて、前記情報処理装置に伝送する画像伝送部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の情報処理装置に接続可能に構成された産業用カメラであって、
少なくとも1000fps(frame per second)のフレームレートで高速撮影が可能なイメージセンサと、
前記イメージセンサで撮影した時間的に連続したフレーム画像を一時的に記録するバッファメモリと、
前記バッファメモリに時間的に連続して記録されるフレーム画像の中から、各フレーム画像の時間的な連続性を維持しつつ、一部分のフレーム画像を間欠的に抽出する画像抽出部と、
抽出された前記一部分のフレーム画像を、汎用の通信規格に基づくインタフェースを用いて、前記情報処理装置に伝送する画像伝送部と、
を備える産業用カメラ。
【請求項2】
前記画像抽出部は、前記フレーム画像を前記バッファメモリに記録する書込み速度よりも遅い読出し速度で、前記一部分のフレーム画像を抽出し、
前記画像伝送部は、前記イメージセンサの前記フレームレートよりも低い転送用フレートで、前記抽出された前記一部分のフレーム画像を、前記情報処理装置に伝送する、
請求項1に記載の産業用カメラ。
【請求項3】
前記バッファメモリは、所定の最大記録可能フレーム数で循環的に前記フレーム画像を記録するリングメモリであり、
前記画像抽出部は、前記最大記録可能フレーム数よりも少ないフレーム数であって、前記情報処理装置から指示されたフレーム数のフレーム画像を、前記情報処理装置から送られてくるコマンド毎に抽出し、
前記画像伝送部は、前記指示されたフレーム数のフレーム画像を、前記コマンド毎に、前記情報処理装置に間欠的に伝送する、
請求項1又は2に記載の産業用カメラ。
【請求項4】
前記画像抽出部は、前記バッファメモリに記録された各フレーム画像の全領域の中から一部の領域を抽出し、
前記画像伝送部は、一部の領域が抽出された前記フレーム画像を、前記情報処理装置に伝送する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の産業用カメラ。
【請求項5】
前記画像抽出部は、前記バッファメモリに記録された各フレーム画像に対して、前記情報処理装置から指示された領域の抽出処理、指示されたサイズへの変更処理、指示された角度による回転処理の少なくとも1つを行うアフィン変換を、前記バッファメモリに記録された各フレーム画像に対して行うことで、前記一部の領域を抽出する、
請求項4に記載の産業用カメラ。
【請求項6】
抽出された複数の前記フレーム画像を連結させて1つの連結画像を生成する連結画像生成部、をさらに備え、
前記画像伝送部は、前記連結画像を前記情報処理装置に伝送する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の産業用カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、例えば、工場やプラントなどの製造現場や生産設備における検査や品質管理において、高速撮影機能を有する産業用カメラを用いたシステムが広く用いられている。このようなシステムでは、例えば、1台以上の産業用カメラが、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピューター(PC)等のコンピュータにネットワークを介して接続されて構成されている。
【0003】
この種の高速産業用カメラは、例えば、1フレーム当たり1024×1024画素の解像度の画像を、1000fps(frame per second)の高速度で出力することができる。この場合、通信速度、或いは、通信系の帯域は、約1Gバイト/秒となる。1フレーム当たりの解像度は増加傾向にあり、FHD(Full High Definition)と呼ばれる規格では、1フレーム当たり1920×1080画素の解像度であり、今後は更なる高解像度化が予想されている。FHDの場合、通信速度は、約2Gバイト/秒となる。
【0004】
一方、一般的に普及している高速の通信インタフェースの規格の一例として「Gbit Ethernet(ギガビットイーサネット)」が挙げられる。しかしながら、「Gbit Ethernet)」の実効帯域は最大で0.1Gバイト/秒(即ち、100Mバイト/秒、800Mbit/秒)程度であり、実際の利用場面では、0.05Gバイト/秒程度になることも多い。また、ハイエンド規格として、「10Gbit Ethernet(テンギガビットイーサネット)」が普及しつつあるが、「10Gbit Ethernet」によっても、1Gバイト/秒の達成は非常に困難である。
【0005】
高速産業用カメラでは、その時間分解能は非常に重要であり、高速撮影した連続フレームを欠落なく転送することが求められる。そのため、高速産業用カメラを用いた既存のシステムの中には、十分な転送帯域を確保するために、専用のインタフェースや専用の転送規格を使用しているものも存在する。しかしながら、専用のインタフェースや専用の転送規格を使用するシステムは開発コストが高く、その一方で汎用性や応用性が低いといったデメリットも多い。
【0006】
他方、産業用カメラの後段(産業用カメラから出力される画像を受信するコンピュータ側)の画像処理においては、すべての連続画像を必要とするケースは少なく、1フレーム内の一部の領域のみ、あるいは、一連の連続画像のうちの一部分の連続画像のみで所望の画像処理が実現可能となるケースが多い
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-117339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、汎用インタフェースを使いつつも、1000fps、若しくはそれ以上の高時間分解能で、かつ、リアルタイムで画像を転送し、処理できる産業用カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る産業用カメラは、外部の情報処理装置に接続可能に構成された産業用カメラであって、少なくとも1000fps(frame per second)のフレームレートで高速撮影が可能なイメージセンサと、前記イメージセンサで撮影した時間的に連続したフレーム画像を一時的に記録するバッファメモリと、前記バッファメモリに時間的に連続して記録されるフレーム画像の中から、各フレーム画像の時間的な連続性を維持しつつ、一部分のフレーム画像を間欠的に抽出する画像抽出部と、抽出された前記一部分のフレーム画像を、汎用の通信規格に基づくインタフェースを用いて、前記情報処理装置に伝送する画像伝送部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る産業用カメラの構成例をブロック図。
図2】コマンドモードにおけるフレーム画像の転送概念を示すタイミングチャート。
図3】自走モードにおけるフレーム画像の転送概念を示すタイミングチャート。
図4】第1の実施形態において、リングバッファメモリ記録されるフレーム画像と、情報処理装置に転送されるフレーム画像を模式的に示す図。
図5】第1の実施形態の変形例において、リングバッファメモリ記録されるフレーム画像と、情報処理装置に転送されるフレーム画像を模式的に示す図。
図6】第2の実施形態において、複数のフレーム画像を連結して第1の連結画像を生成する概念を示す図。
図7】第2の実施形態において、複数のフレーム画像を連結して第2の連結画像を生成する概念を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る産業用カメラについて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る産業用カメラ1の構成例を示す図である。図1では、産業用カメラ1に接続される情報処理装置100も併せて図示している。情報処理装置100には、1台の産業用カメラ1が接続される場合もあるし、図1に例示するように、複数の産業用カメラ1が接続される場合もある。
【0013】
産業用カメラ1は、例えば、イメージセンサ10、前処理部20、メモリ書込/読出制御部30、画像伝送部40、メモリ50(例えば、リングバッファメモリ50)を備えて構成される。
【0014】
イメージセンサ10は、1000fps(frame per second)、又はそれ以上のフレームレートで高速撮影が可能なイメージセンサであり、例えば、CMOSイメージセンサである。イメージセンサ10は、本カメラの内部で生成されるクロック信号やデータによって、フレームタイムTf(フレームレートの逆数)や露光時間Tpが設定可能である。この他、外部からの(例えば、図1における情報処理装置100からの)クロック信号やデータによっても設定可能である。
【0015】
前処理部20は、イメージセンサ10から読み出す画像データに対して、画像メモリ(本実施形態では、図1のリングバッファメモリ50)に書き込む前の前処理を行う。前処理としては、例えば、ノイズを除去するためのフィルタリング処理や、線順次で実行可能な画像処理等がある。
【0016】
前処理部20は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等用いたハードウェア処理によって上記の処理を行ってもよいし、プロセッサに所定のプログラムを実行させるソフトウェア処理によって上記の処理を行うこともできる。或いは、ハードウェア処理とソフトウェア処理とを組み合わせて上記の処理を行うこともできる。
【0017】
メモリ書込/読出制御部30は、前処理部20で前処理された画像データを、フレーム毎の画像として、即ち、フレーム画像として、リアルタイムでリングバッファメモリ50に書込むためのメモリ制御を行う。ここで、リアルタイムでフレーム画像を書込むとは、イメージセンサ10のフレームレートとほぼ同じ書込み速度でフレーム画像をリングバッファメモリ50に書込むことである。例えば、イメージセンサ10が1000fpsのフレームレートで撮影する場合には、メモリ書込/読出制御部30は、毎秒約1000枚の速度で、フレーム画像をリングバッファメモリ50に連続的に書き込む(即ち、記録する)ようにリングバッファメモリ50を制御する。リングバッファメモリ50には、イメージセンサ10から順次出力されるフレーム画像が、時間的に連続した状態で記録される。
【0018】
一方、メモリ書込/読出制御部30は、リングバッファメモリ50に記録されたフレーム画像を読出す制御も行う。リングバッファメモリ50からのフレーム画像の読出し制御は、本発明の特徴的な処理であり、主に、画像抽出部32が行う処理である。画像抽出部32は、メモリ書込/読出制御部30の一機能として実現される。
【0019】
画像抽出部32は、リングバッファメモリ50に時間的に連続して記録されるフレーム画像の中から、各フレーム画像の時間的な連続性を維持しつつ、一部分のフレーム画像を間欠的に抽出する。画像抽出部32は、リングバッファメモリ50に記録されたフレーム画像を、リングバッファメモリ50に記録する書込み速度よりも遅い読出し速度で読み出すと共に、リングバッファメモリ50に記録されているフレーム画像の一部分のフレーム画像を抽出する。画像抽出部32のより具体的な処理や機能については、後述する。
【0020】
メモリ書込/読出制御部30や画像抽出部32も、FPGAやASIC等用いたハードウェア処理によって上記の処理を行うことができる。また、メモリ書込/読出制御部30や画像抽出部32を、プロセッサを有するように構成し、このプロセッサに所定のプログラムを実行させるソフトウェア処理によって上記の処理を行うこともできる。或いは、ハードウェア処理とソフトウェア処理とを組み合わせて上記の処理を行うこともできる。
【0021】
リングバッファメモリ50は、所定の最大記録可能フレーム数で循環的に前記フレーム画像を記録するように構成されたリングメモリである。リングバッファメモリ50は、図1の左下方に示すように、リードポインタ(read pointer)とライトポインタ(write pointer)を概念的に有している。リードポインタは読み出し位置を示しており、データを読み出す毎にリードポインタは進む。ライトポインタは書込み位置を示しており、データを書込む毎にライトポインタは進む。リードポインタとライトポインタはどちらも時計回り方向に回転するが、リードポインタはライトポインタを追い越すことはできず、同様に、ライトポインタはリードポインタを追い越すことができないように制御される。図1の左下方に示す図において、AからKまでの領域はデータが書き込まれている領域(これからデータを読み出す領域)であり、ブランクの領域はデータが書き込まれていない領域(既にデータが読み出された領域であり、これからデータを書込む領域)である。
【0022】
画像伝送部40は、リングバッファメモリ50から読み出されたフレーム画像を、産業用カメラ1の外部へ、具体的には、情報処理装置100へ伝送する(或いは転送する)。
【0023】
前述したように、メモリ書込/読出制御部30の画像抽出部32は、リングバッファメモリ50に記録されたフレーム画像を、リングバッファメモリ50に記録する書込み速度よりも遅い読出し速度で読み出すが、これに対応して、画像伝送部40は、イメージセンサのフレームレート(例えば、1000fps)よりも低い転送用フレート(例えば、100fps)で、画像抽出部32で抽出されたフレーム画像を、情報処理装置100に伝送する。
【0024】
画像伝送部40は、汎用の通信規格に基づくインタフェースを用いて、情報処理装置にフレーム画像を伝送する。ここで、汎用の通信規格に基づくインタフェースとは、ギガビットイーサネット(Gbit Ethernet)、10ギガビットイーサネット(10Gbit Ethernet)、USB、サンダーボルト(Thunderbolt)等である。
【0025】
産業用カメラ1に接続される情報処理装置100は、産業用カメラ1から伝送されてくるフレーム画像を用いて、各種の画像処理やデータ処理を行う情報処理装置であり、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピューターなどのコンピュータである。
【0026】
産業用カメラ1から情報処理装置100にフレーム画像を転送する伝送モードとしては、以下に示すように、「コマンドモード」と「自走モード」がある。
【0027】
「コマンドモード」では、情報処理装置100から産業用カメラ1に対して、転送トリガ(或いは転送コマンド)と制御データが指示される。産業用カメラ1では、情報処理装置100から指示された転送トリガ(或いは転送コマンド)と制御データに基づいて、リングバッファメモリ50からフレーム画像を読み出し、画像伝送部40で規定される汎用のインタフェースを用いて情報処理装置100に伝送する。
図2は、「コマンドモード」におけるフレーム画像の転送概念を示すタイミングチャートである。
【0028】
図2(a1)及び図2(a2)は、イメージセンサ10から、1000fps(1000フレーム/秒)のフレームレートで出力されるフレーム画像の出力タイミングを例示する図である。図2(a1)は、図2(a2)の時間軸を拡大して表示したものである。図2(a1)において、Highの期間が露光時間Tpに該当し、Highの期間の繰り返し間隔がフレーム時間Tf(フレームレートの逆数)に該当する。
【0029】
図2(b)は、リングバッファメモリ50にフレーム画像を書込むタイミングを示すタイミングチャートである。前述したように、リングバッファメモリ50へのフレーム画像の書込み速度は、イメージセンサ10のフレームレートとほぼ同じであり、本例では、1000フレーム/秒の書込み速度で、フレーム画像がリングバッファメモリ50に書込まれる。
【0030】
図2(c)は、情報処理装置100から送られてくる転送トリガ(又は転送コマンド)のタイミングを示している。コマンドモードでは、産業用カメラ1が情報処理装置100から転送トリガ(又は転送コマンド)を受信する都度、リングバッファメモリ50からフレーム画像を読み出して情報処理装置100に転送するようにしている。
【0031】
図2(d)は、リングバッファメモリ50からフレーム画像を読み出すタイミングを示している。コマンドモードでは、転送トリガ(又は転送コマンド)毎にリングバッファメモリ50から読み出すフレーム画像の枚数が、制御データとして情報処理装置100から指示される。この指示を受けて、画像抽出部32では、転送トリガ(又は転送コマンド)毎に、指示された枚数のフレーム画像をリングバッファメモリ50から読み出す。
【0032】
情報処理装置100から指示するフレーム画像の枚数は、リングバッファメモリ50のリング1周分に対応するフレーム画像の枚数(即ち、最大記録可能フレーム数)よりも少ない数が指定されるものとする。例えば、リングバッファメモリ50の最大記録可能フレーム数が1000であるとすると、情報処理装置100からは最大記録可能フレーム数よりも少ない枚数が指示される。この場合、リングバッファメモリ50への書込み速度(即ち、フレームレート)よりも低い読出し速度でフレーム画像を読み出すことができる。このような低い読出し速度でフレーム画像を読み出すことで、専用の超高速インタフェースを構築することなく、既存の比較的低速度の汎用のインタフェースを用いても、読み出したフレーム画像を欠落させることなく、時間的に連続させた状態で、安定に情報処理装置100に転送することができる。
【0033】
例えば、イメージセンサ10のフレームレートが1000fps、リングバッファメモリ50の最大記録可能フレーム数が1000であった場合に、情報処理装置100から指示される転送トリガ(転送コマンド)当たりの転送フレーム枚数が100であるとすると、リングバッファメモリ50の読出し速度(及び、情報処理装置100への転送速度)を、100フレーム/秒まで低減することができる。この結果、比較的低速度の汎用のインタフェースを用いても、読み出したフレーム画像を欠落させることなく安定に情報処理装置100に転送することができる。
【0034】
上述した転送方法によれば、リングバッファメモリ50に記録されるフレーム画像の一部は転送できず破棄され、イメージセンサ10の出力の全体から見ると、一部分のフレーム画像が間欠的に転送されることになるものの、リングバッファメモリ50に時間的に連続して記録されるフレーム画像を、各フレーム画像の時間的な連続性を維持しつつ、安定して情報処理装置100に転送することができる。
【0035】
一方、図3は、「自走モード」におけるフレーム画像の転送概念を示すタイミングチャートである。図3(a1)及び図3(a2)は、イメージセンサ10から、1000fps(1000フレーム/秒)のフレームレートで出力されるフレーム画像の出力タイミングを例示する図であり、図2(a1)及び図2(a2)と同じである。
【0036】
「自走モード」では、リングバッファメモリ50が空の状態から、リングバッファメモリ50への書込みと、リングバッファメモリ50からの読出しを開始する。そして、リングバッファメモリ50が一杯になった時点で書込みを停止する一方、リングバッファメモリ50が空になるまで読出しを行う。リングバッファメモリ50が空になると、次の書込みと読出しを開始する。
【0037】
図3(b)及び図3(c)は、リングバッファメモリ50への書込むタイミングと読出しタイミングを夫々示す図である。リングバッファメモリ50の読出し速度を、書込み速度よりも低く設定することにより、即ち、既存の比較的低速度の汎用のインタフェースを用いても安定に伝送できる程度に低く設定することで、イメージセンサ10から出力されるフレーム画像の一部は転送できず破棄され、一部分のフレーム画像が間欠的に転送されることになるものの、リングバッファメモリ50に時間的に連続して記録されるフレーム画像を、各フレーム画像の時間的な連続性を維持しつつ、安定して情報処理装置100に転送することができる。
【0038】
図4は、リングバッファメモリ50に記録されるフレーム画像(図4の上段)と、リングバッファから読み出されて情報処理装置100に転送されるフレーム画像(図4の下段)を模式的に示したものである。上述したように、イメージセンサ10から出力されるフレーム画像の一部は破棄されて、間欠的な伝送になるものの、1000fps以上の高速のフレームレートで撮影された各フレーム画像は、1つも欠落することなく、時間的な連続性が維持された状態で、後段の情報処理装置100へ伝送することができる。
【0039】
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態は、イメージセンサ10から出力される一連のフレーム画像の一部分を、時間的に抽出するものとしている。
これに対して、第1の実施形態の変形例では、イメージセンサ10から出力されるフレーム画像のそれぞれの一部分を、空間的に抽出するようにしている。
【0040】
図5は、第1の実施形態の変形例の動作概念を説明する図である。図5の上段は、リングバッファメモリ50に記録されるフレーム画像を例示し、図5の下段は、リングバッファから読み出されて情報処理装置100に転送されるフレーム画像を例示している。
【0041】
画像抽出部32がリングバッファメモリ50からフレーム画像を読み出すときに、リングバッファメモリ50に記録された各フレーム画像の全領域の中から一部の領域を抽出することで、サイズが縮小された、即ち、データ量が低減された縮小フレーム画像を生成する。そして、画像伝送部40は、縮小フレーム画像を情報処理装置100に転送する。
【0042】
情報処理装置100からは、縮小フレーム画像の作成のための指示情報が、制御データとして、産業用カメラ1のメモリ書込/読出制御部30に送られる。例えば、縮小フレーム画像のサイズ、位置、回転角度などの、元のフレーム画像から縮小フレーム画像を抽出するための情報が、情報処理装置100から産業用カメラ1に対して指示される。
【0043】
メモリ書込/読出制御部30の画像抽出部32は、指示された制御データに基づいて、各フレーム画像に対して、例えば、アフィン変換を施すことにより、指示された一部の領域を抽出することができる。具体的には、各フレーム画像の画素を、アフィン変換によって算出される座標に基づいて読み出すことにより、指示された一部の領域が縮小された画フレーム画像を抽出することができる
【0044】
第1の実施形態の変形例によれば、産業用カメラ1から情報処理装置100に転送されるフレーム画像のサイズが縮小されるため、比較的低速度の汎用のインタフェースを用いても、読み出したフレーム画像を欠落させることなく安定に情報処理装置100に転送することができる。
【0045】
なお、一連のフレーム画像の一部分を時間的に抽出する第1の実施形態と、各フレーム画像の一部分を空間的に抽出する第1の実施形態の変形例とを組み合わせてもよい。この場合、産業用カメラ1から情報処理装置100に転送されるフレーム画像のデータ量をさらに低減することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の産業用カメラ1は、抽出された複数のフレーム画像を連結させて1つの連結画像を生成する連結画像生成部、をさらに備える。連結画像生成部も、画像抽出部32と同様に、メモリ書込/読出制御部30の一機能として実現することができる。
【0047】
図6は、第1の実施形態の産業用カメラ1で、リングバッファメモリ50から読み出される複数のフレーム画像(即ち、時間的に抽出されたフルサイズの複数のフレーム画像)を連結して、連結画像を生成する概念を示す図である。
【0048】
汎用インタフェースを用いてフレーム画像を産業用カメラ1から情報処理装置100に転送しようとすると、フレーム画像を1枚転送する毎に、事前準備のための通信、即ち、オーバヘッドが発生する。このため、複数のフレーム画像を連続して情報処理装置100に転送すると、オーバヘッドが多数発生する。
【0049】
また、受信側の情報処理装置100のソフトウェアによっては、1枚或いは少数の画像であれば確実に受信できるものの、多数の画像が連続的に送られてきた場合、これらを確実に受信できない場合がある。
【0050】
第2の実施形態によれば、多数のフレーム画像が1枚の連結画像として転送されるため、画像転送に関するオーバヘッドを大幅に削減することができる。このため、無駄のない、安定した画像転送が可能となる。また、受信側の情報処理装置100のソフトウェアに依存されることなく、確実に画像を転送することができる。
【0051】
図7は、第1の実施形態の変形例の産業用カメラ1で、リングバッファメモリ50から読み出される複数の縮小フレーム画像(即ち、フルサイズのフレーム画像から一部分の領域が空間的に抽出された縮小サイズの複数のフレーム画像)を連結して、連結画像を生成する概念を示す図である。この実施例では、図6に比べて、1枚の連結画像のサイズを低減することができる。
【0052】
上述した各実施形態の産業用カメラによれば、汎用インタフェースを使いつつも、1000fps、若しくはそれ以上の高時間分解能で、かつ、リアルタイムで画像を転送することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 産業用カメラ
10 イメージセンサ
30 メモリ書込/読出制御部
32 画像抽出部
40 画像伝送部
50 リングバッファメモリ
100 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7