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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176680
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20221122BHJP
   A01C 21/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A01C15/00 G
A01C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083226
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔一
(72)【発明者】
【氏名】林 和信
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BA08
2B052BC05
2B052BC09
2B052BC16
2B052DB01
2B052DC02
2B052DC09
2B052DC18
2B052DC19
2B052DD00
2B052DD03
2B052EA03
2B052EB02
2B052EB08
2B052EB12
(57)【要約】
【課題】圃場の区域毎に精度よく肥料を施肥できる農作業機を提供することにある。
【解決手段】田植機1は、走行部2と、施肥機3と、測位ユニット4と、制御部82とを備える。施肥機3は、走行部2に支持され、圃場に肥料を供給する。測位ユニット4は、田植機1の位置を示す位置情報を取得する。制御部82は、圃場の複数の区域を示す施肥マップMpと、田植機1の位置を示す位置情報とに基づいて、走行部2及び施肥機3を制御する。複数の区域ANのうちの隣接する区域ANの施肥量MNに基づいて、制御部82は、走行部2の走行速度を制御する速度制御を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機であって、
走行部と、
前記走行部に支持され、圃場に肥料を供給する供給部と、
前記農作業機の位置を示す位置情報を取得する取得部と、
前記圃場の複数の区域を示す施肥マップと、前記位置情報とに基づいて、前記走行部及び前記供給部を制御する制御部と
を備え、
前記複数の区域のうちの隣接する区域の施肥量に基づいて、前記制御部は、前記走行部の走行速度を制御する速度制御を実行する、農作業機。
【請求項2】
前記複数の区域のうち、前記農作業機が位置する第1区域に割り当てられた第1施肥量と、前記第1区域に隣接する第2区域に割り当てられた第2施肥量との差が所定値以上である場合、前記制御部は、前記走行部の前記速度制御を実行する、請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記制御部は、前記速度制御において、前記農作業機が前記第1区域から前記第2区域に進入する前に、前記走行部の走行速度を小さくする、請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記供給部は、
肥料を前記圃場に繰り出す繰出部と、
前記繰出部を駆動させるモータと
を含み、
前記制御部は、前記走行部の前記速度制御を実行する場合、前記モータの回転数を制御する回転数制御を前記速度制御に応じて実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の農作業機。
【請求項5】
前記制御部は、前記回転数制御において、前記速度制御によって前記走行部の走行速度が設定低速度に到達した時点で、単位時間あたりの前記モータの回転数の変化量が、前記農作業機が位置する第1区域に隣接する第2区域に進入した後の単位時間あたりの前記モータの回転数の変化量よりも大きくなるように、前記モータの回転数を制御する、請求項4に記載の農作業機。
【請求項6】
前記農作業機が位置する第1区域に割り当てられた第1施肥量よりも、前記第1区域に隣接する第2区域に割り当てられた第2施肥量の方が大きい場合、前記速度制御によって前記走行部の走行速度が設定低速度に到達した時点で、前記制御部は、前記モータの回転数を増加させる、請求項5に記載の農作業機。
【請求項7】
前記農作業機が位置する第1区域に割り当てられた第1施肥量よりも、前記第1区域に隣接する第2区域に割り当てられた第2施肥量の方が小さい場合、前記速度制御によって前記走行部の走行速度が設定低速度に到達した時点で、前記制御部は、前記モータの回転数を減少させる、請求項5または請求項6に記載の農作業機。
【請求項8】
前記制御部によって前記速度制御が実行される位置を示す表示部をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の農作業機。
【請求項9】
前記表示部は、少なくとも最も直近で前記速度制御が実行される位置を示す、請求項8に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の可変施肥機は、可変施肥用PC、施肥量制御用マイコン、及び施肥機を備えている。可変施肥用PCには、圃場の各メッシュ(区域)を単位とした施肥マップが入力される。また、可変施肥用PCには、可変施肥機の現在位置情報が入力されており、当該位置に対応する施肥量データが可変施肥用PCによって施肥マップから抽出される。抽出された施肥量データが可変施肥用PCにより制御用データに変換されて、施肥量制御用マイコンに供給される。施肥量制御用マイコンは、入力された施肥量に基づいて、施肥機を駆動し、該当する量の肥料を繰り出して施肥を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-254711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、農作業機では、肥料を繰り出す機構のモータの回転数を変動させることによって、単位面積当たりに施肥機から繰り出される肥料の量(単位面積当たりの繰出量)を変動させる場合が多い。しかしながら、可変施肥機の現在位置のメッシュに必要な施肥量と、当該メッシュに隣接する隣接メッシュに必要な施肥量とが異なる場合、特許文献1に記載の可変施肥機では、隣接メッシュに施肥機が進入してからモータの回転数を目標の回転数に変化させるまで、一定の時間を要する。従って、一定の時間が経過する間、隣接メッシュに対して必要な量の肥料が繰り出されなかったり、過度な量の肥料が繰り出されたりする。つまり、特許文献1に記載の可変施肥機では、隣接メッシュに対して精度よく施肥できない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圃場の区域毎に精度よく肥料を施肥できる農作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、農作業機は、走行部と、繰出部と、取得部と、制御部とを備える。繰出部は、前記走行部に支持され、肥料を繰り出す。取得部は、前記農作業機の位置を示す位置情報を取得する。制御部は、圃場の複数の区域を示す施肥マップと、前記位置情報とに基づいて、前記走行部及び前記繰出部を制御する。前記複数の区域のうちの隣接する区域の施肥量に基づいて、前記制御部は、前記走行部の走行速度を制御する速度制御を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圃場の区域毎に精度よく肥料を施肥できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る田植機を示す左側面図である。
図2】本実施形態に係る田植機を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る施肥マップを示す模式図である。
図4】本発明の比較例において、第1施肥量より第2施肥量が大きい場合の施肥量、モータ回転数、及び走行速度を示すタイムチャートである。
図5】本実施形態において、第1施肥量より第2施肥量が大きい場合の施肥量、モータ回転数、及び走行速度を示すタイムチャートである。
図6】本発明の比較例において、第1施肥量より第2施肥量が小さい場合の施肥量、モータ回転数、及び走行速度を示すタイムチャートである。
図7】本実施形態において、第1施肥量より第2施肥量が小さい場合の施肥量、モータ回転数、及び走行速度を示すタイムチャートである。
図8】本実施形態に係る表示部が表示する画面の一例を示す模式図である。
図9】本実施形態に係る表示部が表示する画面の他の一例を示す模式図である。
図10】本実施形態に係る田植機が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る田植機1について説明する。図1は、田植機1を示す左側面図である。田植機1は、農作業機の一例である。本実施形態において、田植機1の進行方向は、図1の紙面において左方向である。なお、以下の説明では、田植機1の進行方向に向かって左側を左と称し、田植機1の進行方向に向かって右側を右と称する場合がある。
【0011】
図1に示すように、田植機1は、走行部2と、施肥機3と、測位ユニット4と、表示部5と、植付部6と、エンジン10と、ミッションケース11と、前輪12と、後輪13と、運転座席14と、ハンドル15と、ペダル16と、ボンネット17と、ダッシュボード18とを備える。施肥機3は、「供給部」の一例である。
【0012】
走行部2は、田植機1の車体として構成されている。走行部2は、エンジン10の動力によって圃場を走行する。
【0013】
前輪12及び後輪13は、走行部2を支持する。前輪12及び後輪13は、それぞれ走行部2に対して左右一対に設けられている。本実施形態において、前輪12の車軸には、車速センサ19が配置されている。車速センサ19は、車軸の回転を検出することで、走行部2の走行速度を検出する。なお、車速センサ19は、前輪12と異なる位置に配置されてもよい。
【0014】
エンジン10は、走行部2の前側に支持されている。エンジン10は、ボンネット17に覆われている。ボンネット17は、開閉可能に構成されている。エンジン10は、田植機1の動力源として機能する。
【0015】
エンジン10の動力は、ミッションケース11に入力される。エンジン10の動力は、ミッションケース11により変速されて、前輪12及び後輪13に伝達される。また、エンジン10の動力は、ミッションケース11を介して、植付部6に伝達される。
【0016】
運転座席14には、田植機1の操縦者が着座する。運転座席14は、走行部2の前後方向において前輪12と後輪13との間に配置されている。
【0017】
運転座席14の前方には、ダッシュボード18が配置される。ダッシュボード18には、表示部5及びハンドル15が配置される。
【0018】
表示部5は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのようなディスプレイによって構成される。表示部5は、例えば、田植機1に関する各種情報を表示する。
【0019】
ハンドル15は、運転座席14の前方に配置されたステアリングコラムに取り付けられている。操縦者がハンドル15を手で握って回すことで、走行部2の直進及び旋回を指示することができる。
【0020】
ペダル16は、運転座席14の前側の床から上方に突出するように配置されている。ペダル16を足で踏むことによって、操縦者は、ペダル16を操作する。また、ペダル16には、操縦者がペダル16への踏込みを解除したときにペダル16を戻すための戻しバネが取り付けられている(不図示)。
【0021】
操縦者がペダル16を足で踏み込むことで、走行部2の走行を指示する。具体的には、操縦者がペダル16を足で踏み込む深さを変更することによって、走行部2の加速又は減速を指示する。一方、操縦者がペダル16から足を離すことによって、走行部2の走行停止を指示する。
【0022】
植付部6は、走行部2の後方に配置されている。植付部6は、苗を圃場に対して植え付ける。植付部6は、昇降リンク機構61を介して走行部2に連結されている。植付部6は、例えば、植付ユニット62及び苗載台63を含む。苗載台63には、苗マットが載置される。苗載台63に載置された苗マットの苗は、植付ユニット62に供給される。植付ユニット62は、苗を圃場に植え付ける。
【0023】
走行部2には、昇降シリンダ64が配置されている。昇降シリンダ64が伸縮駆動することにより、走行部2に対して植付部6を上下に昇降させる。
【0024】
施肥機3は、肥料タンク31と、繰出部32と、電動モータ33と(図2参照)、搬送ホース34と、ブロワー35とを備える。本実施形態では、施肥機3は、複数の肥料タンク31と、肥料タンク31と同数の繰出部32とを備える。電動モータ33は、「モータ」の一例である。
【0025】
肥料タンク31は、走行部2の前後方向において運転座席14と苗載台63との間の位置に配置されている。本実施形態において、肥料タンク31は、例えば、粒状の肥料(農用資材)を貯留する。
【0026】
繰出部32は、肥料タンク31の下部に接続されている。繰出部32は、肥料タンク31から供給された肥料を所定量ずつ下方に繰り出す。
【0027】
繰出部32の内部には、肥料が通過可能な経路が配置されている(不図示)。当該経路には、略円板形状を有する繰出体36が回転可能に配置されている。すなわち、繰出部32は、繰出体36を含む。繰出体36には、所定量の肥料を収容可能な複数の繰出凹部が形成されている(不図示)。繰出体36を回転させることによって、繰出凹部に収容された肥料が経路の下流に繰り出される。
【0028】
電動モータ33は、繰出部32の繰出体36を回転させる駆動源として機能する。電動モータ33は、施肥機3の適宜の位置に取り付けられる。なお、図1では、電動モータ33を図示していない。
【0029】
搬送ホース34は、繰出部32の内部に配置される経路の下流側に接続されている。搬送ホース34は、可撓性を有する細長いチューブ状の部材である。
【0030】
ブロワー35は、繰出部32に近接した適宜の位置に配置されている。ブロワー35は、空気流を生成して、繰出部32の内部の経路に空気流を送り出す。その結果、搬送ホース34を通じて当該経路の下流に繰り出された肥料が圃場に供給される(施肥される)。
【0031】
測位ユニット4は、田植機1の位置を示す位置情報を取得する。測位ユニット4は、「取得部」の一例である。測位ユニット4は、例えば、測位用アンテナ、及び位置情報受信機を含む。測位用アンテナは、例えば衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信する。測位用アンテナで受信された測位信号は、位置情報受信機に入力される。位置情報受信機は、入力された測位信号を信号処理して田植機1の位置を示す位置情報を取得する。
【0032】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る田植機1についてさらに説明する。図2は、田植機1を示すブロック図である。
【0033】
田植機1は、コントローラ8、走行コントローラ9、及びサーボモータ91を更に備える。
【0034】
コントローラ8は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。コントローラ8は、記憶部81及び制御部82を含む。
【0035】
記憶部81は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。具体的には、記憶部81は、半導体メモリーのような主記憶装置と、半導体メモリー、ソリッドステートドライブ、及び/又は、ハードディスクドライブのような補助記憶装置とを含む。記憶部81は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。記憶部81は、非一時的コンピューター読取可能記憶媒体の一例に相当する。また、本実施形態において、記憶部81は、施肥マップMpを記憶する。施肥マップMpについては、図3を参照して後述する。
【0036】
制御部82は、例えばCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含む。制御部82のプロセッサーは、記憶部81の記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを実行して、走行コントローラ9及び電動モータ33を制御する。すなわち、制御部82は、走行コントローラ9及び施肥機3を制御する。
【0037】
具体的には、コントローラ8は、例えば、施肥マップMpと、測位ユニット4が取得した田植機1の位置情報とに基づいて、走行コントローラ9及び施肥機3を制御する。また、コントローラ8は、例えば、走行コントローラ9及び植付部6と連動して電動モータ33を制御する。その結果、例えば、田植機1が走行しながら苗の植付けを行うことに伴い、電動モータ33を介して繰出部32が駆動されて肥料を圃場に供給する。また、上述したように、施肥機3は、肥料タンク31内の肥料を繰出部32によって所定量ずつ繰り出して、搬送ホース34から肥料を圃場に供給する。コントローラ8は、繰出部32の駆動源である電動モータ33を制御して、繰出部32の動作速度を上昇させることによって、単位時間当たりに搬送ホース34に繰り出される肥料の量を増加させる。また、コントローラ8は、電動モータ33を制御して、繰出部32の動作速度を低下させることによって、単位時間当たりに搬送ホース34に繰り出される肥料の量を減少させる。その結果、単位時間当たりに圃場に供給される肥料の量が増減する。
【0038】
走行コントローラ9は、例えばCPUのようなプロセッサーを含む。走行コントローラ9は、例えば、制御部82と同様の構成を有する。走行コントローラ9は、例えば、走行部2の走行速度を制御する。つまり、制御部82が走行コントローラ9を制御することは、制御部82が走行部2を制御すること、及び、コントローラ8が走行部2を制御することに相当する。
【0039】
サーボモータ91は、ミッションケース11(図1参照)が備える変速入力レバーを回転させることができる。サーボモータ91は、走行コントローラ9に電気的に接続されている。サーボモータ91がミッションケース11の変速入力レバーを回転させることによって、前輪12及び後輪13(図1参照)を介して走行部2が走行する。
【0040】
次に、図2及び図3を参照して、記憶部81が記憶する施肥マップMpについて説明する。図3は、施肥マップMpを示す模式図である。図3に示すように、施肥マップMpは、圃場の複数の区域AN(メッシュ)を示す。具体的には、施肥マップMpは、圃場を分割することによって設定される複数の区域ANを示す情報と、区域AN毎に割り当てられた施肥量MNを示す情報とを含む。なお、本実施形態において、施肥量MNとは、区域ANに対して単位面積当たりに供給される肥料の量のことである。
【0041】
図3では、発明を理解しやすくするため、同じ施肥量MNが設定されている区域ANに、同じハッチングを付している。以下、施肥量MNを、施肥量MA、施肥量MB、又は施肥量MCとそれぞれ区別して説明する場合がある。なお、図3に示す例において、施肥量MBは、施肥量MAより大きい。また、施肥量MBは、施肥量MCより大きい。
【0042】
また、図3では、発明を理解し易くするため、田植機1を示すアイコン、及び田植機1の移動する経路を示す矢印を、施肥マップMpに重ねて示している。ただし、実際には、施肥マップMpは、田植機1を示すアイコン及び矢印を含まない。本実施形態の田植機1は、圃場において、例えば、第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3、第2方向D2、そして、第1方向D1の順に移動する。第1方向D1及び第3方向D3の各々は、圃場の長辺に沿っている。また、第2方向D2は、圃場の短辺に沿っている。第1方向D1と第3方向D3とは、互いに反対の方向である。
【0043】
コントローラ8は、車速センサ19から入力された回転信号に基づいて、前輪12の回転速度を算出する。前輪12の回転速度と、走行部2の走行速度とは、相関関係を有する。コントローラ8は、前輪12の回転速度に応じて電動モータ33を制御する。すなわち、コントローラ8は、走行部2の走行速度に応じて、電動モータ33を制御する。
【0044】
具体的には、例えば、1つの区域ANにおいて、コントローラ8は、走行部2の走行速度が速くなることに応じて、電動モータ33の回転速度が速くなるように電動モータ33を制御する。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度が遅くなることに応じて、電動モータ33の回転速度が遅くなるように電動モータ33を制御する。従って、走行部2の走行速度が速くなる場合には施肥機3が区域ANに供給する単位時間当たりの肥料の量が増加され、走行部2の走行速度が遅くなる場合には施肥機3が区域ANに供給する単位時間当たりの肥料の量が減少される。その結果、走行部2の走行速度が速くなる場合であっても、走行部2の走行速度が遅くなる場合であっても、1つの区域ANに対して供給する単位面積当たりの肥料の量を一定にすることができる。すなわち、1つの区域AN内で走行部2の走行速度が変化する場合であっても、当該区域ANに対して定められた量の肥料を当該区域ANに供給することができる。
【0045】
本実施形態において、複数の区域ANのうちの隣接する区域AN、すなわち、互いに隣接する2つの区域ANの施肥量MNに基づいて、コントローラ8は、走行部2の走行速度を制御する速度制御を実行する。従って、速度制御が実行されない場合と比較して、電動モータ33を容易に制御できる。その結果、隣接する区域ANの一方の区域ANに対する肥料の目標施肥量と、実施肥量との差分を縮小できるため、圃場の区域AN毎に精度よく肥料を供給できる。本明細書において、目標施肥量は、区域ANに対して単位面積当たりに供給する肥料の目標の量のことである。また、実施肥量は、区域ANに対して単位面積当たりに供給する肥料の実際の量のことである。詳細は、図4及び図5を参照して後述する。
【0046】
また、本実施形態において、複数の区域ANのうち、田植機1が位置する第1区域A1に割り当てられた第1施肥量と、第1区域A1に隣接する第2区域A2に割り当てられた第2施肥量との差が所定値以上である場合、コントローラ8は、走行部2の速度制御を実行する。従って、第1施肥量と第2施肥量との差が所定値未満である場合に、不要に速度制御が実行されることを抑制できる。所定値は、ユーザーが任意に設定できる。なお、本実施形態において、第2区域A2とは、田植機1が移動する経路において、田植機1が次に進入する区域ANのことである。
【0047】
例えば、図3に示す例において、田植機1が位置する第1区域A1に割り当てられた施肥量MA(第1施肥量)と、第2区域A2に割り当てられた施肥量MB(第2施肥量)との差が所定値以上である場合、すなわち、|第1施肥量-第2施肥量|≧所定値、である場合、コントローラ8は、走行部2の速度制御を実行する。なお、本実施形態において、圃場のうち、速度制御が実行される位置について、コントローラ8が施肥マップMpに基づいて予め決定していてもよいし、田植機1が移動することに応じてコントローラ8が定期的に算出してもよい。
【0048】
コントローラ8は、走行部2の速度制御において、田植機1が第1区域A1から第2区域A2に進入する前に、走行部2の走行速度を小さくする。従って、第2区域A2における電動モータ33の目標回転数に対する電動モータ33の実回転数の追従性が向上する。その結果、より精度よく電動モータ33を制御できるため、圃場の区域AN毎に、より精度よく肥料を供給できる。本明細書において、目標回転数は、コントローラ8から電動モータ33に対する指示値である。また、実回転数は、電動モータ33の実際の回転数である。
【0049】
本実施形態において、コントローラ8は、走行部2の速度制御を実行する場合、電動モータ33の回転数を制御する回転数制御を、速度制御に応じて更に実行する。従って、第2区域A2に対して、より精度よく肥料を供給できる。その結果、圃場の区域AN毎に、より精度よく肥料を供給できる。
【0050】
具体的には、コントローラ8は、回転数制御において、走行部2の走行速度が設定低速度に到達した時点で、単位時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量が、第2区域A2に進入した後の単位時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量よりも大きくなるように、電動モータ33の回転数を制御する。従って、回転数制御が実行されない場合と比較して、より早いタイミングで、電動モータ33の実際の回転数を、目標の回転数に到達させることができる。その結果、第2区域A2に対して、より精度よく肥料を供給できる。走行部2の走行速度が設定低速度に到達するとは、走行部2の速度制御を実行することによって到達する走行部2の設定低速度のことである。
【0051】
より具体的には、第1区域A1の第1施肥量よりも、第2区域A2の第2施肥量の方が大きい場合、速度制御によって走行部2の走行速度が設定低速度に到達した時点で、コントローラ8は、電動モータ33の回転数を増加させる。従って、電動モータ33の回転数制御が実行されない場合と比較して、より早いタイミングで、電動モータ33の実際の回転数を、目標の回転数まで増加させることができる。その結果、第2区域A2に対して、より精度よく肥料を供給できる。
【0052】
一方、第1区域A1の第1施肥量よりも、第2区域A2の第2施肥量の方が小さい場合、速度制御によって走行部2の走行速度が設定低速度に到達した時点で、コントローラ8は、電動モータ33の回転数を減少させる。従って、電動モータ33の回転数制御が実行されない場合と比較して、より早いタイミングで、電動モータ33の実際の回転数を、目標の回転数まで減少させることができる。その結果、第2区域A2に対して、より精度よく肥料を供給できる。
【0053】
次に、図4図7を参照して、本発明の比較例における施肥量の変化、及び本実施形態における施肥量の変化について説明する。比較例の説明において、本実施形態における田植機1を図示した図1及び図2を援用する。まず、図4及び図5を参照して、第1施肥量よりも第2施肥量の方が大きい場合について説明する。なお、図4及び図5では、時刻t2において、田植機1が第1区域A1から第2区域A2に進入する。つまり、図4及び図5では、第1区域A1に割り当てられた第1施肥量よりも、第2区域A2に割り当てられた第2施肥量の方が大きい。
【0054】
図4は、本発明の比較例における施肥量、電動モータ33の回転数、及び走行部2の走行速度の各々の変化を示すタイムチャートである。具体的には、タイムチャートG1では、目標施肥量TF1及び実施肥量AF1の一例を示している。タイムチャートG1において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は施肥量(kg/10a)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t2まで、及び時刻t4以降について、目標施肥量TF1及び実施肥量AF1の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG2では、電動モータ33の目標回転数TR1及び実回転数AR1の一例を示している。タイムチャートG2において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は回転数(min-1)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t2まで、及び時刻t4以降について、目標回転数TR1及び実回転数AR1の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG3では、走行部2の走行速度RS1の一例を示している。タイムチャートG3において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は走行速度(km/h)を示す。ここで、電動モータ33の目標回転数TR1は電動モータ33に対する指示値であり、電動モータ33の実回転数AR1は電動モータ33の実際の回転数である。
【0055】
図5は、本実施形態における施肥量、電動モータ33の回転数、及び走行部2の走行速度の各々の変化を示すタイムチャートである。具体的には、タイムチャートG4では、目標施肥量TF2及び実施肥量AF2の一例を示している。タイムチャートG4において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は施肥量(kg/10a)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t2まで、及び時刻t3以降について、目標施肥量TF2及び実施肥量AF2の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG5では、電動モータ33の目標回転数TR2及び実回転数AR2の一例を示している。タイムチャートG5において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は回転数(min-1)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t1まで、及び時刻t3以降について、目標回転数TR2及び実回転数AR2の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG6では、走行部2の走行速度RS2の一例を示している。タイムチャートG6において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は走行速度(km/h)を示す。ここで、電動モータ33の目標回転数TR2は電動モータ33に対する指示値であり、電動モータ33の実回転数AR2は電動モータ33の実際の回転数である。
【0056】
図4のタイムチャートG3に示すように、比較例では、走行部2の速度制御が実行されない。すなわち、走行部2の走行速度RS1は、速度V1で一定である。
【0057】
また、タイムチャートG2に示すように、時刻t2において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より大きい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入し、また、電動モータ33の回転数制御が実行されないため、時刻t2において、電動モータ33の目標回転数TR1が回転数N1から回転数N2に増加している。一方、電動モータ33の実回転数AR1は、目標回転数TR1に基づいて、時刻t2まで回転数N1を維持しており、時刻t2から時刻t4にわたって徐々に増加し、時刻t4において回転数N2に到達する。ここで、本明細書において、回転数N1と回転数N2との差分を変化量M1と記載する。
【0058】
また、タイムチャートG1に示すように、時刻t2において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より大きい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、時刻t2において、目標施肥量TF1が施肥量F1から施肥量F2に増加している。一方、実施肥量AF1は、時刻t2まで施肥量F1を維持している。また、電動モータ33の実回転数AR1が時刻t2から増加することに伴って、実施肥量AF1は時刻t2から増加し始め、時刻t4において施肥量F2に到達する。電動モータ33に対して回転数の変更を指示してから、圃場に肥料が供給される単位面積当たりの実際の施肥量が、単位面積当たりの目標の施肥量に到達するまでは、電動モータ33の応答遅れが生じる。つまり、時刻t2から時刻t4までにおける、目標施肥量TF1と実施肥量AF1との差分(ハッチングによって示される領域)は、第2区域A2に供給される肥料の不足分に相当する。
【0059】
一方、図5のタイムチャートG6に示すように、本実施形態では、時刻t2において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より大きい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、コントローラ8は、走行部2の速度制御を実行する。具体的には、コントローラ8は、田植機1が第1区域A1から第2区域A2に進入する前に、走行部2の走行速度を小さくする。より具体的には、コントローラ8は、走行部2の走行速度RS2を、時刻t2より前の時刻t1まで速度V1に維持させる。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度RS2を、時刻t1から下降させて、時刻t2において設定低速度である速度V2に到達させる。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度RS2を、時刻t2から上昇させて、時刻t3において速度V1に到達させる。
【0060】
また、タイムチャートG5に示すように、本実施形態では、時刻t2において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より大きい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、コントローラ8は、電動モータ33の回転数制御を実行する。具体的には、コントローラ8は、時刻t1から時刻t2にわたって、電動モータ33の目標回転数TR2を回転数N1から回転数N4に徐々に減少させている。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度が設定低速度である速度V2に到達した時点で、単位時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量が、第2区域A2に進入した後の短時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量よりも大きくなるように、電動モータ33の回転数を制御する。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度が設定低速度である速度V2に到達した時点で、電動モータ33の目標回転数TR2を増加させる。すなわち、コントローラ8は、時刻t2において、目標回転数TR2を回転数N4から回転数N3に増加させている。なお、回転数N3は、回転数N4より大きい。そして、コントローラ8は、目標回転数TR2を、時刻t2から時刻t3にわたって回転数N3から回転数N2に徐々に増加させ、時刻t3において回転数N2に到達させる。ここで、本明細書において、時刻t2における単位時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量、すなわち、回転数N3と回転数N4との差分を変化量M2と記載する。
【0061】
一方、電動モータ33の実回転数AR2は、時刻t2より前の時刻t1まで回転数N1を維持しており、目標回転数TR2に基づいて時刻t1から減少し始め、時刻t2において回転数N4に到達する。また、電動モータ33の実回転数AR2は、目標回転数TR2に基づいて時刻t2から増加し始め、時刻t4よりも前の時刻t3において回転数N2に到達する。
【0062】
また、タイムチャートG4に示すように、時刻t2において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より大きい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、時刻t2において、目標施肥量TF2が施肥量F1から施肥量F2に増加している。一方、実施肥量AF2は、時刻t2まで施肥量F1を維持する。また、電動モータ33の実回転数AR2が時刻t2から増加することに伴って、実施肥量AF2は、時刻t2から増加し始め、時刻t4よりも前の時刻t3において施肥量F2に到達する。電動モータ33に対して回転数の変更を指示してから、圃場に肥料が供給される単位面積当たりの実際の施肥量が、単位面積当たりの目標の施肥量に到達するまで、電動モータ33の応答遅れが生じる。つまり、時刻t2から時刻t3までにおける、目標施肥量TF2と実施肥量AF2との差分(ハッチングによって示される領域)は、第2区域A2に供給される肥料の不足分に相当する。
【0063】
本実施形態と比較例とを比較した結果、本実施形態の第2区域A2に供給される肥料の不足分は、比較例の第2区域A2に供給される肥料の不足分よりも少ない。すなわち、本実施形態の方が比較例よりも精度よく第2区域A2に対して施肥できる。
【0064】
また、時刻t2すなわち田植機1が第1区域A1から第2区域A2に進入するときの本実施形態の目標回転数TR2の変化量M2は、比較例の目標回転数TR1の変化量M1よりも小さい。具体的には、変化量M2<変化量M1である。従って、本実施形態では、電動モータ33の実回転数AR2が急峻に上昇することを抑制できるため、比較例よりも、電動モータ33に対する負荷を軽減できる。
【0065】
さらに、走行部2の走行速度が設定低速度である速度V2に到達した時点での電動モータ33の変化量M2が、第2区域A2に進入した後の単位時間当たりの電動モータ33の回転数の変化量よりも大きい。すなわち、時刻t2における電動モータ33の回転数の変化量M2は、時刻t2から時刻t3までの電動モータ33の回転数の目標回転数TR2と実回転数AR2の差よりも大きい。従って、目標回転数TR2に対する実回転数AR2の追従性が向上する。その結果、精度よく第2区域A2に対して施肥できる。
【0066】
次に、図6及び図7を参照して、第1施肥量よりも第2施肥量の方が小さい場合について説明する。なお、図6及び図7では、時刻t6において、田植機1が第1区域A1から第2区域A2に進入する。つまり、図6及び図7では、第1区域A1に割り当てられた第1施肥量よりも、第2区域A2に割り当てられた第2施肥量の方が小さい。
【0067】
図6は、本発明の比較例における施肥量、電動モータ33の回転数、及び走行部2の走行速度の各々の変化を示すタイムチャートである。具体的には、タイムチャートG7では、目標施肥量TF3及び実施肥量AF3の一例を示している。タイムチャートG7において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は施肥量(kg/10a)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t6まで、及び時刻t8以降について、目標施肥量TF3及び実施肥量AF3の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG8では、電動モータ33の目標回転数TR3及び実回転数AR3の一例を示している。タイムチャートG8において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は回転数(min-1)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t6まで、及び時刻t8以降について、目標回転数TR3及び実回転数AR3の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG9では、走行部2の走行速度RS3の一例を示している。タイムチャートG9において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は走行速度(km/h)を示す。ここで、電動モータ33の目標回転数TR3は電動モータ33に対する指示値であり、電動モータ33の実回転数AR3は電動モータ33の実際の回転数である。
【0068】
図7は、本実施形態における施肥量、電動モータ33の回転数、及び走行部2の走行速度の各々の変化を示すタイムチャートである。具体的には、タイムチャートG10では、目標施肥量TF4及び実施肥量AF4の一例を示している。タイムチャートG10において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は施肥量(kg/10a)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t6まで、及び時刻t7以降について、目標施肥量TF4及び実施肥量AF4の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG11では、電動モータ33の目標回転数TR4及び実回転数AR4の一例を示している。タイムチャートG11において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は回転数(min-1)を示す。なお、発明を理解しやすくするため、時刻t5まで、及び時刻t7以降について、目標回転数TR4及び実回転数AR4の縦軸に沿った位置を若干ずらしているが、実際は重なり合う。タイムチャートG12では、走行部2の走行速度RS4の一例を示している。タイムチャートG12において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は走行速度(km/h)を示す。ここで、電動モータ33の目標回転数TR4は電動モータ33に対する指示値であり、電動モータ33の実回転数AR4は電動モータ33の実際の回転数である。
【0069】
図6のタイムチャートG9に示すように、比較例では、走行部2の速度制御が実行されない。すなわち、走行部2の走行速度RS3は、速度V3で一定である。
【0070】
また、タイムチャートG8に示すように、時刻t6において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より小さい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入し、また、比較例では電動モータ33の回転数制御が実行されないため、時刻t2において、電動モータ33の目標回転数TR3が回転数N4から回転数N3に減少している。一方、電動モータ33の実回転数AR3は、目標回転数TR3に基づいて、時刻t6まで回転数N4を維持しており、時刻t6から減少し始め、時刻t8において回転数N3に到達する。ここで、本明細書において、回転数N3と回転数N4との差分を変化量M3と記載する。
【0071】
また、タイムチャートG7に示すように、時刻t6において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より小さい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、時刻t6において、目標施肥量TF3が施肥量F4から施肥量F3に減少している。一方、実施肥量AF3は、時刻t6まで施肥量F4を維持している。また、電動モータ33の実回転数AR3が時刻t6から減少することに伴って、実施肥量AF3は、時刻t6から減少し始め、時刻t8において施肥量F3に到達する。電動モータ33に対して回転数の変更を指示してから、圃場に肥料が供給される単位面積当たりの実際の施肥量が単位面積当たりの目標の施肥量に到達するまでは、電動モータ33の応答遅れが生じる。つまり、時刻t6から時刻t8までにおける、目標施肥量TF3と実施肥量AF3との差分(ハッチングによって示される領域)は、第2区域A2に供給される肥料の過剰分に相当する。
【0072】
一方、図7のタイムチャートG12に示すように、本実施形態では、時刻t6において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より小さい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、コントローラ8は、走行部2の速度制御を実行する。具体的には、コントローラ8は、田植機1が第1区域A1から第2区域A2に進入する前に、走行部2の走行速度を小さくする。より具体的には、コントローラ8は、走行部2の走行速度RS4を、時刻t6より前の時刻t5まで速度V3に維持させている。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度RS4を、時刻t5から下降させて、時刻t6において設定低速度である速度V4に到達させる。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度RS4を、時刻t6から上昇させて、時刻t7において速度V3に到達させる。
【0073】
また、タイムチャートG11に示すように、本実施形態では、時刻t6において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より小さい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、コントローラ8は、電動モータ33の回転数制御を実行する。具体的には、コントローラ8は、時刻t5から時刻t6にわたって、電動モータ33の目標回転数TR4を回転数N4から回転数N5に徐々に減少させている。また、コントローラ8は、走行部2の走行速度が設定低速度である速度V4に到達した時点で、単位時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量が、第2区域A2に進入した後の単位時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量よりも大きくなるように、電動モータ33の回転数を制御する。さらに、コントローラ8は、走行部2の走行速度が設定低速度である速度V4に到達した時点で、電動モータ33の目標回転数TR4を減少させる。すなわち、コントローラ8は、時刻t6において、目標回転数TR4を、回転数N5から回転数N6に減少させている。なお、回転数N6は、回転数N5より小さい。さらに、コントローラ8は、目標回転数TR4を、時刻t6から時刻t7にわたって回転数N6から回転数N3に徐々に増加させ、時刻t7において回転数N3に到達させる。ここで、本明細書において、時刻t6における単位時間あたりの電動モータ33の回転数の変化量、すなわち、回転数N5と回転数N6との差分を変化量M4と記載する。
【0074】
一方、電動モータ33の実回転数AR4は、時刻t6より前の時刻t5まで回転数N4を維持しており、目標回転数TR4に基づいて、時刻t5から減少し始め、時刻t6において回転数N5に到達する。また、電動モータ33の実回転数AR2は、目標回転数TR4に基づいて時刻t6から増加し始め、時刻t8よりも前の時刻t7において回転数N3に到達する。
【0075】
また、タイムチャートG10に示すように、時刻t6において、第1施肥量を割り当てられた第1区域A1から、第1施肥量より小さい第2施肥量を割り当てられた第2区域A2に田植機1が進入するため、時刻t6において、目標施肥量TF4が施肥量F4から施肥量F3に減少している。一方、実施肥量AF4は、時刻t6まで施肥量F4を維持する。また、電動モータ33の実回転数AR4が時刻t6から時刻t7にわたって増加すること、及び走行部2の走行速度RS4が時刻t6から時刻t7にわたって上昇することに伴って、実施肥量AF4は、時刻t6から増加し始め、時刻t8よりも前の時刻t7において施肥量F3に到達する。電動モータ33に対して回転数の変更を指示してから、圃場に肥料が供給される単位面積当たりの実際の施肥量が、単位面積当たりの目標の施肥量に到達するまでは、電動モータ33の応答遅れが生じる。つまり、時刻t6から時刻t7までにおける、目標施肥量TF4と実施肥量AF4との差分(ハッチングによって示される領域)は、第2区域A2に供給される肥料の過剰分に相当する。
【0076】
本実施形態と比較例とを比較した結果、本実施形態の第2区域A2に供給される肥料の過剰分は、比較例の第2区域A2に供給される肥料の過剰分よりも少ない。すなわち、本実施形態の方が比較例よりも精度よく第2区域A2に対して施肥できている。
【0077】
また、時刻t6すなわち田植機1が第1区域A1から第2区域A2に進入するときの本実施形態の目標回転数TR4の変化量M4は、比較例の目標回転数TR3の変化量M3よりも小さい。具体的には、変化量M4<変化量M3である。従って、本実施形態では、電動モータ33の実回転数AR4が急峻に下降することを抑制できるため、比較例よりも、電動モータ33に対する負荷を軽減できる。
【0078】
さらに、走行部2の走行速度が設定低速度である速度V4に到達した時点での電動モータ33の変化量M4が、第2区域A2に進入した後の単位時間当たりの電動モータ33の回転数の変化量よりも大きい。すなわち、時刻t6における電動モータ33の回転数の変化量M4は、時刻t6から時刻t7までの電動モータ33の回転数の目標回転数TR4と実回転数AR4の差よりも大きい。従って、目標回転数TR4に対する実回転数AR4の追従性が向上する。その結果、精度よく第2区域A2に対して施肥できる。
【0079】
次に、図8を参照して、表示部5が表示する画面について説明する。図8は、表示部5が表示する画面の一例を示す模式図である。表示部5が表示する画面(以下、表示画面HGと記載する)において、施肥マップMpに対応する画像MpGと、田植機1を示すアイコンMRtと、田植機1の経路を示す矢印とを表示する。田植機1を示すアイコンMRtは、圃場における田植機1の位置を示す。ここで、測位ユニット4が取得した田植機1の位置情報に基づいて、表示部5は、田植機1を示すアイコンMRtを表示する。また、表示部5は、コントローラ8によって速度制御が実行される位置を示す。従って、田植機1の操縦者が、圃場において、走行部2の走行速度が変化する位置を認識できる。その結果、操縦者が走行部2の走行速度の変化する位置を認識できない場合と比較して、突然に田植機1の走行速度が変化することに対する違和感を抑制できる。
【0080】
具体的には、図8に示す例では、星形状を有するマークMScが、コントローラ8によって速度制御の実行される位置を示す。より具体的には、表示部5は、表示画面HGにおいて、田植機1が移動する経路において最も直近で速度制御が実行される位置を示すマークMSc1(MSc)と、当該位置よりも後に速度制御が実行される位置を示すマークMSc2(MSc)とを表示する。従って、田植機1の操縦者は、圃場全体にわたって、走行部2の走行速度が変化する位置を認識できる。その結果、操縦者が走行部2の走行速度の変化する位置を予測して、田植機1を操縦できる。
【0081】
次に、図9を参照して、表示部5が表示する他の画面について説明する。図9は、表示部5が表示する画面の他の一例を示す模式図である。表示部5は、表示画面HGにおいて、田植機1の移動する経路において、少なくとも最も直近で速度制御が実行される位置を示してもよい。従って、表示画面HGに表示する情報を少なくすることができる。その結果、最も直近で田植機1の走行速度が変化する位置をより確実に操縦者に認識させることができる。
【0082】
具体的には、図9に示す例において、表示部5は、表示画面HGにおいて、田植機1が移動する経路において最も直近で速度制御が実行される位置を示すマークMSc1のみを表示する。従って、田植機1の操縦者は、田植機1が移動する経路において最も直近で速度制御が実行される位置をより確実に認識することができる。
【0083】
次に、図10を参照して、田植機1が実行する処理について説明する。図10は、田植機1が実行する処理を示すフローチャートである。田植機1が実行する処理は、ステップS1~ステップS7を含む。
【0084】
図10に示すように、ステップS1において、表示部5は、表示画面HGの表示を開始する。
【0085】
ステップS2において、測位ユニット4は、田植機1の位置を示す位置情報を取得する。
【0086】
ステップS3において、施肥機3は、圃場に肥料を供給する。
【0087】
ステップS4において、コントローラ8は、第1施肥量と第2施肥量との差が所定値以上であるか否かを判定する。ステップS4において否定的判定(No)がされる場合、処理はステップS3に進む。一方、ステップS4において肯定的判定(Yes)がされる場合、処理はステップS5に進む。
【0088】
ステップS5において、コントローラ8は、走行部2の速度制御を実行する。
【0089】
ステップS6において、コントローラ8は、電動モータ33の回転数制御を実行する。ステップS7において、測位ユニット4は、田植機1の位置情報を取得する。田植機1が施肥マップMpの範囲外に位置する場合(No)、一連の処理は終了する。田植機1が施肥マップMpの範囲内に位置する場合(Yes)、処理はステップS3に進む。
【0090】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0091】
図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、周期等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0092】
本実施形態において、第2区域A2とは、田植機1が移動する経路において、田植機1が次に進入する区域ANのことであった。ただし、第2区域A2は、田植機1が位置する第1区域A1に隣接する区域ANであればよく、例えば、田植機1が次に進入する区域ANと異なる区域ANであってもよい。
【0093】
また、本実施形態において、第1区域A1に割り当てられた第1施肥量と、第2区域A2に割り当てられた第2施肥量との差が所定値以上である場合に、コントローラ8が、走行部2の速度制御を実行した。ただし、第1施肥量に対する第2施肥量の割合が所定値(第2所定値)以上である場合に、コントローラ8が、走行部2の速度制御を実行してもよい。すなわち、第2施肥量/第1施肥量≧第2所定値、である場合に、走行部2の速度制御を実行する。
【0094】
また、本実施形態において、表示部5は、星形状を有するマークMScを表示することによって、コントローラ8によって速度制御の実行される位置を示した。ただし、操縦者が走行部2の走行速度が変化する位置を認識できるかぎり、表示部5による速度制御の実行される位置を示す手法は特に限定されない。例えば、星形状と異なる形状を有するマークを表示することによって、コントローラ8によって速度制御の実行される位置を示してもよい。また、例えば、速度制御の実行される位置に隣接する2つの区域ANを点滅させてもよい。また、速度制御の実行されない位置に隣接する区域ANと、速度制御の実行される位置に隣接する2つの区域ANとを、互いに異なる色を付して表示してもよい。
【0095】
なお、本実施形態においては、表示部5が速度制御の実行される位置を示す手法を説明したが、この手法に限定されない。例えば、田植機1がスピーカ等の音出力部を備え、音出力部は、速度制御が実行されるタイミングで音を出力する。また、表示部5による位置表示に加えて、音出力部による音出力が行われる構成であってもよい。
【0096】
また、本実施形態では、農作業機として田植機1を例に挙げて説明したが、農作業機は田植機1に限定されない。農作業機は、例えば、トラクターであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、農作業機に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0098】
1 田植機(農作業機)
2 走行部
3 施肥機(供給部)
32 繰出部
33 電動モータ(モータ)
4 測位ユニット(取得部)
5 表示部
82 制御部
A1 第1区域
A2 第2区域
AN 区域(メッシュ)
MN 施肥量
Mp 施肥マップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10