(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176840
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】膜間差圧予測方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20221122BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C02F1/44 D
B01D63/02
C02F1/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083493
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】薮野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】松本 一樹
(72)【発明者】
【氏名】塩出 賢治
(72)【発明者】
【氏名】村田 周和
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA19
4D006JA25A
4D006JA31Z
4D006JA53Z
4D006KC03
4D006KC13
4D006KC14
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006LA10
4D006MA01
4D006PA01
(57)【要約】
【課題】中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測可能な膜間差圧予測方法及び水処理装置を提供する。
【解決手段】膜間差圧予測方法は、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置における膜間差圧予測方法であって、加圧された媒体により前記中空糸膜モジュールの二次側の処理水を前記中空糸膜モジュールの一次側に押し出す逆洗工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれにおいて、前記一次側及び前記二次側のうち少なくとも一方側の圧力を3秒以下の間隔で測定することと、前記少なくとも一方側の圧力の測定結果の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測することと、前記予測の結果を報知することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置における膜間差圧予測方法であって、
加圧された媒体により前記中空糸膜モジュールの二次側の処理水を前記中空糸膜モジュールの一次側に押し出す逆洗工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれにおいて、前記一次側及び前記二次側のうち少なくとも一方側の圧力を3秒以下の間隔で測定することと、
前記少なくとも一方側の圧力の測定結果の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測することと、
前記予測の結果を報知することと、
を含む膜間差圧予測方法。
【請求項2】
前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記二次側の圧力を前記間隔で測定し、
前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した前記二次側の圧力の到達点の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測する、
請求項1に記載の膜間差圧予測方法。
【請求項3】
前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記二次側の圧力を前記間隔で測定し、
前記逆洗工程の開始時点から前記二次側の圧力が前記媒体の圧力で安定するまでの時間の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測する、
請求項1に記載の膜間差圧予測方法。
【請求項4】
前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記一次側の圧力を前記間隔で測定し、
前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した前記一次側の圧力の到達点の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測する、
請求項1に記載の膜間差圧予測方法。
【請求項5】
前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記一次側の圧力を前記間隔で測定し、
前記逆洗工程の開始時点から前記一次側の圧力が前記二次側の処理水の押し出しの終了を示す所定の終了圧力で安定するまでの時間の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測する、
請求項1に記載の膜間差圧予測方法。
【請求項6】
前記複数回の前記逆洗工程について、前記逆洗工程の開始時点から前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した前記一次側又は前記二次側の圧力が到達点に達するまでの時間、前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した前記一次側又は前記二次側の圧力が前記到達点に達してから安定するまでの時間、及び前記逆洗工程の開始時点から前記一次側又は前記二次側の圧力が安定する時点までの時間のうち、何れか一の時間における前記二次側の圧力と前記一次側の圧力との差分の積分値を算出し、
前記複数回の前記逆洗工程間における前記積分値の差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測する、
請求項1に記載の膜間差圧予測方法。
【請求項7】
前記複数回の前記逆洗工程について、前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した前記一次側及び前記二次側のうちの何れかの圧力の到達点を検出し、
前記何れかの圧力が前記到達点に達した時点における前記二次側の圧力と前記一次側の圧力との差分の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測する、
請求項1に記載の膜間差圧予測方法。
【請求項8】
中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置における膜間差圧予測方法であって、
前記中空糸膜モジュールの内部に原水を満たす充水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記充水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定することと、
前記一次側の圧力の測定結果における、前記充水工程の開始から前記一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間の、前記複数回の前記充水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測することと、
前記予測の結果を報知することと、
を含む膜間差圧予測方法。
【請求項9】
中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置における膜間差圧予測方法であって、
中空糸膜から剥離した濁質成分を含むドレン水を排水する排水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記排水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定することと、
前記一次側の圧力の測定結果における、前記排水工程の開始から前記一次側の圧力が一定になるまでの時間の、前記複数回の前記排水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測することと、
前記予測の結果を報知することと、
を含む膜間差圧予測方法。
【請求項10】
中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置であって、
加圧された媒体により前記中空糸膜モジュールの二次側の処理水を前記中空糸膜モジュールの一次側に押し出す逆洗工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれにおいて、前記一次側及び前記二次側のうち少なくとも一方側の圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、
前記少なくとも一方側の圧力の測定結果の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測する予測部と、
前記予測部による予測結果を報知する報知部と、
を備える水処理装置。
【請求項11】
中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置であって、
前記中空糸膜モジュールの内部に原水を満たす充水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記充水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、
前記一次側の圧力の測定結果における、前記充水工程の開始から前記一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間の、複数の前記充水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測する予測部と、
前記予測の結果を報知する報知部と、
を備える水処理装置。
【請求項12】
中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置であって、
中空糸膜から剥離した濁質成分を含むドレン水を排水する排水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記排水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、
前記一次側の圧力の測定結果における、前記排水工程の開始から前記一次側の圧力が一定になるまでの時間の、前記複数回の前記排水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測する予測部と、
前記予測の結果を報知する報知部と、
を備える水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜間差圧予測方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置が知られている。当該水処理装置では、中空糸膜モジュールの内部に原水を供給し、当該原水を中空糸膜に透過させることにより、中空糸膜モジュールの外部に不純物が除去された処理水を排出する。濾過を一定時間行うと、中空糸膜に不純物が付着する。これにより、中空糸膜の透過抵抗が増大し、中空糸膜モジュールの一次側(内部側)の圧力と二次側(外部側)の圧力との差分である膜間差圧が上昇する。そこで、当該水処理装置では、一般的に、濾過工程において分単位(例えば10分)で膜間差圧を測定し、膜間差圧を中空糸膜モジュールの性能指標として用いている。
【0003】
例えば、特許文献1には、濾過工程の開始時に、中空糸膜を有する分離膜モジュールの一次側入口、二次側出口及び一次側出口の圧力を測定し、この測定結果に基づき、分離膜モジュールの一次側の圧力と二次側の圧力との差分である膜ろ過差圧(膜間差圧に相当)等を算出することが記載されている。そして、膜ろ過差圧等の算出結果に基づき、分離膜モジュールの詰まり箇所を特定することが記載されている。
【0004】
また、濾過工程における膜間差圧の上昇を検出した場合に、中空糸膜における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜の透過抵抗が増大する状態になったものとして、中空糸膜モジュールの洗浄を行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、濾過工程では、通常、中空糸膜の能力を最大限利用するような流量で中空糸膜に原水を供給することはない。このため、中空糸膜の一部に不純物が付着している場合であっても、中空糸膜における不純物の付着がない箇所で原水が透過され、濾過が正常に行われることがある。この場合、中空糸膜に不純物が付着していないときと同程度の膜間差圧が測定される。したがって、従来技術では、中空糸膜の大部分に不純物が付着することによって濾過が正常に行われなくなるまで、膜間差圧の上昇を検出できない虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測可能な膜間差圧予測方法及び水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る膜間差圧予測方法は、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置における膜間差圧予測方法であって、加圧された媒体により前記中空糸膜モジュールの二次側の処理水を前記中空糸膜モジュールの一次側に押し出す逆洗工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれにおいて、前記一次側及び前記二次側のうち少なくとも一方側の圧力を3秒以下の間隔で測定することと、前記少なくとも一方側の圧力の測定結果の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測することと、前記予測の結果を報知することと、を含むものである。
【0009】
本発明の他局面に係る水処理装置は、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置であって、加圧された媒体により前記中空糸膜モジュールの二次側の処理水を前記中空糸膜モジュールの一次側に押し出す逆洗工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれにおいて、前記一次側及び前記二次側のうち少なくとも一方側の圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、前記少なくとも一方側の圧力の測定結果の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測する予測部と、前記予測部による予測結果を報知する報知部と、を備えるように構成されている。
【0010】
上記膜間差圧予測方法及び上記水処理装置では、逆洗工程において、加圧された媒体により二次側の処理水が一次側に押し出される。これにより、処理水を、中空糸膜における不純物の付着していない個所で透過させるだけでなく、不純物の付着個所に衝突させることができる。その結果、処理水に掛かる圧力を不純物の付着量に応じて変化させることができる。したがって、上記膜間差圧予測方法及び上記水処理装置によれば、中空糸膜における不純物の付着量に応じた、中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側の圧力を測定することができる。
【0011】
しかも、複数回の逆洗工程のそれぞれにおいて、濾過工程における膜間差圧の通常の測定間隔よりも短い3秒以下の間隔で前記少なくとも一方側の圧力が測定される。このため、数分以内で終了する各逆洗工程における前記少なくとも一方側の圧力の詳細な時間的推移を把握することができる。
【0012】
したがって、この詳細な時間的推移の複数回の逆洗工程間における差異から、前記少なくとも一方側の圧力の変化に応じた、中空糸膜における不純物の付着量の変化を把握することができる。このため、中空糸膜における不純物の付着量が多くなっていることを把握した場合に、今後、膜間差圧が上昇することを予測することができ、その予測結果を報知することができる。
【0013】
上記膜間差圧予測方法において、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記二次側の圧力を前記間隔で測定し、前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した前記二次側の圧力の到達点の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0014】
逆洗工程の開始直後、二次側にある処理水は、加圧された媒体によって押されて一次側に流入する。このとき、中空糸膜における処理水の透過が律速段階となり、一次側へ処理水が透過するよりも、前記媒体によって処理水が加圧される度合が大きい状況となる。このため、二次側の圧力は、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大する。当該上昇時の二次側の到達圧力は、中空糸膜における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜の透過抵抗が大きい状況である程高くなる。
【0015】
本構成によれば、複数回の逆洗工程のそれぞれにおいて、3秒以下の間隔で中空糸膜モジュールの二次側の圧力が測定されるので、各逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した二次側の圧力の到達点を検出することができる。したがって、この到達点の複数回の逆洗工程間における差異から、中空糸膜における不純物の付着量及び中空糸膜の透過抵抗の変化を把握することができる。このため、中空糸膜における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜の透過抵抗が増大している状況であることを把握した場合に、膜間差圧が上昇することを適切に予測することができる。
【0016】
上記膜間差圧予測方法において、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記二次側の圧力を前記間隔で測定し、前記逆洗工程の開始時点から前記二次側の圧力が前記媒体の圧力で安定するまでの時間の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0017】
逆洗工程において、二次側の処理水の一次側への押し出しが終了すると、二次側は加圧された媒体で満たされた状態となり、二次側の圧力が前記媒体の圧力で安定する。ここで、中空糸膜における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜の透過抵抗が大きい状況である程、二次側の処理水が全て一次側に押し出されるまでに要する時間は長くなる。このため、逆洗工程の開始時点から二次側の圧力が前記媒体の圧力で安定するまでの時間は、中空糸膜における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜の透過抵抗が大きい状況である程長くなる。
【0018】
本構成によれば、複数回の逆洗工程のそれぞれにおいて、3秒以下の間隔で中空糸膜モジュールの二次側の圧力が測定されるので、各逆洗工程の開始時点から二次側の圧力が媒体の圧力で安定するまでの時間を検出することができる。したがって、この時間の複数回の逆洗工程間における差異から、中空糸膜における不純物の付着量及び中空糸膜の透過抵抗の変化を把握することができる。このため、中空糸膜における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜の透過抵抗が増大している状況であることを把握した場合に、膜間差圧が上昇することを適切に予測することができる。
【0019】
上記膜間差圧予測方法において、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記一次側の圧力を前記間隔で測定し、前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した前記一次側の圧力の到達点の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0020】
逆洗工程が開始され、二次側の処理水が一次側に押し出された直後は、一次側の圧力が瞬時的に増大する。このとき、中空糸膜における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜の透過抵抗が大きい状況である程、二次側の処理水が一次側に押し出される速度が遅くなり、一次側の到達圧力は低下する。
【0021】
本構成によれば、複数回の逆洗工程のそれぞれにおいて、3秒以下の間隔で中空糸膜モジュールの一次側の圧力が測定されるので、各逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大する一次側の圧力の到達点を検出することができる。したがって、この到達点の複数回の逆洗工程間における差異から、中空糸膜における不純物の付着量及び中空糸膜の透過抵抗の変化を把握することができる。このため、中空糸膜における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜の透過抵抗が増大している状況であることを把握した場合に、膜間差圧が上昇することを適切に予測することができる。
【0022】
上記予測方法において、前記複数回の前記逆洗工程のそれぞれでは、少なくとも前記一次側の圧力を前記間隔で測定し、前記逆洗工程の開始時点から前記一次側の圧力が前記二次側の処理水の押し出しの終了を示す所定の終了圧力で安定するまでの時間の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0023】
逆洗工程が開始され、二次側の処理水が一次側に押し出された直後は、一次側の圧力が瞬時的に増大する。その後、中空糸膜における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜の透過抵抗が大きい状況であるほど、一次側に処理水が押し出される速度が遅くなり、二次側の処理水の押し出しを終了するまでに要する時間が長くなる。
【0024】
本構成によれば、複数回の逆洗工程のそれぞれにおいて、3秒以下の間隔で中空糸膜モジュールの一次側の圧力が測定されるので、各逆洗工程の開始時点から一次側の圧力が前記終了圧力で安定するまでの時間を検出することができる。したがって、この時間の複数回の逆洗工程間における差異から、中空糸膜における不純物の付着量及び中空糸膜の透過抵抗の変化を把握することができる。このため、中空糸膜における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜の透過抵抗が増大している状況であることを把握した場合に、膜間差圧が上昇することを適切に予測することができる。
【0025】
上記予測方法において、前記複数回の前記逆洗工程について、前記逆洗工程の開始時点から前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した前記一次側又は前記二次側の圧力が到達点に達するまでの時間、前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した前記一次側又は前記二次側の圧力が前記到達点に達してから安定するまでの時間、及び前記逆洗工程の開始時点から前記一次側又は前記二次側の圧力が安定する時点までの時間のうち、何れか一の時間における前記二次側の圧力と前記一次側の圧力との差分の積分値を算出し、前記複数回の前記逆洗工程間における前記積分値の差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0026】
本発明者は、試験運転により、中空糸膜における不純物の付着量が所定量よりも多い場合と少ない場合とで、濾過工程中の二次側の圧力と一次側の圧力との差分が略一定であっても、逆洗工程の開始時点から一次側又は二次側の圧力が安定するまでの時間における前記差分の積分値が顕著に異なることを知見した。また、発明者は、更に試験運転を行い、逆洗工程の開始時点から逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した一次側又は二次側の圧力が到達点に達するまでの時間及び逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した一次側又は二次側の圧力が前記到達点に達してから安定するまでの時間における前記積分値も、中空糸膜における不純物の付着量が所定量よりも多い場合と少ない場合とで顕著に異なることを知見した。
【0027】
したがって、本構成によれば、上記の三つの時間における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の積分値の、複数回の逆洗工程間における差異によって、中空糸膜における不純物の付着量の変化を適切に把握することができる。このため、中空糸膜における不純物の付着量が多くなっている状況であることを把握した場合に、中空糸膜の透過抵抗が増大し且つ膜間差圧が上昇することを適切に予測することができる。
【0028】
前記複数回の前記逆洗工程について、前記逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した前記一次側及び前記二次側のうちの何れかの圧力の到達点を検出し、前記何れかの圧力が前記到達点に達した時点における前記二次側の圧力と前記一次側の圧力との差分の、前記複数回の前記逆洗工程間における差異に基づいて、前記膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0029】
本構成によれば、複数回の逆洗工程について、3秒以下の間隔で、中空糸膜モジュールの一次側及び二次側のうち少なくとも一方側の圧力が測定されているので、逆洗工程の開始直後に瞬時的に上昇した一次側及び二次側のうちの何れかの圧力の到達点が検出され得る。すなわち、逆洗工程において、処理水が二次側から一次側に押し出される力によって中空糸膜表面から剥れ落ちるような不純物であったとしても、不純物が剥れ落ちることによって低下する前の前記何れかの圧力を適切に検出することができる。
【0030】
その結果、当該検出時点における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の差異を用いることにより、中空糸膜における不純物の付着量の変化を適切に把握することができる。このため、中空糸膜における不純物の付着量が多くなっている状況であることを把握した場合に、中空糸膜の透過抵抗が増大し且つ膜間差圧が上昇することを適切に予測することができる。
【0031】
本発明の他局面に係る膜間差圧予測方法は、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置における予測方法であって、前記中空糸膜モジュールの内部に原水を満たす充水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記充水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定することと、前記一次側の圧力の測定結果における、前記充水工程の開始から前記一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間の、前記複数回の前記充水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測することと、前記予測の結果を報知することと、を含むものである。
【0032】
本発明の他局面に係る水処理装置は、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置であって、前記中空糸膜モジュールの内部に原水を満たす充水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記充水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、前記一次側の圧力の測定結果における、前記充水工程の開始から前記一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間の、複数の前記充水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測する予測部と、前記予測の結果を報知する報知部と、を備えるように構成されている。
【0033】
充水工程が開始され、中空糸膜モジュールの内部に原水が流れ込むと水頭圧で一次側の圧力が次第に増大する。その後、中空糸膜モジュールの内部が満水状態に近づくと、一次側の圧力は急速に増大する。したがって、充水工程の開始から一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間は、中空糸膜モジュールの内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュールの内部の有効容積が小さい状況である程、短くなる。
【0034】
また、中空糸膜モジュールの内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュールの内部の有効容積が小さい状況である程、中空糸膜における不純物の付着量が多い状況であると推測され、つまり、膜間差圧が今後上昇する状況であると推測される。
【0035】
上記膜間差圧予測方法及び上記水処理装置では、充水工程において、中空糸膜モジュールの内部に原水が満たされるときの中空糸膜モジュールの一次側の圧力が測定される。したがって、上記膜間差圧予測方法及び上記水処理装置では、中空糸膜モジュールの内部における不純物の蓄積量に応じた、中空糸膜モジュールの一次側の圧力を測定することができる。
【0036】
しかも、上記膜間差圧予測方法及び上記水処理装置では、複数回の充水工程のそれぞれにおいて、濾過工程における膜間差圧の通常の測定間隔よりも短い3秒以下の間隔で、中空糸膜モジュールの一次側の圧力が測定される。このため、数分以内で終了する各充水工程における、中空糸膜モジュールの一次側の圧力の詳細な時間的推移を把握することができる。
【0037】
したがって、この詳細な時間的推移の複数回の充水工程間における差異から、中空糸膜モジュールの一次側の圧力の変化に応じた、中空糸膜モジュールの内部の不純物の蓄積量の変化を把握することができる。
【0038】
具体的には、複数回の充水工程間における、充水工程の開始時点から前記一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間の差異により、中空糸膜モジュールの内部の不純物の蓄積量及び有効容積の変化を把握することができる。このため、中空糸膜モジュールの内部の不純物の蓄積量が多くなり且つ中空糸膜モジュールの内部の有効容積が小さくなっている状況であることを把握した場合に、中空糸膜における不純物の付着量が多くなっている状況、つまり、膜間差圧が今後上昇する状況であることを適切に予測することができ、その予測結果を報知することができる。
【0039】
本発明の他局面に係る膜間差圧予測方法は、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置における予測方法であって、中空糸膜から剥離した濁質成分を含むドレン水を排水する排水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記排水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定することと、前記一次側の圧力の測定結果における、前記排水工程の開始から前記一次側の圧力が一定になるまでの時間の、前記複数回の前記排水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測することと、前記予測の結果を報知することと、を含むものである。
【0040】
本発明の他局面に係る水処理装置は、中空糸膜モジュールを用いて原水を濾過する水処理装置であって、中空糸膜から剥離した濁質成分を含むドレン水を排水する排水工程が複数回行われる場合に、前記複数回の前記排水工程のそれぞれにおいて、前記中空糸膜モジュールの一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する測定部と、前記一次側の圧力の測定結果における、前記排水工程の開始から前記一次側の圧力が一定になるまでの時間の、前記複数回の前記排水工程間における差異に基づいて、前記中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測する予測部と、前記予測の結果を報知する報知部と、を備えるように構成されている。
【0041】
排水工程において中空糸膜モジュールの内部のドレン水の排出が終了すると、一次側の圧力は安定する。したがって、排水工程の開始から一次側の圧力が一定になるまでの時間は、中空糸膜モジュールの内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュールの内部の有効容積が小さい状況である程、短くなる。
【0042】
また、中空糸膜モジュールの内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュールの内部の有効容積が小さい状況である程、中空糸膜における不純物の付着量が多い状況であると推測され、つまり、膜間差圧が今後上昇する状況であると推測される。
【0043】
上記膜間差圧予測方法及び上記水処理装置では、排水工程において、中空糸膜モジュールの内部のドレン水が排出されるときの中空糸膜モジュールの一次側の圧力が測定される。したがって、上記予測方法及び上記水処理装置では、中空糸膜モジュールの内部における不純物の蓄積量に応じた、中空糸膜モジュールの一次側の圧力を測定することができる。
【0044】
しかも、上記膜間差圧予測方法及び上記水処理装置では、複数回の排水工程のそれぞれにおいて、濾過工程における膜間差圧の通常の測定間隔よりも短い3秒以下の間隔で、中空糸膜モジュールの内部の一次側の圧力が測定される。このため、数分以内で終了する各排水工程における、中空糸膜モジュールの一次側の圧力の詳細な時間的推移を把握することができる。
【0045】
したがって、この詳細な時間的推移の複数回の排水工程間における差異から、中空糸膜モジュールの一次側の圧力の変化に応じた、中空糸膜モジュールの内部の不純物の蓄積量の変化を把握することができる。
【0046】
具体的には、複数回の排水工程間における、排水工程の開始から前記一次側の圧力が一定になるまでの時間の差異により、中空糸膜モジュールの内部の不純物の蓄積量及び有効容積の変化を把握することができる。このため、中空糸膜モジュールの内部の不純物の蓄積量が多くなり且つ中空糸膜モジュールの内部の有効容積が小さくなっている状況であることを把握した場合に、中空糸膜における不純物の付着量が多くなっている状況、つまり、膜間差圧が今後上昇する状況であることを適切に予測することができ、その予測結果を報知することができる。
【発明の効果】
【0047】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、中空糸膜モジュールの膜間差圧の今後の上昇を予測可能な膜間差圧予測方法及び水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】前記水処理装置における水処理方法の各工程における原水ポンプのオン/オフ及びバルブの開閉状態を示す図である。
【
図3】逆洗工程における中空糸膜モジュールの二次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図4】逆洗工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図5】中空糸膜の目詰まりが進行していないときの逆洗工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力と二次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図6】中空糸膜の目詰まりが進行しているときの逆洗工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力と二次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図7】充水工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【
図8】排水工程における中空糸膜モジュールの一次側圧力の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(実施形態)
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0050】
まず、本発明の実施形態に係る水処理装置1の構成を、
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、水処理装置1は、中空糸膜モジュール10と、原水供給部20と、バブリング用エア供給部30と、逆洗用エア供給部40とを主に備えている。
【0051】
中空糸膜モジュール10は、上端が固定部材13に固定された複数の中空糸膜11を有する中空糸膜束と、ハウジング12と、中空糸膜束の内側を上下に延びる導水管14と、散気盤15とを含む。ハウジング12内には、中空糸膜束、固定部材13及び散気盤15が収容されている。ハウジング12内の空間は、固定部材13によって原水空間S1と処理水空間S2とに仕切られている。中空糸膜11、導水管14及び散気盤15は、原水空間S1に収容されている。
【0052】
図1に示すように、ハウジング12の上部には、処理水空間S2に臨むように処理水(濾過水)の出口12Aが設けられている。ハウジング12の側部(長さ方向の中央よりも上側の部分)には、原水空間S1に臨むようにエア抜き口12Bが設けられている。ハウジング12の下部には、原水空間S1に臨むようにエア供給口12C及び排水口12Dが設けられている。これらの配管接続口(出口12A、エア抜き口12B、エア供給口12C及び排水口12D)の内径に対するハウジング12の内径の比率は、1.3以上12以下であり、2.5以上12以下であることが好ましく、3.0以上6.0以下であることがより好ましい。尚、ここでいうハウジング12の内径は、ハウジング12の長手方向に直交する方向の断面における内径である。
【0053】
導水管14は、原水空間S1に原水及びエアを供給するためのものである。
図1に示すように、導水管14は、上端部が固定部材13に固定されて端面が塞がれると共に、下端部がハウジング12の下部よりも下側に突き出ている。当該下端部に原水入口14Aとエア入口14Bとがそれぞれ設けられている。また導水管14には、導水管14の内側から原水空間S1に向かって原水及びエアの少なくとも一方を噴出するための孔14Cが多数形成されている。
【0054】
散気盤15は、原水空間S1にエアを分散させるためのものである。散気盤15は、中空糸膜束の径方向に広がる円板形状を有し、中空糸膜11の下端よりも下側に設置されている。散気盤15には、複数の通気孔(図示しない)が径方向に間隔を空けて形成されている。エア供給口12Cからハウジング12内に供給されたエアは、散気盤15の通気孔を通じて中空糸膜束に向かって分散する。
【0055】
図1に示すように、ハウジング12の出口12Aには、処理水配管50の上流端が接続されている。処理水配管50の下流端は、処理水槽(図示しない)の入口に接続されている。処理水配管50には、処理水バルブ51(開閉バルブ)とその下流側の流量計52とがそれぞれ設置されている。処理水配管50の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0056】
ハウジング12の排水口12Dには、排水配管53の上流端が接続されており、当該排水配管53には排水バルブ54(開閉バルブ)が設置されている。排水配管53の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0057】
ハウジング12のエア抜き口12Bには、エア抜き配管55の一端が接続されている。エア抜き配管55の他端側は、2本に分岐している。すなわち、エア抜き配管55は、第1分岐部55A、第2分岐部55B及び接続部55Cを含む。接続部55Cは一端部がエア抜き口12Bに接続され、他端部が第1分岐部55A及び第2分岐部55Bに接続されている。第1分岐部55Aは大気開放されており、第2分岐部55Bは排水配管53のうち排水バルブ54よりも下流側の部分に接続されている。接続部55Cには、エア抜きバルブ56(開閉バルブ)が設置されている。エア抜き配管55の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0058】
図1に示すように、処理水配管50と排水配管53とは、圧抜き配管57により互いに接続されている。圧抜き配管57の一端は、処理水配管50のうち処理水バルブ51よりも上流側の部分に接続されており、圧抜き配管57の他端は、排水配管53のうちエア抜き配管55の接続部よりも下流側の部分に接続されている。圧抜き配管57には、圧抜きバルブ58(開閉バルブ)が設置されている。圧抜き配管57の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0059】
原水供給部20は、原水配管21と、原水配管21に設置された原水ポンプ22及び原水バルブ23とを含む。原水配管21は、上流端が原水槽(図示しない)の出口に接続されると共に、下流端が導水管14の原水入口14Aに接続されている。原水配管21の径は、ハウジング12の径よりも小さい。原水バルブ23は、開閉バルブであり、原水配管21のうち原水ポンプ22よりも下流側に設置されている。
【0060】
バブリング用エア供給部30は、エア配管31と、第1エアバルブ32と、第2エアバルブ33と、流量計34とを含む。エア配管31は、下流端側が分岐しており、各分岐部分がハウジング12のエア供給口12C及び導水管14のエア入口14Bにそれぞれ接続されている。エア配管31の径は、ハウジング12の径よりも小さい。第1エアバルブ32及び第2エアバルブ33は、開閉バルブであり、エア配管31の各分岐部分にそれぞれ設置されている。エア配管31の上流端は、エアコンプレッサ(図示しない)に接続されている。
【0061】
逆洗用エア供給部40は、エア配管41と、エア配管41に設置されたエアバルブ42(開閉バルブ)とを含む。エア配管41は、上流端がエアコンプレッサ(図示しない)に接続されると共に、下流端が処理水配管50のうち圧抜き配管57の接続部よりも上流側の部分に接続されている。エア配管41の径は、ハウジング12の径よりも小さい。
【0062】
水処理装置1は、中空糸膜モジュール10の逆洗工程において、中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側のうち少なくとも一方側の圧力を3秒以下の間隔(例えば、2秒以下や1秒以下の間隔)で測定する測定部60を更に備える。本実施形態における測定部60は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する一次側圧力センサ61と、中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する二次側圧力センサ62とを含む。
【0063】
図1に示すように、一次側圧力センサ61は、原水配管21のうち原水バルブ23と原水入口14Aとの間の部分に設置されている。尚、一次側圧力センサ61は、導水管14におけるハウジング12から延出されている部分又はハウジング12における原水空間S1に臨む位置に設置されてもよい。
【0064】
二次側圧力センサ62は、処理水配管50とエア配管41との接続部に設置されている。本実施形態における一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62は、0.1秒以下の間隔で圧力測定を行い、その測定データは後述の制御部70に送られて記憶される。つまり、各測定データはロギングデータとして記憶される。
【0065】
尚、一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62に加えてエア抜き口圧力センサが設けられていてもよい。エア抜き口圧力センサは、エア抜き配管55における接続部55Cに設置される。エア抜き口圧力センサは、0.1秒以上3秒以下の間隔で圧力測定を行い、各測定データは後述の制御部70に送られて記憶される。つまり、エア抜き口圧力センサの測定データは、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を示すロギングデータとして記憶される。ただし、圧力センサの数が増えるほど、解析に手間がかかり、またコストが上がるなどの問題があるため、エア抜き口圧力センサを省略し、一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62からのデータを用いてデータ解析することが望ましい。
【0066】
水処理装置1は、制御部70を更に備える。制御部70は、CPU、RAM及びROM等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。制御部70は、濾過運転の実行を制御する。具体的には、制御部70は、ROM等に格納されたシーケンス情報にしたがって、濾過の運転サイクルを構成する各工程を順次実行する。制御部70は、各工程の実行を開始すると、ROM等に格納された工程情報にしたがって、実行する工程に応じた周辺装置の駆動制御及びバルブの開閉制御を行う。
【0067】
制御部70の機能には、予測部71及び報知部72が含まれる。予測部71は、測定部60による圧力測定の結果に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の上昇を予測する。中空糸膜モジュール10の膜間差圧とは、中空糸膜モジュール10の二次側の圧力と一次側の圧力との差圧であり、二次側の圧力から一次側の圧力を減算することによって得られる。報知部72は、予測部71による評価の結果を報知する。
【0068】
尚、予測部71及び報知部72は、制御部70の一機能として実現されていなくてもよい。制御部70、予測部71及び報知部72が、それぞれ個別のマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
【0069】
図2は、上記水処理装置1を用いて実施される水処理方法の各工程を示すと共に、各工程における原水ポンプ22のオン/オフ状態及び各バルブの開閉状態を示している。
図2中の丸印は、原水ポンプ22のオン状態又はバルブの開状態を示し、空欄は、原水ポンプ22のオフ状態又はバルブの閉状態を示している。
【0070】
まず、第1充水工程では、原水ポンプ22が作動し、原水バルブ23及びエア抜きバルブ56がそれぞれ開放される。これにより、原水配管21を通じて導水管14内に原水が供給され、孔14Cから原水空間S1に原水が供給される。
【0071】
第1充水工程が終了すると濾過工程に移る。濾過工程では、エア抜きバルブ56が閉じられると共に、処理水バルブ51が開放される。原水は、中空糸膜11の外面から内面に向かって膜壁を透過し、膜の中空部を通じて処理水空間S2に流入する。その後、処理水が出口12Aを通してハウジング12の外に流出し、処理水配管50を通じて処理水槽(図示しない)に回収される。
【0072】
濾過工程後には、濾過中に中空糸膜11の外面に付着した不純物を除去する物理洗浄が実施される。物理洗浄には、逆洗準備工程(圧抜き工程)、逆洗工程、エア抜き工程、第2充水工程、散気盤バブリング工程、第3充水工程、導水管バブリング工程、排水工程及び圧抜き工程が含まれる。
【0073】
まず、逆洗準備工程(圧抜き工程)では、原水ポンプ22がオンからオフに切り替わる。
【0074】
次に、逆洗工程では、原水バルブ23及び処理水バルブ51が閉じられると共に、エアバルブ42及び排水バルブ54が開放される。すなわち、エアバルブ42の開放と同時に中空糸膜モジュール10の二次側の処理水に、コンプレッサによって加圧されたエアの圧力が瞬間的に付加される。これにより、中空糸膜モジュール10の二次側の処理水が、所定圧力に加圧されたエア(媒体)によって加圧され、処理水は中空糸膜11の内面から外面に向かって膜壁を透過する。これにより、中空糸膜11の外面に付着した不純物は剥がれ落ちやすい状態になる。このとき、一次側圧力センサ61及び二次側圧力センサ62が3秒以下の間隔で圧力測定を行っているため、中空糸膜11が内面から加圧された後であって、膜表面の不純物が剥がれ落ちやすい状態になる前の状態の圧力をも検知することができる。尚、上記の所定圧力は、30kPa~500kPaであることが好ましく、50kPa~300kPaであることがより好ましく、50kPa~200kPaであることが最も好ましい。
【0075】
逆洗工程において、二次側圧力センサ62は、中空糸膜モジュール10の二次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する。これにより、逆洗工程中における中空糸膜モジュール10の二次側圧力の時間変化を示すロギングデータ(
図3)が得られる。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の二次側圧力を示している。
図3中のグラフG31は、直近の逆洗工程の直前の逆洗工程中における中空糸膜モジュール10の二次側圧力の時間変化を示している。
図3中のグラフG32は、直近の逆洗工程中における中空糸膜モジュール10の二次側圧力の時間変化を示している。つまり、グラフG31は、グラフG32の一回前の逆洗工程中における二次側圧力の時間変化を示している。
【0076】
逆洗工程の開始直後、二次側にある処理水は、加圧されたエアによって急激に押されて一次側に流入する。このとき、中空糸膜11における処理水の透過が律速段階となり、一次側へ処理水が透過するよりも、エアによって処理水が加圧される度合が大きい状況となる。このため、二次側の圧力は、逆洗工程の開始直後に増大する。そして、処理水が一次側に押し出される力で中空糸膜11の表面に付着していた不純物の一部が剥がれ落ちる又は剥がれ易い状態となることで、二次側の圧力は、瞬時的に低下する又は維持される。その後、二次側の圧力はエアによる加圧によって再び増大する。このようにして、二次側の圧力は、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大する。当該増大時の二次側の到達圧力は、中空糸膜11における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜11の透過抵抗が大きい状況である程高くなる。
【0077】
予測部71は、制御部70に記憶されたロギングデータを参照し、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した二次側の圧力の到達点の、複数回の逆洗工程間における差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測する。複数回の逆洗工程とは、例えば、直近の逆洗工程と当該直近の逆洗工程の直前に行われた逆洗工程であってもよいし、直近の逆洗工程と当該直近の逆洗工程よりも過去に行われた複数回の逆洗工程であってもよい。
【0078】
具体的には、予測部71は、複数回の逆洗工程間において、逆洗工程の開始直後における二次側の到達圧力が上昇傾向を示す場合、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜11の透過抵抗が増大している状況であるため、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測する。
【0079】
図3の例では、直近の逆洗工程の開始直後における二次側の到達圧力P32が、当該直近の逆洗工程の直前の逆洗工程の開始直後における二次側の到達圧力P31よりも上昇している。このため、予測部71は、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測する。
【0080】
また、逆洗工程において、二次側の処理水の一次側への押し出しが終了すると、二次側は加圧されたエアで満たされた状態となり、二次側の圧力がエアの圧力で安定する。ここで、中空糸膜11における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜11の透過抵抗が大きい状況である程、二次側の処理水が全て一次側に押し出されるまでに要する時間は長くなる。このため、逆洗工程の開始時点から二次側の圧力がエアの圧力で安定するまでの時間は、中空糸膜11における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜11の透過抵抗が大きい状況である程長くなる。
【0081】
尚、圧力が安定するとは、例えば、上昇中の圧力が、圧力の上昇の傾きが減少する変曲点に到達すること、減少中の圧力が、圧力の減少の傾きが増大する変曲点に到達すること、又は上昇中若しくは減少中の圧力が、所定時間以上継続して所定の許容範囲内で変動する状態になることを示す。
【0082】
このため、予測部71は、制御部70に記憶されたロギングデータを参照し、逆洗工程の開始時点から二次側の圧力がエアの圧力で安定するまでの時間の、複数回の逆洗工程における差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0083】
具体的には、複数回の逆洗工程間において、逆洗工程の開始時点から二次側の圧力がエアの圧力で安定するまでの時間が増加傾向を示しているとする。この場合、予測部71は、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜11の透過抵抗が増大している状況であるため、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測する。
【0084】
図3の例では、直近の逆洗工程の開始時点から二次側の圧力がエアの圧力で安定するまでの時間t32が、当該直近の逆洗工程の直前の逆洗工程の開始時点から二次側の圧力がエアの圧力で安定するまでの時間t31よりも増加している。このため、予測部71は、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測する。
【0085】
また、逆洗工程において、一次側圧力センサ61は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する。これにより、逆洗工程中における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示すロギングデータ(
図4)が得られる。
【0086】
尚、上述のように、エア抜き口圧力センサによって中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定するとする。この場合、予測部71は、一次側圧力センサ61及びエア抜き口圧力センサのそれぞれから受信したロギングデータが示す一次側の圧力の平均値を示すデータを、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を示すロギングデータとして使用してもよい。
【0087】
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側圧力を示している。
図4中のグラフG41は、直近の逆洗工程の直前の逆洗工程中における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示している。
図4中のグラフG42は、直近の逆洗工程中における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示している。
【0088】
図4に示すように、逆洗工程が開始され、二次側の処理水が一次側に押し出された直後は、排水配管53の径がハウジング12に比べて小さいため、一次側の原水が排水配管53に流入する際に発生する管路抵抗で一次側の圧力が瞬時的に増大する。このとき、中空糸膜11における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜11の透過抵抗が大きい状況である程、二次側の処理水が一次側に押し出される速度が遅くなり、一次側の到達圧力は低下する。
【0089】
このため、予測部71は、制御部70に記憶されたロギングデータを参照し、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の圧力の到達点の、複数回の逆洗工程における差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0090】
具体的には、複数回の逆洗工程において、逆洗工程の開始直後における一次側の到達圧力が減少傾向を示しているとする。この場合、予測部71は、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜11の透過抵抗が増大している状況であるため、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測してもよい。
【0091】
図4の例では、直近の逆洗工程の開始直後における一次側の到達圧力P42が、当該直近の逆洗工程の直前の逆洗工程の開始直後における一次側の到達圧力P41よりも減少している。このため、予測部71は、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測する。
【0092】
また、逆洗工程が開始され、二次側の処理水が一次側に押し出された直後に一次側の圧力が瞬時的に増大した後は、中空糸膜11における不純物の付着量が多く且つ中空糸膜11の透過抵抗が大きい状況であるほど、一次側に処理水が押し出される速度が遅くなり、二次側の処理水の押し出しを終了するまでに要する時間が長くなる。
【0093】
このため、予測部71は、制御部70に記憶されたロギングデータを参照し、逆洗工程の開始時点から一次側の圧力が二次側の処理水の押し出しの終了を示す所定の終了圧力(例えば、0kPa)で安定するまでの時間の、複数回の逆洗工程間における差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0094】
具体的には、複数回の逆洗工程において、逆洗工程の開始時点から一次側の圧力が終了圧力で安定するまでの時間が増加傾向を示しているとする。この場合、予測部71は、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなり且つ中空糸膜11の透過抵抗が増大している状況であるため、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測してもよい。
【0095】
図4の例では、直近の逆洗工程の開始時点から一次側の圧力が終了圧力で安定するまでの時間t42が、当該直近の逆洗工程の直前の逆洗工程の開始時点から一次側の圧力が終了圧力で安定するまでの時間t41よりも増加している。このため、予測部71は、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測する。
【0096】
また、本発明者は、試験運転を行い、中空糸膜11における不純物の付着量が所定量よりも少ないときの逆洗工程(以降、第一の逆洗工程)と、中空糸膜11における不純物の付着量が所定量よりも多いときの逆洗工程(以降、第二の逆洗工程)と、のそれぞれにおいて取得したロギングデータ(
図5、
図6)を用いて、逆洗工程の開始時点から一次側の圧力が安定する時点までの時間における、二次側の圧力と一次側の圧力との差分の積分値を算出した。
【0097】
図5及び
図6において、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側の圧力を示している。
図5中のグラフG51は、第一の逆洗工程における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示している。
図5中のグラフG52は、第一の逆洗工程における中空糸膜モジュール10の二次側の圧力の時間変化を示している。
図6中のグラフG61は、第二の逆洗工程における中空糸膜モジュール10の一次側圧力の時間変化を示している。
図6中のグラフG62は、第二の逆洗工程における中空糸膜モジュール10の二次側圧力の時間変化を示している。
【0098】
次に、本発明者は、第一の逆洗工程において取得した
図5に示すロギングデータを用いて、第一の逆洗工程の開始時点t50から一次側の圧力が安定する時点t51までの時間t50~t51(以降、対象時間)における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の積分値を算出した。尚、
図5において、対象時間t50~t51における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の積分値とは、第一の逆洗工程の開始時点t50を示す一点鎖線と、一次側の圧力が安定する時点t51を示す一点鎖線と、グラフG52と、グラフG51と、で囲まれる領域の面積に相当する。
【0099】
同様にして、本発明者は、第二の逆洗工程において取得した
図6に示すロギングデータを用いて、第二の逆洗工程の開始時点t60から一次側の圧力が安定する時点t61までの時間t60~t61を対象時間とし、当該対象時間t60~t61における、二次側の圧力と一次側の圧力との差分の積分値を算出した。
【0100】
そして、本発明者は、第一の逆洗工程後に行われた濾過工程における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の測定結果と、第二の逆洗工程後に行われた濾過工程における前記差分の測定結果と、前記積分値の算出結果と、を比較した。その結果、本発明者は、中空糸膜11における不純物の付着量が所定量よりも多い場合と少ない場合とで、濾過工程中の二次側の圧力と一次側の圧力との差分が略一定であっても、前記所定期間における前記積分値は、中空糸膜11における不純物の付着量が所定量よりも多い場合と少ない場合とで顕著に異なることを知見した。
【0101】
これは、逆洗工程の開始時点から逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の圧力が到達点に達するまでの時間及び逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の圧力が前記到達点に達してから安定するまでの時間が、中空糸膜11における不純物の付着量が多い程、長くなることに起因すると推測される。
【0102】
そこで、同様にして、本発明者は、対象時間を、第一の逆洗工程の開始時点t50から、第一の逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の圧力が到達点P51に達するまでの時間に変更して前記積分値を算出した。また、本発明者は、対象時間を、第二の逆洗工程の開始時点t60から、第二の逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の圧力が到達点P61に達するまでの時間に変更して前記積分値を算出した。この場合にも、本発明者は、上記と同様の知見を得た。
【0103】
本発明者は、対象時間を、第一の逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の圧力が到達点P51に達してから安定する時点t51までの時間に変更して前記積分値を算出し、対象時間を、第二の逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の圧力が到達点P61に達してから安定する時点t61までの時間に変更して前記積分値を算出した。この場合にも、本発明者は、上記と同様の知見を得た。
【0104】
更に、本発明者は、対象時間を、第一の逆洗工程の開始時点t50から二次側の圧力が安定する時点t52までの時間に変更して前記積分値を算出し、対象時間を、第二の逆洗工程の開始時点t60から二次側の圧力が安定する時点t62までの時間に変更して前記積分値を算出した。この場合にも、本発明者は、上記と同様の知見を得た。
【0105】
本発明者は、対象時間を、第一の逆洗工程の開始時点t50から、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した二次側の圧力が到達点P52になるまでの時間に変更して前記積分値を算出し、対象時間を、第二の逆洗工程の開始時点t60から、第二の逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した二次側の圧力が到達点P62になるまでの時間に変更して前記積分値を算出した。この場合にも、本発明者は、上記と同様の知見を得た。
【0106】
本発明者は、対象時間を、第一の逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した二次側の圧力が到達点P52に達してから安定する時点t52までの時間に変更して前記積分値を算出し、対象時間を、第二の逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した二次側の圧力が到達点P62に達してから安定する時点t62までの時間に変更して前記積分値を算出した。この場合にも、本発明者は、上記と同様の知見を得た。
【0107】
また、本発明者は、中空糸膜11における不純物の付着量が多い状況である程、上記の各対象時間における前記積分値が大きくなることを知見した。
【0108】
そこで、本発明者が得た上記知見に基づき、予測部71が、複数回の逆洗工程について、逆洗工程の開始時点から逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側又は二次側の圧力が到達点に達するまでの時間、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側又は二次側の圧力が到達点に達してから安定するまでの時間、及び逆洗工程の開始時点から一次側又は二次側の圧力が安定する時点までの時間のうち、何れか一の時間における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の積分値を算出するようにしてもよい。そして、予測部71が、前記複数回の逆洗工程間における前記積分値の差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測するようにしてもよい。
【0109】
具体的には、複数回の逆洗工程において算出した前記積分値が増加傾向を示しているとする。この場合、予測部71は、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなっている状況であるため、中空糸膜11の透過抵抗が増大し且つ中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測してもよい。
【0110】
また、上述のように、逆洗工程の開始直後、二次側の圧力は、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大する。このとき、二次側の到達圧力は、中空糸膜11における不純物の付着量が多い程高くなる。また、二次側の圧力が増大するにつれて処理水の透過速度が上昇し、中空糸膜11の外面に付着していたファウリング成分は剥がれ落ちやすい状態になる。その後、中空糸膜11の外面に付着したファウリング成分の一部が剥離される際に、二次側の圧力は瞬時的に低下するが、エアによる加圧によって再び増大する。これにより、処理水が一次側へ押し出される速度が上昇する。
【0111】
一方、二次側の処理水が一次側に押し出された直後において、一次側の原水が排水配管53に流入する際に発生する管路抵抗で一次側の圧力が瞬時的に増大する。このとき、中空糸膜11における不純物の付着量が多い程、二次側の処理水が一次側に押し出される速度は遅くなる。このため、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側の到達圧力は、中空糸膜11における不純物の付着量が多い程低くなる。その後、中空糸膜11の外面に付着した不純物の一部が剥離され、処理水が一次側へ押し出される速度が上昇するようになると、一次側の水が排出される速度も上昇し、一次側の圧力は急速に低下する。
【0112】
つまり、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側又は二次側の圧力が到達点に達し、中空糸膜11の外面に付着した不純物の一部が剥離される直前において、二次側の圧力と一次側の圧力との差分は、中空糸膜11における不純物の付着量が多い程大きくなる。
【0113】
このため、予測部71は、制御部70に記憶されたロギングデータを参照し、複数回の逆洗工程について、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側及び二次側のうちの何れかの圧力の到達点を検出してもよい。そして、予測部71は、前記何れかの圧力が到達点に達した時点における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の、前記複数回の逆洗工程間における差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0114】
具体的には、複数回の逆洗工程間における、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した前記何れかの圧力が到達点に達した時点における二次側の圧力と一次側の圧力との差分が上昇傾向を示しているとする。この場合、予測部71は、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなっている状況であるため、中空糸膜11の透過抵抗が増大し且つ中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測してもよい。
【0115】
この場合、複数回の逆洗工程について、3秒以下の間隔で、中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側のうち少なくとも一方側の圧力が測定されているので、逆洗工程の開始直後に瞬時的に増大した一次側及び二次側のうちの何れかの圧力の到達点が検出され得る。すなわち、逆洗工程において、処理水が二次側から一次側に押し出される力によって中空糸膜表面から剥れ落ちるような不純物であったとしても、不純物が剥れ落ちることによって低下する前の前記何れかの圧力を適切に検出することができる。その結果、当該検出時点における二次側の圧力と一次側の圧力との差分の差異を用いることにより、中空糸膜11における不純物の付着量の変化を適切に把握することができる。このため、予測部71は、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなっている状況であることを把握した場合に、中空糸膜11の透過抵抗が増大し且つ中空糸膜モジュール10の膜間差圧が上昇することを適切に予測することができる。
【0116】
予測部71によって中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇が予測されると、報知部72は、予測部71による予測の結果を報知する。
【0117】
具体的には、報知部72は、水処理装置1に備えられた通信装置(図示しない)を用いて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測したことを示すメッセージを含む電子メールを、水処理装置1の管理者が所有するパソコン、タブレット端末及びスマートフォン等の情報処理装置に送信する。予測部71による予測の結果は、上記メッセージに限らず、予測部71が予測に使用したロギングデータ(
図3)を含んでもよい。
【0118】
また、水処理装置1にスピーカー等の音声出力装置を備えるようにし、報知部72が、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測したことを示す音声を当該音声出力装置に出力させてもよい。また、水処理装置1に液晶ディスプレイ等の表示装置を備えるようにし、報知部72は、上記メッセージや予測部71が予測に使用したロギングデータ(
図3)を当該表示装置に表示するようにしてもよい。又は、報知部72は、これらの通信装置、音声出力装置及び表示装置を二以上組み合わせて、当該二以上の装置に予測部71による予測の結果を報知させてもよい。
【0119】
次に、エア抜き工程(圧抜き工程)では、エアバルブ42及び排水バルブ54が閉じられると共に、圧抜きバルブ58が開放される。これにより、中空糸膜モジュール10の二次側に溜まっているエアが圧抜き配管57を通して排出される。
【0120】
次に、第2充水工程では、第1充水工程と同様に、原水ポンプ22が作動し、原水バルブ23及びエア抜きバルブ56がそれぞれ開放される。
【0121】
次に、散気盤バブリング工程では、原水ポンプ22がオンからオフに切り替わり、原水バルブ23が閉じられると共に、第1エアバルブ32が開放される。尚、エア抜きバルブ56は開放されたままに維持される。これにより、エア供給口12Cからハウジング12内にエアが供給され、当該エアが散気盤15により中空糸膜束に向かって分散する。これにより、中空糸膜束が気泡によって揺動し、膜表面に付着した不純物が剥がれ落ちる。
【0122】
次に、第3充水工程では、第1及び第2充水工程と同様に、原水ポンプ22が作動し、原水バルブ23及びエア抜きバルブ56がそれぞれ開放される。これにより、散気盤バブリング工程で排水された分の原水がハウジング12内に補充される。
【0123】
次に、導水管バブリング工程では、原水ポンプ22がオンからオフに切り替わり、原水バルブ23が閉じられ、第2エアバルブ33が開放される。これにより、コンプレッサによる加圧エアが、エア入口14Bから導水管14内に供給され、孔14Cを通じて原水空間S1に供給される。これにより、中空糸膜束がバブリング洗浄される。
【0124】
次に、排水工程では、エア抜きバルブ56が閉じられると共に、排水バルブ54が開放される。尚、第2エアバルブ33は開放されたまま維持される。これにより、原水空間S1内の原水がエアにより押され、排水口12Dからハウジング12の外に排出される。
【0125】
最後に、圧抜き工程では、排水バルブ54が開放されたままで第2エアバルブ33が閉じられる。これにより、ハウジング12内(原水空間S1)のエア抜きが行われる。以上のプロセスによって中空糸膜モジュール10が物理洗浄された後、第1充水工程に戻り、濾過運転が再開される。
【0126】
尚、予測部71が中空糸膜モジュール10の膜間差圧の上昇を予測するタイミングは特に限定されず、例えば、
図2の運転サイクルを行う毎にでもよいし、
図2の運転サイクルを複数回(例えば、10回)繰り返す毎にでもよいし、1日に1回でもよいし、1週間に1回でもよいし、1か月に1回でもよい。この頻度は、原水の種類(例えば、河川水、排水又は下水)や季節等に応じて適宜決定すればよい。
【0127】
また、逆洗工程では、所定圧力に加圧されたエアに代えて、所定圧力に加圧された透過液によって2次側の処理水を加圧してもよい。尚、透過液には、薬剤を注入してもよい。
【0128】
以上の通り、本実施形態に係る水処理装置1では、中空糸膜モジュール10の逆洗工程において、加圧されたエアにより二次側の処理水が一次側に押し出される。これにより、処理水を、中空糸膜11における不純物の付着していない個所で透過させるだけでなく、不純物の付着個所に衝突させることができる。その結果、処理水に掛かる圧力を不純物の付着量に応じて変化させることができる。したがって、中空糸膜11における不純物の付着量に応じた、中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側のうち少なくとも一方側の圧力を測定することができる。
【0129】
しかも、複数回の逆洗工程のそれぞれにおいて、濾過工程における膜間差圧の通常の測定間隔よりも短い3秒以下の間隔で、中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側のうち少なくとも一方側の圧力が測定される。このため、数分以内で終了する各逆洗工程における前記少なくとも一方側の圧力の詳細な時間的推移を把握することができる。
【0130】
したがって、この詳細な時間的推移の複数回の逆洗工程間における差異から、前記少なくとも一方側の圧力の変化に応じた、中空糸膜11における不純物の付着量の変化を把握することができる。このため、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなっていることを把握した場合に、今後、膜間差圧が上昇することを予測することができ、その予測結果を報知することができる。
【0131】
尚、報知部72が予測部71による予測結果を報知するタイミングは特に限定されない。報知部72は、予測部71によって膜間差圧の今後の上昇の予測が行われる度に予測結果を報知してもよいし、予測部71によって膜間差圧の今後の上昇の予測が所定回数行われる度に所定回数分の予測結果をまとめて報知してもよい。
【0132】
(変形実施形態)
以上、本発明に係る膜間差圧予測方法及び水処理装置の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記のような変形実施形態を採用することができる。
【0133】
(1)上記実施形態では、測定部60が、複数回の逆洗工程のそれぞれにおいて中空糸膜モジュール10の一次側及び二次側の圧力を測定し、当該測定結果の複数回の逆洗工程間における差異に基づいて、予測部71が中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測する例について説明した。しかし、これに限らず、測定部60が、複数回の第1充水工程のそれぞれにおいても、上記実施形態における逆洗工程と同様にして、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定するようにしてもよい。又は、測定部60が、複数回の第1充水工程のそれぞれにおいてのみ、上記実施形態における逆洗工程と同様にして、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定するようにしてもよい。そして、予測部71が、当該測定結果の複数回の第1充水工程間における差異に基づいて、予測部71が中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測するようにしてもよい。
【0134】
具体的には、第1充水工程において、一次側圧力センサ61は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する。これにより、第1充水工程中における中空糸膜モジュール10の一次側の圧力の時間変化を示すロギングデータ(
図7)が得られる。
図7のグラフ中、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を示している。
【0135】
図7に示すように、第1充水工程が開始され(
図7中の時点t70)、中空糸膜モジュール10の内部に原水が流れ込むと、一次側の圧力は、中空糸膜モジュール10の内部における水頭圧によって次第に増大する。その後、中空糸膜モジュール10の内部が満水状態に近づくと(
図7中の時点t71)、エア抜き配管55に原水が流入する。その際、エア抜き配管55の口径がハウジング12の径よりも小さいために管路抵抗が発生し、一次側の圧力が急速に増大する。したがって、
図7中の両矢印で示す、第1充水工程の開始から一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間t70~t71は、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さい状況である程、短くなる。
【0136】
また、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さい状況である程、中空糸膜11における不純物の付着量が多い状況であると推測され、つまり、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇する状況であると推測される。
【0137】
このため、予測部71は、制御部70に記憶されたロギングデータ(
図7)を参照し、第1充水工程の開始から一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間(
図7中のt70~t71)の、複数回の第1充水工程間における差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0138】
具体的には、複数回の第1充水工程間において、第1充水工程の開始から一次側の圧力の変化の変曲点に到達するまでの時間(
図7中のt70~t71)が減少傾向を示しているとする。この場合、予測部71は、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量が多くなり且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さくなっている状況であるため、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測してもよい。
【0139】
以上の通り、本変形実施形態では、第1充水工程において、中空糸膜モジュール10の内部に原水が満たされるときの中空糸膜モジュール10の一次側の圧力が測定される。したがって、本変形実施形態では、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量に応じた、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を測定することができる。
【0140】
しかも、本変形実施形態では、複数回の第1充水工程のそれぞれにおいて、濾過工程における膜間差圧の通常の測定間隔よりも短い3秒以下の間隔で、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力が測定される。このため、数分以内で終了する各第1充水工程における、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力の詳細な時間的推移を把握することができる。
【0141】
したがって、この詳細な時間的推移の複数回の第1充水工程間における差異から、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力の変化に応じた、中空糸膜モジュール10の内部の不純物の蓄積量の変化を把握することができる。
【0142】
具体的には、複数回の第1充水工程間における、第1充水工程の開始時点t70(
図7)から一次側の圧力の変化の変曲点に到達する時点t71(
図7)までの時間t70~t71(
図7)の差異により、中空糸膜モジュール10の内部の不純物の蓄積量及び有効容積の変化を把握することができる。このため、中空糸膜モジュール10の内部の不純物の蓄積量が多くなり且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さくなっている状況であることを把握した場合に、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなっている状況、つまり、膜間差圧が今後上昇する状況であることを適切に予測することができ、その予測結果を報知することができる。
【0143】
(2)上記変形実施形態では、測定部60が、複数回の第1充水工程のそれぞれにおいて中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を測定し、当該測定結果の複数回の第1充水工程間における差異に基づいて、予測部71が中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測する例について説明した。これと同様にして、測定部60が、複数回の排水工程のそれぞれにおいても、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定するようにしてもよい。又は、測定部60が、複数回の排水工程のそれぞれにおいてのみ、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定するようにしてもよい。そして、予測部71が、当該測定結果の複数回の排水工程間における差異に基づいて、予測部71が中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測するようにしてもよい。
【0144】
具体的には、排水工程において、一次側圧力センサ61は、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を3秒以下の間隔で測定する。これにより、排水工程中における中空糸膜モジュール10の一次側の圧力の時間変化を示すロギングデータ(
図8)が得られる。
図8のグラフ中、横軸は時間を示し、縦軸は中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を示している。
【0145】
図8に示すように、排水工程が開始されると(
図8中の時点t80)、中空糸膜モジュール10の内部のドレン水が排水配管53(
図1)を通して排出される。その後、中空糸膜モジュール10の内部のドレン水の排出が終了すると(
図8中の時点t81)、一次側の圧力は、ドレン水の排出の終了を示す0KPa付近の所定の排水終了圧力で安定する。したがって、
図8中の両矢印で示す、排水工程の開始から一次側の圧力が一定になるまでの時間t80~t81は、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さい状況である程、短くなる。
【0146】
また、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量が多く且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さい状況である程、中空糸膜11における不純物の付着量が多い状況であると推測され、つまり、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇する状況であると推測される。
【0147】
このため、予測部71は、制御部70に記憶されたロギングデータ(
図8)を参照し、排水工程の開始から一次側の圧力が一定になるまでの時間(
図8中のt80~t81)の、複数回の排水工程間における差異に基づいて、中空糸膜モジュール10の膜間差圧の今後の上昇を予測してもよい。
【0148】
具体的には、複数回の排水工程間において、排水工程の開始から一次側の圧力が一定になるまでの時間(
図8中のt80~t81)が減少傾向を示しているとする。この場合、予測部71は、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量が多くなり且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さくなっている状況であるため、中空糸膜モジュール10の膜間差圧が今後上昇すると予測してもよい。
【0149】
以上の通り、本変形実施形態では、排水工程において、中空糸膜モジュール10の内部のドレン水が排出されるときの中空糸膜モジュール10の一次側の圧力が測定される。したがって、本変形実施形態では、中空糸膜モジュール10の内部における不純物の蓄積量に応じた、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力を測定することができる。
【0150】
しかも、本変形実施形態では、複数回の排水工程のそれぞれにおいて、濾過工程における膜間差圧の通常の測定間隔よりも短い3秒以下の間隔で、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力が測定される。このため、数分以内で終了する各排水工程における、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力の詳細な時間的推移を把握することができる。
【0151】
したがって、本変形実施形態によれば、この詳細な時間的推移の複数回の排水工程間における差異から、中空糸膜モジュール10の一次側の圧力の変化に応じた、中空糸膜モジュール10の内部の不純物の蓄積量の変化を把握することができる。
【0152】
具体的には、複数回の排水工程間における、排水工程の開始時点t80(
図8)から前記一次側の圧力が一定になる時点t81(
図8)までの時間t80~t81(
図8)の差異により、中空糸膜モジュール10の内部の不純物の蓄積量及び有効容積の変化を把握することができる。このため、中空糸膜モジュール10の内部の不純物の蓄積量が多くなり且つ中空糸膜モジュール10の内部の有効容積が小さくなっている状況であることを把握した場合に、中空糸膜11における不純物の付着量が多くなっている状況、つまり、膜間差圧が今後上昇する状況であることを適切に予測することができ、その予測結果を報知することができる。
【0153】
今回開示された実施形態及びその変形実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0154】
1 :水処理装置
10 :中空糸膜モジュール
11 :中空糸膜
60 :測定部
71 :予測部
72 :報知部