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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176892
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】汚染水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
C02F1/72 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069074
(22)【出願日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2021083260
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】森 一星
(72)【発明者】
【氏名】緒方 浩基
(72)【発明者】
【氏名】晴山 渉
【テーマコード(参考)】
4D050
【Fターム(参考)】
4D050AA12
4D050AB13
4D050BB13
4D050BB14
4D050BC06
4D050BD02
(57)【要約】
【課題】簡易かつ効率よく汚染水を処理できる汚染水の処理方法の提供。
【解決手段】1,4-ジオキサンを含有する汚染水と酸化剤とを混合して混合物を形成する混合工程と、前記混合物をコンクリート類、鉄鋼スラグ、フライアッシュからなる群から選択される1以上に接触させる接触工程と、を有し、前記汚染水が、1,4-ジオキサンの酸化反応を阻害するマンガン及び塩化物イオンを更に含有していてもよい汚染水の処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ジオキサンを含有する汚染水と酸化剤とを混合して混合物を形成する混合工程と、
前記混合物をコンクリート類、鉄鋼スラグ、フライアッシュからなる群から選択される1以上に接触させる接触工程と、を有する汚染水の処理方法。
【請求項2】
前記汚染水が、マンガン及び塩化物イオンを更に含有する請求項1に記載の汚染水の処理方法。
【請求項3】
前記コンクリート類はポーラスコンクリートである、請求項1または2に記載の汚染水の処理方法。
【請求項4】
前記コンクリート類はコンクリートガラである、請求項1または2に記載の汚染水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機汚染物質による地下水の汚染が問題となっている。有機汚染物質の一例として、非プロトン性溶媒としてよく用いられる1,4-ジオキサンが挙げられる。
1,4-ジオキサンは、溶媒の用途に用いた後の廃液以外にも、界面活性剤の合成の際の副生成物、廃棄物からの浸出、及び家庭排水などから、環境中に放出される。
【0003】
一般的に、汚染された地下水を浄化する方法として、地下水をくみ上げ、酸化分解処理等の水処理を施すことが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
そして、1,4-ジオキサンを除去する方法としては、例えば、フェントン処理、過硫酸ナトリウムを用いたアルカリ触媒処理、オゾンによる促進酸化法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-51457号公報
【特許文献2】特開2006-015306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フェントン処理、過硫酸ナトリウムを用いたアルカリ触媒処理は、ほぼバッチ式において行われる方法であり、処理の制御が難しいため、効率的に連続処理することができなかった。また、オゾンによる促進酸化法は、オゾンを製造する設備を準備する必要があり、設備が複雑になり、コストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、簡易かつ効率よく汚染水を処理できる汚染水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、汚染水の処理を連続処理にて行う上で、コンクリートと汚染水とを接触させる方法について検討した。これは、コンクリートの空隙(以下、間隙ともいう場合がある。)を通過した水がアルカリ性になること、部材の透水係数の調節が他の材料に比較して容易であることによる。
【0008】
詳細に述べると、コンクリートが水酸化カルシウムをはじめとするアルカリを含むため、1,4-ジオキサンに汚染された水をコンクリートと接触させてアルカリ性とし、過硫酸塩などの酸化剤による処理を容易とすることができる。
【0009】
また、コンクリートを用いた部材、またはこれを集積させた層は、空隙率(間隙率ともいう。)の調整により、層全体または部材全体での透水係数を調整することが可能である。そのため、連続的に1,4-ジオキサンを処理するために十分な、汚染された水の処理時間を確保できる条件を構築することができる。
【0010】
そこで、本発明者らが更に検討した結果、汚染水及び酸化剤をコンクリート類に接触させることで、汚染水に含まれる1,4-ジオキサンが分解され、その結果、汚染水の処理を効率的に行うことができることを見出した。
【0011】
具体的には、本発明の一実施態様は、1,4-ジオキサンを含有する汚染水と酸化剤とを混合して混合物を形成する混合工程と、混合物をコンクリート類に接触させる接触工程と、を有する汚染水の処理方法である。
【0012】
さらに本発明者らは、コンクリートの混和材として一般的に用いられている、鉄鋼スラグおよび/またはフライアッシュと汚染水とを接触させる方法について検討した。その結果、汚染水及び酸化剤の混合物を鉄鋼スラグおよび/またはフライアッシュと接触させることで、汚染水に含まれる1,4-ジオキサンの分解を効率的に行えることを見出した。
【0013】
具体的には、本発明の別の一実施態様は、1,4-ジオキサンを含有する汚染水と酸化剤とを混合して混合物を形成する混合工程と、混合物を鉄鋼スラグ、フライアッシュに接触させる接触工程と、を有する汚染水の処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易かつ効率よく汚染水を処理できる汚染水の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態の一例の概略図である。
図2図2は、本発明の別の実施形態の一例の概略図である。
図3図3は、ポーラスコンクリートカラムを通過前後の混合物の1,4-ジオキサン濃度を示した折れ線グラフである。
図4図4は、ポーラスコンクリートカラムを通過前後の混合物のpHを示した折れ線グラフである。
図5図5は、コンクリートガラカラムを通過前後の混合物の1,4-ジオキサン濃度を示した折れ線グラフである。
図6図6は、コンクリートガラカラムを通過前後の混合物のpHを示した折れ線グラフである。
図7図7は、コンクリートガラカラムを通過前後の混合物(酸化反応阻害物質含有)の1,4-ジオキサン濃度を示した折れ線グラフである。
図8図8は、コンクリートガラカラムを通過前後の混合物(酸化反応阻害物質含有)のマンガン濃度を示した折れ線グラフである。
図9図9は、製鋼スラグカラムを通過前後の混合物の1,4-ジオキサン濃度を示した折れ線グラフである。
図10図10は、製鋼スラグカラムを通過前後の混合物のpHを示した折れ線グラフである。
図11図11は、フライアッシュカラムを通過前後の混合物の1,4-ジオキサン濃度を示した折れ線グラフである。
図12図12は、フライアッシュカラムを通過前後の混合物のpHを示した折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(汚染水の処理方法)
本発明の汚染水の処理方法は、混合工程と、接触工程と、を有し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
【0017】
<混合工程>
混合工程は、1,4-ジオキサンを含有する汚染水(以下、「汚染水」と略記することがある)と酸化剤とを混合する工程である。混合工程は、後述の接触工程前に行ってもよく、接触工程中に汚染水と酸化剤とが混合されるように行ってもよい。
なお、混合工程においては、本発明の効果を阻害しない限り、界面活性剤などの酸化剤以外の化合物を混合してもよい。
【0018】
汚染水と酸化剤とを混合する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、1,4-ジオキサンを含有する汚染水をラインに流し、このラインに直接、酸化剤を注入する方法を用いることができる。
【0019】
或いは、1,4-ジオキサンを含有する汚染水を入れたタンクと、酸化剤を含有する溶液を入れたタンクと、三方コックとを組み合わせる方法を用いることもできる(詳細は後述)。
【0020】
<<汚染水>>
本実施形態における処理対象の汚染水は、1,4-ジオキサンを含有するものであり、さらにマンガン及び塩化物イオンが共存する。
【0021】
1,4-ジオキサンを含有する汚染水を酸化処理する際に、マンガン及び塩化物イオンが共存すると、酸化を阻害する物質として働く(例えば、「過硫酸法による1,4-ジオキサン分解における地下水の阻害要因とその低減化について」水島祐希・晴山渉・緒方浩基・西田憲司・中澤廣(第23回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集(2017年)、p.272-273)参照)。
しかし、本発明の汚染水の処理方法であれば、マンガン及び塩化物イオンの存在下においても、1,4-ジオキサンの酸化反応を進行させることが可能である。
【0022】
1,4-ジオキサン、マンガン、及び塩化物イオンの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0023】
<<酸化剤>>
酸化剤は、1,4-ジオキサンを酸化させるために用いられる。
酸化剤は、例えば、過硫酸ナトリウム(SPS)、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸塩、ペルオキソ一硫酸カリウム(商品名:オキソン(登録商標))、過炭酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、過硫酸ナトリウムが好ましい。
酸化剤の状態は、固体でも、液体であってもよく、適当な溶媒に混合して液体としてもよい。
過硫酸塩は、適宜合成したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、過硫酸ソーダ(三菱ガス化学株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
[混合比(汚染水における酸化剤の濃度)]
汚染水における酸化剤の濃度としては、0.05%~3%が好ましく、0.2%~2%がより好ましい。
汚染水に対する酸化剤の濃度を調節する方法の一例として、過硫酸ナトリウムを用いた方法を次に示す。濃度30%の過硫酸ナトリウム溶液を、汚染水1mあたり17L注入することで、汚染水に対する過硫酸ナトリウムの濃度を、0.5%とすることができる。
【0025】
<<アルカリ材料>>
混合工程では、汚染水と酸化剤に加えて、さらにアルカリ材料を混合してもよい。酸化剤による酸化反応を促進させる効果が期待できるアルカリ材料であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、苦土、水酸化苦土、石炭灰等の焼却灰、製紙スラッジ固化物、ジオポリマー等のアルミナシリカ固化体、水ガラス(ケイ酸ソーダ)固化体、貝殻や貝殻破砕物等、パーライト、粒状ガラス、ガラス破砕物、発泡ガラス、アルカリ性の土の粒状固化物等が挙げられる。
アルカリ材料は、汚染水と酸化剤の混合物に加えて用いてもよく、またコンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュに混ぜて用いてもよい。
【0026】
<接触工程>
接触工程は、前述の混合物を、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュに接触させる工程である。
ここで接触させるとは、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュの一部と混合物の一部とが接触されること、および混合物がコンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュの空隙を通り抜けることを含む。
【0027】
混合物とコンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュを接触させる手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュを水槽内部にしきつめて、混合物をその水槽の下部から注入する手段が挙げられる。
【0028】
また混合物とコンクリート類、鉄鋼スラグおよび/またはフライアッシュを接触させる別の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンクリート類、鉄鋼スラグおよびフライアッシュからなる群から選択される少なくとも1種をカラム内部に充填し、混合物を上記カラムに注入する手段が挙げられる。
【0029】
<<コンクリート類>>
本明細書における「コンクリート類」とは、セメントを結合材として用いた材料を広く包含する概念であり、具体例には普通コンクリート、ポーラスコンクリートを包含し、さらにはモルタル、セメント単体をも包含する。
【0030】
ここで、ポーラスコンクリートとは、細骨材が用いられない、または普通コンクリートよりも細骨材の配合量が少ないコンクリートを一般的に指す。ポーラスコンクリートは、普通コンクリートよりも多くの空隙を有する多孔質のコンクリートであるため、混合物と接触させることが容易である。ポーラスコンクリートの細孔径の本発明における限定は無く、設計上必要な条件を満たすように適宜選択できる。
【0031】
混合物と接触させるコンクリート類の数、形状、大きさに関して述べると、一つの部材とするだけでなく、複数のコンクリート類の塊(以下、「コンクリート塊」と称する)を集積させて用いることも可能である。複数種、または複数の大きさのコンクリート塊の組み合わせが用いられてもよい。したがって、ポーラスコンクリートの部材と複数の小径のコンクリート塊とを組み合わせて用いることも可能である。
【0032】
複数のコンクリート塊を、図1の層3(詳細は後述する)に示すように層状に敷設することもできる。このとき、コンクリート塊間の間隙を調整することにより、層全体での透水係数が設計上設定した値となるように施工することが可能である。透水係数は条件に応じて適切な値が設定されるものであるが、1×10-3cm/sec以上とすることが好ましい。
【0033】
コンクリート塊には、コンクリートガラを用いることができる。コンクリートガラは、コンクリート、モルタル、またはセメントの廃棄物であり、例えば解体工事で排出されたり、コンクリート又はモルタルの製造中に生じた残渣等の副生物が破砕されたりすることによって生成される。コンクリートガラには、最大長辺(最大粒径)が500mm以下の破片が含まれうる。
【0034】
コンクリート塊の最大粒径の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、1mm以上が好ましい。
なお、最大粒径が1mm以下のコンクリート塊を用いる場合では、土嚢袋などの袋に詰めて、その袋を通過した上述の混合物と袋中のコンクリート塊とを接触させる方法が用いられてもよい。
【0035】
<<鉄鋼スラグ>>
本明細書における「鉄鋼スラグ」は、高炉スラグ、製鋼スラグのいずれであってもよい。高炉スラグには、高炉から排出された溶融状態のスラグを徐冷して得られる高炉徐冷スラグ、急激に冷却して得られる水砕スラグ等が含まれる。また、製鋼スラグには、転炉において、銑鉄に酸素を吹き付けて酸化精錬する際に生成する転炉系スラグ、電気炉において、鉄スクラップを精錬する際に生成する電気炉系スラグ等が含まれる。転炉系スラグには、不純物の分離工程により脱炭スラグ、脱リンスラグ、脱マンガンスラグ等が含まれる。また電気炉系スラグには、酸化精錬で生成する酸化スラグと、還元精錬で生成する還元スラグとが含まれる。転炉系製鋼スラグは年間で約1000万t程度と大量に排出されているが、高炉スラグ等が道路基盤材として再利用が進んでいるのに比べて、転炉系製鋼スラグの再利用率は低い。
【0036】
鉄鋼スラグには、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウム等が含まれている。使用する鉄鋼スラグとしては、特に限定されず、資源のリサイクルという観点から、製鋼スラグを用いることが好ましい。
【0037】
鉄鋼スラグの形状、大きさは、特に限定されないが、通過する混合物の流量を調節するという観点から、鉄鋼スラグの平均粒子径は1~80mmであることが好ましく、2~40mmであることが好ましい。なお、鉄鋼スラグの平均粒子径は、振動式篩分け装置を用いて測定することができる。
【0038】
<<フライアッシュ>>
本明細書における「フライアッシュ」とは、石炭を燃焼させた際に生成する灰のことである。フライアッシュとしては、特に限定されないが、例えば、石炭火力発電所の発電ボイラーで微粉炭を燃焼させた際に生成する灰のうち、電気集塵機で回収されたもの等が挙げられる。
【0039】
フライアッシュは、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)等を成分とするポゾランを含む。フライアッシュは、JIS A 6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」において粉末度、強熱減量の違いにより、フライアッシュI~IV種の4種類に分類されており、いずれの種を用いてもよい。
【0040】
<その他の工程>
その他の工程としては、本発明の効果を損なうものでなければ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0041】
(汚染水の処理方法の具体例)
ここで、本発明の汚染水の処理方法の具体例について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の汚染水の処理方法に用いられる装置の一例の概略図である。図1の例において、汚染水は左側から右側に流れるとする。
【0042】
まず、ポンプ等の通水手段を用いて、1,4-ジオキサンを含有する汚染水をライン1中に通水する。次に、ポンプ等の添加手段を用い、ライン1と連結されているライン2を介して酸化剤を添加する。ライン1中を流れる汚染水と酸化剤とが混合されることにより、汚染水と酸化剤との混合物が形成される。
【0043】
汚染水の通水を継続することにより、形成された混合物は、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュが敷設または充填された層3中を透過する。混合物が層3中を通り、混合物がコンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュと接触する間に、1,4-ジオキサンが、酸化剤により酸化される。コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュは、1,4-ジオキサンの酸化反応を促進させる。
【0044】
また、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュは、1,4-ジオキサンの酸化反応を阻害するマンガンをトラップするため、汚染水がマンガン及び塩化物イオンを含有したとしても、1,4-ジオキサンの酸化反応は阻害されることはない。
【0045】
層3を通過した流体は、層上部のライン4に到達する。流体は、ライン4を介して、図示しないタンク等の貯水手段に貯水される。なお、層3を通過した流体は、たとえば、1,4-ジオキサンが分解された水、及び酸化反応に使用されなかった酸化剤を含む。
【0046】
図2は、1,4-ジオキサンにより汚染された汚染水の処理方法に用いられる別の装置の一例の概略図である。
【0047】
図2の装置は、2つのタンク11および12と、2つのポンプ21および22と、3つの三方コック31、32および33と、2つのカラム100および200を有する。タンク11とポンプ21、タンク12とポンプ22は、それぞれラインを介して接続されている。またポンプ21と三方コック31、および、ポンプ22と三方コック31は、それぞれライン13と23を介して接続されている。さらに三方コック31、カラム100、三方コック32、カラム200および三方コック33は、ラインを介してこの順に直列に接続されている。
【0048】
タンク11および12は、1,4-ジオキサンを含有する汚染水や酸化剤を含有する溶液を貯蔵することができる。使用するタンクとしては、特に限定されず、例えば、ポリタンク、蓋付きポリバケツ、石油缶、一斗缶、ステンレス製タンク等が挙げられる。
【0049】
ポンプ21および22は、タンク11および12に貯蔵されている1,4-ジオキサンを含有する汚染水や酸化剤を含有する溶液を、所定の流量でライン13および23に通水する機能を有する。使用するポンプとしては、特に限定されず、例えば、ギアポンプ、シリンジポンプ、マグネットポンプ、ブランジャーポンプ、スクリューポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、ロータリーポンプ、チューブポンプ、吸引ポンプ、加圧ポンプ、プランジャーポンプ等が挙げられる。
【0050】
三方コック31は、ライン13および23を流れる1,4-ジオキサンを含有する汚染水と酸化剤を含有する溶液とを混合させ、混合物を形成する機能を有する。三方コック31、32および33は、いずれも混合物のサンプリングを行うために用いることができる。1,4-ジオキサンを含有する汚染水と酸化剤を含有する溶液とを混合する方法としては、特に限定されず、三方コック以外にも、例えば、T字管、Y字管等を用いてもよい。
【0051】
カラム100には、接触層110として、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュが充填されている層を有する。またカラム100の流入口と流出口は、栓101aおよび101bで封をすることができる。栓としては、特に限定されず、例えば、ゴム栓等を用いることができる。またカラム100の流入口と流出口には、保持部材102aおよび102bを設けてもよい。保持部材としては、特に限定されず、例えば、金網、ストレーナー、有孔板、ガラスビーズ等を単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。
なお、図2では、2つのカラム100および200を直列につなげた例を示している。これに対して、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュが充填された接触層を有するカラムを3つ以上直列につなげてもよいし、2つ以上のカラムを並列につなげてもよい。また複数個のカラムをつなげる場合には、各カラム間に三方コック(例えば、三方コック32、33等)を設置することで、各ライン中の溶液をサンプリングすることが容易になる。
【0052】
次に、図2の装置の使用方法の一例を説明する。
まずタンク11内に1,4-ジオキサンを含有する汚染水を貯蔵し、これをポンプ12を用いて、ライン13に通水させる。またタンク21内に酸化剤を含有する溶液を貯蔵し、これをポンプ22を用いて、ライン23に通水させる。ライン13を流れる1,4-ジオキサンを含有する汚染水と、ライン23を流れる酸化剤を含有する溶液とが、三方コック31を介して混合されることにより、汚染水と酸化剤との混合物が形成される。
【0053】
汚染水と酸化剤との混合物は、カラム100内の接触層を通過する。混合物が接触層110を通過する間に、混合物をコンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュと接触させることができる。
汚染水と酸化剤との混合物が、接触層110を通過し、コンクリート類、鉄鋼スラグまたはフライアッシュと接触することにより、1,4-ジオキサンの酸化反応が促進され、汚染水に含まれる1,4-ジオキサンを効率的に分解することができる。
【実施例0054】
以下、開示の技術の実施例を説明するが、開示の技術は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
脱イオン水に1,4-ジオキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解し、1,4-ジオキサン濃度が1mg/Lの1,4-ジオキサン水(濃度:1mg/L)を調製した。
次に、マンガン濃度が、50mg/Lとなるように、硫酸マンガン(富士フィルム和光純薬株式会社製)、及び塩化物イオン濃度が、1,300mg/Lとなるように塩化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)を1,4-ジオキサン水に溶解させ、模擬汚染水とした。なお、マンガンイオン濃度が50mg/Lとは、硫酸マンガン濃度が137mg/Lであり、塩化物イオン濃度が1,300mg/Lとは、塩化ナトリウム濃度が2,140mg/Lである。
【0056】
ポーラスコンクリート(固まる透水カラージャリコン、株式会社テラダ製、砂利の粒径:2~5mm)を内径10cm、長さ30cmのアクリルパイプに厚みが20cmでとなるように充填した。アクリルパイプの上下にゴム栓を設置した。
このアクリルパイプに対し、模擬汚染水を3.3mL/分、酸化剤としてのSPS水(濃度3%)を0.7mL/分の速度で通水し、模擬汚染水と酸化剤とを混合し、ポーラスコンクリートに接触させた。
【0057】
100L通水時にカラム出口で採水し、1,4-ジオキサン濃度はガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS-QP(登録商標) 2010 Ultra、株式会社島津製作所製)、pHは、ガラス電極式水素イオン濃度計(MM43X、東亜ディーケーケー株式会社製)、マンガン濃度を偏光ゼーマン原子吸光光度計(ZA3300、株式会社日立ハイテクサイエンス製)により測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果から明らかなように、接触工程後の1,4-ジオキサン濃度は、環境基準値(0.05mg/L)を大きく下回った。また、接触工程後のマンガン濃度は、大きく減少させることができた。
したがって、表1の結果から、本発明の汚染水の処理方法は、1,4-ジオキサン処理に大きな効果を有する。そして、この効果に加えて、1,4-ジオキサンの酸化反応の阻害剤であるマンガン及び塩化物イオンの存在下であっても、マンガンを除去でき、1,4-ジオキサンの酸化反応を進行できることが明らかになった。
【0060】
(実施例2:ポーラスコンクリート)
1,4-ジオキサンにより汚染された汚染水とSPSを含有する溶液とを混合して形成された混合物を、ポーラスコンクリートが充填されたカラム(以下「ポーラスコンクリートカラム」ともいう。)に通水したときの1,4-ジオキサンの濃度変化およびpHの変化をそれぞれ測定した。1,4-ジオキサン濃度およびpHは、実施例1と同様の方法で測定した。
汚染水とSPSとを混合して、ポーラスコンクリートカラムに通水する方法としては、図2に記載の方法を採用した。以下に、ポーラスコンクリートカラムの作製、各種溶液の調製および通水についてより具体的に説明する。
【0061】
<ポーラスコンクリートカラムの作製>
カラムは、内径10cm、高さ30cmのプラスチックカラム(アクリルパイプ製)を用いた。カラムの両端(溶液の流入口および流出口)のうち流入口を、ゴム栓で封をした。カラムの流入口を下に向けた状態で、ゴム栓の上部に金網(ステンレス製、40メッシュ、線径0.18mm)を設置し、金網の上にガラスビーズ(平均直径5mm、東新理興社製)層を設け、ガラスビーズの上に有孔板(塩化ビニル製)を敷いた。有孔板の上に高さが20cmになるようにポーラスコンクリートを充填し、ポーラスコンクリート層を形成した。さらに、ポーラスコンクリート層の上部を金網で覆い、金網の上にガラスビーズ層を設け、最後に流出口側をゴム栓で封をした。なお、ポーラスコンクリートは、川砂利(粒径5~30mm)500g(含水率2.9%)に、高炉セメントB種のセメントミルク(セメント60g、水道水25mL)を添加して混合することで作製した。充填したポーラスコンクリートの重さは、カラム1本あたり約2500gであった。
上記ポーラスコンクリート層を有するカラム(以下「ポーラスコンクリートカラム」ともいう。)を5本用意し、ラインを介して直列に連結した。一本目のカラムの手前および各カラム間に三方コックを設け、各ライン中を流れる混合物をサンプリングできるようにした。
【0062】
<各種溶液の調製>
水道水に、1,4-ジオキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して、1,4-ジオキサンの濃度が0.5mg/Lの1,4-ジオキサン水を調製し、これをポリタンクに入れた。
次いで、水道水に、SPS(富士フィルム和光純薬製)を溶解して6(w/w)%のSPS水を調製し、これを上記とは別のポリタンクに入れた。
【0063】
<通水>
ポリタンク内の1,4-ジオキサン水をチューブポンプ(東京理化器械製)で1.4mL/分の流量でラインに供給し、また別のポリタンク内のSPS水をチューブポンプで0.7mL/分の流量でラインに供給し、これらを三方コックで混合し、ポーラスコンクリートカラムに通水させた。
サンプリングは、1本目のカラムの手前および各カラム間に設置された三方コックを用いて行った。
【0064】
<実験結果>
各三方コックからサンプリングされた混合物の1,4-ジオキサン濃度およびpHを測定した結果をそれぞれ図3および図4に示す。
カラムを通す前の混合物の1,4-ジオキサン濃度は、0.37~0.45mg/L程度で推移した(図3の「通水液」を参照)。
各カラムを通過することで、混合物の1,4-ジオキサン濃度は徐々に低下し、5本目のカラムを通過後の混合物では、1.4-ジオキサンの濃度が、地下水環境基準値である0.05mg/Lを下回っていた(図3参照)。
また混合物のpHは、各カラムを通過するごとにアルカリ性側に徐々にシフトした(図4参照)。これは、ポーラスコンクリートに水酸化カルシウムをはじめとするアルカリが含まれることによるものと推測される。
【0065】
(実施例3:コンクリートガラ)
1,4-ジオキサンにより汚染された汚染水とSPSを含有する溶液とを混合して形成された混合物を、コンクリートガラカラムに通水したときの1,4-ジオキサンの濃度変化およびpHの変化をそれぞれ測定した。1,4-ジオキサン濃度およびpHは、実施例1と同様の方法で測定した。
汚染水とSPSとを混合して、コンクリートガラカラムに通水する方法としては、図2に記載の方法を採用した。以下に、コンクリートガラカラムの作製、各種溶液の調製および通水についてより具体的に説明する。
【0066】
<コンクリートガラカラムの作製>
コンクリートガラとしては、コンクリートリサイクル砕石RC-40を目開き40mmの篩にかけ、これを通過したものをさらに目開き9.5mmの篩にかけ、残留したものを用いた。
コンクリートガラカラムは、実施例2のポーラスコンクリートカラムと同様の方法で作製した。
コンクリートガラカラムを5本用意し、これらを直列に連結した。一本目のカラムの手前および各カラム間に三方コックを設け、各ライン中を流れる混合物をサンプリングできるようにした。
【0067】
<各種溶液の調製>
脱イオン水に、1,4-ジオキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して、1,4-ジオキサン濃度が1.5mg/Lの1,4-ジオキサン水を調製し、これをポリタンクに入れた。
次いで、水道水に、SPS(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して6(w/w)%のSPS水を調製し、これを上記とは別のポリタンクに入れた。
【0068】
<通水>
ポリタンク内の1,4-ジオキサン水をチューブポンプで1.4mL/分の流量でラインに供給し、また別のポリタンク内のSPS水をチューブポンプで0.7mL/分の流量でラインに供給し、これらを三方コックで混合し、コンクリートガラカラムに通水させた。
サンプリングは、1本目のカラムの手前および各カラム間に設置された三方コックを用いて行った。
【0069】
<実験結果>
各三方コックからサンプリングされた混合物の1,4-ジオキサン濃度およびpHを測定した結果をそれぞれ図5および図6に示す。
カラムを通す前の混合物の1,4-ジオキサン濃度は、SPS水によって希釈されたため、1.0mg/L程度で推移した(図5の「通水液」を参照)。
各カラムを通過することで、混合物の1,4-ジオキサン濃度が徐々に低下し、5本目のカラムを通過後の混合物では、1,4-ジオキサン濃度が0.02~0.03mg/Lとなり、地下水環境基準値0.05mg/Lを下回っていた(図5参照)。
また混合物のpHは、各カラムを通過するごとにアルカリ性側に徐々にシフトした(図6参照)。これは、コンクリートガラに水酸化カルシウムをはじめとするアルカリが含まれることによるものと推測される。
【0070】
(実施例4:コンクリートガラ(汚染水に酸化反応阻害物質を含有))
1,4-ジオキサンにより汚染された汚染水とSPSを含有する溶液とを混合して形成された混合物に、さらに酸化反応を阻害する物質であるマンガンおよび塩化物イオンを共存させて、これをコンクリートガラカラムに通水したときの1,4-ジオキサンの濃度変化およびマンガン濃度の変化をそれぞれ測定した。1,4-ジオキサン濃度およびマンガン濃度は実施例1と同様の方法で測定した。
マンガンおよび塩化物イオンを含む汚染水(以下「模擬汚染水2」ともいう。)とSPSとを混合して、コンクリートガラカラムに通水する方法としては、図2に記載の方法を採用した。以下に、コンクリートガラカラムの作製、各種溶液の調製および通水についてより具体的に説明する。
【0071】
<コンクリートガラカラムの作製>
実施例3と同様の方法でコンクリートガラカラムを作製した。
コンクリートガラカラムを5本用意し、これらを直列に連結した。1本目のカラムの手前および各カラム間に三方コックを設け、各ライン中を流れる混合物をサンプリングできるようにした。
【0072】
<各種溶液の調製>
脱イオン水に、1,4-ジオキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して、1,4-ジオキサン濃度が1.0mg/Lの1,4-ジオキサン水を調製した。次に、上記1,4-ジオキサン水に、マンガン濃度が50mg/L(硫酸マンガンとしては137mg/L)となるように硫酸マンガン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を、また塩化物イオン濃度が1300mg/L(塩化ナトリウムとしては2140mg/L)となるように塩化ナトリウムをそれぞれ溶解させ、これを模擬汚染水2とした。模擬汚染水2をポリタンクに入れた。
別途、水道水に、SPS(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して6(w/w)%のSPS水を調製し、これを上記とは別のポリタンクに入れた。
【0073】
<通水>
ポリタンク内の模擬汚染水2をチューブポンプで1.4mL/分の流量でラインに供給し、また別のポリタンク内のSPS水をチューブポンプで0.7mL/分の流量でラインに供給し、これらを三方コックで混合し、コンクリートガラカラムに通水させた。
サンプリングは、1本目のカラムの手前および各カラム間に設置された三方コックを用いて行った。
【0074】
<実験結果>
各三方コックからサンプリングされた混合物の1,4-ジオキサン濃度およびマンガン濃度を測定した結果をそれぞれ図7および図8に示す。
カラムを通す前の混合物の1,4-ジオキサン濃度は、SPS水の供給流量にばらつききが生じたため、0.4~0.7mg/L程度で推移した(図7の「通水液」を参照)。
各カラムを通過することで、混合物の1,4-ジオキサン濃度が徐々に低下し、5本目のカラムを通過後の混合物では、1,4-ジオキサン濃度が0.05mg/L以下となり、地下水環境基準値0.05mg/Lを下回った(図7参照)。
またカラムを通す前の混合物のマンガン濃度は約47mg/Lであった。これに対し、1本目のカラムを通過した混合物ではマンガン濃度が1/10以下となり、2本目のカラムを通過した混合物ではマンガン濃度が1mg/Lとなり、マンガン濃度が大幅に減少していた(図8参照)。
【0075】
(実施例5:製鋼スラグカラム)
1,4-ジオキサンにより汚染された汚染水とSPSを含有する溶液とを混合して形成された混合物を、製鋼スラグカラムに通水したときの1,4-ジオキサンの濃度変化およびpHの変化をそれぞれ測定した。1,4-ジオキサン濃度およびpHは、実施例1と同様の方法で測定した。
汚染水とSPSとを混合して、製鋼スラグカラムに通水する方法としては、図2に記載の方法を採用した。以下に、製鋼スラグカラムの作製、各種溶液の調製および通水についてより具体的に説明する。
【0076】
<製鋼スラグカラムの作製>
製鋼スラグとして、脱リンスラグ(粒径10~40mm)(を用いた。実施例2と同様の方法で、製鋼スラグカラムを作製した。
製鋼スラグカラムを2本用意し、これらを直列に連結した。一本目のカラムの手前および各カラム間に三方コックを設け、各ライン中を流れる混合物をサンプリングできるようにした。
【0077】
<各種溶液の調製>
脱イオン水に、1,4-ジオキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して、1,4-ジオキサンの濃度が1.0mg/Lの1,4-ジオキサン水を調製し、これをポリタンクに入れた。
次いで、水道水に、SPS(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して3(w/w)%のSPS水を調製し、これを上記とは別のポリタンクに入れた。
【0078】
<通水>
ポリタンク内の1,4ジオキサン水をチューブポンプで1.4mL/分の流量でラインに供給し、また別のポリタンク内のSPS水をチューブポンプで0.7mL/分の流量でラインに供給し、これらを三方コックで混合し、製鋼スラグカラムに通水させた。
サンプリングは、1本目のカラムの手前および各カラム間に設置された三方コックを用いて行った。
【0079】
<実験結果>
各三方コックからサンプリングされた混合物の1,4-ジオキサン濃度およびpHを測定した結果をそれぞれ図9および図10に示す。
カラムを通す前の混合物の1,4-ジオキサン濃度は、SPS水によって希釈されたため、0.6~0.7mg/L程度で推移した(図9の「通水液」を参照)。
各カラムを通過することで、混合物の1,4-ジオキサン濃度が徐々に低下し、2本目のカラムを通過後の混合物では、1,4-ジオキサン濃度が0.02~0.03mg/Lとなり、地下水環境基準値0.05mg/Lを下回った(図9参照)。
なお、各カラムを通過することで、混合物のpHは酸性側にシフトしていた。これは製鋼スラグ中の鉄が反応して酸化反応が促進されて、SPSの酸化反応後に硫酸が生じることによって、pHが酸性側にシフトしたものと推測される(図10参照)。
【0080】
(実施例6:フライアッシュカラム)
1,4-ジオキサンにより汚染された汚染水とSPSを含有する溶液とを混合して形成された混合物を、フライアッシュカラムに通水したときの1,4-ジオキサンの濃度変化およびpHの変化をそれぞれ測定した。1,4-ジオキサン濃度およびpHは、実施例1と同様の方法で測定した。
汚染水とSPSとを混合して、フライアッシュカラムに通水する方法としては、図2に記載の方法を採用した。以下に、フライアッシュカラムの作製、各種溶液の調製および通水についてより具体的に説明する。
【0081】
<フライアッシュカラムの作製>
フライアッシュとして、川砂利(粒径5~30mm)500g(含水率2.9%)に、フライアッシュのミルク(フライアッシュII種(J-Powerジェネレーションサービス社製)60g、水道水25mL)を添加して混合したものを用いた。実施例2と同様の方法でフライアッシュカラムを作製した。なお、充填したフライアッシュはカラム1本あたり約2600gであった。
フライアッシュカラムを2本用意し、これらを直列に連結した。一本目のカラムの手前および各カラム間に三方コックを設け、各ライン中を流れる混合物をサンプリングできるようにした。
【0082】
<各種溶液の調製>
脱イオン水に、1,4-ジオキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して、1,4-ジオキサン濃度が0.75mg/Lの1,4-ジオキサン水を調製し、これをポリタンクに入れた。
次いで、水道水に、SPS(富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解して6(w/w)%のSPS水を調製し、これを上記とは別のポリタンクに入れた。
【0083】
<通水>
ポリタンク内の1,4ジオキサン水をチューブポンプで1.4mL/分の流量でラインに供給し、また別のポリタンク内のSPS水をチューブポンプで0.7mL/分の流量でラインに供給し、これらを三方コックで混合し、フライアッシュカラムに通水させた。
サンプリングは、1本目のカラムの手前および各カラム間に設置された三方コックを用いて行った。
【0084】
<実験結果>
各三方コックからサンプリングされた混合物の1,4-ジオキサン濃度およびpHを測定した結果をそれぞれ図11および図12に示す。
カラムを通す前の混合物の1,4-ジオキサン濃度は、SPS水によって希釈されたため、0.6mg/L程度で推移した(図11の「通水液」を参照)。
1本目のカラムを通過後の混合物では、1,4-ジオキサン濃度には多少ばらつきがあるものの、地下水環境基準値0.05mg/Lを下回る値を示した(図11参照)。
また1~4本目のカラムを通過した混合物のpHは酸性の値を示した。これはSPSの濃度が高く、SPSの酸化反応後に生じる硫酸によって、酸性の値を示したものと推測される(図12参照)。
【0085】
以上より、図3、5、7、9および11から、汚染水とSPSとを混合させた混合物を、ポーラスコンクリート、コンクリートガラ、製鋼スラグまたはフライアッシュを充填したカラムを通過させることによって、SPSによる酸化反応を促進することができ、1,4-ジオキサン濃度を地下水環境基準値0.05mg/L以下にできることが分かる。
【符号の説明】
【0086】
11、21 タンク
12、22 ポンプ
13、23 ライン
31、32、33 三方コック
100、200 カラム
101a、101b 栓
102a、102b 保持部材
110 接触層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12