(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017743
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】シリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220119BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01L21/66 L
G01R27/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120457
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰己
【テーマコード(参考)】
2G028
4M106
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028AA03
2G028BB11
2G028BC01
2G028CG02
2G028DH03
2G028FK01
2G028HN11
2G028HN13
2G028JP02
2G028JP04
4M106AA01
4M106BA01
4M106CA10
4M106DH09
4M106DH51
4M106DJ01
(57)【要約】
【課題】シリコン単結晶ウェーハ抵抗率測定の測定位置のばらつきを低減でき、ひいてはシリコン単結晶ウェーハ抵抗率の測定精度を安定させることができる、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法を提供すること。
【解決手段】シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を四探針法で測定する抵抗率測定方法であって、測定レシピを作成するステップと、該測定レシピに従い複数の測定点で前記シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定するステップとを含み、前記測定レシピを作成するステップが、前記シリコン単結晶ウェーハ上の前記複数の測定点の位置情報を取得するサブステップと、前記位置情報に基づいて、前記複数の測定点で抵抗率を測定する際に前記シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になるように、前記複数の測定点の測定順序に関する測定レシピを作成するサブステップとを含むことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を四探針法で測定する抵抗率測定方法であって、
測定レシピを作成するステップと、該測定レシピに従い複数の測定点で前記シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定するステップとを含み、
前記測定レシピを作成するステップが、
前記シリコン単結晶ウェーハ上の前記複数の測定点の位置情報を取得するサブステップと、
前記位置情報に基づいて、前記複数の測定点で抵抗率を測定する際に前記シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になるように、前記複数の測定点の測定順序に関する測定レシピを作成するサブステップと
を含むことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法。
【請求項2】
前記測定レシピを作成するサブステップにおいて、前記位置情報に基づいて、前記複数の測定点で抵抗率を測定する際に前記シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になる測定順序の中で、前記シリコン単結晶ウェーハの移動距離が最小となる測定順序を抽出して、前記測定レシピを作成することを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子製造においては、より微細化、高歩留まりが要求され、それに伴い、シリコン単結晶ウェーハ抵抗率の測定精度もより高いものが要求されている。抵抗率測定において、測定位置精度は、抵抗率の測定精度に大きな影響を及ぼす。
【0003】
ウェーハ抵抗率測定装置において、任意かつ複数の測定点の抵抗率を測定する方法として、通常、測定対象となるシリコン単結晶ウェーハを設置するステージと、ステージの回転機構及び水平移動機構と、これらの機構を制御する為の制御機構とを具備した装置に対し、ステージ中央にシリコン単結晶ウェーハを設置した上で、ステージ中央を0mmとしたステージ半径方向における距離と、ステージの基準位置を0°としたステージの回転角度とを含む測定点の位置情報を複数記載したレシピデータを与え、このレシピデータに従い測定プローブの直下に各測定点が位置するようにシリコン単結晶ウェーハを順次移動し、測定プローブを各測定点に接触させて各測定点の抵抗率の測定を実施する方法が用いられる。
【0004】
また、半導体ウェーハなどのサンプルの特性を自動で検査する為の方法として、例えば引用文献1には、被検査サンプルに個別のID番号を予め印字し、前記被検査サンプルに印字されたIDを測定装置に具備されたID番号識別装置を用いて読み取り、読み取られたIDに応じてホストコンピュータより取得した検査レシピ及び標準サンプルの検査結果を前記被検査サンプルの検査に用いる方法が開示されている。
【0005】
このように、従来の方法においては、レシピデータ内に示される内容に従い、測定点を測定プローブ直下へ順次移動させる為の測定ステージ回転動作及び水平移動動作が行なわれている。
【0006】
前記回転機構の角度制御はサーボモータによって行なわれることが多く、その角度制御精度は指令に対し±0.05°程度のものが一般的である。前記角度制御精度に示した±0.05°の角度ずれは、半径に対する円周上の停止位置ずれの原因となり、その停止位置ずれ量は半径方向における距離と角度から得られる弧の長さとなる。前記回転機構の角度制御精度が一定でも、半径方向における距離に応じて弧の長さ、つまり停止位置ずれ量は大きくなる。通常、シリコン単結晶ウェーハは、半径方向における距離が同じであれば多少の角度ずれがあっても、測定される抵抗率は同じ値を示すが、単結晶をウェーハへ加工する工程で行なわれるシリコン単結晶インゴットの円筒研削時に偏芯が発生していた場合、半径方向における距離が同一であっても角度によって抵抗率が異なる場合がある。前記円筒研削時に偏芯が発生したウェーハに対してもより正確にウェーハ抵抗率測定を行ないたいが、上記のようなステージ回転動作により発生する停止位置ばらつきにより、測定位置精度並びにウェーハ抵抗率測定精度が安定しない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-59994号公報
【特許文献2】特開2000-114327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、前記ウェーハの抵抗率測定位置を制御する上で行なわれているステージ回転動作については、その回転角度制御精度が一定であっても、その時の中心からの測定点の半径方向における距離rにより、実際の停止位置の誤差が変化する問題があった。
【0009】
例えば、停止位置の誤差は、中心からの測定点の半径方向における距離rと回転角度誤差θ′とにより求められる弧の長さに等しく、2πr×θ′/360で表すことができる。
【0010】
また、前記回転機構の角度制御は通常、サーボモータによって行なわれることが多く、前記サーボモータの角度制御精度は指令に対し±0.05°程度のものが一般的である。例えば回転角度に+0.05°の誤差が発生した場合、その時に発生する実際の停止位置の誤差は、半径方向における距離100mmの場合で0.09mmとなり、半径方向における距離150mmの場合で0.13mmとなる。このように、前記回転機構の角度制御誤差θ′が一定でも、測定点の半径における距離rに応じて停止位置ずれ量は大きくなる。
【0011】
先にも述べたが、通常、シリコン単結晶ウェーハは中心から同心円状に抵抗率が変化しており、半径方向における距離が同じであれば多少の角度ずれがあっても、測定される抵抗率は同じ値を示す。しかしながら、単結晶をウェーハへ加工する工程で行なわれるシリコン単結晶インゴットの円筒研削時に偏芯が発生した場合、半径方向における距離が同一であっても角度によって抵抗率が異なる場合がある。
【0012】
前記円筒研削時に偏芯が発生したインゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハは、特にウェーハ外周の、測定点の半径方向における距離rが大きい箇所においては、ステージ回転角度誤差に起因する停止位置誤差が与える測定値への影響も大きく、抵抗率の測定精度低下の要因となっており、ウェーハ抵抗率測定精度が安定しない問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、シリコン単結晶ウェーハ抵抗率測定の測定位置のばらつきを低減でき、ひいてはシリコン単結晶ウェーハ抵抗率の測定精度を安定させることができる、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を四探針法で測定する抵抗率測定方法であって、
測定レシピを作成するステップと、該測定レシピに従い複数の測定点で前記シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定するステップとを含み、
前記測定レシピを作成するステップが、
前記シリコン単結晶ウェーハ上の前記複数の測定点の位置情報を取得するサブステップと、
前記位置情報に基づいて、前記複数の測定点で抵抗率を測定する際に前記シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になるように、前記複数の測定点の測定順序に関する測定レシピを作成するサブステップと
を含むことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法を提供する。
【0015】
このようにすることで、各測定点の測定毎に発生するシリコン単結晶ウェーハの回転動作を最小限とすることができ、それにより、回転誤差による測定位置ズレを低減し、測定精度を安定化させることができる。すなわち、本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法であれば、シリコン単結晶ウェーハ抵抗率測定の測定位置のばらつきを低減でき、ひいてはシリコン単結晶ウェーハ抵抗率の測定精度を安定させることができる。
【0016】
前記測定レシピを作成するサブステップにおいて、前記位置情報に基づいて、前記複数の測定点で抵抗率を測定する際に前記シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になる測定順序の中で、前記シリコン単結晶ウェーハの移動距離が最小となる測定順序を抽出して、前記測定レシピを作成することが好ましい。
【0017】
このようにすることで、各測定点の測定毎に発生するシリコン単結晶ウェーハの水平移動動作も最小限とすることができ、それにより、水平移動誤差による測定位置ズレも低減し、測定精度を更に安定化させることができると共に、測定時間を短縮することもできる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法であれば、シリコン単結晶ウェーハ抵抗率測定の測定位置のばらつきを低減でき、ひいてはシリコン単結晶ウェーハ抵抗率の測定精度を安定させることができる。したがって、本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法を用いることにより、例えば半導体素子製造におけるより微細化及び高歩留まりの要求に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法で用いることができる抵抗率測定装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法のフロー図である。
【
図3】本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法における抵抗率を測定するステップの一例の一部を示す概略図である。
【
図4】本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法における抵抗率を測定するステップの一例の他の一部を示す概略図である。
【
図5】本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法における抵抗率を測定するステップの一例の更に他の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、シリコン単結晶ウェーハ抵抗率測定の測定位置のばらつきを低減でき、ひいてはシリコン単結晶ウェーハ抵抗率の測定精度を安定させることができる、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法の開発が求められていた。
【0021】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、予めシリコン単結晶ウェーハの複数の測定点の位置情報を取得し、これらの位置情報に基づいて、シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小となるように測定点の測定順序を決定し、このようにして決定した測定順序に基づいて複数の測定点で抵抗率の測定を行うことで、シリコン単結晶ウェーハ抵抗率測定の測定位置のばらつきを低減でき、ひいてはシリコン単結晶ウェーハ抵抗率の測定精度を安定させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
即ち、本発明は、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を四探針法で測定する抵抗率測定方法であって、
測定レシピを作成するステップと、該測定レシピに従い複数の測定点で前記シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定するステップとを含み、
前記測定レシピを作成するステップが、
前記シリコン単結晶ウェーハ上の前記複数の測定点の位置情報を取得するサブステップと、
前記位置情報に基づいて、前記複数の測定点で抵抗率を測定する際に前記シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になるように、前記複数の測定点の測定順序に関する測定レシピを作成するサブステップと
を含むことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法である。
【0023】
なお、特許文献2には、ウェーハ偏心検出センサによって半導体ウェーハの周縁の測定ステージの中心からの距離を一周にわたって測定することにより測定ステージの測定基準位置に対する半導体ウェーハの位置誤差を検出し、検出された位置誤差から算出した補正値を加味した位置に4探針プローブを接触させて抵抗率を測定する半導体ウェーハの抵抗率測定器が開示されている。しかしながら、特許文献2は、ウェーハ抵抗率測定装置の回転角度精度には着目しておらず、この影響が少なくなるように測定レシピをウェーハの回転動作が最小となる測定順序に最適化することも開示していない。
【0024】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
まず、
図1を参照しながら、本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法で用いることができる抵抗率測定装置の一例を説明する。しかしながら、本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法は、
図1に示した装置とは異なる装置においても実施することができる。
【0026】
図1に示すウェーハ抵抗率測定装置10は、測定ステージ2と、ステージ駆動機構部3と、測定プローブ5と、プローブ昇降機構部6と、ステージ駆動機構制御部7と、抵抗率測定部8と、測定レシピ出力部9とを具備している。
【0027】
測定ステージ2は、測定対象であるシリコン単結晶ウェーハ1をその上に設置するように構成されている。ステージ駆動機構部3は、測定ステージ2の駆動4を制御するように構成されている。より詳細には、ステージ駆動機構部3は、ステージ回転機構部31とステージ水平移動機構部32とを具備している。ステージ回転機構部31は、測定ステージ2をステージ中央を軸として矢印41に沿って回転させるように構成されている。ステージ水平移動機構部32は、測定ステージ2を水平方向42に移動させるように構成されている。すなわち、測定ステージ2の駆動4は、回転41と、水平移動42とを含んでいる。
【0028】
測定プローブ5は、シリコン単結晶ウェーハ1の各測定点に接触してその測定点の抵抗率を測定するように構成されている。プローブ昇降機構部6は、測定時、測定プローブ5をシリコン単結晶ウェーハ1へ接触させるため降下させ、且つ、測定後にシリコン単結晶ウェーハ1から離すために測定プローブ5を上昇させるように構成されている。抵抗率測定部8は、配線85を介して、測定プローブ5へ抵抗率測定を行なう為の電流を供給し且つシリコン単結晶ウェーハ1からの電圧を受けて抵抗率を検出するように構成されている。また、抵抗率測定部8は、配線86を介して、プローブ昇降機構部6による測定プローブ5の昇降51を制御するようにも構成されている。
【0029】
ステージ駆動機構制御部7は、配線71及び72を介して、ステージ回転機構部31による測定ステージ2の回転41とステージ水平移動機構部32による測定ステージ2の水平移動42とを制御するように構成されている。測定レシピ出力部9は、本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法において作成された測定レシピをステージ駆動機構制御部7に入力し、駆動4を制御するように構成されている。
【0030】
図1に示すウェーハ抵抗率測定装置10は、更に、例えば特許文献1に記載されたサンプルの検査装置が具備する各構成要素を具備していても良い。例えば、ウェーハ抵抗率測定装置10は、複数のシリコン単結晶ウェーハ1の抵抗率を順次測定するために、ローダ及びアンローダを更に具備してもよい。また、
図1に示すウェーハ抵抗率測定装置10は、複数のシリコン単結晶ウェーハ1にIDを印字する装置、IDを読み取る装置、及びIDを管理し、測定レシピに反映させるように構成されたホストコンピュータを更に具備することができる。
【0031】
次に、本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法を、
図2を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法は、
図2に示す、測定レシピを作成するステップS1と、作成した測定レシピに従い複数の測定点でシリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定するステップS2とを含む。
【0033】
更に、測定レシピを作成するステップS1は、シリコン単結晶ウェーハ上の複数の測定点の位置情報を取得するサブステップS1-1と、サブステップS1-1で取得した位置情報に基づいて、複数の測定点で抵抗率を測定する際にシリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になるように、複数の測定点の測定順序に関する測定レシピを作成するサブステップS1-2とを含む。
【0034】
測定レシピを作成するサブステップS1-2において、サブステップS1-1で取得した位置情報に基づいて、複数の測定点で抵抗率を測定する際にシリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になる測定順序の中で、シリコン単結晶ウェーハの移動距離が最小となる測定順序を抽出して、測定レシピを作成することが好ましい。
【0035】
本発明では、例えば特許文献1にて開示されているように、被検査サンプルであるシリコン単結晶ウェーハへのID印字、ID読み取りによるホストコンピュータへの照合、及びホストコンピュータによるIDに基づく測定レシピの管理によって、複数のシリコン単結晶ウェーハの自動連続測定を行っても良い。
【0036】
次に、本発明の本発明のシリコン単結晶ウェーハの抵抗率測定方法を
図1に示すウェーハ抵抗率測定装置10において行う場合の例を具体的に説明する。
【0037】
まず、測定レシピを作成するステップS1を行う。このステップS1の詳細は、後述する。
【0038】
次に、作成した測定レシピに従い複数の測定点でシリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定するステップS2を行う。以下、ステップS2の実施形態を
図3~
図5を参照しながら説明する。
【0039】
まず、ステップS1で作成した測定レシピに従い、
図3に示すように、シリコン単結晶ウェーハ1上で測定点11の位置を指定する。
【0040】
測定点11の位置を指定する為の方法として、測定ステージ2の中心を0mmとした時の半径方向における距離値:r[mm]、及び測定ステージ2上にステージ中心を通る基準線21を定め、基準線21とステージ中心及び測定点11を結ぶ直線13とがなす角度:θ[°]の2つの値により、測定点11の位置を指定する方法が用いられる。測定ステージ2は通常、測定ステージ2の中央にシリコン単結晶ウェーハ1を設置することを前提とした設定がなされており、測定ステージ2の中心位置はシリコン単結晶ウェーハ1の中心12の位置と同義となる。また基準線21については、中心位置を通る任意の方向に設定することができるが、シリコン単結晶ウェーハ1のノッチ14上に位置することが好ましい。前記距離r及び角度θの2値を、本発明の方法のステップS1で作成する測定レシピに従って設定することにより、シリコン単結晶ウェーハ1上の任意の測定点11の位置を指定することができる。
【0041】
次に、
図4に示すように、測定ステージ2を前記θ°だけ回転41させる。これにより、基準線21がθ°だけ回転し、測定点11の位置が、元の位置11’から、測定プローブ5へと測定ステージ2を水平移動42させるストローク上に移動した状態となる。
【0042】
次に、
図5に示すように測定点11が前記測定プローブ5のプローブ針52の真下に位置する様、測定ステージ2を距離r[mm]だけ水平移動42させる。
【0043】
次いで、プローブ昇降機構部6により、測定プローブ5を降ろし、プローブ針52をシリコン単結晶ウェーハ1の測定点11に接触させる。その状態で、シリコン単結晶ウェーハ1の測定点11における抵抗率を四探針法で測定する。測定後、プローブ昇降機構部6により測定プローブ5を上昇させる。
【0044】
続いて、他の測定点11の測定に移る。この際、次の測定点11の指定は、ステップS1で作成した測定レシピの測定順序に基づいて行う。
【0045】
次に、測定レシピを作成するステップS1を詳細に説明する。
【0046】
まず、
図2に示したように、シリコン単結晶ウェーハ1上の複数の測定点11の位置情報を取得するサブステップS1-1を行う。複数の測定点11の数は特に限定されないが、仕様等によって決定される。
【0047】
次に、
図2に示したように、複数の測定点11の測定順序に関する測定レシピを作成するサブステップS1-2を行う。
【0048】
測定レシピを作成するサブステップS1-2では、詳細には、サブステップS1-1で取得した位置情報に基づいて、複数の測定点11で抵抗率を測定する際にシリコン単結晶ウェーハ1を回転させる動作が最小になるように、複数の測定点11の測定順序に関する測定レシピを作成する。より詳細には、サブステップS1-2では、測定レシピを、
図4を参照しながら説明した、シリコン単結晶ウェーハ1を回転させる動作(測定ステージ2の回転41)が最小となるように、複数の測定点11の測定順序を決定して作成する。
【0049】
更に、測定レシピを作成するサブステップS1-2では、
図4を参照しながら説明した、シリコン単結晶ウェーハ1を回転させる動作(測定ステージ2の回転41)が最小となる測定順序の中で、
図5を参照しながら説明した、シリコン単結晶ウェーハ1の移動(測定ステージ2の水平移動42)の距離が最小となるように、複数の測定点11の測定順序に関する測定レシピを作成することが望ましい。
【0050】
ここで、測定レシピを作成するステップS1の具体例を説明する。
【0051】
まず、サブステップS1-1として、シリコン単結晶ウェーハ1上の複数の測定点11の位置情報を下記表1に示すように取得する。表1では、一例として、
図3に示すシリコン単結晶ウェーハ1の中心12、シリコン単結晶ウェーハ1の中心12から半径方向に50mmの位置を90°毎に4箇所、シリコン単結晶ウェーハ1の中心12から半径方向に100mmの位置を90°毎に4箇所、計8箇所の測定点の位置情報を順に記載している。
【0052】
【0053】
次に、表1に示した取得した位置情報に基づいて、シリコン単結晶ウェーハ1を回転41させる動作が最小となるように、複数の測定点11の測定順序を決定する。
【0054】
例えば、表1に示した複数の測定点の位置情報に基づき、表1に記載された測定点の測定順序を、測定ステージ2の回転41の動作が必要最低限となる様に最適化、つまり表1の測定順序の並び替えを行なう処理を設ける。
【0055】
並べ替えの手法の例を挙げると、先ず、複数の測定点を、同一直線上に属する測定角度の測定位置毎に分類する。表1に示した測定点の場合、表2に示す角度θの設定が0°又は180°である測定点(分類A:基準線21上にある測定点)と、表3に示す角度θの設定が90°又は270°である測定点(分類B:基準線21に直交する直線22上にある測定点)とに分類が可能である。
【0056】
この時、各分類において、測定ステージ2の水平移動42の方向が一定方向かつ次の測定点11への水平移動42の距離が最短となる様、測定順序を更に並び替えることが好ましい。すなわち、取得した位置情報に基づいて、複数の測定点で抵抗率を測定する際にシリコン単結晶ウェーハを回転させる動作が最小になる測定順序の中で、シリコン単結晶ウェーハの移動距離が最小となる測定順序を抽出して、測定レシピを作成することが望ましい。例えば下記表2の分類Aのように、角度θが0°の最外周測定点から角度θが180°の最外周測定点の方向へ順次測定が行なわれる順番に並べ替えたほうが、測定効率の観点から望ましい。下記表3の分類Bも、同様に並び替えを行っている。
【0057】
【0058】
【0059】
次に、各分類内の角度θの最小値が昇順となる様、分類Aと分類Bとを結合する。表1の測定点の場合、下記表4に示すように、角度θの設定が0°または180°である分類Aの後、角度θの設定が90°または270°である分類Bとなるように結合する。これにより、下記表4に示す測定順序の測定レシピが作成される。
【0060】
【0061】
表1に示した順序で抵抗率の測定を行う場合、各測定点11への移動毎に測定ステージ2の回転41の動作が必要である。具体的には、7回の回転41の動作が必要である。
【0062】
それに対し、表4に示した測定レシピに従って、複数の測定点11でシリコン単結晶ウェーハ1の抵抗率を測定するステップS2を行う場合、θ=0°である測定点からθ=180°である測定点への移動は、回転不要で、測定プローブ5に対して水平移動42だけで済み、θ=90°である測定点からθ=270°である測定点への移動も同様であるため、測定ステージ2の回転41の動作は1回となる。
【0063】
このように、最適化したレシピデータである測定レシピを抵抗率測定に適用することで、測定位置精度に影響を与える測定ステージ2の回転41の動作、すなわちシリコン単結晶ウェーハ1を回転させる動作を必要最小限とする事ができ、測定ステージ2の回転41の動作が与える測定位置精度、ひいては抵抗率測定精度への影響を低減させることができる。
【実施例0064】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例)
以下の手順で、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率の測定を行った。
【0066】
まず、測定対象として、直径が300mm、導電型がn型、抵抗率が約30mΩのシリコン単結晶ウェーハを1枚用意した。このシリコン単結晶ウェーハを測定する為、シリコン単結晶ウェーハ中心を1箇所、シリコン単結晶ウェーハ中心から半径方向に100mmの位置を90°毎に4箇所、ウェーハ中心から半径方向に140mmの位置を90°毎に4箇所、計9箇所の測定を行なうレシピデータを、複数の測定点の位置情報として取得した。取得した位置情報(レシピデータ)を、以下の表5に示す。
【0067】
【0068】
次に、取得した位置情報を、角度θの設定が0°又は180°である測定点(分類A)と、角度θの設定が90°又は270°である測定点(分類B)とに分類した。次いで、分類Aにおいて、シリコン単結晶ウェーハの移動距離が最小となるように、測定順序を並び替えた。同様に、分類Bにおいても、シリコン単結晶ウェーハの移動距離が最小となるように、測定順序を並び替えた。
【0069】
次に、各分類内の角度θの最小値が昇順となるように、分類Aの後ろに分類Bを結合した。これにより、以下の表6に示す測定順序の測定レシピを作成した。
【0070】
【0071】
次に、作成した測定レシピに従って、9つの測定点でシリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定した。9つの測定点での一巡の測定を1つの測定サイクルとし、測定サイクルを5回繰り返して、各測定点における抵抗率測定結果の標準偏差を確認した。各測定位置における抵抗率測定値、及び抵抗率測定値の標準偏差をまとめたデータを、以下の表7に示す。
【0072】
【0073】
(比較例)
比較例では、表5に示した測定順序で抵抗率を測定したこと以外は実施例と同様にして、シリコン単結晶ウェーハの抵抗率を測定した。実施例と同様に、9つの測定点での一巡の測定を1つの測定サイクルとし、測定サイクルを5回繰り返して、各測定点における抵抗率測定結果の標準偏差を確認した。各測定位置における抵抗率測定値、及び抵抗率測定値の標準偏差をまとめたデータを表8に示す。
【0074】
【0075】
表7から明らかなように、実施例における標準偏差値は各測定点において約0.05mΩ程度であり、安定した精度で抵抗率測定を行うことができた。実施例では、本発明に従って作成した測定レシピに従って複数の測定点での抵抗率の測定を行ったため、1回の測定サイクルあたり、シリコン単結晶ウェーハを回転させる動作を1回とすることができ、その結果、回転誤差による測定位置のずれを低減でき、ひいては抵抗率測定精度を高めることができたと考えられる。
【0076】
一方、表8から明らかなように、比較例においては、約0.1~0.2mΩ程度の測定値ばらつきが発生してしまった。比較例では、本発明に従って作成したレシピに従って抵抗率の測定を行わずに、表5に示した測定順序で抵抗率の測定を行ったため、1回の測定サイクルあたり、シリコン単結晶ウェーハを7回回転させる必要があり、その結果、回転誤差による測定位置のずれが生じてしまったと考えられる。
【0077】
以上のように、抵抗率測定の前に予め、複数の測定点の位置情報を取得し、各測定点への移動に必要な回転動作が最小限となる様、測定順番の並べ替えを行なう処理を設けることで、シリコン単結晶ウェーハの角度誤差による測定位置ずれを低減し、測定精度を安定化させることができた。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…シリコン単結晶ウェーハ、 2…測定ステージ、 3…ステージ駆動機構部、 4…測定ステージの駆動、 5…測定プローブ、 6…プローブ昇降機構部、 7…ステージ駆動機構制御部、 8…抵抗率測定部、 9…測定レシピ出力部、 10…ウェーハ抵抗率測定装置、 11…測定点、 12…ウェーハの中心、 13…ウェーハの中心と測定点とを結ぶ直線、 14…ノッチ、 21…基準線、 22…基準線に直交する線、 31…ステージ回転機構部、 32…ステージ水平移動機構部、 41…矢印(回転)、 42…水平方向(水平移動)、 51…測定プローブの昇降、 52…プローブ針、 71、72、85及び86…配線。