IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177485
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221124BHJP
   B41J 13/22 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J13/22
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083765
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 淳
【テーマコード(参考)】
2C056
2C059
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC31
2C056EC36
2C056EC37
2C056HA29
2C059EE02
2C059EE27
(57)【要約】
【課題】円筒状の記録媒体に対し簡易な制御で効率よく画像を印刷できる印刷機を提供する。
【解決手段】記録媒体の外周面上に複数の印刷開始位置が設定される。プロセッサは、搬送手段に対する記録媒体の搬送制御と、各ステーションに備えられた印刷手段に対する記録媒体への印刷制御と、を行う。搬送制御では、搬送手段に対し、記録媒体を一定速度で回転させ、記録媒体がステーションに到着するたびに記録媒体の移動を停止させ、ステーションでの印刷が完了した後、記録媒体の移動を再開させる制御を行う。印刷制御では、各ステーションの印刷手段に対し、最初に印刷位置に到達した印刷開始位置から画像の印刷を開始させる制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機であって、
前記記録媒体を周方向に回転させながら経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記経路上に設定された複数のステーションごとに備えられ、印刷位置に位置した前記記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷手段と、
プロセッサと、
を備え、
前記記録媒体の外周面上に複数の印刷開始位置が設定され、
前記プロセッサは、
前記搬送手段に対する前記記録媒体の搬送制御と、
各前記ステーションに備えられた前記印刷手段に対する前記記録媒体への印刷制御と、
を行い、
前記搬送制御では、前記搬送手段に対し、前記記録媒体を一定速度で回転させ、前記記録媒体が前記ステーションに到着するたびに前記記録媒体の移動を停止させ、前記ステーションでの印刷が完了した後、前記記録媒体の移動を再開させる制御を行い、
前記印刷制御では、各前記ステーションの前記印刷手段に対し、最初に前記印刷位置に到達した前記印刷開始位置から画像の印刷を開始させる制御を行う、
印刷機。
【請求項2】
前記記録媒体の回転速度を選択する選択手段を更に備え、
前記記録媒体の外周面上には、前記選択手段で選択可能な回転速度ごとに複数の前記印刷開始位置が設定され、
前記プロセッサは、前記搬送制御において、前記選択手段で選択された回転速度で前記記録媒体を回転させる、
請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記記録媒体の外周面上には、前記選択手段で選択可能な回転速度ごとに異なる数の前記印刷開始位置が設定される、
請求項2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記記録媒体が前記ステーションに到着してから画像の印刷が開始されるまでの時間を待ち時間とした場合に、少なくとも2番目以降の前記ステーションにおいて、あらかじめ設定された前記待ち時間で画像の印刷が開始される位置に前記印刷開始位置が設定される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項5】
少なくとも2番目以降の前記ステーションにおいて、同一の前記待ち時間で画像の印刷が開始される位置に前記印刷開始位置が設定される、
請求項4に記載の印刷機。
【請求項6】
少なくとも2番目以降の前記ステーションにおいて、前記待ち時間が0で画像の印刷が開始される位置に前記印刷開始位置が設定される、
請求項4に記載の印刷機。
【請求項7】
前記ステーションが前記経路上に一定の間隔で設定される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項8】
円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機であって、
前記記録媒体を周方向に回転させながら経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記経路上に一定の間隔で設定された複数のステーションごとに備えられ、印刷位置に位置した前記記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷手段と、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記搬送手段に対する前記記録媒体の搬送制御と、
各前記ステーションに備えられた前記印刷手段に対する前記記録媒体への印刷制御と、
を行い、
前記搬送制御では、前記搬送手段に対し、前記記録媒体を一定速度で回転させ、前記記録媒体が前記ステーションに到着するたびに前記記録媒体の移動を停止させ、前記ステーションでの印刷が完了した後、前記記録媒体の移動を再開させる制御を行い、
前記印刷制御では、各前記ステーションの前記印刷手段に対し、前記記録媒体の外周面上に設定された印刷開始位置から画像の印刷を開始させる制御を行い、
前記ステーションの総数をnとし、i=1、2、…、nとし、複数の前記ステーションを前記記録媒体の搬送方向の上流側から順に第1ステーション、第2ステーション、…、第nステーションとし、各前記ステーションでの印刷時間をUとし、各前記ステーションの間を搬送される前記記録媒体の搬送時間をSとし、S/Uの小数点以下を切り捨てた値を<S/U>とした場合に、前記記録媒体の外周面上には、前記記録媒体の外周面上で画像の先端が印刷される位置を基準として、前記第iステーションにおける前記印刷開始位置が、前記基材の全周に対し(i-1)×(S/U-<S/U>)となる割合の位置に設定される、
印刷機。
【請求項9】
円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機であって、
前記記録媒体を周方向に回転させながら経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記経路上に一定の間隔で設定された複数のステーションごとに備えられ、印刷位置に位置した前記記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷手段と、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記搬送手段に対する前記記録媒体の搬送制御と、
各前記ステーションに備えられた前記印刷手段に対する前記記録媒体への印刷制御と、
を行い、
前記搬送制御では、前記搬送手段に対し、前記記録媒体を一定速度で回転させ、前記記録媒体が前記ステーションに到着するたびに前記記録媒体の移動を停止させ、前記ステーションでの印刷が完了した後、前記記録媒体の移動を再開させる制御を行い、
前記印刷制御では、各前記ステーションの前記印刷手段に対し、前記記録媒体の外周面上に設定された印刷開始位置から画像の印刷を開始させる制御を行い、
前記ステーションの総数をnとし、i=1、2、…、nとし、複数の前記ステーションを前記記録媒体の搬送方向の上流側から順に第1ステーション、第2ステーション、…、第nステーションとし、前記記録媒体が1回転する時間をTとし、第iステーションから第i+1ステーションまで搬送される前記記録媒体の搬送時間をSiとし、第iステーションでの印刷時間をUiとし、下記式F(i)の小数点以下を切り捨てた値を<F(i)>とした場合に、前記記録媒体の外周面上には、前記記録媒体の外周面上で画像の先端が印刷される位置を基準として、前記第1ステーションにおける前記印刷開始位置が、前記基材の全周に対し0となる割合の位置に設定され、前記第2ステーション以降の前記第iステーションにおける前記印刷開始位置が、前記基材の全周に対しF(i)-<F(i)>となる割合の位置に設定される、
印刷機。
【請求項10】
前記印刷手段が、インクジェット方式で画像を印刷する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に係り、特に円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機が知られている。
【0003】
特許文献1には、円筒状の記録媒体の外周面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷機が記載されている。特許文献1に記載の印刷機では、記録媒体を周方向に回転させながら搬送し、その搬送経路上に備えられた複数のインクジェットヘッドで記録媒体の外周面に複数の色の画像を印刷する。印刷の際は、記録媒体を回転させたまま、各インクジェットヘッドの設置位置で移動を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-179674公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の印刷機では、各インクジェットヘッドの設置位置において、待ち時間なしで印刷を開始できるようにするために、記録媒体を所定の回転速度で回転させて搬送している。具体的には、各インクジェットヘッド間を整数となる回転数で回転して搬送されるように回転速度を定めて、記録媒体を搬送している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の印刷機では、インクジェットヘッドのレイアウト等によって設定可能な記録媒体の回転速度が制限されてしまうという問題がある。この結果、回転速度を上げた高速印刷、回転速度を落とした高品位印刷等ができないという欠点がある。
【0007】
搬送中と印刷中とで記録媒体の回転速度を変える手法も考えられるが、回転に加減速が生じ、搬送の制御が複雑になるという欠点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、円筒状の記録媒体に対し簡易な制御で効率よく画像を印刷できる印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機であって、記録媒体を周方向に回転させながら経路に沿って搬送する搬送手段と、経路上に設定された複数のステーションごとに備えられ、印刷位置に位置した記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷手段と、プロセッサと、を備え、記録媒体の外周面上に複数の印刷開始位置が設定され、プロセッサは、搬送手段に対する記録媒体の搬送制御と、各ステーションに備えられた印刷手段に対する記録媒体への印刷制御と、を行い、搬送制御では、搬送手段に対し、記録媒体を一定速度で回転させ、記録媒体がステーションに到着するたびに記録媒体の移動を停止させ、ステーションでの印刷が完了した後、記録媒体の移動を再開させる制御を行い、印刷制御では、各ステーションの印刷手段に対し、最初に印刷位置に到達した印刷開始位置から画像の印刷を開始させる制御を行う、印刷機。
【0010】
(2)記録媒体の回転速度を選択する選択手段を更に備え、記録媒体の外周面上には、選択手段で選択可能な回転速度ごとに複数の印刷開始位置が設定され、プロセッサは、搬送制御において、選択手段で選択された回転速度で記録媒体を回転させる、(1)の印刷機。
【0011】
(3)記録媒体の外周面上には、選択手段で選択可能な回転速度ごとに異なる数の印刷開始位置が設定される、(2)の印刷機。
【0012】
(4)記録媒体がステーションに到着してから画像の印刷が開始されるまでの時間を待ち時間とした場合に、少なくとも2番目以降のステーションにおいて、あらかじめ設定された待ち時間で画像の印刷が開始される位置に印刷開始位置が設定される、(1)から(3)のいずれか一の印刷機。
【0013】
(5)少なくとも2番目以降のステーションにおいて、同一の待ち時間で画像の印刷が開始される位置に印刷開始位置が設定される、(4)の印刷機。
【0014】
(6)少なくとも2番目以降のステーションにおいて、待ち時間が0で画像の印刷が開始される位置に印刷開始位置が設定される、(4)の印刷機。
【0015】
(7)ステーションが経路上に一定の間隔で設定される、(1)から(6)のいずれか一の印刷機。
【0016】
(8)円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機であって、記録媒体を周方向に回転させながら経路に沿って搬送する搬送手段と、経路上に一定の間隔で設定された複数のステーションごとに備えられ、印刷位置に位置した記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷手段と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、搬送手段に対する記録媒体の搬送制御と、各ステーションに備えられた印刷手段に対する記録媒体への印刷制御と、を行い、搬送制御では、搬送手段に対し、記録媒体を一定速度で回転させ、記録媒体がステーションに到着するたびに記録媒体の移動を停止させ、ステーションでの印刷が完了した後、記録媒体の移動を再開させる制御を行い、印刷制御では、各ステーションの印刷手段に対し、記録媒体の外周面上に設定された印刷開始位置から画像の印刷を開始させる制御を行い、ステーションの総数をnとし、i=1、2、…、nとし、複数のステーションを記録媒体の搬送方向の上流側から順に第1ステーション、第2ステーション、…、第nステーションとし、各ステーションでの印刷時間をUとし、各ステーションの間を搬送される記録媒体の搬送時間をSとし、S/Uの小数点以下を切り捨てた値を<S/U>とした場合に、記録媒体の外周面上には、記録媒体の外周面上で画像の先端が印刷される位置を基準として、第iステーションにおける印刷開始位置が、基材の全周に対し(i-1)×(S/U-<S/U>)となる割合の位置に設定される、印刷機。
【0017】
(9)円筒状の記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷機であって、記録媒体を周方向に回転させながら経路に沿って搬送する搬送手段と、経路上に一定の間隔で設定された複数のステーションごとに備えられ、印刷位置に位置した記録媒体の外周面に画像を印刷する印刷手段と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、搬送手段に対する記録媒体の搬送制御と、各ステーションに備えられた印刷手段に対する記録媒体への印刷制御と、を行い、搬送制御では、搬送手段に対し、記録媒体を一定速度で回転させ、記録媒体がステーションに到着するたびに記録媒体の移動を停止させ、ステーションでの印刷が完了した後、記録媒体の移動を再開させる制御を行い、印刷制御では、各ステーションの印刷手段に対し、記録媒体の外周面上に設定された印刷開始位置から画像の印刷を開始させる制御を行い、ステーションの総数をnとし、i=1、2、…、nとし、複数のステーションを記録媒体の搬送方向の上流側から順に第1ステーション、第2ステーション、…、第nステーションとし、記録媒体が1回転する時間をTとし、第iステーションから第i+1ステーションまで搬送される記録媒体の搬送時間をSiとし、第iステーションでの印刷時間をUiとし、下記式F(i)の小数点以下を切り捨てた値を<F(i)>とした場合に、記録媒体の外周面上には、記録媒体の外周面上で画像の先端が印刷される位置を基準として、第1ステーションにおける印刷開始位置が、基材の全周に対し0となる割合の位置に設定され、第2ステーション以降の第iステーションにおける印刷開始位置が、基材の全周に対しF(i)-<F(i)>となる割合の位置に設定される、印刷機。
【0018】
【数1】
【0019】
(10)印刷手段が、インクジェット方式で画像を印刷する、(1)から(9)のいずれか一の印刷機。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、円筒状の記録媒体に対し簡易な制御で効率よく画像を印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】印刷機の概略構成を示す正面図
図2図1に示す印刷機の側面図
図3図1に示す印刷機の平面図
図4】ステーションにおけるインクジェットヘッドの配置の一例を示す図
図5】制御ユニットのハードウェア構成の一例を示すブロック図
図6】制御ユニットが実現する主な機能のブロック図
図7】印刷開始位置の設定の一例を示す図
図8】画像が印刷された基材の展開図
図9】第1ステーションでの印刷の処理の流れを示す図
図10】第1ステーションから第2ステーションへの基材の搬送の処理の流れを示す図
図11】第2ステーションでの印刷の処理の流れを示す図
図12】第2ステーションから第3ステーションへの基材の搬送の処理の流れを示す図
図13】第3ステーションでの印刷の処理の流れを示す図
図14】第3ステーションから第4ステーションへの基材の搬送の処理の流れを示す図
図15】第4ステーションでの印刷の処理の流れを示す図
図16】従来の制御手法と本実施の形態の制御手法とで処理効率の差を比較した表
図17】各ステーションにおいて基材の外周面に印刷される画像の一例を示す図
図18】各ステーションにおいて基材の外周面に印刷される画像の印刷用データの概念図
図19】印刷開始位置の設定の他の一例を示す図
図20】印刷開始位置を3箇所に設定した場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表
図21】画像が印刷された基材の展開図
図22】一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表
図23】制御ユニットが実現する主な機能のブロック図
図24】高速モードが選択された場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表
図25】低速モードが選択された場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表
図26】選択した回転速度に応じて印刷開始位置を設定する場合に、制御ユニットが実現する主な機能のブロック図
図27】低速モードが選択された場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表
図28】各ステーションにおいて待ち時間なしで画像を印刷する場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って、本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0023】
[第1の実施の形態]
ここでは、缶等の円筒状の基材の外周面にインクジェット方式でカラー画像を印刷する印刷機に本発明を適用する場合を例に説明する。基材は記録媒体の一例である。
【0024】
[構成]
図1は、印刷機の概略構成を示す正面図である。図2は、図1に示す印刷機の側面図である。図3は、図1に示す印刷機の平面図である。
【0025】
同図に示すように、本実施の形態の印刷機1は、基材2を搬送する搬送ユニット10、基材2の外周面に画像を印刷する印刷ユニット50、及び、印刷機1を制御する制御ユニット100を有する。
【0026】
[搬送ユニット]
搬送ユニット10は、基材2を周方向に回転させながら、所定の経路に沿って搬送する。搬送ユニット10は、ベース12と、ベース12上に敷設されたガイドレール14と、ガイドレール14上を走行するテーブル16と、テーブル16を駆動するテーブル用モータ18と、テーブル16に備えられたマンドレル20と、マンドレル20を駆動するマンドレル用モータ22と、を有する。
【0027】
ガイドレール14は、一対で構成され、基材2の搬送経路に沿って敷設される。本実施の形態では、基材2を直線に沿って水平に搬送する。よって、ガイドレール14は、直線で構成され、かつ、水平に敷設される。
【0028】
水平面内でガイドレール14が敷設される方向(基材2の搬送方向)をx軸方向とする。また、水平面内でx軸と直交する方向をy軸方向とする。また、水平面(x-y平面)に直交する方向をz軸方向とする。
【0029】
テーブル16は、矩形の平板形状を有し、ガイドブロック24を介して、ガイドレール14上をスライド自在に支持される。
【0030】
テーブル用モータ18は、テーブル16を駆動し、テーブル16をガイドレール14に沿って走行させる。テーブル用モータ18は、リニアモータで構成される。テーブル16には、リニアモータを構成するコイルユニット18Aが備えられる。ベース12には、リニアモータを構成するマグネットベース18Bが備えられる。
【0031】
マンドレル20は、基材2の保持手段であり、基材2の内周部に挿入されて、基材2を保持する。本実施の形態において、基材2は、一端が開口し、他端が閉塞された円筒形状を有する。基材2は、開口した端部からマンドレル20が挿入されて、マンドレル20に保持される。マンドレル20は、水平に配置され、かつ、基材2の搬送方向(x軸方向)と直交して配置される。すなわち、y軸と平行に配置される。したがって、マンドレル20に保持される基材2も水平に保持され、かつ、その搬送方向と直交して配置される。具体的には、その軸がy軸と平行に配置される。
【0032】
マンドレル用モータ22は、マンドレル20を駆動し、マンドレル20を軸回りに回転させる。マンドレル用モータ22は、テーブル16に搭載される。具体的には、テーブル16に備えられたブラケット26に取り付けられて、テーブル16に搭載される。テーブル16に搭載されたマンドレル用モータ22は、その出力軸が、水平に配置され、かつ、基材2の搬送方向と直交して配置される。すなわち、y軸と平行に配置される。マンドレル20は、このマンドレル用モータ22の出力軸の同軸上に取り付けられる。これにより、マンドレル20が、テーブル16上の所定の位置に所定の姿勢で配置される。すなわち、テーブル16から所定の高さの位置に水平に配置され、かつ、基材2の搬送方向と直交して配置される。
【0033】
以上のように構成される搬送ユニット10は、マンドレル用モータ22を駆動すると、マンドレル20が軸回りに回転する。これにより、マンドレル20に保持された基材2が周方向に回転する。また、テーブル用モータ18を駆動すると、テーブル16がガイドレール14に沿って移動する。これにより、基材2が、その回転軸と直交する方向に沿って水平に移動する。
【0034】
なお、印刷前の基材2は、搬送経路上に設定された図示しない供給ステーションで供給され、マンドレル20に装着される。また、印刷完了後の基材2は、搬送経路上に設定された図示しない回収ステーションでマンドレル20から取り外され、回収される。
【0035】
搬送ユニット10は、搬送手段の一例である。
【0036】
[印刷ユニット]
印刷ユニット50は、基材2の搬送経路上に設定された複数のステーションにおいて、基材2の外周面に順番に画像を印刷する。本実施の形態の印刷機1では、基材2の搬送経路上に4つのステーションSt1、St2、St3、St4が設定される。以下、必要に応じて、符号St1のステーションを第1ステーション、符号St2のステーションを第2ステーション、符号St3のステーションを第3ステーション、符号St4のステーションを第4ステーションとして、4つのステーションSt1~St4を区別する。本実施の形態の印刷機1では、4つのステーションSt1~St4が、基材2の搬送経路上に一定の間隔で設定される。したがって、各ステーション間における基材2の移動距離は同じである。各ステーションは、供給ステーション及び回収ステーションの間に配置される。
【0037】
各ステーションSt1~St4では、異なる色の画像が印刷される。本実施の形態の印刷機1では、第1ステーションSt1において、ブラック(black:Bk)の画像が印刷される。また、第2ステーションSt2において、シアン(cyan:C)の画像が印刷される。また、第3ステーションSt3において、マゼンタ(magenta:M)の画像が印刷される。また、第4ステーションSt4において、イエロー(yellow:Y)の画像が印刷される。
【0038】
各ステーションSt1~St4において、画像はインクジェット方式で印刷される。第1ステーションSt1には、ブラックのインク滴を吐出して、ブラックの画像を印刷するインクジェットヘッド52Bkが備えられる。第2ステーションSt2には、シアンのインク滴を吐出して、シアンの画像を印刷するインクジェットヘッド52Cが備えられる。第3ステーションSt3には、マゼンタのインク滴を吐出して、マゼンタの画像を印刷するインクジェットヘッド52Bkが備えられる。第4ステーションSt4には、イエローのインク滴を吐出して、イエローの画像を印刷するインクジェットヘッド52Yが備えられる。
【0039】
インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yは、ラインヘッドで構成され、各ステーションSt1~St4において、回転する基材2の外周面にシングルパスで画像を印刷する。シングルパスで画像を印刷することから、各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yは、少なくとも基材2の幅(軸方向の長さ)よりも長い印刷幅をもって構成される。ノズルの配置は特に限定されない。マトリクス状の配置を採用することもできる。
【0040】
図4は、ステーションにおけるインクジェットヘッドの配置の一例を示す図である。なお、同図は、第1ステーションSt1におけるインクジェットヘッド52Bkの配置例を示しているが、他のステーションにおける配置も同じである。
【0041】
搬送ユニット10によって回転しながら搬送される基材2は、各ステーションSt1~St4において、所定の停止位置で回転したまま移動を停止する。図1には、基材2が、各ステーションSt1~St4の停止位置で停止した状態が一点破線で示されている。
【0042】
各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yは、各ステーションSt1~St4において、停止位置に位置する基材2の真上に所定のクリアランスをもってノズル面54が位置するように配置される。ノズル面54は、ノズルが配置される面である。
【0043】
図4において、三角形のマークMNは、ノズルの位置を示している。また、三角形のマークMPは、停止位置に位置した基材に対し、ノズルから吐出されたインク滴が打滴される位置を示している。同図に示すように、各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yは、停止位置に位置する基材2の外周面に向けて鉛直下向きにインク滴を吐出する。各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yから吐出されたインク滴が打滴される位置が印刷位置とされる。したがって、マークMPで示す位置が印刷位置とされる。基材2は、回転により順次外周面が印刷位置を通過することで、外周面に画像が印刷される。
【0044】
各ステーションSt1~St4に備えられるインクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yは、印刷手段の一例である。
【0045】
[制御ユニット]
図5は、制御ユニットのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0046】
同図に示すように、制御ユニット100は、いわゆるコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、補助記憶装置104、入力装置105、表示装置106、及び、通信インターフェースInterface,IF)107等を備える。CPU101は、プロセッサの一例である。RAM102は、CPU101の作業領域として使用される。ROM103及び/又は補助記憶装置104には、CPU101が実行するプログラム及び各種データが記憶される。補助記憶装置104は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。入力装置105は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成される。表示装置106は、たとえば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode Display)等で構成される。通信インターフェース107は、外部機器との通信に使用される。基材2に印刷する画像のデータは、通信インターフェース107を介して外部機器から取得される。
【0047】
図6は、制御ユニットが実現する主な機能のブロック図である。
【0048】
制御ユニット100は、主として、画像データ取得部120、画像処理部122、印刷制御部124、搬送制御部126として機能する。これらの機能は、CPU101が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0049】
画像データ取得部120は、基材2の外周面に印刷する画像データを取得する。画像データは、通信インターフェース107を介して外部機器から取得する。
【0050】
画像処理部122は、画像データ取得部120で取得された画像データを処理して、各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yで印刷する印刷用データを生成する。印刷用データは、一般に画像データに対し、色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGB(standard Red Green Blue)等で表現された画像データを印刷機1で使用する各色のインク量データに変換する処理である。また、ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対し、誤差拡散等の処理を行って各色のドットデータに変換する処理である。ドットデータは、インク滴の配置を表すデータである。ドットデータが印刷用データとなる。本実施の形態の印刷機1は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色のインクを使用してカラー画像を印刷することから、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色の印刷用データが生成される。
【0051】
なお、後述するように、本実施の形態の印刷機1では、基材2の外周面上で画像の印刷を開始する位置が、ステーションSt1~St4によって異なる。したがって、各色の印刷用データは、印刷を開始する位置に応じたデータが生成される。この点については、後に詳述する。
【0052】
印刷制御部124は、画像処理部122で生成された各色の印刷用データに基づいて、各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yの駆動を個別に制御し、画像データが表す画像を基材2の外周面に印刷する。印刷に際して、印刷制御部124は、各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yに対し、印刷開始のトリガーを与えて、印刷処理を開始させる。トリガーは、基材2の外周面上に設定された印刷開始位置が、各インクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yに印刷位置(図4参照)に到達するタイミングで与えられる。この点については、後に詳述する。
【0053】
搬送制御部126は、搬送ユニット10を制御して、基材2の搬送を制御する。基材2の搬送の制御には、基材2の移動の制御、及び、基材2の回転の制御が含まれる。したがって、搬送制御部126は、基材2の移動を制御する移動制御部126A、及び、基材2の回転を制御する回転制御部126Bの機能を有する。移動制御部126Aは、テーブル用モータ18の駆動を制御して、基材2の移動を制御する。回転制御部126Bは、マンドレル用モータ22の駆動を制御して、基材2の回転を制御する。
【0054】
回転制御部126Bは、基材2の搬送中、基材2を常に一定の回転速度で回転させる。移動制御部126Aは、各ステーションSt1~St4で基材2の移動を停止させる。この停止中に各ステーションSt1~St4に備えられたインクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yによって、基材2の外周面に画像が印刷される。移動制御部126Aは、各ステーションSt1~St4において印刷の完了後、移動を再開させる。
【0055】
[印刷処理]
[印刷処理の概要]
上記のように、本実施の形態の印刷機1では、基材2を一定速度で回転させながら搬送し、各ステーションSt1~St4で順番に各色の画像を印刷する。各ステーションSt1~St4では、移動を停止させる一方、回転は継続させる。そして、回転する基材2の外周面にインクジェットヘッド52Bk、52C、52M、52Yで画像を印刷する。各ステーションSt1~St4において、画像の印刷は、基材2の外周面上に設定された印刷開始位置から開始される。本実施の形態の印刷機1では、印刷開始位置が2個所に設定され、各ステーションSt1~St4において、最初に印刷位置に到達した印刷開始位置から画像の印刷が開始される。なお、印刷開始位置を設定することは、トリガーを与えるタイミングを設定することと同義である。
【0056】
図7は、印刷開始位置の設定の一例を示す図である。
【0057】
同図は、基材2の外周面上の2個所に印刷開始位置を設定した場合の例を示している。同図において、三角形のマークM1、M2で示す位置が印刷開始位置である。以下、必要に応じて、マークM1で示す位置を第1印刷開始位置、マークM2で示す位置を第2印刷開始位置として、両者を区別する。図7に示すように、本実施の形態の印刷機1において、第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置に対し、基材2の回転方向(図7において時計回りの方向)と逆方向に0.5回転した位置に設定される。
【0058】
図8は、画像が印刷された基材の展開図である。
【0059】
上記のように、画像Iは、基材2の全周に印刷される。図8において、三角形のマークM0で示す位置は、基材2の回転方向において、画像Iの先端が印刷される位置である。図8に示すように、本実施の形態では、第1印刷開始位置が、画像の先端が印刷される位置と同じ位置に設定される。この場合、第1印刷開始位置では、画像の先端から印刷が開始される(図17(A)及び(C)参照)。一方、第2印刷開始位置では、画像の中間地点(画像の先端から基材の回転方向に沿って50%の地点)から印刷が開始される(図17(B)及び(D)参照)。
【0060】
上記のように、各ステーションSt1~St4では、最初に印刷位置に到達した印刷開始位置から画像の印刷が開始される。したがって、最初に第1印刷開始位置が印刷位置に到達した場合は、第1印刷開始位置から印刷が開始される(図17(A)及び(C)参照)。この場合、画像の先端から印刷が開始される。一方、最初に第2印刷開始位置が印刷位置に到達した場合は、第2印刷開始位置から印刷が開始される。この場合、画像の中間地点から印刷が開始される(図17(B)及び(D)参照)。
【0061】
[印刷処理の具体例]
以下、本実施の形態の印刷機1による具体的な印刷の処理の流れについて説明する。
【0062】
本実施の形態の印刷機1では、常に基材2を一定速度で回転させて各処理を行う。基材2が1回転する時間をTとする。Tは、単位時間である。本実施の形態では、基材2が1回転する時間で印刷が完了するものとする。よって、本実施の形態において、各ステーションSt1~St4での画像の印刷時間はTである。画像の印刷時間とは、各ステーションにおいて、画像の印刷が実行される時間である。各ステーションSt1~St4での画像の印刷時間は、各ステーションSt1~St4において、画像の印刷を開始してから次のステーションに移動を開始するまでの時間でもある。
【0063】
基材2がステーション間を移動する時間をSとする。時間Sは、各ステーション間を搬送される基材2の搬送時間である。
【0064】
印刷前の基材2は、図示しない供給ステーションで供給され、マンドレル20に装着される。この際、マンドレル20に対し、第1印刷開始位置及び第2印刷開始位置が所定の位置に位置するように装着される。これにより、マンドレル20の回転量から第1印刷開始位置及び第2印刷位置の把握が可能になる。
【0065】
第1ステーションSt1では、第1印刷開始位置が、最初に印刷位置に到達するものとする。
【0066】
図9は、第1ステーションでの印刷の処理の流れを示す図である。
【0067】
図9(A)は、基材2が第1ステーションSt1に到着した直後の状態を示している。基材2は、一定速度で回転したまま所定の停止位置で移動を停止する。停止位置で移動を停止することで、基材2はインクジェットヘッド52Bkの真下に位置する。
【0068】
図9(B)は、マークM1で示す第1印刷開始位置が印刷位置に到達した状態を示している。上記のように、第1ステーションSt1では、最初に第1印刷開始位置が印刷位置に到達する。第1印刷開始位置が印刷位置に到達するのと同時に印刷が開始される。印刷制御部124は、第1印刷開始位置が印刷位置に到達するタイミングでインクジェットヘッド52Bkにトリガーを与え、ブラックの画像の印刷を開始させる。画像は先端から印刷される(図17(A)参照)。
【0069】
図9(C)は、印刷開始から0.5T時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が0.5回転した状態を示している。印刷開始から0.5T時間経過することで、マークM2で示す第2印刷開始位置が印刷位置に到達する。この段階で画像の半分が印刷される。
【0070】
図9(D)は、印刷開始からT時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が1回転した状態を示している。基材2が1回転することにより、印刷が終了する。これにより、基材2の全周にブラックの画像が印刷される。
【0071】
図10は、第1ステーションから第2ステーションへの基材の搬送の処理の流れを示す図である。
【0072】
図10(A)は、第1ステーションSt1での印刷終了直後の状態を示している。第1ステーションSt1での印刷終了時、基材2は、マークM1で示す第1印刷開始位置が印刷位置に位置する。第1ステーションSt1での印刷が終了すると、第2ステーションSt2に向けて基材2の移動が開始される。
【0073】
図10(B)は、基材2が第1ステーションSt1から第2ステーションSt2に向けて搬送されている途中の状態を示している。基材2は、常に一定速度で回転しながら搬送される。基材2は、第1ステーションSt1を出発してからS時間後に第2ステーションSt2に到着する。
【0074】
図10(C)は、基材2が第2ステーションSt2に到着した直後の状態を示している。基材2は、一定速度で回転したまま所定の停止位置で移動を停止する。停止位置で移動を停止することで、基材2はインクジェットヘッド52Cの真下に位置する。
【0075】
図10(C)に示すように、基材2が第2ステーションSt2に到着した直後の状態では、マークM1で示す第1印刷開始位置よりもマークM2で示す第2印刷開始位置の方が印刷位置に近い位置に位置する。したがって、第2ステーションSt2では、マークM2で示す第2印刷開始位置の方が最初に印刷位置に到達する。
【0076】
図10(D)は、図10(C)に示す状態から所定時間が経過し、マークM2で示す第2印刷開始位置が印刷位置に到達した状態を示している。
【0077】
図11は、第2ステーションでの印刷の処理の流れを示す図である。
【0078】
図11(A)は、第2印刷開始位置が印刷位置に位置した状態を示している。第2印刷開始位置が印刷位置に到達するのと同時に印刷が開始される。印刷制御部124は、第2印刷開始位置が印刷位置に到達するタイミングでインクジェットヘッド52Cにトリガーを与え、シアンの画像の印刷を開始させる。上記のように、第2印刷開始位置では、画像の中間地点(画像の先端から基材の回転方向に沿って50%の地点)から印刷が開始される。
【0079】
図11(B)は、印刷開始から0.5T時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が0.5回転した状態を示している。印刷開始から0.5T時間経過することで、マークM1で示す第1印刷開始位置が印刷位置に到達する。この段階で画像の半分が印刷される。なお、第2ステーションSt2では、画像の中間地点から印刷を開始しているので、画像の後半部分から印刷か開始されることになる(図17(B)参照)。
【0080】
図11(C)は、印刷開始からT時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が1回転した状態を示している。基材2が1回転することにより、印刷が終了する。これにより、基材2の全周にシアンの画像が印刷される。
【0081】
図12は、第2ステーションから第3ステーションへの基材の搬送の処理の流れを示す図である。
【0082】
図12(A)は、第2ステーションSt2での印刷終了直後の状態を示している。第2ステーションSt2での印刷終了時、基材2は、マークM2で示す第2印刷開始位置が印刷位置に位置する。第2ステーションSt2での印刷が終了すると、第3ステーションSt3に向けて基材2の移動が開始される。
【0083】
図12(B)は、基材2が第2ステーションSt2から第3ステーションSt3に向けて搬送されている途中の状態を示している。基材2は、常に一定速度で回転しながら搬送される。基材2は、第2ステーションSt2を出発してからS時間後に第3ステーションSt3に到着する。
【0084】
図12(C)は、基材2が第3ステーションSt3に到着した直後の状態を示している。基材2は、一定速度で回転したまま所定の停止位置で移動を停止する。停止位置で移動を停止することで、基材2はインクジェットヘッド52Mの真下に位置する。
【0085】
図12(C)に示すように、基材2が第3ステーションSt3に到着した直後の状態では、マークM1で示す第1印刷開始位置の方が、マークM2で示す第2印刷開始位置よりも印刷位置に近い位置に位置する。したがって、第3ステーションSt3では、マークM1で示す第1印刷開始位置の方が最初に印刷位置に到達する。
【0086】
図12(D)は、図12(C)で示す状態から所定時間が経過し、マークM1で示す第1印刷開始位置が印刷位置に到達した状態を示している。
【0087】
図13は、第3ステーションでの印刷の処理の流れを示す図である。
【0088】
図13(A)は、第1印刷開始位置が印刷位置に位置した状態を示している。第1印刷開始位置が印刷位置に到達するのと同時に印刷が開始される。印刷制御部124は、第1印刷開始位置が印刷位置に到達するタイミングでインクジェットヘッド52Mにトリガーを与え、マゼンタの画像の印刷を開始させる。上記のように、第1印刷開始位置では、画像の先端から印刷が開始される(図17(C)参照)。
【0089】
図13(B)は、印刷開始から0.5T時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が0.5回転した状態を示している。印刷開始から0.5T時間経過することで、マークM1で示す第1印刷開始位置が印刷位置に到達する。この段階で画像の半分が印刷される。
【0090】
図13(C)は、印刷開始からT時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が1回転した状態を示している。基材2が1回転することにより、印刷が終了する。これにより、基材2の全周にマゼンタの画像が印刷される。
【0091】
図14は、第3ステーションから第4ステーションへの基材の搬送の処理の流れを示す図である。
【0092】
図14(A)は、第3ステーションSt3での印刷終了直後の状態を示している。第3ステーションSt3での印刷終了時、基材2は、マークM1で示す第1印刷開始位置が印刷位置に位置する。第3ステーションSt3での印刷が終了すると、第4ステーションSt4に向けて基材2の移動が開始される。
【0093】
図14(B)は、基材2が第3ステーションSt3から第4ステーションSt4に向けて搬送されている途中の状態を示している。基材2は、常に一定速度で回転しながら搬送される。基材2は、第3ステーションSt3を出発してからS時間後に第4ステーションSt4に到着する。
【0094】
図14(C)は、基材2が第4ステーションSt4に到着した直後の状態を示している。基材2は、一定速度で回転したまま所定の停止位置で移動を停止する。停止位置で移動を停止することで、基材2はインクジェットヘッド52Yの真下に位置する。
【0095】
図14(C)に示すように、基材2が第4ステーションSt4に到着した直後の状態では、マークM1で示す第1印刷開始位置よりもマークM2で示す第2印刷開始位置の方が印刷位置に近い位置に位置する。したがって、第4ステーションSt4では、マークM2で示す第2印刷開始位置の方が最初に印刷位置に到達する。
【0096】
図14(D)は、図14(C)に示す状態から所定時間が経過し、マークM2で示す第2印刷開始位置が印刷位置に到達した状態を示している。
【0097】
図15は、第4ステーションでの印刷の処理の流れを示す図である。
【0098】
図15(A)は、第2印刷開始位置が印刷位置に位置した状態を示している。第2印刷開始位置が印刷位置に到達するのと同時に印刷が開始される。印刷制御部124は、第2印刷開始位置が印刷位置に到達するタイミングでインクジェットヘッド52Yにトリガーを与え、イエローの画像の印刷を開始させる。上記のように、第2印刷開始位置では、画像の中間地点(画像の先端から基材の回転方向に沿って50%の地点)から印刷が開始される(図17(D)参照)。
【0099】
図15(B)は、印刷開始から0.5T時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が0.5回転した状態を示している。印刷開始から0.5T時間経過することで、マークM1で示す第1印刷開始位置が印刷位置に到達する。この段階で画像の半分が印刷される。なお、第4ステーションSt4では、画像の中間地点から印刷を開始しているので、画像の後半部分が印刷されることになる。
【0100】
図15(C)は、印刷開始からT時間経過後の状態を示している。すなわち、基材2が1回転した状態を示している。基材2が1回転することにより、印刷が終了する。これにより、基材2の全周にイエローの画像が印刷される。
【0101】
以上一連の工程で基材2は、その外周面上にブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの画像が印刷される。これにより、カラー画像が印刷される。
【0102】
第4ステーションSt4での印刷が終了すると、回収ステーションに向けて基材2の移動が開始される。そして、回収ステーションでマンドレル20から基材2が取り外され、回収される。
【0103】
このように、本実施の形態の印刷機1では、印刷開始位置が2個所に設定され、各ステーションにおいて、最初に印刷位置に到達した印刷開始位置から画像の印刷が開始される。これにより、各ステーションにおいて、印刷開始までの待ち時間(基材がステーションに到着してから画像の印刷が開始されるまでの時間)を短縮でき、円筒状の基材の外周面に効率よく画像を印刷できる。また、印刷のタイミングを制御するだけなので、簡易な制御で実施できる。
【0104】
[比較例]
図16は、従来の制御手法と本実施の形態の制御手法とで処理効率の差を比較した表である。同図では、ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでの経過時間の差を比較している。
【0105】
ここで、比較対象とする従来の制御手法とは、各ステーションにおいて、常に画像の先端位置から印刷を開始する場合の制御手法である。換言すると、従来の制御手法とは、印刷開始位置が1箇所のみ設定されている場合の制御手法である。
【0106】
基材2が1回転する時間をT、基材2がステーション間を移動する時間をSとする。時間T及び時間Sは、従来の制御手法と本実施の形態の制御手法とで共通の時間である。ここでは、時間Sが時間Tの1.3倍であるとする。すなわち、S=1.3Tであるとする。画像は、基材2の全周に印刷されるので、各ステーションSt1~St4での印刷時間はTである。
【0107】
ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでに発生する主なイベントと、そのイベントが発生するまでの経過時間は、次のとおりである。なお、経過時間は、ブラックの画像の印刷を開始してからの経過時間である。
【0108】
(1)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が開始される。経過時間は[0]である。
【0109】
(2)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が終了する。画像は、基材2の全周に印刷される。よって、経過時間は[T]である。すなわち、画像の印刷時間が経過時間となる。本例の場合、基材2が1回転する時間Tが印刷時間であるので、時間Tが経過時間となる。
【0110】
(3)基材2が第2ステーションSt2に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は[T]である。
【0111】
(4)基材2が第2ステーションSt2に到着する。各ステーション間における基材2の搬送時間はSである。よって、経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[T+S]である。ここで、S=1.3Tであるので、T+S=T+1.3T=2.3Tとなる。
【0112】
(5)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始される。ここで、基材2が第2ステーションSt2に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間をΔt2とする。Δt2は、第2ステーションSt2での待ち時間である。よって、第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始されるまでの経過時間は、待ち時間St2が加算されて、[T+S+Δt2]となる。
【0113】
従来の制御手法では、常に画像の先端位置から印刷が開始される。よって、待ち時間Δt2は、0.7Tとなる。したがって、従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2=T+1.3T+0.7T=3Tとなる。
【0114】
一方、本実施の形態の制御手法では、第2ステーションSt2において、第2印刷開始位置から印刷が開始される。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、本実施の形態の制御手法では、Δt2=0.2Tとなる。したがって、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2=T+1.3T+0.2T=2.5Tとなる。したがって、この時点で従来の制御手法よりも0.5Tだけ時間が短縮されている。
【0115】
(6)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間T(=基材2が1回転する時間)が加算されて、[T+S+Δt2+T]である。
【0116】
従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T=T+1.3T+0.7T+T=4Tとなる。
【0117】
一方、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T=T+1.3T+0.2T+T=3.5Tとなる。
【0118】
(7)基材2が第3ステーションSt3に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[T+S+Δt2+T]である。
【0119】
よって、従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T=T+1.3T+0.7T+T=4Tとなる。
【0120】
一方、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T=T+1.3T+0.2T+T=3.5Tとなる。
【0121】
(8)基材2が第3ステーションSt3に到着する。基材2の搬送時間はSである。よって、経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[T+S+Δt2+T+S]である。
【0122】
従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S=T+1.3T+0.7T+T+1.3T=5.3Tとなる。
【0123】
一方、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S=T+1.3T+0.2T+T+1.3T=4.8Tとなる。
【0124】
(9)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始される。ここで、基材2が第3ステーションSt3に到着してからマゼンタの画像の印刷が開始されるまでの時間をΔt3とする。Δt3は、第3ステーションSt3での待ち時間である。第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始されるまでの経過時間は、待ち時間Δt3が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3]となる。
【0125】
従来の制御手法での待ち時間Δt3は、0.7Tとなる。したがって、従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3=T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T=6Tとなる。
【0126】
一方、本実施の形態の制御手法では、第3ステーションSt3において、第1印刷開始位置から印刷が開始される。第1印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、本実施の形態の制御手法では、Δt2=0.2Tとなる。したがって、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3=T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T=5Tとなる。
【0127】
(10)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間T(=基材2が1回転する時間)が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T]である。
【0128】
従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T=T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T+T=7Tとなる。
【0129】
一方、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T=T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T+T=6Tとなる。
【0130】
(11)基材2が第4ステーションSt4に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T]である。
【0131】
よって、従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T=T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T+T=7Tとなる。
【0132】
一方、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T=T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T+T=6Tとなる。
【0133】
(12)基材2が第4ステーションSt4に到着する。基材2の搬送時間はSである。よって、経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S]である。
【0134】
従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S=T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T+T+1.3T=8.3Tとなる。
【0135】
一方、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S=T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T+T+1.3T=7.3Tとなる。
【0136】
(13)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始される。ここで、基材2が第4ステーションSt4に到着してからイエローの画像の印刷が開始されるまでの時間をΔt4とする。Δt4は、第4ステーションSt4での待ち時間である。第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始されるまでの経過時間は、待ち時間Δt4が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4]となる。
【0137】
従来の制御手法での待ち時間Δt4は、0.7Tとなる。したがって、従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4=T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T=9Tとなる。
【0138】
一方、本実施の形態の制御手法では、第4ステーションSt4において、第2印刷開始位置から印刷が開始される。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、本実施の形態の制御手法では、Δt2=0.2Tとなる。したがって、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4=T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T=7.5Tとなる。
【0139】
(14)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間T(=基材2が1回転する時間)が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4+T]となる。
【0140】
従来の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4+T=T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T+T+1.3T+0.7T+T=10Tとなる。
【0141】
一方、本実施の形態の制御手法で印刷した場合の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4+T=T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T+T+1.3T+0.2T+T=8.5Tとなる。
【0142】
このように、本実施の形態の制御手法によれば、第2ステーション以降の各ステーションにおいて、待ち時間を短縮できる。この結果、従来の制御手法に比して、全体の印刷時間を短縮できる。具体的には、従来の制御手法での全体の印刷時間が10Tであるのに対し、本実施の形態の制御手法での全体の印刷時間は8.5Tとなる。したがって、1.5Tだけ時間を短縮できる。すなわち、15%の時間短縮が可能になる。
【0143】
また、ステーションのレイアウト等によらず、基材2の搬送速度を任意に設定できる。したがって、搬送ユニット10で設定可能な最も速い速度で搬送することも可能になる。これにより、より処理効率を向上できる。
【0144】
なお、最も効率よく印刷するには、待ち時間なしで印刷する場合であるが、本実施の形態の印刷機のように、各ステーションで所定の待ち時間を設けることにより、安定した制御が実現できる。すなわち、各ステーションにおいて待ち時間なしで画像を印刷するためには、基材2の回転と移動の両方を高精度に制御する必要がある。待ち時間を設けることにより、移動の際に生じる誤差(到着の遅れ、進み等)を吸収でき、安定した制御が実現できる。なお、待ち時間なしで印刷する方法については、後述する。
【0145】
[印刷用データ]
図17は、各ステーションにおいて基材の外周面に印刷される画像の一例を示す図である。
【0146】
図17(A)に示すように、第1ステーションSt1では、基材の外周面にブラックの画像IBkが印刷される。図17(B)に示すように、第2ステーションSt2では、基材の外周面にシアンの画像ICが印刷される。図17(C)に示すように、第3ステーションSt3では、基材の外周面にマゼンタの画像IMが印刷される。図17(D)に示すように、第4ステーションSt4では、基材の外周面にイエローの画像IYが印刷される。
【0147】
また、第1ステーションSt1では、図17(A)に示すように、マークM1で示す第1印刷開始位置から画像の印刷が開始される。第1印刷開始位置は、基材の外周面上で画像の先端が印刷される位置と同じ位置に設定される。したがって、第1ステーションSt1では、画像の先端から印刷が開始される。第3ステーションSt3でも同様に、第1印刷開始位置から画像の印刷が開始される(図17(C)参照)。したがって、第3ステーションSt3でも、画像の先端から印刷が開始される。
【0148】
一方、第2ステーションSt2及び第4ステーションSt4では、図17(B)及び図17(D)に示すように、マークM2で示す第2印刷開始位置から画像の印刷が開始される。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に設定される。したがって、第2ステーションSt2及び第4ステーションSt4では、画像の中間地点(画像の先端から基材の回転方向に沿って50%の地点)から印刷が開始される。
【0149】
図18は、各ステーションにおいて基材の外周面に印刷される画像の印刷用データの概念図である。
【0150】
上記のように、第1ステーションSt1では、画像の先端から印刷が開始される。したがって、第1ステーションSt1で印刷するブラックの画像の印刷用データDBkは、図18(A)に示すように、ブラックの画像を先端から印刷するデータが生成される。
【0151】
第3ステーションSt3においても同様に画像の先端から印刷が開始される、よって、第3ステーションSt3で印刷するマゼンタの画像の印刷用データDMは、図18(C)に示すように、マゼンタの画像を先端から印刷するデータが生成される。
【0152】
一方、第2ステーションSt2では、画像の中間地点から印刷が開始される。したがって、第2ステーションSt2で印刷するシアンの画像の印刷用データDCは、図18(B)に示すように、シアンの画像を中間地点から印刷するデータが生成される。このデータは、シアンの画像ICを第2印刷開始位置で前後に二分割し、前半部分を後半部分の後ろに繋ぎ合わせた構造となる。
【0153】
第4ステーションSt4においても同様に画像の先端から印刷が開始される。よって、第4ステーションSt4で印刷するイエローの画像の印刷用データDYは、図18(D)に示すように、イエローの画像を中間地点から印刷するデータが生成される。
【0154】
[変形例]
[印刷開始位置の数]
上記実施の形態では、基材2の外周面上の2箇所に印刷開始位置を設定している。基材2の外周面上に設定する印刷開始位置の数は、これに限定されるものではない。ステーションの数、基材2の回転速度、基材2の搬送速度等に応じて、適宜設定できる。
【0155】
図19は、印刷開始位置の設定の他の一例を示す図である。
【0156】
同図は、基材2の外周面上の3個所に印刷開始位置を設定した場合の例を示している。同図において、三角形のマークM1、M2、M3で示す位置が印刷開始位置である。マークM1で示す印刷開始位置を第1印刷開始位置、マークM2で示す印刷開始位置を第2印刷開始位置、マークM3で示す印刷開始位置を第3印刷開始位置とする。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置に設定される。第3印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.34回転した位置に設定される。第1印刷開始位置は、第3印刷開始位置から0.33回転した位置に設定される。
【0157】
基材2が1回転する時間をTとする。また、基材2がステーション間を移動する時間をSとし、S=1.3Tであるとする。
【0158】
図20は、印刷開始位置を3箇所に設定した場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表である。
【0159】
ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでに発生する主なイベントと、そのイベントが発生するまでの経過時間は、次のとおりである。なお、経過時間は、ブラックの画像の印刷を開始してからの経過時間である。
【0160】
(1)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が開始される。経過時間は[0]である。なお、ブラックの画像は、第1印刷開始位置から印刷が開始されるものとする。
【0161】
(2)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間T(=基材2が1回転する時間)が加算されて、[T]である。
【0162】
(3)基材2が第2ステーションSt2に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は[T]である。
【0163】
(4)基材2が第2ステーションSt2に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[T+S]である。S=1.3Tであるので、T+S=T+1.3T=2.3Tとなる。
【0164】
(5)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始される。基材2が第2ステーションSt2に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt2とする。経過時間は、待ち時間Δt2が加算されて、[T+S+Δt2]となる。
【0165】
ここで、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt2は、0.03Tとなる。したがって、本例での経過時間は、T+S+Δt2=T+1.3T+0.03T=2.33Tとなる。
【0166】
(6)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間T(=基材2が1回転する時間)が加算されて、[T+S+Δt2+T]である。したがって、本例での経過時間は、T+S+Δt2+T=T+1.3T+0.03T+T=3.33Tとなる。
【0167】
(7)基材2が第3ステーションSt3に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[T+S+Δt2+T]である。したがって、本例での経過時間は、T+S+Δt2+T=T+1.3T+0.03T+T=3.33Tとなる。
【0168】
(8)基材2が第3ステーションSt3に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[T+S+Δt2+T+S]である。したがって、本例での経過時間は、T+S+Δt2+T+S=T+1.3T+0.03T+T+1.3T=4.63Tとなる。
【0169】
(9)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始される。基材2が第3ステーションSt3に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt3とする。経過時間は、待ち時間Δt3が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3]となる。
【0170】
ここで、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置には、第2印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第3印刷開始位置である。第3印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.34回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt3は、0.04Tとなる。したがって、本例での経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3=T+1.3T+0.03T+T+1.3T+0.04T=4.67Tとなる。
【0171】
(10)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間T(=基材2が1回転する時間)が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T]である。よって、本例の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T=T+1.3T+0.03T+T+1.3T+0.04T+T=5.67Tとなる。
【0172】
(11)基材2が第4ステーションSt4に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T]である。よって、本例の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T=T+1.3T+0.03T+T+1.3T+0.04T+T=5.67Tとなる。
【0173】
(12)基材2が第4ステーションSt4に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S]である。よって、本例の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S=T+1.3T+0.03T+T+1.3T+0.04T+T+1.3T=6.97Tとなる。
【0174】
(13)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始される。基材2が第4ステーションSt4に到着してからイエローの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt4とする。経過時間は、待ち時間Δt4が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4]となる。
【0175】
ここで、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置には、第3印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第1印刷開始位置である。第1印刷開始位置は、第3印刷開始位置から0.33回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt4は、0.03Tとなる。したがって、本例での経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4=T+1.3T+0.03T+T+1.3T+0.04T+T+1.3T+0.03T=7Tとなる。
【0176】
(14)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間T(=基材2が1回転する時間)が加算されて、[T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4+T]である。よって、本例の経過時間は、T+S+Δt2+T+S+Δt3+T+S+Δt4+T=T+1.3T+0.03T+T+1.3T+0.04T+T+1.3T+0.03T+T=8Tとなる。
【0177】
このように、本例の制御手法によれば、第2ステーション以降の各ステーションにおいて、更に待ち時間を短縮できる。これにより、全体の印刷時間を更に短縮できる。
【0178】
[印刷開始位置の設定箇所]
上記実施の形態では、印刷開始位置を等間隔に設定しているが、印刷開始位置の設定箇所は、これに限定されるものではない。ステーションの設定間隔、基材2の回転速度、基材2の搬送速度等に応じて、適宜調整できる。
【0179】
[画像の印刷範囲]
上記実施の形態では、基材の全周に画像を印刷する場合を例に説明したが、画像は、必ずしも基材の全周に印刷する必要はない。周方向の一部の領域にのみ画像を印刷する構成とすることもできる。周方向の一部の領域にのみ画像を印刷する場合、画像の印刷が完了した段階で次のステーションへの移動が開始される。したがって、この場合、基材の外周面上で画像が印刷される範囲を考慮して、印刷開始位置を設定することが好ましい。以下、基材の外周面上の一部の領域にのみ画像を印刷する場合の処理例について説明する。
【0180】
図21は、画像が印刷された基材の展開図である。
【0181】
同図に示すように、本例では、周方向の80%の範囲に画像Iが印刷されるものとする。図21において、三角形のマークM0で示す位置は、画像Iの先端が印刷される位置である。
【0182】
また、同図に示すように、本例では、基材2の外周面上の3箇所に印刷開始位置が設定されるものとする。図21において、三角形のマークM1で示す位置は、第1印刷開始位置の設定位置である。また、三角形のマークM2で示す位置は、第2印刷開始位置の設定位置である。また三角形のマークM3で示す位置は、第3印刷開始位置の設定位置である。第1印刷開始位置は、画像の先端が印刷される位置と同じ位置に設定される。また、第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って33%の地点)に設定される。また、第3印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.34回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って67%の地点)に設定される。
【0183】
図22は、一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表である。
【0184】
本例では、基材2が1回転する時間をTとする。また、基材2がステーション間を移動する時間をSとし、S=1.3Tであるとする。また、第nステーションにおける画像の印刷時間をUnとする。
【0185】
ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでに発生する主なイベントと、そのイベントが発生するまでの経過時間は、次のとおりである。なお、経過時間は、ブラックの画像の印刷を開始してからの経過時間である。
【0186】
(1)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が開始される。経過時間は[0]である。なお、ブラックの画像は、第1印刷開始位置から印刷が開始されるものとする。
【0187】
(2)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間U1が加算されて、[U1]である。ここで、上記のように、第1ステーションSt1では、第1印刷開始位置から印刷が開始される。第1印刷開始位置は、画像の先端を印刷する位置と同じ位置に設定されている。よって、第1ステーションSt1での印刷時間U1は、U1=0.8Tとなる。したがって、経過時間は0.8Tとなる。
【0188】
(3)基材2が第2ステーションSt2に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は[U1]である。本例の場合は、0.8Tとなる。
【0189】
(4)基材2が第2ステーションSt2に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[T+S]である。S=1.3Tであるので、U1+S=0.8T+1.3T=2.1Tとなる。
【0190】
(5)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始される。基材2が第2ステーションSt2に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt2とする。経過時間は、待ち時間Δt2が加算されて、[U1+S+Δt2]となる。
【0191】
ここで、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.1回転した位置が位置している。そして、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt2は、0.23Tとなる。したがって、本例での経過時間は、U1+S+Δt2=0.8T+1.3T+0.23T=2.33Tとなる。
【0192】
(6)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が終了する。経過時間は、第2ステーションSt2での印刷時間U2が加算されて、[U1+S+Δt2+U2]である。ここで、第2ステーションSt2では、第2印刷開始位置から印刷が開始される。第2印刷開始位置は、画像の先端から周方向に0.33%の位置に設定されている。よって、第2ステーションSt2での印刷時間U2は、U2=Tとなる。したがって、本例での経過時間は、U1+S+Δt2+U2=0.8T+1.3T+0.23T+T=3.33Tとなる。
【0193】
(7)基材2が第3ステーションSt3に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[U1+S+Δt2+U2]である。したがって、本例での経過時間は、U1+S+Δt2+U2=0.8T+1.3T+0.23T+T=3.33Tとなる。
【0194】
(8)基材2が第3ステーションSt3に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[U1+S+Δt2+U2+S]である。したがって、本例での経過時間は、U1+S+Δt2+U2+S=0.8T+1.3T+0.23T+T+1.3T=4.63Tとなる。
【0195】
(9)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始される。基材2が第3ステーションSt3に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt3とする。経過時間は、待ち時間Δt3が加算されて、[U1+S+Δt2+U2+S+Δt3]となる。
【0196】
ここで、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置には、第2印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第3印刷開始位置である。第3印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.34回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt3は、0.04Tとなる。したがって、本例での経過時間は、U1+S+Δt2+U2+S+Δt3=0.8T+1.3T+0.23T+T+1.3T+0.04T=4.67Tとなる。
【0197】
(10)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が終了する。経過時間は、第3ステーションSt3での印刷時間U3が加算されて、[U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3]である。ここで、第2ステーションSt2では、第2印刷開始位置から印刷が開始される。第2印刷開始位置は、画像の先端から周方向に0.33%の位置に設定されている。よって、第2ステーションSt2での印刷時間U2は、U2=Tとなる。したがって、本例での経過時間は、U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3=0.8T+1.3T+0.23T+T+1.3T+0.04T+T=5.67Tとなる。
【0198】
(11)基材2が第4ステーションSt4に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3]である。よって、本例の経過時間は、U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3=0.8T+1.3T+0.23T+T+1.3T+0.04T+T=5.67Tとなる。
【0199】
(12)基材2が第4ステーションSt4に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3+S]である。よって、本例の経過時間は、U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3+S=0.8T+1.3T+0.23T+T+1.3T+0.04T+T+1.3T=6.97Tとなる。
【0200】
(13)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始される。基材2が第4ステーションSt4に到着してからイエローの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt4とする。経過時間は、待ち時間Δt4が加算されて、[U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3+S+Δt4]となる。
【0201】
ここで、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置には、第3印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第1印刷開始位置である。第1印刷開始位置は、第3印刷開始位置から0.33回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt4は、0.03Tとなる。したがって、本例での経過時間は、U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3+S+Δt4=0.8T+1.3T+0.23T+T+1.3T+0.04T+T+1.3T+0.03T=7Tとなる。
【0202】
(14)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が終了する。経過時間は、第4ステーションSt4での印刷時間U4が加算されて、[U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3+S+Δt4+U4]である。ここで、上記のように、第4ステーションSt4では、第1印刷開始位置から印刷が開始される。よって、第1ステーションSt1での印刷時間U4は、U4=0.8Tとなる。したがって、経過時間は、U1+S+Δt2+U2+S+Δt3+U3+S+Δt4+U4=0.8T+1.3T+0.23T+T+1.3T+0.04T+T+1.3T+0.03T+0.8T=7.8Tとなる。
【0203】
このように、基材の周方向の一部の領域にのみ画像を印刷する場合であっても、効率よく画像を印刷できる。
【0204】
[画像の先端を印刷する位置の変形例]
基材の外周面上で画像の先端が印刷される位置を先端印刷位置とする(図8において、マークM0で示す位置)。先端印刷位置が特に定められていない場合、基材の外周面上の任意の位置を先端印刷位置に設定できる。この場合、基材2が第1ステーションSt1に到着した時点で印刷位置に位置している位置を先端印刷位置に設定することが好ましい。これにより、第1ステーションSt1において、待ち時間なしで印刷が開始できる。この場合、設定された先端印刷位置を基準に複数の印刷開始位置が設定される。たとえば、上記実施の形態の例では、設定された先端印刷位置に第1印刷開始位置が設定され、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に第2印刷開始位置が設定される。また、たとえば、3箇所に印刷開始位置が設定される変形例の例では、設定された先端印刷位置に第1印刷開始位置が設定され、第1印刷開始位置から0.33回転した位置に第2印刷開始位置が設定され、第2印刷開始位置から0.33回転した位置に第3印刷開始位置が設定される。
【0205】
この他、基材2が第1ステーションSt1に到着後、所定時間経過した後に印刷位置に位置している位置を先端印刷位置に設定することもできる。すなわち、所定の待ち時間の経過を待って、印刷を開始する構成とすることもできる。
【0206】
[ステーションの設定数及び設定間隔]
上記実施の形態では、基材の経路上に4つのステーションを設定する場合を例に説明したが、基材の経路上に設定するステーションの数は、これに限定されるものではない。印刷の目的及び用途等に応じて適宜設定できる。たとえば、5つのステーションを設定し、各ステーションにおいて、ホワイト、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各画像を印刷する構成とすることもできる。
【0207】
また、設定された各ステーションは、必ずしもすべてを使用する必要はない。この場合、使用しないステーションは、停止せずに通過することとなる。上記実施の形態において、ブラック及びマゼンタのみを使用して印刷する場合、第2ステーション及び第4ステーションは、停止せずに通過することとなる。
【0208】
また、上記実施の形態では、各ステーションを等間隔に設定しているが、各ステーションは、必ずしも等間隔に設定する必要はない。この場合、各ステーションの設定間隔を考慮して、印刷開始位置を設定することが好ましい。
【0209】
[各ステーションでの印刷時間]
上記実施の形態では、各ステーションにおいて、基材2が1回転して印刷が完了する構成としているが、1つのステーションにおいて、基材2を複数回回転させて、印刷を完了させる構成とすることもできる。この場合、たとえば、基材2をm回回転させて印刷を完了させる場合、印刷時間は、m×Tとなる(Tは、基材が1回転する時間)。
【0210】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、基材の回転速度を選択して印刷できる場合について説明する。
【0211】
基材の回転速度を選択できる構成とすることにより、目的及び用途に応じた印刷が可能になる。たとえば、基材の回転速度を速くすることにより、高速印刷が可能になる。一方、基材の回転速度を遅くすることにより、より高品質な画像の印刷が可能になる。
【0212】
以下においては、基材の回転速度を高速及び低速の2段階に切り替えられる場合について説明する。すなわち、第1の回転速度と、第1の回転速度よりも遅い回転速度である第2の回転速度のいずれかを選択できる場合について説明する。第1の回転速度で印刷するモードを高速モードとし、第2の回転速度で印刷するモードを低速モードとする。低速モードでは、より高品質な画像の印刷が可能になる。よって、低速モードは、高画質モードと同義である。
【0213】
なお、基材の回転速度を選択できる以外、装置の基本構成は、第1の実施の形態と同じである。したがって、ここでは第1の実施の形態の印刷機との相違点についてのみ説明する。
【0214】
図23は、制御ユニットが実現する主な機能のブロック図である。
【0215】
制御ユニット100は、モード選択処理部128の機能を更に有する。本機能は、CPU101が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0216】
モード選択処理部128は、印刷モードの選択を受け付ける処理を行う。すなわち、基材2を第1の回転速度で回転させて印刷する高速モードと、基材2を第2の回転速度で回転させて印刷する低速モードとの選択を受け付ける処理を行う。
【0217】
モード選択処理部128は、ユーザからの指示に応じて、印刷モードの選択画面を表示装置106に表示させる。印刷モードの選択画面では、たとえば、選択可能な印刷モードが一覧表示される。本実施の形態では、高速モード及び低速モードが表示される。モード選択処理部128は、入力装置105を介して、印刷モードの選択を受け付ける。本実施の形態において、モード選択処理部128、表示装置106及び入力装置105は、選択手段を構成する。なお、本実施の形態では、印刷モードに応じて基材2の回転速度が変わる。よって、印刷モードを選択することは、基材2の回転速度を選択することと同義である。
【0218】
搬送制御部126は、モード選択処理部128で選択された印刷モードに応じて、基材2の搬送を制御する。すなわち、選択された印刷モードに応じた回転速度で基材2を回転させて、基材2を搬送する。高速モードに設定された場合の基材2の回転速度をVHとし、回転速度VHで基材2を回転させた場合に、基材2が1回転する時間をTHとする。また、低速モードに設定された場合の基材2の回転速度をVLとし、回転速度VLで基材2を回転させた場合に、基材2が1回転する時間をTLとする。本実施の形態では、TH=Tとする。また、TL=1.2Tとする。
【0219】
印刷制御部124は、モード選択処理部128で選択された印刷モードに応じて、基材2に対する印刷を制御する。
【0220】
[印刷処理]
[高速モードでの印刷処理]
図24は、高速モードが選択された場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表である。
【0221】
上記のように、高速モードにおいて、基材2は回転速度VHで回転し、時間THで1回転する。TH=Tである。
【0222】
基材2がステーション間を移動する時間をSとし、S=1.3Tであるとする。よって、高速モードでは、S=1.3THである。
【0223】
また、本実施の形態では、基材2の全周に画像を印刷するものとする。よって、各ステーションSt1~St4における印刷時間はTHとなる。
【0224】
また、本実施の形態では、基材2の外周の2箇所に印刷開始位置が設定されるものとする。すなわち、第1印刷開始位置及び第2印刷開始位置が設定されるものとする。図8に示すように、マークM1で示す第1印刷開始位置は、画像の先端が印刷される位置と同じ位置に設定される。一方、マークM2で示す第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って50%の地点)に設定される。
【0225】
ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでに発生する主なイベントと、そのイベントが発生するまでの経過時間は、次のとおりである。なお、経過時間は、ブラックの画像の印刷を開始してからの経過時間である。
【0226】
(1)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が開始される。経過時間は[0]である。なお、ブラックの画像は、第1印刷開始位置から印刷が開始されるものとする。
【0227】
(2)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間が加算されて、[TH]である。
【0228】
(3)基材2が第2ステーションSt2に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は[TH]である。
【0229】
(4)基材2が第2ステーションSt2に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TH+S]である。S=1.3THであるので、TH+S=TH+1.3TH=2.3THとなる。
【0230】
(5)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始される。基材2が第2ステーションSt2に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt2とする。経過時間は、待ち時間Δt2が加算されて、[TH+S+Δt2]となる。
【0231】
ここで、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt2は、0.2THとなる。したがって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2=TH+1.3TH+0.2TH=2.5THとなる。
【0232】
(6)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が終了する。経過時間は、第2ステーションSt2での印刷時間THが加算されて、[TH+S+Δt2+TH]である。よって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH=TH+1.3TH+0.2TH+TH=3.5THとなる。
【0233】
(7)基材2が第3ステーションSt3に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[TH+S+Δt2+TH]である。よって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH=TH+1.3TH+0.2TH+TH=3.5THとなる。
【0234】
(8)基材2が第3ステーションSt3に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TH+S+Δt2+TH+S]である。よって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH+S=TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH=4.8THとなる。
【0235】
(9)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始される。基材2が第3ステーションSt3に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt3とする。経過時間は、待ち時間Δt3が加算されて、[TH+S+Δt2+TH+S+Δt3]となる。
【0236】
ここで、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置には、第2印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第1印刷開始位置である。第1印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt3は、0.2THとなる。したがって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH+S+Δt3=TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH=5THとなる。
【0237】
(10)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が終了する。経過時間は、第3ステーションSt3での印刷時間THが加算されて、[TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH]である。よって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH=TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH+TH=6THとなる。
【0238】
(11)基材2が第4ステーションSt4に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH]である。よって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH=TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH+TH=6THとなる。
【0239】
(12)基材2が第4ステーションSt4に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH+S]である。よって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH+S=TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH=7.3THとなる。
【0240】
(13)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始される。基材2が第4ステーションSt4に到着してからイエローの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt4とする。経過時間は、待ち時間Δt4が加算されて、[TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH+S+Δt4]となる。
【0241】
ここで、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt4は、0.2THとなる。したがって、本例での経過時間は、TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH+S+Δt4=TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH=7.5THとなる。
【0242】
(14)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が終了する。経過時間は、第4ステーションSt4での印刷時間THが加算されて、[TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH+S+Δt4+TH]である。よって、本モードでの経過時間は、TH+S+Δt2+TH+S+Δt3+TH+S+Δt4+TH=TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH+TH+1.3TH+0.2TH+TH=8.5THとなる。
【0243】
[低速モードでの印刷処理]
図25は、低速モードが選択された場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表である。
【0244】
上記のように、低速モードにおいて、基材2は回転速度VLで回転し、時間TLで1回転する。TL=1.2Tである。
【0245】
基材2がステーション間を移動する時間をSとし、S=1.3Tであるとする。よって、低速モードでは、S=1.3×(TL/1.2)=1.08TLである。
【0246】
ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでに発生する主なイベントと、そのイベントが発生するまでの経過時間は、次のとおりである。なお、経過時間は、ブラックの画像の印刷を開始してからの経過時間である。
【0247】
(1)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が開始される。経過時間は[0]である。なお、ブラックの画像は、第1印刷開始位置から印刷が開始されるものとする。
【0248】
(2)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間が加算されて、[TL]である。
【0249】
(3)基材2が第2ステーションSt2に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は[TL]である。
【0250】
(4)基材2が第2ステーションSt2に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TL+S]である。S=1.08TLであるので、TL+S=TL+1.08TL=2.08TLとなる。
【0251】
(5)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始される。基材2が第2ステーションSt2に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt2とする。経過時間は、待ち時間Δt2が加算されて、[TL+S+Δt2]となる。
【0252】
ここで、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.08回転した位置が位置している。そして、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt2は、0.42TLとなる。したがって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2=TL+1.08TL+0.42TL=2.5TLとなる。
【0253】
(6)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が終了する。経過時間は、第2ステーションSt2での印刷時間TLが加算されて、[TL+S+Δt2+TL]である。よって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL=TL+1.08TL+0.42TL+TL=3.5TLとなる。
【0254】
(7)基材2が第3ステーションSt3に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[TL+S+Δt2+TL]である。よって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL=TL+1.08TL+0.42TL+TL=3.5TLとなる。
【0255】
(8)基材2が第3ステーションSt3に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S]である。よって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S=TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL=4.58TLとなる。
【0256】
(9)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始される。基材2が第3ステーションSt3に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt3とする。経過時間は、待ち時間Δt3が加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3]となる。
【0257】
ここで、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置には、第2印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第1印刷開始位置である。第1印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt3は、0.42TLとなる。したがって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3=TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL=5TLとなる。
【0258】
(10)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が終了する。経過時間は、第3ステーションSt3での印刷時間TLが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL]である。よって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL=TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL+TL=6TLとなる。
【0259】
(11)基材2が第4ステーションSt4に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL]である。よって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL=TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL+TL=6TLとなる。
【0260】
(12)基材2が第4ステーションSt4に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S]である。よって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S=TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL=7.08TLとなる。
【0261】
(13)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始される。基材2が第4ステーションSt4に到着してからイエローの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt4とする。経過時間は、待ち時間Δt4が加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4]となる。
【0262】
ここで、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.3回転した位置が位置している。そして、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt4は、0.42TLとなる。したがって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4=TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL=7.5TLとなる。
【0263】
(14)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が終了する。経過時間は、第4ステーションSt4での印刷時間TLが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4+TL]である。よって、本モードでの経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4+TL=TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL+TL+1.08TL+0.42TL+TL=8.5TLとなる。
【0264】
このように、基材の回転速度を切り替えて印刷する場合においても、印刷開始位置を複数箇所に設定して印刷することにより、効率よく画像を印刷できる。
【0265】
[変形例]
基材の回転速度を選択できる構成とした場合、選択した回転速度に応じて印刷開始位置を設定することが好ましい。
【0266】
図26は、選択した回転速度に応じて印刷開始位置を設定する場合に、制御ユニットが実現する主な機能のブロック図である。
【0267】
制御ユニット100は、印刷開始位置設定処理部130の機能を更に有する。本機能は、CPU101が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0268】
印刷開始位置設定処理部130は、モード選択処理部128で選択された印刷モードに応じて、基材2の外周面上に印刷開始位置を設定する。設定する印刷開始位置の数及び位置については、印刷モードに応じてあらかじめ定められる。設定すべき印刷開始位置の数及び位置の情報(印刷開始位置の設定情報)は、たとえば、ROM103又は補助記憶装置104に記憶される。印刷開始位置設定処理部130は、モード選択処理部128で選択された印刷モードに対応する設定情報を読み出し、印刷開始位置を設定する。本実施の形態では、各印刷モードにおいて、次のように印刷開始位置が設定される。
【0269】
高速モードでは、基材2の外周面上の2箇所に印刷開始位置が設定される。すなわち、第1印刷開始位置及び第2印刷開始位置が設定される。図8に示すように、第1印刷開始位置は、画像の先端が印刷される位置と同じ位置に設定される。一方、第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.5回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って50%の地点)に設定される。
【0270】
低速モードでは、基材2の外周面上の3箇所に印刷開始位置が設定される。すなわち、第1印刷開始位置、第2印刷開始位置及び第3印刷開始位置が設定される。図21に示すように、第1印刷開始位置は、画像の先端が印刷される位置と同じ位置に設定される。また、第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って33%の地点)に設定される。また、第3印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.34回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って67%の地点)に設定される。
【0271】
このように、本例では、印刷モードごとに異なる数の印刷開始位置が設定される。
【0272】
搬送制御部126は、モード選択処理部128で選択された印刷モードに応じて、基材2の搬送を制御する。すなわち、選択された印刷モードに応じた回転速度で基材2を回転させて、基材2を搬送する。高速モードに設定された場合の基材2の回転速度をVHとし、回転速度VHで基材2を回転させた場合に、基材2が1回転する時間をTHとする。また、低速モードに設定された場合の基材2の回転速度をVLとし、回転速度VLで基材2を回転させた場合に、基材2が1回転する時間をTLとする。本実施の形態では、TH=Tとする。また、TL=1.2Tとする。
【0273】
印刷制御部124は、モード選択処理部128で選択された印刷モード及び印刷開始位置設定処理部130で設定された印刷開始位置に応じて、基材2に対する印刷を制御する。
【0274】
[印刷処理]
高速モードが選択された場合の処理は、上記実施の形態の場合と同じである。したがって、ここでは、低速モードが選択され場合の処理について説明する。
【0275】
図27は、低速モードが選択された場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表である。
【0276】
上記のように、低速モードにおいて、基材2は回転速度VLで回転し、時間TLで1回転する。TL=1.2Tである。
【0277】
基材2がステーション間を移動する時間をSとし、S=1.3Tであるとする。よって、低速モードでは、S=1.3×(TL/1.2)=1.08TLである。
【0278】
また、上記のように、低速モードでは、基材2の外周面上の3箇所に印刷開始位置が設定される。第1印刷開始位置は、画像の先端が印刷される位置と同じ位置に設定される。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って33%の地点)に設定される。また、第3印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.34回転した位置(画像の先端から基材の回転方向に沿って67%の地点)に設定される。
【0279】
ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでに発生する主なイベントと、そのイベントが発生するまでの経過時間は、次のとおりである。なお、経過時間は、ブラックの画像の印刷を開始してからの経過時間である。
【0280】
(1)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が開始される。経過時間は[0]である。なお、ブラックの画像は、第1印刷開始位置から印刷が開始されるものとする。
【0281】
(2)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間が加算されて、[TL]である。
【0282】
(3)基材2が第2ステーションSt2に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は[TL]である。
【0283】
(4)基材2が第2ステーションSt2に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TL+S]である。S=1.08TLであるので、TL+S=TL+1.08TL=2.08TLとなる。
【0284】
(5)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始される。基材2が第2ステーションSt2に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt2とする。経過時間は、待ち時間Δt2が加算されて、[TL+S+Δt2]となる。
【0285】
ここで、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.08回転した位置が位置している。そして、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt2は、0.25TLとなる。したがって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2=TL+1.08TL+0.25TL=2.33TLとなる。
【0286】
(6)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が終了する。経過時間は、第2ステーションSt2での印刷時間TLが加算されて、[TL+S+Δt2+TL]である。よって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL=TL+1.08TL+0.25TL+TL=3.33TLとなる。
【0287】
(7)基材2が第3ステーションSt3に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[TL+S+Δt2+TL]である。よって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL=TL+1.08TL+0.25TL+TL=3.33TLとなる。
【0288】
(8)基材2が第3ステーションSt3に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S]である。よって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S=TL+1.08TL+0.25TL+TL+1.08TL=4.41TLとなる。
【0289】
(9)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始される。基材2が第3ステーションSt3に到着してからシアンの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt3とする。経過時間は、待ち時間Δt3が加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3]となる。
【0290】
ここで、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置には、第2印刷開始位置から0.08回転した位置が位置している。そして、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第3印刷開始位置である。第3印刷開始位置は、第2印刷開始位置から0.34回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt3は、0.26TLとなる。したがって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3=TL+1.08TL+0.25TL+TL+1.08TL+0.26TL=4.67TLとなる。
【0291】
(10)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が終了する。経過時間は、第3ステーションSt3での印刷時間TLが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL]である。よって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL=TL+1.08TL+0.25TL+TL+1.08TL+0.26TL+TL=5.67TLとなる。
【0292】
(11)基材2が第4ステーションSt4に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL]である。よって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL=TL+1.08TL+0.25TL+TL+1.08TL+0.26TL+TL=5.67TLとなる。
【0293】
(12)基材2が第4ステーションSt4に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S]である。よって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S=TL+1.08TL+0.25TL+TL+1.08TL+0.26TL+TL+1.08TL=6.75TLとなる。
【0294】
(13)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始される。基材2が第4ステーションSt4に到着してからイエローの画像の印刷が開始されるまでの時間(待ち時間)をΔt4とする。経過時間は、待ち時間Δt4が加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4]となる。
【0295】
ここで、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置には、第1印刷開始位置から0.08回転した位置が位置している。そして、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置から最も近い印刷開始位置は、第2印刷開始位置である。第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.33回転した位置に設定されている。よって、待ち時間Δt4は、0.25TLとなる。したがって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4=TL+1.08TL+0.25TL+TL+1.08TL+0.26TL+TL+1.08TL+0.25TL=7TLとなる。
【0296】
(14)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が終了する。経過時間は、第4ステーションSt4での印刷時間TLが加算されて、[TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4+TL]である。よって、本例での経過時間は、TL+S+Δt2+TL+S+Δt3+TL+S+Δt4+TL=TL+1.08TL+0.25TL+TL+1.08TL+0.26TL+TL+1.08TL+0.25TL+TL=8TLとなる。
【0297】
印刷開始位置を2箇所に設定した場合と比較すると、印刷開始位置を3箇所に設定することで、全体の印刷時間を0.5TL時間短縮できる。
【0298】
このように、印刷モードごとに印刷開始位置を設定することにより、より効率よく画像を印刷できる。設定する印刷開始位置の数及び位置は、基材の回転速度、搬送速度、ステーションの設置数、レイアウト等を考慮して設定することが好ましい。
【0299】
[第3の実施の形態]
上記実施の形態では、各ステーションにおいて、所定の待ち時間をもって画像の印刷を開始する構成とされている。特に、第1の実施の形態の制御手法では、第2ステーション以降の各ステーションにおいて、同一の待ち時間で画像の印刷が開始される構成とされている。
【0300】
ところで、最も効率よく画像を印刷できる制御手法は、各ステーションにおいて、待ち時間なしに画像の印刷する制御手法である。
【0301】
本実施の形態では、各ステーションにおいて、待ち時間なしで画像の印刷を開始する場合について説明する。
【0302】
各ステーションにおいて、待ち時間なしで画像の印刷を開始するには、印刷開始位置を適切に設定する必要がある。以下、各ステーションにおいて、待ち時間なしで画像の印刷を開始するための印刷開始位置の設定方法について説明する。なお、印刷機の装置構成は、上記第1の実施の形態の印刷機と同じとする。
【0303】
図28は、各ステーションにおいて待ち時間なしで画像を印刷する場合の一連の印刷の処理の流れと経過時間を示す表である。
【0304】
基材2が1回転する時間をTとする。また、基材2がステーション間を移動する時間をSとし、S=1.3Tであるとする。また、各ステーションSt1~St4での印刷時間をUとする。本実施の形態では、各ステーションSt1~St4において、1回転で画像の印刷が完了するものとする。したがって、本実施の形態での印刷時間UはTである(U=T)。
【0305】
ブラックの画像の印刷を開始してからイエローの画像の印刷が完了するまでに発生する主なイベントと、そのイベントが発生するまでの経過時間は、次のとおりである。なお、経過時間は、ブラックの画像の印刷を開始してからの経過時間である。
【0306】
(1)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が開始される。経過時間は[0]である。なお、ブラックの画像は、第1印刷開始位置から印刷が開始されるものとする。
【0307】
(2)第1ステーションSt1において、ブラックの画像の印刷が終了する。経過時間は、印刷時間が加算されて[U]である。上記のように、本実施の形態では、U=Tである。
【0308】
(3)基材2が第2ステーションSt2に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は[U]である。上記のように、本実施の形態では、U=Tである。
【0309】
(4)基材2が第2ステーションSt2に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[U+S]である。S=1.3Tであるので、U+S=T+1.3T=2.3Tとなる。
【0310】
(5)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が開始される。上記のように、本実施の形態では、各ステーションにおいて待ち時間なしで画像の印刷が開始される。したがって、経過時間は[U+S]となる。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S=T+1.3T=2.3Tとなる。
【0311】
(6)第2ステーションSt2において、シアンの画像の印刷が終了する。経過時間は、第2ステーションSt2での印刷時間Uが加算されて、[U+S+U]である。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S+U=T+1.3T+T=3.3Tとなる。
【0312】
(7)基材2が第3ステーションSt3に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[U+S+U]である。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S+U=T+1.3T+T=3.3Tとなる。
【0313】
(8)基材2が第3ステーションSt3に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[U+S+Δt2+U+S]である。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S+U+S=T+1.3T+T+1.3T=4.3Tとなる。
【0314】
(9)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が開始される。待ち時間が0であるので、経過時間は、[U+S+Δt2+U+S+Δt3]となる。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S+U+S+=T+1.3T+T+1.3T=4.6Tとなる。
【0315】
(10)第3ステーションSt3において、マゼンタの画像の印刷が終了する。経過時間は、第3ステーションSt3での印刷時間Uが加算されて、[U+S+U+S+U]である。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S+U+S+U=T+1.3T+T+1.3T+T=5.6Tとなる。
【0316】
(11)基材2が第4ステーションSt4に向けて移動を開始する。印刷の終了と同時に移動を開始するので、経過時間は、印刷終了時と変わらず、[U+S+U+S+U]である。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S+U+S+U=T+1.3T+T+1.3T+T=5.6Tとなる。
【0317】
(12)基材2が第4ステーションSt4に到着する。経過時間は、搬送時間Sが加算されて、[U+S+U+S+U+S]である。よって、本モードでの経過時間は、U+S+U+S+U+S=T+1.3T+T+1.3T+T+1.3T=6.9Tとなる。
【0318】
(13)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が開始される。待ち時間が0であるので、経過時間は、[U+S+U+S+U+S]となる。本実施の形態での経過時間は、U+S+U+S+U+S=T+1.3T+T+1.3T+T+1.3T=6.9Tとなる。
【0319】
(14)第4ステーションSt4において、イエローの画像の印刷が終了する。経過時間は、第4ステーションSt4での印刷時間Uが加算されて、[U+S+U+S+U+S+U]である。よって、本実施の形態での経過時間は、U+S+U+S+U+S+U=T+1.3T+T+1.3T+T+1.3T+T=7.9Tとなる。
【0320】
以上のことから、各ステーションにおいて、待ち時間なしで画像の印刷を開始するには、各ステーションにおいて、次のタイミングで画像の印刷が開始されるように、印刷開始位置を設定すればよい。
【0321】
まず、基準となる位置を設定する。基準となる位置は、第1ステーションSt1において、印刷を開始する位置である。この位置を第1印刷開始位置に設定する。
【0322】
第2ステーションSt2において、待ち時間なしで画像の印刷を開始するためには、基材2が第2ステーションSt2に到着した時点で印刷位置に第2印刷開始位置が位置している必要がある。このためには、第2印刷開始位置が、第1印刷開始位置から0.3回転した位置に設定されていればよい。
【0323】
また、第3ステーションSt3において、待ち時間なしで画像の印刷を開始するためには、基材2が第3ステーションSt3に到着した時点で印刷位置に第3印刷開始位置が位置している必要がある。このためには、第3印刷開始位置が、第2印刷開始位置から0.3回転した位置(第1印刷開始位置から0.6回転した位置)に設定されていればよい。
【0324】
更に、第4ステーションSt4において、待ち時間なしで画像の印刷を開始するためには、基材2が第4ステーションSt4に到着した時点で印刷位置に第4印刷開始位置が位置している必要がある。このためには、第4印刷開始位置が、第3印刷開始位置から0.3回転した位置(第1印刷開始位置から0.9回転した位置)に設定されていればよい。
【0325】
よって、各ステーションにおいて、待ち時間なしで画像の印刷を開始するには、基材2の外周面上の4箇所に印刷開始位置を設定し、基準となる位置に対し、それぞれ0回転した位置、0.3回転した位置、0.6回転した位置及び0.9回転した位置に設定すればよい。上記のように、基準となる位置を第1印刷開始位置とすると、第2印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.3回転した位置に設定される。また、第3印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.6回転した位置に設定される。また、第4印刷開始位置は、第1印刷開始位置から0.9回転した位置に設定される。
【0326】
また、第1印刷開始位置を画像の先端が印刷されると位置とすると、第2印刷開始位置は、画像の先端から基材2の周方向に沿って30%の地点に設定される。また、第3印刷開始位置は、画像の先端から基材2の周方向に沿って60%の地点に設定される。また、第4印刷開始位置は、画像の先端から基材2の周方向に沿って90%の地点した位置に設定される。
【0327】
一般式で表すと、印刷開始位置は、次のように設定される。
【0328】
基材の搬送経路上に設定されるステーションの総数をnとする。各ステーションを基材の搬送方向の上流側から順に第1ステーションSt1、第2ステーションSt2、…、第nステーションStnとする。各ステーションSt1、St2、…、Stnでの画像の印刷時間をUとする。したがって、たとえば、m回転で印刷が完了する場合、U=m×Tとなる。各ステーションが等間隔に配置されるものとして、各ステーションの間を搬送される基材の搬送時間をSとする。SをUで割り(S/U)、小数点以下を切り捨てた値を<S/U>とする。この場合、たとえば、S/U=1.3とすると、<S/U>の値は、<S/U>=<1.3>=1となる。
【0329】
以上の条件において、設定する印刷開始位置の数はnとなる。第1ステーションSt1での印刷開始位置を第1印刷開始位置、第2ステーションSt2での印刷開始位置を第2印刷開始位置、…、第nステーションStnでの印刷開始位置を第n印刷開始位置とする。
【0330】
i=1、2、…、nとし、基材の外周面上で画像の先端が印刷される位置を基準とすると、第iステーションにおける印刷開始位置は、基材の全周に対し、(i-1)×(S/U-<S/U>)となる割合の位置に設定される。
【0331】
たとえば、上記実施の形態の場合、U=T、S=1.3Tであるので、S/U=1.3T/T=1.3となる。また、<S/U>の値は、<S/U>=<1.3>=1となる。
【0332】
第1ステーションSt1では、i=1により、(i-1)×(S/U-<S/U>)=(1-1)×(1.3-1)=0となる。すなわち、基準となる位置(画像の先端が印刷される位置)に設定される。そして、この位置が第1印刷開始位置に設定される。
【0333】
第2ステーションSt2では、i=2により、(i-1)×(S/U-<S/U>)=(2-1)×(1.3-1)=0.3となる。すなわち、基準となる第1印刷開始位置から0.3回転した位置(全周を1とした場合に0.3となる割合の位置)に設定される。そして、この位置が第2印刷開始位置に設定される。
【0334】
第3ステーションSt3では、i=3により、(i-1)×(S/U-<S/U>)=(3-1)×(1.3-1)=0.6となる。すなわち、基準となる第1印刷開始位置から0.6回転した位置(全周を1とした場合に0.6となる割合の位置)に設定される。そして、この位置が第3印刷開始位置に設定される。
【0335】
第4ステーションSt4では、i=4により、(i-1)×(S/U-<S/U>)=(4-1)×(1.3-1)=0.9となる。すなわち、第1印刷開始位置から0.9回転した位置(全周を1とした場合に0.9となる割合の位置)に設定される。そして、この位置が第4印刷開始位置に設定される。
【0336】
なお、印刷開始位置は、インクジェットヘッドに対し、印刷開始のトリガーを与えるタイミングでもある。第iステーションにおいて、インクジェットヘッドにトリガーを与えるタイミングをTiとすると、Tiは、基材2が1回転する時間Tに対し、Ti/T=(i-1)×(S/U-<S/U>)となる割合のタイミングに設定されると言い換えることができる。
【0337】
以上のように、本実施の形態の印刷機によれば、各ステーションにおいて、待ち時間なしで画像の印刷を開始できる。これにより、より効率よく画像を印刷できる。
【0338】
[変形例]
各ステーションは、必ずしも一定の間隔で配置する必要はない。また、画像は、必ずしも基材の全周に印刷する必要はない。各ステーションの配置間隔が一定ではない場合、及び、基材の外周の一部の領域にのみ画像を印刷する場合において、待ち時間なく各ステーションで画像の印刷を開始するための条件は、次のようになる。
【0339】
基材の搬送経路上に設定されるステーションの数をnとする。各ステーションを基材の搬送方向の上流側から順に第1ステーション、第2ステーション、…、第nステーションとする。基材が1回転する時間をTとする。i=1、2、…、nとし、第iステーションから第i+1ステーションまで搬送される基材の搬送時間をSiとする。また、第iステーションでの印刷時間をUiとする。第iステーションでの印刷時間Uiは、第iステーションにおいて、印刷が開始されてから次のステーションに向かって基材が移動を開始するまでの時間と同義である。また、次式F(i)の小数点以下を切り捨てた値を<F(i)>とする。
【0340】
【数1】
【0341】
以上の条件において、設定する印刷開始位置の数はnとなる。第1ステーションSt1での印刷開始位置を第1印刷開始位置、第2ステーションSt2での印刷開始位置を第2印刷開始位置、…、第nステーションStnでの印刷開始位置を第n印刷開始位置とする。
【0342】
基材の外周面上で画像の先端が印刷される位置を基準とすると、第1ステーションにおける印刷開始位置(第1印刷開始位置)は、基準となる位置に設定される。すなわち、画像の先端が印刷される位置に設定される。この位置は、基材の全周に対し0となる割合の位置である。一方、2番目以降のステーション、すなわち、第2ステーション以降の第iステーションにおける印刷開始位置は、基材の全周に対し、F(i)-<F(i)>となる割合の位置に設定される。
【0343】
なお、基材の外周の一部の領域にのみ画像を印刷する場合において、画像が印刷される領域以外の領域に印刷開始位置が設定された場合は、画像の先端が印刷される位置、すなわち、第1印刷開始位置から印刷が開始されることとなる。この場合、第1印刷開始位置に到達するまで空転して待機することとなる。
【0344】
[その他の実施の形態]
[搬送ユニット]
搬送ユニットについては、基材を回転させながら経路に沿って搬送できる構成のものであれば、その具体的な構成は、特に限定されない。
【0345】
[印刷ユニット]
印刷ユニットについては、印刷位置に位置した基材の外周面に画像を印刷できる構成のものであれば、その具体的な構成については、特に限定されない。
【0346】
[制御ユニット]
制御ユニットの機能は、各種のプロセッサ(Processor)で実現される。各種のプロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU及び/又はGPU(Graphic Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device,PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。プログラムは、ソフトウェアと同義である。
【0347】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。たとえば、1つの処理部は、複数のFPGA、或いは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどに用いられるコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip,SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【符号の説明】
【0348】
1 印刷機
2 基材
10 搬送ユニット
12 ベース
14 ガイドレール
16 テーブル
18 テーブル用モータ
18A コイルユニット
18B マグネットベース
20 マンドレル
22 マンドレル用モータ
24 ガイドブロック
26 ブラケット
50 印刷ユニット
52Bk インクジェットヘッド
52C インクジェットヘッド
52M インクジェットヘッド
52Y インクジェットヘッド
54 ノズル面
100 制御ユニット
101 CPU
102 RAM
103 ROM
104 補助記憶装置
105 入力装置
106 表示装置
107 通信インターフェース
120 画像データ取得部
122 画像処理部
124 印刷制御部
126 搬送制御部
126A 移動制御部
126B 回転制御部
128 モード選択処理部
130 印刷開始位置設定処理部
DBk ブラックの印刷用データ
DC シアンの印刷用データ
DM マゼンタの印刷用データ
DY イエローの印刷用データ
I 基材の外周面に印刷される画像
IBk ブラックの画像
IC シアンの画像
IM マゼンタの画像
IY イエローの画像
MN ノズルの位置を示すマーク
MP インク滴が打滴される位置(印刷位置)を示すマーク
M0 画像の先端が印刷される位置を示すマーク
M1 第1印刷開始位置を示すマーク
M2 第2印刷開始位置を示すマーク
M3 第3印刷開始位置を示すマーク
St1 第1ステーション
St2 第2ステーション
St3 第3ステーション
St4 第4ステーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28